説明

炭化珪素半導体装置の製造方法

【課題】カーボン膜の除去が必要とならず、かつ、十分にコンタクト抵抗を低抵抗化できるようにする。
【解決手段】オーミック電極5を形成するための金属層15の形成前にレーザ光の吸収効果の高いカーボン層14を形成しておき、その上に金属層15を形成してからレーザアニールを行うようにしている。これにより、金属層15を構成する金属がカーボン層14を構成する炭素(C)やn+型基板1を構成するシリコン(Si)または炭素と反応してオーミック電極5が形成されるため、カーボン層14を除去する必要がない。また、レーザアニール時にカーボン層14を用いているため、レーザ光の吸収率を高くすることができ、オーミック電極5のコンタクト抵抗の低抵抗化を十分に行うことが可能となる。したがって、カーボン膜14の除去が必要とならず、かつ、十分にコンタクト抵抗を低抵抗化することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーミック電極を有する炭化珪素(以下、SiCという)半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、SiC基板を薄膜化した後でそのSiC基板の裏面にオーミック電極を形成する場合に、レーザアニールを行うことでコンタクト抵抗を低抵抗化する方法が提案されている。この方法は、SiC基板の裏面を研磨した後その裏面に凹凸を形成し、その後、金属薄膜を形成してからレーザ光を照射することでレーザアニールを行うというものであるが、裏面に凹凸を形成することによって表面部でのレーザ光の吸収効率を高められることから、コンタクト抵抗の低抵抗化を実現することができる。
【0003】
一方、特許文献2において、シリコンデバイスにおけるコンタクト抵抗を低抵抗化する方法が提案されている。この方法は、シリコン基板を薄板化したのち裏面電極を形成し、その上に熱受容体としてカーボン膜を形成した状態でレーザアニールを行うというものであり、カーボン膜にて高い光吸収特性を得ることでアニール時間の短縮化を図りつつ、コンタクト抵抗を低抵抗化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−135611号公報
【特許文献2】国際公開第2007/060837号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように金属薄膜と接するSiC基板の裏面に凹凸を形成しただけでは、レーザの吸収率が悪く、コンタクト抵抗の低抵抗化が十分ではないという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載された方法は、オーミック電極を形成する温度が低くても可能なシリコンデバイスに適用されるものであり、低い温度であるため、カーボン膜とオーミック電極との反応が激しくならない。ところが、SiCデバイスに適用する場合には、オーミック電極を形成する温度として700℃以上の高温が必要とされるため、カーボン膜とオーミック電極との反応が大きくなる。その結果、表面に残ったカーボン膜を除去するときに電極の成分がカーボン膜中に取り込まれ、カーボン膜を除去することが困難となるという問題が発生する。さらに、カーボン膜の残存は、デバイスの抵抗増加や後工程ではんだ付け用電極を貼り付けたときの剥がれの発生などの問題を生じさせる原因となる。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、カーボン膜の除去が必要とならず、かつ、十分にコンタクト抵抗を低抵抗化できるSiC半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、炭化珪素(1)の一面(1b)に対してカーボン層(14)を形成する工程と、カーボン層(14)を挟んで炭化珪素(1)とは反対側にオーミック電極(5)を形成するための金属層(15)を形成する工程と、金属層(15)側からレーザ光を照射することでレーザアニールを行い、カーボン層(14)を構成する炭素と金属層(15)を構成する金属とを反応させて金属カーバイドを形成し、金属層(15)の残部および金属カーバイドを有するオーミック電極(5)を形成する工程と、を含んでいることを特徴としている。
【0009】
このように、オーミック電極(5)を形成するための金属層(15)の形成前にレーザ光の吸収効果の高いカーボン層(14)を形成しておき、その上に金属層(15)を形成してからレーザアニールを行うようにしている。これにより、金属層(15)を構成する金属がカーボン層(14)を構成する炭素(C)や炭化珪素(1)を構成するシリコン(Si)または炭素と反応してオーミック電極(5)が形成されるため、カーボン層(14)を除去する必要がない。また、レーザアニール時にカーボン層(14)を用いているため、レーザ光の吸収率を高くすることができ、オーミック電極(5)のコンタクト抵抗の低抵抗化を十分に行うことが可能となる。したがって、カーボン膜(14)の除去が必要とならず、かつ、十分にコンタクト抵抗を低抵抗化することが可能となる。
【0010】
例えば、請求項2に記載したように、カーボン層(14)を形成する工程では、炭化珪素(1)の一面(1b)に対して有機材料を含有する有機膜(13)を成膜する工程と、有機膜(13)を炭化させてカーボン層(14)を形成する工程とにより、カーボン層(14)を形成することができる。この場合、請求項3に記載したように、有機膜(13)を成膜する工程では、有機膜(13)としてレジストを用い、有機膜(13)を炭化させてカーボン層(14)を形成する工程では、レジストをレーザアニールすることで炭化させることができる。
【0011】
また、請求項4に記載したように、カーボン層(14)を形成する工程では、スパッタによってカーボン層(14)を形成することもできる。このように、スパッタという容易な工程によってカーボン層(14)を形成することができる。
【0012】
また、請求項5に記載したように、カーボン層(14)を形成する工程では、炭化珪素(1)の一面(1b)をレーザアニールすることでシリコン抜けさせて炭素の原子比率がシリコンの原子比率よりも高くなるようにすることでカーボン層(14)を形成することもできる。この場合、請求項6に記載したように、カーボン層(14)を形成する工程では、炭化珪素(1)の一面(1b)に対してイオン注入を行って原子間の結合を壊した後で、レーザアニールによるシリコン抜けを行ってカーボン層(14)を形成すると、シリコン抜けを容易に起こさせることが可能となる。このため、炭化し易くなると共にシリコン抜けによる表面荒れ効果が大きく表れ、カーボン層(14)の表面に凹凸が形成され易くなるようにすることが可能となる。
【0013】
また、請求項7に記載したように、カーボン層(14)を形成する工程では、炭化珪素(1)の一面(1b)にカーボンナノチューブをカーボン層(14)として形成するようにしても良い。このように、カーボン層(14)として低抵抗なカーボンナノチューブを用いることで、更なるコンタクト抵抗の低抵抗化を図ることが可能となる。
【0014】
また、請求項8に記載したように、カーボン層(14)を形成する工程では、炭化珪素(1)の一面(1b)にグラフェンをカーボン層(14)として形成することもできる。このように、カーボン層(14)として横方向の熱伝導が高いグラフェンを用いることで、厚さ方向に熱が逃げるのではなく、平面上に熱が伝わり易くなるようにできるため、より効率的にレーザアニールを行うことが可能となる。
【0015】
請求項9に記載の発明では、カーボン層(14)を形成する工程の後、カーボン層(14)に凹凸を形成する工程を含み、カーボン層(14)に凹凸を形成してから、金属層(15)を形成する工程を行うことを特徴としている。
【0016】
このように、カーボン層(14)の表面に凹凸を形成することにより、レーザ光の吸収効果が高まり、レーザアニールの温度を上昇させることが可能となる。
【0017】
請求項10に記載の発明では、カーボン膜(14)の表面にシリコン層(16)を成膜する工程を含み、シリコン層(16)を成膜する工程の後で、金属層(15)を形成する工程を行うことを特徴としている。
【0018】
このように、シリコン層(16)を成膜することにより、より積極的にシリサイド層を形成できるため、さらなるコンタクト抵抗の低抵抗化が実現できる。
【0019】
請求項11に記載の発明では、炭化珪素(1)の一面(1b)に対して有機材料を含有する有機膜(13)を成膜する工程と、有機膜(13)を挟んで炭化珪素(1)とは反対側にオーミック電極(5)を形成するための金属層(15)を形成する工程と、金属層(15)側からレーザ光を照射することでレーザアニールを行い、有機材料(13)に含まれる炭素と金属層(15)を構成する金属とを反応させて金属カーバイドを形成し、金属層(15)の残部および金属カーバイドを有するオーミック電極(5)を形成する工程と、を含んでいることを特徴としている。
【0020】
このように、有機膜(13)と金属層(15)を積層形成し、金属層(15)を形成してからレーザアニールを行うようにしても、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0021】
一方、金属層(15)としては、請求項12に記載したように、炭化されることで金属カーバイドが構成される4A、5Aもしくは6A族のいずれかの金属を用いることができる。例えば、請求項13に記載したように、4A、5Aもしくは6A族のいずれかの金属として、ニッケル、チタン、タンタル、モリブデン、タングステン、ニオブ、ハフニウムのいずれかを用いることができる。
【0022】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるSiC半導体装置の断面図である。
【図2】図1に示すSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。
【図3】オーミック電極形成工程の様子を示した拡大断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態にかかるオーミック電極形成工程の様子を示した拡大断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態にかかるオーミック電極形成工程の様子を示した拡大断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態にかかるオーミック電極形成工程の様子を示した拡大断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態にかかるオーミック電極形成工程の様子を示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0025】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、ショットキーバリアダイオード(以下、SBDという)を備えるSiC半導体装置に対して本発明の一実施形態である製造方法を適用した場合について説明する。図1は、本実施形態にかかるSiC半導体装置の断面図である。
【0026】
図1に示すように、SiC半導体装置は、例えば2×1018〜1×1021cm-3程度不純物濃度とされた炭化珪素からなるn+型基板1を用いて形成されている。n+型基板1の上面を主表面1a、主表面1aの反対面である下面を裏面1bとすると、主表面1a上には、基板1よりも低いドーパント濃度、例えば5×1015(±50%)cm-3程度不純物濃度とされた炭化珪素からなるn-型ドリフト層2が積層されている。これらn+型基板1およびn-型ドリフト層2のセル部にSBD10が形成されていると共に、その外周領域に終端構造が形成されることでSiC半導体装置が構成されている。
【0027】
具体的には、n-型ドリフト層2の表面には、セル部において部分的に開口部3aが形成されたシリコン酸化膜などで構成された絶縁膜3が形成され、この絶縁膜3の開口部3aにおいてn-型ドリフト層2と接触するように、ショットキー電極4が形成されている。
【0028】
また、絶縁膜3に形成された開口部3aは、例えば円形状とされており、ショットキー電極4はこの円形状の開口部3aにおいてn-型ドリフト層2にショットキー接続されている。そして、n+型基板1の裏面と接触するように、例えばNi(Ni)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)等やこれらの金属カーバイドや金属シリサイド等により構成されたオーミック電極5が形成されている。これにより、SBD10が構成されている。
【0029】
また、SBD10の外周領域に形成された終端構造として、ショットキー電極4の両端位置において、ショットキー電極4と接するように、n-型ドリフト層2の表層部にp型リサーフ層6が形成されていると共に、p型リサーフ層6の外周をさらに囲むように複数個のp型ガードリング層7等が配置され、終端構造が構成されている。p型リサーフ層6は、例えばAlを不純物として用いて構成されたものであり、例えば、5×1016〜1×1018cm-3程度の不純物濃度で構成されている。これらp型リサーフ層6やp型ガードリング層7は、セル部を囲むように円環状とされ、これらを配置することにより、SBD10の外周において電界が広範囲に延びるようにでき、電界集中を緩和できるため、耐圧を向上させることができる。
【0030】
さらに、終端構造を構成する部分のうち最もセル部側に位置しているp型リサーフ層6の内側(内周側)の端部よりもさらに内側に、ショットキー電極4と接するように構成されたp型層8が形成されている。p型層8は、ショットキー電極4のうちn-型ドリフト層2と接触する領域の中心に位置する円形状の中心部8aを中心として、同心円状に複数個(本実施形態では4個)の円環状部8b〜8eが配置されて構成されている。また、複数のp型層8のうちの最も外周側に位置する外周部8eがp型リサーフ層6の内側の端部と接触もしくはリサーフ層6と重なるように配置されている。そして、中心部8aと外周部8eとの間に配置される内周部8b〜8dが、中心部8aを中心とする径方向に切断する断面において、対称的に配置されるように、各p型層8a〜8eが等しい間隔W1だけ空けた配置とされ、かつ、各p型層8a〜8eの幅W2も等しくされた構造とされている。このようなp型層8は、例えば、5×1017〜1×1020cm-3程度、好ましくはリサーフ層6よりも高い不純物濃度で構成され、各p型層8の間隔W1が2.0±0.5μm程度、幅W2(径方向寸法)が1.5±0.5μm程度、深さが0.3〜1.0μm程度とされている。
【0031】
このような構造のSBD10を備えたSiC半導体装置では、ショットキー電極4をアノード、オーミック電極5をカソードとして、ショットキー電極4に対してショットキー障壁を超える電圧を印加することにより、ショットキー電極4とオーミック電極の間に電流を流す。
【0032】
一方、外周部領域に関しては、オフ時にショットキー電極4の下方に配置した複数個のp型層8からn-型ドリフト層2に向かって伸びる空乏層により、p型層8に挟まれたn-型ドリフト層2が完全空乏化する。このため、逆方向電圧印加時のリーク電流を低減することが可能となる。
【0033】
次に、本実施形態にかかるSiC半導体装置の製造方法について説明する。図2は、図1に示すSiC半導体装置の製造工程を示した断面図である。なお、図2中では図を簡略化してp型ガードリング層7を省略してある。
【0034】
まず、図2(a)に示す工程では、n+型基板1の主表面1aにn-型ドリフト層2をエピタキシャル成長させる。続いて、図2(b)に示す工程では、LTO(low-temperature oxide)等で構成されたマスク11を配置したのち、フォトリソグラフィ・エッチング工程にてマスク11のうちp型リサーフ層6およびp型ガードリング層7の形成予定領域を開口させる。そして、このマスク11を用いて例えばAlなどのp型不純物をイオン注入し、熱処理などによって活性化することでp型リサーフ層6およびp型ガードリング層7を形成する。
【0035】
次に、図2(c)に示す工程では、マスク11を除去したのち、再びLTO等で構成されたマスク12を配置し、フォトリソグラフィ・エッチング工程にてマスク12のうちp型層8の形成予定領域を開口させる。そして、このマスク12を用いて例えばAlなどのp型不純物をイオン注入し、熱処理などによって活性化することでp型層8を形成する。その後、図2(d)に示す工程では、マスク12を除去したのち、例えば、プラズマCVDによりシリコン酸化膜を成膜したのち、これをリフロー処理することで絶縁膜3を成膜し、フォトリソグラフィ・エッチング工程を経て、絶縁膜3に対して開口部3aを形成する。
【0036】
そして、図2(e)に示す工程では、開口部3a内を含めて絶縁膜3の上に、例えばモリブデン、チタン、ニッケルもしくはこれらの合金層を蒸着したのち、その合金層をパターニングすることによりショットキー電極4を形成する。さらに、必要に応じてn+型基板1を薄板化するために、n+型基板1の裏面1b側を研磨または研削する工程を行った後、n+型基板1の裏面1bにオーミック電極5を形成するオーミック電極形成工程を行う。このオーミック電極形成工程の詳細について、図3に示すオーミック電極形成工程の様子を示した拡大断面図を参照して説明する。
【0037】
オーミック電極形成工程では、まず、図3(a)に示す工程としてn+型基板1の裏面1bに例えば1μm以下の膜厚で有機材料を含有するレジスト等の有機膜13を成膜する。次に、図3(b)に示す工程において有機膜13を炭化させてカーボン層14とする。例えば、レーザアニールによって有機膜13に含まれる有機材料を溶かしている溶剤蒸発させることにより、有機膜13を炭化させることができる。このようなレーザアニールによって有機膜13の炭化を行うと、溶剤が除去されることでカーボン層14の表面が荒れ、当該表面に凹凸を形成することができる。このような凹凸により、レーザ光の吸収効果が高まり、後で行うレーザアニールの温度を上昇させることが可能となる。
【0038】
続いて、図3(c)に示す工程において、カーボン層14の表面に4Aや5Aもしくは6A族の金属材料、特にニッケル、チタン、タンタル、モリブデン、タングステン、ニオブ、ハフニウム等により構成される金属層15を形成する。そして、図3(d)に示す工程において、金属層15側からn+型基板1の裏面1bにレーザ光を照射し、レーザアニールを行う。これにより、金属層15を構成する金属がカーボン層14を構成する炭素(C)やn+型基板1を構成するシリコン(Si)または炭素と反応して金属カーバイドや金属シリサイドが構成され、その金属カーバイドやシリサイド層および金属層15の残部によってオーミック電極5が形成される。特に10-2torr(1.3Pa)以下の真空中でレーザアニールをすることにより電極の酸化が抑制されるため、より低抵抗なオーミック電極を形成することができる。また、レーザ光の波長は、レーザエネルギーの吸収効率を高めるため、355nm以下の波長が好ましい。これにより、図1に示したSBD10を備えたSiC半導体装置が完成する。
【0039】
以上説明した本実施形態のSiC半導体装置の製造方法によれば、オーミック電極5を形成するための金属層15の形成前にレーザ光の吸収効果の高いカーボン層14を形成しておき、その上に金属層15を形成してからレーザアニールを行うようにしている。これにより、金属層15を構成する金属がカーボン層14を構成する炭素(C)やn+型基板1を構成するシリコン(Si)または炭素と反応してオーミック電極5が形成されるため、カーボン層14を除去する必要がない。また、レーザアニール時にカーボン層14を用いているため、レーザ光の吸収率を高くすることができ、オーミック電極5のコンタクト抵抗の低抵抗化を十分に行うことが可能となる。したがって、カーボン膜14の除去が必要とならず、かつ、十分にコンタクト抵抗を低抵抗化することが可能となる。
【0040】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してオーミック電極形成工程を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0041】
図4は、本実施形態のオーミック電極形成工程の様子を示した拡大断面図である。この図を参照して、本実施形態のオーミック電極形成工程について説明する。
【0042】
まず、図4(a)に示す工程では、工程が容易なスパッタなどによってn+型基板1の裏面1bに例えば1μm以下の膜厚のカーボン層14を成膜する。次に、図4(b)に示す工程においてカーボン層14の表面を荒らす処理を行う。例えば、研磨、研削、ドライエッチング、ウェットエッチング、水素エッチングなどによってカーボン層14の表面を荒らすことができ、これによってカーボン層14の表面に凹凸が形成される。ドライエッチング、ウェットエッチング、水素エッチングなどの場合には、単なるエッチングを行ってもある程度表面に凹凸を形成することができるが、任意形状のマスクを配置した状態でエッチングを行うことで、意図的に凹凸を形成することもできる。このようにカーボン層14の表面に凹凸を形成することにより、レーザ光の吸収効果が高まり、後で行うレーザアニールの温度を上昇させることが可能となる。
【0043】
続いて、図4(c)に示す工程において、カーボン膜14の表面に4Aや5Aもしくは6A族の金属材料、特にニッケル、チタン、タンタル、モリブデン、タングステン、ニオブ、ハフニウム等により構成される金属層15を形成する。そして、図4(d)に示す工程において、金属層15側からn+型基板1の裏面1bにレーザ光を照射し、レーザアニールを行う。これにより、金属層15を構成する金属がカーボン層14を構成する炭素(C)やn+型基板1を構成するシリコン(Si)または炭素と反応して金属カーバイドやシリサイド層が構成され、その金属カーバイドやシリサイド層および金属層15の残部によってオーミック電極5が形成される。
【0044】
以上説明した本実施形態のSiC半導体装置の製造方法によっても、第1実施形態と同様、オーミック電極5を形成するための金属層15の形成前にレーザ光の吸収効果の高いカーボン層14を形成しておき、その上に金属層15を形成してからレーザアニールを行うようにしている。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態も、第1実施形態に対してオーミック電極形成工程を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0046】
図5は、本実施形態のオーミック電極形成工程の様子を示した拡大断面図である。この図を参照して、本実施形態のオーミック電極形成工程について説明する。
【0047】
まず、図5(a)に示す工程では、n+型基板1の裏面1bに対して不活性なアルゴン(Ar)もしくはn型不純物であるリン(P)や窒素(N)などイオン注入することで、原子間の結合を壊しておく。その後、図5(b)に示す工程において、n+型基板1の裏面1bをレーザアニールすることで、シリコン抜けを起こさせ、n+型基板1の裏面1bの一部をカーボン層14にする。このとき、予め図5(a)の工程において原子間の結合を壊してあるため、シリコン抜けを容易に起こさせることが可能となる。そして、シリコン抜けによってカーボン層14を形成しているため、炭化し易くなると共にシリコン抜けによる表面荒れ効果が大きく現れ、カーボン層14の表面に凹凸が形成され易くなるようにすることが可能となる。
【0048】
なお、カーボン層14としては、シリコンが完全に抜けている必要はなく、原子比率がSiCのようにSi:C=1:1の関係にならずに、SiよりCの原子比率が高くなるような状態になっていれば実質的にカーボン層14として機能する。例えば、Cの原子比率が60%以上であれば良い。
【0049】
この後、図5(c)、(d)に示す工程おいて、第1実施形態で説明した図3(c)、(d)と同様の工程を行う。これにより、金属層15を構成する金属がカーボン層14を構成する炭素(C)やn+型基板1を構成するシリコン(Si)または炭素と反応して金属カーバイドやシリサイド層が構成され、その金属カーバイドやシリサイド層および金属層15の残部によってオーミック電極5が形成される。
【0050】
以上説明した本実施形態のSiC半導体装置の製造方法によっても、第1実施形態と同様、オーミック電極5を形成するための金属層15の形成前にレーザ光の吸収効果の高いカーボン層14を形成することができる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態も、第1実施形態に対してオーミック電極形成工程を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0052】
図6は、本実施形態のオーミック電極形成工程の様子を示した拡大断面図である。この図を参照して、本実施形態のオーミック電極形成工程について説明する。
【0053】
まず、図6(a)に示す工程では、n+型基板1の裏面1bに例えば1μm以下の膜厚で有機材料を含有するレジスト等の有機膜13を成膜したのち、続けて有機膜13の表面に4Aや5Aもしくは6A族の金属材料、特にニッケル、チタン、タンタル、モリブデン、タングステン、ニオブ、ハフニウム等により構成される金属層15を形成する。そして、図6(b)に示す工程において、金属層15側からレーザ光を照射してレーザアニールを行う。これにより、金属層15を構成する金属が有機膜13に含まれる炭素(C)やn+型基板1を構成するシリコン(Si)または炭素と反応して金属カーバイドやシリサイド層が構成され、その金属カーバイドやシリサイド層および金属層15の残部によってオーミック電極5が形成される。
【0054】
以上説明した本実施形態のSiC半導体装置の製造方法のように、有機膜13と金属層15を積層形成し、金属層15を形成してからレーザアニールを行うようにしても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、上記第1〜第3実施形態で説明したようにカーボン層14を形成してから金属層15を形成する場合、電極形成時に電極剥がれが懸念されるが、本実施形態の場合にはカーボン層14の上に金属層15を形成する必要がなくなるため、電極剥がれを抑制できるという効果も得られる。
【0055】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態も、第3実施形態に対してオーミック電極形成工程を変更したものであり、その他に関しては第3実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0056】
図7は、本実施形態のオーミック電極形成工程の様子を示した拡大断面図である。この図を参照して、本実施形態のオーミック電極形成工程について説明する。
【0057】
まず、図7(a)、(b)に示す工程では、第3実施形態で説明した図5(a)、(b)と同様の工程を行う。これにより、n+型基板1の裏面1bに対してカーボン層14を形成する。この後、図7(c)に示す工程では、カーボン層14の表面にシリコン層16を例えばCVD法にて成膜する。その後、図7(d)に示す工程で、第3実施形態で説明した図5(c)と同様の工程を行うことでシリコン層16の表面に金属層15を形成し、続く図7(e)に示す工程で、第3実施形態で説明した図5(d)と同様の工程を行うことでレーザアニールを行う。これにより、オーミック電極5が形成される。このとき、シリコン層16を形成してあるため、金属層15を構成する金属がシリコン層16を構成するシリコンと反応して積極的にシリサイド層が構成されるようにできる。したがって、よりコンタクト抵抗の低抵抗化を実現することができる。
【0058】
以上説明した本実施形態のSiC半導体装置の製造方法によっても、第1実施形態と同様、オーミック電極5を形成するための金属層15の形成前にレーザ光の吸収効果の高いカーボン層14を形成することができる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、より積極的にシリサイド層を形成できるため、さらなるコンタクト抵抗の低抵抗化が実現できる。
【0059】
なお、ここでは第3実施形態に対してシリコン層16を形成する場合について説明したが、勿論、第1、第2実施形態の構造に対してカーボン層14と金属層15との間にシリコン層16を形成しても良い。また、第4実施形態の構造に対して有機膜13と金属層15との間にシリコン層16を形成しても良い。さらに、後述する他の実施形態において、カーボン層14を形成してから金属層15を形成するものに関しても、それらの間にシリコン層16を形成しても良い。
【0060】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、SiC半導体装置としてSBDが備えられた構造のものを例に挙げ、SBDの裏面に備えられるオーミック電極5のコンタクト抵抗の低抵抗化を実現するために本発明を適用する場合について説明した。しかしながら、これは単なる一例であり、オーミック電極が形成されるようものであれば、他の半導体素子が備えられるSiC半導体装置の製造方法に対しても本発明を適用することができる。
【0061】
また、上記第3、第5実施形態では、n+型基板1の裏面1bに対してイオン注入を行って原子間の結合を壊す際に、不活性なイオン(例えばアルゴン)やn型不純物(リンもしくは窒素等)を用いる場合について説明した。これは、オーミック電極5がn+型基板1の裏面1b、つまりn型SiCに対して形成されるためであり、オーミック電極5が形成されるのがp型SiCに対して形成されるのであれば、n型不純物の代わりにp型不純物をイオン注入することもできる。この場合、例えばp型不純物としてアルミニウム(Al)、ボロン(B)、バナジウム(V)を用いることができる(図5(a)、図7(a)参照)。
【0062】
また、上記第2実施形態では、カーボン層14を形成した後にカーボン層14の表面に凹凸を形成する工程を行ったが、この他、第1、第3実施形態等についてもカーボン層14を形成した後に適宜凹凸を形成する工程を行うようにしても良い。このように、カーボン層14の表面に凹凸を形成することにより、レーザ光の吸収効果が高まり、後で行うレーザアニールの温度を上昇させることが可能となる。
【0063】
さらに、上記実施形態では炭素を含むカーボン層14の一例を示したが、その他、カーボンナノチューブやグラフェン(単原子層グラファイト)をカーボン層14として用いても良い。カーボンナノチューブに関しては、例えばメタンを導入した状態でアルコールCVDを行うことで形成することができる。このように、カーボン層14として低抵抗なカーボンナノチューブを用いることで、更なるコンタクト抵抗の低抵抗化を図ることが可能となる。また、グラフェンに関しては、例えば真空中でn+型基板1の裏面1bをレーザアニールすることで形成することができる。このように、カーボン層14として横方向の熱伝導が高いグラフェンを用いることで、厚さ方向に熱が逃げるのではなく、平面上に熱が伝わり易くなるようにできるため、より効率的にレーザアニールを行うことが可能となる。
【0064】
なお、カーボン層14としてカーボンナノチューブやグラフェンを用いる場合においても、上記第2実施形態のように、カーボン層14の表面に適宜凹凸を形成することもできる。これにより、レーザ光の吸収効果が高まり、後で行うレーザアニールの温度を上昇させることが可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1 n+型基板
1b 裏面
2 n-型ドリフト層
3 絶縁膜
3a 開口部
4 ショットキー電極
5 オーミック電極
10 SBD
13 有機膜
14 カーボン層
15 金属層
16 シリコン層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素(1)の一面(1b)に対し、該一面(1b)とオーミック接触させられるオーミック電極(5)を形成するオーミック電極形成工程を含む炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
前記炭化珪素(1)の一面(1b)に対してカーボン層(14)を形成する工程と、
前記カーボン層(14)を挟んで前記炭化珪素(1)とは反対側に前記オーミック電極(5)を形成するための金属層(15)を形成する工程と、
前記金属層(15)側からレーザ光を照射することでレーザアニールを行い、前記カーボン層(14)を構成する炭素と前記金属層(15)を構成する金属とを反応させて金属カーバイドを形成し、前記金属層(15)の残部および前記金属カーバイドを有する前記オーミック電極(5)を形成する工程と、を含んでいることを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記カーボン層(14)を形成する工程では、前記炭化珪素(1)の一面(1b)に対して有機材料を含有する有機膜(13)を成膜する工程と、前記有機膜(13)を炭化させて前記カーボン層(14)を形成する工程と、を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記有機膜(13)を成膜する工程では、前記有機膜(13)としてレジストを用い、
前記有機膜(13)を炭化させて前記カーボン層(14)を形成する工程では、前記レジストをレーザアニールすることで炭化させることを特徴とする請求項2に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記カーボン層(14)を形成する工程では、スパッタによって前記カーボン層(14)を形成することを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記カーボン層(14)を形成する工程では、前記炭化珪素(1)の一面(1b)をレーザアニールすることでシリコン抜けさせて炭素の原子比率がシリコンの原子比率よりも高くなるようにすることで前記カーボン層(14)を形成することを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記カーボン層(14)を形成する工程では、前記炭化珪素(1)の一面(1b)に対してイオン注入を行って原子間の結合を壊した後で、前記レーザアニールによるシリコン抜けを行って前記カーボン層(14)を形成することを特徴とする請求項5に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記カーボン層(14)を形成する工程では、前記炭化珪素(1)の一面(1b)に前記カーボン層(14)としてカーボンナノチューブを形成する工程を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記カーボン層(14)を形成する工程では、前記炭化珪素(1)の一面(1b)に前記カーボン層(14)としてグラフェンを形成する工程を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記カーボン層(14)を形成する工程の後、前記カーボン層(14)に凹凸を形成する工程を含み、前記カーボン層(14)に凹凸を形成してから、前記金属層(15)を形成する工程を行うことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記カーボン膜(14)の表面にシリコン層(16)を成膜する工程を含み、
前記シリコン層(16)を成膜する工程の後で、前記金属層(15)を形成する工程を行うことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項11】
炭化珪素(1)の一面(1b)に対し、該一面(1b)とオーミック接触させられるオーミック電極(5)を形成するオーミック電極形成工程を含む炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
前記炭化珪素(1)の一面(1b)に対して有機材料を含有する有機膜(13)を成膜する工程と、
前記有機膜(13)を挟んで前記炭化珪素(1)とは反対側に前記オーミック電極(5)を形成するための金属層(15)を形成する工程と、
前記金属層(15)側からレーザ光を照射することでレーザアニールを行い、前記有機材料(13)に含まれる炭素と前記金属層(15)を構成する金属とを反応させて金属カーバイドを形成し、前記金属層(15)の残部および前記金属カーバイドを有する前記オーミック電極(5)を形成する工程と、を含んでいることを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記金属層(15)を形成する工程では、4A、5Aもしくは6A族のいずれかの金属にて前記金属層(15)を形成することを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記4A、5Aもしくは6A族のいずれかの金属として、ニッケル、チタン、タンタル、モリブデン、タングステン、ニオブ、ハフニウムのいずれかを用いることを特徴とする請求項12に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−96905(P2011−96905A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250576(P2009−250576)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】