説明

湯水混合水栓

【課題】浄水カートリッジを内蔵しつつ、外観等が良く、有害物質の予定外の流出を抑制できる湯水混合水栓を提供する。
【解決手段】給湯路20と給水路21とを具備する水栓ボディ10と、給湯路20を通じて供給される湯と給水路21を通じて供給される水とを混合し、排出口30cを通じて排出可能な混合弁(第1の摺動弁装置30)と、水栓ボディ10から突出する状態に配設され、吐水口を開口させた吐水部材(吐水ヘッド60)と、浄水カートリッジ70とを備える。排出口30c及び吐水口を連絡するための原水用の通水路Gと、給水路21及び取入口を連絡するための浄水用の通水路Jと、が別々に設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水混合水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、湯水混合水栓において、浄水器(浄水カートリッジ)を一体化することが行われている。例えば、図11に示すように、水栓ボディ80と、水栓ボディ80の側部に一体化された浄水器82と、を備える湯水混合水栓が提案されている(特許文献1、以下、「従来例」という。)。この水栓ボディ80には、給湯源から給湯管81Hを用いて供給される湯と、給水源から給水管81Cを用いて供給される水とを混合可能な混合弁が内蔵されている(図示を省略)。また、浄水器82の内部には、浄水カートリッジ82cが収納されている。
【特許文献1】特開平9−228437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この従来例に係る湯水混合水栓では、浄水器82が水栓ボディ80に外付けされた状態となるため、外観(見栄え)が悪いという、問題点を有している。また、水栓ボディ80の側部に浄水器82を配設する分だけ、設置スペースが拡大するとう、問題点も有している。
【0004】
一方、本発明者は、かかる問題点を解決するために、以下に示すような「湯水混合水栓(以下、「改良例」という。)」を完成した。つまり、この改良例に係る湯水混合水栓は、図12及び図13に示すように、湯と水を混合可能な混合弁85aを内蔵すると共に支持部85bを備える水栓ボディ85と、この支持部85aによって着脱支持されるシャワーヘッド86と、混合弁85aの排出口に対して、始端部(1次側の端部)が接続されたシャワーホース88と、を備えている。
【0005】
この改良例に係るシャワーヘッド86は、略筒状の把持部86aと、頭部86bとを備えている。また、この把持部86a内には、浄水カートリッジ86jが遊入(遊びを持った状態で挿入)されていると共に、「把持部86aにおいて、浄水カートリッジ86jの配設部位よりも、1次側に位置する部位」に、シャワーホース88の終端部(2次側の端部)が接続されている。そして、把持部86aの内壁部と、浄水カートリッジ86jの外壁部との間に形成される環状の空間部を用いて、「原水用の吐水流路86d」が構成され、浄水カートリッジ86j内の空間部(浄化材が充填された空間部)によって、「浄水用の吐水流路86e」が構成される。
【0006】
また、頭部86bは、端部にシャワーフェイス(吐水口)86kを備えると共に、吐水流路(吐水流路86d、86e)等を選択するための弁装置86fを内蔵している。更に、この頭部86bの外面部からは、弁装置86fを操作するための操作ボタン86g、86hが、複数個、露呈している。そして、「原水吐水用の操作ボタン86g」を操作すると、「シャワーホース88を通じて供給される湯水」が、原水用の吐水流路86d、シャワーフェイス86kを通じて吐水される。一方、「浄水吐水用の操作ボタン86h」を操作すると、「シャワーホース88を通じて供給される湯水」が、浄水用の吐水流路86e、シャワーフェイス86kを通じて吐水される。
【0007】
このように、この改良例の湯水混合水栓は、シャワーヘッド86の先端の操作ボタン86g、86hによって、シャワーフェイス86kから吐水する湯水の種類(浄水と原水)を切り換える構造を備える。また、「原水用の吐水流路86d」及び「浄水用の吐水流路86e」の直前までの通水路が、「1本のシャワーホース88」で構成されている。このため、例えば、「混合弁85aから湯を排出させ、シャワーホース88からシャワーヘッド86に湯を供給している状態で、操作ボタン86g、86hの操作を間違った場合」や、「シャワーホース88内に湯が滞留している場合」等においては、「浄水カートリッジ86jの取入口861j」から「浄水カートリッジ86j内部」に向かって湯が進入することがある。
【0008】
かかる場合、この湯が、浄水カートリッジ86jを通過して、シャワーフェイス86kから吐水されることとなるが、その際、以下の不具合を生ずることがある。つまり、「浄水カートリッジ86jを構成する浄化材(活性炭等)に既に付着していた(吸着されていた)有害物質(トリハロメタン等)」が、浄水カートリッジ86j内を通過する湯と共に、シャワーフェイス86kから流出してしまう、不具合を生ずる可能性がある。
【0009】
以上のような事情より、この改良例に係る湯水混合水栓に対して、更に、改良を加えることが必要である。つまり、前述の従来例の問題点を解決しつつ、改良例の不具合を解消することが必要である。
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、浄水カートリッジを内蔵しつつ、外観(見栄え)が良く、設置スペースの省スペース化を図ることができると共に、有害物質の予定外の流出を抑制できる湯水混合水栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明の湯水混合水栓は、
給湯源に連絡される給湯路と給水源に連絡される給水路とを具備する水栓ボディと、
前記水栓ボディ内に配設され、前記給湯路を通じて供給される湯と前記給水路を通じて供給される水とを所定の混合割合にて混合し、排出口を通じて排出可能な混合弁と、
前記水栓ボディから突出する状態に配設されると共に、所定の部位に吐水口を開口させた吐水部材と、
前記吐水部材内において前記吐水口の開口部位よりも1次側に位置する箇所に配設されると共に、前記給水源から供給される水の取入部と、浄水処理された水の取出部とを具備する浄水カートリッジと、
を備える湯水混合水栓であって、
前記排出口及び前記吐水口を連絡するための原水用の通水路と、前記給水路及び前記取入部を連絡するための浄水用の通水路と、が別々に設けられたことを特徴とする。
【0012】
請求項1の発明の湯水混合水栓においては、吐水部材内に浄水カートリッジを配設するため、外観(見栄え)が良く、設置スペースの省スペース化を図ることができる。また、原水用の通水路と、浄水用の通水路とが隔離され、各々が専用の通水路とされるため、「原水用の通水路を通過する湯水」が、浄水カートリッジの取入部(例えば、取入口)に流入することはない。換言すると、給水路を経て「浄水用の通水路」に流入した「水」のみが、浄水カートリッジの取入部に流入することになる。従って、請求項1の発明の湯水混合水栓によると、「浄水カートリッジを構成する浄化材に付着していた有害物質(トリハロメタン等)が、吐水口から流出するという不具合」の発生を抑制すること(つまり、有害物質の予定外の吐水を抑制すること)ができる。
【0013】
ここで、本明細書において、「混合水」とは、「湯(給湯源から供給された湯)」及び「水(給水源から供給された水)を混合して生成される「湯水」を指す。また、本明細書において、「湯水」とは、「湯(給湯源から供給された湯)」、「水(給水源から供給された水)」、及び、「混合水」を指す。更に、「原水」とは、「浄水カートリッジ」や「浄水器」を通過せずに(浄化材で浄化されることなく)、吐水されることになる湯水(湯、水、若しくは、混合水)」を指し、「浄水」とは、「浄水カートリッジや浄水器を通過して吐水される湯水(湯、水、若しくは、混合水)」を指す。
【0014】
本明細書において、「浄化処理」とは、水道水中より、「カルキ分」等の不要成分や、トリハロメタン等の有害成分を除去して浄水とする処理等を指す。また、各請求項の発明の「浄水カートリッジ」は、浄化材のみで構成されてもよいし、この浄化材とこの浄化材を被覆する外装体とを備えてもよい、また、この「浄化材(ろ過材)」としては、(1)活性炭を用いて構成される浄化材、(2)中空糸膜と、活性炭を用いて構成される浄化材、(3)セラミックと、活性炭を用いて構成される浄化材、(4)逆浸透膜と、活性炭を用いて構成される浄化材、等を例示できる。
【0015】
各請求項の発明の「吐水部材」としては、吐水ヘッド(シャワーヘッド等)や、吐水管を例示できる。また、吐水口は、通常、「吐水部材」の端末部に設けられる。尚、吐水ヘッド(例えば、シャワーヘッド)においては、吐水口を吐水フェイス(例えば、シャワーフェイス)によって構成することができる。また、吐水口が複数の部分(以下、「吐水口部分」という。)によって構成される場合、全ての「吐水口部分」が、原水と浄水の吐水を行ってもよいし、原水を吐水するための吐水口部分と、浄水を吐水するための吐水口部分が別々とされてもよい。
【0016】
各請求項の発明においては、混合弁(つまり、温度調節用の弁装置)の態様は種々選択でき、摺動ディスクタイプ、サーモスタットタイプ、2ハンドルタイプ等の種々の混合弁を例示できる。また、この混合弁は、(i)「原水」の吐止水の選択を行うものであってもよいし、(ii)「原水の吐止水の選択」及び「原水の吐水量の選択」を行うものであってもよい。また、混合弁の2次側(原水用の通水路の途中、若しくは、吐水口の部分等)に配設された弁装置(吐止水弁)によって、(i)「原水」の吐止水の選択を行ったり、(ii)「原水の吐止水の選択」及び「原水の吐水量の選択」を行ってもよい。
【0017】
各請求項の発明においては、「浄水用の通水路」の1次側の端部を、給水路の中間部に常時連通させると共に、浄水用の通水路の中間部に、「浄水用の弁装置」を配設してもよい。この場合、「浄水用の弁装置」に操作(開閉操作)を施すこととで、(c)「浄水の吐止水の選択」を行ったり、(d)「浄水の吐止水の選択」及び「浄水の吐水量の選択」を行うこととしてもよい。つまり、この「浄水用の弁装置」に操作(開閉操作)を施すこととで、(c)「浄水用の通水路において、浄水用の弁装置の1次側に位置する部位」と、「浄水用の弁装置において、浄水用の弁装置の2次側に位置する部位」と、を択一的に連通させることとしてもよいし、(b)「浄水用の通水路において、浄水用の弁装置の1次側に位置する部位」と、「浄水用の弁装置において、浄水用の弁装置の2次側に位置する部位」との連通度合いを調節すること(非連通とすることも含む。)としてもよい。
【0018】
この「浄水用の弁装置」を用いる態様では、混合弁の1次側に、「常時、必要な量、給水圧の水」が待機しているため、「所定温度の混合水の吐水」を試みようとする場合、吐水口から吐水される混合水の温度を、直ぐに、所望の温度とすることができる。つまり、混合水の吐水の初期段階において、吐水口から、「予定外の熱湯(給湯源から供給されたままの湯、若しくは、それに近い温度の湯)」が吐水されることがない。
【0019】
また、各請求項の発明においては、給水路の中間部に、「給水路用の弁装置」を配設してもよい。つまり、給水路を、この中間部よりも1次側に位置する「1次側の給水路部」と、この中間部よりも2次側に位置する「2次側の給水路部」とに、便宜上、分けて考える。また、「1次側の給水路部」と、「2次側の給水路部」とを、「給水路用の弁装置」で接続すると共に、この「給水路用の弁装置」に、「浄水用の通水路」の一次側の端部を接続する。そして、この「給水路用の弁装置」に操作(開閉操作)を施すこととで、(a)「浄水の吐止水の選択」を行ったり、(b)「浄水の吐止水の選択」及び「浄水の吐水量の選択」を行うこととしてもよい。つまり、この「給水路用の弁装置」に操作(開閉操作)を施すこととで、(a)1次側の給水路部と、浄水用の通水路とを択一的に連通させることとしてもよいし、(b)1次側の給水路部と、浄水用の通水路との連通度合いを調節すること(非連通とすることも含む。)としてもよい。
【0020】
この「給水路用の弁装置」としては、(A)1次側の給水路部と2次側の給水路部とを連通させ、1次側の給水路部と浄水用の通水路とを非連通とする状態と、(B)1次側の給水路部と2次側の給水路部とを非連通とし、1次側の給水路部と浄水用の通水路と連通させる状態と、を択一的に実現する「切換弁」という。)」を例示できる。但し、この「給水路用の弁装置」は、1次側の給水路部と2次側の給水路部とを常時連通させつつ、1次側の給水路部と浄水用の通水路とを連通させたり、非連通とする「切換弁(以下、「後者の切換弁」という。)」であってもよい。尚、「後者の切換弁」によると、前述の「浄水用の弁装置を用いる態様」と同様に、2次側の給水路部に、「常時、必要な量、給水圧の水」が待機しているため、「所定温度の混合水の吐水」を試みようとする場合、吐水口から吐水される混合水の温度を、直ぐに、所望の温度とすることができる。
【0021】
請求項2の発明の湯水混合水栓は、請求項1に記載の湯水混合水栓において、
前記取出部及び前記吐水口を連絡する吐水路と、前記原水用の通水路とが所定の合流部において合流すると共に、
前記取出部と、前記合流部との間に逆止弁が配設されたことを特徴とする。
【0022】
請求項2の発明では、吐水路において、合流部と吐水口との間に位置する部分(以下、「共用路」という。)を、原水及び浄水が通過する。つまり、吐水部材の「内部流路の一部」を、原水吐水用及び浄水吐水用として兼用するため、その分、吐水部材の構造の簡略化を図ることができる。しかも、請求項2の発明では、逆止弁を備えるため、「共用路」内の原水が、「浄水カートリッジ」に向かって逆流することが防止できる。つまり、請求項2の発明によると、吐水部材の構造の簡略化を図りつつ、「原水の浄水カートリッジへの逆流」を防止することができる。
【0023】
請求項3の発明の湯水混合水栓は、請求項1に記載の湯水混合水栓において、
前記取出部及び前記吐水口を連絡する吐水路が、前記原水用の通水路と分離されて設けられていることを特徴とする。
【0024】
請求項3の発明では、吐水路と、原水用の通水路とが分離されているため、「原水用の通水路内の原水が、浄水カートリッジに向かって逆流すること」を確実に防止できる。
【0025】
請求項4の発明の湯水混合水栓は、請求項1〜3の何れかに記載の湯水混合水栓において、
前記水栓ボディは、上がり傾斜状に突出して、前記吐水部材の基端部を挿嵌状に支持する支持部を具備し、
該支持部の内部空間が隔壁を用いて、前記原水用の通水路の一部を構成する第1の通水路部と、前記浄水用の通水路の一部を構成する第2の通水路部とに区画され、
前記浄水カートリッジは、流入口を具備する外郭ケースに挿入された状態で前記吐水部材に遊入され、
前記流入口と前記第2の通水路部とが水密状に連結され、外郭ケースの外壁部と前記吐水部材の内壁部との間に形成された空間部が、前記第1の通水路部に水密状に連通することを特徴とする。
【0026】
請求項4の発明によると、「外郭ケース」を用いて、「原水用の通水路と、浄浄化材とを隔離するための隔壁」を構成する。従って、請求項4の発明によると、「吐水部材の内部空間を区画するための隔壁」を吐水部材に形成したり、吐水部材を2重管構造とすること等が必要とされないため、吐水部材の内部構造の簡略化を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、請求項1〜4の各発明によると、浄水カートリッジを内蔵しつつ、外観(見栄え)が良く、設置スペースの省スペース化を図ることができると共に、有害物質の予定外の流出を抑制できる湯水混合水栓を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本各発明に係わる「湯水混合水栓」の最良の形態(以下、「実施例」という。)を図面に従って詳細に説明する。
【0029】
この湯水混合水栓Sは、図1〜図3を用いて示すように、水栓ボディ10と、第1の摺動弁装置30と、第2の摺動弁装置50と、吐水ヘッド60と、浄水カートリッジ70と、を備えている。尚、図4に示すように、この湯水混合水栓Sは、デッキ部(流し台の天板等)D上に設置されて用いられる。また、給湯源H(給湯配管の端末部)と、給水源C(給水配管の端末部)は、デッキ部(流し台の天板等)Dの下方に到達している。
【0030】
水栓ボディ10は鋳物を用いて構成され、図1に示すように、略円柱形の外形を備える本体部11と、略筒状となりつつ、本体部11の外周部から上がり傾状に突出する支持部12と、略筒状とされつつ、本体部11の外周部から側方に突出する取付部(図3及び図6を参照)13と、を備えている。また、図3に示すように、支持部12の外周部には雌ねじ部12aが設けられている。そして、この雌ねじ部12aには、ナット型に構成されるスペーサ14が螺合されている。
【0031】
図3に示すように、支持部12の内部空間は、隔壁12bを用いて上下に分割されている。つまり、支持部12の内部空間は、隔壁12bの上方に位置する空間部分(以下、「上方空間部」という。)12uと、隔壁12bの下方に位置する空間部分(以下、「下方空間部」という。)12dとに分けられている。尚、この隔壁12bは、請求項4の発明の「隔壁」の具体例を構成する。また、「上方空間部」12uによって、請求項4の発明の「第1の通水路部」の具体例が構成され、「下方空間部」によって、請求項4の発明の「第2の通水路部」の具体例が構成される。
【0032】
「上方空間部12u」の全体が、支持部12の突端部において斜め上方に開放され、下方空間部12dの一部が、支持部12の突端部において斜め上方に開放されている。つまり、下方空間部12dは、「支持部12の軸心位置に設けられた略円柱状の被接続部12e」によって、斜め上方に開放されている。また、下方空間部12dの残りの部分(被接続部12eの設けられていない部分)には、略扇形状の蓋部12fが配設されている。更に、被接続部12eの中間部には装着溝が設けられ、この装着溝には、シール部材(パッキン等)12pが装着されている。
【0033】
図4に示すように、水栓ボディ10の内部には、給湯路20と、給水路21と、分岐流路23と、排出流路25とが設けられている。尚、本実施例では、水栓ボディ10内に設けられる空洞部(空間部)によって、内部流路(給湯路20、給水路21、分岐流路23、排出流路25)を形成するが、ホース、パイプ等の配管用部品を用いて、水栓ボディ10の内部流路を構成することもできる。
【0034】
図4に示すように、給湯路20は、1次側の端部20aを本体部11の下方側に配設し、2次側の端部20bを本体部11の上方側に配設している。そして、「給湯路20の1次側の端部20a」と、給湯源H(給湯配管の端末部)とは、給湯用の中継ぎ管26Hを介して接続されている。また、「給湯路20の2次側の端部20b」は、後述する「第1の摺動弁装置30」の給湯口30aに接続されている。
【0035】
図4に示すように、給水路21も、1次側の端部21aを本体部11の下方側に配設し、2次側の端部21bを本体部11の上方側に配設している。そして、「給水路21の1次側の端部21a」と、給水源C(給湯配管の端末部)とは、給水用の中継ぎ管26Cを介して接続されている。また、「給水路21の2次側の端部21b」は、後述する「第1の摺動弁装置30」の給水口30bに接続されている。
【0036】
第1の摺動弁装置30は、「混合弁」の具体例を構成するものであり、図3に示すように、本体部11の上端部側に配設されている。また、第1の摺動弁装置30の「排出口30c」は、図4に示すように、排出流路25の一次側の端部25aに接続されている。この第1の摺動弁装置30は、図3に示すように、固定弁体31と、固定弁体31上で摺動する可動弁体32とを備えている。
【0037】
第1の摺動弁装置30は、本体部11の上方に装着された操作レバー(図1を参照)35を用いて操作される。そして、この第1の摺動弁装置30は、給湯路20を通じて供給される湯と、給水路21を通じて供給される水とを所定の混合割合にて混合し、排出口30cを通じて、排出流路25に排出可能である。また、第1の摺動弁装置30は、給湯路20から供給される湯を、そのまま、排出流路25に排出したり、給水路21から供給される水を、そのまま、排出流路25に排出することもできる。
【0038】
排出流路25は、図3及び図4に示すように、第1の摺動弁装置30を起点として(1次側の端部として)下降する流路部25aと、上方空間部12u(第1の流路部25b)と、によって構成されている。この排出流路25の「2次側の端部25d」は、「上方空間部12uの上端部(開口部)」によって構成されている(図3を参照)。
【0039】
分岐流路23は、「浄水用の通水路J」の具体例を構成するものであり、図5に示すように、1次側の端部23aを給水路21の中間部に接続し、2次側の端部23bを「下方空間部12dの上端部(開口部)」によって構成している(図3を参照)。また、図6に示すように、取付部13の内部空間13aによって、分岐流路23の一部(1次側の端部23aに近接する部位)を構成している。尚、以下の説明において、この分岐流路23において内部空間13aよりも1次側に位置する部位を、弁前流路部23cと称し、内部空間13aよりも2次側に位置する部位を、弁後流路部23dと称することがある。
【0040】
第2の摺動弁装置50は、図6に示すように、取付部13(内部空間13a)に装着されている。この第2の摺動弁装置50は、ハウジング51と、ハウジング51内に配置される固定弁体52と、固定弁体52に対して摺動可能な可動弁体53とを備えている。
【0041】
ハウジング51は、導入口51aと導出口51bとを備え、導入口51aは、弁前流路部23cに向かって開口し(弁前流路部23cと接続され)、導出口51bは、弁後流路部23dに向かって開口している(弁後流路部23dと接続されている。)。
【0042】
第2の摺動弁装置50は、取付部13の側方に配置されるハンドル50hを用いて操作される。これにより、給水路21と弁後流路部23dとを遮断し、給水路21から弁後流路部23dに水が流入することを停止させたり、給水路21と弁後流路部23dとを連通させ、給水路21から弁後流路部23dに水を流入させる。また、弁前流路部23cと弁後流路部23dとの連通度合いを調節することで、給水路21から弁後流路部23dに流入する水量の調節が行われる。
【0043】
吐水ヘッド60は吐水部材の具体例を構成すると共に、図7に示すように、把持部61と頭部62とを備えている。また、この吐水ヘッド60は、後端部を支持部12によって支持されて、水栓ボディ10から突出する状態(斜め上がり傾斜状に突出する状態)に配設されている。尚、この吐水ヘッド60及びその構成部材においては、水栓ボディ10に「近接する側(つまり、通水方向に沿った1次側)」を「後」と称し、「水栓ボディ10から離間する側(つまり、通水方向に沿った2次側)」を「前」と称することがある。例えば、水栓ボディ10に「近接する側の端部」を「後端部」と称し、「水栓ボディ10から離間する側の端部」を「前端部」と称することがある。
【0044】
把持部61は、図7及び図8に示すように、内径及び外径が軸心方向に略一定とされた略円筒体によって構成されている。また、後端部(下端部)の内径は、前述のスペーサ14を嵌合可能なものとされている。更に、把持部61内には浄水カートリッジ70が配設されている。
【0045】
浄水カートリッジ70は、略円柱状の外形を備え、軸心を把持部61の軸心に揃えた状態で、把持部61内に挿入されている。この浄水カートリッジ70は、外郭ケース71内に挿入された状態とされている。
【0046】
外郭ケース71は、図9に示すように、後端部(下端部)に底部71aを備える「有底の略円筒形状」に構成されている。また、外郭ケース71の底部71aの中心部(外郭ケース71の軸心が通過する位置)には、底部71aを貫通する貫通孔71bが設けられている。また、底部71aの表面(外郭ケース71の表側に位置する面)において、貫通孔71bを周回状に包囲する箇所からは、略円筒状の接続部71cが突出している。この接続部71cは、図8に示すように、前述の被接続部12eを嵌入可能なサイズとされている。尚。この被接続部12eは、外郭ケース71の「流入口」の具体例を構成する。
【0047】
図9に示すように、外郭ケース71の前端側の部位は、内径及び外径が段差状に大きくされた大径部71dとされている。この大径部71dは、前述の把持部61に嵌合可能なサイズとされている(図8を参照)。また、外郭ケース71の外周部において、大径部71dの後方に位置する部位には鍔部71eが形成され、大径部71dの後端部と、鍔部71eとに形成される隙間部よって、外郭ケース71の外周部を周回する装着溝を構成している。そして、この装着溝には、シール部材(パッキン)71gが装着されている。
【0048】
浄水カートリッジ70は、図9に示すように、略円柱状に構成される浄化材72jと、浄化材72jの前半側を被覆する外装体72aとを備えている。また、外装体72aは、前端部に蓋部72cを備える略円筒状に構成されている。この蓋部72cの略中心部には、外装体72aの内外を連通させる取出口72fが形成されている。そして、この取出口72fは、浄水カートリッジ70の「取出部」の具体例を構成する。また、浄化材72jの後端面には、円板状の板部材72dが装着されている。そして、板部材72dには、その肉厚方向に連通する取入口72eが形成されている。そして、この取入口72eによって、浄水カートリッジ70の「取入部」の具体例を構成する。尚、本実施例において、取入口72e及び取出口72fは、浄化材72jから離間する方向に突出する略円筒状に形成されている。
【0049】
浄化材72jは、「前半部(吐水口に近接する側の部分)を構成しつつ、外装体72aで被覆される中空糸膜」と、「後半部(吐水口に離間する側の部分)を構成する繊維状活性炭」と、を備える。但し、繊維状活性炭は、その外周部を不織布を用いたフィルタ72gにより被覆された状態とされている。
【0050】
本実施例においては、図8に示すように、浄水カートリッジ70が外郭ケース71に対して嵌合されている。また、浄水カートリッジ70の取入口72eは、その突端部が、外郭ケース71の底部71aに当接すると共に、この取入口72eと被接続部12eとが同心状に位置合わせされ、互いに連通する。
【0051】
頭部62は、図7に示すように、屈曲状に構成され、内部に弁装置65を配設すると共に、この弁装置65を操作するための操作ボタン62aを外周部に露呈させている。また、頭部62の前端部は吐水フェイス62bによって構成されている。また、吐水フェイス62bは、中心部に位置する大型の貫通孔62cと、その周囲に位置する多数の貫通孔(図示を省略)とを備える。これらの貫通孔(62c等)は、吐水フェイス62bを肉厚方向に貫通する状態に設けられ、「吐水口」の具体例を構成している。
【0052】
操作ボタン62aは、この吐水口(多数の貫通孔62c)によって行われる吐水態様(原水の吐水態様)を選択するためのものである。つまり、操作ボタン62aの操作態様に応じて、「シャワー吐水」と、「泡沫吐水(泡を含んだ吐水)」とを択一的に実行することができる。
【0053】
また、頭部62の後端部には、略円筒状の接続部62gが設けられている。この接続部62gは、外郭ケース71の前端側に嵌合可能なサイズとされている。そして、外周部には周回状の装着溝が設けられ、この装着溝には、シール部材(パッキン)62iが装着されている。尚、頭部62の内部空間(接続部62gの入口から、吐水フェイス62bに到達するまでの空間)によって、共用路62jが構成される。この共用路62jは、吐水フェイス62bに到達する直前の原水と、吐水フェイス62bに到達する直前の浄水が通過する。
【0054】
図7に示すように、「把持部61の後端側」により、「スペーサ14が螺合された支持部12」を外嵌することで、吐水ヘッド60は水栓ボディ10に支持される。また、浄水カートリッジ70は、外郭ケース71に嵌合された状態で、把持部61内に配設される。その際、外郭ケース71は、その接続部71cに対して、水栓ボディ10の被接続部12eを嵌合すると共に、大径部71dを「把持部61のうちで、上端側に位置する部位」に当接させた状態で、把持部61内に配設される。尚、接続部71c及び被接続部12e間の水密性は、被接続部12eに装着されたシール部材(パッキン等)12pによって保持され、外郭ケース71及び把持部61間の水密性は、外郭ケース71に装着されたシール部材(パッキン)71gによって保持されている。また、外郭ケース71の把持部61の軸心方向に沿った位置決めは、接続部71cの後端面を、蓋部12fに当接させること等によって行われる。更に、頭部62は、その接続部62gを、外郭ケース71の前端側に嵌合することで、把持部61と一体化される。
【0055】
吐水ヘッド60が水栓ボディ10に支持されると、図8に示すように、外郭ケース71の外壁部と、把持部61との間に環状の空間部(以下、「中間通水路部」という。)67が形成される。この中間通水路部67は、「原水用の通水路Gの中間部」を構成する部分であり、その「1次側の端部(後端部)」が、前述の上方空間部(第1の通水路部)12uに連通している。また、この中間通水路67の「2次側の端部(前端部)」は、中継通水路部58(図4を参照)を介して共用路62jに接続されている。
【0056】
本実施例においては、図4に示すように、「原水用の通水路G」が、「水栓ボディ10内の排出流路25(流路部25a及び流路部25b)」と、「吐水ヘッド60内の流路部(中間通水路部67、中継通水路部58及び共用路62j)」とを接続して構成されている。そして、操作レバー35を用いて、第1の摺動弁装置30に開弁操作を施すと、「原水用の通水路Gを通過した原水A」が、吐水フェイス62bから吐水される。
【0057】
また、図5に示すように、「浄水用の通水路J」は、水栓ボディ10内の分岐流路23によって構成され、この浄水用の通水路Jの2次側の端部(被接続部12e)は、外郭ケース71の流入口(接続部71c)に水密状に接続されている。このため、本湯水混合水栓Sにおいては、「原水用の通水路G」と、「浄水用の通水路J」とは、隔離された状態(略水密状に隔離された状態)とされている。そして、ハンドル50hを用いて、第2の摺動弁装置50に開弁操作を施すと、「浄水用の通水路Jを通過した水」は、浄水カートリッジ70内を通過して浄水Bになった後、吐水路62t(後述する。)を経て、吐水フェイス62bから吐水される。
【0058】
本実施例の湯水混合水栓Sにおいては、吐水ヘッド60内に浄水カートリッジ70を配設するため、外観(見栄え)が良く、設置スペースの省スペース化を図ることができる。また、原水用の通水路Gと、浄水用の通水路Jとが隔離され、各々が専用の通水路とされるため、「原水用の通水路Gを通過する湯水」が、浄水カートリッジ70の取入口72eに流入することはない。換言すると、給水路21を経て「浄水用の通水路J」に流入した「水」のみが、浄水カートリッジ70の取入口72eに流入することになる。従って、本実施例の湯水混合水栓Sによると、「浄水カートリッジを構成する浄化材72jに付着していた有害物質(トリハロメタン等)が、吐水口から流出するという不具合」の発生を抑制することができる。
【0059】
また、本実施例によると、「外郭ケース71」を用いて、「原水用の通水路Gと、浄化材72jとを隔離するための隔壁を構成する。従って、吐水ヘッド60内の内部構造の簡略化を図ることができる。
【0060】
尚、本各発明の範囲は前記実施例に示す具体的な態様に限定されず、本各発明の範囲内で種々の変形例を例示できる。
【0061】
即ち、図10(a)に示す変形例1のように、請求項2の発明に従って、「浄水カートリッジ70の取出口72e」の2次側に、逆止弁78を配設してもよい。つまり、実施例と同様に、吐水ヘッド60において、「取出口72eと、吐水フェイス62b(吐水口)とを連絡する吐水路62t」と、「原水用の通水路G」とが、吐水ヘッド60内の合流部Hにおいて合流する。尚、合流部Hから吐水フェイス62b(吐水口)に至る流路部が、前述の共用路62jとなる。
【0062】
変形例1においては、吐水路62tのうちで、合流部Hよりも1次側に位置する部位(取出口72eと、合流部Hとの間に位置する部位)に、逆止弁78を配設している。そして、この変形例1によると、吐水ヘッド60の構造の簡略化を図りつつ、「原水の浄水カートリッジ70への逆流」を防止することができる。
【0063】
また、図10(b)に示す変形例2のように、請求項3の発明に従って、吐水ヘッド60において、「取出口72eと、吐水フェイス62b(吐水口)とを連絡する吐水路62t」と、「原水用の通水路G」とが分離されてもよい。この変形例2においても、原水用の通水路G内の原水が、浄水カートリッジ70に向かって逆流すること」を確実に防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、例えば、水栓の製造、販売、施工、加工等を行う分野で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例の湯水混合水栓の概略的な側面図である。
【図2】実施例の湯水混合水栓の正面図である。
【図3】実施例の湯水混合水栓の要部縦断面図である。
【図4】実施例の湯水混合水栓の流路構造を説明するための説明図である。
【図5】実施例の湯水混合水栓の流路構造を説明するための説明図である。
【図6】第2の摺動弁装置を説明するための縦断面図である。
【図7】実施例の湯水混合水栓の要部拡大縦断面図である。
【図8】実施例の湯水混合水栓の要部拡大縦断面図である。
【図9】実施例の吐水ヘッドの湯水混合水栓の要部分解縦断面図である。
【図10】(a)は変形例1を説明するための説明図であり、(b)は変形例2を説明するための説明図である。
【図11】従来例に係る湯水混合水栓を説明するための正面図である。
【図12】本発明者が、本出願前に発明した湯水混合水栓(改良例)を説明するための説明図である。
【図13】本発明者が、本出願前に発明した湯水混合水栓(改良例)の流路構造を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0066】
S;湯水混合水栓、
C;給水源、
H;給湯源、
G;原水用の通水路(排出流路25、中間通水路部67、中継通水路部58及び共用路62j)、
J;浄水用の通水路(分岐流路23)
H;合流部、
10;水栓ボディ、
30;第1の摺動弁装置(混合弁)、
12;支持部、
12d;下方空間部(第2の通水路部)、
12u;上方空間部(第1の通水路部)、
20;給湯路、
21;給水路、
60;吐水ヘッド(吐水部材)、
62c;貫通孔(吐水口)、
71;外郭ケース、
71c;接続部(流入口)、
72j;浄化材、
72e;取入口、
72f;取出口、
78;逆止弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯源に連絡される給湯路と給水源に連絡される給水路とを具備する水栓ボディと、
前記水栓ボディ内に配設され、前記給湯路を通じて供給される湯と前記給水路を通じて供給される水とを所定の混合割合にて混合し、排出口を通じて排出可能な混合弁と、
前記水栓ボディから突出する状態に配設されると共に、所定の部位に吐水口を開口させた吐水部材と、
前記吐水部材内において前記吐水口の開口部位よりも1次側に位置する箇所に配設されると共に、前記給水源から供給される水の取入部と、浄水処理された水の取出部とを具備する浄水カートリッジと、
を備える湯水混合水栓であって、
前記排出口及び前記吐水口を連絡するための原水用の通水路と、前記給水路及び前記取入部を連絡するための浄水用の通水路と、が別々に設けられたことを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項2】
前記取出部及び前記吐水口を連絡する吐水路と、前記原水用の通水路とが所定の合流部において合流すると共に、
前記取出部と、前記合流部との間に逆止弁が配設されたことを特徴とする請求項1に記載の湯水混合水栓。
【請求項3】
前記取出部及び前記吐水口を連絡する吐水路が、前記原水用の通水路と分離されて設けられていることを特徴とする請求項1に記載の湯水混合水栓。
【請求項4】
前記水栓ボディは、上がり傾斜状に突出して、前記吐水部材の基端部を挿嵌状に支持する支持部を具備し、
該支持部の内部空間が隔壁を用いて、前記原水用の通水路の一部を構成する第1の通水路部と、前記浄水用の通水路の一部を構成する第2の通水路部とに区画され、
前記浄水カートリッジは、流入口を具備する外郭ケースに挿入された状態で前記吐水部材に遊入され、
前記流入口と前記第2の通水路部とが水密状に連結され、外郭ケースの外壁部と前記吐水部材の内壁部との間に形成された空間部が、前記第1の通水路部に水密状に連通することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の湯水混合水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−208582(P2008−208582A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44898(P2007−44898)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000242378)株式会社ケーブイケー (130)
【Fターム(参考)】