説明

溶融精製及び運搬システム

溶融液を精製するための装置が開示される。チャンバ内の溶融液の第一の部分は、第一の方向で凝固する。第一の部分の一部は、第一の方向で溶融する。該溶融液の第二の部分は、凝固されたままである。溶融液はチャンバから流れ、該第二の部分はチャンバから除去される。凝固は、溶融液及び第二の部分の溶質を濃縮させる。第二の部分は、高溶質濃度を有するスラグとすることができる。このシステムは、他の部品、例えばポンプ、フィルタ又は粒子トラップを有するシート形成装置に組み込まれることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、溶融液からのシート形成、より詳細には、溶融液からシートを形成する際に使用する精製システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウエハ又はシリコンシートは、例えば、集積回路又は太陽電池の産業で使用され得る。再生可能なエネルギー源の需要が増加するにつれて、太陽電池の需要は増加し続ける。これらの需要が増加するにつれ、太陽電池産業の一つの目標は、コスト対電力比を低下させることである。太陽電池には、シリコン及び薄膜の2種類の太陽電池がある。多くの太陽電池は、シリコンウエハ、例えば単結晶シリコンウエハから製造される。現在、結晶シリコン太陽電池にかかる主なコストは、太陽電池が製造されるウエハである。太陽電池の効率又は標準照明下で生成される電力量は、一つには、このウエハの品質によって制限される。品質を下げること無くウエハの製造コストを低減することは、コスト対電力比を低下させて、このクリーンエネルギー技術の使用可能性をさらに広げることができる。
【0003】
シリコン太陽電池の最高効率は、20%超の効率の良さである。これらは、電子グレードの単結晶シリコンウエハを用いて作られる。このようなウエハは、チョクラルスキー法を用いて、単結晶シリコンが成長した円筒状のブールから薄いスライスを切断することにより作られる。これらのスライスは、200μm未満の厚さとすることができる。単結晶成長を維持するためには、ブールは、例えば溶融液を含むルツボから10μm/s未満の速度で、ゆっくり成長させなければならない。続く切断工程は、ウエハ毎に、略200μmの切断ロス又は切断刃の幅によるロスにつながる。円筒状のブール又はウエハはまた、四角形の太陽電池を製造するために、四角状にされる必要があるかもしれない。四角形にすること及び切断ロスの両方とも、材料浪費及び材料コストの増加につながる。太陽電池が薄くなるにつれて、切断毎のシリコン浪費のパーセンテージは増加する。しかしながら、インゴットのスライス技術の限界は、より薄い太陽電池を得る能力を妨げうる。
【0004】
他の太陽電池は、多結晶シリコンインゴットから切断されたウエハを用いて製造される。多結晶シリコンインゴットは、単結晶シリコンより速く成長させることができる。しかしながら、より多くの欠陥及び粒界が存在するため、結果として生じるウエハの品質は低く、この低品質のウエハにより、太陽電池の効率は低下する。多結晶シリコンインゴットへの切断工程は、単結晶シリコンインゴット又はブールと同じ程度に非効率的である。
【0005】
シリコンの浪費を減少することができる他の方法は、イオン注入後のシリコンインゴットからウエハを劈開することである。例えば、シリコンインゴットの表面下に、水素、ヘリウム又は他の希ガスイオンが注入し、注入領域を形成する。その後熱処理、物理的処理、又は化学的処理が行われ、この注入領域に沿ってインゴットからウエハを劈開する。イオン注入によって劈開することにより、切断ロスが生じることなくウエハを製造することができるが、この方法がシリコンウエハを経済的に製造するために採用され得ることは、未だ証明されていない。
【0006】
さらに他の方法は、溶融液からシリコンの細いリボンを垂直に引き上げ、その後、引き上げられたシリコンが冷却され、シートへ凝固可能な方法である。この方法の引き上げ速度は、18mm/min未満に制限されうる。シリコンの冷却及び凝固の間の除去された潜熱は、垂直なリボンに伴って除去されなければならない。これは結果として、リボンに伴う大きな温度勾配となる。この温度勾配は、結晶シリコンリボンに対して応力を加え、その結果、低品質の多粒子シリコン(multi-grain silicon)となる可能性がある。リボンの幅及び厚みはまた、この温度勾配によって制限されることができる。例えば、幅は80mm未満に制限され、厚みは180μmに制限されうる。
【0007】
溶融液から物理的に水平に引き出されたシリコンのリボンもまた、試験されている。一つの方法では、ロッドに取り付けられたシードが溶融物に挿入され、該ロッド及び結果として生じるシートが、るつぼ端の上で、低い角度で引き出される。溶融物がルツボからこぼれるのを防ぐように、角度及び表面張力はバランスが取られる。しかしながら、このような引っ張り工程を開始し、制御することは難しい。シードを挿入するためには、ルツボ及び溶融物に接近されなければならず、これは結果として熱ロスになり得る。追加の熱が、この熱ロスを補償するためにルツボに加えられることができる。これによって、非層流の流れを引き起こし得る、溶融物における垂直な温度勾配を生じることができる。また、るつぼ端で形成されるメニスカスの重力及び表面張力のバランスを取るために、おそらく難しいであろう、傾斜角度の調整が行われなければならない。さらにまた、熱は、シート及び溶融物の分離点で除去されるため、潜熱として除去されている熱と、顕熱として除去されている熱と、が急転する。これにより、この分離点で、リボンに沿って大きな温度勾配が生じ、結晶中の転位を引き起こす場合がある。転位及び歪み(warping)は、シートに沿ったこれらの温度勾配によって起こり得る。
【0008】
余水路(spillway)を用いるような、溶融液から水平に分離された薄いシートの製造は、未だ行われていない。溶融液から分離によって水平にシートを製造することは、インゴットからスライスされたシリコンよりも安価であり、また、切断ロス又は四角形にすることによるロスをなくすことができる。溶融液から分離によって水平に製造されたシートはまた、水素イオンを用いてインゴットから切断されたシリコン、又は、他の引き出されたシリコンリボンの方法よりも安価にすることができる。さらに、溶融液からシートを水平に分離することは、引き出されたリボンと比較して、シートの結晶品質を改善することができる。このような材料コストを低減できる結晶の成長方法は、シリコン太陽電池のコストを低減するための主な実現ステップとなるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それでもまだ、不純物または溶質が、溶融液中に堆積する可能性がある。従って、当技術分野においては、溶融液を精製するための改良された装置及び方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の態様によれば、精製方法が提供される。当該方法は、チャンバ内の溶融液の第一の部分を、第一の方向に凝固するステップを含む。第一の部分の一部は、第一の方向に溶融される。溶融液の第二の部分は、凝固されたままである。チャンバから流れる溶融液と第二の部分は、チャンバから除去される。
【0011】
本発明の第二の態様によれば、溶融液を精製する装置が提供される。当該装置は、キャビティを画定しているチャンバを含む。チャンバはまた、注入口及び放出口を画定する。装置はまた、クーラーと、ヒーターと、チャンバに沿って該クーラー及びヒーターを第一の方向に並進する並進機構とを含む。
【0012】
本発明の第三の態様によれば、シートを形成する装置が提供される。当該装置は、溶融液を形成するように構成されるるつぼを含む。第一のポンプは、るつぼと流体連結する。精製システムは、第一のポンプと流体連結する。第二のポンプは、精製システムと流体連結する。前記第二のポンプと第一のパスに沿って流体連結するシート形成装置は、溶融液を凝固してシートを形成するように構成される。シート形成装置は、溶融液を保持するように構成されるチャネルを画定する容器と、上記溶融液上に配置される冷却板を含む。
【0013】
本発明をより理解するために、添付の図面が参照され、参照により本願発明に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】溶融液からシートを切り離す装置の一例の側面断面図である。
【図2】溶融液からシートを切り離す装置の一例の側面断面図である。
【図3】ポンプの一例の側面断面図である。
【図4】4A〜4Dは、図3の例のポンプを用いたポンピングの側面断面図である。
【図5】フィルタのブロック図である。
【図6】粒子トラップの第一実施形態の側面断面図である。
【図7】粒子とラップの第二実施形態の側面断面図である。
【図8】精製システムの第一実施形態の斜視図である。
【図9】9A〜9Fは、図8の精製システムを用いた精製工程の段階の正面断面図である。
【図10】精製システムの第二実施形態の正面断面図である。
【図11】精製システムの第三実施形態の正面断面図である。
【図12】溶質濃度を比較したグラフである。
【図13】シート形成システムの第一実施形態のブロック図である。
【図14】シート形成システムの第二実施形態のブロック図である。
【図15】シート形成システムの第三実施形態のブロック図である。
【図16】溶融液からシートを切り離す装置の第一実施形態の上面図である。
【図17】溶融液からシートを切り離す装置の第二実施形態の上面図である。
【図18】シート形成システムの第四実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願明細書において、装置及び方法の実施形態は、太陽電池と関連して記載されている。しかしながら、これらはまた、例えば、集積回路、フラットパネル又は当業者にとって公知の他の基板を製造するために用いられることができる。さらに、本願明細書において、溶融液はシリコンであるとして記載されているが、当該溶融液には、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、ガリウム、窒化ガリウム、他の半導体物質又は当業者に公知の他の材料を含むことができる。このように、本発明は、以下に記載する特定の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、溶融液からシートを切り離す装置の一実施形態の側面断面図である。シート形成装置21は、容器16と、パネル15及び20とを有している。容器16と、パネル15及び20は、例えば、タングステン、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、モリブデン、黒鉛、炭化ケイ素又は石英とすることができる。容器16は、溶融液10を含むように構成される。溶融液10はシリコンとすることができる。一実施形態では、溶融液10は、供給部11によって補充されることができる。供給部11は、固体シリコン、又は、固体シリコンゲルマニウムを含むことができる。他の実施形態では、溶融液10は、容器16へポンプで供給されることができる。シート13は、溶融液10上に形成される。一例を挙げると、シート13は、溶融液10中で少なくとも部分的に浮く。図1では、シート13は溶融液10中で浮くように例示されているが、シート13は、少なくとも部分的に溶融液10中に沈むか又は溶融液10上に浮くことができる。一例を挙げると、シート13の10%だけが、溶融液10の最上面より上に突出する。溶融液10は、装置21内で循環することができる。
【0017】
この容器16は、少なくとも一つのチャネル17を確定する。このチャネル17は溶融液10を収容するように構成され、溶融液10は、チャネル17の第一の位置18から第二の位置19まで流れる。一例を挙げると、チャネル17内の環境は、溶融液10での波動を防止するために静止している。溶融液10は、例えば圧力差、重力、電磁流体力学駆動、スクリューポンプ及びインペラポンプ、ホイール又は他の運搬方法によって流れることができる。溶融液10は、その後、余水路12を越えて流れる。この余水路12は、傾斜路、堰、小さいダム又はコーナーとすることができ、図1に示される実施形態に制限されない。余水路12は、シート13が溶融液10から切り離されることを可能にするように、任意の形状とすることができる。
【0018】
パネル15は、この特定の実施形態では、溶融液10の表面より下に部分的に延びるように構成される。これにより、溶融液10上でシート13を形成する際に、波又は波動が、シート13を妨害するのを防止することができる。これらの波又は波動は、供給部11からの追加的な溶融材料、ポンピング又は当業者にとって公知の他の要因によって形成される可能性がある。
【0019】
一つの特定の実施形態では、容器16とパネル15及び20は、約1687K(1413.85℃)よりも僅かに上の温度に維持されることができる。シリコンにとって1687K(1413.85℃)は、凝固点または界面温度を表す。容器16とパネル15及び20の温度を、溶融液10の凝固点よりも僅かに上の温度に維持することによって、冷却板14は、溶融液10上の又は溶融液10中のシート13の所望の凝固速度を得るために、放射冷却を用いて機能することができる。この特定の実施形態では、冷却板14は単一のセグメント又はセクションで構成されているが、他の例では、複数のセグメント又はセクションを含んでもよい。チャネル17の底部は、シート13上での組成的過冷却又はデンドライトの形成或いは分岐突起の形成を回避するために、境界面で溶融液10の小さな垂直温度勾配を生成するように、溶融液10の融点よりも上の温度に加熱されることができる。しかしながら、容器16とパネル15及び20は、溶融液10の融点よりも上の任意の温度とすることができる。この事は、溶融液10が、容器16とパネル15及び20上で凝固することを防止する。
【0020】
装置21を、筐体の中で少なくとも部分的に又は完全に覆うことによって、装置21は、溶融液10の凝固点よりも僅かに上の温度に維持されることができる。筐体が装置21を溶融液10の凝固点より上の温度に維持する場合、装置21を加熱する必要は回避又は低減され、筐体内又は筐体周辺のヒーターが熱ロスを補償することができる。この筐体は、非等方性伝導率を有し、等温とすることができる。他の特定の実施形態では、ヒーターは、筐体上又は筐体内ではなく、装置21内に配置される。一例を挙げると、容器16の異なる領域は、容器16内にヒーターを埋め込み、マルチゾーン温度制御(multi-zone temperature control)を用いることによって、異なる温度まで加熱されることができる。
【0021】
筐体は、装置21が配置される場所の環境を制御することができる。特定の実施形態において、筐体は、不活性ガスを含む。この不活性ガスは、溶融液10の凝固点よりも上の温度に維持されることができる。不活性ガスは、シート13の形成工程の期間中に不安定性を引き起こす、溶融液10への溶質の追加を低減することができる。
【0022】
装置21は、冷却板14を具えている。冷却板14は、シート13が溶融液10上で形成する際の熱の除去を可能にする。冷却板14の温度が溶融液10の凝固点以下になる場合、冷却板14は、溶融液10上又は溶融液10中でシート13を凝固することができる。この冷却板14は放射冷却を使用することができ、例えば、黒鉛、石英又は炭化ケイ素で製造されることができる。冷却板14は、急速に、一様にそして制御された量で、液体の溶融10から熱を除去することができる。シート13を形成する間、シート13の欠陥を防止するために溶融液10への妨害は低減されることができる。
【0023】
融解熱、及び溶融液10の表面上の溶融液10からの熱の熱除去は、低い欠陥密度を有するシート13を維持すると共に、他のリボン引き上げ法と比較して、シート13のより速い製造を可能にする。溶融液10の表面上のシート13又は溶融液10上に浮かぶシート13を冷却することは、融解の潜熱がゆっくり、そして大きな水平の流速を有しながら広い領域にわたって除去されることを可能にする。
【0024】
冷却板14の寸法は、長さ及び幅の両方で増加させることができる。長さを増加することにより、同じ垂直成長速度に対して溶融液10の流速をより速いものにすることができ、結果としてシート13の厚みになる。冷却板14の幅を増加することにより、より幅広のシート13になる。垂直にシートを引き上げる方法とは異なり、図1に記載の装置及び方法の実施形態を用いて製造されるシート13の幅に対し、固有の物理的な制限は無い。
【0025】
一つの特定の実施形態において、溶融液10及びシート13は、約1cm/sの速度で流れる。冷却板14は、長さ約20cm及び幅約25cmである。シート13は、約20秒で、約100μmの厚みに成長することができる。従って、シートは、厚みにおいて約5μ/sの速さで成長することができる。厚み約100μmのシート13は、約10m/hの速さで製造されることができる。
【0026】
溶融液10の温度勾配は、一実施形態において最小化されることができる。これは、溶融液10が安定且つ層状に流れることを可能にする。また、シート13が、冷却板14を用いた熱放射冷却を経て形成されることを可能にする。一つの特定例では、冷却板14及び溶融液10の間の約300K(26.85℃)の温度差は、溶融液10上又は溶融液10内で、約7μm/sの速さでのシート13の形成を可能にする。
【0027】
冷却板14から下流とパネル20の下のチャネル17の領域とは、等温とすることができる。この等温領域は、シート13の焼鈍しをする。
【0028】
溶融液10上にシート13が形成された後、シート13は、余水路12を用いて溶融液10から切り離される。溶融液10は、チャネル17の第1の位置18から第2の位置19まで流れる。シート13は、溶融液10とともに流れる。シート13のこの運搬は、連続動作とすることができる。一実施例では、シート13は、溶融液10が流れるのと略同じ速度で流れることができる。従って、シート13は、溶融液10に対して静止している間に形成され、運搬されることができる。余水路12の形状又は余水路12の方向は、溶融液10又はシート13の速度プロファイルを変えるために変更されることができる。
【0029】
溶融液10は、余水路12において、シート13から切り離される。一実施形態において、溶融液10の流れは、溶融液10を、余水路12を越えて運搬し、また、少なくとも一部の流れが、シート13を、余水路12を越えて運搬することができる。シート13に外部応力が負荷されないため、シート13の結晶の破壊を最小化又は防止することができる。この特定の実施形態において、溶融液10は、シート13から分離して、余水路12を越えて流れる。シート13への熱衝撃を防止するために、冷却は、余水路12で適用することはできない。一実施形態では、略等温の状態で、余水路12における分離が生じる。
【0030】
溶融液10は、溶融液10上のシート13の適切な冷却及び結晶化が可能である速度で流れることができるので、シート13は、溶融液に垂直に引き上げられるよりも、装置21内でより速く形成されることができる。シート13は、溶融液10が流れるのと略同じ速さで流れる。これは、シート13への圧力を低減する。引き上げによってリボンに対して圧力がかかるため、溶融液に垂直にリボンを引き上げることは、速度において制限される。一実施形態においては、装置21のシート13は、何の引き上げ圧力も受けない。これにより、シート13の品質及びシート13の生産速度を上げることができる。
【0031】
一実施形態において、シート13は、余水路12を越えて直進する傾向がある。このシート13は、破損を防止するために、場合によっては、余水路12を越えて進んだ後に支えられることができる。支持装置22は、シート13を支えるように構成される。支持装置22は、シート13を支持するために、例えばガス又は空気ブロワーを用いてガス圧差を与えることができる。シート13が溶融液10から切り離された後、シート13が配置される場所の環境温度は、ゆっくりと変化させることができる。一例を挙げると、シート13が余水路12から遠くに移動するにつれて、温度は低下する。
【0032】
一例を挙げると、シート13の成長、シート13の焼鈍し、余水路12を用いた溶融液10からのシート13の分離は、等温環境において行うことができる。余水路12を用いる分離と、シート13及び溶融液10の略等しい流速は、シート13に対する応力又は機械的歪を最小化する。この事は、単結晶シート13の生産可能性を増加させる。
【0033】
他の実施形態では、磁場が、装置21内の溶融液10及びシート13に与えられる。これにより、溶融液10内の振動流を弱めることができ、シート13の結晶化を向上させることができる。
【0034】
図2は、溶融液からシートを引き出す装置の実施形態の、側面断面図である。この実施形態において、装置23は、溶融液10からシート13を引っ張る。この実施形態では、溶融液10はチャネル17を循環することはできず、シート13は、シードを用いて引っ張られることができる。シート13は冷却板14で冷却することによって形成され、結果として生じるシートは、溶融液10から引っ張られることができる。
【0035】
図1、図2の実施形態は両方とも、冷却板14を使用する。冷却板14の長さにわたる冷却温度の違い、溶融液10の流速或いはシート13の引き出し速度の違い、装置21或いは装置23の種々の領域の長さ、又は、装置21或いは装置23内のタイミングが、工程の制御のために用いられ得る。溶融液10がシリコンである場合、装置21において、多結晶シート13又は単結晶シート13が形成されることができる。図1又は図2のどちらの実施形態においても、装置21又は装置23は、筐体内に包含されることができる。
【0036】
図1及び図2は、溶融液10からシート13を形成可能な装置の2つの例のみを示している。垂直又は水平なシート13の成長の、他の装置又は方法が可能である。本願明細書において記載されている方法及び装置の実施形態は、任意の垂直又は水平なシート13の成長の方法又は装置に適用されることができ、単に、図1、図2の特定の実施形態に制限されるものではない。
【0037】
図3は、ポンプの実施形態の側面断面図である。ポンプ30は、溶融液10の凝固点より上の温度で、溶融液10を運搬するように構成されている。一例を挙げると、この溶融液10はシリコンであり、ポンプ30は、シリコンの凝固点より上の温度で作動可能である。ポンプ30は、溶融液10の凝固点より上の温度に維持された、熱的に絶縁されたチャンバ内に配置されることができる。
【0038】
ポンプ30は、キャビティ39を画定するポンプチャンバ31と、第一のパイプ34に近い入力バルブ32と、第二のパイプ35に近い出力バルブ33とを含む。第一のパイプ34は溶融液10の注入口とすることができ、第二のパイプ35は溶融液10の放出口とすることができる。ガス供給源36は、例えば、圧力制御されたアルゴンを供給する。アルゴンを具体的に挙げたが、他の不活性ガス又は希ガスもまた用いることができる。ガス供給源36は、ガス供給源36からチャンバ31へのガス流量を調節するために、ガスバルブを含むことができる。ガスバルブは、チャンバ31内へ及びチャンバ31外への、両方のガス流を可能にする。溶融液10と接触するポンプ30の全ての部品は、窒化ホウ素、石英、炭化ケイ素又は窒化シリコンのような、非汚染材料からなるものとすることができる。ポンプ30内の圧力が、溶融液10を誘引し、所望の圧力で溶融液10を供給するであろう。ポンプ30は、ガス供給源36によって駆動される。このポンプ30は、第一のパイプ34の圧力(Pと称する)より上の所望の圧力(Pと称する)での、溶融液10の略連続的な供給を与えることができる。
【0039】
図3の実施形態において、入力バルブ32及び出力バルブ33の両者はチェックバルブであるが、他の種類のバルブが使用されてもよい。チェックバルブは、流体が、バルブを通って一方向だけに流れることができる、逆止めバルブすなわち一方向のバルブである。この特定の実施形態では、入力バルブ32及び出力バルブ33は各々、ボディ37及びシート38を含んでいる。この実施形態では、ボディ37は円形であるが、他の形状も可能である。ボディ37は、一実施形態ではソケットとすることができるシート38に、嵌合するように構成されている。入力バルブ32又は出力バルブ33がシールされた場合、ボディ37は、シート38に対して静止する。ボディ37は、窒化ホウ素、石英、窒化シリコン又は炭化ケイ素で被覆される又は製造されることができる。
【0040】
図4A〜図4Dは、図3の実施形態のポンプを用いたポンピングの側面断面図である。図4Aは、ポンプチャンバ31内の圧力(P)が第一のパイプ34内の圧力(P)に略等しい(P=P)、初期状態を表している。それゆえ、入力バルブ32及び出力バルブ33は各々閉じられる。図4Bにおいて、ポンプチャンバ31内の圧力は下げられる。これは不等式P<P−ρghで表される。ここで、ρは溶融液10の密度、gは重力、hは高さであって、この高さとは、溶融液10は、ポンプチャンバ31に入るために、ライン40で示される入力バルブ32より上を移動しなければならない高さである。ポンプチャンバ31内の圧力が第一のパイプ34の圧力より低いので、入力バルブ32が開いて、溶融液10がポンプチャンバ31を満たす。ポンプチャンバ31内の低い圧力は、出力バルブ33を閉じるように保つ。図4Cにおいて、ポンプチャンバ31の圧力は、ガス供給源36からのガスを用いて増加している。ポンプチャンバ31内の圧力は、第二のパイプ35内の圧力を略超える。これは、不等式P>P+ρghで表される。ポンプチャンバ31内の圧力が第二のパイプ35の圧力より高いので、出力バルブ33が開いて、溶融液10がポンプチャンバ31から、空になる。ポンプチャンバ31内の高い圧力は、入力バルブ32を閉じるように保つ。図4Dにおいて、ポンプ30は、ポンプチャンバ31内の圧力が第一のパイプ34内の圧力に略等しい(P=P)、図4Aの初期状態に戻る。
【0041】
図4A〜図4Dに示される工程は、溶融液10の流れを生じるために繰り返されることができる。溶融液10の流速が、必要に応じて調整されることができる。溶融液10の適切な流れ又は速度を確実にするために、一つ又は複数のポンプ30が、単体で又は少なくとも部分的に同時に用いられることができる。例えば、第一のポンプからの溶融液10の流れが終了するときに、第二のポンプからの溶融液10の流れが開始するように、2つのポンプが並行に用いられることができる。これは、一定の溶融液10の運搬を確実にすることができる。
【0042】
図5は、フィルタのブロック図である。この特定の実施形態では、フィルタ51は、より高い圧力ゾーン50及びより低い圧力ゾーン52の間に位置している。より高い圧力ゾーン50及びより低い圧力ゾーン52の間の異なる圧力により、フィルタ51を通って、方向53に向かって溶融液10が流れる。フィルタ51は、溶融液10中の、二酸化ケイ素又は炭化ケイ素のような粒子を除去することができる。このフィルタ51は、例えば、窒化シリコンメッシュ又は膜であってもよい。窒化シリコンメッシュ又は膜は、例えば、NanoStructures社によって製造されるか、又は、DUR-SIN(登録商標)であってもよい。他の実施形態においては、フィルタ51は、窒化ホウ素顆粒を含んでもよい。
【0043】
図6は、粒子トラップの第一実施形態の側面断面図である。溶融液10が粒子トラップ62の中を流れる際、粒子トラップ62は、例えば二酸化ケイ素、ホウ素、鉄又は炭化ケイ素のような粒子65を収集する。炭化ケイ素、鉄、ホウ素及び任意の形の二酸化ケイ素は、シリコン溶融液10よりも高い密度を有する。例えば、二酸化ケイ素が約2.65g/ccの密度を有し、炭化ケイ素が約3.1g/ccの密度を有するのに対し、シリコン溶融液10は、約2.49g/ccの密度を有する。溶融液10が、粒子トラップ62を通って溶融液入力60から溶融液出力61へ方向63に向かって流れるのに対し、これらの粒子65は、粒子トラップ62の底に沈む。溶融液10は、圧力差によって、方向63へ流れることができる。
【0044】
図7は、粒子トラップの第二実施形態の側面断面図である。特定の粒子66、例えばカーボン、窒素又は空気は、シリコン溶融液10より低い密度を有する。溶融液10が、粒子トラップ64を通って溶融液入力60から溶融液出力61へ方向63に向かって流れるのに対し、これらの粒子66は、粒子トラップ64の上部に浮かぶ。溶融液10は、圧力差によって、方向63へ流れることができる。この粒子トラップ64は、溶融液10中の揮発性の化合物をも捕らえることができる。粒子トラップ64はまた、いくらかの粒子66を除去するために、スクープ、ランプ又はスキマーを含むことができる。
【0045】
図8は、精製システムの第一実施形態の斜視図である。このシステムは、カーボン又は金属のように析出係数が1未満である不純物を、溶融液10から除去することができる。物質の溶質の析出係数(γ)は、液固界面近くの固体及び液体の、溶質の平衡濃度の比である。γ<1の場合、溶質は、固体から液体への拒絶反応を示す。γ>1の場合、溶質は、液体から固体への拒絶反応を示す。
【0046】
装置80は、例えば、窒化ホウ素、石英、炭化ケイ素又は窒化シリコンのような、非汚染材料でできている。装置80は、注入口81を通った溶融液10で満たされる。注入口81は、この特定の実施形態においては、装置80の上部に在る。溶融液10は、排出口82を用いて、装置80から排出される。排出口82は、この特定の実施形態においては、装置80の底部に在る。注入口81及び排出口82は、図8で示しただけでなく、装置80の同じ側上に、又は装置80の他の側に配置してもよい。排出口82は、精製工程の期間中に装置80の底部を形成する、溶質のスラグ83よりも上に在る。スラグ83は、溶質の高濃度の凝固ブロックである。
【0047】
図9A〜図9Fは、図8の実施形態の精製システムを用いた、精製工程の段階の、正面断面図である。図9A〜図9Fは順番に起こるが、他の実施形態及び方法も可能である。溶融液10は、注入口81を通って、装置80を満たす。装置80は、少なくとも第一の方向に装置80に対して並進(平行移動)可能な、クーラー90及びヒーター91を含む。一実施形態では、並進は、均一に、且つ凝固及び溶融を可能にするための速度とすることができる。クーラー90及びヒーター91は、各々、シールド及び絶縁体を有することができる。クーラー90及びヒーター91への又はクーラー90及びヒーター91からの熱伝達は、導電性、対流性、放射性又は前記3つの熱伝達の形態の任意の組み合わせとすることができる。2つのクーラー90及び2つのヒーター91が示されているが、当業者に公知であるように、他の数のクーラー90及びヒーター91とすることが可能である。
【0048】
一例を挙げると、クーラー90及びヒーター91は、装置80を囲むバンド又はリングである。他の例では、クーラー90及びヒーター91は、装置80の近くのプレート又はブロックである。クーラー90及びヒーター91は、この実施形態のように、並進メカニズムを使用して動作可能に連結することができるか、又は、別々に或いは相互に独立して並進することができる。さらに他の例では、クーラー90及びヒーター91は、装置80内に組み込まれ、時間とともに、異なる加熱又は冷却ゾーンが選択的に活性化される。
【0049】
クーラー90及びヒーター91は、温度擾乱を最小化するために、相互間及びシステムの残部との間に防熱板を有することができる。一実施形態では、クーラー90は、溶融液10の凝固点未満の温度で作動することができる。従って、クーラー90及び溶融液10は、溶融液10の凝固点以下の温度で冷却されることができる。ヒーター91は、オームヒーター、誘導コイル又は抵抗ヒーターを含むことができるが、他の加熱タイプも可能である。一実施形態では、クーラー90へ流れる流体は、クーラー90の温度を調節することができるが、他の冷却方法も可能である。
【0050】
図9A〜図9Fの特定の実施形態において、クーラー90及びヒーター91は、装置80に対して並進され、装置80内の全ての溶融液10、例えば上部から底部まで(図9Bから図9Cまで)を凝固することができる。これは、凝固した溶融液92(斜線部で示される部分)を形成する。
【0051】
多くの溶質は、溶融物中よりも固体物中の方が低い溶解度を有するので、溶質の濃度は、固体中で低減される。凝固した溶融液92を形成するために、全ての溶融液10が凝固するにつれて、溶融液10及び凝固した溶融液92間の境界面で、より高い溶質濃度の領域が生成される。この境界面は、装置80の一端から他端へゆっくり移動し、最終的に、高い溶質濃度を含むスラグ83を形成する。この工程は、析出係数
γ=C/C<1
を有する全ての溶質によって作用することができる。ここで、γは析出係数であり、Cは固液界面での固体中の濃度であり、Cは液体中の濃度である。このように、これらの溶質は、固液界面において、液体よりも固体の方が可溶でない。多くの化合物、例えば、銀、アルミニウム、金、銅、カーボン、鉄、リチウム、マンガン、ニッケル、硫黄及びタンタルは、このようにして、溶融液10から除去されることができる。当業者にとって公知の他の溶質も、同様に、溶融液から除去されることができる。クーラー90及びヒーター91のパラメータは、少なくともいくらかの酸素及びホウ素を除去するように構成されることができる。例えば、複数のパス又は凝固及び溶融サイクルは、酸素又はホウ素の除去に必要となりうる。
【0052】
この工程による効果は、図12に示されている。図12において、クーラー90及びヒーター91が装置80にわたって(x方向に)並進するにつれて、凝固した溶融液92中の溶質濃度(c)は増加する。
【0053】
凝固した溶融液92は、その後、溶融液10を再形成するために、ヒーター91を用いて再溶融されることができる(図9Cから図9D)。この事は、装置80の底部に、高濃度の溶質を有するスラグ83を残すことになる。一実施形態において、この工程は、所望の純度の溶融液10を得るために繰り返されることができる。この事は、多数の凝固及び溶融サイクルにわたって、スラグ83の再溶融又はスラグ83の成長を要求するかもしれない。図9Eにおいて、溶融液10が、排出口82によって除去される。図9Fにおいて、スラグ83が、装置80から除去される。この事は、装置80から(スラグを)落下させることによって、スラグを再溶融して装置80から排出又はポンプで汲み出すことによって、又は他の除去方法によって行ってもよい。
【0054】
より高純度の溶融液10は、溶融液10の組成的過冷却の可能性をより低下させることができる。溶融液10の凝固点は、溶質の存在によってさらに低くなりうる。この組成的過冷却は、溶融液10が凝固するときに、樹枝状成長を生じさせ得る。高純度の溶融液10は、析出物或いはプレートレット(platelet)の形成、又は、任意の凝固した溶融液10へ析出物或いはプレートレットが付着する可能性を低下させることができる。さらに、高純度の溶融液10は、不純物の減少によって、高効率の太陽電池を生産することができる。このように、一実施形態において溶融液10は、10−8未満の溶質の質量分率を有する。
【0055】
図9A〜図9Fの工程は、重力及び液体シリコン上に浮かぶ個体シリコンの性質を用いるために垂直構成で示されているが、工程は水平に行われることもできる。工程を水平に行うために、装置80の寸法は、重力の影響が工程を妨げることがないように減少される。図11に示される代替の実施形態では、液体溶融液10の小さなゾーンのみが、どの所定時間においても、凝固した溶融液92を形成する。これは、凝固ゾーン110を形成する。クーラー90及びヒーター91が装置80に対して並進するとともに、この凝固ゾーン110は装置80の全長の下方に進行する。凝固ゾーン110が、装置80の一端から他端へ進行するにつれて、凝固ゾーン110の上部は、溶融液10に再溶融される。凝固した溶融液92が上方へ浮かぶのを防ぐために、移動可能なギザギザ状の壁を用いられることができ、これにより、凝固した溶融液92は、装置80の一端から他端へ移動し続ける。
【0056】
より大きなスループットのために、複数の装置80は並行に作動することができる。図10は、精製システムの第二実施形態の正面断面図である。この特定の実施形態では、クーラー90及びヒーター91は一緒に並進されているが、各々個別の装置80に対するクーラー90及びヒーター91が、独立に並進されてもよい。これにより、各装置80のタイミングをずらすことで、スループットを増加することができる。
【0057】
図13は、シート形成システムの第一実施形態のブロック図である。システム132は、るつぼ130と、ロードロック131と、ポンプ133と、少なくとも一つの装置80を備える精製システム134と、ポンプ135及び136と、シート形成装置137とを含む。このシステム132は、シート13を形成することができる。ポンプ133、135、136は、ポンプ30又は何か他のポンプに対応可能である。シート形成装置137は、装置21、装置23、又は、当業者にとって公知である他の垂直或いは水平なシート形成システムに対応可能である。システム132はさらに、フィルタ51と、例えば精製システム134の上流又はポンプ135、136及びシート形成装置137との間に在る、粒子トラップ62又は粒子トラップ64とを含むことができる。この実施形態では、精製された溶融液10は、空気へ露出することなくシート形成装置137へ供給されるので、供給原料を直接的にシート形成装置137に加える方法では存在する、酸化を回避する。
【0058】
一実施形態において、るつぼ130を用いて、まず最初に溶融液10を形成することができる。この溶融液10は、その後、るつぼ130からポンプで汲み出される。一実施形態において、るつぼ130は、非汚染材料、例えばホウ素又は窒化シリコンでできている。他の実施形態において、るつぼ130は、例えば炭化ケイ素又は黒鉛のようなカーボンを含む材料から成ることができる。しかしながら、カーボンを含む材料を使用することは、溶融液10がその後、フィルターにかけられるか又は精製されることを要求し得る。るつぼ130はまた、酸素を含有する化合物、例えば二酸化ケイ素又は石英から成ることができる。るつぼ130は、ヒーターを含むことができる。これらは、例えば、導電ヒーター、抵抗ヒーター、又はオームヒーターとすることができる。一実施形態においては、溶融液10の凝固点より上の均一な温度が溶融液10全体にわたって維持されることができるように、そして、溶融液10を溶融するのに必要なエネルギーを最小化するために、るつぼ130は熱的に絶縁される。
【0059】
このるつぼ130は、溶融液10への供給原料の追加を可能にするために、ロードロック131を含むことができる。ロードロック131は、るつぼ130に組み込まれるか、又は、るつぼ130から別体のユニットとすることができる。供給原料、例えばシリコンの導入後、ロードロック131及びるつぼ130は閉じられ、空気を排出することができる。るつぼ130はその後、ガス供給源138を用いて、例えばアルゴン又は他の希ガスのような不活性ガスで満たされ、供給原料を溶融液10に溶融するために加熱されることができる。
【0060】
酸素は、酸化シリコンの蒸発により、るつぼ130内の溶融液10から除去されることができる。酸化シリコンは、シリコンの融点より下の温度では、不安定な場合がある。一実施形態では、ロードロック131又はるつぼ130から酸素を除去するために、アルゴン及び酸化シリコンは一回以上パージされ、アルゴンは一回以上補充される。ロードロック131又はるつぼ130の壁が、炭化ケイ素表面又は黒鉛ヒーター内のようなカーボンを含む場合、一酸化炭素を生ずることがありうる。この一酸化炭素は、溶融液10の汚染を防ぐために送出される必要がある。一実施形態において、例えば水素が、脱酸剤として作用するか又は溶融液10からの酸素の除去を強化するために、ロードロック131又はるつぼ130に加えられることができる。
【0061】
一例を挙げると、供給原料、例えばシリコンが、るつぼ130のロードロック131に加えられる。このシリコンは、様々なグレード及び様々な形状とすることができる。一つの特定の実施形態において、大きな酸化表面を有するシリコンペレットが用いられることができる。ロードロック131はその後、閉じられ、排気され、酸素又は他のガスを除去するためにポンプで真空に汲み出される。供給原料がるつぼ130へ運搬され、ロードロック131及びるつぼ130は不活性ガス、例えばアルゴンによって満たされて、溶融液10を形成するために供給原料が溶融される。アルゴンガスは、酸化シリコン及び一酸化炭素汚染を除去するために、必要に応じてパージされる。ポンプ133は、その後、精製システム134へ溶融液10を汲み出す。溶融液10は、精製システム134へ入る前に、フィルタ51、粒子トラップ62又は粒子トラップ64を通って汲み出されることができる。図9A〜図9Fに示したように、装置80は溶融液10で満たされ、溶融液10の精製を開始する。精製された溶融液10は、ポンプ135、136のうちの少なくとも一つを満たし、制御された速さでシート形成装置137へ供給される。この制御された速さは、シート13を形成するシート形成装置137での晶析速度に合わせることができる。
【0062】
一例を挙げると、溶融液10が例えばポンプ135から汲み出される一方で、ポンプ136を満たす溶融液10が精製システム134で精製される。溶融液10をシート形成装置137へ連続的に運搬することができるように、この精製は、始めに満たされているポンプ135が空になる前又は空になる時に、ポンプ136がシート形成装置137への汲み出しを開始するように調節される。
【0063】
図14は、シート形成システムの第二実施形態のブロック図である。このシステム140は、シート形成装置137からポンプ136へのリサイクル141を含む。これは、シート形成装置137内での溶融液10の連続的な循環を可能にする。
【0064】
図15は、シート形成システムの第三実施形態のブロック図である。このシステム150は、シート形成装置137から精製システム134及びポンプ136まで点線151で示される、リサイクルを含む。代替の実施形態においては、リサイクルは、精製システム134のみと流体連結する。これは、シート形成装置137内での溶融液10の連続的な循環を可能にし、シート形成装置137又はシステム150のどこか他の場所に加えられた、任意の溶質の溶融液10を精製する。従って、溶融液10は、溶質又は不純物によって増強することはない。シート13がシート形成装置137によって生成される場合、1未満の析出係数を有する溶質は、以下の方程式に従って、溶融液10において増強する。
【数1】

ここで、Vはるつぼ130又はシート形成装置137の体積であり、xは溶融液10の溶質濃度であり、kは溶質の析出係数であり、Vは凝固体積速度(一例において、溶融液10のシート形成装置137への入力速度と等しくすることができる)である。例えば、るつぼ130内において、x(t)はxから変化する。
【0065】
例えば、溶融液10が1.6Lで生産サイズ化された、10m/hで100μmの厚さのシート13を生産するシステムにおいて、析出係数が0.01未満の溶質の濃度は、約16時間で一桁増加する。シート形成装置137でシート13が生産されるにつれ、精製システム134内の溶融液10を精製するために使用される同現象によって、溶質は増強される。このように、これらの溶質は、シート形成装置137でシート13の生産によって“収集される”ため、全ての溶質が、同じ速度で除去されることができる。これは、シート13を生産する一方で、純粋な溶融液10の連続状態又は溶融液10の低溶質濃度を可能にする。
【0066】
さらに他の実施形態において、精製システム134に類似の他の精製システムは、シート形成装置137のみに接続している。これにより、シート形成装置137のみに流れが戻る。この事は、リサイクルストリームでの溶質の除去が、精製システム134からのストリームと切り離されることを可能にする。
【0067】
図16は、シートを溶融液から分離する装置の第一実施形態の上面図である。この実施形態の装置21は、ポンプ160を含む。2つのポンプ160が図16に示されているが、他の実施形態では1つのポンプ160又は2つより多いポンプ160を使用してもよい。これらのポンプ160は、図3のポンプ30に対応可能である。ポンプ160によって、溶融液10は、方向162に、それから壁163を回り方向161に、そして余水路12を超えて流れる。これらのポンプ160は、装置21内の溶融液10の、途切れることのない流れを提供することができる。溶融液10は、ポンプ160を用いて、より高い垂直位置へ汲み出されることができる。
【0068】
図17は、シートを溶融液から分離する装置の第二実施形態の上面図である。この実施形態の装置21は、ポンプ160を含む他に、ユニット170を含む。これらのユニット170は、例えば図5〜図7からのフィルタ51、粒子トラップ62又は粒子トラップ64に対応可能である。ユニット170はまた、当業者にとって公知の他の濾過システムであってもよい。
【0069】
図18は、シート形成システムの第四実施形態のブロック図である。システム180は、るつぼ130と、ロードロック131と、ガス供給源138と、ポンプ133及び181と、シート形成装置137とを含む。このシステム180は、シート13を形成することができる。ポンプ133及び181は、ポンプ30又は何か他のポンプに対応可能である。シート形成装置137は、装置21、装置23、又は、当業者にとって公知の他の垂直又は水平なシート形成システムに対応可能である。システム180はさらに、例えばシート形成装置137又はポンプ181の上流に在るフィルタ51、粒子トラップ62又は粒子トラップ64を含むことができる。
【0070】
システム180はさらに、バルブ182及び放出パイプ183を含む。この例で、溶融液10は、電子グレードのシリコンであってもよい。溶融液10は、ポンプ181を用いて、シート形成装置137を通って絶えず循環される。溶融液10の溶質濃度レベルが特定の閾値より上回るとき、又は、シート13上の樹枝状成長の前に、バルブ182が開き、放出パイプ183を用いてシート形成装置137から溶融液10が排出される。一例を挙げると、この閾値は、10−8を超える溶質の質量分率である。これは、溶融液10の不安定性及びシート13上の樹枝状成長を引き起こすのに十分な溶質の質量分率とすることができる。
【0071】
るつぼ130は、シート形成装置137に対して、ポンプ133を用いてシート形成装置137へ汲み出される新たな溶融液10を生成する。このポンプでの汲み出しは、シート形成装置137の連続的な作動を可能にする。一例を挙げると、この新たな溶融液10は、約10−10の溶質の質量分率を有することができる。この場合、放出パイプ183を用いて排出される溶融液10は、低グレードシリコンとすることができ、他の目的に使用されることができる。例えば、放出パイプ183を用いて排出されるこの溶融液10は、ソーラーグレードシリコンであってもよい。
【0072】
一つの特定の実施形態では、システム180はさらに、低溶質濃度を有する溶融液10のための貯水部(リザーバ)を含む。放出パイプ183を用いて溶融液10が排出されるため、貯水部は、シート形成装置137の連続的な作動を可能にする。この貯水部は、ポンプ133の下流かつシート形成装置137の上流に配置されることができる。
【0073】
ここで開示する内容は、本願明細書において記載されている特定の実施形態の範囲に制限されるものではない。実際、前述の記載及び添付の図面から、本願明細書において記載される内容に加えて他の種々の実施形態及び変更が行われることは、当業者にとって明らかである。このように、他の実施形態及び変更がここで開示する範囲内において行われる。さらに、本願明細書では、特定の目的のために、特定の環境における特定の実装による内容を開示しているが、当業者はその有用性がこれらに制限されないこと、そして、ここで開示の内容が多くの目的のために多くの環境において有益に実装可能であることを認識する。従って、ここで開示される請求項は、広範な幅及び精神をからみて解釈されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内の溶融液の第一の部分を第一の方向に凝固するステップと、
前記第一の方向の前記溶融液の前記第一の部分の一部を溶融し、前記溶融液の第二の部分は凝固されたままにするステップと、
前記チャンバから前記溶融液を流すステップと、
前記チャンバから前記第二の部分を除去するステップと、
を含む精製方法。
【請求項2】
前記溶融液は、シリコン、シリコンゲルマニウム、ガリウム、窒化ガリウムからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記凝固するステップ中、前記溶融液内の溶質及び前記第二の部分を濃縮するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記除去するステップは、前記チャンバから前記第二の部分を落下するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記除去するステップは、前記第二の部分を溶融するステップと、前記チャンバから前記第二の部分を流すステップとを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
溶融液を精製する装置であって、
キャビティ、注入口、放出口が画定しているチャンバと、
クーラーと、
ヒーターと、
前記チャンバに沿って、前記クーラー及び前記ヒーターを第一の方向に並進するように構成される並進機構と、
を含む溶融液を精製する装置。
【請求項7】
前記ヒーターは、オームヒーター、誘導コイル、抵抗ヒーターのうちの少なくとも一つで構成される請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記クーラー及び前記ヒーターの間に絶縁体をさらに含む請求項6の装置。
【請求項9】
シートを形成する装置であって、
溶融液を形成するように構成されるるつぼと、
前記るつぼと流体連結する第一のポンプと、
前記第一のポンプと流体連結する精製システムと、
前記精製システムと流体連結する第二のポンプと、
シートを形成するために前記溶融液を凝固するように構成されたシート形成装置とを含み、該シート形成装置は、前記第二のポンプと第一のパスに沿って流体連結しており、前記溶融液を保持するように構成されるチャネルを確定する容器と、前記溶融液上に配置される冷却板とを有する、
シートを形成する装置。
【請求項10】
前記シート形成装置は、余水路を含み、前記溶融液及び前記シートは、前記チャネル内を該余水路へ向かい流れる請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記精製システムは、
キャビティ、注入口、放出口を画定するチャンバと、
クーラーと、
ヒーターと、
前記チャンバに沿って、前記クーラー及び前記ヒーターを第一の方向に並進するように構成される並進機構と、
を含む請求項9に記載の装置。
【請求項12】
フィルタをさらに含む請求項9に記載の装置。
【請求項13】
粒子トラップをさらに含む請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記精製システムと流体連結する第三のポンプをさらに含み、前記シート形成装置が該第三のポンプと流体連結する請求項9に記載の装置。
【請求項15】
前記シート形成装置と前記第二のポンプとの間に第二のパスをさらに含み、該第二のパスは前記溶融液が前記シート形成装置に循環をするように構成される請求項9に記載の装置。
【請求項16】
前記シート形成装置は前記精製システムと流体連結する請求項9に記載の装置。
【請求項17】
前記第一のポンプ及び前記第二のポンプは、
前記溶融液を保持するように構成されるキャビティを画定しているチャンバと、
前記チャンバと流体連結するガス供給源と、
前記チャンバと流体連結する第一のパイプと、
前記チャンバと流体連結する第二のパイプと、
前記第一のパイプと前記第二のパイプとの間に配置される第一のバルブと、
前記チャンバと前記第二のパイプとの間に配置される第二のバルブと、
を含む請求項9に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2011−525168(P2011−525168A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514840(P2011−514840)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/047947
【国際公開番号】WO2009/155512
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(500239188)ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド (69)
【Fターム(参考)】