説明

潤滑油組成物

【課題】薄膜摩擦の低下および燃料経済性の向上の少なくとも一方をもたらし得る添加剤組成物および潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】添加剤組成物であって、洗浄剤、および
燐含有化合物、摩擦改良剤および分散剤から選択した添加剤、を含有して成っていて、前記洗浄剤も前記添加剤も入っていない添加剤組成物に比べて低下した薄膜摩擦および向上した燃料効率の中の少なくとも一方を示す添加剤組成物。基油を主要量、および添加剤組成物を少量含有してなる潤滑剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は基油および添加剤組成物[これは、例えば燐含有化合物、摩擦改良剤(friction modifier)および分散剤から選択した添加剤と洗浄剤(detergent)、さらなる例として摩擦改良剤と分散剤を含有して成る]を含有して成る潤滑油組成物に関する。また、前記添加剤および潤滑油組成物の使用方法も開示する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー効率良く潤滑された部品を生じさせる必要性が高まってきている。その上、現代のエンジンオイル仕様は、標準化エンジン試験で燃料効率を示す潤滑油を要求している。潤滑油の薄膜の厚みおよび摩擦特性が例えばクランクケースオイルおよびギアオイルなどの燃料効率特性に影響を与えることが知られている。薄膜摩擦を低下させると燃料効率の向上が達成される。薄膜摩擦は、2つの表面の間の距離が非常に狭い2つの表面の間を押す流体、例えば潤滑油などがもたらす摩擦である。潤滑油組成物に通常存在するいろいろな添加剤がいろいろな厚みの膜を形成してそれが薄膜摩擦に影響を与え得ることが知られている。ある種の添加剤、例えばジアルキルジチオ燐酸亜鉛(ZDDP)などを基油に添加すると薄膜摩擦が高くなることが知られている。エンジンおよびギアを保護する目的でそのような添加剤を潤滑油に存在させる必要があるが、しかしながら、そのように薄膜摩擦が高くなることは燃料効率にとって有害であり得る。
【0003】
その上、また、ある種の添加剤は非常に高価であることも知られている。かつ、薄膜摩擦を低下させる目的である添加剤を潤滑油組成物に追加的量で用いることはその製造業者にとって極めて高価であり得る。
【0004】
安価でありかつ薄膜摩擦の低下および燃料経済性の向上の中の少なくとも一方をもたらし得る潤滑油組成物が求められている。
【0005】
開示の要約
本開示に従い、添加剤組成物を開示し、これは、燐含有化合物、摩擦改良剤および分散剤から選択した添加剤および洗浄剤を含有して成り、ここで、本添加剤組成物は、前記洗浄剤も前記添加剤も入っていない添加剤組成物に比べて低下した薄膜摩擦および向上した燃料効率の中の少なくとも一方を示す。
【0006】
別の面に従い、摩擦改良剤および分散剤を含有して成る添加剤組成物を開示し、ここで、本添加剤組成物は、前記摩擦改良剤も前記分散剤も入っていない添加剤組成物に比べて低下した薄膜摩擦および向上した燃料効率の中の少なくとも一方を示す。
【0007】
更に別の面に従い、ある流体が表面間で示す薄膜摩擦を低下させる方法を開示し、この方法は、前記流体に基油および添加剤組成物(これは燐含有化合物、摩擦改良剤および分散剤から選択した添加剤および洗浄剤を含有して成る)を含有して成る潤滑油組成物を供給することを含んで成る。
【0008】
その上、ある流体が表面間で示す薄膜摩擦を低下させる方法も開示し、この方法は、前記流体に基油および添加剤組成物(これは摩擦改良剤および分散剤を含有して成る)を含有して成る潤滑油組成物を供給することを含んで成る。
【0009】
更に、ある運搬手段における燃料効率を向上させる方法も開示し、この方法は、運搬手段に基油および添加剤組成物(これは燐含有化合物、摩擦改良剤および分散剤から選択し
た添加剤および洗浄剤を含有して成る)を含有して成る組成物を供給することを含んで成る。
【0010】
いろいろな面において、ある運搬手段における燃料効率を向上させる方法も開示し、この方法は、運搬手段に基油および添加剤組成物(これは摩擦改良剤および分散剤を含有して成る)を含有して成る組成物を供給することを含んで成る。
【0011】
本態様の追加的利点を、ある程度ではあるが、以下の説明の中に示し、本開示の実施者はそれを習得することができるであろう。そのような利点を添付請求項に特に指摘する要素および組み合わせを用いて実現および達成する。
【0012】
この上で行った一般的説明および以下に行う詳細な説明は両方とも単に例示および説明であり、請求する如き本開示を限定するものでないと理解されるべきである。
【0013】
態様の説明
本開示は、基油を主要量および添加剤組成物(これは燐含有化合物、摩擦改良剤および分散剤から選択した添加剤および洗浄剤を含有して成る)を少量含有して成る潤滑油組成物に関し、ここで、本添加剤組成物は、前記洗浄剤も前記添加剤も入っていない添加剤組成物に比べて低下した薄膜摩擦および向上した燃料効率の中の少なくとも一方を示す。1つの面における本添加剤組成物は摩擦改良剤と分散剤を含有して成り得る。
【0014】
本潤滑組成物に基油を如何なる必要もしくは有効量で存在させてもよい。例えば、そのような基油を主要量で存在させてもよい。「主要量」は、当該組成物の総重量を基準にして50重量%に等しいか或はそれ以上を意味すると理解する。さらなる例として、そのような基油を当該組成物の総重量を基準にして80重量%に等しいか或はそれ以上の量、追加的例として、90重量%に等しいか或はそれ以上の量で存在させてもよい。
【0015】
本開示する潤滑油組成物を調合する時に用いるに適した基油は、合成もしくは鉱油またはこれらの混合物のいずれからも選択可能である。鉱油には、動物油および植物油(例えばヒマシ油、ラード油)ばかりでなく他の潤滑用鉱油、例えば液状石油および溶媒による処理または酸による処理を受けたパラフィン系、ナフテン系またはパラフィン系−ナフテン系混合型の潤滑用鉱油が含まれる。また、石炭または頁岩から誘導された油も適切である。更に、またガスツーリキッド方法(gas−to−liquid process)で得られる油も適切であり得る。
【0016】
合成油の非限定例には、炭化水素油、例えばオレフィンの重合体および共重合体(例えばポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンとイソブチレンの共重合体など);ポリアルファオレフィン[例えばポリ(1−ヘキセン)、ポリ−(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)などおよびこれらの混合物];アルキルベンゼン[例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジ−ノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)ベンゼンなど];ポリフェニル(例えばビフェニル、ターフェニル、アルキル置換ポリフェニルなど);アルキル置換ジフェニルエーテルおよびアルキル置換ジフェニルスルフィド、そしてそれらの誘導体、類似物および同族体などが含まれる。
【0017】
従って、本明細書に記述する如き組成物を製造する時に使用可能な基油は、American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability Guidelinesが指定する如きグループI−IVに入る基油のいずれからも選択可能である。そのような基油グループは下記の通りである:
【0018】
グループIは飽和物含有量が90%未満でありそして/または硫黄含有量が0.03%より高くそして粘度指数が80に等しいか或はそれ以上から120未満であり、グループIIは飽和物含有量が90%に等しいか或はそれ以上でありかつ硫黄含有量が0.03%に等しいか或はそれ以下でありそして粘度指数が80に等しいか或はそれ以上から120未満であり、グループIIIは飽和物含有量が90%に等しいか或はそれ以上でありかつ硫黄含有量が0.03%に等しいか或はそれ以下でありそして粘度指数が120に等しいか或はそれ以上であり、そしてグループIVはポリアルファオレフィン(PAO)である。
【0019】
前記グループの限定で用いられる試験方法は、飽和物の場合のASTM D2007、粘度指数の場合のASTM D2270、そして硫黄の場合にはASTM D2622、4294、4927および3120の中の1つである。
【0020】
グループIVのベースストック、即ちポリアルファオレフィン(PAO)には、アルファ−オレフィンのオリゴマーの水添品が含まれ、オリゴマー化の最も重要な方法はフリーラジカル方法、チーグラー触媒反応、およびカチオン性、フリーデルクラフツ触媒反応である。
【0021】
そのようなポリアルファオレフィンが100℃で示す粘度は典型的に約2から約100cSt、例えば100℃で約4から約8cStである。それらは、例えば炭素原子数が約2から約30の分枝もしくは直鎖アルファ−オレフィンのオリゴマーであってもよく、非限定例には、ポリプロペン、ポリイソブテン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−1−オクテンおよびポリ−1−デセンが含まれる。ホモ重合体、共重合体および混合物が含まれる。
【0022】
本明細書で用いるに適したベースストックは多種多様な方法を用いて製造可能であり、そのような方法には、これらに限定するものでないが、蒸留、溶媒による精製、水素処理、オリゴマー化および再精製が含まれる。
【0023】
そのような基油はフィッシャー・トロプシュ合成炭化水素から誘導された油であってもよい。フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素は、フィッシャー・トロプシュ触媒を用いてHとCOを含有する合成ガスから製造可能である。そのような炭化水素は、典型的に、これが基油として有用であるようにする目的で、さらなる処理を必要とする。例えば、そのような炭化水素に米国特許第6,103,099号または6,180,575号に開示されている方法を用いた水素化異性化を受けさせ(hydroisomerized)てもよいか、米国特許第4,943,672号または6,096,940号に開示されている方法を用いた水素化分解および水素化異性化を受けさせてもよいか、米国特許第5,882,505号に開示されている方法を用いた脱蝋を受けさせてもよいか、或は米国特許第6,013,171号、6,080,301号または6,165,949号に開示されている方法を用いた水素化異性化および脱蝋を受けさせてもよい。
【0024】
本明細書の上に開示した種類の鉱油もしくは合成油の未精製、精製および再精製油(ばかりでなくこれらのいずれか2種以上の混合物)を基油として用いることができる。未精製油は、鉱油もしくは合成源からさらなる精製処理なしに直接得られる油である。例えば、レトルト採収操作で直接得られるシェール油、一次蒸留で直接得られる石油、またはエステル化工程で直接得られるエステル油(さらなる処理なしに使用)が未精製油であろう。精製油は、1つ以上の特性を向上させる目的でさらなる処理を1段階以上の精製段階で受けさせた以外は未精製油と同様である。そのような精製技術は本分野の技術者に数多く知られており、例えば溶媒による抽出、二次蒸留、酸または塩基による抽出、濾過、パーコレーションなどが知られる。再精製油は、精製油を得る目的で用いられる処理と同様な処理を既に実用で使用された精製油に適用することで得られる。そのような再精製油はまた再生もしくは再処理油としても知られ、しばしば、それらは使用済み添加剤、汚染物および油分解生成物を除去することに向けた技術を用いた追加的処理を受けている。
【0025】
そのような種類の基油の中の特定の油は、これらが示す具体的な特性、例えば生分解性、高温安定性または不燃性などが理由で用いられ得る。他の組成物では、入手性または低コストが理由で他の種類の基油の方が好適であり得る。従って、本分野の技術者は、この上で考察したいろいろな種類の基油を本発明の潤滑油組成物で用いることができる一方でそれらは必ずしも全ての用途で互いに相当するとは限らないことを認識するであろう。
【0026】
1つの面において、本開示する添加剤組成物で用いるに適した洗浄剤は金属含有洗浄剤であり得る。適切な金属含有洗浄剤には、アルカリもしくはアルカリ土類金属と下記の酸性物質(またはそれらの混合物):(1)スルホン酸、(2)カルボン酸、(3)サリチル酸、(4)アルキルフェノール、(5)硫化アルキルフェノールおよび(6)有機燐酸(炭素と燐の直接結合を少なくとも1個有することを特徴とする)の中の1種以上の油溶性の中性もしくは過塩基塩が含まれ得る。そのような有機燐酸には、オレフィン重合体(例えば分子量が約1,000のポリイソブチレン)に燐化剤、例えば三塩化燐、七硫化燐、五硫化燐、三塩化燐と硫黄、白燐とハロゲン化硫黄、またはホスホロチオ酸クロライドなどによる処理を受けさせることで生じさせた燐酸が含まれ得る。
【0027】
金属含有洗浄剤に関連して、金属が有機基に比べて化学量論的に多い量で存在する金属塩を表示する目的で用語「過塩基」を用いる。過塩基塩を生じさせる時に一般的に用いられる方法は、酸の鉱油溶液を化学量論的に過剰量の金属中和剤、例えば金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩または硫化物などと一緒に約50℃の温度に加熱した後に結果として生じた生成物を濾過することを伴う。金属を大過剰量で取り込ませる補助で「助長剤」を中和段階で用いることも同様に公知である。助長剤として用いるに有用な化合物の例には、フェノール系物質、例えばフェノール、ナフトール、アルキルフェノール、チオフェノール、硫化アルキルフェノール、およびホルムアルデヒドとフェノール系物質の縮合生成物など、アルコール、例えばメタノール、2−プロパノール、オクタノール、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールのエチルエーテル、エチレングリコール、ステアリルアルコールおよびシクロヘキシルアルコールなど、およびアミン、例えばアニリン、フェニレンジアミン、フェノチアジン、フェニル−ベータ−ナフチルアミンおよびドデシルアミンなどが含まれる。塩基性塩を生じさせるに特に有効な方法は、酸を過剰量の中和剤である塩基性アルカリ土類金属および少なくとも1種の助長剤であるアルコールと一緒に混合しそしてその混合物に炭酸ガスを高温、例えば60℃から200℃の高温で吹き込むことを含んで成る。
【0028】
適切な金属含有洗浄剤の例には、これらに限定するものでないが、中性のスルホン酸ナトリウム、過塩基スルホン酸ナトリウム、カルボン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、ナトリウムフェナート、硫化ナトリウムフェナート、スルホン酸リチウム、カルボン酸リチウム、サリチル酸リチウム、リチウムフェナート、硫化リチウムフェナート、スルホン酸カルシウム、カルボン酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、カルシウムフェナート、硫化カルシウムフェナート、スルホン酸マグネシウム、カルボン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、マグネシウムフェナート、硫化マグネシウムフェナート、スルホン酸カリウム、カルボン酸カリウム、サリチル酸カリウム、カリウムフェナート、硫化カリウムフェナート、スルホン酸亜鉛、カルボン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、亜鉛フェナートおよび硫化亜鉛フェナートなどの如き物質の中性および過塩基塩が含まれる。さらなる例には、炭素原子数が約10から約2,000のオレフィンの燐硫化(phosphosulfurized)品の加水分解物または炭素原子数が約10から約2,000のアルコールおよび/または脂肪置換フェノール化合物の燐硫化品の加水分解物のカルシウム、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウム塩が含まれる。さらなる例には、脂肪族カルボン酸および脂肪置換脂環式カルボン酸のカルシウム、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウム塩、および他のいろいろな油溶性有機酸の同様なアルカリおよびアルカリ土類金属塩が含まれる。異なる2種以上のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属の中性もしくは過塩基塩の混合物を用いることも可能である。また、異なる2種以上の酸の混合物の中性および/または過塩基塩を用いることも同様に可能である。
【0029】
良く知られているように、過塩基金属洗浄剤は、一般に、無機塩基を過塩基量で含有すると見なされており、一般にミクロ分散液またはコロイド状分散液の形態である。従って、用語「油溶性」を金属含有洗浄剤に適用する場合、その用語に、無機塩基(これは必ずしもその用語の厳格な意味で完全または真に油溶性である必要はない)が存在する金属洗浄剤を包含させることを意図する、と言うのは、そのような洗浄剤を基油に混合するとそれはあたかもそれが前記油の中に全体が完全に溶解するな様式とほぼ同じ様式で挙動するからである。本明細書の上に示したいろいろな金属含有洗浄剤を時には集合的に中性、塩基性もしくは過塩基アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属含有有機酸塩と呼ぶ。
【0030】
油溶性の中性および過塩基金属含有洗浄剤およびアルカリ土類金属含有洗浄剤の製造方法は本分野の技術者に良く知られており、特許文献に広範に報告されている。例えば米国特許第2,001,108;2,081,075;2,095,538;2,144,078;2,163,622;2,270,183;2,292,205;2,335,017;2,399,877;2,416,281;2,451,345;2,451,346;2,485,861;2,501,731;2,501,732;2,585,520;2,671,758;2,616,904;2,616,905;2,616,906;2,616,911;2,616,924;2,616,925;2,617,049;2,695,910;3,178,368;3,367,867;3,496,105;3,629,109;3,865,737;3,907,691;4,100,085;4,129,589;4,137,184;4,184,740;4,212,752;4,617,135;4,647,387および4,880,550号を参照のこと。
【0031】
本発明で用いる金属含有洗浄剤は、必要ならば、油溶性のホウ素化中性および/または過塩基アルカリもしくはアルカリ土類金属含有洗浄剤であってもよい。ホウ素化金属含有洗浄剤の製造方法は例えば米国特許第3,480,548;3,679,584;3,829,381;3,909,691;4,965,003および4,965,004号などに記述されている。
【0032】
そのような洗浄剤を本潤滑油組成物に如何なる必要または有効量で存在させてもよい。1つの面において、本潤滑油組成物にそれを本潤滑組成物の総重量を基準にして約0.01重量%から約0.8重量%、例えば約0.05重量%から約0.6重量%、さらなる例として約0.09重量%から約0.4重量%含有させてもよい。1つの面において、本添加剤組成物にそれを本添加剤組成物の総重量を基準にして約0.06重量%から約5重量%、例えば約0.30重量%から約3.6重量%、さらなる例として約0.54重量%から約2.38重量%含有させてもよい。しかしながら、本分野の通常の技術者は如何なる量も使用可能であることを理解するであろう。
【0033】
この開示する添加剤組成物に燐含有化合物を含有させてもよい。1つの面における燐含有化合物は金属を含有する燐含有化合物であり得る。そのような金属を含有する燐含有化合物は例えば金属のジヒドロカルビルジチオ燐酸塩であってもよい。その金属のジヒドロカルビルジチオ燐酸塩の金属はアルカリもしくはアルカリ土類金属、またはアルミニウム、鉛、錫、モリブデン、マンガン、ニッケルまたは銅であってもよい。使用可能な亜鉛塩は例えばジアルキルジチオ燐酸亜鉛であり得る。
【0034】
そのような金属のジヒドロカルビルジチオ燐酸塩の調製は、公知技術に従い、最初にジヒドロカルビルジチオ燐酸(DDPA)を通常は1種以上のアルコールもしくはフェノールとPを反応させることで生じさせた後に生じたDDPAを亜鉛化合物で中和することで実施可能である。例えば、第一アルコールと第二アルコールの混合物を反応させることなどでジチオ燐酸を生じさせることができる。別法として、全体の性質が第二であるヒドロカルビル基と全体の性質が第一であるヒドロカルビル基の両方を含有するマルチプル(multiple)ジチオ燐酸を調製することも可能である。前記亜鉛塩の製造では如何なる塩基性もしくは中性亜鉛化合物も使用可能であるが、最も一般的には、酸化物、水酸化物および炭酸塩を用いる。
【0035】
亜鉛のジヒドロカルビルジチオ燐酸塩はジヒドロカルビルジチオ燐酸の油溶性塩であり、これは下記の式:[(RO)(RO)P(S)][式中、RおよびRは、同一または異なってもよく、炭素原子数が約1から約18、例えば約2から約12のヒドロカルビル基(アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリールおよび脂環式基の如き基を包含)であってもよい]で表され得る。1つの面におけるRおよびR基は、炭素原子数が約2から約8のアルキル基であってもよい。従って、この基は例えばエチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、アミル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2−エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニルおよびブテニルなどであってもよい。油溶性を得る目的で、炭素原子の総数(即ち、ジチオ燐酸塩におけるRおよびR)は一般に5以上であってもよい。従って、亜鉛のジヒドロカルビルジチオ燐酸塩には亜鉛のジアルキルジチオ燐酸塩が含まれ得る。
【0036】
その上、そのような燐含有化合物には、燐酸エステルの油溶性アミン塩、例えば米国特許第5,354,484号および5,763,372号(これらの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に教示されているそれら、およびジシクロペンタジエンとチオ燐酸の反応生成物などが含まれ得る。
【0037】
そのような燐酸エステルのアミン塩の調製は、燐酸エステルとアンモニアもしくは塩基性窒素化合物、例えばアミンなどを反応させることで実施可能である。その塩を個別に生じさせてもよく、そして次に、その燐酸エステルの塩を本潤滑用組成物に添加してもよい。
【0038】
本発明のアミン塩の調製で用いるに有用な燐酸エステルは式
【0039】
【化1】

【0040】
[式中、Rは水素またはヒドロカルビル基であってもよく、Rはヒドロカルビル基であってもよく、そしてX基は両方ともOまたはSのいずれであってもよい]
で特徴付け可能である。
【0041】
(I)を含有する組成物を生じさせる典型的な方法は、式ROH[式中、Rはヒドロカルビル基であってもよい]で表される少なくとも1種のヒドロキシ化合物と式P[式中、XはOまたはSであってもよい]で表される燐化合物を反応させることを含んで成る。この様式で得る燐含有化合物は燐化合物の混合物であり得、一般に、燐反応体(即ちPまたはP)の選択に応じてモノ−およびジヒドロカルビル置換燐酸および/またはチオ燐酸の混合物である。
【0042】
本開示の燐酸エステルの調製で用いるヒドロキシ化合物は、式ROH[式中、Rはヒドロカルビル基であってもよい]で特徴付け可能である。前記燐化合物と反応させるヒドロキシ化合物には、式ROH[式中、ヒドロカルビル基Rが含有する炭素原子の数は約1から約30であってもよい]で表されるヒドロキシ化合物の混合物が含まれ得る。しかしながら、最終的に生じさせる置換燐酸エステルのアミン塩は本開示の潤滑用組成物に可溶である必要がある。前記R基が含有する炭素原子の数は一般に少なくとも約2、炭素原子の数は典型的に約3から約30である。
【0043】
前記R基は脂肪もしくは芳香基、例えばアルキル、アリール、アルカリール、アラルキルおよび脂環式炭化水素基などであってもよい。式ROHで表される有用なヒドロキシ化合物の非限定例には、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、2−エチル−ヘキシルアルコール、ノニルアルコール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、アミルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、メチルシクロヘキサノールおよびアルキル置換ナフトールなどが含まれる。
【0044】
1つの面におけるアルコール、即ちROHは脂肪族アルコール、例えば炭素原子を少なくとも約4個含有する第一級脂肪族アルコールなどであってもよい。従って、本開示で用いるに有用であり得る典型的な一価アルコールROHの例には、アミルアルコール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−テトラデカノール、1−ヘキサデカノール、1−オクタデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、フィトール、ミリシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびベヘニルアルコールが含まれる。本明細書では市販アルコール(混合物を包含)を意図し、そのような市販アルコールは、本明細書に指定しないが本開示の主目的を損なわせないアルコールを少量含有している可能性がある。
【0045】
反応に含めるヒドロキシ化合物ROHと燐反応体Pのモル比を約1:1から約4:1の範囲内にすべきであり、典型的な比率は3:1である。この反応は単に前記2種類の反応体を高温、例えば約50℃以上から反応体または所望生成物のいずれかが示す組成物温度に至る温度で混合することで実施可能である。1つの面では温度を約50℃から約150℃の範囲にしてもよく、最も頻繁には約100℃未満にしてもよい。この反応は温度の制御および反応体の混合を容易にする溶媒の存在下で実施可能である。そのような溶媒は、一方もしくは両方の反応体が可溶であるか或は生成物が可溶である不活性な流動性物質のいずれであってもよい。そのような溶媒には、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ナフサ、ジエチルエーテルカルビトール、ジブチルエーテルジオキサン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、四塩化炭素およびクロロホルムが含まれる。
【0046】
前記反応の生成物は酸性であるが、それの化学的構成を正確には確認していない。しかしながら、その生成物は主に燐酸(またはチオ−もしくはジチオ燐酸)のモノ−およびジ−エステル(このエステル基は当該アルコールROHに由来する)を含有する酸性ホスフェートの混合物であることを示す証拠が存在する。
【0047】
本開示のアミン塩の調製は、上述した燐酸エステル、例えば式Iで表される燐酸エステルなどと少なくとも1種のアミノ化合物(これは第一級または第二級であってもよい)の
反応で実施可能である。1つの面において、前記アミン塩を生じさせる目的で前記置換燐酸と反応させるアミンは、一般式
R’NH
[式中、R’は炭素原子数が約150以下のヒドロカルビル基であってもよく、より頻繁には、炭素原子数が約4から約30の脂肪族ヒドロカルビル基である]
で表される第一級ヒドロカルビルアミンである。
【0048】
1つの面において、本開示のアミン塩を生じさせる時に用いるに有用なヒドロカルビルアミンは、ヒドロカルビル基が炭素原子を約4から約30個、例えばヒドロカルビル基が炭素原子を約8から約20個含有する第一級ヒドロカルビルアミンであってもよい。そのようなヒドロカルビル基は飽和もしくは不飽和であってもよい。第一級飽和アミンの代表的例は、脂肪族の第一級脂肪アミンとして知られる例である。典型的な脂肪アミンにはアルキルアミン、例えばn−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン(ステアリルアミン)などが含まれる。そのような第一級アミンは蒸留品質および工業品質の両方で入手可能である。蒸留品質の方が純度が高い反応生成物をもたらしはするが、工業品質のアミンと反応させることでも望ましいアミドおよびイミドが生じるであろう。また、混合脂肪アミンも適切である。
【0049】
別の面において、前記燐含有化合物のアミン塩は、アルキル基が炭素原子を少なくとも4個有する第三脂肪族第一級アミンに由来する化合物であってもよい。それらは大部分がアルキル基全体が含有する炭素原子の数が約30未満のアルキルアミンに由来し得る。第三脂肪族の第一級アミンは、通常、式
R(CHCNH
[式中、Rは炭素原子数が1から約30のヒドロカルビル基であってもよい]
で表されるモノアミンである。そのようなアミンの例はt−ブチルアミン、t−ヘキシル第一級アミン、1−メチル−1−アミノ−シクロヘキサン、t−オクチル第一級アミン、t−デシル第一級アミン、t−ドデシル第一級アミン、t−テトラデシル第一級アミン、t−ヘキサデシル第一級アミン、t−オクタデシル第一級アミン、t−テトラコサニル第一級アミン、t−オクタコサニル第一級アミンであり得る。
【0050】
また、本開示の目的でアミンの混合物も有用である。この種類のアミン混合物の例は、C11−C14第三アルキル第一級アミンの混合物およびC18−C22第三アルキル第一級アミンの同様な混合物である。第三アルキル第一級アミンおよびそれらの製造方法は本分野の通常の技術者に良く知られており、従って、さらなる考察は必要ないであろう。本開示の目的で用いるに有用な第三アルキル第一級アミンおよびそれらの製造方法が米国特許第2,945,749号(これに関する教示に関して引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている。
【0051】
また、炭化水素鎖がオレフィン系不飽和を含有する第一級アミンも極めて有用である。従って、R’およびR”基は、鎖の長さに応じて、オレフィン系不飽和を1個以上含有していてもよいが、二重結合の数は一般に炭素原子10個当たり1以下であり得る。代表的なアミンはドデセニルアミン、ミリストレイルアミン、パルミトレイルアミン、オレイルアミンおよびリノレイルアミンである。
【0052】
第二級アミンには、この上に示したアルキル基を2個有するジアルキルアミンが含まれ、それには、そのような市販の脂肪第二級アミン、およびまた混合ジアルキルアミン[この場合、R’は脂肪アミンであり、そしてR”は低級アルキル基(炭素原子数が1−9)、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、ブチルなどであってもよいか、或はR”は、基が持つ本質的な炭化水素特徴を壊さないような他の非反応性もしくは極性置換基(CN、アルキル、カルバルコキシ、アミド、エーテル、チオエーテル、ハロ、スルホキサイド、スルホン)を持つアルキル基であってもよい]も含まれる。そのような脂肪ポリアミンジアミンには、対称的もしくは非対称的モノ−もしくはジアルキルエチレンジアミン、プロパンジアミン(1,2もしくは1,3)および前記のポリアミン類似物が含まれる。適切なポリアミンにはN−ココ(coco)−1,3−ジアミノプロパン、N−大豆(soya)アルキルトリメチレンジアミン、N−獣脂(tallow)−1,3−ジアミノプロパンまたはN−オレイル−1,3−ジアミノプロパンが含まれる。
【0053】
油溶性アミン塩の調製は、上述した燐酸エステルと上述したアミンを室温以上の温度で混合することで実施可能である。混合を室温で行う時間は一般に約1時間以内で充分である。本開示の塩を生じさせる目的で前記燐酸エステルと反応させるアミンの量は、燐酸1当量当たり少なくとも約1当量重量のアミン(窒素が基準)であり、そして当量比を一般に約1にする。
【0054】
そのようなアミン塩を生じさせるに適した方法は良く知られていて、文献に報告されている。例えば米国特許第2,063,629;2,224,695;2,447,288;2,616,905;3,984,448;4,431,552;5,354,484号、Pesin et al,Zhurnal Obshchei Khimii,31巻、No.8,2508−2515頁(1961)およびPCT国際出願公開番号WO 87/07638(これら全部の開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)を参照のこと。
【0055】
別法として、酸性の燐酸エステルを上述したアミンと混合する時には、そのような塩を、ギアオイル濃縮液または調合ギアオイル自身を生じさせる時にインシトゥで生じさせることも可能である。
【0056】
本明細書に示す潤滑用組成物で用いるに適した別の燐含有化合物には、ジシクロペンタジエンとチオ燐酸の反応生成物(本明細書ではまたジシクロペンタジエンジチオエートとも呼ぶ)が含まれる。チオ燐酸は式:
【0057】
【化2】

【0058】
[式中、Rは炭素原子数が約2から約30、例えば約3から約18のヒドロカルビル基であってもよい]
で表される。1つの面において、Rには、炭素原子数が約3から約18のヒドロカルビル基の混合物が含まれる。
【0059】
1つの面において、そのような燐含有化合物は、ネオペンチルグリコールホスファイト、硫黄含有ネオペンチルグリコールホスファイトおよび硫黄含有ネオペンチルグリコールホスファイトの塩の中の少なくとも1種である。
【0060】
そのようなジシクロペンタジエンジチオエートの調製はジシクロペンタジエンとジチオ燐酸をこのチオ酸とジシクロペンタジエンが反応するに充分な温度で充分な時間混合することで実施可能である。典型的な反応時間は30分から6時間の範囲であり得るが、本分野の技術者は適切な反応条件を容易に決定することができるであろう。その反応生成物に通常の反応後処理を受けさせてもよく、そのような反応後処理には真空ストリッピングお
よび濾過が含まれる。
【0061】
そのような燐含有化合物を本潤滑油組成物に如何なる必要または有効量で存在させてもよい。1つの面において、本潤滑油組成物にそれを本潤滑組成物の総重量を基準にして約0.05重量%から約3重量%、例えば約0.2重量%から約1.5重量%、さらなる例として約0.3重量%から約1重量%含有させてもよい。1つの面において、本添加剤組成物にそれを本添加剤組成物の総重量を基準にして約0.3重量%から約18重量%、例えば約1.2重量%から約8.9重量%、さらなる例として約1.8重量%から約6重量%含有させてもよい。しかしながら、本分野の通常の技術者は如何なる量も使用可能であることを理解するであろう。
【0062】
この開示する添加剤組成物にまた摩擦改良用化合物を含有させることも可能である。この開示する添加剤組成物で用いるに適した摩擦改良剤は、そのような機能を潤滑油組成物に与えるに有用な数多くの適切な化合物および材料の中から選択可能である。そのような摩擦改良剤は単一種の化合物またはいろいろな種類の化合物の混合物として使用可能である。摩擦改良剤の非限定例には、窒素含有化合物、灰分含有化合物および窒素を含有しない化合物が含まれる。1つの面において、この開示する潤滑用組成物に窒素を含有しない化合物およびモリブデン含有化合物を含有させてもよい。
【0063】
窒素含有化合物は塩基性窒素を含有する如何なる化合物であってもよい。1つの面における窒素含有化合物は長鎖アルキレンアミンであり得る。摩擦改良用長鎖アルキレンアミン化合物には、例えばN−脂肪ヒドロカルビル置換トリメチレンジアミン(これのN−脂肪ヒドロカルビル置換基はアセチレン不飽和を持たない炭素原子数が約14から約20の範囲内の少なくとも1種の直鎖脂肪ヒドロカルビル基である)などが含まれる。そのような摩擦改良剤化合物の非限定例はN−オレイル−トリメチレンジアミンである。他の適切な化合物にはN−獣脂−トリメチレンジアミンおよびN−ココ−トリメチレンジアミンが含まれる。
【0064】
あるグループの摩擦改良剤には、N−脂肪ヒドロカルビル置換ジエタノールアミン(これのN−脂肪ヒドロカルビル置換基はアセチレン不飽和を持たない炭素原子数が約14から約20の範囲内の少なくとも1種の直鎖脂肪ヒドロカルビル基である)が含まれる。
【0065】
用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」を本明細書で用いる場合、これを本分野の技術者に良く知られている通常の意味で用いる。具体的には、それは炭素原子が分子の残りと直接結合していて主に炭化水素性質を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には下記が含まれる:
(1)炭化水素置換基、即ち脂肪(例えばアルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)置換基および芳香置換、脂肪置換および脂環置換芳香置換基ばかりでなく環が分子の別の部分を通して完成している環式置換基(例えば2個の置換基が一緒に脂環式基を形成している);
(2)置換炭化水素置換基、即ち炭化水素以外の基[これは、本発明に関連して、炭化水素が支配的な置換基を変えない基、例えばハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソおよびスルホキシである]を含有する置換基;
(3)ヘテロ置換基、即ち主に炭化水素特性を有するが、本発明に関連して、炭素原子で構成されている環または鎖内に炭素以外の原子(ヘテロ原子には硫黄、酸素、窒素が含まれる)を含有する置換基[これにはピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルの如き置換基が含まれる]。ヒドロカルビル基中の炭素原子10個当たりに存在する非炭化水素置換基の数は一般に2以下、例えば1以下であり、典型的には、ヒドロカルビル基に存在する非炭化水素置換基の数はゼロである。
【0066】
この上で考察したように、そのような摩擦改良剤にはいろいろな化合物の混合物、例えば少なくとも1種のN−脂肪ヒドロカルビル置換ジエタノールアミンと少なくとも1種のN−脂肪ヒドロカルビル置換トリメチレンジアミン(これのN−脂肪ヒドロカルビル置換基はアセチレン不飽和を持たない炭素原子数が約14から約20の範囲内の少なくとも1種の直鎖脂肪ヒドロカルビル基である)の組み合わせなども含まれ得る。そのような摩擦改良剤の組み合わせに関するさらなる詳細が米国特許第5,372,735号および5,441,656号(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に示されている。
【0067】
そのような摩擦改良剤は灰分含有化合物であってもよい。1つの面における灰分含有化合物はモリブデン含有化合物であってもよい。本明細書に開示する潤滑用組成物で用いるに適したモリブデン含有化合物は硫黄および/または燐を含有していなくてもよい。硫黄も燐も含有しないモリブデン含有化合物の調製は、硫黄も燐も含有しないモリブデン源とアミノおよび/またはアルコール基を含有する有機化合物を反応させることで実施可能である。硫黄も燐も含有しないモリブデン源の例には、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウムおよびモリブデン酸カリウムが含まれる。そのアミノ基はモノアミン、ジアミンまたはポリアミンであってもよい。アルコール基は一置換アルコール、ジオールもしくはビス−アルコールまたはポリアルコールであってもよい。例として、ジアミンと脂肪油を反応させるとアミノ基とアルコール基の両方を含有する生成物がもたらされ、それを硫黄も燐も含有しないモリブデン源と反応させてもよい。
【0068】
特許および特許出願(これらは引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に見られる硫黄も燐も含有しないモリブデン含有化合物の例には下記が含まれる:米国特許第4,259,195号および4,261,843号に定義されている如きモリブデン源と特定の塩基性窒素化合物を反応させることで生じさせた化合物、米国特許第4,164,473号に定義されている如きモリブデン源とヒドロカルビル置換ヒドロキシアルキル置換アミンを反応させることで生じさせた化合物、米国特許第4,266,945号に定義されている如きモリブデン源とモノアルキル置換アルキレンジアミンとフェノールアルデヒド縮合生成物を反応させることで生じさせた化合物、米国特許第4,889,647号に定義されている如きモリブデン源とジエタノールアミンと脂肪油を反応させることで生じさせた化合物、米国特許第5,137,647号に定義されている如きモリブデン源と2−(2−アミノエチル)アミノエタノールと脂肪油もしくは酸を反応させることで生じさせた化合物、米国特許第4,692,256号に定義されている如きモリブデン源と第二級アミンを反応させることで生じさせた化合物、米国特許第5,412,130号に定義されている如きモリブデン源とジオール、ジアミノもしくはアミノ−アルコール化合物を反応させることで生じさせた化合物、ヨーロッパ特許出願EP 1 136 496 A1に定義されている如きモリブデン源と脂肪油とモノアルキル置換アルキレンジアミンを反応させることで生じさせた化合物、ヨーロッパ特許出願EP 1 136 497 A1に定義されている如きモリブデン源と脂肪酸とモノアルキル置換アルキレンジアミンとグリセリドを反応させることで生じさせた化合物、米国特許第4,889,647号に定義されている如きモリブデン源と脂肪油とジエタノールアミンを反応させることで生じさせた化合物。
【0069】
1つの面では、また、硫黄を含有するモリブデン含有化合物を本明細書に開示する潤滑用組成物で用いることも可能である。そのような硫黄を含有するモリブデン含有化合物の調製はいろいろな方法を用いて実施可能である。1つの方法は、硫黄および/または燐を含有しないモリブデン源とアミノ基と1種以上の硫黄源を反応させることを伴う。硫黄源には、例えばこれらに限定するものでないが、二硫化炭素、硫化水素、硫化ナトリウムおよび元素状硫黄が含まれる。別法として、そのような硫黄を含有するモリブデン含有化合
物の調製を硫黄含有モリブデン源とアミノ基もしくはチウラム基と場合により2番目の硫黄源を反応させることで実施することも可能である。一例として、三酸化モリブデンと第二級アミンと二硫化炭素を反応させることでジチオカルバミン酸モリブデンを生じさせる。別法として、(NHMo13n(HO) [ここで、nは約0から2の範囲である]と二硫化テトラアルキルチウラムを反応させることで三核の硫黄含有ジチオカルバミン酸モリブデンを生じさせる。
【0070】
特許および特許出願に見られる硫黄を含有するモリブデン含有化合物の非限定例には下記が含まれる:米国特許第3,509,051号および3,356,702号に定義されている如き三酸化モリブデンと第二級アミンと二硫化炭素を反応させることで生じさせた化合物、米国特許第4,098,705号に定義されている如き硫黄を含有しないモリブデン源と第二級アミンと二硫化炭素と追加的硫黄源を反応させることで生じさせた化合物、米国特許第4,178,258号に定義されている如きハロゲン化モリブデンと第二級アミンと二硫化炭素を反応させることで生じさせた化合物、米国特許第4,263,152, 4,265,773, 4,272,387, 4,285,822, 4,369,119, 4,395,343号に定義されている如きモリブデン源と塩基性窒素化合物と硫黄源を反応させることで生じさせた化合物、米国特許第4,283,295号に定義されている如きテトラチオモリブデン酸アンモニウムと塩基性窒素化合物を反応させることで生じさせた化合物、米国特許第4,362,633号に定義されている如きオレフィンと硫黄とアミンとモリブデン源を反応させることで生じさせた化合物、米国特許第4,402,840号に定義されている如きテトラチオモリブデン酸アンモニウムと塩基性窒素化合物と有機硫黄源を反応させることで生じさせた化合物、米国特許第4,466,901号に定義されている如きフェノール系化合物とアミンとモリブデン源と硫黄源を反応させることで生じさせた化合物、米国特許第4,765,918号に定義されている如きトリグリセリドと塩基性窒素化合物とモリブデン源と硫黄源を反応させることで生じさせた化合物、米国特許第4,966,719号に定義されている如きアルカリ金属のアルキルチオキサンテート塩とハロゲン化モリブデンを反応させることで生じさせた化合物、米国特許第4,978,464号に定義されている如き二硫化テトラアルキルチウラムとモリブデンヘキサカルボニルを反応させることで生じさせた化合物、米国特許第4,990,271号に定義されている如きアルキルジキサントゲンとモリブデンヘキサカルボニルを反応させることで生じさせた化合物、米国特許第4,995,996号に定義されている如きアルカリ金属のアルキルキサンテート塩と四酢酸ジモリブデンを反応させることで生じさせた化合物、米国特許第6,232,276号に定義されている如き(NHMo13Oとアルカリ金属のジアルキルジチオカルバミン酸塩もしくは二硫化テトラアルキルチウラムを反応させることで生じさせた化合物、米国特許第6,103,674号に定義されている如きエステルもしくは酸とジアミンとモリブデン源と二硫化炭素を反応させることで生じさせた化合物、米国特許第6,117,826号に定義されている如きアルカリ金属のジアルキルジチオカルバミン酸塩を3−クロロプロピオン酸に続いて三酸化モリブデンと反応させることで生じさせた化合物。
【0071】
モリブデン含有化合物の非限定例には、モリブデンのカルボン酸塩、モリブデンのアミド、モリブデンのチオ燐酸塩、モリブデンのチオカルバミン酸塩、モリブデンのジチオカルバミン酸塩などが含まれる。
【0072】
灰分含有化合物の追加的例には、これらに限定するものでないが、チタン含有化合物およびタングステン含有化合物が含まれる。
【0073】
別の適切なグループの摩擦改良剤には、窒素を含有しない化合物、ポリオールエステル、例えばグリセロールモノオレエート(GMO)、グリセロールモノラウレート(GML)などが含まれる。
【0074】
そのような摩擦改良用化合物を本潤滑用組成物に存在させる量は如何なる所望または有効量であってもよい。1つの面では、本潤滑用組成物に含有させる量を本潤滑用組成物の総重量を基準にして約0.05から約3重量%、例えば約0.2から約1.5重量%、さらなる例として約0.3から約1重量%にしてもよい。1つの面において、本添加剤組成物にそれを本潤滑用組成物の総重量を基準にして約0.3重量%から約18重量%、例えば約1.2重量%から約8.9重量%、さらなる例として約1.8重量%から約6重量%含有させてもよい。しかしながら、本分野の通常の技術者は如何なる量も使用可能であることを理解するであろう。
【0075】
この開示する添加剤組成物で用いるに適した分散剤は、本分野の技術者に公知の無灰分散剤のいずれからも選択可能である。適切な無灰分散剤には、スクシニミド系分散剤、マンニッヒ塩基系分散剤および高分子量ポリアミン系分散剤の如き無灰分散剤が含まれ得る。ヒドロカルビル置換こはく酸系アシル化剤を用いてヒドロカルビル置換スクシニミドを生じさせることができる。そのようなヒドロカルビル置換こはく酸系アシル化剤には、これらに限定するものでないが、ヒドロカルビル置換こはく酸、無水ヒドロカルビル置換こはく酸、ヒドロカルビル置換こはく酸ハライド(例えば酸フルオライドおよび酸クロライド)、およびヒドロカルビル置換こはく酸と低級アルコール(例えば炭素原子数が7以下)のエステル、即ちカルボン酸系アシル化剤として機能し得るヒドロカルビル置換化合物が含まれる。
【0076】
ヒドロカルビル置換アシル化剤の製造は、適切な分子量のポリオレフィンまたは塩素化ポリオレフィンと無水マレイン酸を反応させることで実施可能である。そのようなアシル化剤を製造する時に同様なカルボン酸系反応体を用いることも可能である。そのような反応体には、これらに限定するものでないが、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、無水エチルマレイン酸、無水ジメチルマレイン酸、エチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、ヘキシルマレイン酸など(相当する酸ハライドおよび低級脂肪エステルを包含)が含まれ得る。
【0077】
そのようなオレフィンの分子量を無水置換こはく酸の意図した使用に応じて変えることができる。典型的には、そのような無水置換こはく酸に持たせるヒドロカルビル基の炭素原子数を約8−500にしてもよい。しかしながら、潤滑油用分散剤の製造で用いる無水置換こはく酸の場合には、これに持たせるヒドロカルビル基の炭素原子数を典型的には約40−500にしてもよい。高分子量の無水置換こはく酸を用いる場合には、数平均分子量(Mn)を言及する方が正確である、と言うのは、そのような無水置換こはく酸の製造で用いられるオレフィンには低分子量のオレフィン単量体、例えばエチレン、プロピレンおよびイソブチレンなどの重合の結果としてもたらされる分子量がいろいろな成分の混合物が含まれ得るからである。
【0078】
無水マレイン酸とオレフィンのモル比を幅広く変えることができる。それを例えば約5:1から約1:5、または例えば約1:1から約3:1などの如く変えることができる。数平均分子量が約500から約7000、またはさらなる例として約800から約3000以上のポリイソブチレンおよびエチレン−アルファ−オレフィン共重合体などの如きオレフィンを用いる場合には、無水マレイン酸を化学量論的過剰量、例えばオレフィン1モル当たり1.1から3モルの無水マレイン酸の量で用いてもよい。その結果としてもたらされた反応混合物から未反応の無水マレイン酸を蒸発させてもよい。
【0079】
通常の還元条件、例えば接触水添などを用いて無水ポリアルケニルこはく酸を無水ポリアルキルこはく酸に変化させることができる。接触水添に適切な触媒は炭素に担持されて
いるパラジウムである。同様に、同様な還元条件を用いてポリアルケニルスクシニミドをポリアルキルスクシニミドに変化させることも可能である。
【0080】
本明細書で用いる無水こはく酸上のポリアルキルもしくはポリアルケニル置換基は、一般に、ポリオレフィンに由来する置換基であってもよく、そのようなポリオレフィンは、モノオレフィン、特に1−モノ−オレフィン、例えばエチレン、プロピレンおよびブチレンなどの重合体または共重合体である。その用いるモノオレフィンの炭素原子数は約2から約24、またはさらなる例として、炭素原子数は約3から約12であり得る。他の適切なモノオレフィンには、プロピレン、ブチレン、特にイソブチレン、1−オクテンおよび1−デセンが含まれる。そのようなモノオレフィンから生じさせるポリオレフィンには、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、そして1−オクテンと1−デセンから生じさせたポリアルファオレフィンが含まれる。
【0081】
いくつかの面では、無灰分散剤に、イミド基を形成し得る第一級アミノ基を少なくとも1個有するアミンの1種以上のアルケニルスクシニミドを含めてもよい。通常の方法、例えばアルケニルこはく酸の無水物、酸、酸−エステル、酸ハライドまたは低級アルキルエステルを第一級アミノ基を少なくとも1個含有するアミンと一緒に加熱することなどで、アルケニルスクシニミドを生じさせることができる。無水アルケニルこはく酸の製造はポリオレフィンと無水マレイン酸の混合物を約180−220℃に加熱することで容易に実施可能である。そのようなポリオレフィンは低級モノオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、イソブテンなどから生じさせた数平均分子量がゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定して約300から約3000の範囲内の重合体または共重合体であってもよい。
【0082】
そのような無灰分散剤を生じさせる時に使用可能なアミンには、反応してイミド基を生じ得る第一級アミノ基を少なくとも1個および追加的第一級もしくは第二級アミノ基を少なくとも1個および/またはヒドロキシル基を少なくとも1個有する如何なるアミンも含まれる。僅かの代表例は下記である:N−メチル−プロパンジアミン、N−ドデシルプロパンジアミン、N−アミノプロピル−ピペラジン、エタノールアミン、N−エタノール−エチレンジアミンなど。
【0083】
適切なアミンには、アルキレンポリアミン、例えばプロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、ジ−(1,2−ブチレン)トリアミンおよびテトラ−(1,2−プロピレン)ペンタアミンなどが含まれ得る。さらなる例には、式HN(CHCH− NH)H[式中、nは約1から約10の整数であってもよい]で描写可能なエチレンポリアミンが含まれる。それらにはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサアミン(PEHA)などが含まれ、それには、それらの混合物(この場合のnは混合物の平均値である)も含まれる。そのようなエチレンポリアミンは、モノ−アルケニルスクシニミドおよびビス−アルケニルスクシニミドを生じ得るように、各末端部に第一級アミン基を有する。市販のエチレンポリアミン混合物は分枝種および環式種、例えばN−アミノエチルピペラジン、N,N’−ビス(アミノエチル)ピペラジン、N,N’−ビス(ピペラジニル)エタンおよび同様な化合物を少量含有している可能性がある。そのような市販混合物はジエチレントリアミンからテトラエチレンペンタアミンに相当する範囲に入るおおよその全体組成を有する可能性がある。無水ポリアルケニルこはく酸とポリアルキレンポリアミンのモル比を約1:1から約3.0:1にしてもよい。
【0084】
いくつかの面では、そのような分散剤にポリエチレンポリアミン、例えばトリエチレンテトラアミンまたはテトラエチレンペンタアミンなどと炭化水素置換カルボン酸もしくは無水物[適切な分子量を有するポリオレフィン、例えばポリイソブテンなどと不飽和ポリ
カルボン酸もしくは無水物、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸など(このような物質2種以上の混合物を包含)を反応させることで生じさせた]の反応生成物を含めることも可能である。
【0085】
また、本明細書に記述する分散剤を調製する時に用いるにも適したポリアミンには、N−アリールフェニレンジアミン、例えばN−フェニルフェニレンジアミン、例えばN−フェニル−1,4−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,3−フェニレンジアミンおよびN−フェニル−1,2−フェニレンジアミンなど、アミノチアゾール類、例えばアミノチアゾール、アミノベンゾチアゾール、アミノベンゾチアジアゾールおよびアミノアルキルチアゾールなど、アミノカルバゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノ−インダゾリノン、アミノメルカプトトリアゾール、アミノペリミジン、アミノアルキルイミダゾール、例えば1−(2−アミノエチル)イミダゾール、1−(3−アミノプロピル)イミダゾールなど、およびアミノアルキルモルホリン、例えば4−(3−アミノプロピル)モルホリンなどが含まれる。そのようなポリアミンは米国特許第4,863,623号および5,075,383号(これらの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)により詳細に記述されている。
【0086】
前記ヒドロカルビル置換スクシニミドを生じさせる時に用いるに有用な追加的ポリアミンには、第一級もしくは第二級アミノ基を分子中に少なくとも1個および第三級アミノ基を少なくとも1個有するポリアミン、例えば米国特許第5,634,951号および5,725,612号(これらの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に教示されている如きそれらが含まれる。適切なポリアミンの非限定例には、N,N,N”,N”−テトラアルキルジアルキレントリアミン(末端の第三級アミノ基を2個と中心の第二級アミノ基を1個)、N,N,N’,N”−テトラアルキルトリアルキレンテトラアミン(末端の第三級アミノ基を1個と内部の第三級アミノ基を2個と末端の第一級アミノ基を1個)、N,N,N’,N”,N”’−ペンタアルキルトリアルキレンテトラアミン(末端の第三級アミノ基を1個と内部の第三級アミノ基を2個と末端の第二級アミノ基を1個)、トリス(ジアルキルアミノアルキル)アミノアルキルメタン(末端の第三級アミノ基を3個と末端の第一級アミノ基を1個)、および同様な化合物が含まれるが、ここで、前記アルキル基は同じまたは異なり、各々が含有する炭素原子の数は典型的に約12以下であり、各々が炭素原子を約1から約4個含有していてもよい。さらなる例として、そのようなアルキル基はメチルおよび/またはエチル基であってもよい。この種類のポリアミン反応体にはジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)およびN−メチルピペラジンが含まれ得る。
【0087】
本明細書で用いるに適したヒドロキシアミンには、前記ヒドロカルビル置換こはく酸もしくは無水物と反応し得る第一級もしくは第二級アミンを少なくとも1個含有する化合物、オリゴマーまたは重合体が含まれる。本明細書で用いるに適したヒドロキシアミンの例には、アミノエチルエタノールアミン(AEEA)、アミノプロピルジエタノールアミン(APDEA)、エタノールアミン、ジエタノールアミン(DEA)、ある程度プロポキシル化されたヘキサメチレンジアミン(例えばHMDA−2POまたはHMDA−3PO)、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよび2−アミノ−1,3−プロパンジオールが含まれる。
【0088】
アミンとヒドロカルビル置換こはく酸もしくは無水物のモル比を約1:1から約3.0:1の範囲にしてもよい。アミンとヒドロカルビル置換こはく酸もしくは無水物のモル比の別の例は約1.5:1から約2.0:1の範囲であり得る。
【0089】
この上に示した分散剤はまた後処理を受けさせた分散剤であってもよく、これの製造は例えば前記分散剤に無水マレイン酸およびホウ酸による処理(例えば米国特許第5,78
9,353号に記述されている如き)を受けさせるか或は前記分散剤にノニルフェノール、ホルムアルデヒドおよびグリコール酸による処理(例えば米国特許第5,137,980号に記述されている如き)を受けさせることで実施可能であり、ここで、それらの開示は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる。
【0090】
マンニッヒ塩基型分散剤は、アルキルフェノール、典型的には環上に長鎖アルキル置換基を有するアルキルフェノールと炭素原子を約1から約7個含有する1種以上の脂肪族アルデヒド(例えばホルムアルデヒドおよびこれの誘導体)とポリアミン(特にポリアルキレンポリアミン)の反応生成物であり得る。例えば、約1モルの長鎖炭化水素置換フェノールと約1から約2.5モルのホルムアルデヒドと約0.5から約2モルのポリアルキレンポリアミンの比率でそれらを縮合させることでマンニッヒ塩基型無灰分散剤を生じさせることができる。
【0091】
マンニッヒ型ポリアミン分散剤を生じさせる時の炭化水素源は、実質的に飽和の石油溜分およびオレフィン重合体、例えば炭素原子数が2から約6のモノ−オレフィンの重合体などから生じさせた炭化水素源であってもよい。そのような炭化水素源が含有する炭素原子の数は、一般に、当該分散剤が実質的に油溶性を示すように、例えば少なくとも約40、さらなる例として、炭素原子の数は少なくとも50である。GPC数平均分子量が約600から5,000の範囲のオレフィン重合体も適し得る。しかしながら、また、より高い分子量を有する重合体を用いることも可能である。適切な炭化水素源はイソブチレン重合体およびイソブテンとラフィネート流れの混合物から作られた重合体であり得る。
【0092】
適切なマンニッヒ塩基型分散剤は、約1モルの長鎖炭化水素置換フェノールと約1から約2.5モルのホルムアルデヒドと約0.5から約2モルのポリアルキレンポリアミンの比率でそれらを縮合させることで生じさせたマンニッヒ塩基型無灰分散剤であり得る。
【0093】
無灰分散剤として用いるに適した高分子量ポリアミン系分散剤は、塩基性アミン基と油溶性基(例えば炭素原子数が少なくとも約8のペンダント型アルキル基)を含有する重合体である。そのような材料の例は、いろいろな単量体、例えばメタアクリル酸デシル、ビニルデシルエーテルまたは比較的高分子量のオレフィンとアクリル酸アミノアルキルとアミノアルキルアクリルアミドから生じさせたインターポリマーである。高分子量ポリアミン系分散剤の例が米国特許第3,329,658;3,449,250;3,493,520;3,519,565;3,666,730;3,687,849および3,702,300号に示されている。高分子量ポリアミンには、ヒドロカルビル基がイソブテンとこの上に記述した如きラフィネートI流れの重合生成物で構成されているヒドロカルビルポリアミンが含まれ得る。また、PIB−アミンおよびPIB−ポリアミンを用いることも可能である。
【0094】
この上に記述した如き無灰分散剤の製造方法は本分野の技術者に公知であり、特許文献に報告されている。この上に示した種類のいろいろな無灰分散剤の合成は、例えば米国特許第2,459,112;2,962,442, 2,984,550;3,036,003;3,163,603;3,166,516;3,172,892;3,184,474;3,202,678;3,215,707;3,216,936;3,219,666;3,236,770;3,254,025;3,271,310;3,272,746;3,275,554;3,281,357;3,306,908;3,311,558;3,316,177;3,331,776;3,340,281;3,341,542;3,346,493;3,351,552;3,355,270;3,368,972;3,381,022;3,399,141;3,413,347;3,415,750;3,433,744;3,438,757;3,442,808;3,444,170;3,448,047;3,448,048;3,448,049;3,451,933;3,454,497;3,454,555;3,454,607;3,459,661;3,461,172;3,467,668;3,493,520;3,501,405;3,522,179;3,539,633;3,541,012;3,542,680;3,543,678;3,558,743;3,565,804;3,567,637;3,574,101;3,576,743;3,586,629;3,591,598;3,600,372;3,630,904;3,632,510;3,632,511;3,634,515;3,649,229;3,697,428;3,697,574;3,703,536;3,704,308;3,725,277;3,725,441;3,725,480;3,726,882;3,736,357;3,751,365;3,756,953;3,793,202;3,798,165;3,798,247;3,803,039;3,804,763;3,836,471;3,862,981;3,872,019;3,904,595;3,936,480;3,948,800;3,950,341;3,957,746;3,957,854;3,957,855;3,980,569;3,985,802;3,991,098;4,006,089;4,011,380;4,025,451;4,058,468;4,071,548;4,083,699;4,090,854;4,173,540;4,234,435;4,354,950;4,485,023;5,137,980号およびRe 26,433の如き特許(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている。
【0095】
適切な無灰分散剤の一例はホウ素化分散剤である。塩基性窒素を有しそして/またはヒドロキシル基を分子中に少なくとも1個有する無灰分散剤、例えばスクシニミド系分散剤、スクシナミド系分散剤、こはく酸エステル系分散剤、こはく酸エステル−アミド系分散剤、マンニッヒ塩基型分散剤またはヒドロカルビルアミンもしくはポリアミン系分散剤などにホウ素化(「ホウ化」)を受けさせることでホウ素化分散剤を生じさせることができる。この上に記述したいろいろな種類の無灰分散剤にホウ素化を受けさせる目的で使用可能な方法は米国特許第3,087,936;3,254,025;3,281,428;3,282,955;2,284,409;2,284,410;3,338,832;3,344,069;3,533,945;3,658,836;3,703,536;3,718,663;4,455,243および4,652,387号(これらの開示は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されている。
【0096】
そのようなホウ素化分散剤には、ホウ素化分散剤がホウ素を約2重量%以下、例えばホウ素を約0.8重量%以下、さらなる例として、ホウ素を約0.1から約0.7重量%、さらなる例として、ホウ素を約0.25から約0.7重量%、さらなる例として、ホウ素を約0.35から約0.7重量%含有するようにホウ素による処理を受けさせておいた高分子量の分散剤が含まれ得る。そのような分散剤は取り扱いが容易なように適切な粘度を有する油に溶解し得る。ここに示した重量パーセントは希釈用油を全く添加していない混ぜ物無しの分散剤の重量パーセントであると理解されるべきである。
【0097】
分散剤を更に有機酸、無水物および/またはアルデヒド/フェノール混合物と反応させることも可能である。そのような方法を用いると例えば弾性重合体製シールとの適合性が向上し得る。ホウ素化分散剤には更にホウ素化分散剤の混合物も含まれ得る。さらなる例として、ホウ素化分散剤には窒素含有分散剤も含まれ得、そして/または燐を含有していなくてもよい。
【0098】
1つの面において、この開示する潤滑油組成物で用いるに適した分散剤はエチレン−プロピレン系分散剤であり得る。特に、そのような分散剤は、無水マレイン酸をグラフト化させそしてn−フェニルフェニレンジアミンと反応させたエチレン−プロピレン共重合体であり得る。
【0099】
本明細書では、また、米国特許第5,075,383および6,117,825号(これらの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている如き無水低分子量エチレン−アルファ−オレフィンこはく酸系分散剤も使用に適する。また、米国特許第5,266,223;5,350,532および5,435,926号(これらの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている如きエチレンアルファ−オレフィン重合体も本開示で用いるに適する。また、米国特許第4,952,637, 5,356,999, 5,374,364および5,424,366号(これらの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている如きエチレン−プロピレンジエン共重合体も適する。
【0100】
また、無水架橋低分子量エチレン−プロピレンこはく酸系分散剤も本発明で用いるに適する。そのような架橋分散剤は、この上で考察した無水低分子量エチレンアルファ−オレフィンこはく酸系分散剤と同様であるが、米国特許第6,107,258号(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている如く、有利な架橋を達成するように多官能ポリアミンを追加的に含有する。
【0101】
適切な分散剤は、分子量が約300から約25,000、例えば約1000から約15,000、よりさらなる例として約5,000から約15,000のエチレン−アルファ−オレフィン重合体から生じさせた分散剤であろう。
【0102】
追加的面における分散剤は、米国特許第5,139,688および6,107,257号(これらの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に詳細に記述されている如き高度グラフト化アミン誘導官能化エチレン−プロピレン共重合体であり得る。
【0103】
1つの面における分散剤は官能化オレフィン共重合体であり得る。そのような重合体もしくは共重合体基質の調製をエチレンおよびプロピレンを用いて実施してもよいか、或はそれの調製をエチレンとCからC23アルファ−オレフィンの範囲内の少なくとも1種の高級オレフィンを用いて実施することも可能である。
【0104】
本明細書で用いるに適した重合体の非限定例には、エチレンと少なくとも1種のCからC23アルファ−オレフィンから生じさせた共重合体が含まれる。1つの面では、エチレンとプロピレンの共重合体を用いることができる。コポリマーを生じさせる目的でプロピレンの代わりに用いるか或はターポリマーを生じさせる目的でエチレンおよびプロピレンと組み合わせて用いるに適した他のアルファ−オレフィンには、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよびスチレン、α,ω−ジオレフィン、例えば1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエンなど、分枝鎖アルファ−オレフィン、例えば4−メチルブテン−1,5−メチルペンテン−1および6−メチルヘプテン−1などおよびこれらの混合物が含まれる。
【0105】
3番目の成分を用いることで、より複雑な重合体基質(しばしばインターポリマーと表示する)を生じさせることも可能である。インターポリマー基質を生じさせる時に一般的に用いる3番目の成分は、非共役ジエンおよびトリエンから選択したポリエン単量体であり得る。非共役ジエン成分は、炭素原子を鎖中に5から14個有するジエンであってもよい。例えば、そのようなジエン単量体は、その構造にビニル基が存在することで特徴付け可能であり、それには環式およびビシクロ化合物も含まれ得る。代表的なジエンには、1,4−ヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,5−ヘプタジエンおよび1,6−オクタジエンが含まれる。そのようなインターポリマーを生じさせる時に2種以上のジエンの混合物を用いることも可能である。1つの態様において、ターポリマーもしくはインターポリマー基質を生じさせるに適した非共役ジエンは1,4−ヘキサジエンであり得る。
【0106】
前記トリエン成分は、共役していない二重結合を鎖中に少なくとも2個持ち得、炭素原子数は約30以下であり得る。本発明のインターポリマーを生じさせる時に用いるに有用な典型的なトリエンは、1−イソプロピリデン−3α,4,7,7α−テトラヒドロインデン、1−イソプロピリデンジシクロペンタジエン、ジヒドロ−イソジシクロペンタジエンおよび2−(2−メチレン−4−メチル−3−ペンテニル)(2.2.1)ビシクロ−5−ヘプテンであり得る。
【0107】
エチレン−プロピレンもしくは高級アルファ−オレフィンの共重合体は、エチレンを約15から80モルパーセントおよびCからC23アルファ−オレフィンを約85から20モルパーセント含んで成っていてもよく、例えば、エチレン対CからC23アルファ−オレフィンのモル比は約35から75モルパーセント対約65から25モルパーセントであり、例えば、エチレン対CからC23アルファ−オレフィンの比率は50から70モルパーセント対50から30モルパーセント、さらなる例として、エチレン対CからC23アルファ−オレフィンの比率は55から65モルパーセント対45から35モルパーセントである。
【0108】
この上に示した重合体のターポリマー変形は共役ジエンもしくはトルエンを約0.1から10モルパーセント含んで成り得る。
【0109】
エチレンのコポリマー、ターポリマーまたはインターポリマーを包含させる目的で用語「重合体」および「共重合体」を総称的に用いることができる。そのような材料は、エチレン共重合体の基本的特性が実質的に変化しない限り他のオレフィン単量体を少量含有していてもよい。本分野の通常の技術者はそのような官能化オレフィン共重合体を製造する方法を理解するであろう。例えば、米国特許第6,107,257号(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に官能化オレフィン共重合体の製造方法が開示されている。
【0110】
前記分散剤はまたポリ(メタ)アクリル酸アルキル共重合体であってもよく、これは(A)約12から約18重量パーセントのメタアクリル酸メチル、(B)約75から約85重量パーセントの(メタ)アクリル酸C10−C15アルキルおよび(C)約2から約5重量パーセントの分散用窒素含有単量体に由来する単位を含んで成り得る。そのようなポリ(メタ)アクリル酸アルキル共重合体は、(A)約12から約18重量パーセントのメタアクリル酸メチル、(B)約75から約85重量パーセントの(メタ)アクリル酸C10−C15アルキルおよび(C)約2から約5重量パーセントの分散用窒素含有単量体の反応生成物を含んで成り得る。
【0111】
本明細書で用いる如き(メタ)アクリル酸C10−C15アルキルは、基1個当たりの炭素原子数が10から15の直鎖もしくは分枝アルキル基を有するアクリル酸もしくはメタアクリル酸アルキルエステルを意味し、それには、これらに限定するものでないが、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、メタアクリル酸ドデシルペンタデシルおよびこれらの混合物が含まれる。
【0112】
アルキル基中の炭素原子数が10以上の(メタ)アクリル酸アルキルである共重合用単量体の調製は、一般に、工業品質の長鎖脂肪アルコールを用いた標準的エステル化手順を用いて実施可能であり、そのような市販のアルコールはアルキル基中の鎖長がいろいろなアルコールの混合物である。その結果として、本開示の目的で、(メタ)アクリル酸アル
キルに挙げた個々の(メタ)アクリル酸アルキル製品を包含させるばかりでなくまた挙げた個々の(メタ)アクリル酸アルキルが主要量で存在する(メタ)アクリル酸アルキル混合物も包含させることを意図する。
【0113】
本明細書で用いるに適した分散用窒素含有単量体には、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、例えばN,N−ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルメタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミドおよびN,N−ジエチルアミノエチルアクリルアミドなど、および(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル、例えばメタアクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチルおよびチオメタアクリル酸N,N−ジメチルアミノエチルなどが含まれる。
【0114】
1つの面では、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル共重合体を本質的に(A)と(B)と(C)の反応生成物で構成させる。しかしながら、本分野の技術者は、本明細書に開示する単量体(A)、(B)および/または(C)と一緒に重合し得る他の単量体もそれらが完全調合流体の低温特性に悪影響を与えない限り低濃度で存在させてもよいことを理解するであろう。存在させる追加的単量体の量を典型的には約5重量パーセント未満の量、例えば3重量パーセント未満の量、さらなる例として1重量パーセント未満の量にする。単量体、例えば(メタ)アクリル酸C−Cアルキル、ヒドロキシもしくはアルコキシを含有するアルキルの(メタ)アクリル酸エステル、エチレン、プロピレン、スチレン、酢酸ビニルなどを低濃度で添加することは本開示の範囲内であることを意図する。1つの面では、(A)と(B)と(C)の重量パーセントの合計が100%に相当するようにする。
【0115】
そのような共重合体の調製はいろいろな重合技術を用いて実施可能であり、そのような技術にはフリーラジカルおよびアニオン重合が含まれる。
【0116】
通常のフリーラジカル重合方法を用いてそのような共重合体を生じさせることができる。アクリル酸系および/またはメタアクリル酸系単量体の重合はいろいろな条件下で起こり得、そのような条件には、塊状重合、溶液重合(通常は有機溶媒、好適には鉱油中)、乳化重合、懸濁重合および非水性分散技術が含まれる。
【0117】
そのような分散剤を本潤滑油組成物に如何なる必要または有効量で存在させてもよい。1つの面において、本潤滑油組成物にそれを本潤滑組成物の総重量を基準にして約0.1重量%から約10重量%、例えば約1重量%から約7重量%、さらなる例として約2重量%から約5重量%含有させてもよい。1つの面において、本添加剤組成物にそれを本添加剤組成物の総重量を基準にして約0.6重量%から約59.5重量%、例えば約5.95重量%から約41.7重量%、さらなる例として約11.9重量%から約29.8重量%含有させてもよい。
【0118】
いろいろな態様に従い、基油を主要量および添加剤組成物(これは摩擦改良剤および分散剤を含有して成る)を少量含有して成る潤滑油組成物を開示し、ここで、本添加剤組成物は、前記摩擦改良剤も前記分散剤も入っていない添加剤組成物に比べて低下した薄膜摩擦および向上した燃料効率の中の少なくとも一方を示す。
【0119】
この開示する潤滑油および/または添加剤組成物に場合により他の成分を存在させることも可能である。他の成分の非限定例には、抗摩耗剤、洗浄剤、希釈剤、消泡剤、乳化破壊剤、抗発泡剤、腐食抑制剤、極圧剤、シールウエル剤(seal well agents)、抗酸化剤、流動点降下剤、防錆剤および摩擦改良剤が含まれる。
【0120】
1つの面において、この開示する潤滑油組成物をエンジン、トランスミッションまたはギアセットに潤滑油として差すことができる。しかしながら、本分野の通常の技術者は、この開示する潤滑用組成物をいずれかに潤滑油を差す目的、例えばいずれかの表面、例えば薄膜摩擦が存在し得る表面などに潤滑油を差す目的で使用可能であることを理解するであろう。別の面において、機械、例えばエンジン、トランスミッション、自動車用ギア、ギアセットおよび/または軸などに潤滑油を差す方法も開示し、この方法は、前記機械に本開示する潤滑油組成物を供給することを含んで成る。
【0121】
いろいろな面に従い、ある流体が表面間で示す薄膜摩擦を低下させる方法を開示し、この方法は、前記流体に基油および添加剤組成物(これは燐含有化合物、摩擦改良剤および分散剤から選択した添加剤および洗浄剤を含有して成る)を含有して成る潤滑油組成物を供給することを含んで成る。
【0122】
更に別の面に従い、ある流体が表面間で示す薄膜摩擦を低下させる方法を開示し、この方法は、前記流体に基油および添加剤組成物(これは摩擦改良剤および分散剤を含有して成る)を含有して成る潤滑油組成物を供給することを含んで成る。
【0123】
いろいろな面において、運搬手段における燃料効率を向上させる方法を開示し、この方法は、運搬手段に基油および添加剤組成物(これは燐含有化合物、摩擦改良剤および分散剤から選択した添加剤および洗浄剤を含有して成る)を含有して成る組成物を供給することを含んで成る。
【0124】
他の面において、運搬手段における燃料効率を向上させる方法を開示し、この方法は、運搬手段に基油および添加剤組成物(これは摩擦改良剤および分散剤を含有して成る)を含有して成る組成物を供給することを含んで成る。
【0125】
本明細書では、また、この開示する潤滑油組成物を用いて機械、例えばエンジン、トランスミッション、自動車用ギア、ギアセットおよび/または車軸などを潤滑させる方法も開示する。さらなる面では、機械、例えばエンジン、トランスミッション、自動車用ギア、ギアセットおよび/または車軸などにおける燃料効率を向上させる方法を開示し、この方法は、この開示する潤滑油組成物を機械、例えばエンジン、トランスミッション、自動車用ギア、ギアセットおよび/または車軸などに入れることを含んで成る。
【0126】
更に、この開示する潤滑油組成物は燃料経済性が問題になっている如何なる機械にも供給可能であると考えている。
【実施例1】
【0127】
−個々の添加剤が薄膜摩擦に対して示す効果
個々の添加剤、例えば洗浄剤、燐含有化合物[P−A(金属を含有し、燐を含有する)およびP−B(金属を含有せず、燐を含有する)]、摩擦改良剤、[FM−A(窒素を含有)、FM−B(窒素を含有しない)およびFM−C(窒素を含有しない)]および分散剤[D−A(スクシニミド)およびD−B(重合体)]などを2種類の基油、即ちグループIIの基油(G2)およびグループIVの基油(PA04)に添加した時にそれらが薄膜摩擦に対して示した効果を表1に示す。薄膜摩擦の測定を100℃/20Nの負荷で1.5m/秒の時のロールに対するスライドの比率が20%になるようにして実施した。表1にまた基油と対比させた時の薄膜摩擦変化%も示す。分かるであろうように、G2におけるD−Aを除くあらゆる添加剤が薄膜摩擦を高くした。しかしながら、D−AをPA04に添加すると薄膜摩擦が高くなり得る。
【0128】
【表1】

【実施例2】
【0129】
−添加剤組成物が基油G2の薄膜摩擦に対して示す効果
表2に、燐含有化合物(P−AおよびP−B)、摩擦改良剤(FM−A、FM−BおよびFM−C)および分散剤(D−AおよびD−B)から選択した添加剤と分散剤を含有させた添加剤組成物を基油G2に入れた時にそれらが薄膜摩擦に対して示した効果を示す。表2に、また、薄膜摩擦の実際および計算した変化パーセントも示す。添加剤を基油の中で一緒にする場合、表1に示す如き個々の添加剤の各々を用いた時に基油が示した薄膜摩擦の変化パーセントを加算することで当該基油が示す計算薄膜摩擦変化パーセントを決定することができる。例えば、洗浄剤とP−Aの組み合わせを基油RLOP 100に入れた時の計算薄膜摩擦変化パーセントは277%(130%+147%)であろう。表2に、個々の添加剤が示した効果から決定した計算薄膜摩擦変化パーセントを示す。そのような添加剤の組み合わせを用いた時の実際の薄膜摩擦変化パーセントが計算薄膜摩擦変化パーセントより小さいならば、測定薄膜摩擦が予想外に低いことになり、そのような添加剤組み合わせは燃料経済特性が予測よりも良好である。
【0130】
【表2】

【0131】
表2に示したあらゆるケースで、燐含有化合物(P−AおよびP−B)、摩擦改良剤(FM−AおよびFM−B)および分散剤(D−A)から選択した添加剤と洗浄剤(洗浄剤)を含有させた添加剤組成物を基油G2に入れると実際の薄膜摩擦変化パーセントが計算薄膜摩擦変化パーセントよりも低くなった。従って、燐含有化合物、摩擦改良剤および分散剤から選択した添加剤と洗浄剤を含有させた添加剤組成物を基油に入れると予想外に薄膜摩擦が予測よりも良好になり、従って燃料効率が良好になった。
【実施例3】
【0132】
−添加剤組成物が基油PA04の薄膜摩擦に対して示す効果
表3に、摩擦改良剤(FM−AおよびFM−C)および分散剤(D−A)を含有させた添加剤組成物を基油PA04に入れた時にそれが薄膜摩擦に対して示した効果を示す。表3に、また、薄膜摩擦の実際および計算した変化パーセントも示す。表3に示したあらゆるケースで、摩擦改良剤(FM−AおよびFM−C)および分散剤(D−A)を含有させた添加剤組成物を基油PA04に入れると実際の薄膜摩擦変化パーセントの方が個々の添加剤が示した効果から計算した薄膜摩擦変化パーセントよりも低くなった。
【0133】
【表3】

【0134】
本明細書全体に渡るいろいろな場所で数多くの米国特許、公開された外国特許出願および出版された技術論文を言及してきた。そのような示した資料は全部があたかも本明細書に詳細に示す如く全体が明らかに本開示に組み込まれる。
【0135】
本明細書および添付請求項の目的で、特に明記しない限り、量、パーセントまたは比率を表す数値および本明細書および請求項で用いた他の数値は全てのケースで用語「約」の修飾を受けていると理解されるべきである。従って、反対であると示さない限り、本明細書および添付請求項に示す数値パラメーターは、本開示で得ることを探求する所望特性に応じて変わり得る近似値である。最低限でも、本請求項の範囲に適用する相当物の原理の適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメーターは少なくとも報告する有効数字の数に照らして通常の四捨五入技術を適用することで解釈されるべきである。
【0136】
本開示の幅広い範囲を示す数値の範囲およびパラメーターは近似値であるが、具体的実施例に示す数値はできるだけ正確に報告する。しかしながら、如何なる数値も個々の試験測定に見られる標準誤差の結果として必ず特定の誤差を本質的に包含する。その上、本明細書に開示するあらゆる範囲はその中に入る部分的範囲のいずれもおよび全部を包含すると理解されるべきである。例えば、「10未満」の範囲には、最低値であるゼロと最高値である10(これらを包含)の範囲の部分的範囲のいずれもおよび全部が含まれ得る、即ちゼロに等しいか或はそれ以上の最低値および10に等しいか或はそれ以下の最高値を有する部分的範囲、例えば1から5の範囲などのいずれもおよび全部が含まれ得る。
【0137】
本明細書および添付請求項で用いる如き単数形「a」、「an」および「the」は明瞭かつ明らかに1つの指示対象に限定しない限り複数の指示対象を包含することを特記する。このように、例えば「ある抗酸化剤」の言及は2種以上の異なる抗酸化剤を包含する。本明細書で用いる如き用語「包含」およびこれの文法的変形は限定を意図するものでなく、リストの中の項目を列挙することはその挙げた項目の代わりにか或はそれに加えて用いることができる他の同様な項目を排除するものでない。
【0138】
本発明はこれの実施の点でかなりの変形を受け易い。従って、この上で行った説明は本発明を本明細書の上に示した個々の例に限定することを意図するものでなく、かつ限定するとして解釈されるべきではない。むしろ、保護を意図する事項は本請求項に示す如き事項および法の問題として許されるそれらの相当物である。
【0139】
本出願者は開示する全ての態様を公に捧げることを意図するものでなく、開示した修飾形または変形のいずれかが文字通りには本請求項の範囲内に入らない可能性はあるが、そ
の度合で、それらも相当物の原則下で本発明の一部であると見なす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
添加剤組成物であって、
洗浄剤、および
燐含有化合物、摩擦改良剤および分散剤から選択した添加剤、
を含有して成っていて、前記洗浄剤も前記添加剤も入っていない添加剤組成物に比べて低下した薄膜摩擦および向上した燃料効率の中の少なくとも一方を示す添加剤組成物。
【請求項2】
前記燐含有化合物が金属を含有する燐含有化合物である請求項1記載の添加剤組成物。
【請求項3】
前記金属を含有する燐含有化合物が金属のジヒドロカルビルジチオ燐酸塩である請求項2記載の添加剤組成物。
【請求項4】
前記金属のジヒドロカルビルジチオ燐酸塩がジアルキルジチオ燐酸亜鉛である請求項3記載の添加剤組成物。
【請求項5】
前記燐含有化合物が硫黄を含有する燐含有化合物である請求項1記載の添加剤組成物。
【請求項6】
前記硫黄を含有する燐含有化合物がチオホスフェート、ジチオホスフェート、硫黄含有ネオペンチルグリコールホスファイトおよび硫黄含有ネオペンチルグリコールホスファイトの塩から選択される請求項5記載の添加剤組成物。
【請求項7】
前記摩擦改良剤が窒素を含有しない化合物、窒素含有化合物および灰分含有化合物の中の少なくとも1種である請求項1記載の添加剤組成物。
【請求項8】
前記窒素を含有しない化合物がポリオールエステルである請求項7記載の添加剤組成物。
【請求項9】
前記ポリオールエステルがグリセロールモノオレエートおよびグリセロールモノラウレートから選択される請求項8記載の添加剤組成物。
【請求項10】
前記窒素含有化合物が長鎖アルキレンアミンである請求項7記載の添加剤組成物。
【請求項11】
前記長鎖アルキレンアミンがN−オレイル−トリメチレンジアミン、N−獣脂−トリメチレンジアミン、ココ−トリメチレンジアミンおよびこれらの混合物から選択される請求項10記載の添加剤組成物。
【請求項12】
前記窒素含有化合物がジエタノールアミンである請求項7記載の添加剤組成物。
【請求項13】
前記灰分含有化合物が硫黄を含有するモリブデン含有化合物である請求項7記載の添加剤組成物。
【請求項14】
前記モリブデン含有化合物がモリブデンのカルボン酸塩、モリブデンのアミド、モリブデンのチオ燐酸塩、モリブデンのチオカルバミン酸塩およびこれらの混合物から選択される請求項11記載の添加剤組成物。
【請求項15】
前記分散剤がスクシニミド、ホウ素化スクシニミド、マンニッヒ分散剤、官能化オレフィン共重合体およびポリ(メタ)アクリレート共重合体の中の少なくとも1種である請求項1記載の添加剤組成物。
【請求項16】
前記分散剤が高度グラフト化アミン誘導官能化エチレン−プロピレン共重合体である請求項15記載の添加剤組成物。
【請求項17】
潤滑油組成物であって、
基油を主要量、および
請求項1記載の添加剤組成物を少量、
含有して成る潤滑油組成物。
【請求項18】
請求項17記載の潤滑油組成物で潤滑されているエンジン、トランスミッションまたはギアセット。
【請求項19】
機械に潤滑油を差す方法であって、前記機械に請求項17記載の潤滑油組成物を供給することを含んで成る方法。
【請求項20】
前記機械がギアである請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記機械がエンジンである請求項19記載の方法。
【請求項22】
添加剤組成物であって、
摩擦改良剤、および
分散剤、
を含有して成っていて、摩擦改良剤も分散剤も入っていない添加剤組成物に比べて低下した薄膜摩擦および向上した燃料効率の中の少なくとも一方を示す添加剤組成物。
【請求項23】
前記摩擦改良剤が窒素を含有しない化合物、窒素含有化合物および灰分含有化合物の中の少なくとも1種である請求項22記載の添加剤組成物。
【請求項24】
前記分散剤がスクシニミド、ホウ素化スクシニミド、マンニッヒ分散剤、官能化オレフィン共重合体およびポリ(メタ)アクリレート共重合体の中の少なくとも1種である請求項22記載の添加剤組成物。
【請求項25】
潤滑油組成物であって、
基油を主要量、および
請求項22記載の添加剤組成物を少量、
含有して成る潤滑油組成物。
【請求項26】
請求項25記載の潤滑油組成物で潤滑されているエンジン、トランスミッションまたはギアセット。
【請求項27】
機械に潤滑油を差す方法であって、前記機械に請求項25記載の潤滑油組成物を供給することを含んで成る方法。
【請求項28】
前記機械がギアである請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記機械がエンジンである請求項27記載の方法。
【請求項30】
ある流体が表面間で示す薄膜摩擦を低下させる方法であって、前記流体に
基油、および
洗浄剤、および
燐含有化合物、摩擦改良剤および分散剤から選択した添加剤、
を含有して成る添加剤組成物、
を含有して成る潤滑油組成物を供給することを含んで成る方法。
【請求項31】
ある流体が表面間で示す薄膜摩擦を低下させる方法であって、前記流体に
基油、および
摩擦改良剤および分散剤を含有して成る添加剤組成物、
を含有して成る潤滑油組成物を供給することを含んで成る方法。
【請求項32】
ある運搬手段における燃料効率を向上させる方法であって、運搬手段に
基油、および
洗浄剤および燐含有化合物、摩擦改良剤および分散剤から選択した添加剤を含有して成る添加剤組成物、
を含有して成る組成物を供給することを含んで成る方法。
【請求項33】
ある運搬手段における燃料効率を向上させる方法であって、運搬手段に
基油、および
摩擦改良剤および分散剤を含有して成る添加剤組成物、
を含有して成る組成物を供給することを含んで成る方法。

【公開番号】特開2008−127563(P2008−127563A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269889(P2007−269889)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】