説明

炭水化物およびトリプトファン含有ペプチドを含む組成物

トリプトファンの豊富なペプチドを含む食用組成物であって、その食用組成物が急速に摂取されるグルコース組成物と緩慢に摂取されるグルコース組成物をさらに含む、トリプトファンの豊富なペプチドを含む食用組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、トリプトファン含有ペプチドを、急速に摂取されるグルコースおよび緩慢に摂取されるグルコース(すなわち、「急速」および「緩慢」炭水化物)と一緒に含む、配合物に関する。
【0002】
[背景技術]
最近、トリプトファンが脳に吸収されると、人の行動、気分、脳機能、脳の発達という幾つかの面に、そうしたトリプトファンがもたらすと考えられる益について様々な報告がなされてきた。そのような報告の例には、国際公開第99/55174号パンフレット、国際公開第00/42868号パンフレット、国際公開第2005/023017号パンフレットがある。
【0003】
トリプトファンは、(例えば、乳漿タンパクのような)多数のタンパク質中に存在するアミノ酸であり、動物タンパク質もトリプトファンを含む。トリプトファンは、トリプトファンを含むタンパク質が摂取された後、血液中に、また血液から脳に吸収されうる。しかし、トリプトファンは吸収される唯一のアミノ酸ではない。事実、普通の動物タンパク質組成物が摂取された場合、脳が吸収するトリプトファンのレベルは、他のアミノ酸の競合吸収のため非常に低く、その結果、トリプトファンに起因する著しい効果を普通は観察することはできない。したがって、上記のほとんどの報告は、トリプトファンの豊富なタンパク質またはタンパク質分画か、あるいは遊離アミノ酸のトリプトファンのいずれかを使用している(後者の場合、任意選択により他の遊離アミノ酸および/またはタンパク質と併用される)。
【0004】
遊離アミノ酸としてのトリプトファンの使用の場合、多数の国における食品法で、食品中での遊離アミノ酸としてのトリプトファンの使用が制限されているという不利な点がある。
【0005】
トリプトファンの豊富なタンパク質の場合、トリプトファンのレベルおよび大型中性アミノ酸とのその比率(それは脳によるトリプトファンの吸収量と関連している)に関して自然の限界がある。
【0006】
最近の見識によれば、トリプトファンの豊富なペプチドは、望ましい効果が得られるよう十分なトリプトファンを脳に取り入れるための良好な源でありうるし、また遊離アミノ酸よりも簡単に食品に使用できるものである。そのようなトリプトファンの豊富なペプチドは、好ましくは、脳への吸収の点で大いに競合すると考えられるアミノ酸(いわゆる大型中性アミノ酸(LNAA)であり、それらはロイシン、イソロイシン、バリン、チロシン、フェニルアラニン(またLNAAの定義により、メチオニンも含まれる)である)が少ない。したがって、高レベルのトリプトファンを含み、かつトリプトファン/LNAA比率が大きいペプチド調製物を提供するのが好ましい。メチオニンは、本発明との関連ではなんら有益な代謝的効果を持たないと考えられ、したがって本発明の目的においては、LNAAの1種とは見なされない。
【0007】
欧州特許第661004号明細書は、トリプトファンと、例えばデキストリンとを組み合わせて含む動物飼料を開示している。前記組成物は、高い環境温度において動物の食欲が少ないとき、成長および体重の増加を維持するためのものである。
【0008】
国際公開第2004/112803号パンフレットは、トリプトファン/LNAA比率が高いタンパク質とすぐに消化できる炭水化物とを組み合わせて含む組成物を与えることにより、月経前症候群の症状を管理するための方法を開示している。
【0009】
国際公開第2006/130567号パンフレットは、最小量のタンパク質が含まれる炭水化物の豊富な組成物、あるいはトリプトファンまたはトリプトファンの豊富なタンパク質またはペプチドが含まれる炭水化物の豊富な組成物を患者に投与することにより、冬のふさぎこみ、季節性感情障害(SAD)、およびうつ病性障害;ならびにそれに関連した炭水化物渇望、重量増加、および気分症状を治療する方法を開示している。
【0010】
米国特許出願公開第2003039739号明細書には、胃酸過多または食道逆流の起こりやすい人たちに適した減量の方法および組成物が記載されている。その組成物は、2種類以上のすぐに消化できる炭水化物を有するスナック食品を一部含んでおり、食品または食品と水との水性混合物はpHが約6以上であり、そのスナックは実質的にタンパク質を含まない。本発明の実験/試験計画では、それぞれの食事および軽食でタンパク質および炭水化物の量を違ったふうに配分したが、それは、昼食および夕食の後に、血漿のトリプトファンと循環している大型中性アミノ酸のそれとの比率が減少しないようにするためであり、結果として炭水化物の豊富なスナックの摂取の後にその比率が非常に上昇するようにした。国際公開第02/46210号パンフレットには、乳漿タンパク加水分解物中のトリプトファンのレベルを増大させる方法が記載されている。用いられたその方法では、乳漿を最初に、1種または複数種の酸性プロテアーゼによって、好ましくはペプシン、レンニン、真菌類酸性プロテアーゼ(acid fungal protease)、キモシン、パパイン、ブロメライン、キモパパインまたはフィシンによって、酸性pHで加水分解する。好ましい温置条件はpHが1.5から3.5の間であり、疎水性を有するペプチドが生じるように選択した。加水分解は、トリプトファン残基が大きな疎水性ペプチドに含まれるような仕方で計画的に実施する。比較的大きなペプチド中にトリプトファンが存在するという事実のため、血液中へのトリプトファンの吸収は遅れることになり、そのため食物または飲料の成分としての調製物の利用の可能性は、特に他のタンパク質と併用する場合、限られてくることになる。そのような大きなペプチドを使用する場合の別の不利な点は、そのようなペプチドがアレルギー性反応を生じさせることがあるという点である。乳漿タンパクに対するそのような反応はよく知られている。
【0011】
国際公開第2008/052995号パンフレットは、トリプトファン含有ペプチドに関するものであり、それは炭水化物をさらに含んでもよい。
【0012】
インシュリンは、種々の組織によるLNAAの吸収を選択的に促進することができ、そのようにして、さらに多くのトリプトファンが脳へ吸収されるようにするが、脳への吸収に関してLNAAがトリプトファンと競合するときにこれを行う。したがって、血漿インシュリンがかなりのレベルであることは、脳へのトリプトファンの望ましい影響に有益であり得る。そのような望ましい影響は、脳機能、機敏さ、睡眠、気分、集中力、および関連問題の分野に関係する。速く消化できる炭水化物がトリプトファン含有組成物と一緒に存在すると、血漿インシュリンが高レベルになるのが促進されうる。しかし、そのような場合、血糖が、例えば、摂取してから約2時間は下がること、および/または、脳がトリプトファンの最大限の恩恵を得られるようにおよび/または脳機能、機敏さ、睡眠、気分、集中力、認知全般(cognition in general)および関連分野が最適となるようにするために、例えば、3〜4時間にわたって血糖をかなりのレベルに維持することができないということが起こりうる。
【0013】
[発明の概要]
したがって、脳での吸収を良好にすることができる形でトリプトファンを提供する組成物であって、産業的に広く入手可能な源からのものであり、トリプトファン/LNAA比率が高く、アレルゲン性が低い、さらに脳機能、機敏さ、睡眠、気分、集中力、認知、および関連分野の1つまたはそれ以上にとって有益でありうる(例えば、人間(例えば、子供など)用の)配合物に使用することができる、組成物が必要とされた。
【0014】
これは、このほど少なくとも2種類の異なる水溶性トリプトファン含有ペプチド(またはペプチド組成物)を含む配合物であって、配合物のトリプトファン/LNAA比率が少なくとも0.15、好ましくは0.15から1.8の間であり、その配合物が急速に摂取されるグルコース(RAG)組成物と緩慢に摂取されるグルコース(SAG)組成物とをさらに含み、RAG組成物およびSAG組成物が、食用の組成物中に1:0.5から1:4の間、好ましくは1:0.8から1:3の間、より好ましくは1:1から1:3の間の乾燥重量比(RAG組成物:SAG組成物)で存在する配合物によって(少なくとも部分的に)達成された。トリプトファンの吸収および脳機能の両方にとって、また数時間にわたって効き目があると考えられるのは、上記の範囲である。
【0015】
好ましくは、本発明による配合物では、トリプトファン含有ペプチド:RAG組成物の重量比が、1:2から1:20の間、好ましくは1:3から1:15の間、より好ましくは1:3から1:8の間である。トリプトファンの吸収および脳機能の両方にとって、また数時間にわたって効き目があると考えられるのは、上記の範囲である。
【0016】
ここでは、本発明による配合物が、摂取の容易な製品(ready to consume product)において、乾燥重量で0.5〜5%(好ましくは0.8〜3%)のトリプトファン含有ペプチド組成物を含むことも好ましい。それは、そうしたものの場合、適切な量およびトリプトファン濃度を有する消費品(consumable products)(例えば、飲料)の配合が容易に行えるからである。
【0017】
本発明の更なる実施態様は、ジペプチドまたはトリペプチドから選択される少なくとも2種類の異なるペプチドを含む配合物であって、ジペプチドまたはトリペプチドから選択される2種類のペプチドはジペプチドおよびトリペプチドの総量の少なくとも5mol%の量だけそれぞれ存在し、また全トリプトファンの30mol%より多くがペプチド結合トリプトファンとして存在し、さらに好ましくは40mol%より多くの、より好ましくは50mol%より多くの、さらにより好ましくは60mol%より多くの、さらにより好ましくは70mol%より多くの、もっとも好ましくは80mol%より多くのペプチド結合トリプトファンがジペプチドまたはトリペプチドの形で存在する配合物であり、好ましくは、配合物はトリプトファン/LNAA比率が0.15より大きく、好ましくは0.15から1.8の間であり、その配合物は、急速に摂取されるグルコース(RAG)組成物および緩慢に摂取されるグルコース(SAG)組成物をさらに含み、RAG組成物およびSAG組成物は、配合物中においてRAG組成物:SAG組成物が1:0.5から1:4の間、好ましくは1:0.8から1:3の間、より好ましくは1:1から1:3の間の乾燥重量比で存在する。上記において、さらに、トリプトファン含有ペプチド:RAG組成物の(乾燥)重量比が、1:2から1:20の間、好ましくは1:3から1:15の間、より好ましくは1:3から1:8の間であるのも好ましいであろう。トリプトファンの吸収および脳機能の両方にとって、また数時間にわたって効き目があると考えられるのは、上記の量および範囲である。
【0018】
急速に摂取されるグルコース(RAG)組成物および緩慢に摂取されるグルコース(SAG)組成物は、「本発明の詳細な説明」で定義されている。
【0019】
ここでまた、本発明による配合物が、摂取の容易な製品において、乾燥重量で0.5〜5%(好ましくは0.8〜3%)のトリプトファン含有ペプチド組成物を含むことも好ましい。
【0020】
本発明による配合物では、トリプトファン含有ペプチド組成物が好ましく含むトリプトファン含有ペプチドは次の方法で得ることができる:水溶性トリプトファン含有ペプチド、好ましくは少なくとも2種類の水溶性トリプトファン含有ペプチドを含み、好ましくはトリプトファン/LNAA比率が0.15より大きく、好ましくは0.15から1.8の間である組成物を製造する方法であって、リゾチーム、好ましくは鶏卵リゾチームを加水分解して、加水分解度(DH)が5から45の間である加水分解物を調製し、任意選択で、一部のアルギニン含有またはリジン含有ペプチドを除去することを含む方法によって得ることができる。好ましくは、本発明による配合物に用いるそのようなトリプトファン含有ペプチドは、AWまたはGNWを含み、より好ましくはAWおよびGNWを含む。前記加水分解物は、好ましくはDHが10から40の間である。トリプトファンの吸収および脳機能の両方にとって、また数時間にわたって効き目があると考えられるのは、上記の量および範囲である。
【0021】
本発明による配合物では、トリプトファン含有ペプチド組成物は、好ましくは、少なくとも2種類の異なる水溶性のペプチドを含み、かつ組成物のトリプトファン/LNAAのモル比が少なくとも0.15、好ましくは0.15から1.8の間である組成物の形である。好ましくは、このトリプトファン含有ペプチド組成物は、AWまたはGNW、好ましくはAWおよびGNW、もっとも好ましくは、AWとGNWとのモル比が1:2から10:1の間、好ましくは1:2から5:1の間であるAWおよびGNWを含む。したがって、本配合物では、トリプトファン含有ペプチド組成物は、好ましくは、トリプトファンの豊富な水溶性ペプチドの組成物の形である。有利には、本配合物では、トリプトファン含有ペプチド組成物は、好ましくは少なくとも2種類の異なるジペプチドまたはトリペプチドを含み、ジペプチドまたはトリペプチドから選択される2種類のペプチドがジペプチドおよびトリペプチドの総量の少なくとも5mol%だけ存在し、さらにそのトリプトファン含有ペプチド組成物では、30mol%より多くの、好ましくは40mol%より多くの、より好ましくは50mol%より多くの、さらにより好ましくは60mol%より多くの、さらにより好ましくは70mol%より多くの、もっとも好ましくは80mol%より多くのペプチド結合トリプトファンが、ジペプチドまたはトリペプチドの形で存在し、好ましくは、トリプトファン含有ペプチド組成物は、トリプトファン/LNAA比率が0.15より大きく、好ましくは0.15から1.8の間である。ペプチド結合トリプトファンとは、ペプチド中にアミノ酸として存在するトリプトファンを意味する。トリプトファンの吸収および脳機能の両方にとって、また数時間にわたって効き目があると考えられるのは、上記の量および範囲である。
【0022】
本発明による配合物において好ましく使用されるトリプトファン含有ペプチド組成物は、好ましくはリゾチーム加水分解物であるか、または精製リゾチーム加水分解物である。好ましくは、前記リゾチーム加水分解物は、アルギニン残基が特に豊富である。アルギニンは大型中性アミノ酸(LNAA)の群に属さないが、インシュリン刺激効果があることで知られている。本明細書に開示されている加水分解物は、生体内で、高い血漿のトリプトファン/LNAA比率を生み出しうることが見出された。検出される血漿中のトリプトファン/LNAA比率は、加水分解物のトリプトファン/LNAA比率よりも大きいことが見出された。本明細書に記載のトリプトファン含有ペプチド組成物のさらに別の利点は、トリプトファン含有ペプチドが非常に小さいので、あまり好ましくないトリプトファン/LNAA比率を有するタンパク質の豊富な製品と組み合わせた場合でさえ、加水分解物は即時に高い血漿のトリプトファン/LNAA比率を生み出すことができることである。したがって、そのようなトリプトファン含有ペプチド組成物は本発明の配合物に好適なものとなる。本発明の配合物で使用されるトリプトファン含有ペプチド組成物は、遊離トリプトファンをさらに含むことができる。好ましくは、トリプトファン含有ペプチド組成物の加水分解物は、1重量%(乾燥物質)より多くの遊離トリプトファンを含まない。
【0023】
[発明の詳細な説明]
緩慢に摂取されるグルコース(SAG)について: これは、小腸で完全に消化されると思われるが、例えば、グルコースまたはスクロースよりゆっくりした速度で消化され、結果として低い血糖値になり、それが長い間保たれるような炭水化物を指す。一方、急速に摂取されるグルコース(RAG)は、急速に加水分解され、結果として高い血糖濃度になり、その濃度は比較的短時間しか維持されないような炭水化物である。
【0024】
Englystら(Englyst KN,Englyst HN,Hudson GJ,Cole TJ,Cummings JH.Rapidly available glucose in foods:an in vitro measurement that reflects the glycaemic response(食物中の急速に摂取されるグルコース:糖血症応答を反映するインビトロ測定)。American Journal of Clinical Nutrition(1999)69:448−54)は、生体内でグルコース曲線と著しく相関するインビトロ試験を使用した。RAGおよびSAGのインビトロ測定は、人体研究で測定される糖血症応答(glycaemic response)を予測することができた。Englystらは、インビトロ状態でのRAGを、20分後にグルコースに加水分解した炭水化物の量で定義した(G20と呼ばれる)。また120分後にも加水分解量を測定した(G120と呼ばれる)。こうした120分間の間に加水分解した量は、小腸での吸収に利用できると考えられた。この120分間の後に加水分解したものはいずれも吸収には利用されないものと見なされ、抵抗性があると見なされた。20分から120分の間に加水分解された炭水化物の量(すなわちG120〜G20)は、SAGと定義された。本発明の目的においては、RAGおよびSAGは本明細書では、Englystらの定義と同様であると理解される。
【0025】
本明細書においてRAGおよびSAGの定義の拠り所とされている、EnglystらがRAGおよびSAG分画の測定に用いたインビトロ技術は、標準化された条件のもとで、時間を定めて消化酵素と一緒に温置している間に試験食物から放出されるグルコースのHPLCによる測定に基づいており、以下にさらに詳細に述べる。
【0026】
[RAG/SAG物質の測定]
使用したポリエチレン管(50mL)は、Falcon(Oxford,United Kingdom)のものであった。ガラス球(直径1.5cm)は、Magnet Wholesale(Halesworth,United Kingdom)のものであった。振盪水槽は、Grant Instruments LtdモデルSS−40−2(Cambridge,United Kingdom)であった。その槽に、50mL管を厳密に水平に保持するためのクリップを取り付け、管が完全に水中に浸り、それぞれの管の長軸が移動方向になるようにした。HPLCシステムは、Dionex(UK)Ltd(Camberley,United Kingdom)のものであった。そのシステムについては、以下に詳しく説明する。試薬は、特に記載のない限り、Sigma(Poole,United Kingdom)またはMerck(Poole,United Kingdom)からのものであった。
【0027】
内標準溶液は、アラビノース40g/L(50%の飽和安息香酸を含む水)であった。保存糖混合液は、グルコース50g/L(50%の飽和安息香酸を含む水)および果糖25g/L(50%の飽和安息香酸を含む水)であった。糖類は、使用前に、減圧した状態において一定重量になるまで五酸化リンで乾燥させた。
【0028】
使用した酵素は、Sigmaのペプシン(カタログ番号:P−7000、St Louis)、Novo Nordiskのアミログルコシダーゼ(AMG 400 L type LP;(Bagsvaerd,Denmark))、Sigmaのパンクレアチン(カタログ番号:P−7545)、およびMerckのインベルターゼ(カタログ番号:390203D)であった。酵素混合液は、使用する日に調製した。18の試料について、3.0gのパンクレアチンを秤量して6本の遠心分離管のそれぞれに入れ、磁気攪拌棒および20mLの水をそれぞれに加えた。パンクレアチンは、渦混合(vortex mixing)で懸濁させてから、電磁撹拌機で10分間混合した。管は1500×gで10分間遠心分離機にかけた。各管からの濁った上澄み15mL(合計で90mL)を取り出してフラスコに入れ、4mLのアミログルコシダーゼおよび6mLのインベルターゼを加えて、よく混ぜた。
【0029】
[RAG、SAG、全グルコース、およびデンプンの分画のインビトロ測定]
食物の試料(0.6g未満の炭水化物を含む)を秤量してミリグラムに四捨五入し、それを50mLのポリプロピレン遠心分離管に入れた。内標準溶液(アラビノース40g/Lを5mL)および10mLの新たに調製したペプシン−ガーゴム溶液(0.05mol HCI/L中にペプシン5g/Lおよびガーゴム5g/Lを含む)を加えた。管にふたを取り付けて、内容物を渦混合し、37℃の水槽に30分間入れて、ペプシンによるタンパク質の加水分解が起こるようにした。5ミリリットルの0.5mol酢酸ナトリウム/L(平衡化して37℃になっているもの)をそれぞれの管に入れてpH5.2の緩衝液を作った。5個のガラス玉を加え、管にふたを取り付けてから静かに振って、内容物を分散させた。その後、37℃の水槽に入れて数分間平衡化した。振盪水槽中で、ガラス玉は、主な温置の間に試料の物理的構造を機械的に破壊する働きをする。ガーゴムは粘度を画一化し、試料を懸濁状態に保ち、その沈殿およびガラス玉による過剰な破壊を防ぐ。
【0030】
1本の試料管を37℃の水槽から取り出し、5mLの酵素混合液を加えた。すぐに管にふたを取り付け、内容物を逆さまにして静かに混合してから、それを37℃の振盪水槽中に水平に固定した。水槽の振盪処置はこの時点で開始した。この時を温置の時間ゼロと見なし、すべてのG120部分が回収されるまで中断しなかった(以下を参照)。温置の時間的調節をしやすくするため、1分間隔で酵素混合液を残りの試料管に加え、それらを振盪水槽中に入れた。酵素混合液を加えてから正確に20分後にそれぞれの管を槽から取り出し、0.2mLの内容物を4mLの無水エタノールに加え、渦混合して加水分解を停止させた。これがG20部分だった。試料を取り出したあとすぐに管を振盪水槽に戻した。さらに100分後(120分の温置)、0.2mLをさらに4mLの無水エタノールに加え、渦混合した。これがG120部分だった。
【0031】
ジャガイモデンプンおよび白小麦粉を、分析試料のサンプルの各バッチに参照物質として含めた。また2種類の試薬ブランク(一方は、4mLの保存糖混合液を含む)を、酵素調製物の糖度を補正するために含めた。加水分解条件は、ジャガイモデンプン、白小麦粉、およびコーンフレーク参照物質を用いて調整した。(参照物質および酵素は、Englyst Carbohydrate Services Ltd,(United Kingdom)から入手可能である)。ジャガイモデンプン(風乾したもの。Kartoffelmel Centralen,(Herning,Denmark)のもの)は、難消化性デンプン含有量が高く、振盪水槽の最適速度を設定するのに使用した。ジャガイモデンプンのG120値が高すぎた場合、ストローク速度を減少させたが、その逆もまた同様である。
【0032】
[糖類のHPLC測定]
2種類の糖の標準液を検量線の作成用に用いた。標準液1は保存糖混合液1mLであり、標準液2は保存糖混合液10mLであり、それぞれを水で20mLにし、その中に内標準溶液5mLを加えてよく混ぜた。その後、この混合液0.2mLを取り出し、無水エタノール4mLを含む管に加えた。
【0033】
HPLC分析の前に、すべてのエタノール分画を室温において1500×gで5分間遠心分離にかけた。糖標準液およびG20およびG120部分の分析用として取った量は70μLであった。試料をHPLCバイアルに入れ、脱イオン水1mLを加え、それらを渦混合した。
【0034】
自動注入装置(モデルAS3500;Dionex)を用いて、希釈エタノール分画20μLを注入した。糖分離は、グラジェントポンプ(gradient pump)(モデルGP40;Dionex)を用いて、陰イオン交換分析カラム(Carbopac PA100;Dionex)およびガードカラム(guard column)(Carbopac PA10;Dionex)によって達成した。カラムスイッチングおよび陰イオン交換ガードカラム(Aminotrap;Dionex)を用いて、アミノ酸およびペプチドが分析カラムに達するのを防いだ。溶離剤である高純度の水および200mol NaOH/L(16mLの50%NaOH溶液/L(高純度の脱気水))を脱気した。流量は0.8mL/分であった。溶離条件を以下のように示す。
【0035】
【表1】



【0036】
単糖類検出は、電気化学検出器(モデルED40;Dionex)により、以下のパルス電位(E)および継続時間(t)で行った:E=0.05V;t=400ms;E=0.75V;t=200ms;E=0.15V;およびt=400ms。応答時間は1sであり、検出器の出力は300nAに設定した。データ処理システム(DX−500;Dionex)を使用して結果を統合し、プロットした。
【0037】
RAGおよびSAGの値は、測定したG20およびG120値から次のように計算した:
RAG=G20
SAG=G120−G20
【0038】
本発明による配合物中の好ましい緩慢に摂取されるグルコース(SAG)組成物は、次の1種または複数種を含む:プルラン(数平均分子量が1000から45000ダルトンの間(好ましくは5000〜40000ダルトン)であるもの)、イソマルツロース、トレハロース、および/またはそれらの混合物。イソマルツロースが緩慢に摂取されるグルコース源として好ましいが、理由はそれらが市販されているものだからである。本発明による配合物中の好ましい急速に摂取されるグルコース(RAG)組成物は、グルコース、スクロース、マルトデキストリン、デンプン、デンプン加水分解物、デキストロース、および/またはそれらの混合物のうちの1種または複数種を含むが、理由はそれらが食品用途においてよく知られており、加工が容易だからである。
【0039】
本発明による配合物では、容易に摂取される最終配合物の場合、急速に摂取されるグルコースと緩慢に摂取されるグルコースを合わせた総量は、例えば、配合のしやすさおよび最終製品の品質(例えば、甘すぎないこと)の点から、容易に摂取される全配合物の5〜20(重量)%、好ましくは7〜15%であることが好ましい。
【0040】
本発明はさらに、1〜20重量%の本発明による配合物を含む(手軽に飲める液体の形の)製品に関連する。というのは、そのようなものは、適切な量およびトリプトファン濃度を有する消費品(例えば、飲料)の配合が簡単に行えるからである。
【0041】
本配合物中のペプチドは、AWまたはGNW、好ましくはAWおよびGNWを含むのが好ましい。そのような場合、AWとGNWとのモル比は、好ましくは1:2から10:1の間、より好ましくは1:2から5:1の間である。トリプトファンの吸収および脳機能の両方にとって、また数時間にわたって効き目があると考えられるのは、上記の比率である。
【0042】
本発明による配合物では、好ましくは、トリプトファン含有ペプチドは、リゾチーム、好ましくは鶏卵リゾチームを加水分解することによって得られる。
【0043】
更なる実施態様では、本発明は、本発明による配合物を含む食物、ペットフード、餌、飲料、健康補助食品または栄養補助組成物に関する。
【0044】
本発明のトリプトファン含有ペプチド部分の詳細およびその製造の方法は、国際公開第2008/052995号パンフレットにさらに記載されている。
【0045】
本発明の配合物に好ましく使用されるトリプトファン含有ペプチド組成物は、非常に短い時間間隔の間に血漿中のトリプトファン/LNAA比率を効果的に増大させるのに非常に適したペプチドの形で存在するトリプトファンを含む組成物を提供する。トリプトファンを含んでいるジペプチドおよびトリペプチドは、この増大に有利に寄与する。本発明の配合物中のトリプトファン含有ペプチド組成物の1つの実施態様では、リゾチーム(好ましくは、鶏卵リゾチーム)は、工業的方法で酵素(前)加水分解される。すなわち(鶏卵)リゾチームは、好ましくは加水分解物の形で提供される。加水分解物の形で提供されると、トリプトファン含有ペプチドの胃腸での吸収が非常に促進される。別の実施態様では、本出願の配合物のトリプトファン含有ペプチド組成物の場合、鶏卵リゾチームを、正電荷を帯びたアルギニンおよびリジン残基を含むペプチドのレベルが下げられている加水分解物に変換する。後者の加水分解物は、トリプトファン/LNAAのモル比率が0.15より大きいことを特徴としている。好ましいトリプトファン含有ペプチド組成物を含む、本出願のRTD配合物のさらに別の実施態様では、鶏卵リゾチームは、存在するペプチドの50%より多くが、好ましくは60%より多くが、より好ましくは75%より多くが500Da未満の分子量を有するようなペプチド集団を含む加水分解物に変換される。これは、本出願の材料および方法の項目に記載されている通りに、加水分解物中のペプチドの分子量分布を求めることを条件とする。好ましいトリプトファン/LNAA比率(少なくとも0.15)に関して、本出願の材料および方法の項目に記載されている通りに、加水分解物のアミノ酸分析を実施する。
【0046】
「タンパク質」または「ポリペプチド」は、本明細書では、30個より多いアミノ酸残基を含む鎖と定義する。
【0047】
「ペプチド」または「オリゴペプチド」は、本明細書では、ペプチド結合によって連結された少なくとも2個の(好ましくは2〜30個の)アミノ酸の鎖と定義する。「ペプチド」および「オリゴペプチド」という用語は、(一般的に、理解されているように)同義と見なされ、文脈での必要に応じてそれぞれの用語は区別なく使用できる。
【0048】
「水溶性の」ペプチドは、pH5.0で水溶性のペプチドである。本明細書のすべての(オリゴ)ペプチドおよびポリペプチドの式または配列は、慣例に従って、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に左から右に書かれている。本明細書で使用されているアミノ酸の一文字略号は一般的に、当該技術分野において知られており、SambrookらのMolecular Cloning:A Laboratory Manual, 2nded.Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor,NY,1989に記載されている。
【0049】
タンパク質加水分解物、加水分解物または加水分解されたタンパク質とは、タンパク質の酵素加水分解により生じる生成物を意味し、富化加水分解物(enriched hydrolysate)は、例えば、選択されたペプチドが豊富にされたタンパク質加水分解物の分画、あるいはペプチドまたはポリペプチドが加水分解物から除去されたタンパク質加水分解物の分画である。それで、富化加水分解物は、好ましくは、ペプチドの混合物(ペプチド混合物)である。したがって、本発明で用いるペプチド混合物は、少なくとも2種類の、好ましくは少なくとも3種類の、より好ましくは少なくとも4種類のトリプトファン含有ペプチドの混合物である。より好ましくは、混合物は、存在するペプチドの50%より多くが、好ましくは60%よりもさらに多くが、もっとも好ましくは75%より多くが500Da未満の分子量を有するペプチド集団を含む。トリプトファン含有ペプチドとは、少なくとも1つのL−トリプトファンアミノ酸残基を含むペプチドを意味する。トリプトファン/LNAA比率は、トリプトファンと他の大型中性アミノ酸(LNAA。すなわち、チロシン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシンおよびバリンの合計)の量のモル比を表す。血漿のトリプトファン/LNAA比率を別にすれば、トリプトファン/LNAA比率はペプチド結合アミノ酸だけに関係する。したがって、遊離のトリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシンおよびバリンは、トリプトファン/LNAA比率に関して考慮されない。ペプチド結合アミノ酸は、ペプチドの一部であり、遊離アミノ酸ではないアミノ酸である。Tyr/BCAAの比率は、チロシンと分岐鎖アミノ酸(BCAA。すなわちロイシン、イソロイシンおよびバリンの合計)の量のモル比を表す。好ましくはTyr/BCAAの比率は0.1より大きく、好ましくは0.12より大きい。
【0050】
本発明の配合物に好ましく用いられるトリプトファン含有ペプチド組成物は、本明細書に開示されている方法によって製造することができ、その方法では、タンパク質のトリプトファンに基づくトリプトファン収率が30%より多く、トリプトファンを含有する水溶性ペプチド組成物が生み出される。トリプトファン残基の大部分がジペプチドおよびトリペプチドに含まれるという事実は、血流に即時に吸収されることを暗示する。本発明の配合物に好ましく用いられる前記トリプトファン含有ペプチド組成物は、実際の加水分解物のトリプトファン/LNAA比率よりも高い血漿のトリプトファン/LNAA比率を生み出すこともできる。最後に、本発明の配合物に好ましく用いられるトリプトファン含有ペプチド組成物は、抗原性が非常に低いことによっても特徴付けられる。
【0051】
本発明の配合物で好ましく用いられるトリプトファン含有ペプチド組成物では、鶏卵リゾチームが、トリプトファン/LNAA比率の大きな調製物を提供するための便利な基質として好ましく使用される。リゾチームは、卵白中に3〜4%の濃度で存在する。その並外れて高い等電点を利用して、リゾチームは、簡単な陽イオンクロマトグラフィー精製工程を用いて卵白から工業的に分離される。得られる生成物はほぼ純粋なものであり、この工業的に入手可能な製品は、分子トリプトファン含有量が7.8%であり、トリプトファン/LNAAの分子比が少なくとも0.15である。したがって、純粋なリゾチームのトリプトファン/LNAA比率は、純粋なアルファ−ラクトアルブミンおよびまたはベータ−ラクトグロブリンよりも著しく大きい。それゆえに、本発明の配合物中に好ましく用いられるトリプトファン含有ペプチド組成物のリゾチーム加水分解物(したがって、配合物に好ましく用いられるトリプトファン含有ペプチド組成物自体)は、トリプトファン/LNAAのモル比が0.15より大きいものでありうるし、より好ましくはトリプトファン/LNAA比率が0.20より大きく、さらにより好ましくはトリプトファン/LNAA比率が0.23より大きく、さらにより好ましくはトリプトファン/LNAA比率が0.25より大きく、もっとも好ましくはトリプトファン/LNAA比率が0.30より大きい。一般に、トリプトファン/LNAAのモル比は3.0未満である。そのようなものとしてリゾチームは、トリプトファン含有ペプチドまたは組成物にとって好ましい出発原料となる。リゾチーム(EC3.2.1.17)は、細菌細胞壁中の特殊なペプチドグリカン結合を加水分解して、細胞溶解を引き起こすことができる酵素である。トリプトファンの吸収および脳機能の両方にとって、また数時間にわたって効き目があると考えられ、しかも達成できるのは、上記の比率である。
【0052】
本発明による配合物中のトリプトファン含有ペプチド組成物に好ましく使用される加水分解物は、高タンパク質含有の食品マトリックス(例えば、乳製品によって提供されるもの)に含める場合にも効果的である。これは大変驚くべきことである。というのは、タンパク質を含んでいる食品マトリックスはLNAAの含有量(loads)が高く、それゆえに、トリプトファン/LNAA比率の高い製品の効果を減少させると予想できるからである。予想外のこの現象については、普通の食品は、広範囲にわたって加水分解されたタンパク質ではなく、完全な形のものを含んでいるという説明が考えられる。好ましいトリプトファン含有ペプチド組成物のトリプトファン含有およびチロシン含有ペプチドの大部分は、分子量が500Da未満である。トリプトファン(MW=186)およびチロシン(MW=163)の分子量が非常に大きいこと、また遊離トリプトファンは非常に低いレベルしか存在しないという事実を考慮すると、こうしたペプチドの大部分はトリペプチドまたはジペプチドとなるであろうことが暗示される。
【0053】
好ましい仕方では、リゾチーム(好ましくは鶏卵リゾチーム)は工業的な方法で酵素(前)加水分解される。すなわち(鶏卵)リゾチームは、好ましくは加水分解物または富化加水分解物の形で提供される。そのような(富化)加水分解物の形で提供されると、トリプトファン含有ペプチドの胃腸での吸収が非常に促進される。本出願の別の実施態様では、鶏卵リゾチームは、存在するペプチドの50%より多くが、好ましくは60%より多くが、より好ましくは75%より多くが500Da未満の分子量を有するトリプトファン含有ペプチド集団を含む、加水分解物または富化加水分解物に変換される。好ましくはそのような(富化)加水分解物は、(乾燥物質に基づいて)1重量%より多くの遊離トリプトファンを含まない。加水分解物中に存在するトリプトファン含有ペプチドの分子量分析を、材料および方法の項目で述べられているようにして実施する。
【0054】
本発明の配合物で好ましく用いられるトリプトファン含有ペプチド組成物では、(鶏卵)リゾチーム加水分解物は、加水分解物の分画のトリプトファン含有量を増大させるために、分別するのがさらに好ましいであろう。この分画または富化加水分解物は、好ましくは、分別前の加水分解物と比べてトリプトファン/LNAA比率が増大している。更なる遊離トリプトファンによる加水分解物または富化加水分解物の富化も、本発明の一部を構成する。そのような富化加水分解物を調製するための好ましい選択肢では、リゾチームがアルギニンおよびリジンの塩基性残基を並外れて多量に含んでいるという知見を用いる。驚くべきことに、選択した酵素の温置条件の結果として、すなわち、開裂優先位置(cleavage preference)の正しいエンドプロテアーゼ(サブチリシンなど)を選択し、それと共に、トリプトファンを含んでいるがアルギニン残基もリジン残基もほとんど含まない多量のジペプチドおよびトリペプチドを生じさせる温置条件を選択すると、本発明による富化リゾチーム加水分解物を製造できる。したがって、アルギニンまたはリジン残基を含んでいるLNAA含有ペプチドは、そのような塩基性残基を持たないトリプトファン含有ペプチドから分離することができる。例えば、加水分解物のpHを4から6の値の間、より好ましくは5.0から5.5の間に調節することにより、そのような塩基性残基のないペプチドは帯電しなくなり、それゆえに親水性は減少する。こうした特徴は、例えば、アルギニン含有またはリジン含有ペプチドの大部分を選択的に除去するクロマトグラフ法または別の分離法で用いることができる。その結果、トリプトファン含有ペプチドの含有量は劇的に増大し、状況に応じて、その富化加水分解物のトリプトファン/LNAA比率が増大する。帯電したアルギニン含有またはリジン含有ペプチドは、イオンクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーまたは電気透析など周知の技法で除去することができる。関連したペプチドのクロマトグラフ分離でそのような特徴を使用することに関する実際的な予備知識は、Protein Purification Handbook(Amersham Pharmacia Biotech(現在は、GE Healthcare Bio−Sciences,(Diegem,Belgium))によって発行)などに記載されている。高いトリプトファン含有量と高いトリプトファン/LNAA比率を併せ持つ調製物を得るさらにもっと高度な精製経路では、グルタメート(GIu)およびアスパルテート(Asp)残基などの酸側基を有するアミノ酸がリゾチーム中に存在することを有利な仕方で用いる。このアプローチでは、本発明によるリゾチーム加水分解物のpHを最初に3.0に調節し、次いで陽イオン樹脂を用いてクロマトグラフィー法で分離する。このpH値では、GIuまたはAspを含んでいるペプチドはカラムを通過することになり、他のペプチドは結合することになる。pH5の緩衝液による続く溶離では、説明したように、リジンまたはアルギニン残基を含まない結合ペプチドをすべて脱着することになる。トリプトファン含有ペプチドの大部分は、この脱着分画内に含まれることになる。その後、残りの結合ペプチドは、ずっと高いpH値の緩衝液による溶離によってカラムから取り出すことができる。
【0055】
本発明の配合物に好ましく用いられるトリプトファン含有ペプチド組成物の調製では、好ましくはイオン交換クロマトグラフィーおよび/または疎水性相互作用クロマトグラフィーが使用されるが、アフィニティークロマトグラフィーおよび分子ふるいクロマトグラフィーを含む他の好適なクロマトグラフ分離法も使用できる。得られた水性分画からのトリプトファン富化ペプチドの回収は、当該技術分野において知られている方法によって行うことができる。濃縮された貯蔵性のある製品を得るために、回収には、好ましくは蒸発ステップおよび(噴霧)乾燥ステップを組み入れる。またナノ濾過工程および有機溶媒を含む抽出工程の後に蒸発/沈殿ステップが続く場合、望ましい精製を行うこともできる。有機溶媒からのトリプトファン富化ペプチドの回収は、好ましくは溶媒を蒸発させて行う。
【0056】
生理学的条件下、すなわち、酸性pHでは、リゾチームは、ペプシン、トリプシンおよびキモトリプシンをプロテアーゼとして用いたタンパク質分解性の加水分解に対して非常に強くなるという事実にもかかわらず、本発明の配合物に好ましく用いられるリゾチーム加水分解物は、そのようなあまり好ましくない酸性条件下でも得ることができる。しかし、そのような条件下では、ずっと高い酵素濃度、高い温度、および任意選択的に、追加のエンドプロテアーゼなど、比較的厳しい温置条件が必要である。アルカリ性pHでサブチリシンと一緒にリゾチームを温置することによって得られるリゾチーム加水分解物は、Ala−Trp(AW)ジペプチドが特に豊富であることが見出された。
【0057】
本発明による組成物では、好ましくは、トリプトファン含有ペプチド組成物は、トリプトファンとLNAAとの(重量)比率が少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.15、より好ましくは0.15〜1.8であるペプチド組成物を含み、そのようなものは、好ましくはリゾチーム、より好ましくは鶏卵リゾチームを加水分解して、DHが5から45の間の加水分解物を調製すること、および任意選択的に、アルギニン含有またはリジン含有ペプチドの一部を除去することを含む方法によって得る。この場合、好ましくは、トリプトファン含有ペプチド組成物は、AWまたはGNW、好ましくはAWおよびGNW(ここで、AWとGNWとのモル比は好ましくは1:2から10:1の間、より好ましくは1:2から5:1の間である)を含み、またその組成物は、急速に摂取されるグルコース(RAG)組成物(好ましくは、数平均分子量が1000から45000ダルトンの間(好ましくは5000〜40000ダルトン)であるプルラン、イソマルツロース、トレハロース、および/またはそれらの混合物のうちの1種または複数種、もっとも好ましくはイソマルツロースを含む)および緩慢に摂取されるグルコース(SAG)組成物(好ましくは、グルコース、スクロース、マルトデキストリン、デンプン、デンプン加水分解物、デキストロース、および/またはそれらの混合物のうちの1種または複数種を含む)をさらに含み、RAG組成物およびSAG組成物が、1:0.5から1:4の間、好ましくは1:0.8から1:3の間、より好ましくは1:1から1:3の間の乾燥重量比(RAG組成物:SAG組成物)で配合物中に存在し、さらに任意選択的にトリプトファン含有ペプチド:RAG組成物の重量比が1:2から1:20の間、好ましくは1:3から1:15の間、より好ましくは1:3から1:8の間である。ここで、配合物が容易に摂取されるものである場合、急速に摂取されるグルコースと緩慢に摂取されるグルコースとを合わせた総量が、容易に摂取される全配合物の5〜20(重量)%、好ましくは7〜15%であることが好ましい。ここでまた、本発明による配合物が、摂取の容易な製品において、乾燥重量で0.5〜5%(好ましくは0.8〜3%)のトリプトファン含有ペプチド組成物を含むことも好ましい。トリプトファンの吸収および脳機能の両方にとって、また数時間にわたって効き目があると考えられ、しかも達成できるのは、上記の量、比率、および範囲である。
【0058】
本発明による配合物では、トリプトファン含有ペプチド調製物は、ジペプチドまたはトリペプチドから選択される少なくとも2種類の異なるペプチドを含み、ジペプチドまたはトリペプチドから選択される2種類のペプチドは、ジペプチドおよびトリペプチドの総量の少なくとも5mol%の量だけそれぞれ存在し、全トリプトファンの30mol%より多くがペプチド結合トリプトファンとして存在し、好ましくは40mol%より多くの、より好ましくは50mol%より多くの、さらにより好ましくは60mol%より多くの、さらにより好ましくは70mol%より多くの、もっとも好ましくは80mol%より多くのペプチド結合トリプトファンが、ジペプチドまたはトリペプチドの形で存在し、好ましくは、組成物は、トリプトファン/LNAA比率が0.15より大きく、好ましくは0.15から1.8の間であり、さらにその組成物は、急速に摂取されるグルコース(RAG)組成物(好ましくは、数平均分子量が1000から45000ダルトンの間(好ましくは5000〜40000ダルトン)であるプルラン、イソマルツロース、トレハロース、および/またはそれらの混合物のうちの1種または複数種、もっとも好ましくはイソマルツロースを含む)および緩慢に摂取されるグルコース(SAG)組成物(好ましくは、グルコース、スクロース、マルトデキストリン、デンプン、デンプン加水分解物、デキストロース、および/またはそれらの混合物のうちの1種または複数種)をさらに含み、RAG組成物およびSAG組成物が、配合物中に1:0.5から1:4の間、好ましくは1:0.8から1:3の間、より好ましくは1:1から1:3の間の乾燥重量比(RAG組成物:SAG組成物)で存在し、さらに任意選択的に、トリプトファン含有ペプチド:RAG組成物の重量比が1:2から1:20の間、好ましくは1:3から1:15の間、より好ましくは1:3から1:8の間であることが好ましいであろう。ここで、配合物が容易に摂取されるものである場合、急速に摂取されるグルコースと緩慢に摂取されるグルコースとを合わせた総量が、容易に摂取される全配合物の5〜20(重量)%、好ましくは7〜15%であることが好ましい。ここでまた、本発明による配合物が、摂取の容易な製品において、乾燥重量で0.5〜5%(好ましくは0.8〜3%)のトリプトファン含有ペプチド組成物を含むことも好ましい。トリプトファンの吸収および脳機能の両方にとって、また数時間にわたって効き目があると考えられ、しかも達成できるのは、上記の量、比率、および範囲である。
【0059】
本発明はさらに、摂取の容易な製品において、乾燥重量で0.5〜5%(好ましくは0.8〜3%)のトリプトファン含有ペプチド組成物を含むことが好ましい配合物に関する。
【0060】
本発明はさらに、本明細書で開示した配合物を含む食物、ペットフード、餌、健康補助食品または栄養補助組成物に関する。そのような製品は、例えば、手軽に飲める液体の形であってよい。そのような製品は、典型的には、1〜20%、より好ましくは2〜15重量%の本発明による配合物(すなわちペプチド、RAGおよびSAGを含む)を含むことができる。
【0061】
[材料および方法]
[材料]
「Protex 6L」という商品名のサブチリシンは、Genencor(Leiden,The Netherlands)から、ペプシンはSigmaから、またトリプシン/キモトリプシンの混合物(Porcine PEM)はNovozymes(Bagsvaerd,Denmark)から入手した。リゾチームは、Delvozyme L(乾燥物質22%)としてDSM Food Specialities(Delft,The Netherlands)から入手した。
【0062】
[SDS−PAGE]
使用したリゾチーム調製物の純度は、SDS−PAGEで検査した。SDS−PAGEおよび染色に用いた材料はすべてInvitrogen(Carlsbad,CA,US)から購入した。試料は、製造業者の取扱説明書に従ってSDS緩衝液を用いて調製し、製造業者の取扱説明書に従ってMES−SDS緩衝系を用いて12%ビス−トリスゲルで分離した。染色は、Simply Blue Safe Stain(Collodial Coomassie G250)を用いて行った。加水分解の前には、リゾチームは、およそ14kDaの分子量の単一バンドとしてゲル上に現れた。
【0063】
[LC/MS/MS分析]
P4000ポンプ(Thermo Electron,(Breda,the Netherlands))に連結されたイオン・トラップ質量分析計(Thermo Electron,(Breda,the Netherlands))を用いたHPLCを使用して、本発明による方法で製造された、タンパク質の酵素加水分解物中にトリプトファン含有ペプチド(主にジペプチドおよびトリペプチド)があるかどうかを判定した。Inertsil 3 ODS 3、3μm、1502.1mmのカラム(Varian Belgium,(Belgium))を用い、それと共に溶離用の0.1%ギ酸/ミリQ水(Millipore,(Bedford,MA,USA);溶液A)および0.1%ギ酸/アセトニトリル(溶液B)の勾配を付けて、生じたペプチドを分離した。勾配は100%の溶液A(ここで、10分間維持)から始め、25分間で直線的に20%Bまで増大させ、すぐに開始条件まで進み、安定化させるためにそこで15分間維持した。使用した注入量は50マイクロリットルであり、流量は200マイクロリットル/分であり、カラム温度は55℃に維持した。注入試料のタンパク質濃度はおよそ50マイクログラム/ミリリットルであった。注目しているペプチドの同定は、保持時間、プロトン化された分子に基づいて、また注目しているペプチド専用のMS/MS(約30%の最適衝突エネルギーを使用)を用いて行う。特定のトリプトファン含有ペプチドの定量は、外標準法を用いて実施する。
テトラペプチドVVPP(M=410.2)を使用して、MS法における最適感度およびMS/MS法における最適断片化の調節を行い、5μg/mlの持続注入を行った。その結果として、MS法におけるプロトン化分子およびMS/MS法における約30%の最適衝突エネルギーが得られ、Bイオン系列およびYイオン系列が生成された。
LC/MS/MSに先だって、タンパク質の酵素加水分解物を、周囲温度および13000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液を、ミリポア水濾過装置に通した脱イオン水(ミリQ水)で1:100に希釈した。
【0064】
[加水分解度]
種々のプロトン性混合物(protolytic mixtures)と一緒に温置している間に得られる加水分解度(DH)を、迅速OPA試験で観測した(Nielsen,P.M.;Petersen,D.;Dambmann,C.Improved method for determining food protein degree of hydrolysis.Journal of Food Science 2001,66,642−646)。
【0065】
[ケルダール態窒素]
合計ケルダール態窒素をフローインジェクション分析で測定した。TKN Method Cassette 5000−040、SOFIAソフトウェア付きPentium 4のコンピュータおよびTecator 5027オートサンプラーを装備したTecator FIASTAR 5000フローインジェクションシステムを用いて、タンパク質を含んだ溶液から放出されるアンモニアの量を590nmで量った。この方法の動的範囲(0.5〜20mg N/l)に対応する量の試料を、95〜97%硫酸およびKjeltabと一緒に消化管に入れ、200℃で30分間、その後に360℃で90分間の消化プログラムを実施した。FIASTAR 5000システムに注入した後、窒素ピークを測定する。それに基づいて測定タンパク質の量を推測することができる。
【0066】
加水分解物中に存在するペプチドおよびタンパク質の分子量分布。
高圧ポンプ、10〜100マイクロリットルの試料を注入できる注入装置および214nmでカラムの流れを監視できる紫外吸光検出器を備えた自動HPLCシステムによって、プロテアーゼで処理したタンパク質試料のペプチドのサイズ分布の分析を実施した。
【0067】
この分析に使用したカラムは、20mM リン酸ナトリウム/250mM 塩化ナトリウム緩衝液(pH7.0)で平衡化されたSuperdex Peptide HR 10/300 GL(Amersham)であった。試料(典型的には50マイクロリットル)を注入した後、様々な成分が、0.5ml/分の流量で90分間にわたって緩衝液と一緒にカラムから溶離した。シトクロムC(Mw:13500Da)とアプロチニン(Mw:6510Da)とテトラグリシン(Mw:246Da)との混合物を分子量マーカーとして用いて、システムを較正した。
【0068】
以下の実施例は本発明をさらに説明するものである。
【0069】
[実施例]
[実施例1]
Protexによるリゾチームの加水分解および生成ペプチドの同定。
10%(w/w)の純粋リゾチームを含む溶液をNaOHでpH8.2に調節し、52℃まで加熱した。存在するタンパク質1g当たり25マイクロリットルのProtexを加えて、加水分解を開始させた。連続攪拌しながらpHを8.2に維持した状態で、加水分解を5.5時間続けて、目に見える沈殿物のないほとんど透明の溶液を得た。Protex活性を不活性化させる加熱ステップの後、試料をDH分析用に取り分けた。溶液のDHは、ほぼ30%であることが分かった。熱処理した溶液を10kDaフィルターで限外濾過して完全に透明な液体を得た。この透明な液体を、LC/MS分析用、存在するペプチドおよびタンパク質の分子量分布を求めるため、ならびにイオン交換クロマトグラフィー用に使用した。存在するペプチドおよびタンパク質の分子量分布がどんなものかを知るために、その透明液体に対して材料および方法の項目に記載した分子サイズ分析を実施した。得られた結果は、芳香族の側鎖を有するアミノ酸(すなわちトリプトファン、チロシンおよびフェニルアラニン)を含んだほとんどすべてのペプチドは、分子量が500kDa未満であることをはっきり示した。こうしたアミノ酸の分子量が大きいことを考慮すると、こうした小さいペプチドのほとんどがトリペプチドかまたはジペプチドであることを暗示している。
【0070】
材料および方法の項目に記載した手順に従ってLC/MS分析を実施した。トリプトファン(「W」)を含んでいるペプチドを選択することにより、ペプチドAW、GNW、WIR、NAW、WVA、VAW、AWR、SLGNWおよび少量のWWおよびSRWWを検出できた。温置後の加水分解物中の遊離トリプトファンのレベルは、存在する合計(リゾチーム)トリプトファンの1%未満であることが確かめられた。
【0071】
ジペプチドおよびトリペプチドは腸壁に存在するペプチド輸送体によって容易に吸収されるので、そのようなペプチドに存在するトリプトファン残基は、このリゾチーム加水分解物が経口摂取されると、急速に吸収されて血漿のトリプトファンのレベルが増大するであろうことはまず間違いない。
【0072】
[実施例2]
[加水分解物のトリプトファン含有量の増大]
リゾチームは、驚くほど多量のアルギニンおよびリジンの塩基性残基を含んでいる。さらに、リゾチーム分子は、かなりの数のグルタミン酸およびアスパラギン酸の酸性残基を含んでいる。高いトリプトファン/LNAA比率を特徴とする加水分解物を得るための革新的かつすっきりした精製経路を考案するのにこのデータを使用した。しかし、この精製経路の必須要件は、アルギニンまたはリジン残基あるいはグルタミン酸またはアスパラギン酸残基のどちらかを含んでいるペプチドに、非常にわずかなトリプトファン残基しか現れないことである。実施例1に示すように、ここで用いる特定の加水分解経路では、アルギニン残基を含んでいるトリプトファン含有ペプチドはほんのわずかしか生成せず、リジン残基、グルタミン酸残基またはアスパラギン酸残基を含んでいるペプチドは生成しない。
【0073】
理論によれば、グルタミン酸残基またはアスパラギン酸残基を含むペプチドとそれを含まないペプチドの間の最大荷電差はpH3近くで起こりうることが予測される。アルギニン残基またはリジン残基を含むペプチドとそれを含まないペプチドの間の最大荷電差は、pH5近くで起こりうる。
【0074】
このアプローチの選択能力を例示するため、実施例1に明記した手順に従ってリゾチーム加水分解物を準備した。次いで、加水分解物のpHを酢酸でpH3.1に調節し、およそ0.5グラムのタンパク質を、20mmクエン酸ナトリウム(pH3.1)で平衡化された15mLのカラム床体積のSP Sepharose FF(GE Healthcare,(Diegem,Belgium))カラムに入れた。カラム容積に相当するクエン酸ナトリウム緩衝液でカラムを洗浄して、グルタミン酸(glutamate)またはアスパラギン酸(aspartate)を含んでいるペプチドの大部分を除去した後、溶離緩衝液を20mmのクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.1)に変えた。カラム容積の3倍の後者の緩衝液でカラムを洗浄している間に、ある範囲のトリプトファン含有ペプチドが溶離した。LC/MS分析によれば、ジペプチドAWが多量に存在し、さらにトリペプチドGNW、NAW、WVA、VAWおよび少量のペンタペプチドSLGNWが存在した。pH5.1の様々な分画のアミノ酸分析によれば、選択プーリング(selective pooling)により、トリプトファン/LNAAの分子比が1.75であり、トリプトファン収率がほぼ30%である溶液が得られたことが示された。選択性の少ないプーリングでは、Trp/LNAAの分子比が0.4であり、トリプトファン収率が70%である溶液が得られた。その後に、カラムを、カラム容積の3倍の20mMクエン酸ナトリウム(pH7.1)で洗浄した。LC/MSのデータによれば、このステップにより、アルギニン含有ペプチドであるWIR、AWIR、そして驚くべきことにペプチドWWが溶離した。1MのNaOH、水および1Mの酢酸で最終洗浄して、次の実験のためにカラムの準備をした。
【0075】
[実施例3]
[大規模なリゾチーム加水分解]
いっそう大規模なリゾチーム加水分解手順では、幾らかの小さな変更を加えて、特に実施例1で記載した手順に従った。7.3%(w/w)の純粋リゾチームを含む溶液を、65℃まで加熱し、その後、NaOHを用いてpHをpH8.2に調節した。乾燥物質1g当たり25マイクロリットルのProtex 6Lを加えて加水分解を開始させた。連続攪拌し、pHを8.2に維持し、温度を53℃に保った状態で、加水分解を2時間にわたって続けた。その後、pH値を9.0まで増大させ、温置をさらに3.5時間続行して、いくらか沈殿した溶液を得た。その後、溶液のpHを4.5まで下げ、溶液を4℃未満まで冷却した。完全に透明な生成物を得るために、液体をZ 2000フィルター(Pall)で濾過し、その後、過剰の水および塩をナノ濾過で除去した。次いで得られた濃縮物に120℃で7秒間UHT処理を施し、蒸発させ、最後に噴霧乾燥させて、乾燥状態のリゾチーム加水分解物を得た。こうして得られた生成物はトリプトファン/LNAAのモル比が約0.19であった。
【0076】
[実施例4]
トリプトファンを有するペプチドを含んでいるペプチド組成物を、実施例3に示されているようにして調製した。得られた生成物は、ペプチドのレベルが約83%、ペプチド結合トリプトファン含有量が約5.5%、TRP/LNAA比率が約0.19である水性液体であった。前記生成物は、外観が淡黄色の粉末であり、水中に1%溶かすと、pHが約4.3の溶液となった。
【0077】
上記のペプチド調製法で、以下の表1にあるような組成の飲料を調製することができた(水を基準にした成分の乾燥重量%。残りは水であってよい)。こうした組成物を調製する方法は、以下のようであってよい:
− 水中に全成分を含んだプレミックスを調製する、
− そうしたものを10分間攪拌し、望まれる場合には、攪拌の終わり頃にpHを調節し、
− 任意選択により、高圧ホモジナイザーで均質化する。
【0078】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の異なる水溶性トリプトファン含有ペプチドを含む配合物であって、前記配合物のトリプトファン/LNAA比率が少なくとも0.15、好ましくは0.15から1.8の間であり、前記組成物が、急速に摂取されるグルコース(RAG)組成物および緩慢に摂取されるグルコース(SAG)組成物をさらに含み、前記RAG組成物および前記SAG組成物が、1:0.5から1:4の間、好ましくは1:0.8から1:3の間、より好ましくは1:1から1:3の間の乾燥重量比(RAG組成物:SAG組成物)で前記配合物中に存在する、少なくとも2種類の異なる水溶性トリプトファン含有ペプチドを含む配合物。
【請求項2】
前記トリプトファン含有ペプチド:RAG組成物の重量比が、1:2から1:20の間、好ましくは1:3から1:15の間、より好ましくは1:3から1:8の間である、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
ペプチドAWまたはGNW、好ましくはAWおよびGNWを含む、請求項1に記載の配合物。
【請求項4】
AW:GNWのモル比が、1:2から10:1の間、好ましくは1:2から5:1の間である、請求項3に記載の配合物。
【請求項5】
ジペプチドまたはトリペプチドから選択される少なくとも2種類の異なるペプチドを含む配合物であって、ジペプチドまたはトリペプチドから選択される2種類のペプチドが、ジペプチドおよびトリペプチドの総量の少なくとも5mol%の量だけそれぞれ存在し、全トリプトファンの30mol%より多くがペプチド結合トリプトファンとして存在し、好ましくは40mol%より多くの、より好ましくは50mol%より多くの、さらにより好ましくは60mol%より多くの、さらにより好ましくは70mol%より多くの、もっとも好ましくは80mol%より多くの前記ペプチド結合トリプトファンがジペプチドまたはトリペプチドの形で存在し、好ましくは、前記配合物は、トリプトファン/LNAA比率が0.15より大きく、好ましくは0.15から1.8の間であり、前記配合物は急速に摂取されるグルコース(RAG)組成物および緩慢に摂取されるグルコース(SAG)組成物をさらに含み、前記RAG組成物および前記SAG組成物が、1:0.5から1:4の間、好ましくは1:0.8から1:3の間、より好ましくは1:1から1:3の間の乾燥重量比(RAG組成物:SAG組成物)で前記配合物中に存在する、ジペプチドまたはトリペプチドから選択される少なくとも2種類の異なるペプチドを含む配合物。
【請求項6】
前記トリプトファン含有ペプチド:RAG組成物の重量比が、1:2から1:20の間、好ましくは1:3から1:15の間、より好ましくは1:3から1:8の間である、請求項5に記載の配合物。
【請求項7】
前記トリプトファン含有ペプチドが、リゾチーム、好ましくは鶏卵リゾチームを加水分解することによって得られる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項8】
前記緩慢に摂取されるグルコース(SAG)組成物が、1000から45000ダルトンの間(好ましくは5000〜40000ダルトン)の数平均分子量を有するプルラン、イソマルツロース、トレハロース、および/またはそれらの混合物のうちの1種または複数種を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項9】
前記急速に摂取されるグルコース(RAG)組成物が、グルコース、スクロース、マルトデキストリン、デンプン、デンプン加水分解物、デキストロース、および/またはそれらの混合物のうちの1種または複数種を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項10】
容易に摂取され、かつ急速に摂取されるグルコースと緩慢に摂取されるグルコースを合わせた総量が、容易に摂取される全配合物の5〜20(重量)%、好ましくは7〜15%である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項11】
摂取の容易な製品において、乾燥重量で0.5〜5%(好ましくは0.8〜3%)の前記トリプトファン含有ペプチド組成物を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の前記配合物を含む、食物、ペットフード、餌、飲料、健康補助食品または栄養補助組成物。
【請求項13】
手軽に飲める液体の形の請求項11に記載の製品。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の配合物を1〜20重量%含む、請求項12または13に記載の製品。

【公表番号】特表2011−522516(P2011−522516A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506643(P2011−506643)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054315
【国際公開番号】WO2009/132951
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】