説明

灯器、交通信号灯器、及び灯器の反射防止ユニット

【課題】アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路の美観を損なうことのない新たな灯器、交通信号灯器及び反射防止ユニットを提供する。
【解決手段】交通信号灯器は、基板401、基板401上に配置された発光体303、及び前面に発光体を前方で覆う可視光透過性のカバー部材301を有する光学ユニット104と、グランド素子403及びパッチ素子404が光学ユニット104内に設けられ、グランド素子403が基板401よりも前方に配置され、パッチ素子404がグランド素子403よりも前方に配置されたパッチアンテナ106と、光学ユニット104内に設けられ、発光体303からの灯光を拡散させる灯光拡散部材402とを備え、灯光拡散部材402の少なくとも一部がパッチ素子404よりも前方に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯器、交通信号灯器、及び灯器の反射防止ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)が提案されている。このITSでは、道路に通信装置(インフラ装置)が設置されており、この通信装置のアンテナから発せられた情報を、道路を走行する車両の車載機が受信し、この情報を活用することにより、車両の走行についての安全性を向上させることができる(特許文献1参照)。
【0003】
このような路車間通信を無線によって行う場合、無線通信の見通しを確保する観点から、歩道等に設置した支柱から車道側にアームを張り出し、このアーム上に通信装置のアンテナを取り付けている。また、前記アームを設けなくても見通しが確保できる場合、前記支柱にアンテナを取り付けることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記通信装置のアンテナを道路に設置するために、アンテナ専用の支柱を新たに設けることは経済的でなく、また、道路の美観の点でも好ましくない。
そこで、道路には車両感知器や光ビーコンのヘッド等が設置されているため、これらを取り付けている支柱やアームにアンテナを併設することが考えられる。しかし、この場合においても、美観の点で好ましくない。
【0006】
そこで、アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路等の美観を損なうことのない新たな技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点から提供される灯器は、基板、前記基板上に配置された発光体、及び前面に前記発光体を前方で覆う可視光透過性のカバー部材を有する光学ユニットと、グランド素子及びパッチ素子が前記光学ユニット内に設けられ、前記グランド素子が前記基板よりも前方に配置され、前記パッチ素子が前記グランド素子よりも前方に配置されたパッチアンテナと、前記光学ユニット内に設けられ、前記発光体からの灯光を拡散させる灯光拡散部材とを備え、前記灯光拡散部材の少なくとも一部が前記パッチ素子より前方に配置される。
この灯器では、パッチアンテナが光学ユニット内に格納されているため、パッチアンテナを目立たなくすることができ、またアンテナ設置専用の支柱を不要とすることができる。
【0008】
さらに、基板がパッチアンテナによる電波の送受信の妨げにならないようにするには、グランド素子及びパッチ素子が、基板よりも前方に設けられている必要がある。また、このパッチアンテナが所望の性能を発揮するには、パッチ素子とグランド素子との間に灯器の前後方向に所定の間隔を設ける必要がある。
【0009】
しかし、基板上に配置される発光体は、前記間隔よりも、前後方向の長さが短いことから、発光体の前端よりもパッチ素子が前方に位置することとなる。この結果、パッチ素子が発光体からの灯光を妨げることになることがある。灯器の前方など特定方向では灯器外から灯光を良好に視認するようパッチ素子を設けても、他の方向でも灯光を妨げないように光路を設けることが難しい。
【0010】
一方、パッチ素子が発光体からの灯光の妨げとならないように、パッチ素子を発光体の前端よりも後方に配置すると、発光体の前後方向の長さが短いために、基板よりも前方に設けられているグランド素子とパッチ素子との間の前後方向の間隔を小さい値でしか設定できず、パッチアンテナは所望の性能を発揮することができなくなる恐れがある。
【0011】
そこで、この灯器では、グランド素子及びパッチ素子が発光体よりも前方に配置されると共に、灯光拡散部材の少なくとも一部がパッチ素子よりも前方に配置されている。このため、発光体からの灯光がグランド素子及びパッチ素子を通過するようにしておけば、その通過した灯光がパッチ素子よりも前方で灯光拡散部材により拡散される。灯光拡散部材により拡散された灯光はパッチ素子により妨げられない。すなわち、LEDから灯光拡散部材に至るまでの光路が灯器の前方に限られたとしても、灯光拡散部材により灯光を拡散することで、どの方向へも必要な光度を確保することができ、その結果、様々な方向から灯光を適当に視認することが可能となる。またパッチ素子よりも前方に発光体の前端を配置する必要がなくなるので、灯光を妨げないためにグランド素子とパッチ素子との間の間隔が制限されず、パッチアンテナに所望の性能を容易に発揮させることができる。
【0012】
この灯器は、前記発光体からの灯光を前記灯光拡散部材へ導く灯光導光部材をさらに備えることができる。これにより、より多くの灯光を灯光拡散部材で拡散させることができ、所望の光度が得られ易くなる。
【0013】
さらに、この灯器は、前記カバー部材と前記パッチ素子との間に配置され、前記光学ユニットへの入射光が前記光学ユニット内で反射するのを防止する板状の反射防止部材をさらに備え、前記反射防止部材が、前記発光体からの灯光を前方へ通過させる通過孔を有し、前記灯光拡散部材が、前記反射防止部材の前記通過孔前方に取り付けられるようにしてもよい。
【0014】
この灯器の一実施態様において、前記灯光拡散部材は、前記発光体からの灯光の一部を斜め下方へ拡散させる。また、前記灯光拡散部材が、前記灯器の灯光が前記灯器の中心から45度の範囲内で少なくとも1cd以上の光度を有するよう、前記発光体からの灯光を拡散するようにしてもよい。これによって、灯器が下方から視認される場合でも、所望の配光特性を得ることができる。
【0015】
灯器は、前記灯光拡散部材の後端面に形成され、前記発光体からの灯光が前記後端面で反射するのを抑制する反射抑制被膜をさらに備えるようにしてもよい。これによって、発光体からの灯光をより多く灯光拡散部材に入射させることができ、所望の光度が得られ易くなる。
【0016】
本発明の他の観点により提供される灯器は、基板、及び前記基板上に配置された発光体を有する光学ユニットと、グランド素子及びパッチ素子が前記光学ユニット内に設けられ、前記グランド素子が前記基板よりも前方に配置され、前記パッチ素子が前記グランド素子よりも前方に配置されたパッチアンテナと、前記光学ユニット内に設けられ、前記発光体からの灯光を拡散させる灯光拡散部材とを備え、前記灯光拡散部材の少なくとも一部が前記パッチ素子よりも前方に配置される。
【0017】
本発明のさらに他の観点により提供される交通信号灯器は、基板、前記基板上に配置された発光体、及び前記発光体を前方で覆う可視光透過性のカバー部材を有する光学ユニットと、グランド素子及びパッチ素子が前記光学ユニット内に設けられ、前記グランド素子が前記基板よりも前方に配置され、前記パッチ素子が前記グランド素子よりも前方に配置されたパッチアンテナと、前記発光体からの灯光を拡散させる灯光拡散部材とを備え、前記灯光拡散部材の少なくとも一部が前記パッチ素子よりも前方に配置される。
【0018】
本発明のさらに他の観点により提供される反射防止ユニットは、基板、前記基板上に配置された発光体、及び前記発光体を前方で覆う可視光透過性のカバー部材を有する光学ユニットと、グランド素子及びパッチ素子が前記光学ユニット内に設けられ、前記グランド素子が前記基板よりも前方に配置され、前記パッチ素子が前記グランド素子よりも前方に配置されたパッチアンテナとを備える灯器の反射防止ユニットであって、前記カバー部材と前記パッチ素子との間に配置され、前記光学ユニットへの入射光が前記光学ユニット内で反射するのを防止する板状の反射防止部材と、前記反射防止部材に形成された孔の前方に取り付けられ、前記孔を通過した前記発光体からの灯光を拡散させる灯光拡散部材とを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路等の美観を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態に係る交通信号灯器の全体構成を示す図である。
【図2】交通信号灯器に求められる配光特性の一例を示す図である。
【図3】光学ユニットの外観の一例を示す斜視図である。
【図4】アンテナを内蔵した光学ユニットの一例の正面図である。
【図5】アンテナを内蔵した光学ユニットの一例の断面図である。
【図6】LED及び灯光拡散部材並びにその周辺部を示す断面拡大図である。
【図7】灯光拡散部材の変形例の一つを説明する図である。
【図8】灯光拡散部材の別の変形例を説明する図である。
【図9】誘電体の比誘電率と、パッチ素子の外形及びパッチ素子の位置等との関係を示した図表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態では、本発明は発光体として複数の発光ダイオードを有する光学ユニットを備えた交通信号灯器として具体化されている。
【0022】
図1は本実施の形態に係る交通信号灯器の全体構成を示す図である。この交通信号灯器101は、道路に設置される車両用の灯器である。この信号灯器101は、歩道等の路側に設けられた支柱102に取り付けられている。支柱102の上部には、アーム103が車道側に張り出されて設けられている。信号灯器101は、車道を走行する車両から視認されるよう、そのアーム103の先端部に取り付けられている。
【0023】
信号灯器101は、複数(図例では三つ)の光学ユニット104と、これら光学ユニット104を組み込んでいる筐体105とを有している。三つの光学ユニット104は、複数の発光ダイオード(以下LEDという)をそれぞれ格納し、赤、黄、青の灯光色を有している。さらに本実施の形態においては、黄色の光学ユニット104が路車間通信用のパッチアンテナ106を格納する。光学ユニット104内にパッチアンテナ106を格納することで、アンテナ専用の支柱が必要なくなり、それによって道路の美観が損なわれない。なお、信号灯器101の設置構造は図示しているもの以外であってもよく、支柱102及びアーム103の形態が異なっていてもよい。また信号灯器101は歩道橋に架設されたものであってもよい。
【0024】
支柱102には制御装置107も取り付けられている。この実施の形態において制御装置107は、各光学ユニット104の点灯等を制御するほか、パッチアンテナ106による無線通信の制御も行う。制御装置107は、同軸ケーブル108により光学ユニット104内のパッチアンテナ106と接続されている。また、制御装置107と光学ユニットとの間にはLEDの駆動電流を流すための灯器線も敷設されている。しながら、信号灯器101の現示制御と無線通信制御との両方を制御装置107で行う必要はなく、両制御を別個の装置で行ってもよい。また制御装置は信号灯器101の筐体105に内蔵させてもよい。
【0025】
図2は交通信号灯器に求められる配光特性の一例を示す図である。交通信号灯器の灯光は、遠方にある車両からだけでなく、交差点を通過しようとする直近の車両からも十分に視認される必要がある。このため交通信号灯器の光学ユニットには、正面方向へ比較的高い光度が求められるだけでなく、ある程度の光度が斜め下方へも求められる。この例では、中心線上で288cdと比較的高い光度が求められているのに加えて、垂直下方33°でも3.6cdの光度が求められている。
【0026】
図3は光学ユニットの外観の一例を示す斜視図である。本実施の形態において、光学ユニット104がパッチアンテナを内蔵するか否かによって外観上の相違はほとんどない。光学ユニット104は、カバー部材301及び収容部材302を備えている。カバー部材301は、可視光透過性を有するガラス又は樹脂製の部材であり、光学ユニット104の前面を覆う。光学ユニット104は、このカバー部材301を介して灯光を出射する。収容部材302は、鋼板、アルミ又は合成樹脂材により形成された皿状の部材であり、底部(底壁)302aとその底壁302aの周縁から立設した側部(側壁)302bとを有している。この収容部材302の開口内周にカバー部材301が着脱可能に取り付けられる。光学ユニット104は、カバー部材301及び収容部材302により囲まれた空間内にLED303や、そのLEDを実装する基板などを収容する。しかしながら、光学ユニット104の基板よりも前方に反射防止部材(遮光部材)304が設けられるため、基板は外部から視認されない。アンテナを内蔵しない光学ユニット104では、同心円状に配置された複数のLED303のモールド前端が反射防止部材304よりも前方に配置される。
【0027】
反射防止部材304は、LED303内の反射鏡や基板の前面に対して西日や朝日等の太陽光が入射するのを制限することにより、反射鏡や基板による反射で信号灯器がみづらくなったり、点灯していない信号灯器が点灯しているように見える「擬似点灯」が生じたりするのを防止するためのものである。反射防止部材304は、絶縁材(不導体)からなる合成樹脂材により板状として形成される。本実施の形態において、反射防止部材304は、円形の板状(面状)に形成された板状部304a、及び各LED303の上部を覆う庇部304bを有する。板状部304aは、主に、基板に対して太陽光が直接当たるのを防止する。板状部304aには、複数のLED303の配置に対応して複数の貫通孔304cが形成される。アンテナを内蔵しない光学ユニット104では、それら貫通孔304cにLED303が挿通される。庇部304bは、各貫通孔304cの上縁から突出するように設けられる。庇部304bは、西日や朝日などの斜め上方から照りつける太陽光がLED303の反射鏡に入射するのを防止する。反射防止部材304は、このような反射防止のため、黒色の合成樹脂材により形成されるか、少なくとも板状部304aの前面が黒色に塗装される。又は黒色のシートを貼り付けてもよい。
【0028】
アンテナを内蔵しない光学ユニット104では、上述の通り、LED303のモールド前端が反射防止部材304よりも前方に配置されている。このため、LED303からの灯光は妨げられることなくカバー部材301から出射する。したがって、図2に示した配光特性を満たすようLED303自体や、その数・配置などを選択すればよい。
しかしながら、光学ユニット104内の反射防止部材304よりも後方にパッチアンテナを収容しようとすると不都合が生じる。パッチアンテナからすれば、LED303の基板は導体板である。このため、LED基板により電波の送受信が妨げられないようにするには、パッチアンテナのパッチ素子及びグランド素子を基板よりも前方へ配置する必要がある。パッチ素子及びグランド素子を基板よりも前方に配置するためにLED303の前端がパッチ素子よりも後方になってしまうと、パッチ素子がLED303による前方への灯光の妨げになることがある。LED303の正面方向を避けてパッチ素子を設けたとしても、異なる方向、例えば斜め下方でも当該LED303の灯光を妨げないようにパッチ素子を設けることは難しい。したがって、図2に示した配光特性を十分に得られない恐れが生じる。
【0029】
またパッチアンテナが所望の性能を発揮するには、パッチ素子とグランド素子との間に所定の間隔が必要になる。LED303前端の基板からの高さがその間隔よりも短い場合、LED303による灯光を妨げないようにLED303前端をパッチ素子よりも前方へ配置しようとすると、その間隔を確保できず、パッチアンテナが所望の性能を発揮できなくなってしまう。
【0030】
そこで、本実施の形態における信号灯器では、アンテナを内蔵する光学ユニット104において、LED303からの灯光を拡散させる灯光拡散部材の少なくとも一部をパッチ素子よりも前方に配置する。ここでは、灯光拡散部材がLED303のモールドと同じ素材でほぼ同形状となっていることから、光学ユニット104がアンテナを内蔵するか否かによって外観上の相違はほとんど生じない。
【0031】
図4及び図5はアンテナを内蔵した光学ユニットの一例の正面図及び断面図である。光学ユニット104は、カバー部材301、収容部材302、LED303及び反射防止部材304に加えて、LED基板401、パッチアンテナ106及び灯光拡散部材402を備える。
【0032】
LED基板401は、円形の板状に形成され、収容部材302の底面302aに最も近い位置に配置されている。複数のLED303は、この基板401の前面401aに面状に広がって設けられている。制御装置の制御に従ってLED303に電流が与えられ、信号灯器が点灯する。
【0033】
パッチアンテナ106は、カバー部材301及び収容部材302により囲まれる空間内に収容され、グランド素子403及びパッチ素子404を有している。光学ユニット104内においてグランド素子403は基板401よりも前方に設けられ、パッチ素子404はグランド素子403よりも前方に設けられている。このため、パッチアンテナ106による電波の送受信を基板401が妨げない。また光学ユニット104においてグランド素子403及びパッチ素子404は、反射防止部材304よりも後方に設けられているため、パッチアンテナ106は反射防止部材304によって隠される。このため、信号灯器の前方から見えなくすることができる。
【0034】
パッチアンテナ106のグランド素子403は、ここでは円形平板状に形成されており、基板401の前面401a側において反射防止部材304に取り付けられている。グランド素子403は、光学ユニット104の前後方向について基板401と反射防止部材304との間の位置にあり、かつ、パッチ素子404の後方に設けられている。グランド素子403の輪郭形状はパッチ素子404よりも大きくなっている。なお、グランド素子403の平面形状は円形に限られるものではなく、矩形などの他の形状であってもよい。しかしながら、図4に示すように光学ユニット104が正面視において円形である場合、グランド素子403も円形とするのが好ましい。すなわち、光学ユニット104とグランド素子403とで輪郭形状を同じ(相似形)にするのが好ましい。これは、グランド素子403の輪郭形状を矩形とする場合よりも円形とする場合の方が、グランド素子403の面積を大きくする(最大とする)ことができるためである。また、グランド素子403の面積をパッチ素子404よりも(ある程度)大きくすることにより、グランド方向(バック方向)への電波の放射を少なくすることができる。すなわち、効率良く電波を前方へ発することができる。また、パッチ素子404は平面状(例えば、円形や矩形等)に形成されている。
【0035】
パッチ素子404は、例えば図示しないがボルト及びナットよりなる締結具によって反射防止部材304の板状部304aに取り付けられる。ここでは、パッチ素子404は、板状部304aの後方側に設けられている。パッチ素子404は、基板401から前方へ離れて設けられており、LED303の前端よりも前方に位置している。
【0036】
グランド素子403及びパッチ素子404は金属板から形成することができる。グランド素子403及びパッチ素子404の材質としては、導電性があり、導電率の高い材料が好ましく、例えば、銅、真鍮などの銅合金、アルミが好ましく、鉄、ニッケル又はその他の金属とすることもできる。また、高周波では表面に電流が流れることから、樹脂製等の不導体からなる板部材に、金属蒸着したものや、金属メッキ(金や銀のメッキ)を施したものであってもよい。
【0037】
灯光拡散部材402は、反射防止部材304に取り付けられる。反射防止部材304には、複数の灯光拡散部材402が、複数のLED303それぞれと中心線を合わせて、面状に広がって配置される。各灯光拡散部材402は、対応するLED303から入射した光をパッチ素子404よりも前方で拡散して出射する。
【0038】
図6はLED及び灯光拡散部材並びにその周辺部を示す断面拡大図である。LED303は一般的な構成を有しており、発光本体303aと、その発光本体303aから後方へ伸びる二本のリード線303b、303cとを備えている。リード線303b、303cは、基板401に挿通され、基板401背面に設けられた配線パターンに接続される。発光本体303aは、LED素子(LEDチップ)303d、反射鏡303e、及びこれらを封入するモールド部303fを有している。このモールド部303fの前端がLED303の前端となる。モールド部303fはレンズを形成しており、LED303は例えば狭指向性の灯光を光学ユニット104の中心線方向601に発する。
【0039】
複数のLED303は、グランド素子403が前後方向で基板401と近接することから、グランド素子403に形成された複数の孔403aにそれぞれ挿通される。孔403aの配置はLED303と一致することになり、グランド素子403は網目構造となっている。
【0040】
またパッチ素子404とLED303とが前後方向の位置について重複していることから、パッチ素子404には、複数のLED303からの灯光をそれぞれ通過させるための孔404aが形成される。孔404aの配置もLED303と一致することになり、パッチ素子404は網目構造となっている。この網目構造には、例えば練炭のように平板に孔が幾つかあけられた構造が含まれる。
【0041】
グランド素子403とパッチ素子404との間には、比誘電率が空気よりも大きい誘電体(誘電部材)602が介在してもいてもよく、又は誘電体を省略して空気が介在していてもよい。グランド素子403とパッチ素子404との間の全部又は一部に、誘電体602を挿入してもよい。誘電体602は、例えば樹脂製又はセラミックス製の板部材である。樹脂製の場合、フッ素樹脂、ポリエチレン、ガラスエポキシ、FRP、ポリアセタール、ABS樹脂、又はポリエチレンテレフタラートを誘電体602に用いることができる。
【0042】
またグランド素子403及びパッチ素子404をメッシュ構造とすることもできる。この場合、グランド素子403及びパッチ素子404を導線によって(導線を編んで)形成する。グランド素子403とパッチ素子404との間に誘電体602を介在させる場合には、複数のLED303からの灯光をそれぞれ通過させるための孔602aをその誘電体602にも設ける。
【0043】
これらの孔403a、404a、602aと反射防止部材304の貫通孔304cとはいずれもLED303の配置に合わせて設けられるため、それらの孔403a、404a、602a及び貫通孔304cは同一軸線上に配置される。LED303からの灯光は、その孔403a、404a、602a及び貫通孔304cを通過して、反射防止部材304よりも前方へ放射されることになる。しかしながら、光学ユニット104の正面方向に光度を確保するだけでは、図2に示したような配光特性を得ることができない。
【0044】
本実施の形態における光学ユニット104では、上述のように反射防止部材304に灯光拡散部材402が取り付けられており、その灯光拡散部材402でLED303からの光をパッチ素子404よりも前方で拡散させることにより、その配光特性を得る。
【0045】
この実施の形態において、灯光拡散部材402は、LED303のモールド部303fのように砲弾型の形状を有する樹脂製の透明部材でありレンズを形成する。LED303からの光は灯光拡散部材402の後端面402aより入射する。灯光拡散部材402は、レンズ作用により、その入射光の指向角度を拡げて出射する。図2の配光特性を得ようとすると、灯光拡散部材402は、LED303からの前方への灯光を少なくとも斜め下方603へ拡散させる必要がある。ここでは、水平線より下方においては中心線から45°の範囲内で少なくとも1cd以上の光度を有するよう、LED303からの灯光を拡散させる。パッチ素子404よりも前方にある反射防止部材304の貫通孔304cに灯光拡散部材402が取り付けられるので、灯光拡散部材402の少なくとも一部がパッチ素子404、さらには反射防止部材304よりも光学ユニット104の前方に配置される。したがって、灯光拡散部材402から出射される灯光はパッチ素子404や反射防止部材304により妨げられない。
【0046】
しかも、信号灯器の配光特性は灯光拡散部材402から出射される灯光で定まるので、LED303の前端をパッチ素子404や反射防止部材304よりも前方へ配置する必要がなくなる。このパッチアンテナを格納した信号灯器を、路車間で無線通信を行う高度道路交通システム(ITS)に利用する場合、パッチアンテナの使用周波数は700MHz帯周波数(715MHz〜725MHz)に設定される。このアンテナ性能(帯域特性、VSWR特性)をパッチアンテナに備えさせるためには、グランド素子403とパッチ素子404との前後方向の間隔を広く設定する必要がある。例えば、パッチ素子404を正方形としその一辺を170mm程度とし、被誘電率が空気よりも大きい誘電体を設けると、グランド素子403とパッチ素子404との前後方向の間隔は、およそ20mm〜40mmに設定される。なお、この間隔は、誘電体の有無、及び、誘電体の種類に応じて設定される。このように、グランド素子403とパッチ素子404とを700MHz帯周波数で使用するには、基板401よりも前方のグランド素子403とパッチ素子404との前記間隔を大きな値とする必要がある。しかしながら、上述の通り、パッチ素子404よりも前方の反射防止部材304に灯光拡散部材402が取り付けられており、信号灯器の配光特性は灯光拡散部材402から出射される灯光で定まる。したがって、LED303の前端をパッチ素子404や反射防止部材304よりも前方へ配置する必要がない。したがって、パッチアンテナを光学ユニット104内に格納した信号灯器をITSに利用する場合でも、グランド素子403とパッチ素子404との間隔に灯光上の制限がなくなり、パッチアンテナに所望の性能を発揮させることが容易になる。
【0047】
光学ユニット104において、パッチアンテナは同軸ケーブル108を介して制御装置と接続される。同軸ケーブル108は、内導体108a、絶縁体108b、外導体108c及び被覆部108dを有している。内導体108aがパッチ素子404に接続され、外導体108cがグランド素子403に接続される。図5に示すように、同軸ケーブル108は、収容部材302の底面302aに設けられた取付部501を介して光学ユニット104内に引き込まれる。
【0048】
以上のように光学ユニット104内に格納されたパッチアンテナを用いて、制御装置の制御にしたがって無線通信をすることが可能となる。さらに、グランド素子403とパッチ素子404とを前後方向に対向して配置しているので、信号灯器の前方へパッチアンテナの指向性を与えることができる。これにより光学ユニット104の光軸とアンテナ指向性とが略一致する。信号灯器は車両に対して見通しが良い位置に設置されることから、アンテナ指向性によって、車両の車載機等との間で良好な通信状態が得られる。
【0049】
この実施の形態における信号灯器を製造するための、パッチアンテナを光学ユニット内に格納する組み立て工程について説明する。LEDを基板に半田によって実装させる。また、反射防止部材に灯光拡散部材、パッチ素子、誘電体及びグランド素子を取り付ける。そして、LEDが実装された基板と、パッチアンテナを有する反射防止部材とを一体とし、この一体品を収納部材に取り付ける。基板と反射防止部材とを一体とする際、パッチ素子等に設けた孔等にLEDを挿通させる。そして、カバー部材を収容部材に取り付ける。これにより、パッチアンテナを光学ユニット内に格納することができる。なお、反射防止部材に灯光拡散部材を取り付けた反射防止ユニットを用いれば、通常の交通信号灯器に容易にパッチアンテナを内蔵し得る。
【0050】
上述の光学ユニットでは、パッチアンテナが露出した状態(突出した状態)にないため、信号灯器を取り付けるための支柱及びアームの設計において、アンテナが受ける風荷重を追加的に考慮する必要がなくなる。また、アンテナに対する防錆、防塵についても追加的に考慮する必要がなくなる。
【0051】
また、交通用の信号灯器は、車両のドライバによる視認性を考慮して道路に設置されているため、アンテナと車両の車載機との間で無線通信を行う上で、見通しが良好な状態が自然と得られる。これにより、信号灯器の光学ユニット2に組み込んだアンテナを、路車間で無線通信を行う高度道路交通システム(ITS)へ活用することが容易となり、また、良好な通信状態が得られる。
【0052】
なお、上述の光学ユニット104において、灯光拡散部材402の後端面402aには、LED303からの灯光の反射を抑制するように、反射抑制被膜を形成するようにしてもよい。反射抑制被膜により灯光の反射を抑制することで、より多くの光を灯光拡散部材402内へ導くことができる。
【0053】
図7は灯光拡散部材の変形例の一つを説明する図である。この例における灯光拡散部材701はLED702と一体に形成されている。LED702は光軸方向に延長されたモールド部703を有している。樹脂性の透明部材であるモールド部703は、同一軸線上に配置されたグランド素子403の孔403a、誘電体602の孔602a、パッチ素子404の孔404a、及び反射防止部材304の貫通孔304cに挿通され、その先端が反射防止部材304から突出している。このようなモールド部703を有するLED702は、発光本体部704、延長部705、及び灯光拡散部材701を構成する先端部706を有する。
【0054】
発光本体部704は、図6のLED303における発光本体303aに相当し光を発する。発光本体部704は、発光本体303aと変わらず、グランド素子403とパッチ素子404との間にあり、パッチ素子404よりも後方に設けられている。
【0055】
延長部705は、発光本体部704からの灯光を先端部706に導く灯光導光部材を構成する。延長部705は、モールド部703の一部であり、空気よりも屈折率の高い樹脂製の透明部材であるので、パッチ素子404よりも後方に配置された発光本体部704からの灯光はほとんど損なわれずに灯光拡散部材701へ導かれる。
【0056】
灯光拡散部材701を構成する先端部706は、LED303と同様に砲弾型の形状を有しており、少なくともその一部がパッチ素子404、さらには反射防止部材304よりも信号灯器の前方に配置される。先端部706は、延長部705により導かれた導光を反射防止部材304よりも前方で拡散し、図2の配光特性を得る。
【0057】
このように灯光拡散部材をLEDと一体に形成することもでき、またLEDと灯光拡散部材の間に別部材の灯光導光部材を配置するようにしてもよい。LEDのモールドを延長することで灯光拡散部材をLEDと一体に形成すれば、LEDからの光が灯光拡散部材の後面で反射されることがなくなる。また灯光導光部材により、LEDからの灯光をより効率的に灯光拡散部材に導くことができる。このため同一の光度を得るのに必要な電流量を抑えることができる。
【0058】
さらにこの例では、より灯光を拡散するため、先端部706の周面に帯状に散乱部707が設けられている。散乱部707はモールド部703の表層を乳白色化したり表層に気泡を設けたり、金属粉を蒸着したりすることで構成することができる。この散乱部707により、延長部705により導かれた導光の一部が信号灯器の斜め下方等へ散乱される。ここでは、散乱部707が先端部706の尖頭708に設けられておらず、発光本体部704から光軸方向(信号灯器の正面方向)へ進む灯光は散乱されない。これによって、正面方向に比較的高い光度を確保しつつ、例えば斜め下方にも適当な光度を得ることがさらに容易になる。なお、散乱部707は帯状に設ける必要はなく、例えば先端部706の上面にだけ形成してもよい。
【0059】
図8は灯光拡散部材の別の変形例を説明する図である。この例における灯光拡散部材801は、反射防止部材304の庇部802により構成される。庇部802はその下面803でLED303からの灯光を拡散する。
【0060】
LED303は、図6と同様の構成を有しており、グランド素子403とパッチ素子404との間に配置されている。LED303のモールド部303fはグランド素子403の孔403a及び誘電体602の孔602aに挿入され、LED303の前端であるモールド部303fの前端はパッチ素子404よりも後方に位置している。LED303からの灯光は誘電体602の孔602a、パッチ素子404の孔404a、及び反射防止部材304の貫通孔304cを通って、パッチ素子404よりも前方へ進む。
【0061】
反射防止部材304の庇部802は板状部304aから突出して設けられているから、庇部802はパッチ素子404や板状部304aよりも前方に位置する。庇部802は斜め下方へ若干傾けて設けられており、その下面803に、LED303からの灯光の一部が入射する。下面803には、多数の微小突起を設けるなどの散乱加工が施されており、その下面803に入射した灯光はパッチ素子403や板状部304aよりも前方で散乱されることになる。LED303の光軸付近の光は庇部802の下面803に入射せず、信号灯器の正面方向に進行する。これによって、LED303から反射防止部材304の貫通孔304cに至る光路が正面方向に限られていても、図2の配光特性のように、正面方向には比較的高い光度を確保しつつ、例えば斜め下方にも適当な光度を得ることが可能となる。したがって、どの方向から見ても灯光を適当に確認することができる。
【0062】
なお、LED303と灯光拡散部材801との間に灯光導光部材804を配置するようにしてもよい。灯光導光部材804は、空気より屈折率の高い透明性の部材で構成され、LED303からの灯光を灯光拡散部材へ導く。灯光導光部材804には、ガラス、透明樹脂、光ファイバその他の部材を用いることができる。灯光導光部材804を配置することにより、より多くの灯光を灯光拡散部材801に導くことが可能となる。灯光導光部材804の後端面には反射を抑制するための反射抑制被膜を形成するのが好ましい。さらに、前端面にも反射を抑制する反射抑制被膜を形成すると好ましい。また、灯光導光部材804の側面は、金属等の反射被膜でコーティングすることが好ましい。これにより、灯光導光部材804の側面から光が漏れるのを効果的に抑制することができる。また、本例のように反射防止部材304の庇部802に灯光の散乱構造を設ける場合だけでなく、図6の例のように反射防止部材304の貫通孔304cに灯光拡散部材を取り付ける場合にも、灯光拡散部材とは別部材の灯光導光部材を灯光拡散部材とLEDとの間に配置するようにしてもよい。
【0063】
図9はグランド素子とパッチ素子との間に配置される誘電体の比誘電率εrと、パッチ素子の外形及びパッチ素子の位置等との関係を示した図表である。この表は、720MHz帯で使用される信号灯器をモデル化してシミュレーションを行なった結果を示している。このモデル化にあたり、パッチ素子及びグランド素子を円形とし、LED、LED挿通用の孔及び反射防止部材は、素子外形及び素子の位置に関しての影響が小さいため、省略している。また、同軸ケーブルの入力部を、パッチ素子の上端から下方へ1mm下の位置としている。
【0064】
図9において、素子外形は、正方形としたグランド素子及びパッチ素子の一辺の長さを示しており、素子高さは、グランド素子とパッチ素子との前後方向の間隔の値を示している。比誘電率εrが1である場合、つまり、グランド素子とパッチ素子との間が空気である場合、素子外形は170.5mmであり、素子高さは25.0mmであるのに対し、比誘電率εrが空気よりも大きい誘電体が介在している場合、素子外形は小さくなり、素子高さは大きくなる。
【0065】
このように、グランド素子とパッチ素子との間に、比誘電率εrが空気よりも大きい誘電体が設けられていることにより、パッチ素子(パッチアンテナ)の大きさを小さくすることができる。これは、素子内の波長短縮率が大きくなるためであると考えられる。このように、パッチアンテナを小さくすることができるため、光学ユニット内に、別のアンテナを更に格納することができる。別のアンテナとしては、例えば、携帯電話やITS路路間通信用の周波数帯(例えば2.4GHz帯等)で使用されるものであってもよい。
【0066】
また、灯器に格納するパッチアンテナ用の誘電体の比誘電率εrは、下限が2(2以上)であるのが好ましい。また、比誘電率εrは、上限が5(5以下)であるものが好ましい。具体的には、フッ素樹脂、ポリエチレン、ガラスエポキシ、FRP、ポリアセタール、ABS樹脂、又は、ポリエチレンテレフタラートとするのが、価格面、加工性の面で好ましい。
【0067】
以上のように本実施の形態における信号灯器では、パッチアンテナは光学ユニット内に格納されたものとなる。これにより、アンテナを目立たなくして信号灯器に設置することができ、道路の美観を損なうことがない。そして、アンテナが光学ユニット内に格納されることから、アンテナ設置用の専用の支柱を不要とすることができる。また、アンテナは基板よりも前方に設けられるため、基板がアンテナによる電波の送受信の妨げになるのを避けることができる。
【0068】
また、パッチアンテナを700MHz帯周波数(715MHz〜725MHz)で使用するためには、パッチ素子とグランド素子との前後方向の間隔が、所定の値(例えば20mm〜40mm)に設定される。したがって、このパッチアンテナを基板よりも前方として光学ユニット内に格納すると、基板から前方に離れた位置にパッチ素子が存在することとなる。しかし、この場合であっても、本実施の形態によれば、LEDからの灯光をパッチ素子よりも前方で灯光拡散部材により拡散でき、LEDから灯光拡散部材に至るまでの灯光の光路が正面方向に限られていても、灯器から出射される灯光には他の方向についても所望の光度が得られる。その結果、特定の方向に限らず様々な角度から灯光を適当に視認することが可能となる。しかも、灯光を妨げないために、パッチ素子よりも前方にLEDを配置する必要がなくなるので、グランド素子とパッチ素子との間の間隔が制限されない。このため、パッチアンテナを700MHz帯周波数で通信するためのアンテナとして容易に機能させることができる。
【0069】
上述した実施の形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。
【0070】
上述のようにグランド素子とパッチ素子とは平行に配置されていてもよいが、アンテナ指向性を調整するために、グランド素子及びパッチ素子の一方又は双方が、基板に対して傾いて配置されていてもよい。
【0071】
また、信号灯器はドライバへの視認性に鑑みて、通常、基板自体を少し下方に傾けて設置してある。そのため、グランド素子及びパッチ素子を基板に平行に取り付けることによって、アンテナの指向性も下方に向くが、例えばITSにおける路車間での無線通信領域を限定的としたり確実性を増したりすることを目的として、基板よりもさらに下方に傾けるようにしても良い。
【0072】
また上述の実施の形態では、パッチ素子を反射防止部材の後方に設けていたが、パッチ素子は反射防止部材の前方にあってもよい。この場合であっても、灯光拡散部材の少なくとも一部がパッチ素子よりも前方にあればよい。パッチ素子を反射防止部材の前面に設ける場合、パッチ素子を反射防止部材の前面に貼り付けたり、止めネジによって取り付けたりすることができる。この場合、パッチ素子を反射防止部材と同一色に塗装するのが好ましい。これにより、パッチ素子が目立たなくなる。さらに、反射防止部材の前面には、太陽光を乱反射させるため(太陽光を鏡のように一定の方向へ反射させないため)、梨地処理等の微細な凹凸を付けた表面処理を施している。パッチ素子を反射防止部材の前方に配置する場合には、パッチ素子にも、同じ表面処理(粗さが同じ処理)を施すのが好ましく、これにより、パッチ素子をより一層目立たなくすることができる。
【0073】
また、上述の実施の形態では、黄色の光学ユニットにパッチアンテナを内蔵したが、他の灯色や、複数又は全ての灯色の光学ユニットにパッチアンテナを内蔵するようにしてもよい。複数又は全ての灯色の光学ユニットにパッチアンテナを内蔵する場合には、ダイバーシチアンテナとして利用してもよいし、ゲインを向上させたり指向性を変化させたりするためにアレーアンテナとして利用してもよい。
【0074】
また、信号灯器は車両用以外にも、歩行者用のものであってもよい。また、信号灯器が有する発光体はLED以外に電球や有機EL素子であってもよい。また、この発明は、信号灯器以外に道路の照明用の照明灯器であってもよい。この場合、発光体として水銀灯やナトリウムランプがある。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る灯器及び反射防止ユニットは、アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路の美観を損なうことがなく、車両用や歩行者用の信号灯器や照明用の照明灯器、その他の灯器、及びそれらに用いられる反射防止ユニットに有用である。
【符号の説明】
【0076】
101 交通信号灯器
102 支柱
103 アーム
104 光学ユニット
105 筐体
106 パッチアンテナ
107 制御装置
108 同軸ケーブル
301 カバー部材
302 収容部材
302a 収容部材の底部
302b 収容部材の側部
303 LED
303a LEDの発光本体
303b、303c LEDのリード線
303d LED素子
303e LEDの反射鏡
303f LEDのモールド部
304 反射防止部材
304a 反射防止部材の板状部
304b 反射防止部材の庇部
304c 反射防止部材の貫通孔
401 LED基板
402、701 灯光拡散部材
403 グランド素子
404 パッチアンテナ
601 光学ユニットの中心線方向
602 誘電体
702 LED
703 LEDのモールド部
704 発光本体部
705 延長部
706 先端部
801 灯光拡散部材
802 反射防止部材の庇部
803 庇部の下面
804 灯光導光部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、前記基板上に配置された発光体、及び前面に前記発光体を前方で覆う可視光透過性のカバー部材を有する光学ユニットと、
グランド素子及びパッチ素子が前記光学ユニット内に設けられ、前記グランド素子が前記基板よりも前方に配置され、前記パッチ素子が前記グランド素子よりも前方に配置されたパッチアンテナと、
前記光学ユニット内に設けられ、前記発光体からの灯光を拡散させる灯光拡散部材とを備え、
前記灯光拡散部材の少なくとも一部が前記パッチ素子よりも前方に配置される灯器。
【請求項2】
前記発光体からの灯光を前記灯光拡散部材へ導く灯光導光部材をさらに備える請求項1記載の灯器。
【請求項3】
前記カバー部材と前記パッチ素子との間に配置され、前記光学ユニットへの入射光が前記光学ユニット内で反射するのを防止する板状の反射防止部材をさらに備え、
前記反射防止部材が、前記発光体からの灯光を前方へ通過させる通過孔を有し、
前記灯光拡散部材が、前記反射防止部材の前記通過孔前方に取り付けられた請求項1又は請求項2記載の灯器。
【請求項4】
前記灯光拡散部材が、前記発光体からの灯光の一部を斜め下方へ拡散させる請求項1から3のいずれか1項に記載の灯器。
【請求項5】
前記灯光拡散部材が、前記灯器の灯光が前記灯器の中心から45度の範囲内で少なくとも1cd以上の光度を有するよう、前記発光体からの灯光を拡散する請求項1から4のいずれか1項に記載の灯器。
【請求項6】
前記灯光拡散部材の後端面に形成され、前記発光体からの灯光が前記後端面で反射するのを抑制する反射抑制被膜をさらに備える請求項1から5のいずれか1項に記載の灯器。
【請求項7】
基板、及び前記基板上に配置された発光体を有する光学ユニットと、
グランド素子及びパッチ素子が前記光学ユニット内に設けられ、前記グランド素子が前記基板よりも前方に配置され、前記パッチ素子が前記グランド素子よりも前方に配置されたパッチアンテナと、
前記光学ユニット内に設けられ、前記発光体からの灯光を拡散させる灯光拡散部材とを備え、
前記灯光拡散部材の少なくとも一部が前記パッチ素子よりも前方に配置される灯器。
【請求項8】
基板、前記基板上に配置された発光体、及び前記発光体を前方で覆う可視光透過性のカバー部材を有する光学ユニットと、
グランド素子及びパッチ素子が前記光学ユニット内に設けられ、前記グランド素子が前記基板よりも前方に配置され、前記パッチ素子が前記グランド素子よりも前方に配置されたパッチアンテナと、
前記発光体からの灯光を拡散させる灯光拡散部材とを備え、
前記灯光拡散部材の少なくとも一部が前記パッチ素子よりも前方に配置される交通信号灯器。
【請求項9】
基板、前記基板上に配置された発光体、及び前記発光体を前方で覆う可視光透過性のカバー部材を有する光学ユニットと、グランド素子及びパッチ素子が前記光学ユニット内に設けられ、前記グランド素子が前記基板よりも前方に配置され、前記パッチ素子が前記グランド素子よりも前方に配置されたパッチアンテナとを備える灯器の反射防止ユニットであって、
前記カバー部材と前記パッチ素子との間に配置され、前記光学ユニットへの入射光が前記光学ユニット内で反射するのを防止する板状の反射防止部材と、
前記反射防止部材に形成された孔の前方に取り付けられ、前記孔を通過した前記発光体からの灯光を拡散させる灯光拡散部材と
を備える灯器の反射防止ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−170373(P2010−170373A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12712(P2009−12712)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】