説明

炊飯器

【課題】低周波磁界が加熱コイルから放射されることを減少させるとともに、炊飯性能への悪影響がない炊飯器を提供することを目的とする。
【解決手段】加熱コイル1に流れる商用周波数成分の電流と同じ周波数の電流成分を持ち加熱コイル1と互いに逆向きに電流が流れるように形成したコイル状の配線12を備え、このコイル状の配線12を加熱コイル1から放射される商用周波数成分に起因する漏洩磁界を打ち消すように蓋17に配置したものである。これにより、コイル状の配線12から発生する磁界が、加熱コイル1からの低周波の漏洩磁界と互いに打ち消し合うことで漏洩磁界を大きく低減させるとともに、コイル状の配線12と加熱コイル1の距離が十分に取れるために、コイル状の配線12から発生する磁界が加熱コイル1から発生し鍋15に吸収される磁界を妨げることがなく、炊飯性能への悪影響がないものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用および業務用に用いられる誘導加熱式の炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の誘導加熱式の炊飯器において、加熱コイルからの漏洩磁界低減する方式として電磁シールド環を用いるもの(例えば、特許文献1参照)あるいは加熱コイルの外周近傍に巻き線を施してインダクタを構成するもの(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
【0003】
図8は、特許文献1の構成を示すものであり、加熱コイル1の外周部にアルミ板やリード線などを環状にした電磁シールド環2を配置している。この構成の誘導加熱装置では、加熱コイル1で生じた高周波磁界に誘導され電磁シールド環2に誘導電流が流れ、更にこの誘導電流により、電磁シールド環2には加熱コイル1から発生する高周波磁界とは逆向きの高周波磁界が発生する。この結果、電磁シールド環2から発生する高周波磁界が、加熱コイル1の外周部に発生する高周波磁界を打ち消す様に作用するため、加熱コイル1から漏洩する20k〜100kHz程度の高周波漏洩磁界が減少する。
【0004】
図9、図10は、特許文献2の構成を示すものであり、加熱コイル1の外周近傍に巻き線を施してインダクタ5を構成するとともに、加熱コイル1から発生する高周波磁界と、インダクタ5が発生する高周波磁界成分が互いに打ち消す方向に配置している。具体的な回路例は図10に示しているように、商用電源などで構成される電源部3と、電源部3の電力を高周波電力に変換するインバータ11と、インバータ11の電力を高周波磁界に変換する加熱コイル1と、加熱コイル1からの磁界を受けて発熱する鍋15で構成されており、インバータ11は、商用電源を整流する整流手段4と、整流手段4の出力を平滑化するインダクタ5および平滑コンデンサ6と、加熱コイル1への電力供給を制御する半導体スイッチ8および半導体スイッチ8のスイッチング動作を滑らかにする共振コンデンサ7から構成されている。
【特許文献1】特開昭57−115795号公報
【特許文献2】特公昭63−7672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すような構成では、高周波の漏洩磁界は電磁シールド環2の効果により、減少させることができるが、加熱コイル1から発生する電源周波数または電源の2倍周波数の磁界(以下、低周波磁界)は、加熱コイル1上の鍋ではほとんど吸収されず、また電磁シールド環2では逆向きの磁界を十分発生させることができないため、低周波磁界が減少せず外部に放出される。
【0006】
一方、特許文献2に示すような構成では、巻き線をインダクタ5として動作させるため(数100μH程度)、巻き線の巻き数が多くなることになる。この際、巻き線から放出される低周波磁界が加熱コイル1から放出される低周波磁界より大きくなり、外部に放出する低周波磁界が増加する課題が生じることになる。また、従来の誘導加熱装置は高周波磁界を打ち消すことを目的としており、漏洩磁界低減用の巻き線は加熱コイル1の近傍に限定され配置の自由度がなく、更に加熱コイル近傍に配置することで鍋15などの加熱物への磁界分布が変わり、特に炊飯器の場合には炊飯性能へ大きく影響を及ぼすという課題が生じることになる。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、低周波磁界が加熱コイルから放射されることを減少させるとともに、炊飯性能への悪影響がない炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、加熱コイルに流れる商用周波数成分の電流と同じ周波数の電流成分を持ち加熱コイルと互いに逆向きに電流が流れるように形成したコイル状の配線を備え、このコイル状の配線を加熱コイルから放射される商用周波数成分に起因する漏洩磁界を打ち消すように蓋に配置したものである。
【0009】
これにより、コイル状の配線から発生する磁界が、加熱コイルからの低周波の漏洩磁界と互いに打ち消し合うことで漏洩磁界を大きく低減させるとともに、コイル状の配線と加熱コイルの距離が十分に取れるために、コイル状の配線から発生する磁界が加熱コイルから発生し鍋に吸収される磁界を妨げることがなく、炊飯性能への悪影響がないものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炊飯器は、炊飯性能への影響がほとんどなく加熱コイルから発生する低周波の漏洩磁界を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、鍋と、前記鍋を誘導加熱する加熱コイルと、前記鍋の上面に位置し開閉可能な構成をもつ蓋と、前記加熱コイルに商用周波数成分を含む高周波電流を供給するインバータと、前記加熱コイルに流れる商用周波数成分の電流と同じ周波数の電流成分を持ち前記加熱コイルと互いに逆向きに電流が流れるように形成したコイル状の配線とを備え、前記蓋に前記加熱コイルから放射される商用周波数成分に起因する漏洩磁界を打ち消すように前記コイル状の配線を配置した炊飯器とすることにより、コイル状の配線から発生する磁界が、加熱コイルからの低周波の漏洩磁界と互いに打ち消し合うことで漏洩磁界を大きく低減させるとともに、コイル状の配線と加熱コイルの距離が十分に取れるために、コイル状の配線から発生する磁界が加熱コイルから発生し鍋に吸収される磁界を妨げることがなく、炊飯性能への悪影響がないものである。
【0012】
第2の発明は、特に、第1の発明において、コイル状の配線は円状に複数形成し、各配線の径をほぼ同径としたことにより、予め巻かれたコイル状の配線を一つの部品として扱うことができるため、蓋にコイル状の配線を配設する際の作業性を良くすることができるとともに、コイル状の配線の形状が安定するため、安定した防磁性能を得ることができる。
【0013】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、コイル状の配線の径を鍋の内径より大きくしたことにより、コイル状の配線の径を鍋近傍に配置された加熱コイルの径に較べ同等以上の径を保つことができるため、特に、加熱コイルから鍋を通過し炊飯器上面に放射される低周波の漏洩磁界を打ち消すことができる。
【0014】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明において、蓋は、鍋内と対面して配設される裏蓋と、裏蓋を加熱する蓋加熱手段とを備えるとともに、コイル状の配線を裏蓋の外周に配置したことにより、裏蓋の取り外しを行う際にコイル状の配線が使用者の妨げにならないため、低周波の漏洩磁界を、炊飯性能を確保しながら低減することができ、更に取り扱い性を良くすることができる。
【0015】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、蓋は、鍋内と対面して配設される裏蓋と、裏蓋を誘導加熱する蓋コイルとを備えるとともに、蓋コイルの巻き方向をコイル状の配線と互いに逆向きに電流が流れるように配設したことにより、加熱コイルから発生する低周波磁界を打ち消すとともに、蓋を誘導加熱する際に生じる低周波の漏洩磁界も低減することができる。
【0016】
第6の発明は、特に、第5の発明において、鍋の側面に鍋側面を誘導加熱する胴コイルを備え、蓋コイルと胴コイルの巻き方向を同方向とするとともに、蓋コイルと胴コイルの巻き方向をコイル状の配線と互いに逆向きに電流が流れるようにしたことにより、加熱コイルから発生する低周波磁界を打ち消すとともに、蓋を誘導加熱する際に生じる低周波の漏洩磁界および鍋側面を誘導加熱する際に生じる低周波の漏洩磁界を低減することができる。
【0017】
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、コイル状の配線は、蓋を構成する樹脂により挟み込み蓋の裏面に配設したことにより、裏蓋の取り外しを行う際にコイル状の配線が使用者の妨げにならない状態で、低周波の漏洩磁界を、炊飯性能を確保しながら低減することができる。
【0018】
第8の発明は、特に、第1〜第7のいずれか1つの発明において、加熱コイル近傍に電磁シールド環を配置したことにより、コイル状の配線で低周波の漏洩磁界を低減することに加え、電磁シールド環による高周波磁界の打ち消し効果により、高周波の漏洩磁界も低減させることができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1、図2は、本発明の実施の形態1における炊飯器を示すものである。
【0021】
図1において、商用電源を含む電源部3は、インバータ11に接続され、インバータ11は加熱コイル1に接続され、加熱コイル1に商用周波数成分を含む高周波電流を供給する。加熱コイル1は、鍋15と磁気的に結合する形で鍋15の底面および底側面に配置され、鍋15を誘導加熱する。加熱コイル1の下部には鍋15との磁気結合を高めるフェライトなどの磁性体で構成される防磁フェライト13が配置される。また、インバータ11は電源部3に接続される整流手段4と、整流手段4と直列に接続されるインダクタ5と平滑コンデンサ6の直列接続と、平滑コンデンサ6に並列に接続される共振コンデンサ7と半導体スイッチ8の直列接続からなり、加熱コイル1と共振コンデンサ7は並列に接続される。インダクタ5からのコイル状の配線12は、加熱コイル1に流れる商用周波数成分の電流と同じ周波数の電流成分を持ち加熱コイル1と互いに逆向きに電流が流れるようにコイル状に複数回巻かれて形成されている。そして、コイル状の配線12は、鍋15の上面に位置し開閉可能な構成をもつ蓋17内に、加熱コイル1から放射される商用周波数成分に起因する漏洩磁界を打ち消すように配置されている。
【0022】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0023】
図2は、インバータ11の各区間における電流経路を示し、入力電流I3、インダクタ5およびコイル状の配線12に流れる電流I5、加熱コイル1に流れる電流I1をそれぞれ示している。電源部3は商用電源などで構成され、インバータ11に商用周波数の電力を供給する。そのため、入力電流I3は、商用周波数成分を持つ電流になる。インバータ11では整流手段4により商用電力を整流して商用電源の2倍の周波数成分を持った電力に変換し、更に半導体スイッチ8を用いて20k〜100kHz程度の高周波電力に変換される。そして、この高周波電力は加熱コイル1に供給され、加熱コイル1から高周波磁界の形で鍋15に供給される。鍋15は、供給された高周波磁界により表層部に渦電流が生じ、その結果、発熱するに至る。そのため、インダクタ5およびコイル状の配線12に流れる電流は、商用周波数の2倍の電流I5が流れ、また、加熱コイル1には半導体スイッチ8が導通状態になったときに電源部3→整流手段4→加熱コイル1→半導体スイッチ8のループで生じる商用周波数の2倍の成分をもつ低周波電流と、半導体スイッチ8の周波数に従って加熱コイル1に流れる高周波成分が重畳した電流I1が流れる。よって、加熱コイル1とコイル状の配線12の低周波磁界が互いに打ち消すように配置することにより、加熱コイル1から発生する低周波磁界を打ち消すことができる。
【0024】
一方、コイル状の配線12は蓋17に配置することで、加熱コイル1および防磁フェライト13からの距離が充分に確保できるため、コイル状の配線12から発生する打ち消し磁界が、加熱コイル1から発生し鍋15を誘導加熱する磁界の分布を妨げることおよび防磁フェライト13により収束される磁界の分布を大きく妨げることがない。よって、炊飯性能が大きく変わることがないため、従来の炊飯性能を維持した状態で低周波の漏洩磁界を低減することが可能になる。
【0025】
また、コイル状の配線12は円状に複数形成し、各配線12の径をほぼ同径とすることにより、予め巻かれたコイル状の配線12を一つの部品として扱うことができるため、蓋17にコイル状の配線12を配設する際の作業性を良くすることができるとともに、コイル状の配線12の形状が安定するため、安定した防磁性能を得ることができる。
【0026】
更に、円状に形成されたコイル状の配線12の径を鍋15の内径より大きくすることにより、コイル状の配線12の径を鍋15の近傍に配置された加熱コイル1の径に較べ同等以上の径を保つことができ、特に、加熱コイル1から鍋15を通過し炊飯器上面に放射される低周波の漏洩磁界を低減させることができることになる。炊飯器では低周波の漏洩磁界は炊飯器上面方向に大きいため、この方向の低周波の漏洩磁界を打ち消す構成を取ることが有効である。
【0027】
以上のように、本実施の形態においては、インバータ11内にあり加熱コイル1に流れる電流の低周波成分と同じ周波数成分で加熱コイル1と逆向きに電流が流れるよう加熱コイル1の近傍にコイル状に配設したコイル状の配線12が、コイル状の配線12から発生する低周波磁界により、加熱コイル1からの低周波磁界と互いに打ち消し合って低周波の漏洩磁界を大きく低減させるとともに、コイル状の配線12を蓋17に配置することによりコイル状の配線12と加熱コイル1の距離が十分と取れるために、コイル状の配線12から発生する磁界が加熱コイル1から発生し鍋15に吸収される磁界を妨げることがないため、炊飯性能に悪影響がない。
【0028】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における炊飯器の構成を示すものである。
【0029】
本実施の形態において、実施の形態1と異なる点は、蓋17が、鍋15内と対面して配設される金属性の裏蓋18と、裏蓋18を加熱する蓋加熱手段19とを備えるとともに、コイル状の配線12を裏蓋18の外周に配置していることである。
【0030】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0031】
蓋17の裏蓋18は、鍋15の気密性を保つために鍋15の内径より大きく、鍋15の上枠に密着して配置される。また、裏蓋18は炊飯時に裏蓋18につく水滴および米の表面を加熱するために裏蓋18を加熱する蓋加熱手段19が配設されている。そのため、裏蓋18は熱の伝わりが良くなるようにアルミやステンレスなどの金属が使われ、表面温度が100℃前後まで上昇することになる。また、裏蓋18は炊飯時の蒸気が直接あたるとともに、炊飯の際に発生するオネバにより汚れが付きやすく、蓋17から着脱して洗浄できることが望まれることになる。そこで、蓋17に配設されるコイル状の配線12を裏蓋18の外周に配置することにより、裏蓋18を着脱する際に妨げとならず、また、裏蓋18に接触しないためコイル状の配線12に高耐熱線を用いる必要がなく、またコイル状の配線12の径も大きく取ることができるため、漏洩磁界も低減することができる。
【0032】
以上のように、本実施の形態においては、蓋17が、鍋15内と対面して配設される裏蓋18と、裏蓋18を加熱する蓋加熱手段19と、コイル状の配線12とを備え、コイル状の配線12を裏蓋18の外周に配置することにより、裏蓋18の取り外しを行う際にコイル状の配線12が使用者の妨げにならないため、低周波の漏洩磁界を、炊飯性能を確保しながら低減することができ、更に取り扱い性を良くすることができる。
【0033】
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3における炊飯器の構成を示すものである。
【0034】
本実施の形態において、実施の形態2と異なる点は、裏蓋18を誘導加熱する蓋コイル20を備えるとともに、蓋コイル20の巻き方向をコイル状の配線12と互いに逆向きに電流が流れるように配設したことである。
【0035】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0036】
蓋17は鍋15の気密性を保つために鍋15の内径より大きく、鍋15の上枠に密着して配置される裏蓋18を備えている。また、裏蓋18は炊飯時に裏蓋18につく水滴および米の表面を加熱するために裏蓋18を加熱することが有効である。その際、裏蓋17に磁性ステンレスなどを用いて誘導加熱を行うことで、裏蓋18の温度を急速に上げることができる。この際、裏蓋18を加熱するための蓋コイル20と蓋コイル20に高周波電力を供給するインバータ11が必要となり、インバータ11に関しては加熱コイル1に高周波電力を供給するインバータ11との共用化が望ましく、半導体スイッチやリレーなどによりコイルを切り替えることで実現することができる。この際、加熱コイル1とコイル状の配線12は互いに逆向きに電流が流れるように配置されているため、加熱コイル1から発生する低周波磁界を減少させることができるが、更に蓋コイル20の巻き方向をコイル状の配線12と逆向きの電流が流れる方向、つまり加熱コイル1と同方向に巻くことで蓋コイル20から発生する低周波磁界も低減させることが可能である。
【0037】
以上のように、本実施の形態においては、裏蓋18を加熱する加熱する手段として蓋コイル20を用いた誘導加熱を用い、蓋コイル20の巻き方向をコイル状の配線12と互いに逆向きに電流が流れるようにすることにより、加熱コイル1から発生する低周波磁界を打ち消すとともに、蓋コイル20から発生する低周波の漏洩磁界も低減することができる。
【0038】
(実施の形態4)
図5は、本発明の実施の形態4における炊飯器の構成を示すものである。
【0039】
本実施の形態において、実施の形態3と異なる点は、鍋15の側面上部に鍋側面を誘導加熱する胴コイル21を備え、蓋コイル20と胴コイル21の巻き方向を同方向とするとともに、蓋コイル20と胴コイル21の巻き方向をコイル状の配線12と互いに逆向きに電流が流れるようにしたことである。
【0040】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0041】
鍋15の上方を加熱すると、米表面の水分がとび米のべとつきが抑えられ食味が向上することが知られている。そこで、鍋15の上端近傍に胴コイル21を巻き、鍋15を誘導加熱する構成をとることで、高効率で鍋15の上側を加熱することができる。この際、蓋コイル20による裏蓋18の加熱も同様な効果を生むことから、両者を直列に接続してコイルを構成することでインバータ11の切り替え回路の数を減少させることもできる。ここで、加熱コイル1とコイル状の配線12は互いに逆向きに電流が流れる様に配置されているため、加熱コイル1から発生する低周波磁界を減少させることができるが、更に胴コイル21の巻き方向をコイル状の配線12と逆向きの電流が流れる方向、つまり加熱コイル1と同方向に巻くことで胴コイル21から発生する低周波磁界も低減させることが可能である。
【0042】
以上のように、本実施の形態においては、鍋15の側面を加熱する胴コイル21を備え、蓋コイル20と胴コイル21の巻き方向をコイル状の配線12と互いに逆向きに電流が流れるようにすることにより、加熱コイル1から発生する低周波磁界を打ち消すとともに、蓋コイル20から発生する低周波の漏洩磁界も低減することができる。
【0043】
(実施の形態5)
図6は、本発明の実施の形態5における炊飯器の構成を示すものである。
【0044】
本実施の形態において、実施の形態1と異なる点は、コイル状の配線12は、蓋17を構成する複数の樹脂部品により挟み込み蓋17の表面に露出しないよう蓋17の裏面に配設したことである。
【0045】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0046】
蓋17の開閉および裏蓋18の着脱の妨げにならないこと、および炊飯時の蒸気などにより蓋17の鍋側の表面部には配線がないことが望ましい。また、筐体表面に配線が露出することは安全性に観点から望ましくない。そこで、蓋17を複数の樹脂部品で構成し、樹脂内にコイル状の配線12を挟み込む構成をとることで、配線が表面に現れないようにすることができる。また、蓋17を成形する際にコイル状の配線12を一体にして成形することで同様な効果を得ることができる。
【0047】
以上のように、本実施の形態においては、蓋17を樹脂で構成し、樹脂内にコイル状の配線12を挟み込む構成をとることで、配線が表面に現れないようにすることにより、裏蓋18の取り外しを行う際にコイル状の配線が使用者の妨げにならない形で、低周波の漏洩磁界を、炊飯性能を確保しながら低減することができる。
【0048】
(実施の形態6)
図7は、本発明の実施の形態6における炊飯器の構成を示すものである。
【0049】
本実施の形態において、実施の形態1と異なる点は、加熱コイル1の近傍に電磁シールド環2を配置していることである。
【0050】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0051】
蓋17に配置されたコイル状の配線12により、加熱コイル1から発生する低周波漏洩磁界は減少する一方で、コイル状の配線12の漏洩磁界打ち消し効果はインバータ11の駆動周波数である20k〜50kHz程度の高周波磁界に関しては効果が少ない。そこで、加熱コイル1の近傍に電磁シールド環2を配置することで、電磁シールド環2に打ち消し磁界を発生させて、高周波の漏洩磁界を低減させている。これは、電磁シールド環2に加熱コイル1から発生する高周波磁界により、高周波の誘導電流が発生し、その誘導電流により高周波磁界が発生し、この高周波磁界が加熱コイル1から発生する磁界と逆向きになるためである。本実施の形態では、コイル状の配線12が蓋17にあるため、電磁シールド環2に対して取り付け上の制約がない。また、電磁シールド環2は、高周波磁界に対して発熱の少ないアルミなどの非磁性金属が望ましい。
【0052】
以上のように、本実施の形態においては、加熱コイル1の近傍に電磁シールド環2を配置することにより、コイル状の配線12による低周波漏洩磁界低減に加え、シールド環2により高周波の漏洩磁界を低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の炊飯器は、炊飯性能への影響がほとんどなく加熱コイルから発生する低周波の漏洩磁界を低減することができるので、家庭用および業務用に用いられる誘導加熱式の炊飯器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器を示す構成図
【図2】同炊飯器の動作波形を示す図
【図3】本発明の実施の形態2における炊飯器を示す構成図
【図4】本発明の実施の形態3における炊飯器を示す構成図
【図5】本発明の実施の形態4における炊飯器を示す構成図
【図6】本発明の実施の形態5における炊飯器を示す構成図
【図7】本発明の実施の形態6における炊飯器を示す構成図
【図8】従来の誘導加熱装置を示す構成図
【図9】従来の他の誘導加熱装置を示す構成図
【図10】同誘導加熱装置の回路構成図
【符号の説明】
【0055】
1 加熱コイル
2 電磁シールド環
3 電源部
5 インダクタ
11 インバータ
12 コイル状の配線
15 鍋
17 蓋
18 裏蓋
19 蓋加熱手段
20 蓋コイル
21 胴コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋と、前記鍋を誘導加熱する加熱コイルと、前記鍋の上面に位置し開閉可能な構成をもつ蓋と、前記加熱コイルに商用周波数成分を含む高周波電流を供給するインバータと、前記加熱コイルに流れる商用周波数成分の電流と同じ周波数の電流成分を持ち前記加熱コイルと互いに逆向きに電流が流れるように形成したコイル状の配線とを備え、前記蓋に前記加熱コイルから放射される商用周波数成分に起因する漏洩磁界を打ち消すように前記コイル状の配線を配置した炊飯器。
【請求項2】
コイル状の配線は円状に複数形成し、各配線の径をほぼ同径とした請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
コイル状の配線の径を鍋の内径より大きくした請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
蓋は、鍋内と対面して配設される裏蓋と、裏蓋を加熱する蓋加熱手段とを備えるとともに、コイル状の配線を裏蓋の外周に配置した請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項5】
蓋は、鍋内と対面して配設される裏蓋と、裏蓋を誘導加熱する蓋コイルとを備えるとともに、蓋コイルの巻き方向をコイル状の配線と互いに逆向きに電流が流れるように配設した請求項1〜4のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項6】
鍋の側面に鍋側面を誘導加熱する胴コイルを備え、蓋コイルと胴コイルの巻き方向を同方向とするとともに、蓋コイルと胴コイルの巻き方向をコイル状の配線と互いに逆向きに電流が流れるようにした請求項5に記載の炊飯器。
【請求項7】
コイル状の配線は、蓋を構成する樹脂により挟み込み蓋の裏面に配設した請求項1〜6のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項8】
加熱コイル近傍に電磁シールド環を配置した請求項1〜7のいずれか1項に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−55558(P2006−55558A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243343(P2004−243343)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】