説明

潤滑油添加剤およびそれを含む潤滑油組成物

【課題】モリブデン化スクシンイミド複合体を提供する。また、少なくとも(a)主要量の潤滑性粘度を有するベースオイル;および(b)少量のモリブデン化スクシンイミド複合体を含む潤滑油組成物も提供する。
【解決手段】モリブデン化スクシンイミド複合体を、(a)式(I)のポリアミンのスクシンイミドを、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物と、式(I)のスクシンイミドに対するエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物の供給モル比を約0.9:1乃至約1.05:1の範囲にして反応させる工程;そして、(b)工程(a)のスクシンイミド生成物を酸性モリブデン化合物と反応させる工程を含む方法により製造する:
【化1】


式中、Rは、約500乃至約5000の数平均分子量を有する炭化水素基であり;aおよびbは独立に、2または3であり;そして、xは0乃至10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に云って潤滑油添加剤およびそれを含む潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機モリブデン化合物はエンジンオイルの潤滑性を改善することが知られている。例えば、ジチオカルバミン酸モリブデン類は、摩擦の軽減に典型的に用いられる。しかし、ジチオカルバミン酸モリブデン類は硫黄原子を含み、潤滑油中に代わりとなる硫黄源が存在しない場合には、摩擦を軽減する性能が徐々に失われる。他の有機モリブデン化合物の例としては、硫化モリブデン・ポリイソブテニル・スクシンイミド複合体類がある。これらの複合体は、耐久性を実現し、摩擦を軽減し、および/または酸化を制御するために用いられる(特許文献1〜6参照)。潤滑油中での硫黄の使用に伴って生じる問題は、硫黄がエミッションコントロール装置と適合しない場合があり、腐食問題が起こり得ることである。
【0003】
特許文献7および8は、モリブデン化C15〜C20アルケニルスクシンイミド類を開示している。これらの特許双方の実施例XIでは、無水C15〜C20アルケニルコハク酸をトリエチレンテトラアミンと反応させ、続いてモリブデン酸溶液で処理することによりモリブデン化スクシンイミドが製造される。
【0004】
特許文献9は、モリブデン化スクシンイミドを無水マレイン酸で後処理したものを、内燃機関内で使用するモーターオイルの添加剤として開示している。特許文献9は、さらに、促進剤としての水の存在下で、ポリエチレンポリアミンのアルケニルスクシンイミドをモリブデン酸アンモニウムと反応させ、次に反応生成物を、ポリエチレンポリアミンのアルケニルスクシンイミド1モル当たり0.2乃至1.0モル量の無水マレイン酸と反応させることにより、上記添加剤が製造できることも開示している。特許文献9が開示する全ての実施例では、ポリエチレンポリアミンのアルケニルスクシンイミドの製造において、無水高分子量ポリイソブテニル(950MW)コハク酸(PIBSA)が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4259194号明細書
【特許文献2】米国特許第4265773号明細書
【特許文献3】米国特許第4283295号明細書
【特許文献4】米国特許第4285822号明細書
【特許文献5】米国特許第6962896号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0209111号明細書
【特許文献7】米国特許第4357149号明細書
【特許文献8】米国特許第4500439号明細書
【特許文献9】ロシア特許第2201433号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の事情から、改善された摩擦軽減、耐久性、および酸化防止作用を示す改良されたモリブデン含有潤滑油組成物の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様では、モリブデン化スクシンイミド複合体は、
(a)式(I)のポリアミンのスクシンイミドを、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物と、式(I)のスクシンイミドに対するエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物の供給モル比を約0.9:1乃至約1.05:1の範囲にして反応させる工程;そして、
(b)工程(a)のスクシンイミド生成物を、酸性モリブデン化合物と反応させる工程;
を有する方法により製造される。
【0008】
【化1】

【0009】
式中、Rは、約500乃至約5000の数平均分子量を有する炭化水素基であり;aおよびbは、独立に、2または3であり;そして、xは、0乃至10である。
【0010】
本発明の第二の態様では、
(a)式(I)のポリアミンのスクシンイミドを、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物と、式(I)のスクシンイミドに対するエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物の供給モル比を約0.9:1乃至約1.05:1の範囲にして反応させる工程;そして、
(b)工程(a)のスクシンイミド生成物を、酸性モリブデン化合物と反応させる工程;
を有するモリブデン化スクシンイミド複合体の製造方法を提供する。
【0011】
【化2】

【0012】
式中、R、a、b、およびxは、前述した意味を有する。
【0013】
本発明の第三の態様では、
(a)主要量の潤滑性粘度を有するベースオイル;および
(b)少量の、(i)式(I)のポリアミンのスクシンイミドを、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物と、式(I)のスクシンイミドに対するエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物の供給モル比を約0.9:1乃至約1.05:1の範囲にして反応させる工程;そして、(ii)工程(i)のスクシンイミド生成物を、酸性モリブデン化合物と反応させる工程を含む方法により製造されるモリブデン化スクシンイミド複合体を含む潤滑油組成物を提供する。
【0014】
【化3】

【0015】
式中、R、a、b、およびxは、前述した意味を有する。
【0016】
本発明の第四の態様では、
(a)主要量の潤滑性粘度を有するベースオイル;および
(b)少量の、(i)式(I)のポリアミンのスクシンイミドを、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物と、式(I)のスクシンイミドに対するエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物の供給モル比を約0.9:1乃至約1.05:1の範囲にして反応させる工程;そして、(ii)工程(i)のスクシンイミド生成物を、酸性モリブデン化合物と反応させる工程を含む方法により製造されるモリブデン化スクシンイミド複合体を含む潤滑油組成物を用いて内燃機関を作動させる工程を有する内燃機関の操作方法を提供する。
【0017】
【化4】

【0018】
式中、R、a、b、およびxは、前述した意味を有する。
【0019】
本発明の第五の態様では、
(a)不活性有機希釈剤を約20乃至約80質量%:および
(b)一以上の、(i)式(I)のポリアミンのスクシンイミドを、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物と、式(I)のスクシンイミドに対するエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物の供給モル比を約0.9:1乃至約1.05:1の範囲にして反応させる工程;そして、(ii)工程(i)のスクシンイミド生成物を、酸性モリブデン化合物と反応させる工程を含む方法により製造されるモリブデン化スクシンイミド複合体を含む添加剤パッケージ組成物または濃縮物を提供する。
【0020】
【化5】

【0021】
式中、R、a、b、およびxは、前述した意味を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のモリブデン化スクシンイミド複合体を潤滑油組成物に添加し、内燃機関で用いると、高度な摩擦軽減、耐久性、および酸化−腐食防止が有利に実現される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一般的に云って、本発明のモリブデン化スクシンイミド複合体は、
(a)式(I)のポリアミンのスクシンイミドを、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物と、式(I)のスクシンイミドに対するエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物の供給モル比を約0.9:1乃至約1.05:1の範囲にして反応させる工程;そして、
(b)工程(a)のスクシンイミド生成物を酸性モリブデン化合物と反応させる工程;
を含む方法により製造される。
【0024】
【化6】

【0025】
式中、Rは、約500乃至約5000の数平均分子量(好ましくは約700乃至約2500の数平均分子量、さらに好ましくは約710乃至約1100の数平均分子量)を有する炭化水素基であり;aおよびbは、独立に、2または3であり;そして、xは、0乃至10(好ましくは1乃至6、さらに好ましくは2乃至5)である。
【0026】
ひとつの態様では、Rはアルキルまたはアルケニル基である。別の態様では、Rはポリアルケニル基である。好ましいポリアルケニル基は、ポリイソブテニル基である。
【0027】
工程(a)において、式(I)のスクシンイミドを、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物と、式(I)のスクシンイミドに対するエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物の供給モル比を約0.9:1乃至約1.05:1の範囲にして反応させる。
【0028】
【化7】

【0029】
式中、R、a、b、およびxは、前述した意味を有する。
式(I)の出発原料であるスクシンイミドは、式(II)の無水物をポリアミンと反応させることにより得られる。
【0030】
【化8】

【0031】
式中、Rは、前述した意味を有する。
【0032】
式(II)の無水物は、例えばシグマ・アルドリッチ社(Sigma Aldrich、セント・ルイス、ミズーリ州、米国)のような供給源から商業的に入手するか、あるいは当該技術において良く知られている方法により製造することができる。
【0033】
式(I)のスクシンイミドの製造において、使用に適したポリアミンは、ポリアルキレンジアミン類を含むポリアルキレンポリアミン類である。典型的な上記ポリアルキレンポリアミンは、約2乃至約12個の窒素原子と、約2乃至24個の炭素原子とを含む。特に適したポリアルキレンポリアミンは、化学式HN−(RNH)−Hを有する化合物である。ここで、Rは、2または3の炭素原子数を有する直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、cは1乃至9である。最適なポリアルキレンポリアミンの代表例には、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、およびそれらの混合物が含まれる。最も好ましいポリアルキレンポリアミンは、テトラエチレンペンタアミンである。
【0034】
本発明での使用に適したポリアミンの多くは、市販品を利用できる。また、他の化合物は、当該技術において良く知られている方法により製造することができる。例えば、アミン類の製造方法とそれらの反応については、シジウィックの「窒素の有機化学」(The Organic Chemistry of Nitrogen、クラレンドンプレス社、オックスフォード、1966年);ノラーの「有機化合物の化学」(Chemistry of Organic Compounds、ソンダース社、フィラデルフィア、第2版、1957年);およびカーク・オスマーの「化学工学大辞典」(Encyclopedia of Chemical Technology、第2版、特に第2巻、99〜116頁)に詳細が記載されている。
【0035】
一般に、式(II)の無水物はポリアミンと、約130℃乃至約220℃の温度で、好ましくは約145℃乃至約175℃の温度で反応させる。反応は、窒素やアルゴンのような不活性な雰囲気下で実施できる。反応に用いる式(II)の無水物の量は、反応混合物全体の質量に対して、約30乃至約95質量%の範囲であり、好ましくは約40乃至約60質量%の範囲である。
【0036】
適切なエチレン性不飽和カルボン酸類またはそれらの無水物としては、エチレン性不飽和モノカルボン酸類またはそれらの無水物、エチレン性不飽和ジカルボン酸類またはそれらの無水物、それらの類似物、およびそれらの混合物が含まれる。有用なモノカルボン酸類またはそれらの無水物は、限定される訳ではないが、アクリル酸、メタクリル酸、それらの類似物、およびそれらの混合物を含む。有用なエチレン性不飽和ジカルボン酸類またはそれらの無水物は、限定される訳ではないが、フマル酸、無水マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、それらの類似物、およびそれらの混合物を含む。好ましいエチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物は、無水マレイン酸またはその誘導体である。この無水物および類似の無水物は、出発化合物のスクシンイミドに結合して、カルボン酸としての機能を付与する。式(I)のスクシンイミドを、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物で処理することにより、充分な量のモリブデン化合物を複合体に取り込むことが可能になる。
【0037】
一般に、エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物は、約50℃乃至約100℃の範囲の温度で溶融条件に至るまで加熱し、その後、式(I)のスクシンイミドと混合する。
【0038】
本発明のモリブデン化スクシンイミド複合体の製造に使用するモリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物または酸性モリブデン化合物の塩である。一般に、これらのモリブデン化合物は6価である。適切なモリブデン化合物の代表的な例は、限定される訳ではないが、酸化モリブデン、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、他のモリブデン酸アルカリ金属塩類、および水素塩類(例、モリブデン酸水素ナトリウム)のような他のモリブデン酸塩、あるいは、MoOCl、MoOBr、MoCl、または他の類似の酸性モリブデン化合物を含む。好ましい酸性モリブデン化合物は、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、およびモリブデン酸アルカリ金属塩類である。特に好ましくは、三酸化モリブデンである。
【0039】
工程(b)では、工程(a)のスクシンイミド生成物と酸性モリブデン化合物との混合物を希釈剤と共に、あるいは希釈剤なしで製造する。必要ならば希釈剤を使用して、攪拌を容易にするために適した粘度を実現する。適切な希釈剤は、潤滑油および炭素原子と水素原子のみを含む液状化合物である。モリブデン酸アンモニウムの溶液を実現するため、任意にさらに水酸化アンモニウムを反応混合物に加えてもよい。
【0040】
一般に、反応混合物は、100℃よりも低い温度または100℃前後の温度に、好ましくは約80℃から約100℃の温度に、モリブデンが充分に反応するまで加熱する。この段階の反応時間は、典型的な場合で約15分間から約5時間の範囲内であり、好ましくは約1乃至約2時間の範囲内である。工程(a)のスクシンイミド生成物に対するモリブデン化合物のモル比は、約0.1:1乃至約2:1であり、好ましくは約0.5:1乃至約1.5:1であり、最も好ましくは約1:1である。モリブデン化合物と工程(a)のスクシンイミド生成物との反応後に存在する水は、反応混合物を約100℃以上、好ましくは約120℃乃至約160℃の温度に加熱することによって、除去してもよい。
【0041】
本発明の別の態様は、少なくとも(a)主要量の潤滑性粘度を有するベースオイル(基油);および(b)少量の本発明の(潤滑油添加剤として有用な)モリブデン化スクシンイミド複合体を含む潤滑油組成物を対象とする。潤滑油組成物は従来からの方法により、適量の本発明の潤滑油添加剤を潤滑性粘度を有するベースオイルと混合することにより製造できる。潤滑剤が予定している用途および他の添加剤の存在に基づいて、特定のベースオイルを選択する。少量の本発明のモリブデン化スクシンイミド複合体は、潤滑油組成物の全質量に対して、一般に約0.001乃至約10質量%の範囲であり、好ましくは約0.5乃至約2質量%の範囲である。
【0042】
本発明の潤滑油組成物における使用に適した潤滑性粘度を有するベースオイルは、組成物の全質量に対して、一般に多量に存在し、具体的には50質量%より多く、好ましくは約70質量よりも多く、さらに好ましくは約80乃至約99.5質量%であり、最も好ましくは約85乃至約98質量%である。ここで使用する「ベースオイル(基油)」との表現は、一つのベースストックまたは複数のベースストックを調合したものを意味すると理解すべきである。このベースストックは、単一の製造者によって(原材料供給地や製造値は問わない)同じ仕様書に基づき生産され;同じ製造者の仕様書に適合し、さらに;固有の処方、製品特定番号またはそれらの双方により同定される潤滑性成分である。ここで使用されるベースオイルとは、既に知られているものに加えて、今後発見されるベースオイルであってもよい。このベースオイルは、エンジンオイル、船舶用シリンダ油、機能性液体(例、作動液、ギアオイル、変速機液)等のような、幾つかまたは全ての用途において潤滑油組成物の処方に用いられる潤滑性粘度を有している。加えて、ここで使用されるベースオイルは、メタクリル酸アルキル重合体、オレフィン共重合体(例、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体)、それらの類似物、およびそれらの混合物のような粘度指数向上剤を任意に含むことができる。
【0043】
ベースオイルの粘度は、用途に依存する。このことは、当業者であれば、容易に認識できるであろう。よって、ここで使用されるベースオイルの粘度は、100℃において通常は約2乃至約2000センチストロークス(cSt)の範囲である。エンジンオイルとして使用する個々のベースオイルは、100℃において一般に約2cST乃至約30cSt、好ましくは約3cSt乃至約16cSt、最も好ましくは約4cSt乃至約12cStの範囲に動粘度を有する。また、ベースオイルは、エンジンオイルに求められる等級を与えるように、要求される最終用途とオイルに最終的に含まれる添加剤とに対応して、選択および配合される。エンジンオイルの等級とは、例えば、潤滑油組成物は、SAE粘度等級で0W、0W−20、0W−30、0W−40、0W−50、0W−60、5W、5W−20、5W−30、5W−40、5W−50、5W−60、10W、10W−20、10W−30、10W−40、10W−50、15W、15W−20、15W−30、または15W−40を有する。ギアオイルとして使用するオイルは、100℃において約2cSt乃至約2000cStの粘度を有することができる。
【0044】
ベースストックは、様々に異なる方法を用いて製造することができる。それらの方法は、限定される訳ではないが、蒸留法、溶剤精製法、水素処理法、オリゴマー化法、エステル化法、および再精製法を含む。再精製されたストックからは、製造、汚染、あるいは以前の使用において加えられた物質が実質的に除かれている必要がある。本発明の潤滑油組成物のベースオイルは、天然または合成による潤滑性のベースオイルである。適当な炭化水素合成オイルは、限定される訳ではないが、ポリアルファオレフィン(PAO)オイルのようなポリマーを生じるエチレンの重合反応または1−オレフィンの重合反応、あるいは一酸化炭素と水素ガスとを用いる炭化水素合成法(例、フィッシャー−トロプシュ法)により合成されるオイルを含む。適当なベースオイルの例では、重い分画が仮に存在しても極めてわずかしか含まれていない。例えば、100℃における粘度が20cSt以上である潤滑油分画は、仮に存在しても極めてわずかである。
【0045】
ベースオイルは、天然の潤滑性オイル、合成潤滑性オイル、またはそれらの混合物から得ることができる。適当なベースオイルは、合成ワックスおよびスラックワックスの異性化により得られるベースストックに加えて、粗製物中の芳香性かつ極性成分を(溶媒抽出よりも)水素化分解することにより製造される水素化分解ベースストックを含む。適当なベースオイルは、API公報1509(14版、補遺I、12月、1998年)で定義されるAPIカテゴリーI、II、III、IV、およびVの全てに属するものを含む。グループIVのベースオイルは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。グループVのベースオイルは、グループI、II、III、およびIVに含まれない他の全てのベースオイルを含む。この発明ではグループII、III、およびIVのベースオイルが好ましく用いられるが、ベースオイルを、グループI、II、III、IV、およびVの一つ以上に属するベースストックまたはベースオイルを組み合わせて製造することもできる。
【0046】
有用な天然オイルは、鉱物性潤滑油(例、液状石油起源オイル、パラフィン型、ナフサ型またはパラフィン−ナフサ混合型の溶剤処理または酸処理鉱物性潤滑油、石炭またはシェール油から得られるオイル)、動物または植物油(例、菜種油、ひまし油、ラード油)、およびそれらの類似物を含む。
【0047】
有用な合成潤滑油は、限定される訳ではないが、重合化または共重合化オレフィン類(例、ポリブチレン類、ポリプロピレン類、プロピレン−イソブチレン共重合体類、塩素化ポリブチレン類、ポリ1−ヘキセン類、ポリ1−オクテン類、ポリ1−デセン類)のような炭化水素オイルおよびハロゲン置換炭化水素オイル、それらの類似物、およびそれらの混合物;ドデシルベンゼン類、テトラデシルベンゼン類、ジノニルベンゼン類、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン類およびそれらの類似物のようなアルキルベンゼン類:ビフェニル類、ターフェニル類、アルキル化ポリフェニル類およびそれらの類似物のようなポリフェニル類;アルキル化ジフェニルエーテル類、アルキル化ジフェニルスルフィド類およびそれらの誘導体、類似体、および同族体、それらの類似物を含む。
【0048】
他の有用な合成潤滑油は、限定される訳ではないが、炭素原子5以下のオレフィン(例、エチレン、プロピレン、ブチレン類、イソブテン、ペンテン、およびそれらの混合物)を重合させることにより得られるオイルを含む。そのようなポリマーオイルの製造方法は、当業者に良く知られている。
【0049】
別の有用な合成炭化水素オイルは、適度の粘度を有するアルファオレフィンの液状ポリマーを含む。特に有用な合成炭化水素オイルは、C〜C12アルファオレフィン類の水素化液体オリゴマー(例、1−デセントリマー)である。
【0050】
有用な合成潤滑油の別の分類には、限定される訳ではないが、アルキレンオキシドポリマー類、すなわち、ホモポリマー、共重合体、およびそれらの誘導体が含まれる。これらの末端のヒドロキシル基は、例えばエステル化やエーテル化によって、修飾されていてもよい。これらのオイルの例は、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合化により製造されるオイル、これらポリオキシアルキレンポリマーのアルキルまたはフェニルエーテル(例、平均分子量が1000のメチルポリプロピレングリコールエーテル、分子量が500〜1000のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、分子量が1000〜1500のポリプロピレングリコールのジエチルエーテル等)、あるいはそれらのモノ−またはポリカルボン酸エステル(例、酢酸エステル、混合C〜C脂肪酸エステル)、またはテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステルを含む。
【0051】
さらに別の有用な合成潤滑油の分類には、限定される訳ではないが、ジカルボン酸(例、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸類、アルケニルコハク酸類、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸類、アルケニルマロン酸類等)と様々なアルコール(例、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等)とのエステルが含まれる。これらのエステルの具体例は、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジn−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルのジエステル、セバシン酸1モルとテトラエチレングリコール2モルおよび2−エチルヘキサン酸2モルとを反応させて形成する複合エステル、それらの類似物を含む。
【0052】
合成オイルとして有用な別のエステルは、限定される訳ではないが、約5乃至約12の炭素原子を有するカルボン酸とアルコール(例、メタノール、エタノール等)、ポリオールおよびポリオールエーテル(例、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール)、それらの類似物とから製造されるエステルを含む。
【0053】
ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−、またはポリアリールオキシ−シロキサンオイルおよびシリケートオイルのようなシリコーンを基材とするオイルは、合成潤滑油の他の有用な分類を構成する。これらの具体例は、限定される訳ではないが、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ(4−メチルヘキシル)シリケート、テトラ(p−tert−ブチルフェニル)シリケート、ヘキシル(4−メチル−2−ペントキシ)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン類、ポリ(メチルフェニル)シロキサン類、それらの類似物を含む。さらに別の有用な合成潤滑油は、限定される訳ではないが、リンを含む酸の液状エステル(例、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、デカンホスフィン酸のジエチルエステルなど、テトラヒドロフランの重合体、それらの類似物を含む。
【0054】
潤滑油は、未精製、精製および再精製オイルから得ることができる。これらのオイルは、天然、合成あるいは以上に開示した2以上の分類に属するものの混合物のいずれであってもよい。未精製オイルは、天然または合成原料(例、石炭、シェール、またはタールサンドビチューメン)から精製や処理なしで得られるものである。未精製オイルの例は、限定される訳ではないが、乾留操作により直接得られるシェールオイル、蒸留により直接得られる石油系オイル、またはエステル化方法により直接得られるエステルオイルを含む。これらの例は、いずれも、さらに処理を実施することなく使用される。精製オイルは、未精製オイルに類似するが、さらに一つ以上の性質を改善するため一つ以上の精製工程により処理されている点で異なる。このような精製技術は、当業者に知られており、例えば、溶媒抽出、二次蒸留、酸またはアルカリ抽出、濾過、パーコレーション、水素化処理、脱蝋などを含む。再精製オイルは、精製オイルを得るために使用される方法と類似の方法で使用済みオイルを処理することにより得られる。そのような再精製オイルは、再生オイルまたは再処理オイルとしても知られ、多くの場合、消耗した添加剤やオイル分解産物を除去するための手法によって追加処理されている。
【0055】
ワックスの水添異性化により得られる潤滑油のベースストックを、単独あるいは上記天然および/または合成ベースストックと組み合わせて使用することもできる。そのようなワックス異性化オイルは、天然または合成ワックスあるいはそれらの混合物を水添異性化触媒の存在下で水添異性化処理することにより製造される。
【0056】
天然のワックスとして代表的なものは、鉱物オイルの溶媒脱蝋によって回収されるスラックワックスである。合成ワックスとして代表的なものは、フィッシャー−トロプシュ法により製造されるワックスである。
【0057】
本発明の潤滑油組成物は、さらに補助的な機能を付加するために周知の添加剤を含むことができ、これによりそれらの添加剤が分散または溶解している最終的な潤滑油組成物が得られる。例えば、潤滑油組成物は、酸化防止剤、摩耗防止剤、清浄剤(例、金属含有清浄剤)、錆止め剤、曇り止め剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、摩擦緩和剤、流動点降下剤、消泡剤、補助溶剤、パッケージ相溶化剤、腐食防止剤、無灰性分散剤、染料、極圧剤、それらの類似物、およびそれらの混合物と混合することができる。様々な添加剤が知られており、商業的に入手できる。添加剤およびそれらの類似化合物は、一般的な混合方法によって、本発明の潤滑油組成物の製造に用いることができる。
【0058】
酸化防止剤の例は、限定される訳ではないが、アミン型(例、ジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、N,N−ジ(アルキルフェニル)アミン類;アルキル化フェニレンジアミン類);フェノール型(例、BHT、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールおよび2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2−オクチル−3−プロパン酸)フェノールのような立体障害があるアルキルフェノール類);およびそれらの混合物を含む。
【0059】
無灰性分散剤の例は、限定される訳ではないが、無水ポリアルキレンコハク酸;無水ポリアルキレンコハク酸の窒素原子を含まない誘導体;スクシンイミド類、カルボン酸アミド類、ヒドロカルビルモノアミン類、ヒドロカルビルポリアミン類、マンニッヒ塩基、ホスホノアミド類、およびホスホルアミド類からなる群より選ばれる塩基性窒素化合物;トリアゾール類(例、アルキルトリアゾール類、およびベンゾトリアゾール類);カルボン酸エステルを一つ以上の他の極性官能基(例、アミン、アミド、イミン、イミド、ヒドロキシル、カルボキシル、それらの類似物)と共に含む共重合体(例えば、アクリル酸またはメタクリル酸長鎖アルキルと上記官能基を有するモノマーとの共重合により得られる生成物);それらの類似物、およびそれらの混合物を含む。これらの分散剤の誘導体(例、ホウ素化スクシンイミド類のようなホウ素化分散剤)も用いることができる。
【0060】
錆止め剤の例は、限定される訳ではないが、ノニオン性ポリオキシアルキレン剤(例、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビトール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、およびモノオレイン酸ポリエチレングリコール);ステアリン酸および他の脂肪酸類;ジカルボン酸類;金属石鹸;脂肪酸アミン塩;強スルホン酸の金属塩;多価アルコールの部分カルボン酸エステル;リン酸エステル;(短鎖)アルケニルコハク酸類;それらの部分エステルおよびそれらの含窒素誘導体;合成アルキルアリールスルホン酸類(例、ジノニルナフタレンスルホン酸金属塩類);それらの類似物、およびそれらの混合物を含む。
【0061】
摩擦緩和剤の例は、限定される訳ではないが、アルコキシ化脂肪族アミン;ホウ素化脂肪族エポキシド;脂肪族亜リン酸、脂肪族エポシキド、脂肪族アミン、ホウ素化アルコキシ化脂肪族アミン、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、グリセロールエステル、ホウ素化グリセロールエステル、ホウ素化脂肪族エステル;および米国特許第6372696号明細書に開示されている脂肪族イミダゾリン(同明細書に記載されている内容は、参照のためここに組み込まれる);C〜C75、好ましくはC〜C24、最も好ましくはC〜C20脂肪酸エステルと、アンモニアおよびアルカノールアミンからなる群より選ばれる含窒素化合物との反応生成物から得られる摩擦緩和剤;それらの類似物、およびそれらの混合物を含む。
【0062】
消泡剤の例は、限定される訳ではないが、メタクリル酸アルキルの重合体;ジメチルシリコーンの重合体;それらの類似物、およびそれらの混合物を含む。
【0063】
以上述べた添加剤を使用する場合、機能的に有効な量を使用して、必要とされる性質を潤滑剤に与えるようにする。そのため、例えば、仮に添加剤が摩擦緩和剤である場合、摩擦緩和剤の機能的な有効量は、潤滑剤に必要とされる摩擦緩和性を付与するために充分な量である。これらの添加剤の使用における個々の濃度は、潤滑油組成物全質量に対して、一般に約0.001質量%乃至約20質量%であり、ある態様においては約0.01質量%乃至約10質量%である。
【0064】
本発明の潤滑油組成物の最終的な適用分野としては、例えば、クロスヘッドディーゼルエンジンにおける舶用シリンダ潤滑油、自動車および鉄道のクランクケース潤滑油、それらの類似物、重機械(例えば製鉄所)の潤滑油、それらの類似物、あるいはベアリングのグリース、それらの類似物が可能である。潤滑油組成物が液体であるか、あるいは固体であるかは、一般に増粘剤の有無による。代表的な増粘剤には、酢酸ポリウレア、ステアリン酸リチウム、それらの類似物が含まれる。
【0065】
本発明の他の態様では、本発明の潤滑油添加剤を、添加剤のパッケージまたは濃縮物として提供できる。添加剤濃縮物では、添加剤が、実質的に不活性で通常は液体である有機希釈剤(例、鉱物油、ナフサ、ベンゼン、トルエン、またはキシレン)に加えられて、添加剤濃縮物を形成する。これらの濃縮物は、通常、約20質量%乃至約80質量%の上記希釈剤を含む。一般には100℃において約4乃至約8.5cSt、好ましくは100℃において約4乃至約6cStの粘度を有する中性オイルが希釈剤として用いられるが、添加剤および最終的に生産される潤滑油に対して適合性がある合成オイルや他の有機液体を使用することもできる。添加剤パッケージも、上記のような様々な他の添加剤を、必要とされる量かつ必要量のベースオイルと直接組み合わせることが容易な比率で含むことができる。
【0066】
以下に記載する限定されることがない実施例において、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0067】
[実施例1]
オーバーヘッド機械式攪拌機、窒素ガスラインとディーン−スターク・トラップとを備えた水コンデンサー、温度調節器、マントルヒーター、および熱電対を取り付けた500mlの三つ口丸底フラスコに、数平均分子量(Mn)が750のポリイソブテニル基と139mgKOH/gのケン化価(SAP)とを有する無水ポリイソブテニルコハク酸(PIBSA)を252g加えた。混合物を約100℃まで加熱し、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)47.3g(PIBSAに対して0.8モル当量)を、添加用漏斗から混合物に滴下しながら加えた。添加の初期段階では、わずかな発泡が起きた。TEPAの添加後、温度を165℃まで約60分間かけて上昇させ、一晩、165℃を保った。
【0068】
生成物を冷却し、50.00g(0.0426モル)を、250mlの三つ口丸底フラスコに移した。無水マレイン酸を添加するため、フラスコを100℃に加熱した。次に、4.18g(TEPAに対して1モル当量)の無水マレイン酸を加えた。反応器の温度を1時間かけて160℃まで上昇させ、この温度を一晩維持した。
【0069】
混合物を85℃まで冷却してから、トルエン49.4g、三酸化モリブデン6.12g(TEPAに対して1モル当量)、蒸留水5g、および消泡剤2滴を加えた。混合物を攪拌し、100℃で一晩加熱した。次に生成物を、減圧下、暖めたブフナー漏斗中のセライト512を通して濾過した。濾液を集めて、回転蒸発器(最大温度が140℃の完全ポンプ吸引)を用いて濃縮し、トルエンと残存する水を除去した。生成物は、粘性を有する褐色のオイルで、以下の性質を有していた。
【0070】
Mo:2.35質量%
N: 5.7質量%
【0071】
全塩基価:140mgKOH/g
【0072】
[実施例2]
PIBSA:TEPAの添加モル比を0.5:1に変更した以外は、実施例1に示した操作および成分と基本的に同じものを用いてモリブデン化スクシンイミド複合体を製造した。モリブデン化スクシンイミド複合体が有するモリブデン含量は1.02質量%であった。
【0073】
[実施例3]
PIBSAが1000Mnのポリイソブテニル基と120mgKOH/gのSAP数とを有する以外は、実施例1に示した操作および成分と基本的に同じものを用いてモリブデン化スクシンイミド複合体を製造した。モリブデン化スクシンイミド複合体が有するモリブデン含量は5.9質量%であった。
【0074】
[実施例4]
PIBSA:TEPAの添加モル比を0.5:1に変更した以外は、実施例3に示した操作および成分と基本的に同じものを用いてモリブデン化スクシンイミド複合体を製造した。モリブデン化スクシンイミド複合体が有するモリブデン含量は0.4質量%であった。
【0075】
[実施例5]
PIBSAが2300Mnのポリイソブテニル基と56.4mgKOH/gのSAP数とを有する以外は、実施例1に示した操作および成分と基本的に同じものを用いてモリブデン化スクシンイミド複合体を製造した。モリブデン化スクシンイミド複合体が有するモリブデン含量は1.8質量%であった。
【0076】
[実施例6]
PIBSA:TEPAの添加モル比を0.5:1に変更した以外は、実施例5に示した操作および成分と基本的に同じものを用いてモリブデン化スクシンイミド複合体を製造した。モリブデン化スクシンイミド複合体が有するモリブデン含量は0.6質量%であった。
【0077】
[実施例7]
PIBSA:TEPAの添加モル比を1:1に変更した以外は、実施例3に示した操作および成分と基本的に同じものを用いてモリブデン化スクシンイミド複合体を製造した。モリブデン化スクシンイミド複合体が有するモリブデン含量は4.6質量%であった。
【0078】
[比較例A]
標準となる潤滑油の処方として、スクシンイミド分散剤3.8質量%、過塩基度が低いスルホン酸カルシウム3.5mモル/kg、高い過塩基度を有するスルホン酸カルシウム45mモル/kg、第二級アルコールから得られたジチオリン酸亜鉛5mモル/kg、第一級アルコールから得られたジチオリン酸亜鉛2mモル/kg、ジフェニルアミン酸化防止剤0.5質量%、流動点降下剤0.3質量%、オレフィン共重合体粘度指数改善剤4.8質量%、および発泡防止剤10ppmを、グループIIのベースオイル中に含むものを作製した。
【0079】
[比較例B]
比較例Aと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。ポリイソブテニル(1000M.W.)から得られる市販の酸化モリブデンスクシンイミド複合体を、上記標準潤滑油処方に対して、処方中の全Mo含量が500ppmとなるように配合した。
【0080】
[実施例8]
比較例Aと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例1の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、処方中の全Mo含量が500ppmとなるように配合した。
【0081】
[実施例9]
比較例Aと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例2の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、処方中の全Mo含量が500ppmとなるように配合した。
【0082】
[実施例10]
比較例Aと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例3の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、処方中の全Mo含量が500ppmとなるように配合した。
【0083】
[実施例11]
比較例Aと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例4の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、処方中の全Mo含量が500ppmとなるように配合した。
【0084】
[実施例12]
比較例Aと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例5の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、処方中の全Mo含量が500ppmとなるように配合した。
【0085】
[実施例13]
比較例Aと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例6の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、処方中の全Mo含量が500ppmとなるように配合した。
【0086】
[実施例14]
比較例Aと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例7の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、処方中の全Mo含量が500ppmとなるように配合した。
【0087】
(酸化性能)
酸化ベンチテストにおいて、本発明の潤滑油添加物を含む実施例8〜14の潤滑油組成物について、酸化性を分析し、比較例Aの標準潤滑油処方および比較例Bの潤滑油組成物における酸化性と比較した。酸化に関する検討は、E.S.ヤマグチ外、摩擦学会報、42巻(4)、895〜901頁(1999年)に記載されているバルクオイル酸化ベンチテストにおいて実施した。このテストでは、170℃において一定の圧力化で規定の質量のオイルが取り込む酸素の速度を監視する。酸素が急速に取り込まれる(自動酸化として知られる)段階に到達するまでに要する時間を、誘導時間として定義する。ベンチテストの結果は、一般に、±0.5時間の範囲内で再現性がある。この試験では、より長い導入時間が、より有効な抗酸化作用に対応する。酸化ベンチテストの結果を、第1表に示す。
【0088】
第1表
(酸化ベンチテストの結果)
──────────────────────────────
比較例/実施例 モリブデン(Mo)配合比 誘導時間
──────────────────────────────
比較例A − 15
比較例B 500ppm 29
実施例8 500ppm 55
実施例9 500ppm 25
実施例10 500ppm 27
実施例11 500ppm 61
実施例12 500ppm 30
実施例13 500ppm 33
実施例14 500ppm 24
──────────────────────────────
【0089】
上記データに示されるように、本発明の潤滑油組成物は、本発明の範囲外の潤滑油組成物と同等であり、場合によっては顕著に優れている。
【0090】
[比較例C]
電磁攪拌機、窒素ガスラインとディーン−スターク・トラップとを備えた水コンデンサー、温度調節器、マントルヒーター、および熱電対を取り付けた100mlの丸底フラスコに、無水ポリイソブテニル(1000M.W.)コハク酸(PIBSA)および一分子当たり約5個のアミン性基を有するポリアミンから製造され、4.6質量%のモリブデンと2.2質量%の窒素原子とを有する市販の酸化モリブデン処理モノスクシンイミド分散剤25.1gを加えた。ポリアミン:PIBSAの添加モル比は、約0.8:1であった。酸化モリブデン処理モノスクシンイミド分散剤を攪拌し、無水マレイン酸1.68g(1モル当量)を加えながら110℃まで加熱した。混合物を約160℃で1時間攪拌し、黒色の粘性オイルを得た。
【0091】
[比較例D]
電磁攪拌機、窒素ガスラインとディーン−スターク・トラップとを備えた水コンデンサー、温度調節器、マントルヒーター、および熱電対を取り付けた100mlの丸底フラスコに、無水ポリイソブテニル(1000M.W.)コハク酸(PIBSA)および一分子当たり約5個のアミン性基を有するポリアミンから製造され、4.6質量%のモリブデンと2.2質量%の窒素原子とを有する市販の酸化モリブデン処理モノスクシンイミド分散剤25.1gを加えた。ポリアミン:PIBSAの添加モル比は、約0.8:1であった。酸化モリブデン処理モノスクシンイミド分散剤を攪拌し、無水マレイン酸1.68g(2モル当量)を加えながら110℃まで加熱した。混合物を約160℃で1時間攪拌し、黒色の粘性オイルを得た。
【0092】
[比較例E]
標準となる処方として、スクシンイミド分散剤5質量%、ホウ素化スクシンイミド分散剤3質量%、過塩基度が低いカルシウムスルホネート4mモル/kg、カルボキシレート系清浄剤58mモル/kg、ジチオリン酸亜鉛8mモル/kg、ジフェニルアミン酸化防止剤0.5質量%、ヒンダードフェノール酸化防止剤0.5質量%、流動点降下剤0.3質量%、オレフィン共重合体粘度指数向上剤9.85質量%、および消泡剤5ppmを、グループIIのベースオイル中に含むものを作製した。
【0093】
[比較例F]
比較例Eと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。ポリイソブテニル(1000M.W.)から得られる市販の酸化モリブデンスクシンイミド複合体を、上記標準潤滑油処方に対して、処方中の全Mo含量が500ppmとなるように配合した。
【0094】
[比較例G]
比較例Eと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。ポリイソブテニル(1000M.W.)から得られる市販の酸化モリブデンスクシンイミド複合体を、上記標準潤滑油処方に対して、1質量%で配合した。
【0095】
[比較例H]
比較例Eと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。比較例Cの潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、処方中の全Mo含量が500ppmとなるように配合した。
【0096】
[比較例I]
比較例Eと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。比較例Cの潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、1質量%で配合した。
【0097】
[比較例J]
比較例Eと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。比較例Dの潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、処方中の全Mo含量が500ppmとなるように配合した。
【0098】
[比較例K]
比較例Eと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。比較例Dの潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、1質量%で配合した。
【0099】
[実施例15]
比較例Eと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例1の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、Moを基準に500ppmで配合した。
【0100】
[実施例16]
比較例Eと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例1の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、1質量%で配合した。
【0101】
[実施例17]
比較例Eと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例2の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、処方中の全Mo含量が500ppmとなるように配合した。
【0102】
[実施例18]
比較例Eと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例2の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、1質量%で配合した。
【0103】
[実施例19]
比較例Eと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例3の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、処方中の全Mo含量が500ppmとなるように配合した。
【0104】
[実施例20]
比較例Eと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例3の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、1質量%で配合した。
【0105】
[実施例21]
比較例Eと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例4の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、処方中の全Mo含量が500ppmとなるように配合した。
【0106】
[実施例22]
比較例Eと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例4の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、1質量%で配合した。
【0107】
[実施例23]
比較例Eと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例5の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、処方中の全Mo含量が500ppmとなるように配合した。
【0108】
[実施例24]
比較例Eと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例5の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、1質量%で配合した。
【0109】
[実施例25]
比較例Eと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例6の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、処方中の全Mo含量が500ppmとなるように配合した。
【0110】
[実施例26]
比較例Eと同じ添加剤、ベースオイル、および配合比による標準潤滑油処方を製造した。実施例6の潤滑油添加剤を、上記標準潤滑油処方に対して、1質量%で配合した。
【0111】
(高速往復リグ(HFRR)評価)
本発明に従う実施例15〜26の潤滑油組成物について、HFRR耐久性と摩擦性能とを評価し、比較例Eの標準潤滑油処方および比較例F〜Kの潤滑油組成物と比較した。HFRR試験は、候補となる潤滑油について弁系列の耐久性を決定するための工業的に認知されているベンチテストである。PCS計測器は、電磁振動器を使用し、固定した試料(平板)に対して圧力を加えながら、小さな振幅で試料(ボール)を振動させる。振動の振幅と周期および負荷は、変更できる。ボールと平板との間の摩擦力および電気的な接触抵抗(ECR)を測定する。平らな固定した試料は、潤滑油を加えた浴中に保ち、加熱することができる。潤滑油は、潤滑油の全量に対して約6質量%のカーボンブラックで前処理する。カーボンブラックはオイル中で攪拌して湿らせ、さらに試験開始前、15分間均質化する。ボール表面の摩耗による傷を、光学顕微鏡による手作業で測定し、記録した。この試験において、より小さな摩耗による傷は、抗摩耗剤がより有効であることに対応する。また、より小さな摩擦係数は、摩擦緩和剤がより有効であることに対応する。HFRRによる摩耗および摩擦性能のデータを、第2表に示す。
【0112】
第2表
(HFRRによる摩耗および摩擦性能結果)
──────────────────────────────
比較例/実施例 濃度 摩擦係数 摩耗による傷(μm)
──────────────────────────────
比較例E − 0.139 195
比較例F 500ppm 0.124 171
比較例G 1質量% 0.130 195
比較例H 500ppm 0.139 145
比較例I 1質量% 0.139 151
比較例J 500ppm 0.132 149
比較例K 1質量% 0.138 146
実施例15 500ppm 0.081 158
実施例16 1質量% 0.124 182
実施例17 500ppm 0.133 195
実施例18 1質量% 0.136 211
実施例19 500ppm 0.140 135
実施例20 1質量% 0.132 137
実施例21 500ppm 0.113 191
実施例22 1質量% 0.137 193
実施例23 500ppm 0.135 170
実施例24 1質量% 0.138 150
実施例25 500ppm 0.132 196
実施例26 1質量% 0.138 173
──────────────────────────────
【0113】
上記データに示されるように、本発明の潤滑油組成物は、本発明の範囲外の潤滑油組成物と同等であり、場合によっては顕著に優れている。
【0114】
[比較例L]
オーバーヘッド機械式攪拌機、窒素ガスラインとディーン−スターク・トラップとを備えた水コンデンサー、温度調節器、マントルヒーター、および熱電対を取り付けた500mlの三つ口丸底フラスコに、無水オクタデセニルコハク酸(ODSA:シグマ・アルドリッチ社(Sigma Aldrich、セント・ルイス、ミズーリ州、米国)より入手可能)60.07g、中性オイル(エクソン150)60.08gおよび消泡剤(200〜350cSt:ダウ・コーニング社(Dow Corning)より入手可能)3滴を加えた。混合物を100℃まで加熱し、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)32.88g(ODSAに対して1.0モル当量)を、添加用漏斗から混合物に滴下しながら加えた。添加の初期段階では、わずかな発泡が起きた。TEPAの添加後、温度を160℃まで約60分間かけて上昇させ、3時間160℃に維持した。
【0115】
物質を100℃未満まで冷却し、三酸化モリブデン25.01g(TEPAに対して1モル当量)、トルエン69g、蒸留水17g、および消泡剤0.1gを加えた。混合物を100℃にして、攪拌すると泡の放出を伴いながらゲルが形成された。オイル(エクソン100N)116gを加え、混合物を一晩攪拌したところ、緑がかった茶色のゲルが生じた。そのため、ゲルと無水マレイン酸との反応は試みなかった。
【0116】
[比較例M]
オーバーヘッド機械式攪拌機、窒素ガスラインとディーン−スターク・トラップとを備えた水コンデンサー、温度調節器、マントルヒーター、および熱電対を取り付けた500mlの三つ口丸底フラスコに、120.3mgKOH/gのSAP数を有する無水ポリイソブテニル(1000M.W.)コハク酸を60.6g加えた。混合物を100℃まで加熱し、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)10.45g(1.0モル当量)を加えた。TEPAの添加後、温度を180℃まで約60分間かけて上昇させ、1時間160℃に維持した。一晩冷却後、オイル(エクソン100N)12.2gを加えたところ、粘性の茶色のオイルが生じた。
【0117】
生成物を約90℃まで加熱し、トルエン82gを加えて溶液を形成した。引き続き三酸化モリブデン7.9g(TEPAに対して1モル当量)および蒸留水8.3gを加えた。混合物を90℃で1.5時間攪拌し、次に温度を160℃に上昇させ、約4時間かけてトルエンと水とを除去した。生成物は粘性の茶色のオイルであった。次にトルエン64gを加え、混合物を95℃まで加熱し、濾過のため粘度を低下させた。生成物を、ワットマン社の濾紙#1および#4を通して濾過しようと何度も試みたが、珪藻土フィルターの補助の有無に拘わらず、生成物を濾過することができなかった。オイル(エクソン100N)による希釈を繰り返した後も、生成物を濾過することができなかった。そのため、生成物と無水マレイン酸との反応は試みなかった。
【産業上の利用可能性】
【0118】
ここに開示される態様について、様々な変更が可能である。従って、以上の説明は限定的に解釈されるべきではなく、好ましい態様の例示にすぎないとすべきである。例えば、上記および本発明を実施するための最良の態様として実行される機能は、説明のみを目的としている。その他の変更や方式も、本発明の範囲や精神を逸脱しない限り、当業者が実行できる。さらに当業者は、ここに書き添えられている請求項の範囲と精神の中で他の変更を実現できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(I)のポリアミンのスクシンイミドを、エチレン性不飽和カルボン酸または無水物と、式(I)のスクシンイミドに対するエチレン性不飽和カルボン酸または無水物の供給モル比を約0.9:1乃至約1.05:1の範囲にして反応させる工程;そして、
(b)工程(a)のスクシンイミド生成物を、酸性モリブデン化合物と反応させる工程;
を含む方法により製造されるモリブデン化スクシンイミド複合体:
【化1】

式中、Rは、約500乃至約5000の数平均分子量を有する炭化水素基であり;aおよびbは、独立に、2または3であり;そして、xは、0乃至10である。
【請求項2】
Rが、約700乃至約2500の数平均分子量を有するポリイソブテニル基であり;aおよびbが、それぞれ2であり;そして、xが2乃至5である請求項1のモリブデン化スクシンイミド複合体。
【請求項3】
エチレン性不飽和カルボン酸または無水物がエチレン性不飽和モノカルボン酸または無水物である請求項1または2に従うモリブデン化スクシンイミド複合体。
【請求項4】
エチレン性不飽和カルボン酸または無水物がエチレン性不飽和ジカルボン酸または無水物である請求項1または2に従うモリブデン化スクシンイミド複合体。
【請求項5】
エチレン性不飽和カルボン酸または無水物が無水マレイン酸であり、そして、酸性モリブデン化合物が三酸化モリブデンである請求項1または2に従うモリブデン化スクシンイミド複合体。
【請求項6】
工程(a)のスクシンイミド生成物に対するモリブデン化合物のモル比が約0.1:1から約2:1までにある請求項1乃至5のいずれかに従うモリブデン化スクシンイミド複合体。
【請求項7】
(a)式(I)のポリアミンのスクシンイミドを、エチレン性不飽和カルボン酸または無水物と、式(I)のスクシンイミドに対するエチレン性不飽和カルボン酸または無水物の供給モル比を約0.9:1乃至約1.05:1の範囲にして反応させる工程;そして、
(b)工程(a)のスクシンイミド生成物を酸性モリブデン化合物と反応させる工程;
を含むモリブデン化スクシンイミド複合体の製造方法:
【化2】

式中、Rは、約500乃至約5000の数平均分子量を有する炭化水素基であり;aおよびbは独立に、2または3であり;そして、xは0乃至10である。
【請求項8】
Rが、約700乃至約2500の数平均分子量を有するポリイソブテニル基であり;aおよびbが、それぞれ2であり;そして、xが2乃至5である請求項7の方法。
【請求項9】
エチレン性不飽和カルボン酸または無水物がエチレン性不飽和モノカルボン酸または無水物である請求項7または8に従う方法。
【請求項10】
エチレン性不飽和カルボン酸または無水物がエチレン性不飽和ジカルボン酸または無水物である請求項7または8に従う方法。
【請求項11】
エチレン性不飽和カルボン酸または無水物が無水マレイン酸であり、そして、酸性モリブデン化合物が三酸化モリブデンである請求項7または8に従う方法。
【請求項12】
工程(a)のスクシンイミド生成物に対するモリブデン化合物のモル比が約0.1:1から約2:1までである請求項7乃至11のいずれかに従う方法。
【請求項13】
(a)主要量の潤滑性粘度を有するベースオイル;および
(b)少量の請求項1乃至6のいずれかに従うモリブデン化スクシンイミド複合体;
を含む潤滑油組成物。
【請求項14】
組成物の全質量に対するリン含有量が0.05質量%以下であり、かつ組成物の全質量に対する硫黄含有量が0.4質量%以下である請求項13の潤滑油組成物。
【請求項15】
請求項13または14に従う潤滑油組成物を用いて内燃機関を作動させる工程を有する内燃機関の作動方法。

【公表番号】特表2011−526915(P2011−526915A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516804(P2011−516804)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/049212
【国際公開番号】WO2010/002863
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】