説明

炭素−ケイ素酸化によるエンテカビルおよびその新規中間体の製造方法

本発明は、炭素-ケイ素酸化を用いる、エンテカビル(I)


およびその新規中間体の製造法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2004年6月4日に出願された米国仮特許出願第60/576899号に基づく優先権の利益を主張し、前記仮特許出願の開示は参照によりその全文が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
エンテカビル、[1S-(1α,3α,4β)]-2-アミノ-1,9-ジヒドロ-9-[4-ヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)-2-メチレンシクロペンチル]-6H-プリン-6-オン・一水和物は、現在、B型肝炎ウイルス感染症を処置するための薬物として使用されている。
【0003】
エンテカビルおよび抗ウイルス剤としてのその使用は、Zahlerらにより、米国特許第5,206,244号に記載されている。改良されたエンテカビル製造方法は、BisacchiらがWO 98/09964に、そしてPendriらがWO2004/052310およびUS20040192912に記載している。前記各特許または特許出願の開示は、参照により、その全文が本明細書に組み入れられる。
【0004】
WO 01/64221には、Colonnoらが、B型肝炎ウイルス感染症および/または重感染症を処置するために毎日投与される低用量のエンテカビルを含有する組成物を記述している。
【0005】
本明細書において発明の背景を議論するのは、本発明の状況を説明するためである。これを、言及した資料のいずれかが本願請求項のいずれかの優先日において先行技術であったことの自白であると解釈してはならない。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、添付の特許請求の範囲に記載の、エンテカビル(entecavir)の各種製造法に指向される。エンテカビルは、以下に示す構造式を持つ式Iの化合物の一水和物である。
【化1】

【0007】
本発明は、エンテカビルの製造に役立つさまざまな中間体およびそのような中間体を製造する方法も対象とする。
【0008】
発明の詳細
略号
参照しやすいように、本願では以下の略号を使用する。以下の略号は下記の意味を持つ。
AcOH:酢酸
Ac2O:無水酢酸
AP:HPLC面積百分率
Bn:ベンジル
BnBr:臭化ベンジル
BHT:2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール
CHP:クメンヒドロペルオキシド、またはα,α-ジメチルベンジルヒドロペルオキシド
CSA:(1R)-(-)-ショウノウスルホン酸
DCM:ジクロロメタン
DDQ:2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン
(-)-DIPT:D-酒石酸ジイソプロピル
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシドまたはメチルスルホキシド
EtOAc:酢酸エチル
FMSA:フルオロメタンスルホン酸
KHMDS:カリウムヘキサメチルジシラジドまたはカリウムビス(トリメチルシリル)アミド
KOtBu:カリウムtert-ブトキシド
MCPBA:meta-クロロ過安息香酸
MSA:メタンスルホン酸
NMP:1-メチル-2-ピロリジノン
PMB:para-メトキシベンジル
PMBCl:塩化para-メトキシベンジル
PPTS:4-トルエンスルホン酸ピリジニウム
PTSA:para-トルエンスルホン酸
RAP:相対面積百分率
TBAF:フッ化テトラブチルアンモニウム
TBAHS:硫酸水素テトラブチルアンモニウム
TBHP:tert-ブチルヒドロペルオキシド
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
TFMSA:トリフルオロメタンスルホン酸
Ti(OiPr)4:チタンイソプロポキシド
TIOF:オルトギ酸トリイソプロピル
【0009】
定義
以下の用語は、添付の特許請求の範囲を含めて本願においては、それぞれ下記の意味を持つものとする。本明細書において酸、塩基、酸化剤などの一般用語に言及した場合、当業者はそのような試薬を、以下の定義に記載するものから、そしてまた本明細書で後述する他の試薬から、または当技術分野の参考文献に見いだされるものから、適切に選択することができると理解すべきである。
【0010】
「無水物」は、広く、水または溶媒と反応して酸を形成する化合物を指し、例えば式R-C(=O)-O-C(=O)R'のカルボン酸無水物[式中、RおよびR'は、以下に定義するアルキルまたはアリール基から選択され、より好ましくは、RおよびR'はメチルおよびエチルから選択される]を包含する。
【0011】
「酸」は、水素を含有し水中または溶媒中で解離して水素陽イオンを生成する任意の化合物ならびにルイス酸を指し、例えば塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリハロ酢酸(例えばTFA)、臭化水素、マレイン酸、トルエンスルホン酸類およびショウノウスルホン酸類などのスルホン酸類、(R)-クロロプロピオン酸などのプロピオン酸類、N-[(R)-1-(1-ナフチル)エチル]フタルアミド酸などのフタルアミド酸類、L-酒石酸およびジベンジル-L-酒石酸などの酒石酸類、乳酸類、ショウノウ酸類、アスパラギン酸類、シトロネル酸類、BCl3、BBr3などを包含するが、これらに限定されるわけではない。したがってこの用語は、エタン酸および硫化水素などの弱酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの強有機酸を包含する。
【0012】
本明細書にいう「アルキル」は、別段の明記がない限り、1〜12個の炭素原子、より好ましくは1〜8個の炭素原子、最も好ましくは1〜4個の炭素原子を持つ、直鎖または分枝鎖アルキル基を包含する。アルキルという用語は、以下に挙げる非干渉置換基の群から選択される置換基を最大4個(より好ましくは0〜2個)持っていてもよい上述の基を包含する。低級アルキルという用語は、1〜4個の炭素原子を持つアルキル基を指す。アルキル基または他の基に関して下付き文字が用いられる場合、その下付き文字は、その基が含有しうる炭素原子の数を指す。例えば「C1-C4アルキル」という用語は炭素原子数1〜4のアルキル基を指し、これにはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、およびt-ブチルが包含される。他の基に組み込まれたアルキル部分も、別段の明記がない限り、直鎖状または分枝鎖状である。アルキルという用語が接頭語として別の基と一緒に使用される場合、これは、上に定義したアルキルが二価部分(すなわちアルキレン)として存在し、指名された他方の基への結合を作ることを意味する。したがってアルキルアリールにはベンジルなどが包含される。
【0013】
本明細書にいう「アルコキシ」は、酸素原子を介して結合している、上に定義したアルキル基、すなわち-O-アルキルを包含する。「C1-C4アルコキシ」は-O-C1-C4アルキルを指す。
【0014】
「アルカリ金属塩」は、アルカリ金属によって形成される塩、好ましくはナトリウム、リチウムまたはカリウムの塩である。
【0015】
「アリル」は、基-CH2-CH=CH2、および1個または複数個(好ましくは0個または1個)の以下に定義する非干渉置換基を持っていてもよい前述の基を指す。
【0016】
「酸化防止剤」は、酸化反応速度を減速または抑制するのに有効な化学化合物または錯体を指す。典型的酸化防止剤として、β-カロテン、ZrO2、芳香族アミン、フェノール類、BHTを含むキノン類、クエン酸、アスコルビン酸、ビタミンE、安息香酸、リン酸などを挙げることができる。
【0017】
「アリール」は、環部分に6〜12個の炭素原子を持つ単環式または二環式芳香族基、すなわちフェニルおよびナフチル、ならびにヘテロアリール基、例えば少なくとも1個のヘテロ原子と少なくとも1個の炭素原子とを含有する環を持つ4〜7員単環式、7〜11員二環式、または10〜15員三環式芳香環系を包含する。典型的単環式ヘテロアリール基には、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、フラニル、チエニル、オキサジアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニルなどがある。典型的二環式ヘテロアリール基には、インドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾオキサキソリル(benzoxaxolyl)、ベンゾチエニル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニルなどがある。「アリール」という用語は、最大4個(好ましくは0〜2個)の非干渉置換基を持っていてもよいアリール基を包含する。
【0018】
「塩基」は、本明細書で使用する場合、水酸化物もしくはアルコキシド、水素化物、または水中もしくは溶媒中でプロトンを受け取るアミンおよびその誘導体などの化合物を包含する。したがって典型的塩基には、水酸化アルカリ金属およびアルカリ金属アルコキシド(すなわちMOR。式中、Mはカリウム、リチウム、またはナトリウムなどのアルカリ金属であり、Rは、水素または上に定義したアルキル、より好ましくはRは直鎖または分枝鎖C1-5アルキルである。したがって、これには、例えば水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ペントキシド、水酸化ナトリウム、ナトリウムtert-ブトキシド、水酸化リチウムなどが含まれるが、これらに限定されるわけではない);他の水酸化物、例えば水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)または水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化バリウム(Ba(OH)2);水素化アルカリ金属(すなわちMH。式中、Mは上に定義したとおりである。したがってこれには、例えば水素化ナトリウム、水素化カリウム、および水素化リチウムが含まれるが、これらに限定されるわけではない);アルキル化ジシラジド、例えばカリウムヘキサメチルジシラジドおよびリチウムヘキサメチルジシラジドなど;炭酸塩、例えば炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)、および炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、水酸化アルキルアンモニウム、例えば水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)などがあるが、これらに限定されるわけではない。水性塩基には、水酸化金属、例えば、Li、Na、K、Mg、Caなどの第1族/第2族金属の水酸化物(例えば水性LiOH、NaOH、KOHなど)、水酸化アルキルアンモニウム、および水性炭酸塩が包含される。非水性塩基には、アミンおよびその誘導体、例えばトリアルキルアミン(例えばEt3N、ジイソプロピルエチルアミンなど)、および芳香族アミン(例えばPh-NH2、PhN(Me)Hなど);アルカリ金属アルコキシド;水素化アルカリ金;アルキル化ジシラジド;および非水性炭酸塩などが包含されるが、これらに限定されるわけではない。
【0019】
「ベンジル」は、別段の表示がない限り、基-CH2-フェニル、および当該ベンジルのメチル部分上またはフェニル部分上に非干渉置換基を持っていてもよい前述の基を包含する。
【0020】
「ハロゲン化ベンジル」は、ベンジル基のアルキル部分にハライド置換基を持つベンジル基、すなわちPh-CH2-X[式中、Xはハライドであり、Phは以下に定義するフェニル環を表す]を指す。
【0021】
「ベンジルオキシ」は、基-O-ベンジル[式中、ベンジル部分はすぐ上に説明したとおりである]を指す。
【0022】
「ジアステレオ選択的エポキシ化」は、一つのジアステレオマーエポキシドが優先的に形成される反応を指す。したがって「ジアステレオ選択的エポキシ化」という用語は、アリルアルコールのエポキシ化によって一方のエナンチオマーが優先的に得られるシャープレス(Sharpless)エポキシ化を包含する。しかし、本明細書で使用する「ジアステレオ選択的エポキシ化」という用語は、さらに広く、ジアステレオマー化合物のエポキシ化、または他の非ラセミ化合物のエポキシ化にも及ぶ。「ジアステレオ選択的エポキシ化」という用語は、参照により本明細書に組み入れられるBoniniおよびRighi「A Critical Outlook And Comparison of Enantioselective Oxidation Methodologies of Olefins(オレフィンのエナンチオ選択的酸化方法論の批判的展望と比較)」Tetrahedron,第58巻(2002)の4981〜5021頁に記載されているオレフィンのエナンチオ選択的酸化を包含するものとする。
【0023】
「ハライド」または「ハロ」は、F、Cl、Br、またはIを指す。
【0024】
「ハロゲン化メタンスルホン酸」は、1個、2個または3個のハロゲンで置換されたメタンスルホン酸、例えばモノフルオロメタンスルホン酸、ジフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、モノクロロメタンスルホン酸、ジクロロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、モノブロモメタンスルホン酸、ジブロモメタンスルホン酸、トリブロモメタンスルホン酸、モノヨードメタンスルホン酸、およびジヨードメタンスルホン酸を指す。
【0025】
「水素化物試薬」は、H-イオンを送り出す能力を持つ試薬を指す。典型的水素化物試薬には、例えば水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、Red-Al(登録商標)(水素化ビス[2-メトキシエトキシアルミニウム]ナトリウム)、水素化ホウ素亜鉛、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウム-塩化セリウム、トリエチル水素化ホウ素リチウム、水素化9-BBNリチウム、9-BBNピリジン、ボラン-スルフィド錯体、5,5-ジフェニル-2-メチル-3,4-プロパン-1,3,2-オキサザボロリジン(コーリー試薬)、水素化トリ-tert-ブトキシアルミニウムリチウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリ-sec-ブチル水素化ホウ素リチウム(L-Selectride(登録商標))、塩化ジイソブチルアルミニウム、ボラン-テトラヒドロフラン錯体などがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0026】
「ヒドロペルオキシド」は、ヒドロペルオキシド部分HO2-を含む化合物または錯体、例えば式(RpOOH)を持つ化合物[式中、Rpは水素であるか(例えば過酸化水素H2O2)、アルキル、置換アルキル、アリール、アルキルアリール、置換アリール、もしくは置換アルキルアリールまたは他の部分(ベンジル基のメチル部分が置換されていてもよい化合物を含むが、これに限定されるわけではない)であることができる]を意味する。したがってヒドロキシペルオキシドは、α,α-ジメチルベンジルヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシドなどを包含する。
【0027】
「ヒドロキシ保護基」は、本明細書に記載するアルキルまたは環状系の-OH置換基を保護するのに適していると当業者が認識するであろう基であって、例えば本明細書に組み入れられるGreeneおよびWuts「Protecting Groups in Organic Synthesis」の最新版に記載されているように、当業者に知られる脱保護条件下で除去することができる基を意味する。例えば、ヒドロキシ保護基の例には、エーテル保護基(例えばベンジルエーテル類、tert-ブチルジメチルシリルエーテルなどのシリルエーテル類)、エステル(例えば安息香酸エステル、酢酸エステル)、およびアセタール(例えばMOP)があるが、これらに限定されるわけではない。
【0028】
本明細書にいう「酒石酸のホモキラルジエステル」は、酒石酸ジエチルおよび酒石酸ジイソプロピルを含む酒石酸アルキルの単一ジアステレオマーを包含する。
【0029】
「金属触媒」は、触媒として有効な金属元素を含む化合物および錯体を指し、「遷移金属触媒」を包含するが、これに限定されるわけではない。金属触媒には、例えばチタン(IV)イソプロポキシド、パラジウム(0)触媒などのパラジウム塩、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、銅(I)トリフラート、酢酸ロジウム(II)、Rh6(CO)16などがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0030】
「非干渉置換基」は、本明細書に記載する化合物または錯体に結合される置換基であって、その特定化合物または錯体によって達成されるべき機能または目的に関して、その化合物または錯体を動作不能にすることがなく、本明細書に詳述する反応シークエンスに適合するものを指す。当業者は、達成すべき反応ステップおよび機能に応じて、そのような置換基を選択することができる。典型的非干渉置換基として、アルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、-OR、-SR、-C(=O)R、-CO2R、アリール、アルキルアリール、C3-7シクロアルキル、-NRR'2、-NRC(=O)R'、-SO(q)R"、-NRSO(q)R"、-SO(q)R"、-C(=O)NRR'などの基;および1〜4個(好ましくは1〜2個)のハロゲン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、-OR、-SR、-C(=O)R、-CO2R、アリール、アルキルアリール、C3-7シクロアルキル、-NRR'2、-NR-C(=O)R'、-SO(q)R"、-NRSO(q)R"、-SO(q)R"、-C(=O)NRR'などで置換されたアルキル基を挙げることができるが、これらに限定されるわけではない(式中、RおよびR'は、上に定義した水素、アルキル、ベンジル、またはアリールであり、R"は、上に定義したアルキル、ベンジル、またはアリールであり、qは1、2または3である)。
【0031】
「オルトホルメート誘導体」は、隣位ジオール部分からのジオキソラン類の製造に有効な試薬、または例えば5,6-ジアミノピリミジン誘導体上の隣位ジアミンからのイミダゾール環の製造に有効な試薬を意味する。オルトギ酸トリエチル、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリイソプロピル、酢酸ジエトキシメチル、および酢酸ジイソプロピルオキシメチルなどがその例であるが、これらに限定されるわけではない。
【0032】
「酸化剤」または「酸化源」は、ある分子中の官能基を低酸化状態から高酸化状態に変換する作用を持つことで当技術分野に知られている、任意の化合物または錯体を指す。例えば酸化剤として、m-CPBA、過酸化水素、AcOH中のAcOOH、ペルオキシ一硫酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、酸化ルテニウムなどを挙げることができる。酸化剤は、KF、KHCO3、NEt3、AcONaなどの一つ以上の添加物の存在下で使用することができる。当業者には理解されるとおり、添加剤は、使用する酸化剤および反応条件に応じて選択することができる。
【0033】
本明細書にいう「過酸」は、モノペルオキシフタル酸マグネシウム(MPPA)、過安息香酸類、および過酢酸を包含するが、これらに限定されるわけではない。
【0034】
「ペルオキソ水和物」は、分子状過酸化水素を含有する結晶性付加物、例えば炭酸ナトリウム・ペルオキソ水和物(市場では過炭酸ナトリウム、例えばNa2CO3・1.5H2O2と呼ばれている)、尿素・ペルオキソ水和物(CO(NH2)2・H2O2)、メラミンのペルオキソ水和物(C3H6N6・H2O2)、ピロリン酸ナトリウム・ペルオキソ水和物(Na4P2O7・2H2O2)、硫酸ナトリウム・ペルオキソ水和物・水和物(2Na2SO4・H2O2・2H2O)、炭酸カリウム・ペルオキソ水和物、炭酸ルビジウム・ペルオキソ水和物、および炭酸セシウム・ペルオキソ水和物(最後の三つは一般式M2CO3・3H2O2を持つ)などである。
【0035】
「フェニル」は、最大4個(好ましくは0〜2個)の上に定義した非干渉置換基で置換されていてもよいフェニル環を包含する。フェニルという用語が、例えばアルキルフェニルまたはアルコキシフェニルなどのように、接尾語として別の基に続けて使用される場合、これは、そのフェニル基が具体的に指名された他方の基の二価部分を介して連結されることを意味する。したがってアルキルフェニルには、ベンジル、フェニルエチルなどが包含される。
【0036】
「保護基」は、例えば、参照により本明細書に組み入れられるGreeneおよびWuts「Protecting Groups in Organic Synthesis」の最新版などに記載されているような基を包含するが、それらに限定されるわけではない。
【0037】
「還元試薬」は、ある分子中の官能基を、ある酸化状態からそれより低い酸化状態に変換する作用を持つことで当技術分野に知られている、任意の化合物または錯体を指す。典型的な還元試薬には、NaBH4、LAH、水素化ホウ素リチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシアルミニウム)ナトリウムなどがあるが、これらに限定されるわけではない。「還元試薬」という用語には、上に挙げた「水素化物試薬」が包含されるだろう。
【0038】
「非求核性強塩基」は、求核剤として作用しない非水性塩基、例えばリチウム、ナトリウムもしくはカリウムビストリメチルシリルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、水素化カリウム、水素化リチウム、または水素化ナトリウムなどを意味する。
【0039】
「3級アミン塩基」は、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)もしくはテトラメチレンジアミン(TMEDA)などのトリアルキルアミン、またはピリジンなどの含窒素複素環を意味する。
【0040】
「トリメチルシリル化試薬」は、アルコールからトリメチルシリルエーテルを製造するのに有効な試薬を意味する。クロロトリメチルシラン、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルなどはその例であるが、これらに限定されるわけではない。
【0041】
また、本明細書に記載の製造方法および特許請求の範囲において、代名詞(pronoun)「a」を、例えば「a base(塩基)」「a metal catalyst(金属触媒)」「a hydroperoxide(ヒドロペルオキシド)」などというように、試薬を指すために使用する場合、それは「at least one(少なくとも一つの)」を意味し、それゆえに適宜、単一の試薬を包含すると共に、試薬の混合物も包含すると理解すべきである。したがって、例えば「塩基」の使用を伴う反応ステップ、または例えば「水酸化カリウム、カリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ペントキシド、水酸化ナトリウム、ナトリウムtert-ブトキシド、水酸化リチウムの一つから選択される塩基」の使用を伴うステップは、塩基としての水酸化カリウムの使用、または適宜、水酸化カリウムと、選択対象になりうる群に記載されている一つまたは複数の追加塩基との混合物の使用、を包含する。反応ステップおよび条件ならびに達成すべき結果が与えられると、当業者は、適切な選択を行なうことができる。
【0042】
製造方法
化合物エンテカビルおよびその新規中間体は、以下の反応スキームに記載する典型的工程によって製造することができる。これらの反応のための典型的試薬および手順は後述または上述のとおりである。出発物質はWO2004/052310およびUS20040192912に記載の方法に従って容易に製造することができる。当業者は、溶媒、温度、圧力、望ましい基を持つ出発物質、および他の反応条件を、適宜、容易に選択することができる。
【0043】
式Iの化合物(エンテカビル)は、スキーム1に従って、式1aのアルコールから製造することができる。式1aのアルコールにおいて、Raは、アリル、フェニル、または1個、2個もしくは3個のC1-C4アルキルもしくはC1-C4アルコキシで置換されたフェニルであり(好ましくはRaはフェニルである)、各Rbは、独立して、C1-C4アルキル(好ましくはメチル)である。RaおよびRbの定義は、別段の表示がない限り、本明細書全体を通して、上記と同じである。トルエンなどの有機溶媒中、塩基および随意に触媒(例えばTBAHS)の存在下に、PMB-ハライド(例えばPMB-Cl)で処理することにより、式1aの化合物の1級アルコール部分をPMB保護基で保護して、式1bの化合物を得る。式1bの化合物は、プロト脱シリル化により、式1cの化合物に変換することができる。プロト脱シリル化ステップは、不活性溶媒(例えばDCM)中、三フッ化ホウ素-酢酸錯体、またはブレーンステッド酸(例えばTFA、MSA、FMSAもしくはテトラフルオロホウ酸)との反応によって、達成することができる。もう一つの選択肢として、DMF、DMSO、またはNMPなどの極性非プロトン性溶媒中、塩基(例えば、NaOHまたはKOHなどの水酸化物、KOtBuなどのアルコキシド)または強酸(例えばTFA)を使って、プロト脱シリル化を達成することにより、式1cの化合物を得ることもできる。式1cの化合物を、KFおよびKHCO3の存在下で、例えばH2O2などの酸化試薬を使ってさらに酸化すると、式1dのアルコールが得られる。また、このシリル基のヒドロキシル基への変換には、他の方法が役立つ場合もある。例えばFleming, I(Chemtracts-Organic Chemistry 1996, 9, 1-64)およびJones, G.R.ら(Tetrahedron, 1996, 52, 7599-7662)を参照されたい(両文献は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0044】
式1dのアルコールを、トルエンなどの有機溶媒中、KHMDSまたはNaHなどの塩基の存在下に、BnBrなどのハロゲン化ベンジルを使って、式1eのベンジルエーテルとして保護する。水の存在下に、CH2Cl2などの有機溶媒中、DDQで処理すると、式1eの化合物中のPMB基が除去されて、式1fの化合物を得ることができる。
【0045】
次に、式1fの化合物をジアステレオ選択的にエポキシ化することができる。例えば、酒石酸のホモキラルジエステル、ヒドロペルオキシド、および金属触媒(例えば遷移金属触媒)を使ってエポキシ化を行なうことにより、式1gのシクロペンタンエポキシドを得ることができる。ある態様では、ホモキラルジエステルが(-)-酒石酸ジイソプロピル[(-)-DIPT]であり、ヒドロペルオキシドがTBHPまたはCHPであり、金属触媒がチタン(IV)イソプロポキシドである。好ましくはDCMまたはトルエンなどの不活性溶媒中で反応を行なう。
【0046】
次に、式1gのエポキシドを、DMFなどの有極性非プロトン性溶媒中で式1hのプリン化合物[式中、YはCl、Br、IまたはBnOである]のアルカリ金属塩(例えばリチウム)にカップリングすることにより、式1iの化合物を得ることができる。式1hの化合物は、IgiらがEP 543095(1993)に、そしてLolliらがJ. Labelled Compounds & Radiopharmaceuticals, 41(3), 243-252(1998)に開示している方法に従って製造することができる。好ましくは、式1gのシクロペンタンエポキシドのカップリングは、2-アミノ-6-ベンジルオキシプリンのリチウム塩を使って行なわれる。Yがベンジルオキシである式1iの化合物は、酢酸エチルおよびヘキサン類などの溶媒からの結晶化によって精製することができる。
【0047】
次に、式1iの化合物の隣位ジオール部分を、アルケン部分に変換することができる。一態様として、式1iの化合物を、触媒量の酸(例えばTFAまたはPTSA)の存在下またはPPTSなどの酸触媒の存在下で、オルトホルメート誘導体(例えばオルトギ酸トリメチル)で処理することができる。その結果生じるジオキソラン類の混合物を(好ましくは粗製混合物として)、無水酢酸および随意に酢酸の混合物と共に加熱すると、式1jのメチレン化合物が得られる。もう一つの選択肢として、この反応を、BHTなどの酸化防止剤の存在下で行なうこともできる。
【0048】
1kの化合物は式1jの化合物から加水分解によって製造することができる。YがOBnである一態様では、式1jの化合物を2N HClなどの水性無機酸と共に加熱することにより、6-O-ベンジルオキシ基(および無水酢酸処理ステップ中にプリンの2-アミノ基がアセチル化されることによって形成される任意のペンダント2-アセトアミド基)を加水分解して、式1kのメチレン化合物を得ることができる。YがCl、BrまたはIであるもう一つの態様では、水性塩基(例えば水酸化物水溶液)で処理することにより、6-ハロ基を加水分解することができる。最後に、式1kの化合物中の残存ベンジルエーテル保護基を、DCMなどの不活性溶媒中、BCl3、BBr3などのルイス酸またはMSA、TFMSAなどのブレーンステッド酸による処理で除去すると、式Iの化合物が得られる。
スキーム1
【化2】

【0049】
式Iの化合物の代替的合成法をスキーム2および3に記載する。スキーム2では、式1cの化合物を、イミダゾールなどの塩基の存在下に、シリル化試薬RaSi(Rb)2-ハライド(このシリル化試薬は好ましくはフェニルジメチルクロロシランである)で処理することにより、式2aの化合物に変換することができる。CH2Cl2などの有機溶媒中、水の存在下で、DDQを使って、式2aの化合物中のPMB基の脱保護を達成することにより、式2bのアリルアルコールを得ることができ、これを、スキーム1に記載したエポキシ化により、式2cの化合物に変換することができる。式2cの化合物を、アルカリ金属塩基(例えばLiOH)の存在下に、DMFなどの有極性非プロトン性溶媒中で、式1hの化合物[式中、Yは上記と同意義である]とカップリングすると、式2dの化合物が得られ、次にこれは、脱シリル化により、式2eの化合物に変換することができる。この脱シリル化は、DMSOなどの極性非プロトン性溶媒中、KOtBuなどの塩基を使って達成することができる。
スキーム2
【化3】

【0050】
スキーム3に示すように、WO 2004/052310に式78Aおよび73の化合物として開示されている式3aの化合物から、式Iの化合物を製造することもできる。式3bの化合物は、スキーム1に記載のプロト脱シリル化によって、式3aの化合物から製造することができる。式3bの化合物はさらに、触媒量の酸(例えばTFAまたはPTSA)またはPPTSなどの酸触媒の存在下に、オルトホルメート誘導体(例えばオルトギ酸トリメチル)で処理することにより、式3cの化合物および式3dの化合物の混合物に変換することができる。その結果生じた化合物3cおよび3dの混合物を、好ましくはBHTなどの酸化防止剤の存在下に、式Rd-C(=O)-O-C(=O)-Rdを持つ酸無水物[式中、RdはC1-C4アルキル、好ましくはメチルである]および随意に式Rd-C(=O)OHを持つ酸[式中、RdはC1-C4アルキル、好ましくはメチルである]で処理することにより、次のオレフィン化ステップを達成して、式3eの化合物を得た。Rdの定義は、別段の表示がない限り、本明細書全体を通して、上記と同じである。MeOHなどの有機溶媒中、6M HClなどの水性無機酸で、式3eの化合物を加水分解すると、式3fの化合物が得られる。次に、スキーム1に記載の方法を使って、式3fの化合物を酸化することにより、RcがHである場合には式Iの化合物(エンテカビル)が得られ、RcがBnである場合には式3gの化合物が得られる。後者は、スキーム1に記載の方法を使ってOBn保護基を除去することにより、式Iの化合物(エンテカビル)に変換することができる。
スキーム3
【化4】

【0051】
同様に、式Iの化合物は、式4aの化合物[式中、XはCl、Br、またはI(ヨード)である]から、スキーム4に従って製造することもできる。式4aの化合物はWO 2004/052310に式78Bおよび73の化合物として開示されている。式4aの化合物から4fの化合物への変換は、スキーム3に記載した方法と同様である。式4gの化合物は、式4fの化合物から、スキーム1に記載の方法を使った酸化によって得ることができる。水性塩基で処理することにより、式4gの化合物を加水分解すると、RcがHである場合には式Iの化合物(エンテカビル)が得られ、RcがBnである場合には式4hの化合物が得られる。後者はさらに、スキーム1に記載したようにベンジル基を除去することにより、式Iの化合物に変換することができる。
スキーム4
【化5】

スキーム5
【化6】

【0052】
スキーム5に、式3bの化合物からエンテカビルを合成する代替的方法を記載する。式5aの化合物は、化合物3bから、スキーム1に記載の酸化方法によって得ることができる。式5dの化合物は、上述したオルトホルメートおよびオレフィン化のステップにより、式5aの化合物から製造することができる。次に、MeOHなどの有機溶媒中、6M HClなどの水性無機酸で、式5dの化合物を加水分解することにより、RcがHである場合には式Iの化合物(エンテカビル)が得られ、RcがBnである場合には式5eの化合物が得られる。後者は、上述の脱保護により、式Iの化合物(エンテカビル)に変換することができる。
【0053】
同様に、式Iの化合物は、式4bの化合物[式中、XはCl、Br、またはI(ヨード)である]から、スキーム6に従って製造することもできる。式4bの化合物から6dの化合物への変換は、スキーム5に記載した方法と同様である。MeOHなどの有機溶媒中、6M HClなどの水性無機酸で処理することにより、式6dの化合物を加水分解すると、式6eの化合物が得られる。式6eの化合物を水性塩基で処理すると、RcがHである場合には式Iの化合物(エンテカビル)が得られ、RcがBnである場合には式5eの化合物が得られる。後者はさらに、スキーム1に記載するようにベンジル基を除去することにより、式Iの化合物に変換することができる。
スキーム6
【化7】

スキーム7
【化8】

【0054】
さらに、PendriらがWO 2004/052310に報告した手順に従って製造することができる化合物7aから式Iの化合物を合成する方法を、スキーム7に記載する。化合物7aを、(i)ハロゲン化メタンスルホン酸および(ii)随意にメタンスルホン酸から選択される少なくとも一つの酸(好ましくは酸の混合物、例えばトリフルオロメタンスルホン酸/メタンスルホン酸、またはモノフルオロメタンスルホン酸/メタンスルホン酸)で処理した後、少なくとも一つの水性塩基(例えばLiOH、NaOH、KOHなど)で処理すると、主生成物として式7bの化合物が得られる(通例、収率約85%〜約95%)。式7cの化合物(化合物7bの二量体)も生成して、総収量の約5%〜約15%(例えば9.5%および14.5%)を占めうる。
【0055】
ハロゲン化メタンスルホン酸を単独で使用する場合、その量は、使用する化合物7a 1モル当量に対して、約20モル当量未満であることができる。例えば前記ハロゲン化メタンスルホン酸の量は、使用する化合物7a 1モル当量に対して、約10モル当量未満(例えば6当量のモノフルオロメタンスルホン酸)であることができる。酸の混合物、例えばメタンスルホン酸/トリフルメタンスルホン酸を使用する場合、使用する化合物7a 1モル当量に対して、前記メタンスルホン酸の量は約10モル当量未満であることができ、前記トリフルオロメタンスルホン酸は約10モル当量未満であることができる。例えば、使用する化合物7a 1モル当量に対して、前記メタンスルホン酸の量は約7モル当量未満(例えば約1〜約7当量、または約1.5〜約6.7当量、または約2当量)であることができ、前記トリフルオロメタンスルホン酸は約5モル当量未満(例えば約1〜約5当量、または約2.5〜約3.5当量)であることができる。
【0056】
化合物7bまたは化合物7bおよび7cの混合物を酸化すると、式Iの化合物が得られる。この酸化ステップは、少なくとも一つの酸化剤、例えばペルオキソ水和物などを使って達成することができる。ペルオキソ水和物は、分子状過酸化水素を含有する結晶性付加物、例えば炭酸ナトリウム・ペルオキソ水和物(市場では過炭酸ナトリウム、例えばNa2CO3・1.5H2O2と呼ばれている)、尿素・ペルオキソ水和物(CO(NH2)2・H2O2)、メラミンのペルオキソ水和物(C3H6N6・H2O2)、ピロリン酸ナトリウム・ペルオキソ水和物(Na4P2O7・2H2O2)、硫酸ナトリウム・ペルオキソ水和物・水和物(2Na2SO4・H2O2・2H2O)、炭酸カリウム・ペルオキソ水和物、炭酸ルビジウム・ペルオキソ水和物、および炭酸セシウム・ペルオキソ水和物(最後の三つは一般式M2CO3・3H2O2を持つ)などである。この酸化ステップにとって好ましいペルオキソ水和物は炭酸ナトリウム・ペルオキソ水和物である。
スキーム8
【化9】

【0057】
もう一つの選択肢として、化合物7aを、(i)ハロゲン化メタンスルホン酸および(ii)随意にメタンスルホン酸から選択される少なくとも一つの酸で上述のように処理した後、少なくとも一つの非水性塩基(例えばNReRfRg[式中、Re、RfおよびRgは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリールであるか、前記RgおよびRfは、それらが結合しているNと共に合して、複素環を形成してもよい])で処理することにより、主生成物として式7cの化合物を得ることができる(通例、収率約80%〜約95%)。塩基の実例には、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)もしくはテトラメチレンジアミン(TMEDA)などの3級アミン塩基、またはピリジンなどの含窒素複素環がある。式8aの化合物も、20%までの収率(例えば5%、10%または15%)で形成されうる。さらに、式7cの化合物または化合物7cおよび8aの混合物を酸化すると、式Iの化合物が得られる。この酸化ステップは、少なくとも一つの酸化剤、例えばペルオキソ水和物(例えば炭酸ナトリウム・ペルオキソ水和物)を使って、上述のように達成することができる。
【0058】
以下の実施例により、本発明をさらに例示するが、決して、これらの実施例が本発明の範囲を限定すると解釈してはならない。
【実施例1】
【0059】
化合物1b'の製造:
【化10】

化合物1a'(6.02g,17.1mmol,1.00当量)をトルエン(6.70mL)に溶解した。PMB-Cl(塩化para-メトキシベンジル)(7.00mL,51.2mmol,3.00当量)を加えた後、TBAHS(硫酸水素テトラブチルアンモニウム)(0.577g,1.71mmol,0.0100当量)および50%NaOH(6.70mL)を加えた。反応を室温で4時間撹拌した。反応混合物を水(23mL)およびトルエン(50mL)と混合し、相を分離した。有機層を水(23mL)で再び洗浄し、相を分離した。合わせた水層をトルエン(50mL)で抽出し、合わせた有機層をロータリーエバポレーションによって濃縮した。120グラム・シリカカラムおよび2-15%酢酸エチル/ヘキサン類の移動相勾配を使って、粗製物のカラムクロマトグラフィーを行なった。所望の画分を合わせ、濃縮することにより、式1b'の化合物(6.17g)を黄色油状物として76%の収率で得た。1H NMR(360MHz,CDCl3)δ7.54-7.52(m,2H),7.35-7.22(m,9H),6.92-6.87(m,3H),5.71(s,1H),4.49-4.35(m,4H),4.06-4.04(m,2H),3.84(s,3H),3.41-3.37(m,1H),3.30-3.28(m,1H),2.92(s,1H),2.57-2.56(m,1H),2.33-2.31(m,1H),1.64-1.59(m,1H),0.27(s,6H);13C NMR(90MHz,CDCl3)δ159.5,142.8,139.0,138.9,134.3,131.0,129.8,129.7,129.3,129.0,128.7,128.7,128.2,128.1,114.2,114.1,77.6,73.4,72.1,68.1,55.7,48.4,33.8,25.6,-4.2,-4.2;MS(注入)=473(M+H+);HRMS m/e 計算値(C30H37O3Siとして)(M+H+):473.2512,実測値473.2501。
【実施例2】
【0060】
化合物1c'の製造:
【化11】

化合物1b'(6.17g,13.1mmol,1.00当量)をDMSO(62mL)に溶解し、カリウムt-ブトキシド(5.00g,44.0mmol,3.37当量)を加えて濃厚なスラリーを形成させた。反応を室温で終夜撹拌したところ、出発物質はHPLCで検出されなくなった。反応混合物を分液漏斗に移し、酢酸エチル(124mL)および水(124mL)を投入した。相を分離し、水層を酢酸エチルで2回(124mL×2)抽出した。合わせた有機層を濃縮して残渣を得た。その残渣を120グラム・シリカカラムおよび10-50%酢酸エチル/ヘキサン類の移動相勾配を用いるカラムクロマトグラフィーによって精製した。所望の画分を合わせ、濃縮することにより、式1c'の化合物(3.50g)を黄色油状物として65%の収率で得た。1H NMR(360MHz,CDCl3)δ7.25-7.15(m,5H),7.10(d,J=8.6Hz,2H),6.75(d,J=8.6Hz,2H),5.63(s,1H),4.40(q,J=11.9Hz,2H),4.26(q,J=11.3Hz,2H),3.85(s,2H),3.72-3.70(m,1H),3.68(s,3H),3.42(bs,1H),3.15-3.10(m,1H),2.93(s,1H),2.36-2.33(m,1H),2.09-2.05(m,1H),1.21(q,J=9.3Hz,1H),0.00(s,3H),-0.05(s,3H);13C NMR(90MHz,CDCl3)δ160.4,142.0,138.7,131.9,131.5,130.6,129.7,129.2,129.1,114.9,76.1,74.8,73.0,68.5,56.5,49.5,34.3,32.2,0.0,-1.6;MS(注入)=413(M+H+);HRMS m/e 計算値(C24H33O4Siとして)(M+H+):413.2148,実測値413.2163。
【実施例3】
【0061】
化合物1dの製造:
【化12】

式1c'の化合物(1.00g,2.42mmol,1.00当量)をメタノール(25mL)に溶解し、65℃に加熱した。KHCO3(0.726g,7.26mmol,3.00当量)を水(3.4mL)に溶解して、反応に加えた。KF(0.281g,4.84mmol,2.00当量)を水(0.8mL)に溶解して、反応に加えた。H2O2の30重量%溶液(0.840mL,7.26mmol,3.00当量)を少しずつ30分かけて加えた。反応を68℃で4.5時間撹拌した時点で、出発物質はHPLCによって検出されなくなっていた。反応を10℃に冷却した。NaHSO3(1.10g)を水(2mL)に溶解して反応混合物に加え、それを室温まで温めて、過酸化物試験片試験で過酸化物がもはや明白でなくなるまで撹拌した。その混合物をセライトパッドに通し、そのセライトパッドを酢酸エチル(25mL×2)で洗浄した。有機層を水(20mL)および10%食塩水(10mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、濃縮した。式1dの化合物を粗製黄色油状物(0.860グラム,定量的収率)として、これ以上精製することなく、次の反応に使用した。1H NMR(360MHz,CDCl3)δ7.29-7.20(m,5H),7.15(d,J=8.7Hz,2H),6.79(d,J=8.9Hz,2H),5.59(s,1H),4.41(q,J=12.1Hz,2H),4.32(q,J=11.4Hz,2H),3.89(s,2H),3.73(s,3H),3.63(dd,J=9.1,4.6Hz,1H),3.30(t,J=8.8Hz,1H),2.79-2.77(m,1H),2.69(dd,J=22.8,10.8Hz,1H),2.22(dd,J=19.2,4.3Hz,1H),2.05(bs,1H);13C NMR(90MHz,CDCl3)δ159.6,139.5,138.9,130.7,129.8,128.8,128.1,128.0,127.5,114.2,77.6,73.7,72.2,71.5,67.9,55.7,55.2,40.2;MS(注入)=355(M+H+);HRMS m/e 計算値(C22H27O4として)(M+H+):355.1909,実測値355.1917。
【実施例4】
【0062】
化合物1eの製造:
【化13】

式1dの化合物(0.880g,2.50mmol,1.00当量)をトルエン(4.4mL)に溶解し、6℃に冷却した。KHMDS(カリウムビス(トリメチルシリル)アミド)のトルエン溶液(0.75M,6.70mL,5.00mmol,2.00当量)を滴下した後、臭化ベンジル(0.330mL,2.75mmol,1.10当量)を加えた。反応を室温まで温めた。次に、反応が止まったようにみえたので、反応を10℃まで冷却して、KHMDS(2.00mL)を(2時間ごとに)3回投入した。反応を終夜撹拌し、10℃に冷却し、トルエン(4.4mL)、KHMDS(2.00mL)、およびBnBr(0.0300mL)を追加投入した。反応をさらに42時間撹拌した時点で、3.6RAPの化合物1dが残っていた。反応を見掛けのpHが7になるまで1M HClでクエンチした。反応混合物をトルエン(20mL)および水(10mL)と共に分液漏斗に移した。相を分離し、水相をトルエン(20mL)で逆抽出した。合わせた有機分を濃縮して残渣を得た。120グラム・シリカカラムおよび1-75%酢酸エチル/ヘキサン類の移動相勾配を使って粗製物のカラムクロマトグラフィーを行なった。所望の画分を合わせ、濃縮することにより、式1eの化合物(0.600g)を黄色油状物として、2段階で55%の収率で得た。1H NMR(360MHz,CDCl3)δ7.24-7.15(m,10H),7.13(d,J=8.7Hz,2H),6.75(d,J=8.6Hz,2H),5.60(s,1H),4.43(s,2H),4.37(q,J=6.7Hz,2H),4.33-4.24(m,2H),4.12-4.09(m,1H),3.93(s,2H),3.69(s,3H),3.48(dd,J=9.5,4.5Hz,1H),3.30(dd,J=9.5,6.7Hz,1H),2.93(s,1H),2.60(dd,J=17.2,10.6Hz,1H),2.30(d,J=17.0,1H);13C NMR(90MHz,CDCl3)δ159.5,140.0,139.2,138.9,130.9,129.8,128.7,128.7,128.1,128.0,127.9,127.8,127.5,114.1,82.4,73.5,72.0,71.1,70.2,68.0,55.7,53.2,38.5;MS(注入)=445(M+H+);HRMS m/e 計算値(C29H33O4として)(M+H+):445.2379,実測値445.2389。
【実施例5】
【0063】
化合物1fの製造:
【化14】

式1eの化合物(0.500g,1.13mmol,1.00当量)をCH2Cl2(11.7mL)に溶解し、水(0.93mL)を加えた。反応混合物を2℃に冷却し、DDQ(2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン)(0.383g,1.69mmol,1.50当量)を加えた。溶液は黒色になった。その混合物を0〜2℃で2時間撹拌した時点で、HPLCで1.3RAPの出発物質が残っていた。5%NaHCO3水溶液(10mL)を加えた後、水(10mL)を加えた。相を分離した。水層をCH2Cl2で3回(25mL×3)抽出した。合わせた有機相を水(20mL)で洗浄し、濃縮して残渣を得た。120グラム・シリカカラムおよび10-100%酢酸エチル/ヘキサン類の移動相勾配を使って粗製物のカラムクロマトグラフィーを行なった。所望の画分を合わせ、濃縮することにより、式1fの化合物(0.250g)を黄色油状物として69%の収率で得た。1H NMR(360MHz,CDCl3)δ7.37-7.25(m,10H),5.62(s,1H),4.53(s,2H),4.22(q,J=11.8Hz,2H),4.14(s,2H),4.02-3.97(m,1H),3.61(dd,J=9.0,5.0Hz,1H),3.46(dd,J=16.8,8.4Hz,1H),3.06(s,1H),2.64(dd,J=16.8,7.0Hz,1H),2.45(bs,1H);2.37(dd,J=17.1,1.9Hz,1H);13C NMR(90MHz,CDCl3)δ143.6,138.8,137.9,128.9,128.8,128.3,128.3,128.1,128.0,126.1,82.3,73.9,71.6,71.4,61.5,52.9,38.0;MS(注入)=325(M+H+);HRMS m/e 計算値(C21H25O3として)(M+H+):325.1804,実測値325.1808。
【実施例6】
【0064】
化合物2a'の製造:
【化15】

式1c'の化合物(2.00g,4.80mmol,1.00当量)をDMF(74mL)に溶解し、イミダゾール(1.97g,29.0mmol,6.00当量)を加えた。その混合物を0〜5℃に冷却した後、温度を0〜5℃に保ちながら、Ph(CH3)2SiCl(3.40mL,20.2mmol,4.20当量)を滴下した。反応混合物を25℃で42時間撹拌した。反応混合物を水(50mL)およびジエチルエーテル(50mL)で希釈した。相を分離し、水相をジエチルエーテル(50mL)で逆抽出した。合わせた有機相をロータリーエバポレーター(rotavap)で濃縮して明黄色油状物とし、カラムクロマトグラフィー(0-75%EtOAc/ヘキサン類)で精製することにより、1.95グラム(収率74%)の化合物2a'を明黄色油状物として得た(AP=93.7%)。1H NMR(360MHz,CD2Cl2)δ7.19(d,2H),6.98-6.91(m,8H),6.86(d,2H),6.52(d,2H),5.32(s,1H),4.04(s,2H),4.02(q,2H),3.67(q,2H),3.42(s,3H),3.08-3.03(m,2H),2.99(s,1H),2.57(s,1H),2.14-2.12(m,1H),1.90-1.87(m,1H);0.99-0.96(m,2H),-0.04(s,6H),-0.29(s,6H);13C NMR(90MHz,CD2Cl2)δ165.5,148.5,145.7,144.6,138.8,135.3,135.2,134.8,134.2,133.6,133.2,119.5,79.2,78.8,77.6,73.4,60.5,38.2,37.5,33.5,28.5,19.3,5.9,3.9。
【実施例7】
【0065】
化合物2b'の製造:
【化16】

式2a'の化合物(4.8g)をCH2Cl2(110mL)および水(8.9mL)に溶解し、その溶液を0〜5℃に冷却した。DDQ(30.3g,1.50当量)を一度に加えた。反応混合物は青色の溶液になった。HPLCによって反応が完了したとみなされるまで(通例2時間)、反応を0〜5℃で撹拌した。黄色懸濁液である反応混合物を5%NaHCO3水溶液(80mL)および水(90mL)で希釈した。相を分離した。水相をCH2Cl2(50mL×2)で抽出した。合わせた有機相を水(50mL)で洗浄し、エバポレートして残渣を得た。その残渣をシリカゲルカラム(150g)にかけ、それを10%EtOAc/ヘキサン類で溶出することにより、式2b'の化合物を無色の油状物として得た(2.6g,収率69%,AP96.8%)。
【実施例8】
【0066】
化合物2c'の製造:
【化17】

乾燥容器に、4Åモレキュラーシーブ(13.0g)およびトルエン(13mL)を投入し、そのスラリーをN2下で-35〜-40℃に冷却した。(-)-DIPT(0.40g,0.28当量)のトルエン(2mL)溶液を-35〜-40℃で加えた。スラリーを-35〜-45℃で30分間撹拌した。その酒石酸エステル溶液にチタン(IV)イソプロポキシド(0.43mL,0.24当量)を加え、-35〜-45℃で30分間撹拌した。次に、化合物2b'(2.6g,1.0当量)のトルエン(13mL)溶液を、温度を-35〜-40℃に保ちながら、5分かけて加えた。その結果生じた褐色スラリーを-35〜-40℃で1〜1.5時間撹拌した。tert-ブチルヒドロペルオキシド(5.5Mデカン溶液,2.2mL,2.0当量)を反応混合物に-35〜-45℃で10分かけて加えた。HPLCによってエポキシ化が完了したとみなされるまで(通例3〜5時間)、反応を-35〜-45℃で撹拌した。反応が完了したら、チタン-酒石酸エステル触媒をクエンチし、(-)-DIPTを加水分解するために、塩化ナトリウムで飽和させた30%NaOH(0.9mL)を加えた。亜硫酸水素ナトリウム(1.4g)の水(3.2mL)溶液を、温度を10〜30℃に保ちながら、10分かけて加えた。これを、過酸化物試験片で過酸化物が陰性になるまで、1〜3時間撹拌した。セライト(3.2g)を投入し、反応混合物を濾過した。濾過ケーキをトルエン(20mL×2)で洗浄した。濾液を5%NaHCO3(20mL)および10%NaCl(20mL)で洗浄した。得られた溶液をエバポレートすることにより、式2c'の化合物を黄色油状物として得た(2.1g,収率78%,AP89%)。1H NMR(360MHz,CD2Cl2)δ7.25-7.21(m,2H),7.04-6.98(m,8H),5.32(s,1H),4.13(s,2H),3.83(q,2H),3.18-3.04(m,2H),2.59(s,1H),2.20-2.16(m,1H),1.95-1.91(m,1H);0.95-0.92(m,2H),-0.01(s,6H),-0.25(s,6H);13C NMR(90MHz,CD2Cl2)δ151.8,145.7,144.4,138.8,135.2,134.2,133.7,133.5,132.2,79.8,78.9,66.2,53.8,38.1,37.5,33.7,28.5,19.3,5.8,3.8。
【実施例9】
【0067】
化合物2d'の製造:
【化18】

DMF(10mL)中の化合物2c'(2.1g)および化合物1h'(1.30g,1.15当量)の混合物に、LiOH(0.10g,0.87当量)を投入した。その結果生じた溶液を、HPLCによって反応が完了したとみなされるまで(通例4時間)、90℃で加熱した。反応を室温まで冷却し、EtOAc(30mL)および水(30mL)で希釈した。1M HCl(2.4mL)を加えることにより、pHを12.0から5.1に調節した。次に反応混合物をEtOAc(35mL×2)で抽出した。合わせた有機相を食塩水(30mL×2)で洗浄し、エバポレートして残渣を得た。その粗製油状物をカラムクロマトグラフィーで精製し、20→50%EtOAc/ヘキサン類で溶出することにより、式2d'の化合物を白色固体として得た(0.74g,収率23.8%,AP96.9%)。1H NMR(360MHz,CDCl3)δ7.55-7.50(m,4H),7.36-7.22(m,11H),5.57(q,2H),4.90(s,2H),4.41(s,2H),4.40-4.36(m,1H),3.55(dd,2H),3.38(dd,2H),2.70(q,1H),2.38-2.36(m,1H),2.14-2.10(m,1H),1.52-1.48(m,1H),0.36(s,3H),0.35(s,1H),0.12(s,3H),0.11(s,3H);13C NMR(90MHz,CDCl3)δ161.4,158.1,154.0,139.5,137.3,136.2,132.9,129.5,128.5,128.3,127.9,127.8,116.0,82.3,73.5,69.3,68.3,65.1,62.7,48.4,27.1,23.7,0.7,0.6,-1.2,-1.2;HRMS m/e 計算値(C36H45N5O5Si2として)(M+H+):684.3038,実測値684.3031。
【実施例10】
【0068】
化合物2e'の製造:
【化19】

条件(1):式2d'の化合物(20mg,0.029mmol,1.0当量)をTHF(0.200mL)に溶解し、0℃に冷却した。フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)(0.030mL,0.029mmol,1.0M THF溶液,1.0当量)を加え、反応を室温まで温めた。2時間後に反応は停止したようだった。次に反応を0℃に冷却し、TBAF(0.030mL,0.029mmol,1.0M THF溶液,1.0当量)を追加した。これを転化率95%が達成されるまで3回繰り返した。その物質をピペットカラムに移し、25%酢酸エチル/ヘキサン類から100%酢酸エチルへの勾配および10-30%メタノール/酢酸を使って溶出させた。式2e'の生成物には、その二量体が混入していた。
【0069】
条件(2):CH2Cl2およびCH3OH中のCSAを使って反応を繰り返したところ、式2e'の生成物は、その二量体を3%含んでいた。
【0070】
条件(3):THF中の10N NaOHによる塩基性条件を使って反応を繰り返したところ、式2e'の生成物は二量体を0.65%しか含んでいなかったが、反応は転化率91%で停止した。精製後に、生成物は71APで単離された。
【0071】
条件(4):カリウムt-ブトキシド(22mg,0.18mmol,8.0当量)およびDMSO(0.15mL)を使って反応を繰り返したところ、1時間後に、明らかな出発物質はなくなっていた。水(0.4mL)を約1mgのシードと共に加え、反応混合物を0℃に冷却して30分間撹拌した。そのスラリーを濾過し、水(2mL)で洗浄し、40℃で乾燥することにより、式2e'の化合物を橙色固体として58%の収率で得た。
【実施例11】
【0072】
化合物2e'の代替的製造法:
【化20】

式3a'の化合物(PCT特許出願PCT/US03/39554および米国特許出願第10/734012号に式78Aの化合物として開示されているもの)(10.0g,16.4mmol,1.00当量)をDMSO(100mL)に溶解して明褐色溶液とし、それを氷浴で13℃に冷却した。カリウムtert-ブトキシド(14.4g,131mmol,8.00当量)を加えて濃厚な明褐色スラリーとし、それを室温まで温めた。2時間後に、HPLCでは0.1RAPの出発物質が残っていた。反応混合物を水(600mL)に13〜15℃で少しずつ加えた。6M HClを使ってpHを8.2に調節し、スラリーを濾過し、水(100mL×2)で洗浄した。その物質を40℃で60時間乾燥した。数回の小規模精製を試みた。最善の結果は、明褐色固体(3.90g)を酢酸エチル(20mL)中にスラリー化し、濾過し、濾過ケーキを酢酸エチル(20mL×2)で洗浄することによって得られた。異なるバッチを合わせることで、式2e'の化合物(合計6.48g)が、91.6〜96.0APの範囲の不純物プロファイルを持つオフホワイトの固体として得られた(収率72%)。1H NMR(360MHz,CDCl3)δ7.50(s,1H),7.32(d,J=8.2Hz,2H),7.21-7.07(m,8H),5.39(q,2H),4.93(s,1H),4.39(m,1H),4.28(q,2H),3.41(dd,J=9.3,5.7Hz,1H),3.33-3.31(m,1H),3.18(q,2H),2.43-2.40(m,1H),2.33-2.28(m,1H);2.17-2.11(m,1H),1.37-1.31(m,1H),0.00(s,3H),0.00(s,3H);13C NMR(90MHz,CDCl3)δ162.9,159.0,139.8,138.4,137.1,129.8,129.7,129.7,129.5,129.3,129.3,116.9,84.1,74.9,71.5,69.9,65.5,63.1,49.9,28.9,27.0,-0.0,-1.2;HRMS m/e 計算値(C28H36N5O5Siとして)(M+H+):550.2486,実測値550.2477;mp=163.2。
【実施例12】
【0073】
化合物3f'の製造:
【化21】

式2e'の化合物(1.00g,1.80mmol,1.00当量)をトルエン(6mL)中にスラリー化した。TFA(トリフルオロ酢酸)(0.110mL,1.40mmol,0.750当量)を加えた後、TIOF(オルトギ酸トリイソプロピル)(1.22mL,5.40mmol,3.00当量)を加えた。その結果生じた褐色溶液を室温で1時間撹拌した時点で、HPLCで0.54APの化合物2e'が残っていた。BHT(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)(1.00g)を加えた後、無水酢酸(2.00mL)および酢酸(0.210mL,3.60mmol,2.00当量)を加えた。反応混合物を116℃に温め、留出物(4mL)を集めた。トルエン(2mL)を投入し、反応を14時間続け、室温に冷却した。メタノール(6.0mL)を別個の丸底フラスコに投入し、14℃に冷却した。そのメタノールに6M HCl(2.7mL)を加えた。反応混合物を滴下し、次に反応フラスコのメタノール洗液(2.0mL)を加えた。反応混合物を25℃に温めた後、68℃に加熱した。5時間後、HPLCでは変化が検出されなかった。反応を25℃に冷却し、メタノール(2mL)を使って分液漏斗に移した。反応混合物をヘプタンで合計6回(6mL×4、10mL×2)洗浄したところ、BHTが0.33APに低下した。その混合物を酢酸エチルで2回(20mL×2)抽出した後、合わせた有機相をNa2SO4で乾燥し、濃縮した。120グラム・シリカカラムおよび40-100%酢酸エチル・ヘキサン類の移動相勾配と、それに続く10%メタノール/酢酸エチルとを使って、粗製物のカラムクロマトグラフィーを行なった。所望の画分を合わせ、濃縮することにより、式3f'の化合物(0.160g,収率20%)を得たが、LC-MSによって化合物3f'の二量体と同定された不純物が存在した。この物質を25:75 ヘキサン:酢酸エチル中に再びスラリー化して濾過したところ、HPLCで二量体が痕跡量しか存在しない白色固体が得られた。1H NMR(360MHz,CD3OD)δ7.80(s,1H),7.34-7.27(m,5H),5.31-5.27(m,1H),5.30(s,1H),5.02(s,1H),4.57(s,2H),3.78(dd,J=9.3,4.8Hz,2H),3.71(dd,J=9.3,4.8Hz,1H),2.84(s,1H),2.17-2.13(m,2H);1.39-1.37(m,1H),-0.00(s,6H);13C NMR(90MHz,CD3OD)δ159.4,155.2,153.9,153.1,139.6,138.6,129.5,129.0,128.8,117.4,112.1,74.3,73.6,59.7,45.8,34.9,28.3,-1.31;MS(LC-MS)=426(M+H+);HRMS m/e 計算値(C21H28N5O3Siとして)(M+H+):426.1961,実測値426.1963;mp=193.3℃。
【実施例13】
【0074】
化合物5a'の製造:
【化22】

式2e'の化合物(2.00g,3.64mmol,1.00当量)をメタノール(50mL)に溶解し、65℃に温めた。KHCO3(1.09g,10.9mmol,3.00当量)を水(5.0mL)に溶解し、反応に加えた。KF(0.423g,7.28mmol,2.00当量)を水(1.2mL)に溶解し、反応に加えた。H2O2の30重量%溶液(1.20mL,10.9mmol,3.00当量)を少しずつ30分かけて加えた。反応を68℃で3時間撹拌した時点で、H2O2(1.20mL,10.9mmol,3.00当量)を追加した。4時間後にH2O2(0.600mL,5.45mmol,1.50当量)を加えた。反応を25℃に冷却し、6M HClでpHを7に調節した。NaHSO3(2.80g)を水(6mL)に溶解し、反応混合物に10℃で加えた後、室温に温めて、過酸化物試験片試験で過酸化物がもはや明白でなくなるまで、撹拌した。その混合物を濃縮してメタノールを除去した。水(20mL)および酢酸エチル(100mL)を投入し、相を分離した。水層を酢酸エチルで2回(100mL×2)抽出し、合わせた有機分を濃縮した。その結果生じた固体を酢酸エチル(20mL)中にスラリー化し、濾過した。濾過ケーキを酢酸エチル(50mL)および水(30mL)で洗浄した。濾過ケーキを40℃で乾燥することにより、式5a'の化合物を白色固体として得て(1.78グラム,定量的収率)、それをこれ以上精製することなく、次の反応に使用した。1H NMR(360MHz,DMSO-d6)δ7.62(s,1H),7.27(d,J=7Hz,2H),7.18-7.02(m,8H),6.33(s,2H),5.26(t,J=12.7Hz,2H),4.87(s,1H),4.77-4.67(m,2H),4.59(d,J=5.2Hz,1H),4.28(s,2H),3.88(q,J=5.9Hz,1H),3.59-3.46(m,2H),3.08-3.06(m,1H),2.81(dd,J=11.5,4.9Hz,1H),2.64 (q,J=8.9Hz,1H),2.07(q,J=6.6Hz,1H),1.66(t,J=11.6Hz,1H);13C NMR(90MHz,DMSO-d6)δ160.5,159.5,155.3,140.1,139.0,137.0,128.9,128.8,128.6,128.4,127.9,127.7,114.1,81.3,72.4,69.9,68.9,67.2,62.5,61.8,56.5,37.5;MS(注入)=492(M+H+);HRMS m/e 計算値(C26H30N5O5として)(M+H+):492.2247,実測値492.2262。
【実施例14】
【0075】
化合物5eの製造:
【化23】

式5a'の化合物(1.00g,2.04mmol,1.00当量)をトルエン(6mL)およびCH2Cl2(2mL)中にスラリー化した。TFA(トリフルオロ酢酸)(0.120mL,1.50mmol,0.750当量)を加えた後、TIOF(オルトギ酸トリイソプロピル)(1.36mL,6.12mmol,3.00当量)を加えた。その結果生じた褐色溶液を室温で1時間撹拌した時点で、HPLCで0.22APの化合物5a'が残っていた。BHT(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)(1.00g)を加えた後、無水酢酸(2.00mL)および酢酸(0.230mL,3.60mmol,2.00当量)を加えた。反応混合物を116℃に温め、留出物(4mL)を集めた。反応を14時間続け、室温に冷却した。メタノール(6.0mL)を別個の丸底フラスコに投入し、14℃に冷却した。そのメタノールに6M HCl(2.7mL)を加えた。反応混合物を滴下し、次に反応フラスコのメタノール洗液(2.0mL)を加えた。反応混合物を25℃に温めた後、68℃に加熱した。5時間後に、反応を25℃に冷却し、メタノール(2mL)を使って分液漏斗に移した。反応混合物を90%酢酸エチル/ヘキサン類で2回(30mL×2)洗浄し、濃縮して残渣を得た。メタノール(9mL)を加えた後、pHを8に調節するために4N NaOHを加えた。茶色のスラリーが直ちに形成され、これを30分間、0℃に冷却し、濾過した。濾過ケーキを水(3mL×3)およびヘプタン(10mL×2)で洗浄した。その粗製ケーキをヘプタン類/酢酸エチル(75:25)中に再びスラリー化したが、不純物プロファイルの改善は起こらなかった。先の結晶化で得た母液から固形物が析出し、それを、50-100%酢酸エチル/ヘキサン類の勾配と、それに続く10-30%酢酸エチル/メタノールとを使って、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけることにより、式5eの化合物0.210gを得た。再スラリーから単離した固形物についても、カラムクロマトグラフィーを繰り返して、さらに0.120gの式5eの化合物を得た(収率44%)。1H NMR(360MHz,CD3OD)δ7.56(s,1H),7.27-7.18(m,5H),5.44-5.39(m,1H),5.14(s,1H),4.70(s,1H),4.48(q,2H),4.30-4.28(m,1H),3.62(d,J=5.5Hz,2H),2.69(s,1H),2.31-2.24(m,1H);2.14-2.08(m,1H);13C NMR(90MHz,CD3OD)δ159.8,155.6,153.8,152.2,140.0,138.8,129.9,129.3,129.2,117.7,112.0,74.7,73.8,73.1,57.4,53.6,41.3;MS(注入)=368(M+H+);HRMS m/e 計算値(C19H23N5O3として)(M+H+):368.1723,実測値368.1722;mp=134.3℃。
【実施例15】
【0076】
化合物I(エンテカビル)の製造:
【化24】

-20℃に冷却した5e(2.0g,5.44ミリモル)の塩化メチレン(20mL)溶液に、三塩化ホウ素(1M溶液,22mL,22ミリモル,4.04当量)の塩化メチレン溶液を約30分かけて加えた。添加中は温度を-19〜-23℃に保った。-20℃でさらに3時間撹拌した後、反応をクエンチするためにメタノール(14mL)を加えた。HPLCでボランエステルが認められなくなるまで(約4時間)反応混合物を撹拌した。MTBE(30mL)を加え、反応混合物を室温で終夜撹拌した。得られた固形物を濾過し、MTBE(約5mL)で洗浄し、減圧下に室温で乾燥することにより、エンテカビルの塩酸塩1.66gを得た。そのHCl塩(0.72g,2.29ミリモル)を約13mLの水にとり、約40℃に加熱した。2N NaOHでpHを約7に調節した。その結果得られた薄いスラリーを80〜85℃に加熱し、活性炭(0.12g)で処理した。30分間還流した後、熱混合物をセライトパッドで濾過した。濾液を3時間かけて室温に冷却し、さらに0℃で2時間撹拌した。得られた結晶を濾過し、水で洗浄し、減圧下で乾燥することにより、式Iの化合物(エンテカビル)を得た(0.32g,5eからの総収率44%)。
【実施例16】
【0077】
化合物7b'の製造:
【化25】

オーバーヘッドスターラー、温度計、滴下漏斗および窒素注入口を装備した1000mLジャケット付容器に、化合物7a'(40g)、DCM(180mL)、およびスルホラン(20mL)を投入し、反応混合物を10〜15℃に冷却した。反応混合物の温度を15℃未満に保ちながら、MSA(14.48g,2当量)を滴下した。反応混合物を約5〜10℃までさらに冷却した。反応温度を約10℃未満に保ちながら、TFMSA(22mL,3.2当量)を容器にゆっくり加えた。反応混合物を周囲温度に温め、終夜撹拌した。反応の完了をHPLCで確認した後、反応混合物を0〜10℃に冷却し、容器温度を15℃未満に保ちながら、2N NaOH(360mL)をゆっくり加えた。その結果得られたスラリーを周囲温度に温め、約1.5時間、混ざらせた。トルエン(600mL)を加え、その混合物を30分間撹拌した。その濃厚な水溶液をトルエン(600mL×2)で洗浄し、水(370〜375mL)で希釈し、80〜85℃で氷酢酸を使ってクエンチすることにより、溶液のpHを6.8〜7.2にした。スラリーを80〜85℃に約2時間、室温に約4時間保った後、スラリーをさらに0〜10℃に冷却し、1〜1.5時間撹拌した。次に、そのスラリーを濾過し、水(80mL×2)、ヘプタン(80mL×2)で洗浄し、減圧下に55℃で乾燥することにより、23.26gの化合物7b'(収率84.6%)を得た(これは約5〜約15%の化合物7c'を含みうる)。7c'に関するLC/MS:保持時間=5.95分;(M+H)=653(HPLC条件:溶媒A;5%CH3CN,95%H2O,10mM NH4OAc;溶媒B:95%CH3CN,5%H2O,10nM NH4OAc;勾配時間:15分;出発%B=0,最終%B=100;流速2.2ml/分;カラム=Luna C18,50×4.6mm;波長=210nm)。
【実施例17】
【0078】
化合物I(エンテカビル)の製造:
【化26】

オーバーヘッドスターラー、冷却器および温度計を装備した500mL三口丸底フラスコに、化合物7b'(10g)(これは最高15%の化合物7c'を含みうる)、炭酸ナトリウム・ペルオキソ水和物(14g)、およびメタノール(250mL)を投入した。反応の完了がHPLCで確認されるまで、反応混合物を撹拌しながら加熱還流した。次に反応混合物を室温まで冷却し、濾紙を通した濾過により、濾過ケーキを得て、それをメタノール(50mL×5)で濯いだ。濾液を、磁気撹拌機および温度計を装備した500mLフラスコに移し、残存ペルオキシドがクエンチされるまで、チオ硫酸ナトリウム水溶液(50mL×5,0.4M)を撹拌しながら加えた。その結果得られた濁った溶液を、溶液の温度を約55℃に保ちながら、濾紙を通して濾過し、濾過ケーキを温水(45mL,50℃〜60℃)で濯いだ。その結果得られた透明な濾液に、溶液の温度を70〜75℃に保ちながら、溶液のpHが6〜7になるまで、氷酢酸を加えた。その結果得られた混合物を90〜95℃に約30分間加熱した後、撹拌しながらゆっくり室温に冷ました。その結果生じたスラリーを濾取し、冷水(50mL×2)で洗浄し、減圧下で乾燥することにより、式Iの化合物(典型的収率:79〜85%)を得た。化合物Iは、炭素処理による脱色およびメタノール、水、またはその混合物からの再結晶によって、さらに精製することができる。
【実施例18】
【0079】
化合物7c'および8a'の製造:
【化27】

オーバーヘッドスターラー、温度計、滴下漏斗およびN2注入口/放出口を持つ乾燥1L四口ジャケット付反応器に、化合物7a'(30g,56.2mmol)およびDCM(100mL)を撹拌しながら投入し、反応混合物を5℃未満に冷却した。反応器温度を15℃未満に保ちながら、MSA(36.2g,376.6mmol,6.7当量)を反応器にゆっくり加えた。次に、反応器温度を5℃未満に保ちながら、CF3SO3H(TFMSA,16.5mL,182.7mmol,3.25当量)を滴下漏斗からゆっくり加えた。反応混合物を周囲温度(21〜25℃)まで温まらせ、反応の完了がHPLCで確認されるまで撹拌し続けた。反応器温度を15℃未満に保ちながら、トリエチルアミン(87mL,623.9mmol)を反応混合物にゆっくり加えた。その結果得られた濁った懸濁液を室温で約5時間撹拌した。その懸濁液を10℃〜15℃に冷却し、温度を15℃未満に保ちながら、予め混合しておいた水(240mL)およびMeOH(480mL)を懸濁液に加えた。その結果得られたスラリーを約28〜30℃に加熱し、約2〜3時間撹拌した。スラリーのpHを、必要に応じて氷酢酸またはTEAを使用して、6.5〜7.5に調節した。その結果得られた混合物を約70℃に約1時間加熱し、留出物を除去した。MeOH(100mL)を反応器に投入し、最終体積が17〜20g/mLに達するまで、約80℃で蒸留を再開した。その結果得られたスラリーを約20〜25℃までゆっくり冷却し、17〜22℃で約4時間保持した。そのスラリーを濾取し、DCM(100mL×2)、予め混合しておいたMeOH(315mL)およびDI水(135mL)、MeOH(900mL)で洗浄し、減圧乾燥器中、55〜60℃で乾燥することにより、化合物7c'(17.88g,93.5%,約1%〜約20%の化合物8a'を含みうる)を得た。8a'に関するLC/MS:保持時間=20.1分;(M+H)=971。HPLC条件:実行時間=36分;流速=1mL/分;カラム温度=25℃;カラム=Inertsil ODS-2,150×4.6mm,5μm;波長=254nm;溶媒A=H2O;溶媒B=CH3CN;
【表1】

【実施例19】
【0080】
化合物I(エンテカビル)の製造:
【化28】

機械式撹拌機、冷却器および温度計を装備した500mL三口丸底フラスコに、化合物7c'(15g)(約1%〜約20%の化合物8a'を含みうるもの)、炭酸ナトリウム・ペルオキソ水和物(13.2g)およびメタノール(225mL,15体積)を撹拌しながら投入した。その結果得られた混合物を加熱還流し、反応の完了がHPLCで確認されるまで撹拌した。次に反応混合物を20〜25℃に冷却し、その結果得られたスラリーを濾紙を通して濾過し、メタノール(50mL×5)で濯いだ。温度計および磁気撹拌機を装備した500mL丸底フラスコに濾液を移した。チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え(75mL×5,0.4M)、残存ペルオキシドがクエンチされるまで撹拌した。その結果得られたスラリーを、フラスコ温度を約55℃に保ちながら、最終体積が約135mLに達するまで減圧下で濃縮した。その結果得られた混合物を70〜75℃に加熱して濁りを帯びた溶液/スラリーとし、溶液のpHを10〜11に調節するために、2N NaOHを加えた。その濁りを帯びた溶液/スラリーを、温度を約55℃に保ちながら、濾紙を通して濾過し、濾過ケーキを温水(45mL×3,50〜60℃)で濯いだ。氷酢酸を使って、その透明濾液のpHを70〜75℃で6〜7に調節した。その結果得られた混合物を90〜95℃に約30分間加熱した後、撹拌しながら室温までゆっくり冷却した。その結果得られたスラリーを濾取し、冷水(5〜10℃)50mL×2で洗浄し、減圧下で乾燥することにより、化合物Iを得た(典型的収率:75〜80%)。化合物Iは、炭素処理による脱色およびメタノール、水、またはその混合物からの再結晶によって、さらに精製することができる。
【0081】
特許請求の範囲に記載の本発明は、本明細書に挙げた実施態様のみに限定されるべきではないと理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1fの化合物
【化1】

を製造する方法であって、
(a)式1aの化合物
【化2】

[式中、Raはアリル、フェニル、または1個、2個もしくは3個のC1-C4アルキルもしくはC1-C4アルコキシで置換されたフェニルであり、各Rbは独立してC1-C4アルキルである]
を、塩基の存在下で、PMB-ハライドと反応させて、式1bの化合物
【化3】

[式中、RaおよびRbは、上記と同意義である]
を得ること、
(b)式1bの化合物を、プロト脱シリル化によって、1cの化合物
【化4】

[式中、Rbは上記と同意義である]
に変換すること、
(c)式1cの化合物を酸化剤と接触させて、式1dの化合物
【化5】

を得ること、
(d)式1dの化合物を、塩基の存在下に、ハロゲン化ベンジルで処理して、式1eの化合物
【化6】

を得ること、および
(e)式1eの化合物中のPMB基を脱保護して、式1fの化合物を得ること
から成ることを特徴とする製造法。
【請求項2】
Raがフェニルであり、各Rbがメチルである、請求項1の製造法。
【請求項3】
式2eの化合物
【化7】

[式中、各Rbは独立してC1-C4アルキルであり、YはOBn、Cl、Br、またはIである]
を製造する方法であって、
(a)式1cの化合物
【化8】

[式中、各Rbは上記と同意義である]
を、塩基の存在下で、RaSi(Rb)2-ハライド[式中、Raはアリル、フェニル、または1個、2個もしくは3個のC1-C4アルキルもしくはC1-C4アルコキシで置換されたフェニルであり、各Rbは上記と同意義である]と反応させて、式2aの化合物
【化9】

[式中、Raおよび各Rbは上記と同意義である]
を得ること、
(b)式2aの化合物中のPMB基を脱保護して、式2bの化合物
【化10】

[式中、Raおよび各Rbは上記と同意義である]
を得ること、
(c)式2bの化合物を、ジアステレオ選択的エポキシ化によって、式2cの化合物
【化11】

[式中、Raおよび各Rbは上記と同意義である]
に変換すること、
(d)式2cの化合物を、アルカリ金属塩基の存在下で、式1hの化合物
【化12】

[式中、YはOBn、Cl、Br、またはIである]
と反応させて、式2dの化合物
【化13】

[式中、Ra、各RbおよびYは上記と同意義である]
を得ること、および
(e)式2dの化合物を、脱シリル化によって、式2eの化合物
【化14】

[式中、各RbおよびYは上記と同意義である]
に変換すること
から成ることを特徴とする製造法。
【請求項4】
Raがフェニルであり、各Rbがメチルであり、YがOBnである、請求項3の製造法。
【請求項5】
式Iの化合物
【化15】

を製造する方法であって、
(a)式3aの化合物を、プロト脱シリル化によって、式3bの化合物に変換すること
【化16】

[式中、Raはアリル、フェニル、または1個、2個もしくは3個のC1-C4アルキルもしくはC1-C4アルコキシで置換されたフェニルであり、各Rbは独立してC1-C4アルキルであり、RcはHまたはBnである]、
(b)式3bの化合物を、さらに式3fの化合物に変換すること
【化17】

[式中、各RbおよびRcは上記と同意義である]、
(c)式3fの化合物を酸化して、RcがHである場合に式Iの化合物を得るか、RcがBnである場合に式3gの化合物
【化18】

を得ること、および
(d)RcがBnである式3gの化合物中のベンジル基を脱保護して、Iの化合物を得ること
から成ることを特徴とする製造法。
【請求項6】
ステップ(b)が、
(i)式3bの化合物を、触媒量の酸または酸触媒の存在下で、オルトホルメート誘導体と反応させること、
(ii)ステップ(i)で得た混合物を、さらに、式Rd-C(=O)-O-C(=O)-Rdの酸無水物[式中、RdはC1-C4アルキルである]および随意に式Rd-C(=O)OHの酸[式中、RdはC1-C4アルキルである]と、さらに随意に抗酸化剤の存在下で、反応させること、ならびに
(iii)ステップ(ii)で得た化合物を、水性無機酸で加水分解すること
からなる、請求項5の製造法。
【請求項7】
Raがフェニルであり、各Rbがメチルであり、Rdがメチルである、請求項6の製造法。
【請求項8】
式Iの化合物
【化19】

を製造する方法であって、
(a)式4aの化合物を、プロト脱シリル化によって、式4bの化合物に変換すること
【化20】

[式中、Raはアリル、フェニル、または1個、2個もしくは3個のC1-C4アルキルもしくはC1-C4アルコキシで置換されたフェニルであり、各Rbは独立してC1-C4アルキルであり、RcはHまたはBnであり、XはCl、Br、またはIである]、
(b)式4bの化合物を、さらに式4fの化合物に変換すること
【化21】

[式中、各Rb、RcおよびXは上記と同意義である]、
(c)式4fの化合物を酸化して、式4gの化合物
【化22】

[式中、Rcは上記と同意義である]
を得ること、
(d)式4gの化合物を水性塩基と反応させて、RcがHである場合に式Iの化合物を得るか、RcがBnである場合に式4hの化合物
【化23】

を得ること、および
(e)式4hの化合物中のベンジル基を脱保護して、Iの化合物を得ること
から成ることを特徴とする製造法。
【請求項9】
ステップ(b)が
(i)式4bの化合物を、触媒量の酸または酸触媒の存在下で、オルトホルメート誘導体と反応させること、
(ii)ステップ(i)で得た混合物を、さらに、式Rd-C(=O)-O-C(=O)-Rdの酸無水物[式中、RdはC1-C4アルキルである]および随意に式Rd-C(=O)OHの酸[式中、RdはC1-C4アルキルである]と、さらに随意に抗酸化剤の存在下で、反応させること、ならびに
(iii)ステップ(ii)で得た化合物を、水性無機酸で加水分解すること
からなる、請求項8の製造法。
【請求項10】
Raがフェニルであり、各Rbがメチルであり、Rdがメチルである、請求項9の製造法。
【請求項11】
式Iの化合物
【化24】

を製造する方法であって、
(a)式3bの化合物を式5aの化合物に酸化すること
【化25】

[式中、各Rbは独立してC1-C4アルキルであり、RcはHまたはBnである]、
(b)式5aの化合物を式5dの化合物に変換すること
【化26】

[式中、Rcは上記と同意義であり、RdはC1-C4アルキルである]、
(c)式5dの化合物を加水分解して、RcがHである場合に式Iの化合物を得るか、RcがBnである場合に式5eの化合物
【化27】

を得ること、および
(d)式5eの化合物中のベンジル基を脱保護して、Iの化合物を得ること
から成ることを特徴とする製造法。
【請求項12】
ステップ(b)が、
(i)式5aの化合物を、触媒量の酸または酸触媒の存在下で、オルトホルメート誘導体と反応させること、
(ii)ステップ(i)で得た混合物を、さらに、式Rd-C(=O)-O-C(=O)-Rdの酸無水物[式中、RdはC1-C4アルキルである]および随意に式Rd-C(=O)OHの酸[式中、RdはC1-C4アルキルである]と、さらに随意に抗酸化剤の存在下で、反応させること、ならびに
(iii)ステップ(ii)で得た化合物を、水性無機酸で加水分解すること
からなる、請求項11の製造法。
【請求項13】
各Rbがメチルであり、Rdがメチルである、請求項12の製造法。
【請求項14】
式Iの化合物
【化28】

を製造する方法であって、
(a)式4bの化合物を式6aの化合物に酸化すること
【化29】

[式中、各RbはC1-C4アルキルであり、RcはHまたはBnであり、XはCl、Br、またはIである]、
(b)式6aの化合物を式6eの化合物に変換すること
【化30】

[式中、RcおよびXは上記と同意義である]、
(c)式6eの化合物を水性塩基で加水分解して、RcがHである場合に式Iの化合物(エンテカビル)を得るか、RcがBnである場合に式5eの化合物
【化31】

を得ること、および
(d)式5eの化合物中のベンジル基を脱保護して、Iの化合物を得ること
から成ることを特徴とする製造法。
【請求項15】
ステップ(b)が、
(i)式6aの化合物を、触媒量の酸または酸触媒の存在下で、オルトホルメート誘導体と反応させること、
(ii)ステップ(i)で得た混合物を、さらに、式Rd-C(=O)-O-C(=O)-Rdの酸無水物[式中、RdはC1-C4アルキルである]および随意に式Rd-C(=O)OHの酸[式中、RdはC1-C4アルキルである]と、さらに随意に抗酸化剤の存在下で、反応させること、ならびに
(iii)ステップ(ii)で得た化合物を、水性無機酸で加水分解すること
からなる、請求項14の製造法。
【請求項16】
各Rbがメチルであり、Rdがメチルである、請求項15の製造法。
【請求項17】
以下の化合物からなる群より選択される化合物:
【化32】

[式中、各Raは、各出現位置において、独立して、アリル、フェニル、または1個、2個もしくは3個のC1-C4アルキルもしくはC1-C4アルコキシで置換されたフェニルであり、各Rbは、各出現位置において、独立して、C1-C4アルキルであり、各Rcは、各出現位置において、独立して、HまたはBnであり、各Yは、各出現位置において、独立して、OBn、Cl、Br、またはIである]。
【請求項18】
各Raが、各出現位置において、独立して、フェニルであり、各Rbが、各出現位置において、独立して、メチルであり、各Rcが、各出現位置において、独立して、Bnであり、各Yが、各出現位置において、独立して、OBn、Cl、またはIである、請求項17の化合物。
【請求項19】
式7bの化合物と式7cの化合物の混合物
【化33】

[式中、各Rbは独立してC1-C4アルキルである]
を製造する方法であって、
式7aの化合物
【化34】

[式中、Raはアリル、フェニル、または1個、2個もしくは3個のC1-C4アルキルもしくはC1-C4アルコキシで置換されたフェニルであり、各Rbは上記と同意義である]
を、
(i)ハロゲン化メタンスルホン酸、および
(ii)随意にメタンスルホン酸
から選択される少なくとも一つの酸と接触させた後、少なくとも一つの水性塩基で処理すること
から成ることを特徴とする製造法。
【請求項20】
前記随意のメタンスルホン酸が存在する、請求項19の製造法。
【請求項21】
前記少なくとも一つの酸がトリフルオロメタンスルホン酸とメタンスルホン酸の混合物である、請求項19の製造法。
【請求項22】
7bの化合物または式7bの化合物と式7cの化合物の混合物を、少なくとも一つのペルオキソ水和物を使って酸化することにより、式Iの化合物
【化35】

を得ることをさらに含む、請求項19の製造法。
【請求項23】
前記ペルオキソ水和物が、炭酸ナトリウム・ペルオキソ水和物、尿素・ペルオキソ水和物、メラミンのペルオキソ水和物、ピロリン酸ナトリウム・ペルオキソ水和物、硫酸ナトリウム・ペルオキソ水和物・水和物、炭酸カリウム・ペルオキソ水和物、炭酸ルビジウム・ペルオキソ水和物、または炭酸セシウム・ペルオキソ水和物である、請求項22の製造法。
【請求項24】
前記ペルオキソ水和物が炭酸ナトリウム・ペルオキソ水和物である、請求項22の製造法。
【請求項25】
Raがフェニルであり、各Rbがメチルである、請求項24の製造法。
【請求項26】
式7cの化合物および随意に式8aの化合物
【化36】

[式中、各Rbは独立してC1-C4アルキルである]
を製造する方法であって、
式7aの化合物
【化37】

[式中、Raはアリル、フェニル、または1個、2個もしくは3個のC1-C4アルキルもしくはC1-C4アルコキシで置換されたフェニルであり、各Rbは上記と同意義である]
を、
(i)ハロゲン化メタンスルホン酸、および
(ii)随意にメタンスルホン酸
から選択される少なくとも一つの酸と接触させた後、少なくとも一つの非水性塩基で処理すること
から成ることを特徴とする製造法。
【請求項27】
前記随意のメタンスルホン酸が存在し、前記随意の式8aの化合物が存在する、請求項26の製造法。
【請求項28】
前記少なくとも一つの酸がトリフルオロメタンスルホン酸とメタンスルホン酸の混合物である、請求項26の製造法。
【請求項29】
前記非水性塩基がNReRfRg[式中、Re、RfおよびRgは独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリールであるか、前記RgおよびRfは、それらが結合しているNと共に合して、複素環を形成してもよい]である、請求項26の製造法。
【請求項30】
非水性塩基が3級アミン塩基である、請求項26の製造法。
【請求項31】
Raがフェニルであり、各Rbがメチルである、請求項26の製造法。
【請求項32】
Raがフェニルであり、各Rbがメチルである、請求項27の製造法。
【請求項33】
Raがフェニルであり、各Rbがメチルである、請求項30の製造法。
【請求項34】
式7cの化合物
【化38】

[式中、各Rbは独立してC1-C4アルキルである]。
【請求項35】
純度が約80%より高い、請求項34の化合物。
【請求項36】
式7cの化合物および随意に式7bの化合物
【化39】

[式中、各Rbは独立してC1-C4アルキルであり、前記式7bの化合物が存在する場合、化合物7c対7bの比は10:90より大きい]
を含有する化学組成物。.
【請求項37】
各RbがMeである、請求項36の組成物。
【請求項38】
式8aの化合物
【化40】

[式中、各Rbは独立してC1-C4アルキルである]。
【請求項39】
各RbがMeである、請求項38の化合物。
【請求項40】
式7cの化合物および式8aの化合物
【化41】

[式中、各Rbは独立してC1-C4アルキルである]
を含有する化学組成物。
【請求項41】
各RbがMeである、請求項40の組成物。
【請求項42】
式Iの化合物
【化42】

を製造する方法であって、
式7cの化合物、または式7cの化合物と式8aの化合物の混合物
【化43】

[式中、各Rbは独立してC1-C4アルキルである]
を酸化すること
から成ることを特徴とする製造法。
【請求項43】
酸化が少なくとも一つのペルオキソ水和物を使って達成される、請求項42の製造法。
【請求項44】
各RbがMeである、請求項42の製造法。
【請求項45】
前記ペルオキソ水和物が、炭酸ナトリウム・ペルオキソ水和物、尿素・ペルオキソ水和物、メラミンのペルオキソ水和物、ピロリン酸ナトリウム・ペルオキソ水和物、硫酸ナトリウム・ペルオキソ水和物・水和物、炭酸カリウム・ペルオキソ水和物、炭酸ルビジウム・ペルオキソ水和物、または炭酸セシウム・ペルオキソ水和物である、請求項43の製造法。
【請求項46】
前記ペルオキソ水和物が炭酸ナトリウム・ペルオキソ水和物である、請求項43の製造法。
【請求項47】
各RbがMeである、請求項46の製造法。

【公表番号】特表2008−501711(P2008−501711A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515631(P2007−515631)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/019633
【国際公開番号】WO2005/118585
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】