説明

測距システム及び測位システム

【課題】移動局と基地局との間における通信に要した往復の伝搬時間を的確に測定できる測距システムと、往復の伝搬時間から移動局の位置を的確に決定することができる測位システムを提供する。
【解決手段】移動局は、基地局が発した一の指令を受信したことに基づいて、既に移動局から発している信号の状態を変化させて送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
移動局と基地局との間の距離を測定するシステム及び移動局の位置を特定するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の移動局の位置を決定するシステムとして、移動局と位置の基準となる複数の基地局との間で通信を行い、移動局と基地局との間の距離を求め、三角測量にて位置を決定するものがあった(例えば、特許文献1〜特許文献4参照)。これらは、基地局から送信された信号を、移動局が受信し、移動局は、受信したことに応じて信号を基地局を送信する。この基地局と移動局との間の信号の送受信による往復の伝搬時間を測定するものであった。
【0003】
また、車両と位置が固定された複数の受信処理装置との間のおける通信に要した往復時間を測定するものもあった(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献1】特開2001−177469号公報
【特許文献2】特表2001−517801号公報
【特許文献3】特表2003−506930号公報
【特許文献4】特開平5−153068号公報
【特許文献5】特開平6−273520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した移動局と基地局との間における通信に要した往復の伝搬時間を測定するものは、基地局から送信された信号に応じて移動局が送信を開始するものであるので、送信を開始するための処理を実行するのに時間を要するため、伝搬時間に誤差を含まれるものであった。
【0005】
また、上述した車両と固定された複数の受信処理装置との間の通信は、固定された複数の受信処理装置のうちのいずれかを特定するものであるので、若干の往復時間に誤差が生じたとしても、受信処理装置の特定には差し支えないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、移動局と基地局との間における通信に要した往復の伝搬時間を的確に測定できる測距システムと、往復の伝搬時間から移動局の位置を的確に決定することができる測位システムを提供することにある。
【0007】
以上のような目的を達成するために、本発明においては、移動局は、基地局が発した一の指令を受信したことに基づいて、既に移動局から発している信号の状態を変化させて送信する。
【0008】
具体的には、本発明に係る測距システムは、
所定の一の指令を示す基地局信号を送信する基地局と、
移動局信号を送信する移動局と、を含み、
前記移動局は、前記一の指令を受信したことに基づいて、既に送信を開始していた前記移動局信号の状態を変化させて送信することを特徴とする。
【0009】
上述したように、本発明に係る測距システムは、基地局と移動局とを含む。基地局は、所定の一の指令を示す基地局信号を送信する。移動局は、一の指令を受信したときには、移動局信号の送信を既に開始している。その上、移動局は、基地局から発せられた一の指令を受信したこと契機にして、既に送信を開始している移動局信号の状態を変化させて送信する。
【0010】
このような構成としたことにより、基地局と移動局との間の時計合わせをすることなく、基地局と移動局との間の往復伝搬時間を測ることができる。また、基地局が複数ある場合であっても、基地局間の時計合わせをすることなく、複数の基地局の各々と移動局との間の往復伝搬時間を測ることができる。さらに、移動局信号の状態が変化した時刻を基地局の時計で計ることができるので、移動局に計時手段を設ける必要がなく、移動局の構成を簡略にすることができる。
【0011】
移動局における処理は、既に送信を開始している移動局信号の状態を変化させるだけであるため、短時間に処理をすることができるので、直ちに変更でき、誤差を少なくして往復伝搬時間を測定でき、往復伝搬距離を得る場合にも、往復伝搬距離を正確に得ることができる。
【0012】
また、本発明に係る測距システムは、
前記基地局が、前記一の指令を送信した第1の時刻と、
前記基地局が、前記移動局信号を受信して、前記移動局信号の状態の変化を検出した第2の時刻と、に基づいて前記基地局と前記移動局との間の往復伝搬時間を計測し、
前記往復伝搬時間に基づいて前記基地局と前記移動局との間の距離を算出するものが好ましい。
【0013】
基地局が一の指令を送信した時刻を第1の時刻とし、また、基地局が移動局信号の状態の変化を検出した時刻を第2の時刻とする。この第1の時刻と第2の時刻とに基づいて基地局と移動局との間の往復伝搬時間を計測する。さらに、この往復伝搬時間から基地局と移動局との間の距離を算出する。移動局は、移動局信号を連続的に継続して送信しており、基地局から発せられた一の指令を受信したときには、送信し続けている移動局信号の状態を変化させて、移動局信号を送信し続ける。
【0014】
さらに、本発明に係る測距システムは、
前記移動局信号が、連続的に発せられる信号、間歇的に発せられる信号、又はビーコン信号であるものが好ましい。
【0015】
さらにまた、本発明に係る測距システムは、
前記移動局が、前記移動局信号の位相、振幅及び周波数のうちの少なくとも1つを変化させるものが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る測距システムは、
前記一の指令が、拡散符号を用いたスペクトラム拡散通信又は超広帯域無線通信によって送信されるものが好ましい。
【0017】
このようにすることで、移動局が基地局からの一の指令を受信したタイミングを正確に測定することができる。
【0018】
さらに、本発明に係る測距システムは、
前記移動局が、前記基地局信号を受信する受信部と、前記移動局信号を送信する送信部と、を有し、前記受信部と前記送信部とが互いに独立しているものが好ましい。
【0019】
このように、受信部と送信部とが互いに独立するように構成することで、一の指令を受信してから、移動局信号の状態を変化させた信号を送信するまでの時間を短縮できるので、往復伝搬時間に含まれる誤差を小さくできる。
【0020】
さらにまた、本発明に係る測距システムは、
前記移動局において前記移動局信号の状態を変化させるのに要する変化処理時間を前記往復伝搬時間から減算するものが好ましい。
【0021】
この「変化処理時間」は、移動局において内部処理を実行するのに要する時間である。このように、変化処理時間を考慮することによって、往復伝搬時間に含まれる誤差をより小さくできる。
【0022】
また、本発明に係る測距システムは、
前記基地局が、
前記変化処理時間を記憶する変化処理時間記憶手段と、
前記往復伝搬時間から前記変化処理時間を減算する時間減算手段と、を含むものが好ましい。
【0023】
このように、基地局で、往復伝搬時間から変化処理時間を減算するようにすることで、基地局で直ちに処理することができるとともに、基地局にサーバが接続されている構成とした場合には、サーバにおける処理の負担を軽くすることができる。
【0024】
さらに、本発明に係る測距システムは、
前記基地局が、前記変化処理時間を算出する変化処理時間算出手段を含むものが好ましい。
【0025】
さらにまた、本発明に係る測距システムは、
前記基地局が、前記一の指令を発するよりも以前に、前記一の指令と異なる他の指令を示す信号を前記基地局信号として送信し、
前記移動局が、前記他の信号を受信したことに基づいて、前記移動局信号の送信を開始するものが好ましい。
【0026】
移動局は、他の指令を受信したことを契機にして、移動局信号の送信を開始する。移動局は、その後、連続的継続的に移動局信号を送信しているので、移動局が、一の指令を受信したときにも、移動局信号を送信し続けている。移動局が、一の指令を受信したときには、受信したことを契機にして、移動局信号の状態を変更するだけの処理を行う。
【0027】
このように、移動局が、一の指令を受信したときには、移動局信号の送信を既に開始しているので、信号の状態を変化させるだけであるため、処理に時間を要しない。このため、移動局の処理を短時間で行うことができるので、変化処理時間を短縮でき、精度よく時間を測定できる。
【0028】
また、本発明に係る測距システムは、
前記基地局の前記変化処理時間記憶手段が、前記移動局の種類に対応した前記変化処理時間を記憶するものが好ましい。
【0029】
さらに、本発明に係る測距システムは、
前記基地局と通信可能に接続されたサーバを含み、
前記基地局が、前記第1の時刻と前記第2の時刻とを計時する基地局計時手段を含み、
前記基地局が、前記第1の時刻を示す情報と前記第2の時刻を示す情報とを前記サーバに送信し、
前記サーバが、前記基地局から送信された前記第1の時刻を示す情報と前記第2の時刻を示す情報とに基づいて前記往復伝搬時間を計測するものが好ましい。
【0030】
さらにまた、本発明に係る測距システムは、
前記サーバが、前記第1の時刻と前記第2の時刻とを記憶する時刻記憶手段を含むものが好ましい。
【0031】
また、本発明に係る測距システムは、
前記サーバが、
前記移動局において前記移動局信号の状態を変化させるのに要する変化処理時間を記憶する変化処理時間記憶手段と、
前記往復伝搬時間から前記変化処理時間を減算する時間減算手段と、を含むものが好ましい。
【0032】
さらに、本発明に係る測距システムは、
前記サーバの前記変化処理時間記憶手段が、前記移動局の種類に対応した前記変化処理時間を記憶するものが好ましい。
【0033】
さらにまた、本発明に係る測距システムは、
前記サーバが、前記変化処理時間を算出する変化処理時間算出手段を含むものが好ましい。
【0034】
また、本発明に係る測距システムは、

前記移動局が、位置が既知である箇所に設置された位置既知移動局であり、
前記変化処理時間算出手段が、
前記基地局と前記位置既知移動局との間の距離に基づいて理論的に得られる理論往復伝搬時間と、
前記基地局と前記位置既知移動局との間で、実測して得られる実測往復伝搬時間と、の差に基づいて、前記変化処理時間を算出するものが好ましい。
【0035】
さらに、本発明に係る測距システムは、
前記実測往復伝搬時間が、前記基地局と前記位置既知移動局との間で、往復伝搬時間を複数回測定し、測定結果を統計処理したものであるものが好ましい。
【0036】
また、本発明に係る測位システムは、
所定の一の指令を示す基地局信号を送信する基地局と、
移動局信号を送信する移動局と、
前記基地局と通信可能に接続されたサーバと、を含み、
前記移動局は、前記一の指令を受信したことに基づいて、前記移動局信号の状態を変化させて送信し、
前記基地局は、前記移動局が前記一の指令を送信した第1の時刻と、前記基地局が前記移動局信号を受信して、前記移動局信号の状態の変化を検出した第2の時刻と、に基づいて前記基地局と前記移動局との間の往復伝搬時間を計測し、
前記第1の時刻を示す情報と前記第2の時刻を示す情報とを前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記基地局から送信された前記第1の時刻を示す情報と前記第2の時刻を示す情報とに基づいて前記往復伝搬時間を計測することを特徴とする。
【0037】
このようにすることで、基地局と移動局との間の時計合わせをすることなく、基地局と移動局との間の往復伝搬時間を測ることができる。また、基地局が複数ある場合であっても、基地局間の時計合わせをすることなく、複数の基地局の各々と移動局との間の往復伝搬時間を測ることができる。
さらに、基地局で受信した時間との双方を、基地局の時計で計るので、移動局の時計も要らないため、移動局の構成を簡略にできる。このように、測位システム全体の構成及び処理を簡略にできる。
【0038】
移動局信号の状態を変化させるだけなので、短時間に処理をすることができるので、直ちに変更でき、誤差を少なくして往復伝搬時間を測定できる。
【0039】
さらに、本発明に係る測位システムは、
前記基地局が、複数あり、かつ、その位置が既知であり、
前記サーバが、前記往復伝搬時間に基づいて前記基地局の各々と前記移動局との間の距離を算出して、前記距離と前記基地局の位置とから前記移動局の位置を算出するものが好ましい。
【0040】
基地局と移動局が1対1で通信して、それぞれの基地局と移動局との往復伝搬時間を計測するものが好ましい。また、移動局の内部処理時間を得ることなく移動局の距離を測定できる。誤差を少なくして往復伝搬時間を測定できるので、移動局の位置をより正確に算出することができる。
【0041】
さらにまた、本発明に係る測位システムは、
前記基地局と前記移動局との間の通信が、無線通信であるものが好ましい。
【発明の効果】
【0042】
移動局と基地局との間における通信に要した往復の伝搬時間を的確に測定でき、移動局の位置を的確に決定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。
【0044】
<<<<第1の実施の形態>>>>
図1は、本発明による測位システム又は測距システムの概要を示す図であり、図2は、測位システム又は測距システムの構成を示すブロック図である。本発明による測位システム又は測距システムは、移動局100と基地局200と測位サーバ300とを含む。これらによって、測位システム及び測距システムのいずれも構成することができる。
【0045】
測位システムとする場合には、基地局200に対する移動局100の位置を測定する。一方、測距システムとする場合には、基地局200と移動局100との間の距離を測定する。上述したように、本発明は、測位システムと測距システムとのいずれにも用いることができるが、以下では、簡略化のため、測距システムと称する。
【0046】
本実施の形態では、基地局200から移動局100への通信は、スペクトラム拡散通信によって行われ、移動局100から基地局200への通信は、スペクトラム拡散を用いない通常の通信によって行われる。なお、後述するように、移動局100から基地局200への通信もスペクトラム拡散通信によって行ってもよい。
【0047】
<<<測距システムの構成>>>
<<移動局100>>
移動局100は、その位置を変えることができるように構成されると共に、後述する基地局200との間で通信を行う。
【0048】
移動局100は、図2に示すように、受信用アンテナ102と、受信機104と、復調器106と、同期検出器108と、制御部110と、信号処理部112と、変調器114と、送信機116と、送信用アンテナ118とを含む。
【0049】
<受信用アンテナ102>
受信用アンテナ102は、基地局200から発せられた電波を受信する。この電波によって、後述する第1トリガー信号と第2トリガー信号とが、基地局200から送信されて、移動局100で送信される。なお、受信用アンテナ102で受信した第1トリガー信号と第2トリガー信号とは、基地局200の信号処理部212によって拡散処理され、変調器214によって変調された信号である。
【0050】
<受信機104>
受信用アンテナ102には、受信機104が電気的に接続されている。受信機104には、受信用アンテナ102が受信した電波が電気的な受信信号として供給される。
【0051】
受信機104は、平衡−不平衡変換器(図示せず)とバンドパスフィルター(図示せず)とを含む。平衡−不平衡変換器は、アンテナ系統のインピーダンスの整合を行うためのものである。また、バンドパスフィルターは、不要周波数帯からの混信を防ぐためのものである。
【0052】
<復調器106>
受信機104には、復調器106が電気的に接続されている。復調器106は、受信機104によって処理された第1トリガー信号と第2トリガー信号との復調(検波)を行う。復調は、基地局200において行われた変調に応じて行われ、周波数変調や位相変調や振幅変調や、これらを組み合わせた変調等に応じて行われる。この復調器106によって、復調された第1トリガー信号と第2トリガー信号とを得ることができる。
【0053】
<同期検出器108>
復調器106には、同期検出器108が電気的に接続されている。同期検出器108は、アナログデジタル変換部(図示せず)、拡散符号発生部(図示せず)、整合フィルタ部(図示せず)と、比較部(図示せず)とを含む。
【0054】
アナログデジタル変換部は、復調器106によって復調された第1トリガー信号と第2トリガー信号とを、所定のサンプリング周波数でデジタル信号に変換してデータ化する。
【0055】
拡散符号発生部は、基地局200で用いた拡散符号と同じ拡散符号を発生させる。基地局200における拡散符号発生部の構成と初期値の設定とを同じすることによって、基地局200において発生させる拡散符号と同一のものを発生させることができる。
【0056】
整合フィルタは、アナログデジタル変換部によってデータ化された第1トリガー信号と第2トリガー信号と、拡散符号発生部によって発生された拡散符号との自己相関値を算出する。上述したように、本実施の形態では、移動局100と基地局200との間の信号の送受信は、スペクトラム拡散通信によって行われる。基地局200は、スペクトラム拡散処理された信号を送信するので、移動局100では、上述した復調器106による復調だけでなく、スペクトラム拡散処理された信号を復調する、すなわち、逆拡散処理をする必要がある。
【0057】
比較部は、整合フィルタによって算出された自己相関値が最も大きくなるタイミングを得て、同期を検出する。このようにすることで、同期検出器108は、データ化された第1トリガー信号と第2トリガー信号とを復調(逆拡散処理)することができる。特に、基地局200においてスペクトラム拡散された第2トリガー信号を、移動局100において逆拡散をすることによって、移動局100は、第2トリガー信号を受信したタイミングを正確に検出することができる。
【0058】
<制御部110>
同期検出器108には、制御部110が電気的に接続されている。制御部110は、CPU(中央処理装置)と、ROM(リードオンリーメモリー)と、RAM(ランダムアクセスメモリー)とを含み、これらは、データ信号やアドレス信号を互いに送受信できるように入出力バスに電気的に接続されている。制御部110は、同期検出器108によって、復調された信号を検出して、基地局200から発せられた第1トリガー信号や第2トリガー信号を受信したか否かを判断する。
【0059】
具体的には、制御部110は、後述する図3のフローチャートの処理を実行する。制御部110のROMには、このフローチャートの処理を実行するためのプログラムが記憶されており、RAMには、このプログラムが実行されたときに用いられる変数等の値が記憶される。
【0060】
制御部110は、基地局200から送信された第1トリガー信号を受信したと判別したときには、応答信号の送信を開始するように制御する。制御部110は、応答信号の送信を開始した後、応答信号を連続的に継続して送信し続けるように制御する。さらにその後、制御部110は、第2トリガー信号を受信したと判別したときには、応答信号の状態を変化させるように制御する。応答信号の状態の変化は、例えば、振幅の変更や、周波数の変更や、位相の変更や、これらを組み合せた変更などがある。第2トリガー信号を受信したときには、応答信号は、連続的に継続して送信され続けるように制御されているので、その応答信号の状態を単に変化させる処理を行えばよく、新たな信号の送信を開始する処理を実行する必要はない。
【0061】
なお、図2に示した図では、制御部110は、同期検出器108と、後述する信号処理部112とに電気的に接続されているように示したが、制御部110は、移動局100における各種の制御をするものであり、これらについては省略した。
【0062】
<信号処理部112>
制御部110には、信号処理部112に電気的に接続されている。制御部110が、第1トリガー信号を受信したと判別したときには、制御部110から信号処理部112にその旨の制御信号が発せられる。この制御信号によって、信号処理部112は、第1のベースバンド信号、例えば、論理値「1」を示すベースバンド信号を連続的に生成する。これによって、論理値「1」を示す応答信号の送信が開始される。後述するように、この第1のベースバンド信号が、移動局100から送信する応答信号の変化前の信号をなす。
【0063】
また、制御部110が、第2トリガー信号を受信したと判別したときにも、制御部110から信号処理部112にその旨の制御信号が発せられる。この制御信号によって、信号処理部112は、第2のベースバンド信号、例えば、論理値「0」を示すベースバンド信号に切り替えて連続的に生成する。これによって、論理値「0」を示す応答信号の送信へ変更される。このようにして、移動局100は、第2トリガー信号を受信したことによって、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号へ切り替えて、移動局信号を送信することができる(図7(a)参照)。なお、図7(a)に示した例は、第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号との関係が、いわゆる振幅変調によるものの場合を示したが、周波数変調(図7(b)参照)や位相変調(図7(c)参照)によるものでもよい。これらの変調に関しては後述する。
【0064】
上述した第2のベースバンド信号は、第1のベースバンド信号を論理回路によって変換したものが好ましい。例えば、第1のベースバンド信号を乗算器などの論理回路によって変換した信号を第2のベースバンド信号とするのが好ましい。このようにすることで、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号への切り替えを速やかに行うことができ、移動局100の内部処理に要する時間を短くできるので、基地局200と移動局100との間における信号の往復伝搬時間を的確に測定することができる。後述するように、この第2のベースバンド信号が、移動局100から送信する応答信号の変化後の信号をなす。
【0065】
なお、第1のベースバンド信号を論理回路によって変換して第2のベースバンド信号を得る場合を示したが、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号への切り替えが高速で行うことができるものであればよく、第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号とを別個に予め生成しておき、スイッチング素子などで切り替えるようにしてもよい。このようにすることで、第2のベースバンド信号として予め生成されている信号を用いるので、指示を受けてから第2のベースバンド信号の生成を開始するものとは異なり、開始の処理を省くことができ、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号への切り替えを迅速に行うことができる。
【0066】
<変調器114>
信号処理部112には、変調器114が電気的に接続されている。変調器114は、信号処理部112で第1のベースバンド信号や第2のベースバンド信号を変調する。この変調は、基地局200で復調できるものであればよく、周波数変調や位相変調や振幅変調や、これらを組み合わせた変調等がある。
【0067】
<送信機116>
変調器114には、送信機116が電気的に接続されている。送信機116は、変調器114で変調された第1のベースバンド信号や第2のベースバンド信号を送信用に増幅して、送信用アンテナ118に供給する。このようにすることで、第1のベースバンド信号や第2のベースバンド信号が、応答信号として移動局100から電波で送信される。
【0068】
上述したように、移動局100は、送受信切り替えスイッチなどを用いた送受信を共通にした構成とせずに、受信部(受信用アンテナ102、受信機104、復調器106、同期検出器108)と、送信部(信号処理部112、変調器114、送信機116、送信用アンテナ118)とが独立した構成となっている。このように受信部と送信部とが独立した構成としたことにより、送信と受信とを切り替えるスイッチの動作を省くことができるので、第2トリガー信号を受信したときに、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号への切り替えだけでよいため、移動局100の内部の処理に要する時間を短くでき、基地局200と移動局100との間における信号の往復伝搬時間を的確に測定することができる。
【0069】
また、上述したように、第2のベースバンド信号を、第1のベースバンド信号を論理回路によって変換するようにした場合には、移動局100の内部の処理に要する時間をさらに短くでき、基地局200と移動局100との間の往復伝搬時間をより的確に測定することができる。
【0070】
<<基地局200>>
図1に示した例では、測距システムは、基地局200として、4つの基地局200a、200b、200c及び200dからなる。これらの基地局200a、200b、200c及び200dは、全て同じ構成である。以下では、特に、これらを区別する必要がない限り、代表して基地局200と称する。
【0071】
基地局200は、図2に示すように、受信用アンテナ202と、受信機204と、復調器206と、変化検出器208と、制御部210と、信号処理部212と、変調器214と、送信機216と、送信用アンテナ218と、時計部220と、メモリ部222と、インターフェース部224(以下、IF部224と称する。)とを含む。
【0072】
基地局200は、図2に示すように、受信用アンテナ202と、受信機204と、復調器206と、変化検出器208と、制御部210と、信号処理部212と、変調器214と、送信機216と、送信用アンテナ218との各々は、移動局100の受信用アンテナ102と、受信機104と、復調器106と、同期検出器108と、制御部110と、信号処理部112と、変調器114と、送信機116と、送信用アンテナ118と同じ構成である。
【0073】
<信号処理部212>
信号処理部212は、制御部210と電気的に接続されている。信号処理部212は、制御部210から発せられた制御信号に応じて、第1トリガー信号や第2トリガー信号をベースバンド信号として生成する。第1トリガー信号と第2トリガー信号とは、互いを識別できるような異なる任意の信号であればよい。
【0074】
第1トリガー信号は、基地局200が、測位サーバ300から送信された送信指示信号を受信したことを契機にして生成される。第2トリガー信号は、移動局100から送信された第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号とを受信し、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号に切り替わったときを検出したことを契機にして生成される。
【0075】
さらに、信号処理部212は、第1トリガー信号と第2トリガー信号との各々を、所定の拡散符号によって拡散処理をする。このようにすることで、第1トリガー信号と第2トリガー信号との各々を、スペクトラム拡散された信号に変換することができる。
【0076】
<変調器214>
信号処理部212には、変調器214が電気的に接続されている。変調器214は、信号処理部212から送られてきた第1トリガー信号と第2トリガー信号を変調する。この変調は、移動局100で復調できるものであればよく、周波数変調や位相変調や振幅変調や、これらを組み合わせた変調等がある。
【0077】
<送信機216>
変調器214には、送信機216が電気的に接続されている。送信機216は、変調器214で変調された第1トリガー信号や第2トリガー信号を送信用に増幅して、送信用アンテナ218に供給する。このようにすることで、第1トリガー信号や第2トリガー信号が、基地局200から電波として送信される。
【0078】
<受信用アンテナ202>
受信用アンテナ202は、移動局100から発せられた電波を受信する。この電波によって、上述した第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号とが、移動局100から送信されて、基地局200で受信される。なお、受信用アンテナ202で受信した第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号とは、移動局100の信号処理部112によって拡散処理され、変調器114によって変調された信号である。
【0079】
<受信機204>
受信用アンテナ202には、受信機204が電気的に接続されている。受信機204には、受信用アンテナ202が受信した電波が電気的な受信信号として供給される。なお、受信機204は、移動局100の受信機104と同様の構成を有する。
【0080】
<復調器206>
受信機204には、復調器206が電気的に接続されている。復調器206は、受信機204によって処理された第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号との復調(検波)を行う。復調は、移動局100において行われた変調に応じて行われ、周波数変調や位相変調や振幅変調や、これらを組み合わせた変調等に応じて行われる。この復調器206によって、復調された第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号とを得ることができる。
【0081】
<変化検出器208>
復調器206には、変化検出器208が電気的に接続されている。変化検出器208は、復調器206によって復調された第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号に切り替わったタイミングを検出する。
【0082】
例えば、図7(a)に示すように、第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号との関係が振幅変調によるものの場合には、復調器206から発せられた信号の電圧を監視し、電圧が変化したタイミングを検出することによって行う。例えば、スレッシュ電圧を予め設定しておき、復調器206から発せられた信号の電圧がスレッシュ電圧を横切ったタイミングを、電圧が変化したタイミングとすることができる。
【0083】
また、第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号との関係が、図7(b)に示す周波数変調によるものの場合や、図7(c)に示す位相変調によるものの場合には、変化検出器208として位相比較器を使用すればよい。位相比較器を用いる場合には、上述した第1のベースバンド信号と同じ波形を基準信号として基地局200において予め生成しておき、この基準信号と復調器206から発せられた信号とを比較する。復調器206から発せられる信号が、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号へ切り替わって、基準信号と第2のベースバンド信号とを比較したときには、位相のずれが生ずる。この位相のずれを検出することによって、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号に切り替わったタイミングを検出することができる。
【0084】
<制御部210>
変化検出器208には、制御部210が電気的に接続されている。制御部210は、CPU(中央処理装置)と、ROM(リードオンリーメモリー)と、RAM(ランダムアクセスメモリー)とを含み、これらは、データ信号やアドレス信号を互いに送受信できるように入出力バスに電気的に接続されている。制御部210は、変化検出器208によって、復調された信号を検出して、移動局100から発せられた第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号とを受信したか否かを判断する。
【0085】
具体的には、制御部210は、後述する図3のフローチャートの処理を実行する。制御部210のROMには、このフローチャートの処理を実行するためのプログラムが記憶されており、RAMには、このプログラムが実行されたときに用いられる変数等の値が記憶される。
【0086】
さらに、制御部210には、時計部220と、メモリ部222と、IF部224とが電気的に接続されている。
【0087】
制御部210は、移動局100から送信された第1のベースバンド信号を受信したこと、すなわち、変化検出器208によって第1のベースバンド信号が復調されたことに応じて、第2トリガー信号を送信すべきことを示す制御信号を信号処理部212に発する。このとき、時計部220によって時刻Ttを得て、時刻Ttをメモリ部222に記憶させる。このようにすることで、基地局200から第2トリガー信号を送信すると共に、第2トリガー信号を送信した時刻Ttを記憶することができる。
【0088】
また、制御部210は、移動局100から送信された第2のベースバンド信号を受信したこと、すなわち、変化検出器208によって第2のベースバンド信号が復調されたことに応じて、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号へ切り替わったときを検出して、時計部220によって時刻Tmを得て、時刻Tmをメモリ部222に記憶させる。このようにすることで、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号へ切り替わった時刻Tmを記憶することができる。
【0089】
IF部224は、後述する測位サーバ300のインターフェース部302(以下、IF部302と称する。)に電気的に接続されている。メモリ部222に記憶された第2トリガー信号を送信した時刻Ttと、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号へ切り替わった時刻Tmとを測位サーバ300に送信する。
【0090】
<<スペクトラム拡散通信による構成>>
上述した例は、移動局100から基地局200への通信をスペクトラム拡散通信でない通常の通信とした場合を示したが、移動局100から基地局200への通信も、スペクトラム拡散通信にしてもよい。移動局100から基地局200の通信もスペクトラム拡散通信にすることによって、通信の信頼性を高めることができる。
【0091】
<移動局100における処理>
このようにする場合には、まず、移動局100の信号処理部112において、生成した第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号との各々を、所定の拡散符号によって拡散処理をする処理を加える。このようにすることで、第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号との各々を、スペクトラム拡散された信号に変換することができる。
【0092】
また、移動局100の変調器114では、信号処理部112でスペクトラム拡散された第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号とを変調する。この変調は、基地局200で復調できるものであればよく、周波数変調や位相変調や振幅変調や、これらを組み合わせた変調等を行えばよい。
このようにすることで、移動局100は、スペクトラム拡散された第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号とを基地局200に送信する。
【0093】
<基地局200における処理>
さらに基地局200では、上述した復調器206と変化検出器208との間に、同期検出器(図示せず)を設ける。すなわち、復調器206に、この同期検出器を電気的に接続し、同期検出器に変化検出器208を電気的に接続する。
【0094】
同期検出器は、アナログデジタル変換部(図示せず)、拡散符号発生部(図示せず)、整合フィルタ部(図示せず)と、比較部(図示せず)と、同期追跡部(図示せず)とを含む。
【0095】
アナログデジタル変換部は、復調器206によって復調された第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号とを、所定のサンプリング周波数でデジタル信号に変換してデータ化する。
【0096】
拡散符号発生部は、移動局100で用いた拡散符号と同じ拡散符号を発生させる。移動局100における拡散符号発生部の構成と初期値の設定とを同じものにすることによって、基地局200でも移動局100で発生させる拡散符号と同一のものを発生させることができる。
【0097】
整合フィルタは、アナログデジタル変換部によってデータ化された第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号と、拡散符号発生部によって発生された拡散符号との自己相関値を算出する。上述したように、移動局100は、スペクトラム拡散処理された第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号とを送信するので、基地局200は、上述した復調器206による復調だけでなく、スペクトラム拡散処理された信号を復調する、すなわち、逆拡散処理をする必要がある。
【0098】
比較部は、整合フィルタによって算出された自己相関値が最も大きくなるタイミングを得て、同期を検出する。さらに、同期追跡部は、検出した同期を保持することによって、同期検出器は、データ化された第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号とを復調(逆拡散処理)することができ、元の第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号とに戻すことができる。
【0099】
このように元に戻された第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号とを用いて、変化検出器208によって、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号へ切り替わるタイミングを検出することができる。
【0100】
<<測位サーバ300>>
測位サーバ300は、IF部302と、演算部304と、メモリ部306とを含む。
【0101】
上述したように、IF部302は、基地局200のインターフェース部224に電気的に接続されている。図1に示すように、測位サーバ300は、4つの基地局200a、200b、200c及び200dの各々に、IF部302を介して通信可能に接続されている。
【0102】
測位サーバ300は、所定のタイミングで、4つの基地局200aと200bと200cと200dとのうちのいずれか1つを選択して、選択したものに送信指示信号を送信する。この送信指示信号を受信した基地局200は、移動局100に対して、第1トリガー信号を送信することで測距処理が開始される。この処理は、後述する図3のステップS11の処理で実行される。
【0103】
また、基地局200から送信された第2トリガー信号を送信した時刻Ttと、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号へ切り替わった時刻Tmとを受信する。
【0104】
IF部302は、演算部304に電気的に接続されている。演算部304は、第2トリガー信号を送信した時刻Ttと、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号へ切り替わった時刻Tmとに基づいて、往復伝搬時間ΔTを算出して、基地局200と移動局100との間の距離dを算出する。これらの往復伝搬時間ΔTの算出と、距離dの算出とについては、
【0105】
これらの処理は、後述する図3のステップS12及びS13の処理で実行される。
【0106】
演算部304は、メモリ部306に電気的に接続されている。メモリ部306は、演算部304で算出された往復伝搬時間ΔTと距離dとを記憶する。
【0107】
<<<測距システムの処理>>>
測距システムの処理を図3及び図4を用いて説明する。図3は、移動局100と基地局200と測位サーバ300との各々で処理される測距システムのサブルーチンを示すフローチャートである。また、図4は、移動局100と基地局200と測位サーバ300との各々における処理のタイムチャートである。
【0108】
以下においては、移動局100と基地局200と測位サーバ300との各々は予め起動されており、これらの移動局100と基地局200と測位サーバ300との各々では、制御に用いられる種々の変数の初期化等の起動処理を終えて定常動作しているものとする。また、この図3に示すフローチャートは、移動局100や基地局200や測位サーバ300における制御処理を実行するための1つの例を示したにすぎず、この処理手順には限られない。
【0109】
<第1トリガー信号の送信>
最初に、測位サーバ300は、4つの基地局200a、200b、200c又は200dのうちのいずれか1つを選択してトリガー信号を発すべき送信指示信号を基地局200に送信する(ステップS11)(図4の破線の矢印A参照)。
【0110】
基地局200が、測位サーバ300から送信された送信指示信号を受信したと判別したときには(図4の破線の矢印B参照)、基地局200は、移動局100に第1トリガー信号(Tr1)を送信する(ステップS21)(図4の破線の矢印C参照)。
【0111】
基地局200から送信される信号であって、第1トリガー信号(Tr1)を含む信号が、「基地局信号」に対応する。また、第1トリガー信号(Tr1)が、「他の指令」に対応する。
【0112】
<第1トリガー信号の受信>
移動局100は、基地局200から送信された第1トリガー信号(Tr1)を受信したか否かを判断する(ステップS31)。第1トリガー信号(Tr1)を受信していないと判別したとき(NO)には、直ちにサブルーチンを終了する。
【0113】
<応答信号の送信>
移動局100は、上述したステップS31の判断処理で、基地局200から送信された第1トリガー信号(Tr1)を受信したと判別したとき(YES)には、第1トリガー信号(Tr1)が自局に送信されたものであるか否かを判断する(ステップS32)。この判断をすることによって、移動局100が複数ある場合でも、所望する移動局100との間の通信を的確に行うことができる。第1トリガー信号(Tr1)が自局に送信されたものでないと判別したとき(NO)には、直ちにサブルーチンを終了する。
【0114】
移動局100が、上述したステップS32の判断処理で、第1トリガ信号(Tr1)が自局に送信されたものであると判別したとき(YES)には、基地局200へ応答信号の送信を開始して応答信号の送信を継続する(ステップS33)(図4の破線の矢印D参照)。この応答信号は、上述した第1のベースバンド信号であり、例えば、論理値「1」を示すベースバンド信号を連続的に継続して送信する。
【0115】
このように、移動局100は、基地局200から送信された第1トリガー信号(Tr1)を受信したことを契機にして、基地局200への応答信号の送信を開始する。この応答信号は、上述した第1のベースバンド信号や第2のベースバンド信号を含み、「移動局信号」に対応する。
【0116】
<応答信号の受信>
基地局200は、移動局100から送信された応答信号を受信したか否かを判断する(ステップS22)(図4の破線の矢印E参照)。移動局100から送信された応答信号を受信していないと判別したとき(NO)には、処理をステップS22に戻す。
【0117】
次いで、基地局200が、移動局100から送信された応答信号を受信したと判別したとき(YES)には、受信した応答信号が対象移動局から送信されたものであるか否かを判断する(ステップS23)。なお、移動局100から送信される応答信号には、その先頭部分に移動局100を識別するための情報が含まれており、この移動局100を識別するための情報以外は、第1のベースバンド信号や第2のベースバンド信号として一定の信号(論理値「0」や「1」)となっているものが好ましい。ステップS23の処理は、応答信号の先頭部分に含まれている移動局100を識別するための情報によって、対象移動局からの応答信号であるか否かを判別することができる。受信した応答信号が対象移動局から送信されたものでないと判別したとき(NO)には、処理をステップS22に戻す。
【0118】
<第2トリガー信号の送信>
基地局200が、受信した応答信号が対象移動局から送信されたものであると判別したとき(YES)には、移動局100に第2トリガー信号(Tr2)を送信する(ステップS24)(図4の破線の矢印F参照)し、第2トリガー信号(Tr2)を送信した時刻Ttを、時計部220から発せられている時刻情報から得て、メモリ部222に記憶させる(ステップS25)。
【0119】
このように、基地局200は、移動局100から送信された応答信号を受信したことを契機にして、移動局100に第2トリガー信号(Tr2)を送信する。基地局200から送信される信号であって、第2トリガー信号(Tr2)を含む信号も、「基地局信号」に対応する。また、第2トリガー信号(Tr2)が、「一の指令」に対応する。
【0120】
<第2トリガー信号の受信>
移動局100は、基地局200から送信された第2トリガー信号(Tr2)を受信したか否かを判断する(ステップS34)。第2トリガー信号(Tr2)を受信していないと判別したとき(NO)には、処理をステップS34に戻す。上述したように、第2トリガー信号(Tr2)も基地局200から送信されるときに、スペクトラム拡散されており、移動局100において逆拡散をすることによって、第2トリガー信号(Tr2)を受信したタイミングを正確に検出することができる。このようにすることで、移動局100で第2トリガー信号(Tr2)を受信してから、応答信号を変化させるのに要する変化処理時間Δt(後述)を、バラつきを少なくして一定に近づけることができるので、より正確な往復伝播時間ΔTを測定することができる。
【0121】
<応答信号の変化>
移動局100が、基地局200から送信された第2トリガー信号(Tr2)を受信したと判別したとき(YES)には、ステップS33の処理によって移動局100から送信し続けている応答信号の状態を変化させて、状態を変化させた応答信号を基地局200に送信し(ステップS35)(図4の破線の矢印G参照)、サブルーチンを終了する。この状態を変化させた後の応答信号が、上述した第2のベースバンド信号であり、例えば、論理値「0」を示すベースバンド信号を連続的に継続して送信する。応答信号の状態の変化は、第1のベースバンド信号を論理回路によって変換させて行うのが好ましい。この論理回路によって変換させたものが、第2のベースバンド信号となる。
【0122】
このように、移動局100は、基地局200から送信された第2トリガー信号(Tr2)を受信したことを契機にして、基地局200に連続的に送信していた応答信号の状態を変化させる。応答信号の状態の変化は、応答信号の送信を維持しつつ、応答信号の振幅、周波数又は位相、これらの組み合わせを変化させることであり、応答信号の送信を維持しつつ、応答信号の周期性を変更することである。
【0123】
<応答信号の変化の検出>
基地局200は、移動局100から送信され続けている応答信号を受信し続けており、この応答信号の状態が変化したかを判断する(ステップS26)。すなわち、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号に切り替わったタイミングを検出したか否かを判断する。
【0124】
この応答信号の状態の変化の検出は、以下のようにすることで、より正確に検出することができる。
【0125】
応答信号が振幅変調されている場合には、図7(a)に示すように、第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号とは、振幅が相違するように変調されているので、基地局200で受信した応答信号の電圧を監視し、電圧が変化したタイミングを検出することによって行う。例えば、スレッシュ電圧を予め設定しておき、応答信号の電圧がスレッシュ電圧を横切ったタイミングを検出する処理がある。このようにすることで、簡略化した処理で、タイミングを検出することができる。この処理は、簡略に行うことができるが、応答信号の電圧が変化し始めるタイミングを検出することができない。このため、望ましい処理は、応答信号を十分に細かい周期でサンプリングすることによって応答信号の電圧値を得て、応答信号の電圧が変化している途中の点を少なくとも2点サンプリングすることができれば、応答信号が変化し始めるタイミングを的確に検出することができる。このとき、サンプリングした点を用いて内挿することで、応答信号の電圧が変化し始めたタイミングを検出するようにしてもよい。このようにすることでサンプリングする数を減らすことができると共に、応答信号の電圧が変化し始めたタイミングを的確に検出することができる。
【0126】
また、応答信号が周波数変調されている場合や、位相変調されている場合には、位相比較器を使用すればよい。応答信号が周波数変調されている場合とは、図7(b)に示すように、第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号とが、周波数(周期、波長)が相違するように変調する場合である。また、応答信号が位相変調されている場合とは、図7(c)に示すように、第1のベースバンド信号の位相と、第2のベースバンド信号の位相とが、反転するように変調する場合である。
【0127】
上述した第1のベースバンド信号と同じ波形を、基地局200において予め生成しておき、この生成した信号と受信した応答信号と比較する。第2のベースバンド信号を受信することで、位相のずれが生ずるので、位相のずれを検出することによって、応答信号が変化し始めるタイミング、すなわち、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号に切り替わったタイミングを検出することができる。
【0128】
上述したステップS26の判断処理で、基地局200が、応答信号の状態が変化したと判別したとき(YES)には、そのタイミングの時刻Tmを、時計部220から発せられている時刻情報から得て、メモリ部222に記憶させる(ステップS27)。
【0129】
次いで、基地局200は、メモリ部222に記憶した2つの時刻TmとTtとを測位サーバ300に送信し(ステップS28)(図4の破線の矢印H参照)、サブルーチンを終了する。
【0130】
<往復伝搬時間及び距離の算出>
測位サーバ300は、基地局200から送信された2つの時刻TmとTtとを受信して、往復伝搬時間ΔTを、2つの時刻Tm及びTtと、変化処理時間Δtとから算出する(ステップS12)。このとき、式ΔT=Tm−Tt−Δtを用いて、往復伝搬時間ΔTを算出する。上述した変化処理時間Δtは、移動局100において、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号へ切り替えるときに要する時間である。上述したように、基地局200においてスペクトラム拡散された第2トリガー信号を、移動局100において逆拡散して、第2トリガー信号を受信したタイミングを検出しているので、移動局100では、第2トリガー信号を受信したタイミングを正確に検出することができる。また、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号へ切り替えは、第1のベースバンド信号を論理回路によって変換した信号を第2のベースバンド信号としているので、迅速に第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号へ切り替えることができる。このような処理を行っても切り替える処理をする以上、時間を要するので、この変化処理時間Δtを含めることによって、より精度を高くして往復伝搬時間ΔTを算出することができる。この変化処理時間Δtを予め測定しておき、既知の値として、測位サーバ300のメモリ部306に記憶させておくことで、測位サーバ300で、変化処理時間Δtを含めて、往復伝搬時間ΔTを算出することができる。また、変化処理時間Δtを予め記憶させておくのではなく、変化処理時間Δtを必要に応じて測定するようにしてもよい。この変化処理時間Δtを測定する処理については後述する(図5参照)。さらに、移動局100が複数機種ある場合には、機種毎の変化処理時間Δtをテーブルとして測位サーバ300のメモリ部306に記憶させておき、使用している機種に応じて、変化処理時間Δtを読み出して参照するようにしてもよい。
【0131】
次いで、測位サーバ300は、移動局100と基地局200との間の距離dを、往復伝搬時間ΔTと光束cとから算出して(ステップS13)、サブルーチンを終了する。このとき、式d=c×ΔTを用いて、距離dを算出する。
【0132】
以上の処理を実行することによって、移動局100と基地局200との間の距離dを算出することができる。
【0133】
上述した処理を、4つの基地局200a、200b、200c及び200dの各々について行うことで、4つの基地局200a、200b、200c及び200dの各々と、移動局100との間の距離を算出することができる。
【0134】
上述した処理をすることにより、基地局200が有する時計部220の時刻のみを用いて算出することができるので、基地局200と移動局100との間の時計合わせをすることなく、基地局200と移動局100との間の往復伝搬時間ΔTを測ることができる。また、基地局200が、基地局200a、200b、200c及び200dのように複数あるような場合であっても、複数の基地局の各々と移動局との間の往復伝搬時間ΔTを、複数の基地局の各々について別個に測定することができるので、複数の基地局同士の間の時計合わせをすることなく、往復伝搬時間ΔTを測ることができる。さらに、上述しように、基地局200が有する時計部220の時刻のみを用いて算出することができるので、移動局100に計時手段を設ける必要もなくすことができ、移動局100の構成や処理を簡略にすることができる。
【0135】
さらにまた、移動局100における処理は、応答信号の状態を変化させるだけなので、短時間に処理をすることができる。従来のシステムでは、移動局が基地局からのなんらかの指示を受けてから、発信情報を作って搬送波を作って発信するという処理を行っていたので、指示を受信してから発信するまでに複数の処理を行っており、処理に時間を要するとともに、処理を行う時間にばらつきが生じやすかった。これに対して、本願発明の処理は、上述したように、応答信号の状態を変化させる処理のみであるので、直ちに処理でき、誤差を少なくすると共にばらつきを一定にして往復伝搬時間を測定でき、往復伝搬距離を正確に得ることができる。
【0136】
<移動局100における変化処理時間Δtの処理>
図5は、移動局100における変化処理時間Δtを算出する処理を示すフローチャートである。この処理を実行するための前提として、基地局200からの距離(=L)が既知である箇所に移動局100を位置づけておく。
【0137】
最初に、基地局200において、上述した図3に示した測距のフローチャートに従って、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号へ切り替わった時刻Tmと、第2トリガー信号を送信した時刻Ttとを測定して、これらの値を測位サーバ300に送信する(ステップS41)。
【0138】
次に、測位サーバ300において、基地局200から送信された時刻Tmと時刻Ttとから、式Δt=(Tm−Tt)−2L/cを用いて算出し(ステップS42)、算出したΔtを測位サーバ300のメモリ部306に記憶させ(ステップS43)、本サブルーチンを終了する。
【0139】
このようにすることで、変化処理時間Δtを予め記憶させておくのではなく、変化処理時間Δtを必要に応じて測定して記憶させることができる。
【0140】
<<<<第2の実施の形態>>>>
<<<測位システムの処理>>>
上述した第1の実施の形態では、本願発明のシステムを、移動局100と基地局200との間を測定する測距システムとするものであった。上述したように、本願発明のシステムを、移動局100の位置を測定する測位システムとすることもできる。この第2の実施の形態は、本願の発明のシステムを測位システムとするものである。
【0141】
<<測位システムの概要>>
<測位システムの原理>
測位システムは、以下の3つの連立方程式を解くことによって、移動局100の座標を(x、y)を算出するものであり、この座標(x、y)を未知数とする。
(x−x1)+(y−y1)=(d1+s)
(x−x2)+(y−y2)=(d2+s)
(x−x3)+(y−y3)=(d3+s)
【0142】
ここで、基地局200aの座標を(x1、y1)、基地局200bの座標を(x2、y2)、基地局200cの座標を(x3、y3)とする。基地局200aと基地局200bと基地局200cとを、予め位置が解っている位置に位置づけることで、これらの座標を既知の定数とすることができる。
【0143】
さらに、移動局100と基地局200aとの間の距離をd1、移動局100と基地局200bとの間の距離をd2、移動局100と基地局200cとの間の距離をd3とする。これらの距離d1、d2及びd3は、例えば、第1の実施の形態で示したような測距システムなどを用いることによって測定することができるので、これらの距離も既知の定数とすることができる。
【0144】
さらにまた、移動局100の内部の処理に要する変化処理時間を、距離の次元に換算したものをs(以下、変化時間距離換算値sと称する。)とする。測位システムでは、この変化時間距離換算値sも未知数として、その値を求めることができる。
【0145】
すなわち、未知数は、移動局100の座標(x、y)と、変化時間距離換算値sとの3つであるので、3つの連立方程式を解くことで、これらのx、y、sを算出することができる。
【0146】
<測位システム>
上述したように、本願のシステムを測距システムとして用いることによって、移動局100と基地局200a,200b及び200cとの間の距離d1、d2及びd3を、往復伝搬時間の測定から算出することができる。また、上述した3つの連立方程式を解くことによって、変化時間距離換算値sも算出することができる。このため、上述した測距システムにおける移動局100の内部の処理に要する変化処理時間Δtを予め測定しておく必要はない。したがって、本願発明のシステムを測位システムとして用いる場合には、第1の実施の形態で示した図3のステップS12の処理、又は図5のステップS52の処理で用いた式ΔT=Tm−Tt−Δtの代わりに、Δtを除いた式ΔT’=Tm−Ttを用いればよい。上述したように、変化処理時間Δtを除いて得られた往復伝搬時間ΔT’を用いても、3つの連立方程式を解くことによって、移動局100の座標(x、y)を算出することができる。さらに、移動局100の内部の処理に要する変化処理時間Δtを、距離の次元に換算した変化時間距離換算値sも算出することができる。このように、本願のシステムを測位システムとして用いる場合には、変化処理時間Δtを予め測定して記憶させておく必要がなくなるので、処理や構成を簡略にすることができる。
【0147】
一方、本願のシステムを測位システムとして用いる場合にも、第1の実施の形態と同様に、変化処理時間Δtを予め測定して記憶させておくようにしてもよい。この場合には、図3のステップS12の処理、又は図5のステップS52の処理の式ΔT=Tm−Tt−Δtを用いて、往復伝搬時間ΔTを算出する。このようにした場合には、未知数は、移動局100の座標(x、y)の2つのみとなるので、2つの連立方程式を解くことで、移動局100の座標(x、y)を算出することができる。2つの連立方程式を解けば、移動局100の座標(x、y)を算出できるので、基地局の数を少なくとも2つにすることができる。このようにしても、本願のシステムを測位システムとして用いる場合には、構成や処理を簡略にすることができる。
【0148】
<<<<第3の実施の形態>>>>
<<<測距システムの処理>>>
図6は、第3の実施の形態による測距システムの処理を示すフローチャートである。第1の実施の形態では、測位サーバ300において、移動局100と基地局200との間の距離を算出するものであったが、この第3の実施の形態では、基地局200で移動局100と基地局200との間の距離を算出するものである。なお、図3に示したフローチャートと同様の処理については、同一の符号を付した。
【0149】
基地局200におけるステップS26までの処理は、図3に示したフローチャートと同様の処理を実行する。
【0150】
ステップS26の処理を実行した後、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号に切り替わったタイミングの時刻Tmを、時計部220から発せられている時刻情報から得る(ステップS51)。
【0151】
次いで、往復伝搬時間ΔTを、2つの時刻Tm及びTtと、変化処理時間Δtとから算出する(ステップS52)。このステップS52の処理は、図3のステップS12と同様に、式ΔT=Tm−Tt−Δtを用いて、往復伝搬時間ΔTを算出する。この時刻Ttは、第1の実施の形態と同様に、基地局200から移動局100に第2トリガー信号を送信した時刻である。また、変化処理時間Δtも、移動局100において、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号へ切り替えるときに要する時間である。
【0152】
次に、移動局100と基地局200との間の距離dを、往復伝搬時間ΔTと光束cとから算出して(ステップS53)、算出した距離dを測位サーバ300に送信し(ステップS54)、サブルーチンを終了する。
【0153】
このようにすることで、基地局200ごとに移動局100との間の距離dを算出することができるので、測位サーバ300における処理の負担を軽くすることができる。
【0154】
この第3の実施の形態では、変化処理時間Δtを基地局200のメモリ部222に予め記憶させておくことで、基地局200で往復伝搬時間ΔTを算出することができる。また、第1の実施の形態と同様に、変化処理時間Δtを予め記憶させておくのではなく、図5に示した処理を実行することによって測定するようにしてもよい。さらに、移動局100が複数機種ある場合にも、機種毎の変化処理時間Δtをテーブルとして基地局200のメモリ部222に記憶させておき、使用している機種に応じて、変化処理時間Δtを読み出して参照するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】測位システム又は測距システムの概要を示す図である。
【図2】測位システム又は測距システムの構成を示すブロック図である。
【図3】測距システムにおける処理を示すフローチャートである。
【図4】測距システムにおける処理のタイムチャートである。
【図5】移動局100における変化処理時間Δtを算出する処理を示すフローチャートである。
【図6】基地局で往復伝搬距離を算出して距離を算出する処理を示すフローチャートである。
【図7】振幅変調、周波数変調、位相変調によって、第1のベースバンド信号から第2のベースバンド信号へ切り替える具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0156】
100 移動局
200(200a,200b,200c,200d) 基地局
300 測位サーバ、測距サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の一の指令を示す基地局信号を送信する基地局と、
移動局信号を送信する移動局と、を含み、
前記移動局は、前記一の指令を受信したことに基づいて、既に送信を開始していた前記移動局信号の状態を変化させて送信することを特徴とする測距システム。
【請求項2】
前記基地局が、前記一の指令を送信した第1の時刻と、
前記基地局が、前記移動局信号を受信して、前記移動局信号の状態の変化を検出した第2の時刻と、に基づいて前記基地局と前記移動局との間の往復伝搬時間を計測し、
前記往復伝搬時間に基づいて前記基地局と前記移動局との間の距離を算出する請求項1に記載の測距システム。
【請求項3】
前記移動局信号は、連続的に発せられる信号、間歇的に発せられる信号、又はビーコン信号である請求項1に記載の測距システム。
【請求項4】
前記移動局は、前記移動局信号の位相、振幅及び周波数のうちの少なくとも1つを変化させる請求項1に記載の測距システム。
【請求項5】
前記一の指令は、スペクトラム拡散通信又は超広帯域無線通信によって送信される請求項1に記載の測距システム。
【請求項6】
前記移動局は、前記基地局信号を受信する受信部と、前記移動局信号を送信する送信部と、を有し、前記受信部と前記送信部とが互いに独立している請求項1に記載の測距システム。
【請求項7】
前記移動局において前記移動局信号の状態を変化させるのに要する変化処理時間を前記往復伝搬時間から減算する請求項2に記載の測距システム。
【請求項8】
前記基地局は、
前記変化処理時間を記憶する変化処理時間記憶手段と、
前記往復伝搬時間から前記変化処理時間を減算する時間減算手段と、を含む請求項7に記載の測距システム。
【請求項9】
前記基地局は、前記変化処理時間を算出する変化処理時間算出手段を含む請求項7に記載の測距システム。
【請求項10】
前記基地局は、前記一の指令を発するよりも以前に、前記一の指令と異なる他の指令を示す信号を前記基地局信号として送信し、
前記移動局は、前記他の信号を受信したことに基づいて、前記移動局信号の送信を開始する請求項1に記載の測距システム。
【請求項11】
前記基地局の前記変化処理時間記憶手段は、前記移動局の種類に対応した前記変化処理時間を記憶する請求項8に記載の測距システム。
【請求項12】
前記基地局と通信可能に接続されたサーバを含み、
前記基地局は、前記第1の時刻と前記第2の時刻とを計時する基地局計時手段を含み、
前記基地局は、前記第1の時刻を示す情報と前記第2の時刻を示す情報とを前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記基地局から送信された前記第1の時刻を示す情報と前記第2の時刻を示す情報とに基づいて前記往復伝搬時間を計測する請求項2に記載の測距システム。
【請求項13】
前記サーバは、前記第1の時刻と前記第2の時刻とを記憶する時刻記憶手段を含む請求項12に記載の測距システム。
【請求項14】
前記サーバは、
前記移動局において前記移動局信号の状態を変化させるのに要する変化処理時間を記憶する変化処理時間記憶手段と、
前記往復伝搬時間から前記変化処理時間を減算する時間減算手段と、を含む請求項12に記載の測距システム。
【請求項15】
前記サーバの前記変化処理時間記憶手段は、前記移動局の種類に対応した前記変化処理時間を記憶する請求項14に記載の測距システム。
【請求項16】
前記サーバは、前記変化処理時間を算出する変化処理時間算出手段を含む請求項14に記載の測距システム。
【請求項17】
前記移動局は、位置が既知である箇所に設置された位置既知移動局であり、
前記変化処理時間算出手段は、
前記基地局と前記位置既知移動局との間の距離に基づいて理論的に得られる理論往復伝搬時間と、
前記基地局と前記位置既知移動局との間で、実測して得られる実測往復伝搬時間と、の差に基づいて、前記変化処理時間を算出する請求項9又は16に記載の測距システム。
【請求項18】
前記実測往復伝搬時間は、前記基地局と前記位置既知移動局との間で、往復伝搬時間を複数回測定し、測定結果を統計処理したものである請求項17に記載の測距システム。
【請求項19】
所定の一の指令を示す基地局信号を送信する基地局と、
移動局信号を送信する移動局と、
前記基地局と通信可能に接続されたサーバと、を含み、
前記移動局は、前記一の指令を受信したことに基づいて、前記移動局信号の状態を変化させて送信し、
前記基地局は、前記移動局が前記一の指令を送信した第1の時刻と、前記基地局が前記移動局信号を受信して、前記移動局信号の状態の変化を検出した第2の時刻と、に基づいて前記基地局と前記移動局との間の往復伝搬時間を計測し、
前記第1の時刻を示す情報と前記第2の時刻を示す情報とを前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記基地局から送信された前記第1の時刻を示す情報と前記第2の時刻を示す情報とに基づいて前記往復伝搬時間を計測することを特徴とする測位システム。
【請求項20】
前記基地局は、複数あり、かつ、その位置が既知であり、
前記サーバは、前記往復伝搬時間に基づいて前記基地局の各々と前記移動局との間の距離を算出して、前記距離と前記基地局の位置とから前記移動局の位置を算出する請求項19に記載の測位システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−2886(P2009−2886A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165985(P2007−165985)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】