説明

炭素繊維束及びその製造方法、ならびにそれからの成形品

【課題】ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂マトリックスとの接着性に優れるサイジング剤として機能する組成物が付与された炭素繊維束を提供する。
【解決手段】酸および又は酸無水物で変性されたポリオレフィン100質量部、およびグリコールエーテル系化合物0.1〜50質量部を含む組成物が炭素繊維の表面に付着した炭素繊維束であって、該組成物の付着量が炭素繊維束100質量部に対して、0.01〜10質量部である炭素繊維束、ならびに該炭素繊維束からのランダムマット、複合材料、並びに各種成形品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂マトリックスとの接着性に優れるサイジング剤として機能する組成物が付与された炭素繊維束及び当該炭素繊維の製造方法に関する。また本発明は該炭素繊維束からのランダムマット、複合材料、並びに各種成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維は、多数本の極細フィラメントで構成されており、伸度が小さく機械的摩擦などによって毛羽が発生し易い。このため、炭素繊維の集束性を向上させて取扱性を改善し、且つ、マトリックスとの親和性を向上させるために、炭素繊維にサイジング剤を付与するのが一般的である。
【0003】
炭素繊維用のサイジング剤としては、これまでに多くの提案がなされている。例えば、特許文献1には、ポリウレタンで被覆処理された炭素繊維及び当該炭素繊維と熱可塑性樹脂とからなる炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物が提案されている。この提案によれば、炭素繊維の取扱性の向上、並びに、炭素繊維強化熱可塑性樹脂の機械的特性の向上を図れることが開示されている。
【0004】
他方、特許文献2には、常温で液状のビスフェノールA 型エポキシ樹脂、常温で固形状のビスフェノールA 型エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ステアリン酸を必須成分としたサイジング剤が提案されている。更に、特許文献2には、上記サイジング剤が炭素繊維ストランドに良好な耐擦過性を与えることが開示されている。
しかしながら、これらの特許文献1及び2で開示された炭素繊維用サイジング剤は、炭素繊維と、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、又は、ポリカーボネート及びポリアミドなど極性の高い熱可塑性樹脂との接着性向上を図ったものである。これら従来技術によるサイジング剤を付与した炭素繊維をポリプロピレンに適用しても、炭素繊維−ポリプロピレン複合材料の強度はほとんど向上しない。
【0005】
一方、ガラス繊維用のサイジング剤については、強化繊維(ガラス繊維)とポリプロピレンとの接着性を向上させるものが幾つか提案されている。例えば、特許文献3には、酸変性のオレフィン樹脂及びアミノ基を有するシランカップリング剤を含むガラス繊維用集束剤が提案されている。更に、特許文献3には、マトリックス樹脂であるオレフィン樹脂とガラス繊維とが強固に密着し、原料及び成型品に毛羽立ちが発生せず、優れた強度の成型品が得られることが開示されている。
【0006】
しかしながら、この特許文献3で開示されたサイジング剤を炭素繊維に適用しても、炭素繊維はガラス繊維と異なりシランカップリング剤による接着向上効果は期待できない。また、炭素繊維はガラス繊維と比較して高強度であるが、サイジング剤との反応性に乏しい。そのため、炭素繊維− ポリプロピレン複合材料の機械的特性において炭素繊維は、その高い性能を十分に反映できないでいる。
【0007】
また、特許文献4には、極限粘度[η]が0.02〜1.3dl/gであり、1〜20質量%の不飽和ジカルボン酸類で変性した変性ポリプロピレン樹脂又はその塩を必須成分とする水性エマルジョンからなる無機繊維用サイジング剤が提案されている。特許文献4によれば、このサイジング剤の使用によりガラス繊維強化ポリプロピレン樹脂の機械的特性の向上を図れることが記載されている。
【0008】
炭素繊維用のサイジング剤についても強化繊維(炭素繊維)とポリプロピレンの接着性を向上させる手法がいくつか提案されている。例えば、特許文献5では、変性ポリオレフィンを含む水系エマルジョン若しくはサスペンジョン又は有機溶媒溶液を未サイジングの炭素繊維に付与した後、120〜250℃で熱処理して炭素繊維の表面に変性ポリオレフィン樹脂を付与することが開示されている。
【0009】
これらの技術に対して、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂との接着性・親和性をさらに高め、且つ、取扱性・集束性が良好で毛羽立ちの少ない炭素繊維束が提供できるサイジング剤組成物の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭58−126375号公報
【特許文献2】特開平7−197381号公報
【特許文献3】特開2003−253563号公報
【特許文献4】特公平6−96463号公報
【特許文献5】特開2006−124847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来技術における問題点に着目してなされたものであり、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂との接着性に優れる炭素繊維束及びその製造方法を提供する。また本発明は該炭素繊維束からのランダムマット、複合材料、並びに各種成形品に関する
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明は、酸および又は酸無水物で変性されたポリオレフィン100質量部、およびグリコールエーテル系化合物0.1〜50質量部を含む組成物が炭素繊維表面に付着した炭素繊維束であって、該組成物の付着量が炭素繊維束100質量部に対して、0.01〜10質量部である炭素繊維束である。また本発明は該炭素繊維束からのランダムマット、複合材料、並びに各種成形品である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂との接着性・親和性が著しく向上し、且つ、取扱性・集束性が良好で毛羽立ちの少ない炭素繊維束が提供でき、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂と炭素繊維束とを含む複合材料が好適に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】複合成形体の構造例
【図2】複合成形体の構造例
【図3】複合成形体の構造例
【図4】複合成形体の構造例
【図5】複合成形体の構造例
【図6】複合成形体の構造例
【図7】複合成形体の構造例
【図8】複合成形体の構造例
【図9】複合成形体の構造例
【図10】複合成形体の構造例
【図11】複合成形体の構造例
【図12】複合成形体の構造例
【図13】複合成形体の構造例
【図14】複合成形体の構造例(フロアパンの例)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の炭素繊維束を構成する組成物は、酸および又は酸無水物で変性されたポリオレフィン100質量部、およびグリコールエーテル系化合物0.1〜50質量部とを含む。該組成物は主としてサイジング剤として機能するものであって、炭素繊維束に付与することで炭素繊維束と樹脂との接着性を高め、且つ、炭素繊維束の集束性を高め、炭素繊維の毛羽立ちを抑える。
該組成物は、炭素繊維との接着性が高いため、複合材料のマトリックス樹脂としても機能するものである。
【0016】
本発明に用いられるポリオレフィンは、好ましくはポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、1−ブテン、および1−ブテン−α−オレフィン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0017】
ここで、プロピレン−α−オレフィン共重合体とは、プロピレンを主体としてこれとα−オレフィンを共重合したものである。
α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどの、炭素原子数2または4〜20のα−オレフィンが挙げられる。
【0018】
共重合比にとくに限定はないが、好ましくはモル比でプロピレン100に対しα−オレフィン2〜200であり、より好ましくはプロピレン100に対しα−オレフィン10〜150である。さらに好ましくは、プロピレン100に対しα−オレフィン20〜100である。プロピレン成分の存在量が多いほど、ポリプロピレン基材に対する密着性が高まる傾向にある。
【0019】
本発明に用いられる酸および又は酸無水物は、カルボン酸およびその酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。カルボン酸としては例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸、酸無水物としては例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの中でも無水マレイン酸、無水イタコン酸が好ましい。
【0020】
ポリオレフィンの酸および又は酸無水物変性としては、具体的にはポリオレフィンに、カルボキシル基などの有機酸基を有する成分をグラフト共重合させることが好ましい。なかでもポリオレフィンに、不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種をグラフト共重合させることが好ましい。
【0021】
すなわち本発明の酸および又は酸無水物で変性されたポリオレフィンとは、ポリプロピレンおよびプロピレン−α−オレフィン共重合体に対し、不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種をグラフト共重合した化合物であることが好ましい。
【0022】
さらにこの場合の共重合ポリオレフィンにおけるオレフィンと酸および又は酸無水物の共重合比は、モル比で表すとオレフィン100に対し酸および又は酸無水物が0.01〜5であることが好ましく、0.1〜2がより好ましい。
【0023】
上記範囲よりもグラフト量が少ないと、炭素繊維束とポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂との接着性が低下する傾向になる。また、逆にグラフト量が多すぎても、共重合ポリオレフィン中のポリオレフィン含量が相対的に減少するために、炭素繊維とポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂との接着性が低下する傾向になる。
【0024】
酸および又は酸無水物で変性されたポリオレフィンの重量平均分子量は、35,000〜100,000であるのが好ましい。重量平均分子量が35,000より小さいと、炭素繊維束とポリプロピレン樹脂との接着性が劣ることがあり、100,000より大きくなると乳化が困難になることがある。また、乳化できてもエマルジョンの粒径が大きく不安定になり、長期間の操業が困難になることがある。尚、重量平均分子量の測定法としては、高温GPC法など公知の方法を使用することができる。
【0025】
グリコールエーテル系化合物は、酸および又は酸無水物で変性されたポリオレフィン100 質量部に対して、0.1〜50質量部用いる。0.1質量部未満であると、炭素繊維束表面に組成物の皮膜が均一に形成されないので、0.1重量部以上である必要があり、皮膜の均一性の観点から、0.5重量部以上であることが更に好ましい。
一方、50質量部を越えると、目的組成物を乾燥させるのに高温、長時間が必要になるおそれがある。炭素繊維束とポリプロピレンの密着性の観点から、20重量部以下であることが更に好ましい。
【0026】
グリコールエーテル系化合物が下記式(1)
2m1+1m1−(O−Xn1−OH (1)
(n1:1〜4の整数、m1:1〜4の整数、X:炭素数1〜5のアルキレン基)
で表されることが好ましい。Xの炭素数は2〜5が好ましい。
【0027】
グリコールエーテル系化合物としては、例えば、エチレングリコールモノn −ブチルエーテル、エチレングリコールモノi s o −ブチルエーテル、エチレングリコールモノt e r t − ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノn −ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノi s o −ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノn −ブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノn −ブチルエーテルが挙げられる。
【0028】
本発明は、上記組成物の付着量が炭素繊維束100質量部に対して、0.01〜10質量部である炭素繊維束である。本発明における炭素繊維束への組成物の付着量は、成形法や用途によっても異なるが、炭素繊維束100質量部に対して0.2〜5質量部が好ましい。組成物の付着量が0.01質量部未満では成形加工時における取扱性が劣る。一方、10質量部を超えると、マトリックス樹脂に対する組成物の量が多くなり、マトリックス樹脂の結晶性を低下させて複合材料の機械的特性が低下するため好ましくない。
【0029】
[炭素繊維束の製造方法]
本発明の炭素繊維束は、酸および又は酸無水物で変性されたポリオレフィン100質量部、グリコールエーテル系化合物0.5〜50質量部からなる組成物を、炭素繊維束100質量部に対して、0.01〜10質量部、炭素繊維表面に付与した後、熱処理することで好ましく製造することができる。
【0030】
本発明において組成物は、水性エマルジョンあるいは該組成物が溶解可能な溶媒を使用した溶液状態で用いることができるが、本発明において組成物は、水性エマルジョンで用いることが好ましい。水性エマルジョンの場合、組成物100質量部に対し、水を2000〜10000質量部とすることが好ましい。この水性エマルジョンは、例えば酸および又は酸無水物で変性されたポリオレフィンをトルエン、キシレン等の溶剤およびグリコールエーテル系化合物に溶解し、分散性を上げる必要に応じて界面活性剤を加え、塩基性物質を投入し、水を少量ずつ添加して転相乳化させる方法で好ましく得ることができる。
【0031】
すなわち本発明の炭素繊維束を得るには、組成物を水性エマルジョンで用いる場合に分散性を良好にするため、界面活性剤を用いることが好ましい。界面活性剤としては特に制限はなく、本発明の目的を損なわない範囲内であれば公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤の好ましい使用量は、酸および又は酸無水物で変性されたポリオレフィン100質量部に対して、1〜30質量部である。1質量部以上であれば、1重量部未満の場合よりも樹脂の分散が更に良好になり、炭素繊維束との引張せん断特性が更に良好になる。一方、30質量部を越えると、目的組成物の耐水性が悪化したり、炭素繊維束との引張せん断特性が悪化することがある。
【0032】
界面活性剤としては、特に限定はないが、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられる。このうち、分散粒子の粒子径の観点からノニオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤を用いるのが好ましく、ノニオン性界面活性剤がより好ましい。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、下記式(2)のポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。
2m2+1m2−O−(X−O)n2−H (2)
(m2=8〜22の整数、n2=2〜20の整数、X:炭素数1〜5のアルキレン基)
の炭素数は2〜5が好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオイレルエーテル等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独または2種以上を混合して用いることができる。
これらの化合物は、1種単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
組成物を炭素繊維の表面に付着させて炭素繊維束を得る方法としては、組成物を水性エマルジョンあるいは溶液状態で付着させる方法、すなわちサイジング法としては、例えばスプレー法、ローラー浸漬法、ローラー転写法などがある。これらサイジング法のうちでも、生産性、均一性に優れるローラー浸漬法が好ましい。炭素繊維ストランドを水性エマルジョンあるいは溶液に浸漬する際には、エマルジョン浴中に設けられた浸漬ローラーを介して、開繊と絞りを繰り返し、ストランドの中まで組成物液を含浸させることが肝要である。
【0034】
組成物を水性エマルジョンあるいは溶液状態で未サイジングの炭素繊維束に付着させた後、続く乾燥処理によって水分あるいは溶媒を除去して、目的とする組成物を付与した炭素繊維を得ることができる。炭素繊維に対する組成物の付着量の調整は、組成物の濃度調整や、絞りローラーの調整などによって行う。炭素繊維の乾燥は、例えば、熱風、熱板、ローラー、赤外線ヒーターなどを使用することができる。
【0035】
乾燥処理は熱処理が好ましく、熱処理により水分あるいは溶媒を除去することに加え、該組成物を炭素繊維の表面に均一に付与することができる。
熱処理工程では、80℃〜160℃で30秒以上、処理を行うことが好ましく、水性エマルジョンの場合、具体的には80℃で水分を除去し、その後、酸および又は酸無水物で変性されたポリオレフィンの融点を越える温度、例えば150℃で熱処理して、均一な皮膜を形成させる。温度が80℃未満では炭素繊維束からの水分の除去に時間を要し、160℃を越えると本発明で使用するグリコールエーテル系化合物の揮発が著しくなり、発明の効果が少なくなる。
【0036】
[炭素繊維]
本発明の炭素繊維束を構成する炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)系、石油・石炭ピッチ系、レーヨン系、リグニン系など、何れの炭素繊維も使用することができる。特に、PANを原料としたPAN系炭素繊維が、工業規模における生産性及び機械的特性に優れており好ましい。
PAN系炭素繊維は、平均直径5〜10μmのものを使用できる。PAN系炭素繊維は、1000〜 50000本の単繊維が繊維束となったものを使用できる。
【0037】
炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性を高めるため、表面処理によって炭素繊維の表面に含酸素官能基を導入したものを使用することも好ましい。
表面処理方法としては、公知の方法として液相及び気相処理等があるが、生産性、安定性、価格面等の点から液相電解表面処理が好ましい。
この表面処理を行う程度の目安の指標として、X線光電子分光法(ESCA)により測定される炭素繊維の表面酸素濃度比O/Cによって管理することが好ましい。
炭素繊維の表面酸素濃度比O/Cの測定は、例えば日本電子(株)製X線光電子分光器ESCA JPS−9000MX等を用いて以下のように行う。サイズ剤付与前の炭素繊維に、Mgを対極として電子線加速電圧10kV、電流10mAの条件にて発生したX線を照射し、炭素原子、酸素原子より発生する光電子のスペクトルを測定し、その面積比を算出する。
【0038】
炭素繊維の表面処理の程度としては、表面酸素濃度比O/Cが0.03〜0.2となるように行うことが好ましい。
表面酸素濃度比O/Cが0.2を越えた場合、マトリックス樹脂の分子量低下を促し、繊維強化複合材料としての本来の性能を発揮し得ない傾向がある。
一方、表面酸素濃度比O/Cが0.03未満の場合、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性が不足し、繊維強化複合材料に於ける機械特性が充分に発揮されない傾向がある。
【0039】
[炭素繊維束]
炭素繊維に上記組成物を付与し本発明の炭素繊維束とすることで、炭素繊維束の取扱性、集束性を改善するとともに、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性・親和性を向上させることができる。炭素繊維の取扱性は、ステンレスで擦過した後の擦過毛羽量で評価できる。
【0040】
[複合材料]
本発明の炭素繊維束は、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂との接着性・親和性に優れるので、本発明の炭素繊維束よりポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂と炭素繊維束とを含む複合材料が好適に得られる。
【0041】
炭素繊維束と熱可塑性樹脂との接着性はせん断強度にて評価することができる。例えば、2本の炭素繊維束の間にポリプロピレンフィルムを挟み、230℃で接着した後、JISK6850に準拠して、接着部の長さ25mmで引張せん断試験を行って、評価できる。本発明の炭素繊維束は、エポキシ樹脂系の接着剤と同等な十分なせん断強度を得ることが確認できる。
【0042】
[ランダムマット]
本発明の炭素繊維束を繊維長2〜60mmとし、不連続の炭素繊維を得て、これよりランダムマットとすることができる。すなわち本発明は、上記の炭素繊維束を繊維長2〜60mmとしたものから構成され、炭素繊維が25〜3000g/mの目付けにて実質的に面内ランダムに配向していることを特徴とするランダムマットを包含する。
【0043】
当該ランダムマットは、
1.上記の炭素繊維束をカットする工程、
2.カットされた炭素繊維を管内に導入し、空気を繊維に吹き付ける事により、繊維束を開繊させる工程、
3.開繊させた炭素繊維を拡散させると同時に吸引しつつ、炭素繊維を散布する塗布し定着させる工程、
により好ましく得ることができる。
【0044】
熱可塑性樹脂マトリクス中の炭素繊維の開繊程度をコントロールし、特定本数以上の炭素繊維束で存在するものと、それ以外の開繊された炭素繊維を特定の割合で含むランダムマットとすることが好ましい。本発明の炭素繊維束を用いることで、開繊程度を適切にコントロールすることが可能であり、種々の用途、目的に適したランダムマットが提供できる。
【0045】
[熱可塑性樹脂を含むランダムマット]
本発明の炭素繊維束を繊維長2〜60mmとし、不連続の炭素繊維を得たものと、熱可塑性樹脂とを含んでランダムマットとすることができる。すなわち本発明は、上記の炭素繊維束を繊維長2〜60mmとしたものと、熱可塑性樹脂とから構成され、炭素繊維が25〜3000g/mの目付けにて実質的に面内ランダムに配向していることを特徴とするランダムマットを包含する。
【0046】
熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレン単位の他、共重合成分としては、エチレン、プロピレン以外のα−オレフィン、環状オレフィン、不飽和酸及びその誘導体、不飽和酸およびその酸無水物などが挙げられる。上記のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン等を挙げることができる。また環状オレフィンモノマーとしては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、4−メチルシクロペンテン、4,4−ジメチルシクロペンテン、シクロヘキセン、4−メチルシクロヘキセン、4,4−ジメチルシクロヘキセン、1,3−ジメチルシクロヘキセン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、シクロヘプテン、1,3−シクロヘプタジエン、1,3,5−シクロヘプタトリエン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、シクロドデセン等を挙げることができる。また、不飽和酸としてはマレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、不飽和酸無水物としては無水マレイン酸を挙げることができる。を含むものも好ましい。これらの共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体およびグラフト共重合体の構造をとることができる。共重合成分を含む場合の好ましい共重合モル比は0.1〜50%である。また上記ポリプロピレン系の樹脂は他の樹脂と配合して用いることができる。このような樹脂としてはエチレン−プロピレン共重合体エラストマー(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体エラストマー(EPDM)、エチレン−ブテン−1共重合体エラストマー(EBM)、超低密度ポリエチレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体エラストマー、スチレン−ブタジエンランダム共重合体エラストマー、スチレン−イソプレンブロック共重合体エラストマー等を例示することができる。また上記ポリプロピレン系の樹脂には無機ファイラーを配合することができる。無機フイラーとして、タルク、硅酸カルシウム、硅酸カルシウム、ワラストナイト、モンモリロナイトや各種の無機ナノフイラーを挙げることができる。また上記ポリプロピレン系の樹脂には、必要に応じて、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、軟化剤、分散剤、充填剤、着色剤、滑剤など、従来からポリオレフィン組成物に配合されている他の添加剤を、配合することができる。
【0047】
ランダムマットにおける熱可塑性樹脂の存在量が、炭素繊維100重量部に対し、10〜500重量部であることが好ましい。より好ましくは20〜250重量部である。
ランダムマットにおいて、熱可塑性樹脂が、繊維状、粉末状、又は粒状で存在することが好ましい。
【0048】
当該ランダムマットは
1.上記の炭素繊維束をカットする工程、
2.カットされた炭素繊維を管内に導入し、空気を繊維に吹き付ける事により、繊維束を開繊させる工程、
3.開繊させた炭素繊維を拡散させると同時に、熱可塑性樹脂とともに吸引しつつ、炭素繊維と熱可塑性樹脂を同時に散布する塗布工程、
4.塗布された炭素繊維および熱可塑性樹脂を定着させる工程、
により好ましく得ることができる。
【0049】
熱可塑性樹脂マトリクス中の炭素繊維の開繊程度をコントロールし、特定本数以上の炭素繊維束で存在するものと、それ以外の開繊された炭素繊維を特定の割合で含むランダムマットとすることが好ましい。
本発明の炭素繊維束を用いることで、開繊程度を適切にコントロールすることが可能であり、種々の用途、目的に適したランダムマットが提供できる。
【0050】
[複合材料成型板]
上記の熱可塑性樹脂を含むランダムマットを、熱可塑性樹脂の融点以上で加圧することにより、炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を得ることができる。本発明の炭素繊維束は、熱可塑性樹脂との接着性が優れることから、各種の機械物性に優れた成形材料が提供できる。
【0051】
[一軸配向炭素繊維複合材料]
上記に記載の炭素繊維束を引き揃え、溶融した熱可塑性樹脂と接触させることにより炭素繊維束と熱可塑性樹脂とが複合されてなる一軸配向炭素繊維複合材料を得ることができる。熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。一方向材は、複数の一方向材を積層して用いても良い。
ポリプロピレン系樹脂は上記のランダムマットの項で記載したものが同様に好ましく挙げられる。
【0052】
一軸配向炭素繊維複合材料層を製造する方法はとくに限定はなく、例えばプルトリュージョン法などで得ることができる。プルトリュージョン法による場合は炭素繊維が熱可塑性樹脂により含浸されているものが好適に得られる。熱可塑性樹脂による含浸を抑えたもの、すなわち半含浸の層とした場合は、例えば熱可塑性樹脂からなるシート上に炭素繊維の一方向に引き揃えて、必要によりプレスしつつ加熱する方法等で好ましく得ることができる。
【0053】
複合材料の形状は円筒状、あるいは角柱状であることが好ましい。炭素繊維束を熱可塑性樹脂で固めたストランドを得て、これを切断することにより炭素繊維と熱可塑性樹脂からなる長繊維ペレットを得ることができる。
【0054】
角柱状の場合、高さ(厚み)を薄くすることでシート状とすることもできる。シート状としたときの好ましい厚みは40〜3000μmである。
一軸配向炭素繊維複合材料における熱可塑性樹脂の存在量が、炭素繊維100重量部に対し、10〜500重量部であることが好ましい。より好ましくは20〜250重量部である。
【0055】
[複合成形体]
上記に記載の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板と、上記に記載の一軸配向炭素繊維複合材料とを組み合わせて、炭素繊維複合成形体を提供できる。すなわち本発明は当該炭素繊維複合成形体も包含する。ランダムマット複合材料成型板の全体積に対し、一軸配向炭素繊維複合材料が5〜100%存在することが好ましいが、積層部分の体積割合、面積割合および積層部位は各種用途に合わせて適宜選択することができる。一軸配向炭素繊維複合材料は、所望のねじり剛性および曲げ剛性を効果的に発現させるように配置することが好ましい。一軸配向炭素繊維複合材料は例えば30〜120度の範囲で2軸を織り成すように配置させることも好ましい。
【0056】
このような複合成形体の構造例を図1〜3に示す。図1ではランダム層と一方向材層とを積層した立体構造の例であり、また図2はランダム層の一部に一方向材層を積層した立体構造の例である。図3は図2のような立体構造を面対称に貼り合せて、角柱形状とした例であるが、このような構造により例えば自動車用サイドピラーが好ましく提供できる。
ランダム層と一方向材層の積層割合や、上下関係は、得ようとする成形体により、適宜選択できる。
【0057】
ランダムマット複合材料成型板を構成する熱可塑性樹脂と、一軸配向炭素繊維複合材料を構成する熱可塑性樹脂とは同一であっても異なっていても良い。
繊維複合成形体を得る好ましい方法としては、以下の2つが好ましく挙げられる。これらにより立体形状の複合成形体を好ましく得ることができる。
1)上記に記載の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板と、上記に記載の一軸配向炭素繊維複合材料とを積層した板状物を得て、それをプレス成形する方法。
2)上記に記載の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板と、上記に記載の一軸配向炭素繊維複合材料とを合わせて型内にてプレスする方法。
【0058】
ランダムマット複合材料成型板と一軸配向炭素繊維複合材料はそれぞれ複数を積層して用いても良い。また炭素繊維複合成形体は、スキン層とコア層を有するサンドイッチ材料とすることも好ましい。サンドイッチ材料としては、a)上記に記載の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板をスキン層とし、上記に記載の一軸配向炭素繊維複合材料をコア材とするもの、あるいは、b)上記に記載の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板をコア材とし、上記に記載の一軸配向炭素繊維複合材料をスキン層とするもの、c)さらに別の層を含むもの等が挙げられる。
【0059】
[フロアパン]
上記に記載の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を全面に使用し、クロスメンバーおよび/またはサイドメンバーに上記に記載の一軸配向炭素繊維複合材料を部分的に用いる事で自動車用フロアパンが好ましく提供できる。図14に具体例を示すが、これに例示するとおり、一軸配向材はその角度を変えて用いることができる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0061】
[実施例1]
プロピレン280質量部、無水マレイン酸25質量部、ジクミルパーオキサイド7質量部およびトルエン420質量部を、撹拌機を取り付けたオートクレーブ中に加え、窒素置換を約5分間行った後、加熱撹拌しながら140℃で5時間反応を行った。反応終了後、反応液を大量のメチルエチルケトン中に投入し、粗無水マレイン酸変性ポリオレフィンを析出させた。粗無水マレイン酸変性ポリオレフィンをさらにメチルエチルケトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去したのち、減圧乾燥することにより、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの固形物を得た。赤外吸収スペクトルの測定結果から、無水マレイン酸の共重合比はモル比でプロピレン100に対して0.6であった。また、高温GPC測定による重量平均分子量は85000であった。
【0062】
次に、無水マレイン酸変性ポリオレフィン100質量部にトルエン400質量部、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル8質量部を加え、攪拌しながら加温して、均一に溶解させた。一方、別の容器にポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、登録商標「エマルゲン103」)8質量部を水400質量部に加えて溶解させた。無水マレイン酸変性ポリオレフィンのトルエン溶液と界面活性剤水溶液とを乳化器に入れて攪拌し、プレエマルジョンを得た。
このプレエマルジョンにモルフォリンを加えて、ロータリーエバポレーターを使用して、トルエンと水を減圧蒸留した。
【0063】
最終的に得られた無水マレイン酸変性ポリオレフィン水性エマルジョンは、平均粒径0.8μmであり、pHは8.5、組成物100質量部に対して、水は400質量部であった。
得られた無水マレイン酸変性ポリオレフィン水性エマルジョンを、組成物100質量部に対して、水の量は4000質量部となるように調製し、組成物を得た。得られた組成物に未サイジングの炭素繊維ストランド(東邦テナックス社製、登録商標「テナックスSTS−24K N00」、直径7μm×24000フィラメント、繊度1.6g/m、引張強度4000MPa(408kgf/mm)、引張弾性率238GPa(24.3ton/mm))を連続的に浸漬させ、フィラメント間に前記組成物をサイジング剤として含浸させた。
【0064】
続いて、80℃の乾燥機に5分間通して水分を蒸発させ、その後、150℃の乾燥機で5分間熱処理した。得られた炭素繊維束の組成物すなわちサイジング剤付着量を測定したところ炭素繊維束100質量部に対して1.4質量部であった。炭素繊維束を250℃に加熱して、エチレングリコールモノn −ブチルエーテルを捕集し、定量したところ、無水マレイン酸変性ポリオレフィン100質量部に対して、2.0質量部であった。
【0065】
得られた2本の炭素繊維束の間にポリプロピレンフィルム(トーセロ社製プロピレンフィルム SC#30)を挟み、230℃で接着した後、JISK6850に準拠して、接着部の長さ25mmで引張せん断強度を測定したところ、表1に示すように高いせん断強度を得た。
【0066】
15mm間隔で配置された直径2mmのクロムめっきのステンレス棒に接触する角度が120°になるように炭素繊維束をジグザグに掛け、ボビンから炭素繊維束の解舒テンションが0.204N(200gf)になるように設定して擦過させた。擦過後の炭素繊維束をウレタンスポンジ(寸法32mm×64mm×10mm、質量0.25g)2枚の間に挟み、125gの錘をウレタンスポンジ全面に荷重が掛かるように載せ、炭素繊維束を15m/分の速度で2分間通過させたときのスポンジに付着した毛羽の質量を擦過毛羽量として測定したところ、表1に示すように擦過毛羽量は少なかった。
【0067】
[実施例2]
プロピレン・エチレン共重合体(プロピレン100に対するα−オレフィンのモル比は100、α−オレフィンの炭素原子数2)280質量部、無水マレイン酸70質量部、ジ―tert―ブチルパーオキサイド5.6質量部およびトルエン420質量部を用いた以外は実施例1と同様の方法により、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの固形物を得た。赤外吸収スペクトルの測定結果から、無水マレイン酸の共重合比はモル比でプロピレン100に対して2.5であった。また、高温GPC測定による重量平均分子量は43000であった。そして、実施例1と同様の方法で組成物を調製し、得られた組成物を炭素繊維束にサイジングし、組成物の付着量を測定したところ、炭素繊維束100質量部に対して1.2質量部であった。炭素繊維束を250℃に加熱して、エチレングリコールモノn −ブチルエーテルを捕集し、定量したところ、無水マレイン酸変性ポリオレフィン100質量部に対して、2.8質量部であった。
得られた炭素繊維束について、実施例1と同様に引張せん断強度を測定したところ、表1に示すように高いせん断強度を得た。
得られた炭素繊維束について、実施例1と同様に擦過毛羽量を測定したところ、表1に示すとおり、擦過毛羽量は少なかった。
【0068】
[実施例3]
プロピレン・エチレン共重合体においてプロピレン100に対するα−オレフィンのモル比を150とした以外は、実施例2と同様の方法により、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを得た。そして、実施例1と同様の方法で組成物を調整しこれをサイジングした炭素繊維束を得た後、炭素繊維束とポリプロピレンフィルムの引張せん断強度を測定した。
得られた炭素繊維束について、実施例1と同様に引張せん断強度を測定したところ、表1に示すように高いせん断強度を得た。
得られた炭素繊維束について、実施例1と同様に擦過毛羽量を測定したところ、表1に示すとおり、擦過毛羽量は少なかった。
【0069】
[実施例4]
プロピレン・エチレン共重合体においてプロピレン100に対するα−オレフィンのモル比を200とした以外は、実施例2と同様の方法により、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを得た。そして、実施例1と同様の方法で組成物を調整しこれをサイジングした炭素繊維束を得た後、炭素繊維束とポリプロピレンフィルムの引張せん断強度を測定した。
得られた炭素繊維束について、実施例1と同様に引張せん断強度を測定したところ、表1に示すように高いせん断強度を得た。
得られた炭素繊維束について、実施例1と同様に擦過毛羽量を測定したところ、表1に示すとおり、擦過毛羽量は少なかった。
【0070】
[実施例5〜7]
ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤の量を表1に示す組成に変更した以外は、実施例2と同様の方法により、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを得た。
そして、実施例1と同様の方法で組成物を調整しこれをサイジングした炭素繊維束を得た後、炭素繊維束とポリプロピレンフィルムの引張せん断強度を測定した。
得られた炭素繊維束について、実施例1と同様に引張せん断強度を測定したところ、表1に示すように高いせん断強度を得た。
得られた炭素繊維束について、実施例1と同様に擦過毛羽量を測定したところ、表1に示すとおり、擦過毛羽量は少なかった。
【0071】
[実施例8〜9]
エチレングリコールモノn−ブチルエーテルの量を表2に示す組成に変更した以外は、
実施例2と同様の方法により、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを得た。
そして、実施例1と同様の方法で組成物を調整しこれをサイジングした炭素繊維束を得た後、炭素繊維束とポリプロピレンフィルムの引張せん断強度を測定した。
得られた炭素繊維束について、実施例1と同様に引張せん断強度を測定したところ、表2に示すように高いせん断強度を得た。
得られた炭素繊維束について、実施例1と同様に擦過毛羽量を測定したところ、表2に示すとおり、擦過毛羽量は少なかった。
【0072】
[実施例10]
プロピレン−1−ブテン共重合体( プロピレン100に対するα−オレフィンのモル比は30、α−オレフィンの炭素原子数4)280質量部、無水マレイン酸40質量部、ジ―tert―ブチルパーオキサイド5.6質量部およびトルエン420質量部を用いた以外は実施例1と同様の方法により、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの固形物を得た。赤外吸収スペクトルの測定結果から、無水マレイン酸の共重合比はモル比でプロピレン100に対して1.5であった。また、高温GPC測定による重量平均分子量は40000であった。そして、実施例1と同様の方法で組成物を調整しこれをサイジングした炭素繊維束を得て、組成物の付着量を測定したところ、炭素繊維束100質量部に対して1.1質量部であった。炭素繊維束を250℃に加熱して、エチレングリコールモノn−ブチルエーテルを捕集し、定量したところ、無水マレイン酸変性ポリオレフィン100質量部に対して、2.0質量部であった。
得られた炭素繊維束について、実施例1と同様に引張せん断強度を測定したところ、表2に示すように高いせん断強度を得た。
得られた炭素繊維束について、実施例1と同様に擦過毛羽量を測定したところ、表2に示すとおり、擦過毛羽量は少なかった。
【0073】
[実施例11]
プロピレン−1−ブテン共重合体( プロピレン100に対するα−オレフィンのモル比は30、α−オレフィンの炭素原子数4)280質量部、無水マレイン酸40質量部、ジ―tert―ブチルパーオキサイド5.6質量部およびトルエン420質量部を用いた以外は実施例1と同様の方法により、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの固形物を得た。赤外吸収スペクトルの測定結果から、無水マレイン酸の共重合比はモル比でプロピレン100に対して1.4であった。また、高温GPC測定による重量平均分子量は40000であった。そして、エチレングリコールモノn−ブチルエーテルを0.5質量部とした以外は、実施例1と同様の方法で組成物を調整しこれをサイジングしたのち、80℃の乾燥機に5分間通して水分を乾燥させた後、150℃の乾燥機で5分間熱処理し、更に、160℃の乾燥機で15分間熱処理して、炭素繊維束を得て、組成物の付着量を測定したところ、炭素繊維束100質量部に対して1.0質量部であった。炭素繊維束を250℃に加熱して、エチレングリコールモノn−ブチルエーテルを捕集し、定量したところ、無水マレイン酸変性ポリオレフィン100質量部に対して、0.1質量部であった。
得られた炭素繊維束について、実施例1と同様に引張せん断強度を測定したところ、表2に示すように高いせん断強度を得た。
得られた炭素繊維束について、実施例1と同様に擦過毛羽量を測定したところ、表2に示すとおり、擦過毛羽量は少なかった。
【0074】
[実施例12]
エチレングリコールモノn −ブチルエーテルの量を表2に示す組成に変更した以外は、実施例10と同様の方法により、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを得た。そして、実施例1と同様の方法で組成物を調整しこれをサイジングした炭素繊維束を得た後、炭素繊維束とポリプロピレンフィルムの引張せん断強度を測定した。
得られた炭素繊維束について、実施例1と同様に引張せん断強度を測定したところ、表2に示すように高いせん断強度を得た。
得られた炭素繊維束について、実施例1と同様に擦過毛羽量を測定したところ、表2に示すとおり、擦過毛羽量は少なかった。
【0075】
[実施例13]
ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤の量を表2に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを得た。そして、実施例1と同様の方法で組成物を調整しこれをサイジングした炭素繊維束を得た後、炭素繊維束とポリプロピレンフィルムの引張せん断強度を測定した。実施例13の場合、引張せん断強度がやや劣り、擦過毛羽量がやや多かった。表2に結果を示す。
【0076】
[比較例1]
エチレングリコールモノn −ブチルエーテルを除いた以外は、実施例1と同様の方法により、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを得た。そして、実施例1と同様の方法で組成物を調整しこれをサイジングした炭素繊維束を得た後、炭素繊維束とポリプロピレンフィルムの引張せん断強度を測定した。比較例1の場合、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの皮膜が不均一であり、引張せん断強度の低いものしか得られず、擦過毛羽量が多かった。表3に結果を示す。
【0077】
[比較例2]
エチレングリコールモノn −ブチルエーテルおよびポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤を除いた以外は、実施例1と同様の方法により、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを得た。そして、実施例1と同様の方法で組成物を調整しこれをサイジングした炭素繊維束を得た後、炭素繊維束とポリプロピレンフィルムの引張せん断強度を測定した。比較例2の場合、酸変性ポリオレフィンの皮膜が不均一であり、低い引張せん断強度と擦過毛羽量が多かった。表3に結果を示す。
【0078】
[比較例3〜4]
エチレングリコールモノn −ブチルエーテルの量を表3に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを得た。そして、実施例1と同様の方法で組成物を調整しこれをサイジングした炭素繊維束を得て、炭素繊維束とポリプロピレンフィルムの引張せん断強度を測定した。比較例3の場合、酸変性ポリオレフィンの皮膜が不均一であり、の低いものしか得られず、擦過毛羽量が多かった。比較例4の場合、炭素繊維束とポリプロピレンフィルムを230℃で接着するとき、気泡が発生し、低い引張せん断強度と高い擦過毛羽量を得た。表3に結果を示す。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
[実施例14]
マトリックス樹脂として、プライムポリマー製のポリプロピレン“プライムポリプロJ108M”(登録商標)ペレットを冷凍粉砕し、更に、20メッシュ、及び30メッシュにて分級した平均粒径約1mmパウダーを用意した。実施例1で得られた炭素繊維束を16mmにカットしたもの、およびポリプロピレンパウダーを、炭素繊維の供給量を600g/min、ポリプロピレンパウダーの供給量を465g/minにセットしてテーパ管内に導入した。テーパ管内で空気を炭素繊維に吹き付けて繊維束を部分的に開繊しつつ、ポリプロピレンパウダーとともにテーパ管出口の下部に設置したテーブル上に散布した。散布された炭素繊維およびポリプロピレンパウダーを、テーブル下部よりブロワにて吸引し、定着させて、厚み5mm程度の炭素繊維ランダムマットを得た。
得られた炭素繊維ランダムマットを、240℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて 5分間加熱し、目付け2500g/m2、厚み2.0mm、繊維体積含有率40Vol%の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を得た。
得られた成型板の曲げ物性は、曲げ強度286MPa、曲げ弾性率24GPaであった。
【0083】
[実施例15]
実施例1で得られた炭素繊維束を一方向に引き揃えたシートの上下に、炭素繊維100体積部に対してポリプロピレン樹脂100体積部となる様にポリプロピレン樹脂フィルム(プライムポリマー製、ポリプロピレン“プライムポリプロJ108M”(登録商標)を用い、30μ厚みのフィルムにしたもの)を乗せ、240℃の加熱ローラーにて一軸配向炭素繊維複合材料シートを得た。一軸配向炭素繊維複合材料シートの炭素繊維目付は、100g/m2で、炭素繊維含有率は50Vol%であった。
この一軸配向炭素繊維複合材料シートを一方向に18枚重ね、240℃に加熱したプレス装置にて、3.0MPaにて5分間加熱し、t=2.0mmの成形板を得た。
得られた成型板の一軸方向の曲げ物性は、曲げ強度801MPa、曲げ弾性率103GPaであった。
【0084】
[実施例16]
実施例1で得られた炭素繊維束を一方向に引き揃え、炭素繊維100体積部に対してポリプロピレン樹脂(プライムポリマー製の“プライムポリプロJ108M”(登録商標)、150体積部で、プルトリュージョン成形し、幅25mm、厚み0.1mmの一軸配向炭素繊維複合材料成型板を得た。
【0085】
[実施例17]
実施例14で得られたt=2mmの炭素繊維ランダムマット複合材料成型板をIRオーブンにて220℃まで予備加熱を行い、金型温度80℃に温度調節した図5に記載の断面形状を有する金型へ沿わせ、コールドプレスにて30秒間加圧保持後、厚さ2.0mmの成形品を取り出した。成形品は材料の割れやシワの発生が無く、良品の炭素繊維複合材料成形体を得ることが出来た。
【0086】
[実施例18]
実施例14で得られたt=2mmの炭素繊維ランダムマット複合材料成型板をIRオーブンにて220℃まで予備加熱を行い、金型温度80℃に温度調節した図6に示す部分曲率1500mmの曲率を有する断面形状の金型へ沿わせ、コールドプレスにて30秒間加圧保持後、厚さ2.0mmの当該成形品を取り出した。成形品は材料の割れやシワの発生が無く、良品の炭素繊維複合材料成形体を得ることが出来た。
【0087】
[実施例19]
実施例14で得られたt=2mm炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を、IRオーブンにて220℃まで予備加熱を行い、金型温度80℃に温調した図7の段差形状を有した金型へ沿わせ、コールドプレスにて30秒間加圧保持後、厚さ約2mmの当該成形品を取り出した。成形品は製品立ち面あるいはしぼり部分にシワの発生が無く、良品の炭素繊維複合材料成形体を得ることが出来た。
【0088】
[実施例20]
実施例14で得られたt=2mm炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を、IRオーブンにて220℃まで予備加熱を行い、金型温度80℃に温調した図8の二重曲率のある形状を有した金型へ沿わせ、コールドプレスにて30秒間加圧保持後、厚さ約2mmの当該成形品を取り出した。成形品は製品立ち面あるいはしぼり部分にシワの発生が無く、良品の炭素繊維複合材料成形体を得ることが出来た。
【0089】
[実施例21]
実施例14で得られたt=2mm炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を図4に示す金型へ沿わせ、230℃まで金型本体温度を昇温させ、プレス機にて金型を閉じ2分間加圧保持後、冷却媒体を使用して金型温度を80℃まで冷却したのち、厚さ2.0mm当該成形品を取り出した。成形品は材料の割れやシワの発生が無く、良品の炭素繊維複合材料成形体を得ることが出来た。
【0090】
[実施例22]
実施例14で得られた炭素繊維ランダムマット複合材料成型板と実施例15で得られた一軸配向炭素繊維複合材料シートを一方向に2枚重ねた成形板をIRオーブンにて220℃まで予備加熱を行い、図4に示す金型へ沿わせ、コールドプレスにて30秒間加圧保持後、厚さ2.0mmの当該成形品を取り出した。成形品は天面、立ち面にシワの発生は無く、良品の炭素繊維複合材料成形体を得ることが出来た。
本実施例で得られた成形品は、自動車用フロアパン用途を目的とした際に強度が必要とされる部分、例えば天井部分および両立ち面に一軸配向炭素繊維成形板を設けたものである。
【0091】
[実施例23]
実施例14で得た炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を、幅30cm×長さ50cmのサイズに切り出し1層重ねた上に、実施例16で得た一軸配向炭素繊維複合材料成型板を6枚並列に並べたものを2層重ね、240℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて3分間加熱し、t=2.2mmの平板を得た。得られた平板をヒーターを用いて240℃に加熱した後、コールドプレスにて図9に記載の形状に成形した。
これを2組用い、図3に記載のように、面対称に貼り合せ、角柱を得た。
【0092】
[実施例24]
型内中央に、実施例15で得た一軸配向炭素繊維複合材料成型板を2枚積層し、その上に、実施例14で得られた炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を幅30cm×長さ50cmのサイズに切り出したものを4層積層、賦型した。これを240℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて5分間加熱し、図10に記載の形状に成形した。
これを2組用い、図3に記載のように、面対称に貼り合せ、角柱を得た。
【0093】
[実施例25]
実施例15で得た一軸配向炭素繊維複合材料成型板で得られた一方向材を6枚並列に並べたものを8層重ねたものの上下に、実施例14と同様な方法で、ただし目付け600g/m2とした、厚み0.5mm、繊維体積含有率40Vol%の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を、幅30cm×長さ50cmのサイズに切り出し、積層したものを240℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて5分間加熱し、t=2.0mmのサンドイッチ板を得た。得られたサンドイッチ板をヒーターを用いて240℃に加熱した後、コールドプレスにて図11に記載の形状に成形した。これを2組用い面対称に貼り合せ、角柱を得た。
【0094】
[実施例26]
実施例15で得られた一軸配向炭素繊維複合材料成型板を8層重ねたものの上下に、実施例14と同様な方法で、ただし目付け600g/mとした、、厚み0.5mm、繊維体積含有率40Vol%の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を、幅30cm×長さ50cmのサイズに切り出し、積層したものを240℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて3分間加熱し、t=2.0mmのサンドイッチ板を得た。
得られたサンドイッチ板をヒーターを用いて240℃に加熱した後、コールドプレスにて図11に記載の形状に成形した。
これを2組用い、図3に記載のように、面対称に貼り合せ、角柱を得た。
【0095】
[実施例27]
実施例14で得た炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を、幅30cm×長さ50cmのサイズに切り出し、1層重ねたものの上下に、実施例15で得られた一軸配向炭素繊維複合材料成型板を積層したものを、240℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて5分間加熱し、t=2.0mmのサンドイッチ板を得た。得られたサンドイッチ板をヒーターを用いて240℃に加熱した後、コールドプレスにて図12に記載の形状に成形した。これを2組用い、図3に記載のように、面対称に貼り合せ、角柱を得た。
【0096】
[実施例28]
実施例14で得た炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を、幅30cm×長さ50cmのサイズに切り出し、1層重ねたものの上下に、実施例16で得られた一軸配向炭素繊維複合材料成型板を6枚並列に並べたものを、240℃に加熱したプレス装置にて、3MPaにて3分間加熱し、t=2.0mmのサンドイッチ板を得た。
得られたサンドイッチ板をヒーターを用いて240℃に加熱した後、コールドプレスにて図13に記載の形状に成形した。これを2組用い、図3に記載のように、面対称に貼り合せ、角柱を得た。
【0097】
[実施例29]
実施例1で得られた炭素繊維束巻いたボビンをクリールにセットし、押出機の先端に据えつけたクロスヘッドダイに引き込み、ポリプロピレン樹脂ペレット(プライムポリマー製プライムポリプロ(登録商標)J108M)を溶融させながら炭素繊維束と一緒に引き出した。炭素繊維束がポリプロピレンで固められたストランドを得た。得られたストランドは、ペレタイザーで切断され、炭素繊維の長繊維ペレットを得た。
繊維重量含有率は、ペレットを500℃のオーブンに2時間投入し、樹脂成分を除きその重量変化から求めた結果、25.0%であった。
含浸率:下記式により計算した結果、含浸率99%であった。
含浸率(重量%) = 100−Wdf/(Wp×Wf)
この式においてWdfは長繊維ペレット中のドライファイバー重量であり、Wpは長繊維ペレット重量であり、Wfは炭素繊維の重量含有率である。ドライファイバーの重量は、ペレットを割り、樹脂が含浸されていない炭素繊維をより分けて測定した。
ダンベル試験片は得られたペレットを射出成型機により作成し、引張強度、引張伸びはASTM D638に準拠し測定を行った。
ダンベル試験片は得られたペレットを射出成型機により作成し、曲げ強度、曲げ弾性率はASTM D790に準拠し測定を行った。
得られた試験片の引張強度は132MPa、引張伸びは1.1%、曲げ強度は、220MPa、曲げ弾性率は13.3GPaであった。
【0098】
[実施例30]
ポリプロピレン樹脂ペレットをプライムポリマー製プライムポリプロ(登録商標)J108M)98重量%、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三洋化成社製ユーメックス(登録商標)1010)を2重量%でペレット同士を回転式ブンレンダーで混合したものを用いた以外は、実施例29と同様な条件でペレットおよび試験片を得た。繊維重量含有率は25.1%であり。含浸率は99%であった。
得られた試験片の引張強度は105MPa、引張伸びは1.0%、曲げ強度は、185MPa、曲げ弾性率は12.6GPaであった。
【符号の説明】
【0099】
1.ランダム層
2.一方向材層(0度)
3.一方向材層(90度)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸および又は酸無水物で変性されたポリオレフィン100質量部、およびグリコールエーテル系化合物0.1〜50質量部を含む組成物が炭素繊維の表面に付着した炭素繊維束であって、該組成物の付着量が炭素繊維束100質量部に対して、0.01〜10質量部である炭素繊維束。
【請求項2】
ポリオレフィンが、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、1−ブテン、および1−ブテン−α−オレフィン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維束。
【請求項3】
酸および又は酸無水物が、カルボン酸およびその酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の炭素繊維束。
【請求項4】
酸および又は酸無水物で変性されたポリオレフィンが、ポリプロピレンおよびプロピレン−α−オレフィン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種100質量部に対し、不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種をグラフト共重合したものであり、オレフィンと酸および又は酸無水物の共重合比がモル比で0.01から5である請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維束。
【請求項5】
グリコールエーテル系化合物が下記式(1)
2m1+1m1−(O−Xn1−OH (1)
(n1:1〜4の整数、m1:1〜4の整数、X:炭素数1〜5のアルキレン基)
で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維束。
【請求項6】
酸および又は酸無水物で変性されたポリオレフィンの重量平均分子量が35,000〜100,000であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維束。
【請求項7】
酸および又は酸無水物で変性されたポリオレフィン100質量部、グリコールエーテル系化合物0.5〜50質量部からなる組成物を、炭素繊維束100質量部に対して、0.01〜10質量部、炭素繊維の表面に付与した後、80℃〜160℃で30秒以上熱処理することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の炭素繊維束の製造方法。
【請求項8】
組成物を水性エマルジョンとして用いる請求項7に記載の炭素繊維束の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の炭素繊維束を繊維長2〜60mmとしたものから構成され、炭素繊維が25〜3000g/mの目付けにて実質的に面内ランダムに配向していることを特徴とするランダムマット。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載の炭素繊維束を繊維長2〜60mmとしたものと、熱可塑性樹脂とから構成され、炭素繊維が25〜3000g/mの目付けにて実質的に面内ランダムに配向していることを特徴とするランダムマット。
【請求項11】
熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂である請求項10に記載のランダムマット。
【請求項12】
ランダムマットにおける熱可塑性樹脂の存在量が、炭素繊維100重量部に対し、50〜1000重量部である事を特徴とする請求項10または11に記載のランダムマット。
【請求項13】
熱可塑性樹脂が、繊維状、粉末状、又は粒状で存在することを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載のランダムマット。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれかに記載のランダムマットを、熱可塑性樹脂の融点以上で加圧することにより得られることを特徴とする、炭素繊維ランダムマット複合材料成型板。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれかに記載の炭素繊維束を引き揃え、溶融した熱可塑性樹脂と接触させることにより炭素繊維束と熱可塑性樹脂とが複合されてなることを特徴とする、一軸配向炭素繊維複合材料。
【請求項16】
複合材料の形状が円筒状であることを特徴とする請求項15に記載の一軸配向炭素繊維複合材料。
【請求項17】
複合材料の形状がシート状であることを特徴とする請求項15に記載の一軸配向炭素繊維複合材料。
【請求項18】
熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂である請求項15〜17のいずれかに記載の一軸配向炭素繊維複合材料。
【請求項19】
熱可塑性樹脂の存在量が、炭素繊維100重量部に対し、30〜200重量部である事を特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載の一軸配向炭素繊維複合材料。
【請求項20】
請求項14に記載の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板と、請求項15〜19のいずれかに記載の一軸配向炭素繊維複合材料とを有する炭素繊維複合成形体。
【請求項21】
請求項14に記載の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板と、請求項15〜19のいずれかに記載の一軸配向炭素繊維複合材料とを積層した板状物を得て、それをプレス成形することにより得られる、立体形状である請求項20に記載の炭素繊維複合成形体。
【請求項22】
請求項14に記載の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板と、請求項15〜19のいずれかに記載の一軸配向炭素繊維複合材料とを合わせて型内にてプレスすることにより得られる、立体形状である請求項20に記載の炭素繊維複合成形体。
【請求項23】
請求項14に記載の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板をスキン層とし、請求項15〜19のいずれかに記載の一軸配向炭素繊維複合材料をコア材とする炭素繊維サンドイッチ材。
【請求項24】
請求項14に記載の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板をコア材とし、請求項15〜19のいずれかに記載の一軸配向炭素繊維複合材料をスキン層とする炭素繊維サンドイッチ材。
【請求項25】
請求項14に記載の炭素繊維ランダムマット複合材料成型板を基材とし、請求項15〜19のいずれかに記載の一軸配向炭素繊維複合材料を部分的に用いる事を特徴とする自動車用フロアパン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−7280(P2012−7280A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166339(P2010−166339)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】