説明

溶接部アンダーカット検査装置

【課題】溶接部のアンダーカットによる溶接欠陥の存在とその大きさを検出する簡易な溶接部アンダーカット検査装置を提供すること。
【解決手段】広がりを有する帯状のレーザ光Lを照射して被検査部10の形状を検出するための2次元変位計2と、検出データを基に被検査部の断面外形を演算するコントローラ3と、演算結果を表示するディスプレイ4とを有し、被検査部10の断面外形から母材と溶接ビードとの境界部分220に生じるアンダーカットを検出するものであり、コントローラ3は、断面外形によって特定される母材表面を示す母材線221と溶接ビード表面を示す溶接線225とを基に、母材線221から基準線230を求め、その基準線230に対する法線方向について溶接線の最大深さを算出するようにした溶接部アンダーカット検査装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接部のアンダーカットを発見するための検査装置であって、特にレーザ光を使用して自動的にアンダーカットによる溶接欠陥の存在とその大きさを検出する溶接部アンダーカット検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼橋では、鋼桁などを構成するのに鋼板同士を組み合わせて溶接接続が行われる。その場合、溶接ビードの表面にはアンダーカットによる欠陥が生じる可能性があるため検出が必要であり、更に欠陥の処理方法を確認するためにアンダーカットの深さを判定しなければならない。従来は、溶接作業者の目視によってアンダーカットの確認が行われ、計測器具を使用して深さが計測されていた。そうした中、溶接ビードのアンダーカットの自動検出が望まれており、種々提案がなされている。
【0003】
その一例として下記特許文献1を挙げることができる。同文献には、板状の母材同士の端縁が垂直に突き合わされて溶接された接合箇所を検査対象としたものが記載されている。この検査装置では、3次元レーザ変位計を用いて母材と溶接ビードの断面プロファイル(断面外形)が測定され、母材表面に対応する仮想直線の抽出や、その仮想直線同士の交点の特定が行われる。そして、ビード表面上の任意の点について仮想交点からの変位が求められ、その値に基づく溶接状態の良否の判断が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−302428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、検査を作業者が目視で行っていたのでは、アンダーカットの発見や深さの計測には熟練を要し、しかも0.1mm単位で良否を判断するため誤差が生じやすかった。この点、検査装置を使用した検査では正確な値を求めることができるが、その構成は様々なものが存在する。
本願発明は、自動検出装置の一つであって、従来とは異なる方法を採用したものであり、溶接部のアンダーカットによる溶接欠陥の存在とその大きさを検出する簡易な溶接部アンダーカット検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る溶接部アンダーカット検査装置は、溶接部を被検査部として広がりを有する帯状のレーザ光を照射し、反射光を受光して前記被検査部の形状を検出するための2次元変位計と、その2次元変位計から送られる検出データを基に前記被検査部の断面外形を演算するコントローラと、そのコントローラからの演算結果を表示するディスプレイとを有し、前記被検査部の断面外形から母材と溶接ビードとの境界部分に生じるアンダーカットを検出するものであり、前記コントローラは、前記断面外形によって特定される母材表面を示す母材線と溶接ビード表面を示す溶接線とを基に、前記母材線から基準線を求め、その基準線に対する法線方向について、当該基準線から前記溶接線の最大深さを算出するようにしたものであることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る溶接部アンダーカット検査装置は、前記コントローラが、前記母材線の一部について前記法線方向の値の平均値から基準線を求め、前記境界部分に位置する前記溶接線について、その最大深さを算出するようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る溶接部アンダーカット検査装置は、前記ディスプレイに、前記断面外形と、アンダーカット部分の前記最大深さの値と、その値が所定の基準値を超えた場合の印とを表示するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
よって、本発明によれば、作業者が目視で行う検査に比べて確実なアンダーカットの確認と、アンダーカットの正確な大きさを判断することができる。また、母材線と溶接線とを基に、母材線から基準線を求め、その基準線に対する法線方向に最大深さを算出するようにしたので、簡易な構成にすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】溶接部アンダーカット検査装置の実施形態を示すブロック図である。
【図2】被検査部にレーザ光を照射した検査状況を示した斜視図である。
【図3】溶接部アンダーカット検査装置によるアンダーカットの検出方法を概念的に示した図である。
【図4】境界部分の断面プロファイルを角度を変えて拡大表示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係る溶接部アンダーカット検査装置の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、溶接部アンダーカット検査装置を示すブロック図である。この溶接部アンダーカット検査装置(以下、単に「検査装置」とする)1は、レーザ光Lによって被検査部10の形状を検出するためのセンサヘッド2を備え、それにコントローラ3が接続されている。コントローラ3は、センサヘッド2から送られる検出データを演算処理するものであり、演算結果を表示するディスプレイ4が接続されている。
【0011】
センサヘッド2は、レーザダイオードから発せられたレーザ光Lが、投光レンズを通り被検査部10を照射され、反射したレーザ光Lが受光レンズを通って受光素子によって受光され、受光量に相当する電荷が画素構成部ごとに蓄積されて取り出される。コントローラ3は、マイクロプロセッサを有し、センサヘッド2に対してレーザダイオードの出力(発光量)を制御すると共に、受光素子によって読み出された信号から被検査部10の変位算出が行われる。
【0012】
検査装置1は、被検査部の断面プロファイルを測定するものであり、センサヘッド2は、図2に示すように被検査部に照射されるレーザ光Lを帯状にし、三角測距を幅に拡大している2次元三角測距方式を採用するものである。センサヘッド2は、シリンドリカルレンズにより帯状に広げられたレーザ光Lが被検査部の表面で拡散反射し、その反射光を受光素子で結像する。そうしたセンサヘッド2からのアナログ信号はコントローラに取り込まれ、増幅器で増幅され変換手段によってデジタル信号に変換される。これにより受光画像が得られると共に、画像処理部によって断面プロファイルが生成され、この画像データがディスプレイ4に表示される。
【0013】
ここで、図3は、検査装置1によるアンダーカットの検出方法を概念的に示した図である。本実施形態でアンダーカットを検査する被検査部は、図2に示すように、縦鋼板21に横鋼板22を直交するように突き当て、その横鋼板22の突き当て部分を溶接によって接合した接合部20である。溶接ビード25の長手方向(接合方向)をX軸とし、そのX軸に直交する縦鋼板21および横鋼板22の表面に沿った方向をそれぞれY軸、Z軸とする。Y軸およびZ軸方向を溶接ビード25の幅方向とした場合、その幅方向両端にアンダーカットが生じ得るため、その位置を被検査部としている。図3に表示された線は、図2のP部を幅方向に切断した断面プロファイルであり、縦鋼板21と溶接ビード25の表面を示した母材線221と溶接線225である。
【0014】
この場合、母材線221と溶接線225に示すように、縦鋼板21と溶接ビード25によって角度が変化する位置、すなわち縦鋼板21と溶接ビード25の境界部分220にアンダーカットが生じる。そこで、前述したように接合部20の断面プロファイルが生成した場合、本実施形態では、母材線221と境界部分220を対象として、図3に一点鎖線で示すように第1エリア31と第2エリア32が設定され、アンダーカット部228の深さが算出される。このときディスプレイ4には、母材線221と境界部分220および第1エリア31と第2エリア32が表示されている。
【0015】
ここで、図4は、境界部分220の断面プロファイルを角度を変えて拡大表示した図である。先ず、断面プロファイルから第1エリア31の母材線221について高さ方向(Z軸方向)の平均値が求められる。この場合、図2に示すように母材線221は縦鋼板21に沿ってY軸方向に平行であり、Z軸に直交している。第1エリア31の母材線221についてZ軸方向の平均値を出し、その値を高さ方向(Z軸方向)の基準値とする。従って、基準値においてY軸と平行に引いた線が縦鋼板21の表面を示す基準線230となる。そして、その基準線230からどれだけの距離を有しているかによってアンダーカット部228の深さが算出される。
【0016】
第2エリア32内では、その部分の断面プロファイルを基に基準線230から母材線221や溶接線225までの法線方向(Z軸方向)の距離が算出される。これによって、図4に示すようにアンダーカット部228の最も深い基準線230からの最大深さHmaxを求めることができる。ここで求められた最大深さHmaxの数値は、図3に示す断面プロファイルとともにディスプレイ4に表示される。また、鋼橋の場合、例えばアンダーカットの深さが0.3mmまでが許容できる値であるため、アンダーカット部228の最大深さHmaxが0.3mmを超える場合には、ディスプレイ4に「NG」が表示されるようになっている。
【0017】
図3及び図4では、図2に示す溶接ビード25のY軸方向の端部に生じるアンダーカットについて説明したが、反対のZ軸方向の端部に生じるアンダーカットも同様に計測される。すなわち、図は省略するが、当該境界部分の断面プロファイルにより、第1エリアで横鋼板22の母材線から高さ方向(Y軸方向)の平均値によって基準線が求められ、第2エリアにおいて、基準線からアンダーカットの深さが算出される。そして、同様にディスプレイ4には、横鋼板22と溶接ビード25の表面を示した母材線と溶接線、および最大深さHmaxなどが表示される。更に、センサヘッド2は、溶接ビード25に沿ってX軸方向に直線移動し、その間に前述したアンダーカットの計測が繰り返し行われる。
【0018】
よって、本実施形態の検査装置1によれば、作業者が目視で行う検査に比べて確実なアンダーカットの確認と、アンダーカットの正確な大きさを判断することができ、また基準を超える深さのアンダーカットには「NG」表示がでることで判断も容易になる。
また、母材と溶接ビードとの境界部分を検査箇所とし、図3に示すように第1エリア31と第2エリア32とを特定し、基準線230から法線方向の距離を計測する方法を採用したことにより、簡易な構成にすることができた。
【0019】
本発明に係る溶接部アンダーカット検査装置の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 溶接部アンダーカット検査装置
2 センサヘッド
3 コントローラ
4 ディスプレイ
10 被検査部
21 縦鋼板
22 横鋼板
25 溶接ビード
220 境界部分
221 母材線
225 溶接線
228 アンダーカット部
230 基準線
L レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接部を被検査部として広がりを有する帯状のレーザ光を照射し、反射光を受光して前記被検査部の形状を検出するための2次元変位計と、その2次元変位計から送られる検出データを基に前記被検査部の断面外形を演算するコントローラと、そのコントローラからの演算結果を表示するディスプレイとを有し、前記被検査部の断面外形から母材と溶接ビードとの境界部分に生じるアンダーカットを検出する溶接部アンダーカット検査装置において、
前記コントローラは、前記断面外形によって特定される母材表面を示す母材線と溶接ビード表面を示す溶接線とを基に、前記母材線から基準線を求め、その基準線に対する法線方向について、当該基準線から前記溶接線の最大深さを算出するようにしたものであることを特徴とする溶接部アンダーカット検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載する溶接部アンダーカット検査装置において、
前記コントローラは、前記母材線の一部について前記法線方向の値の平均値から基準線を求め、前記境界部分に位置する前記溶接線について、その最大深さを算出するようにしたものであることを特徴とする溶接部アンダーカット検査装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する溶接部アンダーカット検査装置において、
前記ディスプレイに、前記断面外形と、アンダーカット部分の前記最大深さの値と、その値が所定の基準値を超えた場合の印とを表示するものであることを特徴とする溶接部アンダーカット検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−191161(P2011−191161A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57103(P2010−57103)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】