説明

測位装置、通信システム及び測位方法

【課題】測位時点での電波環境の影響による伝播誤りに起因した測位誤差を適正に補正し、測位結果の信頼性を向上させる。
【解決手段】測位サーバ10は、移動局が位置するエリアを推定する測位部14と、複数のエリアの各々について移動局の位置が当該エリアであるとの測位結果が得られた場合に伝播誤り補正にて正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率を記憶した伝播誤り補正情報記憶部16と、複数回の測位結果に対応する上記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率を読み出し、読み出した正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率に基づいて測位結果それぞれに関する信頼度を算出し、上記測位結果それぞれに関する信頼度に基づいて測位結果を補正する測位結果補正部12と、補正後の測位結果を出力する測位結果出力部13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局の測位を行う測位装置、通信システム及び測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、無線通信環境において、移動局の位置を測定する(測位を行う)方式として、セクタ測位方式が知られている(特許文献1に「セルセクタ測位」として言及されている)。このセクタ測位方式では、例えば、セル内の複数のセクタのうち、測位時点で移動局からの受信信号の受信レベルが最大となるセクタが特定され、当該セクタの中心位置が移動局の位置と推定される。
【0003】
また、セクタ内の位置を特定する方式として、いわゆるPRACH-PD測位方式が知られている。このPRACH-PD測位方式には、屋外を想定した方式と屋内を想定した方式が存在する。このうち屋外を想定した方式では、図7に示すように、移動局71へ向けて送信されたPRACH信号が移動局71から折り返して基地局70に到達するまでの伝播時間が測定され、該伝播時間に基づいてセクタ内の移動局71の位置が特定される。また、屋内を想定した方式では、図8に示すように基地局70の配下の1つのセクタに、当該基地局70に接続され屋内に設置された移動通信用多分岐光伝送装置(Multi-drop Optical Feeder(以下「MOF」と称する))80を割り当て、該MOF80に接続されたアンテナ群81、82から送信される無線信号により当該1つのセクタを形成する構成とされている。ここで、MOF80とアンテナ群81の間に挿入する遅延線83と、MOF80とアンテナ群82の間に挿入する遅延線84とで、長さの異なるものを用いることにより、アンテナ群81、82の間に伝播遅延(Propagation Delay、以下「PD」ともいう)を設ける。かかる構成において、基地局70から送信されたPRACH信号が移動局で折り返して基地局70に到達するまでの伝播時間が測定され、該伝播時間に基づいて伝播遅延が特定され、移動局がどのアンテナ群の近くに位置するか(即ち、セクタ内の移動局の位置)が特定される。
【特許文献1】特開2007−322237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、測位時点での電波環境の影響によって測位誤差が生じることがある。ここでは、屋内を想定したPRACH-PD測位方式を例にとって説明する。例えば、図9には、あるビルの屋内に設定された複数のエリア(セクタID及び伝播遅延の組合せにより区分けされたエリア)を示す。図9で、Sx−yとは、セクタIDがxで、伝播遅延の種別がyとされたエリアを意味する。
【0005】
図9のビル内で、対象の移動局がエリアS6−1に位置していた場合、当該ビルの屋内の構造(例えば吹き抜けや階段等の存在)に起因して、当該移動局の位置として、エリアS6−1の上の階のエリアS4−2と誤って判定されることや、エリアS6−1に隣接するエリアS5−1又はS1−2と誤って判定されることがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであり、測位時点での電波環境の影響による伝播誤りに起因した測位誤差を適正に補正し、測位結果の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る測位装置は、セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、移動局がどのエリアに位置するか、を推定することで、前記移動局の位置の測位を行う測位装置であって、前記複数のエリアの各々について、前記移動局の位置が当該エリアであるとの測位結果が得られた場合に伝播誤り補正にて正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率を記憶した伝播誤り補正情報記憶部と、前記移動局の位置の複数回の測位結果に対応する前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率を、前記伝播誤り補正情報記憶部から読み出し、読み出した前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率に基づいて、前記測位結果を補正する補正部と、補正後の測位結果を出力する測位結果出力部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る測位装置は、以下のように記載することもできる。即ち、本発明に係る測位装置は、測位対象の移動局の情報を含んだ測位要求を受け付け、セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、前記移動局がどのエリアに位置するか、を推定することで、前記移動局の位置の測位を行う測位部と、前記測位部による測位結果としての前記移動局が位置するエリアと、測位時刻とを記憶する測位結果記憶部と、前記複数のエリアの各々について、前記移動局の位置が当該エリアであるとの測位結果が得られた場合に伝播誤り補正にて正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率を記憶した伝播誤り補正情報記憶部と、複数回の測位結果と測位時刻とを前記測位結果記憶部から読み出し、読み出された複数回の測位結果に対応する前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率を前記伝播誤り補正情報記憶部から読み出し、読み出した前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率に基づいて前記測位結果それぞれに関する信頼度を算出し、算出された前記測位結果それぞれに関する信頼度に基づいて前記測位結果を補正する測位結果補正部と、補正後の測位結果を出力する測位結果出力部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
以上のような本発明に係る測位装置によれば、複数のエリアの各々について、移動局の位置が当該エリアであるとの測位結果が得られた場合に伝播誤り補正にて「正解とされるエリア」および「当該正解とされる確率」を記憶しておき、移動局の位置の複数回の測位結果に対応する「正解とされるエリア」および「当該正解とされる確率」を読み出し、これら「正解とされるエリア」および「当該正解とされる確率」に基づいて測位結果を補正するため、測位時点での電波環境の影響による伝播誤りに起因した測位誤差を適正に補正し、測位結果の信頼性を向上させることができる。
【0010】
なお、測位結果補正部は、前記複数回の測位結果に含まれるエリア各々について、前記読み出した前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率から、該エリアが前記正解とされるエリアに一致するときの前記正解とされる確率を前記複数回の測位各々について特定し、特定された複数の前記正解とされる確率の積を求め、求めた積を該エリアの信頼度とすることが望ましい。
【0011】
また、測位結果補正部は、前記信頼度が最大となるエリア、又は、前記信頼度を前記求められた各エリアの信頼度の総和で割ることで得られる相対比率が所定のしきい値以上となるエリア、を正しい測位結果として前記測位結果を補正することが望ましい。
【0012】
ところで、本発明は、前述したように「測位装置に係る発明」として捉えることができるとともに、後述の「通信システムに係る発明」および「測位方法に係る発明」として捉えることもでき、同様の効果を奏する。
【0013】
本発明に係る通信システムは、GPS測位を行う少なくとも1つの移動局と、セルを形成する少なくとも1つの基地局と、セクタ測位を行う基地局制御装置と、前記移動局の位置の測位を行う測位装置とを含んで構成された通信システムであって、前記測位装置は、測位対象の移動局の情報を含んだ測位要求を受け付け、セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、前記移動局がどのエリアに位置するかを、当該移動局によるGPS測位の結果又は前記基地局制御装置によるセクタ測位の結果に基づいて、推定することで、前記移動局の位置の測位を行う測位部と、前記測位部による測位結果としての前記移動局が位置するエリアと、測位時刻とを記憶する測位結果記憶部と、前記複数のエリアの各々について、前記移動局の位置が当該エリアであるとの測位結果が得られた場合に伝播誤り補正にて正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率を記憶した伝播誤り補正情報記憶部と、複数回の測位結果と測位時刻とを前記測位結果記憶部から読み出し、読み出された複数回の測位結果に対応する前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率を前記伝播誤り補正情報記憶部から読み出し、読み出した前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率に基づいて前記測位結果それぞれに関する信頼度を算出し、算出された前記測位結果それぞれに関する信頼度に基づいて前記測位結果を補正する測位結果補正部と、補正後の測位結果を出力する測位結果出力部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る測位方法は、セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、移動局がどのエリアに位置するか、を推定することで、前記移動局の位置の測位を行う測位装置、により実行される測位方法であって、前記測位装置により予め記憶された、前記複数のエリアの各々についての、前記移動局の位置が当該エリアであるとの測位結果が得られた場合の正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率から、前記移動局の位置の複数回の測位結果に対応する前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率を読み出すステップと、読み出した前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率に基づいて、前記測位結果を補正するステップと、補正後の測位結果を出力するステップと、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る測位方法は、以下のように記載することもできる。即ち、本発明に係る測位方法は、測位装置により実行される測位方法であって、測位対象の移動局の情報を含んだ測位要求を受け付けるステップと、セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、前記移動局がどのエリアに位置するか、を推定することで、前記移動局の位置の測位を行うステップと、測位結果としての前記移動局が位置するエリアと、測位時刻とを前記測位装置の測位結果記憶部に記憶するステップと、前記測位装置により予め記憶された、前記複数のエリアの各々についての、前記移動局の位置が当該エリアであるとの測位結果が得られた場合の正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率から、前記測位結果記憶部に記憶された複数回の測位結果に対応する前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率を読み出すステップと、読み出した前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率に基づいて前記測位結果それぞれに関する信頼度を算出するステップと、算出された前記測位結果それぞれに関する信頼度に基づいて前記測位結果を補正するステップと、補正後の測位結果を出力するステップと、を備えることを特徴とする。
【0016】
なお、信頼度を算出するステップでは、測位装置は、前記複数回の測位結果に含まれるエリア各々について、前記読み出した前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率から、該エリアが前記正解とされるエリアに一致するときの前記正解とされる確率を前記複数回の測位各々について特定し、特定された複数の前記正解とされる確率の積を求め、求めた積を該エリアの信頼度とすることが望ましい。
【0017】
また、測位結果を補正するステップでは、測位装置は、前記信頼度が最大となるエリア、又は、前記信頼度を前記求められた各エリアの信頼度の総和で割ることで得られる相対比率が所定のしきい値以上となるエリア、を正しい測位結果として前記測位結果を補正することが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、測位時点での電波環境の影響による伝播誤りに起因した測位誤差を適正に補正し、測位結果の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明にかかる実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
[通信システムの構成]
まず、本実施形態にかかる通信システムの構成について説明する。図1に示すように、本実施形態にかかる通信システム1は、GPS(Global Positioning System)に基づく測位(以下「GPS測位」という)を行う少なくとも1つの移動局40と、セルを形成する少なくとも1つの基地局30と、セクタ測位を行う基地局制御装置(Radio Network Controller、以下「RNC」と称する)20と、測位サーバ10とを含んで構成されている。ここでは、移動局40として、子供が携帯している移動局Bと、当該子供の親が携帯している移動局Aとが存在する。なお、測位サーバ10は、本発明に係る測位装置に相当する。
【0021】
各移動局40は、基地局30を介した無線通信手順によって、測位対象の移動局の情報を含んだ測位要求を測位サーバ10へ送信するとともに測位サーバ10からの応答(測位結果)を受信する測位要求部41と、受信された測位結果を表示する表示部42と、GPSを利用して自己の移動局の測位を行うGPS測位部43とを備える。
【0022】
RNC20は、セクタ測位を行うセクタ測位部21を備える。本実施形態における測位処理については、後述する。
【0023】
測位サーバ10は、RNC20との通信(各種情報の送受信)を行う通信制御部11と、測位対象の移動局の位置の測位を行う測位部14と、測位部14による測位結果を記憶するための測位結果記憶部15と、予め定められたエリア名と位置座標との対応表を記憶したエリア属性記憶部18と、後述する伝播誤り補正情報記憶部16と、後述する伝播誤り補正情報に基づいて測位結果を補正する測位結果補正部12と、補正後の測位結果を出力する測位結果出力部13と、測位部14に対し測位要求を直接行うための測位要求部17とを備える。このうち、測位部14は、測位対象の移動局の情報を含んだ測位要求を受け付け、後述する手順で測位対象の移動局の測位を行う。
【0024】
測位サーバ10は、ハードウェアの観点からみると、例えば図2に示すように、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムなどを実行するCPU10Aと、ROM及びRAMで構成される主記憶部10Bと、不揮発性メモリなどで構成される補助記憶部10Cと、データ通信を行う通信制御部10Dと、情報の表示や情報の印刷出力などを行う出力部10Eと、文字・数字入力及び実行指示を行うためのキーで構成される操作部10Fとを含んで構成される。なお、図1にて説明した各機能は、図2に示すCPU10A及び主記憶部10Bの上に所定のソフトウェアを読み込ませて該ソフトウェアを実行するとともに、CPU10Aの制御の下で通信制御部10Dを動作させ、主記憶部10Bや補助記憶部10Cにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。また、RNC20、基地局30および移動局40も、図2に示すような基本的なハードウェア構成を有している。
【0025】
図3には、エリア属性記憶部18に記憶されたエリア名と位置座標との対応表を示す。この図3に示すように、位置座標は、緯度、経度および高度を含む。本実施形態では、エリアとして、図9に示すように、あるビルの屋内に設定された複数のエリア(セクタID及び伝播遅延の組合せにより区分けされたエリア)を想定している。図9で、Sx−yとは、セクタIDがxで、伝播遅延の種別がyとされたエリアを意味する。
【0026】
図4には、測位結果記憶部15に記憶される測位結果の例を示す。図4(a)、(b)に示すように、測位結果記憶部15には、測位対象の移動局の識別情報(ユーザID)と、測位結果(具体的には、緯度、経度、高度)と、測位時刻とが記憶されるとともに、さらに、測位結果に対応するエリアが存在する場合は該当のエリア名が測位部14によって記憶され、補正後の測位結果として補正エリア名が測位結果補正部12によって記憶される。ここで、測位結果に対応するエリアが存在しない場合は図4(b)に示すようにエリア名の欄はブランクとなり、その場合、補正エリア名の欄には、矢印Xで示すようにエリア名でなく測位結果(緯度、経度、高度)そのもの(図4(b)では便宜上「測位結果のエリア」と表記)が記憶されることがある。なお、移動局の識別情報(ユーザID)としては、移動局の電話番号を採用してもよいし、独自に設定したIDを採用してもよい。
【0027】
図5には、伝播誤り補正情報記憶部16に記憶された伝播誤り補正情報の一例を示す。図5に示すように、伝播誤り補正情報記憶部16には、複数のエリアの各々について、移動局の位置が当該エリアであるとの測位結果が得られた場合に伝播誤り補正にて正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率が記憶されている。なお、ここで「エリア」には、予め区分されたエリア(例えばS4−2)と、位置座標そのもの(例えば(N35.66983, E139.74372, 1))の両方を含む。また、正解とされる確率は、手動で設定しても良いし、事前に対象環境で測位を実施した結果に基づいて設定しても良い。このうち後者については、複数の測位結果に対して正しいエリアとその発生の割合から、当該正解とされる確率を算出すればよい。
【0028】
ここでは、例えば、測位結果としてエリアS4−2が得られた場合に伝播誤り補正にて該エリアS4−2が正解とされる確率「90%」が記憶されており、エリアS6−1が正解とされる確率「10%」が記憶されている。また、測位結果として位置座標(N35.66983, E139.74372, *)が得られた場合(即ち、高度の値を問わず、緯度が北緯35.66983度、経度が東経139.74372度の位置座標が得られた場合)に伝播誤り補正にて該位置座標が正解とされる確率「50%」が記憶されており、エリアS1−1が正解とされる確率「50%」が記憶されている。
【0029】
さらに、測位結果のエリア欄の「(N35.66983, E139.74372, 1)〜(N35.66985, E139.74376, 1)」とは、高度が「1」で、緯度が北緯35.66983度〜35.66985度の範囲内、且つ、経度が東経139.74360度〜139.74372度の範囲内である二次元領域を意味する。ここで、測位結果として当該二次元領域内の位置座標が得られた場合に伝播誤り補正にて該測位結果の位置座標そのものが正解とされる確率「50%」が記憶されており、エリアS1−1が正解とされる確率「50%」が記憶されている。
【0030】
[本実施形態の処理フロー]
以下、図6のフロー図に沿って、本実施形態の通信システムにおいて実行される処理フローを説明する。ここでは、図1において、子供が携帯している移動局Bを対象とした測位を、親が携帯している移動局Aから測位サーバ10に対し要求する場面を想定している。
【0031】
まず、移動局Aが、測位サーバ10に対し測位要求を行う(図6のステップS1)。具体的には、移動局Aの測位要求部41が、移動局Aのユーザにより入力された測位対象の移動局BのID、連続測位条件を含んだ測位要求を測位サーバ10あてに送信する。なお、上記の連続測位条件には、測位回数(有限の回数(例えば5回)又は無限の指定)および測位時間間隔(例えば1分間隔、5分間隔など)が含まれる。
【0032】
次に、測位サーバ10では、測位部14は、通信制御部11経由で、移動局Aからの測位要求を受け付けると(ステップS2)、RNC20および測位対象の移動局Bと連携して以下のような測位を実行する(ステップS3)。
【0033】
まず、測位部14は測位要求をRNC20へ送信する。RNC20では、セクタ測位部21が、測位要求に含まれた「測位対象の移動局BのID」より測位対象を特定し、測位要求に含まれた「連続測位条件」より測位回数および測位時間間隔を認識し、そして、移動局Bを測位対象として、上記測位回数および測位時間間隔でのセクタ測位を行う。具体的には、セクタ測位部21は、移動局Bが接続しているセクタと伝播遅延値とを測定し、当該セクタと伝播遅延値に基づいて、移動局Bのセクタ測位結果(緯度、経度、高度)を取得する。さらに、セクタ測位部21は、移動局Bに対し、上記連続測位条件を含んだGPS測位の測位要求と、上記取得した移動局Bのセクタ測位結果(緯度、経度、高度)とを送信する。測位要求を受けた移動局Bでは、当該時点でGPS測位が実行可能であれば、GPS測位部43がGPS測位を実行し、そのGPS測位結果(緯度、経度、高度)をセクタ測位部21へ返信する。一方、当該時点でGPS測位が実行可能でなければ、GPS測位部43は、上記セクタ測位結果(緯度、経度、高度)をセクタ測位部21へ返信する。そして、セクタ測位部21は、受信した測位結果(即ち、GPS測位が実行可能な場合はGPS測位結果、GPS測位が実行可能でない場合はセクタ測位結果)を測位部14へ送信する。これにより、測位部14は、移動局Bの測位結果(緯度、経度、高度)を得る。
【0034】
なお、測位時間間隔については、測位要求にて指定されたとおりの測位時間間隔で測位を実施しても良いが、測位結果取得に時間がかかる場合は、(前回の測位結果の取得以降であり、且つ、前回の測位要求から測位時間間隔を経過した後である)という条件を満たす場合に測位を実施するようにしても良い。また、測位回数を「無限」と設定した場合には、移動局Aの測位要求部41から手動で測位停止要求を送信することで測位を終了する。
【0035】
測位後、測位部14は、測位対象の移動局のID(移動局BのユーザID、ここでは「U001」)に対応付けて、測位結果(緯度、経度、高度)および測位時刻を測位結果記憶部15に記憶する(ステップS4)。このとき、測位部14は、エリア属性記憶部18を参照し、測位結果の位置座標に対応するエリアを検索し、該当のエリアが存在する場合はそのエリア名も測位結果記憶部15に記憶する。
【0036】
次に、測位結果補正部12が、測位結果記憶部15を参照して過去の複数回の測位結果を読み出し、読み出された複数回の測位結果に対応する「正解とされるエリア」および「当該正解とされる確率」を伝播誤り補正情報記憶部16から読み出す(ステップS5)。このとき、過去の測位結果の読み出しにつき、過去何秒分取得するかについては予め設定しておく。
【0037】
ここで例えば、図4(a)に示す過去4回の測位結果S6−1、S4−2、S6−1、S4−2が読み出されたとすると、測位結果S6−1に対応する(正解とされるエリアS6−1、正解とされる確率90%)および(正解とされるエリアS2−1、正解とされる確率10%)が読み出され、測位結果S4−2に対応する(正解とされるエリアS4−2、正解とされる確率90%)および(正解とされるエリアS6−1、正解とされる確率10%)が読み出される。
【0038】
そして、測位結果補正部12は、測位結果S6−1、S4−2それぞれについて、該測位結果が正解とされる確率(即ち、該測位結果が「正解とされるエリア」に一致するときの「正解とされる確率」)を複数回の測位各々について特定し、特定された複数の「正解とされる確率」の積を求め、求めた積を該測位結果の信頼度として算出する(ステップS6)。例えば、測位結果S6−1、S4−2、S6−1、S4−2が読み出された場合、測位結果S6−1については、複数回の測位各々での「正解とされる確率」が、0.9、0.1、0.9、0.1と特定されるため、信頼度として0.9×0.1×0.9×0.1=0.0081が算出される。一方、測位結果S4−2については、複数回の測位各々での「正解とされる確率」が、0、0.9、0、0.9と特定されるため、信頼度として0×0.9×0×0.9=0が算出される。
【0039】
さらに、測位結果補正部12は、算出された信頼度が最大となるエリアとしてS6−1を特定し、このエリアS6−1を正しい測位結果として測位結果を補正する(ステップS7)。ここでは、測位結果S6−1、S4−2、S6−1、S4−2のうち、S4−2がS6−1に補正されることとなる。そして、測位結果補正部12は、補正後の測位結果を測位結果記憶部15に記憶する。これにより、図4(a)に示すように、「補正エリア名」の欄に補正後の測位結果S6−1、S6−1、S6−1、S6−1が記憶される。
【0040】
なお、算出された信頼度から、正しい測位結果を得る手法としては、信頼度が最大となるエリアを求める以外に、信頼度の相対比率(即ち、信頼度を各エリアの信頼度の総和で割ることで得られる相対比率)が所定のしきい値以上となるエリア(1つ又は複数)を正しい測位結果としてもよい。
【0041】
以上のような補正後は、測位結果出力部13が、補正後の測位結果を出力する(ステップS8)。具体的には、測位結果出力部13は、補正後の測位結果を移動局A(測位要求を行った移動局)へ送信するとともに、該測位結果出力部13を構成する表示装置に表示出力する。移動局Aでは、測位要求部41が補正後の測位結果を受信すると、受信された測位結果を表示部42に表示出力する(ステップS9)。表示出力の形態は、画面上に文字で表示してもよいし、画面に表示した地図上で補正エリアをプロットする形で表示してもよい。文字で表示する場合、測位結果が1つのエリアのときは、例えば「測位対象はエリアS6−1付近にいます」と表示され、測位結果が複数のエリアのときは、例えば「測位対象はエリアS6−1とS1−2の境界付近にいます」と表示される。これにより、移動局Aを携帯している親は、子供が携帯している移動局Bの位置(即ち、子供のいる位置)を認識することができる。
【0042】
以上の実施形態によれば、測位時点での電波環境の影響による伝播誤りに起因した測位誤差を適正に補正し、測位結果の信頼性を向上させることができる。
【0043】
なお、上記実施形態では、測位対象の移動局B以外の移動局A又は測位サーバ10から測位要求を行う態様を示したが、測位対象の移動局自身から測位要求を行っても良い。また、測位サーバ10が備える機能の全てを移動局内に搭載してもよい。このとき、当該移動局は、自己を対象とした測位および測位結果の補正を自律的に行うことができる。この場合、当該移動局は、本発明に係る測位装置に相当する。また、測位サーバ10が備える機能のうち、一部の機能を移動局内に搭載することで、該移動局は測位サーバ10と連携して、自己の移動局を対象とした測位および測位結果の補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】発明の実施形態にかかる通信システムの構成図である。
【図2】測位サーバのハードウェア構成図である。
【図3】エリア属性記憶部に記憶された情報を示す図である。
【図4】測位結果記憶部に記憶される測位結果の例を示す図である。
【図5】伝播誤り補正情報記憶部に記憶された伝播誤り補正情報の例を示す図である。
【図6】通信システムにおいて実行される処理フローを示す図である。
【図7】PRACH-PD測位方式を説明するための図である。
【図8】PRACH-PD測位方式の屋内への適用例を示す図である。
【図9】あるビルの屋内に設定されたエリアを示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1…通信システム、10…測位サーバ、10A…CPU、10B…主記憶部、10C…補助記憶部、10D…通信制御部、10E…出力部、10F…操作部、11…通信制御部、12…測位結果補正部、13…測位結果出力部、14…測位部、15…測位結果記憶部、16…伝播誤り補正情報記憶部、17…測位要求部、18…エリア属性記憶部、20…RNC、21…セクタ測位部、30…基地局、40…移動局、41…測位要求部、42…表示部、43…GPS測位部、70…基地局、71…移動局、80…MOF、81、82…アンテナ群、83、84…遅延線。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、移動局がどのエリアに位置するか、を推定することで、前記移動局の位置の測位を行う測位装置であって、
前記複数のエリアの各々について、前記移動局の位置が当該エリアであるとの測位結果が得られた場合に伝播誤り補正にて正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率を記憶した伝播誤り補正情報記憶部と、
前記移動局の位置の複数回の測位結果に対応する前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率を、前記伝播誤り補正情報記憶部から読み出し、読み出した前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率に基づいて、前記測位結果を補正する補正部と、
補正後の測位結果を出力する測位結果出力部と、
を備える測位装置。
【請求項2】
測位対象の移動局の情報を含んだ測位要求を受け付け、セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、前記移動局がどのエリアに位置するか、を推定することで、前記移動局の位置の測位を行う測位部と、
前記測位部による測位結果としての前記移動局が位置するエリアと、測位時刻とを記憶する測位結果記憶部と、
前記複数のエリアの各々について、前記移動局の位置が当該エリアであるとの測位結果が得られた場合に伝播誤り補正にて正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率を記憶した伝播誤り補正情報記憶部と、
複数回の測位結果と測位時刻とを前記測位結果記憶部から読み出し、読み出された複数回の測位結果に対応する前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率を前記伝播誤り補正情報記憶部から読み出し、読み出した前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率に基づいて前記測位結果それぞれに関する信頼度を算出し、算出された前記測位結果それぞれに関する信頼度に基づいて前記測位結果を補正する測位結果補正部と、
補正後の測位結果を出力する測位結果出力部と、
を備える測位装置。
【請求項3】
前記測位結果補正部は、前記複数回の測位結果に含まれるエリア各々について、前記読み出した前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率から、該エリアが前記正解とされるエリアに一致するときの前記正解とされる確率を前記複数回の測位各々について特定し、特定された複数の前記正解とされる確率の積を求め、求めた積を該エリアの信頼度とすることを特徴とする請求項2記載の測位装置。
【請求項4】
前記測位結果補正部は、前記信頼度が最大となるエリア、又は、前記信頼度を前記求められた各エリアの信頼度の総和で割ることで得られる相対比率が所定のしきい値以上となるエリア、を正しい測位結果として前記測位結果を補正することを特徴とする請求項3記載の測位装置。
【請求項5】
GPS測位を行う少なくとも1つの移動局と、セルを形成する少なくとも1つの基地局と、セクタ測位を行う基地局制御装置と、前記移動局の位置の測位を行う測位装置とを含んで構成された通信システムであって、
前記測位装置は、
測位対象の移動局の情報を含んだ測位要求を受け付け、セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、前記移動局がどのエリアに位置するかを、当該移動局によるGPS測位の結果又は前記基地局制御装置によるセクタ測位の結果に基づいて、推定することで、前記移動局の位置の測位を行う測位部と、
前記測位部による測位結果としての前記移動局が位置するエリアと、測位時刻とを記憶する測位結果記憶部と、
前記複数のエリアの各々について、前記移動局の位置が当該エリアであるとの測位結果が得られた場合に伝播誤り補正にて正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率を記憶した伝播誤り補正情報記憶部と、
複数回の測位結果と測位時刻とを前記測位結果記憶部から読み出し、読み出された複数回の測位結果に対応する前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率を前記伝播誤り補正情報記憶部から読み出し、読み出した前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率に基づいて前記測位結果それぞれに関する信頼度を算出し、算出された前記測位結果それぞれに関する信頼度に基づいて前記測位結果を補正する測位結果補正部と、
補正後の測位結果を出力する測位結果出力部と、
を備える
ことを特徴とする通信システム。
【請求項6】
セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、移動局がどのエリアに位置するか、を推定することで、前記移動局の位置の測位を行う測位装置、により実行される測位方法であって、
前記測位装置により予め記憶された、前記複数のエリアの各々についての、前記移動局の位置が当該エリアであるとの測位結果が得られた場合の正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率から、前記移動局の位置の複数回の測位結果に対応する前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率を読み出すステップと、
読み出した前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率に基づいて、前記測位結果を補正するステップと、
補正後の測位結果を出力するステップと、
を備える測位方法。
【請求項7】
測位装置により実行される測位方法であって、
測位対象の移動局の情報を含んだ測位要求を受け付けるステップと、
セルを予め複数のセクタに区分けし且つ各セクタを異なる伝播遅延が予め設けられた複数のエリアに区分けすることで前記セクタと前記伝播遅延との組合せに対応付けて設定された複数のエリアのうち、前記移動局がどのエリアに位置するか、を推定することで、前記移動局の位置の測位を行うステップと、
測位結果としての前記移動局が位置するエリアと、測位時刻とを前記測位装置の測位結果記憶部に記憶するステップと、
前記測位装置により予め記憶された、前記複数のエリアの各々についての、前記移動局の位置が当該エリアであるとの測位結果が得られた場合の正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率から、前記測位結果記憶部に記憶された複数回の測位結果に対応する前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率を読み出すステップと、
読み出した前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率に基づいて前記測位結果それぞれに関する信頼度を算出するステップと、
算出された前記測位結果それぞれに関する信頼度に基づいて前記測位結果を補正するステップと、
補正後の測位結果を出力するステップと、
を備える測位方法。
【請求項8】
前記信頼度を算出するステップにて、前記測位装置は、前記複数回の測位結果に含まれるエリア各々について、前記読み出した前記正解とされるエリアおよび当該正解とされる確率から、該エリアが前記正解とされるエリアに一致するときの前記正解とされる確率を前記複数回の測位各々について特定し、特定された複数の前記正解とされる確率の積を求め、求めた積を該エリアの信頼度とすることを特徴とする請求項7記載の測位方法。
【請求項9】
前記測位結果を補正するステップにて、前記測位装置は、前記信頼度が最大となるエリア、又は、前記信頼度を前記求められた各エリアの信頼度の総和で割ることで得られる相対比率が所定のしきい値以上となるエリア、を正しい測位結果として前記測位結果を補正することを特徴とする請求項8記載の測位方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−218818(P2009−218818A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60003(P2008−60003)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】