説明

潤滑剤及び燃料の添加剤として有用なジチオカルバメート誘導体

潤滑油及び燃料用の多機能性添加剤として有用なジチオカルバメート誘導体化合物が、提供され、(a)ジヒドロカルビルアミン及び二硫化炭素の反応から誘導されるジ(ヒドロカルビル)チオカルバメート中間体、(b)一般式RCONH(式中、Rは2〜約30個の炭素原子を有するアルキレン基である)のアミド、及び(c)有効量のカルボニル含有化合物から得られる反応生成物から誘導される。具体的に、これらの化合物は式(I)(式中、可変記号は特許請求の範囲第1項で定義された通りである)を有する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、ジチオカルバメート誘導体及びそれらの潤滑油並びに燃料用多機能性添加剤としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の火花点火機関及びディーゼル機関は弁、カム及びコントロールアームを含む動弁装置システムを有するが、それらは特殊な潤滑問題を提起する。該潤滑剤、即ちエンジンオイルがこれらの部品を磨耗から保護することは極めて重要である。エンジンオイルがエンジンにおける沈積物の生成を抑制することも重要である。かかる沈積物は、炭化水素燃料(例えば、ガソリン、ディーゼル燃料油)の不燃物及び不完全燃焼から生成し、又使用したエンジンオイルの劣化によっても生成する。従って、燃料経済を改善することは、エンジンオイルを配合する際の重要な局面である。
【0003】
ジアルキルジチオ燐酸亜鉛(ZDDP)は、潤滑油用の耐疲労性、耐摩耗性、抗酸化性、極圧用及び摩擦調節用添加剤として長年にわたって使用されている。しかしながら、それらはそれらの亜鉛及び燐含量のためにいくつかの欠点を受けている。亜鉛の存在は排気ガス中への微粒子の放出をもたらす。更に、内燃機関の運転中、ピストンが下降行程を行う際に、潤滑油がシリンダー壁への付着のような手段により燃焼室に入る。燐含有潤滑油組成物が燃焼反応に関与すると、燐は排気ガス流に入り、そこで触媒毒として作用するので触媒コンバータの耐用寿命を短縮する。
【0004】
効果的な触媒コンバータは汚染を減少させる必要があり、内燃機関排気物質中の、例えば、炭化水素、一酸化炭素及び酸化窒素のような有毒ガスを減少させるように策定された政府の規制を満たす必要があるので、これは主要な問題である。かかる触媒コンバータは一般的に、触媒作用金属、例えば、白金又は変型、及び金属酸化物の組合せを使用し、排気流、例えば、自動車の排気管に設置されて、有毒ガスを非有毒ガスに変換する。前述したように、これらの触媒成分はジアルキルジチオ燐酸亜鉛の燐又は含燐分解生成物により毒されるので、含燐添加剤を含有するエンジンオイルの使用は触媒コンバータの寿命及び有効性を実質的に減少させる可能性がある。従って、触媒コンバータの活性を維持し寿命を延ばすようにエンジンオイル中の燐含量を減少させることが望ましいであろう。
【0005】
燐含量を減少させることに対しては、政府の及び自動車産業の圧力も存在する。例えば、米国軍用規格MIL−L−46152E及び日本並びに米国の自動車産業協会により規定されたILSAC規格は、現在エンジンオイルの燐含量が0.10重量%以下であることを必要とし、将来の燐含量は更により低い水準に提案されている。従って、潤滑油中のジアルキルジチオ燐酸亜鉛の量を置き換えるか又は少なくとも更に減少させて、触媒の不活性化を減少させ、それ故に触媒コンバータの寿命及び有効性を増加させ、その上将来の産業規格により提案されるエンジンオイル中の燐含量をも満たすことが望ましいであろう。
【0006】
しかしながら、単純にジアルキルジチオ燐酸亜鉛の量を減少させることは、潤滑油の耐疲労性、耐摩耗性、抗酸化性、極圧性及び摩擦調節性を低下させるかも知れないので、問題を提起する。従って、亜鉛及び燐の含量が比較的高いエンジンオイルの耐疲労性、耐摩耗性、抗酸化性、極圧性及び摩擦調節性を依然として維持しながら、亜鉛及び燐の含量を減少させる方法を発見することが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、潤滑油の燐含量を減少させながら潤滑油の耐疲労性、耐摩耗性、抗酸化性、極圧性及び摩擦調節性を改良することが出来る潤滑油用添加剤を開発することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、潤滑油用の耐摩耗性、抗酸化性、減摩性及び極圧用無灰添加剤として有用なジチオカルバメート誘導体化合物に関する。ジチオカルバメート誘導体化合物は燃料添加剤としても有用である。従って、本発明の一態様においては、一般式:
【0009】
【化1】


(式中、R,R,R及びRは各々独立にC−C30n−アルキル、C−C30分岐アルキル、C−C12シクロアルキル、C−C12アリール、又はC−C12アルキルアリールであり、Rは各々独立にC−C30アルキレンであり、R
【0010】
【化2】


から成る群から選択されるコンパウンドで置換されたC−C20アルキレンである)
を有するジチオカルバメート誘導体化合物が提供される。
【0011】
本発明の他の態様においては、(a)潤滑粘度の油、及び(b)機能特性改良有効量の少なくとも1種の前記ジチオカルバメート誘導体化合物を含む潤滑油組成物が提供される。
【0012】
本発明は更に、潤滑粘度の油に機能特性改良量の少なくとも1種の前記ジチオカルバメート誘導体化合物を添加することを特徴とする、潤滑油組成物の少なくとも1種の機能特性を改良する方法に関する。
【0013】
本明細書に提供される他の態様は、(a)ジヒドロカルビルアミン及び二硫化炭素から誘導されるジ(ヒドロカルビル)チオカルバメート中間体、(b)一般式RCONH(式中、Rは2〜約30個の炭素原子を有するアルキレン基である)のアミド、及び(c)有効量のカルボニル含有化合物の反応生成物である。
【0014】
本発明の更に他の態様は、(a)潤滑粘度の油、及び(b)機能特性改良有効量の前記反応生成物を含む潤滑油組成物である。
【0015】
本発明のなお更に他の態様は、(a)主要量の炭化水素燃料、及び(b)少有効量の前記反応生成物を含む燃料組成物である。
【0016】
〔好ましい態様の詳細な説明〕
一般的に本発明のジチオカルバメート誘導体化合物は、(a)ジ(ヒドロカルビル)チオカルバメート中間体、(b)一般式RCONH(式中、Rは2〜約30個の炭素原子を有するアルキレン基である)のアミド、及び(c)有効量のカルボニル含有化合物の反応生成物から得ることが出来る。該反応は、酸中和剤、例えば、水酸化ナトリウムの実質的不存在下で有利に行われる。該反応に続いて、その中の化合物は従来の技術、例えば、カラム・クロマトグラフィーにより分離することが出来る。
【0017】
一般的に、ジ(ヒドロカルビル)チオカルバメート中間体は、ジヒドロカルビルアミンを等モル乃至僅少モル過剰の二硫化炭素と最初に反応させてジ(ヒドロカルビル)チオカルバメート中間体を提供することにより製造される。有用なジヒドロカルビルアミンは、ヒドロカルビル基が1〜約60炭素原子のアルキル、シクロアルキル、アルカリール、及びアラルキル基の中から選択されるものである。好ましいジヒドロカルビルアミン反応体は、各アルキル基が約2〜約30個の、より好ましくは約4〜約24個の炭素原子を含有するジアルキルアミンである。
【0018】
次に、前記のジ(ヒドロカルビル)チオカルバメート中間体を等モル量の一般式RCONH(式中、Rは2〜約30個の炭素原子、好ましくは2〜約12個の炭素原子を有するアルキレン基である)のアミドと反応させてジ(ヒドロカルビル)チオカルバミルアミド中間体を形成する。好ましくは、該アミド化合物はアクリルアミドである。該ジ(ヒドロカルビル)チオカルバミルアミド中間体を、例えば、ジアルデヒドのようなカルボニル含有化合物、例えば、グリオキサール、グルタルアルデヒド、等(グリオキサールが好ましい)と反応させて本発明のジチオカルバメート誘導体化合物を提供する。一般的に、カルボニル含有化合物の有効モル量は、所望の最終生成組成物を得るように変化させることが出来る。用いられる有効量は約0.1から約3モル当量まで変化することが出来る。
【0019】
本発明の好ましいジチオカルバメート誘導体化合物は以下の一般式を有する。
【0020】
【化3】


式中、R,R,R及びRは各々独立にC−C30n−アルキル、C−C30分岐アルキル、C−C12シクロアルキル、C−C12アリール、又はC−C12アルキルアリール、好ましくは各々独立に約2〜約30個の炭素原子の直鎖、分岐又は環状アルキル基、より好ましくは約4〜約24個の炭素原子のアルキル基であり、Rは各々独立にC−C30アルキレン、好ましくは約2〜約12個の炭素原子の二価アルキレン基、より好ましくは約2〜約6個の炭素原子の二価アルキレン基であり、R
【0021】
【化4】


から成る群から選択されるコンパウンドで置換されたC−C20アルキレン、好ましくは約1〜約12個の炭素原子の二価アルキレン基、より好ましくは約1〜約6個の炭素原子の二価アルキレン基である。
【0022】
一般的に、1種以上の前記ジチオカルバメート誘導体化合物を含有する本発明の潤滑油組成物を配合する際には、アメリカ石油協会グループI,II,及びIIIとして規定された油を含む任意の適切な潤滑粘度油が、この中で使用出来、任意の適切な潤滑粘度範囲、例えば、100℃で約2cSt〜約1,000cSt、好ましくは100℃で約2cSt〜約100cStの動粘度範囲を有することが出来る。
【0023】
有用な天然油は、アメリカ石油協会グループI,II,及びIIIとして規定された油を含めて、例えば、液体石油、パラフィン系、ナフテン系又はパラフィン・ナフテン混合系の溶剤処理又は酸処理鉱物潤滑油、石炭又は頁岩から誘導された油のような鉱物潤滑油、動物油、植物油(例えば、菜種油、ひまし油及びラード油)、等を含み、潤滑剤ビヒクルとして使用することが出来る。
【0024】
有用な合成潤滑油は、重合オレフィン及び共重合オレフィン、例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン・イソブチレン共重合体、塩素化ポリブチレン、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)、等及びそれらの混合物;アルキルベンゼン、例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン、等;ポリフェニル、例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニル、等;アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化硫化ジフェニル及びそれらの誘導体、類似体及び同族体等のような炭化水素油及びハロ置換炭化水素油を含むが、それらに限定されない。
【0025】
他の有用な合成潤滑油は、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブテン、ペンテン、及びそれらの混合物のような5個以下の炭素原子のオレフィンを重合することにより製造される油を含むが、それらに限定されない。かかるポリマー油を製造する方法は当業者に周知である。
【0026】
更なる有用な合成炭化水素油は、適切な粘度を有するアルファオレフィンの液体ポリマーを含む。特に有用な合成炭化水素油は、例えば、1−デセントリマーのようなC〜C18アルファオレフィンの水素化液体オリゴマーである。
【0027】
他のクラスの有用な合成潤滑油は、末端水酸基が、例えば、エステル化又はエーテル化により変更されているアルキレンオキシドのポリマー、即ち、単独重合体、共重合体及びそれらの誘導体を含むが、それらに限定されない。これらの油は、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの重合により製造された油、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキル及びフェニルエーテル(例えば、1,000の平均分子量を有するメチルポリプロピレングリコールエーテル、500〜1000の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、1,000〜1,500の分子量を有するポリプロピレングリコールのジエチルエーテル、等)、又はそれらのモノ及びポリカルボン酸エステル、例えば、テトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合C〜C脂肪酸エステル、又はC13オキソ酸ジエステルにより例示される。
【0028】
更に他のクラスの有用な合成潤滑油は、ジカルボン酸、例えば、フタール酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバチン酸、フマール酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸、等の、種々のアルコール、例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール、等とのエステルを含むが、それらに限定されない。これらのエステルの具体例は、アジピン酸ジブチル、セバチン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマール酸ジ−n−ヘキシル、セバチン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタール酸ジオクチル、フタール酸ジデシル、セバチン酸ジエイコシル、リノール酸ダイマーの2−エチルヘキシルジエステル、1モルのセバチン酸を2モルのテトラエチレングリコール及び2モルのエチルヘキサン酸と反応させることにより形成される複雑なエステル、等を含む。
【0029】
合成油として有用なエステルは又、約5〜約12個の炭素原子を有するカルボン酸と、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、等、ポリオール及びポリオールエーテル、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、等から製造されたものを含むが、それらに限定されない。
【0030】
例えば、ポリアルキル・、ポリアリール・、ポリアルコキシ・又はポリアリールオキシ・シロキサン油及びシリケート油のようなシリコンベース油は、他の有用なクラスの合成潤滑油を構成する。これらの具体例は、テトリエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ(4−メチルヘキシル)シリケート、テトラ(p−tert−ブチルフェニル)シリケート、ヘキシル(4−メチル−2−ペントキシ)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン、ポリ(メチルフェニル)シロキサン、等を含むが、それらに限定されない。なお更に他の有用な合成潤滑油は、燐含有酸の液体エステル、例えば、燐酸トリクレジル、燐酸トリオクチル、デカンホスフィン酸のジエチルエステル、等、テトラヒドロフランポリマー、等を含むが、それらに限定されない。
【0031】
潤滑油は、天然又は合成の未精製、精製及び再精製油、又は上記タイプのこれらの、任意の2種以上の混合物から誘導することが出来る。未精製油は、天然又は合成源(例えば、石炭、頁岩、又はタールサンド・ビチューメン)から更なる精製又は処理なしに直接得られるものである。未精製油の例は、レトルト処理操作から直接得られる頁岩油、蒸留から直接得られる石油、又はエステル化法から直接得られるエステル油を含むが、それらに限定されず、それらの各々は次に更なる処理なしに使用される。精製油は、一つ以上の性質を改良するために一つ以上の精製工程で更に処理されていることを除けば、未精製油と同様である。これらの精製技術は、当業者に知られており、例えば、溶剤抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、濾過、パーコレート法、水素処理、脱ろう、等を含む。再精製油は、精製油を得るのに使用される方法と同様な方法で使用済み油を処理することにより得られる。かかる再精製油は、再生油又は再加工油としても知られ、使用済み添加剤や油分解生成物の除去を対象にした技術により度々更に処理される。
【0032】
ワックスの水素異性化から誘導される潤滑油基原料油は又、単独で又は前述の天然及び(又は)合成基原料油と組合せて使用することが出来る。かかるワックス異性化油は、水素異性化触媒上における天然又は合成ワックス又はそれらの混合物の水素異性化により製造される。
【0033】
天然ワックスは典型的に鉱油の溶剤脱ろうにより回収される粗ろうであり、合成ワックスは典型的にフィッシャー・トロプシュ法により製造されるワックスである。
【0034】
本発明のジチオカルバメート誘導体化合物添加剤は潤滑油組成物に有用である。それらは潤滑剤用の多機能性添加剤であり、油で運転する機関、例えば、二行程機関、内燃機関、例えば、排気ガス再循環(EGR)付きの又は無しのガソリン(火花点火)エンジン及びジーゼル(圧縮点火)機関に添加する際は、機能性改良有効量で及び耐磨耗性改良有効量、摩擦減少有効量、並びに抗酸化剤改良有効量で使用される。本発明の添加剤は又、ガスエンジン、又はタービン、自働変速機油、歯車潤滑剤、金属機能性潤滑剤、油圧作動油、及び他の潤滑油並びにグリース組成物に使用することが出来る。一般的に、潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.1〜約10重量パーセントの濃度を使用することが出来る。好ましくは、該濃度は潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.2〜約2重量パーセントである。
【0035】
所望により、本発明の添加剤は、潤滑油で典型的に知られた他の添加剤と組合せて使用することが出来、かかる組合せは実際に、改良された沈着抑制性、耐磨耗性、摩擦特性、抗酸化性、低温特性、等のような所望の特性を改良する方向に向って相乗効果を潤滑油に提供することが出来る。潤滑油で知られた添加剤の例は、分散剤、洗浄剤、防錆剤、抗酸化剤、耐磨耗性剤、消泡剤、摩擦調節剤、シール膨潤剤、解乳化剤、粘度指数改良剤、流動点降下剤、等、及びそれらの組合せを含むが、それらに限定されない。有用な潤滑油組成物添加剤の説明に対しては、例えば、米国特許第5,498,809号を参照されたい。これらの添加剤は一般的に周知の慣例に従って通常の量で使用される。
【0036】
有用な分散剤は、ポリイソブチレンスクシンイミド、ポリイソブチレンスクシネート・エステル、マンニッヒ塩基無灰分散剤、等を含むが、それらに限定されない。有用な洗浄剤は、金属アルキルフェネート、硫化金属アルキルフェネート、金属アルキルスルホネート、金属アルキルサリチレート、等を含むが、それらに限定されない。本発明の添加剤と組合せて使用される有用な抗酸化添加剤は、アルキル化ジフェニルアミン、N−アルキル化フェニレンジアミン、ヒンダードフェノール類、アルキル化ハイドロキノン、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、アルキリデンビスフェノール、油溶性銅化合物、等を含むが、それらに限定されない。本発明の添加剤と組合せて使用される有用な耐磨耗性添加剤は、有機ボレート、有機ホスフィット、有機硫黄含有化合物、ジアルキルジチオ燐酸亜鉛、ジアリールジチオ燐酸亜鉛、ホスホ硫化炭化水素、等を含むが、それらに限定されない。本発明の添加剤と組合せて使用される有用な摩擦調節剤は、脂肪酸エステル及びアミド、有機モリブデン化合物、ジアルキルチオカルバミド酸モリブデン、ジアルキルジチオ燐酸モリブデン、等を含むが、それらに限定されない。有用な消泡剤はポリシロキサン等を含むが、それらに限定されない。防錆剤の例はポリオキシアルキレンポリオール等である。有用な粘度指数改良剤は、オレフィン共重合体及び分散剤オレフィン共重合体、等を含むが、それらに限定されない。流動点降下剤の例はポリメタクリレート、等である。
【0037】
潤滑油濃縮物をここで又検討する。これらの濃縮物は通常、少なくとも約90重量%〜約10重量%、好ましくは約90重量%〜約50重量%の潤滑粘度の油、及び約10重量%〜約90重量%、好ましくは約10重量%〜約50重量%の本発明の添加剤を含む。典型的に該濃縮物は、発送及び貯蔵中にそれらを取扱い易くするために、充分な希釈剤を含有する。該濃縮物用の適切な希釈剤は任意の不活性な希釈剤、好ましくは潤滑粘度の油を含み、従って該濃縮物を潤滑油と容易に混合して潤滑油組成物を製造することが出来る。
【0038】
本発明のジチオカルバメート誘導体化合物添加剤は又燃料組成物にも有用である。適切な燃料は任意の内燃機関炭化水素燃料、例えば、ディーゼル、ガソリン、灯油、ジェット燃料、等;メタノール又はエタノールのようなアルコール燃料;又はそれらの任意の混合物を含む。該燃料がディーゼルの場合、かかる燃料は一般に約212°Fより上で沸騰する。ディーゼル燃料は、常圧留出物又は真空留出物、又は直留留出物及び熱分解留出物及び(又は)接触分解留出物の任意割合の混合物を含むことが出来る。
【0039】
該燃料がガソリンの場合、それは、直鎖ナフサ、ポリマー・ガソリン、天然ガソリン、接触分解又は熱分解炭化水素、接触改質原料油、等から誘導することが出来る。ガソリン燃料が約80°〜約450°Fの範囲で典型的に沸騰し、直鎖又は分岐鎖パラフィン、シクロパラフィン、オレフィン、芳香族炭化水素、及びこれらの任意の混合物を含むことが出来ることは、当業者により理解されるであろう。
【0040】
一般的に、燃料の組成は重要ではなく、本発明を実施する際はいかなる燃料も使用することが出来る。
【0041】
燃料組成物中における本発明の前記ジチオカルバメート誘導体化合物添加剤の濃度は、例えば、使用燃料のタイプ、他の添加剤の存在、等を含む種々の因子に依って幅広く変化し得る。一般的に、燃料中添加剤の濃度は、約10〜約10,000百万分率(ppm)、好ましくは約30〜約5000百万分率(ppm)で変動するであろう。
【0042】
以下の限定されない実施例は本発明の説明に役立つものである。
【実施例1】
【0043】
ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミルプロピオンアミド(アミド中間体)(化合物1)の製造
頂部攪拌器及び熱電対を装備した1Lの丸底フラスコに、280.0グラム(1.16モル)のジ(2−エチルヘキシル)アミンを添加した。次に、冷却により30℃の温度を維持しながら、74mL(1.22モル)の二硫化炭素を45分にわたり徐々に添加した。該生成物を1時間30℃で後反応させた。次に、164.8グラムの50重量パーセントアクリルアミド水溶液(1.16モル)を15分間にわたり添加してから45分間かけて80℃に加熱した。該生成物を3時間80℃で後反応させた。該反応体を50℃に冷却し、1Lの分液漏斗に移した。300mLの試薬ヘプタンを添加して分離を促進した。有機層を1Lのフラスコに移し、揮発分を真空蒸留により除去した。439.6グラムのミディアム・イエローで中程度粘度の液体を回収した。
【実施例2】
【0044】
生成物1の製造
頂部攪拌器及び熱電対を装備した1Lの丸底フラスコに、280.0グラム(1.16モル)のジ(2−エチルヘキシル)アミンを添加した。冷却により30℃の温度を維持しながら、74mL(1.22モル)の二硫化炭素を45分にわたり徐々に添加した。該生成物を1時間30℃で後反応させた。次に、164.8グラムの50重量パーセントアクリルアミド水溶液(1.16モル)を15分間にわたり添加してから45分間かけて75℃に加熱した。該生成物を2.5時間75℃で後反応させた。次に、105.1グラムの40重量%グリオキサール溶液(0.72モル)を添加し75℃で7時間反応させた。それから揮発分を75℃、29.1 in Hgで1.5時間真空蒸留により除去し、476グラムの暗褐色粘稠液体生成物を回収した。生成物1のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)分析により、37.16相対面積パーセントの化合物1、5.10相対面積パーセントの化合物2、22.80相対面積パーセントの化合物3、4.54相対面積パーセントの化合物4が示された。化合物1〜4を以下に示す。
【0045】
【化5】

【0046】
【化6】

【0047】
【化7】

【0048】
【化8】

【0049】
上記式中、Rは2−エチルヘキシルである。
【実施例3】
【0050】
生成物2の製造
頂部攪拌器及び熱電対を装備した1Lの丸底フラスコに、280.0グラム(1.16モル)のジ(2−エチルヘキシル)アミンを添加した。冷却により30℃の温度を維持しながら、74mL(1.22モル)の二硫化炭素を45分にわたり徐々に添加した。該生成物を1時間30℃で後反応させた。164.8グラムの50重量パーセントアクリルアミド水溶液(1.16モル)を15分間にわたり添加してから45分間かけて80℃に加熱した。それから該生成物を2.5時間80℃で後反応させた。次に、105.1グラムの40重量%グリオキサール溶液(0.72モル)を添加し80℃で3時間反応させた。揮発分を約75〜80℃の温度、29.4 in Hgで1.5時間真空蒸留により除去し、474グラムの暗褐色粘稠液体生成物を回収した。生成物2のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)分析により、35.76相対面積パーセントの化合物1、7.21相対面積パーセントの化合物2、23.43相対面積パーセントの化合物3、4.84相対面積パーセントの化合物4が示されたが、化合物1〜4の各々は上記に示されている。
【実施例4】
【0051】
生成物3の製造
頂部攪拌器及び熱電対を装備した1Lの丸底フラスコに、280.0グラム(1.16モル)のジ(2−エチルヘキシル)アミンを添加した。冷却により30℃の温度を維持しながら、74mL(1.22モル)の二硫化炭素を45分にわたり徐々に添加した。該生成物を1時間30℃で後反応させた。164.8グラムの50重量パーセントアクリルアミド水溶液(1.16モル)を15分間にわたり添加してから45分間かけて80℃に加熱した。該生成物を2.5時間80℃で後反応させた。次に、105.1グラムの40重量%グリオキサール溶液(0.72モル)を添加し90℃で7時間反応させた。揮発分を約75〜80℃の温度、29.4 in Hgで1.5時間真空蒸留により除去し、470グラムの暗褐色粘稠液体生成物を回収した。生成物3のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)分析により、42.46相対面積パーセントの化合物1、5.63相対面積パーセントの化合物2、24.71相対面積パーセントの化合物3、4.52相対面積パーセントの化合物4が示されたが、化合物1〜4の各々は上記に示されている。
【実施例5】
【0052】
生成物4の製造
頂部攪拌器及び熱電対を装備した1Lの丸底フラスコに、280.0グラム(1.16モル)のジ(2−エチルヘキシル)アミンを添加した。冷却により30℃の温度を維持しながら、74mL(1.22モル)の二硫化炭素を45分にわたり徐々に添加した。該生成物を1時間30℃で後反応させた。164.8グラムの50重量パーセントアクリルアミド水溶液(1.16モル)を15分間にわたり添加してから45分間かけて80℃に加熱した。それから該生成物を3時間80℃で後反応させた。次に、96.7グラムの40重量%グリオキサール溶液(0.67モル)を添加し80℃で5時間反応させた。揮発分を約75〜80℃の温度、29.4 in Hgで1.5時間真空蒸留により除去し、471グラムの暗褐色粘稠液体生成物を回収した。生成物4のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)分析により、39.91相対面積パーセントの化合物1、6.46相対面積パーセントの化合物2、23.76相対面積パーセントの化合物3、5.00相対面積パーセントの化合物4が示されたが、化合物1〜4の各々は上記に示されている。
【0053】
4ボール耐摩耗性試験
下記の表1に記載されたSAE(自動車技術者協会)10W−30モーター油配合物を調製した。
【表1】

【0054】
化合物1及び生成物1〜4を上記表1に記載した油配合物に0.5重量%及び1重量%の量で夫々添加し、ASTM(アメリカ材料試験協会)D4172に記載された4ボール摩耗試験で試験した。試験に用いた完全に配合された潤滑油は又、運転中のエンジン内の環境をまねるのを助けるために、1重量%のクメンヒドロペルオキシドをも含有していた。この試験の結果は又表2に含まれている。添加剤は2種のモーター油配合物(表2中の記載参照)中で有効性を試験した。表2において、試験結果の数値(平均磨耗痕直径、mm)は有効性の増加と共に減少する。
【表2】

【0055】
該データが示しているように、生成物1〜4は各々1重量%及び0.5重量%で優れた耐磨耗性能を示している。
【0056】
本明細書に開示された態様に種々の変更を加えることが出来ることは理解されるであろう。従って、上記説明は、限定するものと解釈すべきではなく、単に好ましい態様を例示するものと解釈すべきである。例えば、本発明を実施するための最良の方式として使用された上述の機能は、単に説明のために過ぎない。本発明の範囲及び精神から離れることなく、当業者は他の配置及び方法を実施することが出来る。更に、当業者は別紙特許請求の範囲の精神及び範囲内で他の変更を想像するであろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化1】


(式中、R,R,R及びRは各々独立にC−C30n−アルキル、C−C30分岐アルキル、C−C12シクロアルキル、C−C12アリール、又はC−C12アルキルアリールであり、Rは各々独立にC−C20アルキレンであり、R
【化2】


から成る群から選択されるコンパウンドで置換されたC−C20アルキレンである)
のジチオカルバメート誘導体化合物。
【請求項2】
,R,R及びRが各々独立に約2〜約30個の炭素原子の直鎖、分岐又は環状アルキルであり、Rが約2〜約12個の炭素原子の二価アルキレン基であり、Rのアルキレン基が約1〜約12個の炭素原子の二価アルキレン基である、請求項1のジチオカルバメート誘導体化合物。
【請求項3】
(a)潤滑粘度の油、及び(b)請求項1の少なくとも1種のジチオカルバメート誘導体化合物を含む潤滑油組成物。
【請求項4】
(a)ジヒドロカルビルアミン及び二硫化炭素の反応から誘導されるジ(ヒドロカルビル)チオカルバメート中間体、(b)一般式RCONH(式中、Rは2〜約30個の炭素原子を有するアルキレン基である)のアミド、及び(c)有効量のカルボニル含有化合物から得られる反応生成物。
【請求項5】
該アミドがアクリルアミドであり、該カルボニル含有化合物がジアルデヒドである、請求項4の反応生成物。
【請求項6】
該ジヒドロカルビルアミンが、各アルキル基が約2〜約30個の炭素原子を含有するジアルキルアミンである、請求項4の反応生成物。
【請求項7】
(a)潤滑粘度の油、及び(b)請求項4の反応生成物を含む潤滑油組成物。
【請求項8】
(a)炭化水素燃料、及び(b)請求項1のジチオカルバメート誘導体化合物及び請求項4の反応生成物から成る群から選択される少なくとも1種の添加剤を含む燃料組成物。


【公表番号】特表2007−530678(P2007−530678A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506199(P2007−506199)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/007764
【国際公開番号】WO2005/102994
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(505365356)ケムチュア コーポレイション (50)
【Fターム(参考)】