説明

点字を表現可能な携帯電話機および携帯電話機における点字表現方法

【課題】 特別な装置を必要とせずに、視覚障害者が携帯電話機上で受信したメール文書の内容を読むことができる点字を表現可能な携帯電話機および携帯電話機における点字表現方法を提供する。
【解決手段】 キー操作部111における特定のダイヤルキーが点字を構成する各点に対応した特定キーとして割り当てられ、受信したメール文書に含まれている文字を点字に変換して点字情報を作成する制御部(CPU部103、メモリ部104、変換処理部105)と、制御部から通知される点字情報にもとづいて、特定キーの各キーの突出制御を行うキー操作制御部110とを備える。なお、特定キーは、キー操作部を構成するダイヤルキーのうち、2行3列のマトリクスを構成するダイヤルキーである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、携帯電話機上で受信したメール文書の内容を点字表現することができる点字を表現可能な携帯電話機および携帯電話機における点字表現方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、携帯電話機は、一般に広く普及し、もはや、日常生活における必需品の一つになりつつある。また、近年の携帯電話機には、電子メールによって種々の情報の送受信を行うことができるメール機能が付随しているものが多く、情報や連絡のやり取りには、携帯電話機に付随しているメール機能(いわゆる携帯メール)が多く用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のような携帯電話機は、受信したメール文書の内容を表示パネル(通話時間等の表示にも兼用される液晶パネル等)に表示するので、視覚障害者は、携帯電話機上で、受信したメール文書の内容を読むことができない。
【0004】特開平11−331407号公報や特開平11−306103号公報には、受信したメール文書の内容を点字表現する構成が開示されている。そして、そのような構成を携帯電話機に応用すれば、視覚障害者は、携帯電話機で受信したメール文書の内容を読むことができる。しかし、そのような構成を用いる場合には、点字を表示するために点字プリンタ等の特別な装置が必要になり、視覚障害者は、携帯電話機の他にそのような特別な装置を携帯しなければならなくなる。
【0005】そこで、本発明は、特別な装置を必要とせずに、視覚障害者が携帯電話機上で受信したメール文書の内容を読むことができる点字を表現可能な携帯電話機および携帯電話機における点字表現方法を提供することを目的とする。
【0006】なお、特開2001−45135号公報には、携帯電話機のダイヤルキーのうち、特定のダイヤルキーを点字を構成する各点に対応させ、特定のダイヤルキーの押し下げ状況を検出することにより、利用者による点字の入力を認識し、その点字を通常の文字に変換して電子メールを送信する通信端末装置の構成が開示されている。その通信端末装置によれば、視覚障害者でも、点字でメール文書を入力することができる。
【0007】しかし、その公報には、視覚障害者が点字によってメール文書を入力することができる構成については開示されているが、携帯電話機が受信したメール文書の内容を視覚障害者が認識できる態様で表示する構成については開示されていない。そのため、その公報に掲載されている携帯電話機を用いたとしても、視覚障害者は、携帯電話機上で受信したメール文書の内容を読むことができない。
【0008】また、実開昭61−167681号公報には、種々の情報を表示するガイド板面に点字を構成する点に対応した孔部を備え、その孔部の内周に薄膜を張り付けけ、センタ等から送信されたメッセージを点字に変換し、その点字を構成する点に対応した孔部に空気が供給させることにより、その孔部における薄膜をガイド板上に突出させて、視覚障害者に対して点字でメッセージの内容を通知する点字表示制御装置の構成が開示されている。そして、この公報に開示された構成を携帯電話機に適用すれば、視覚障害者であっても、携帯電話機上で受信したメール文書の内容を読むことができる。
【0009】しかし、その公報に開示された構成をそのまま携帯電話機に適用した場合には、携帯電話機が大型化してしまう。すなわち、その点字表示制御装置のガイド板に対応した構成を携帯電話機に設ける必要があるので、結果として、携帯電話機が大型化してしまう。そのため、携帯電話機の小型化および軽量化の要請に応えることができなくなってしまう。また、視覚障害者における携帯負担も大きくなってしまう。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明による点字を表現可能な携帯電話機は、キー操作部における特定のダイヤルキーが点字を構成する各点に対応した特定キーとして割り当てられ、受信した電子メールに含まれている文字を点字に変換して点字情報を作成する制御部と、制御部から通知される点字情報にもとづいて特定キーの突出制御を行って点字を表現するキー操作部制御部とを備えたことを特徴とする。
【0011】特定キーには、2行3列のマトリクスを構成するダイヤルキーが割り当てられている。特定キーをこのように選択することによって、特定キーの各ダイヤルキーを点字を構成する各点に対応させることができる。そして、ユーザは、特定キーの各点の凹凸を指先等で触れることにより、携帯電話機上で受信したメールの内容を読むことができる。
【0012】特定キーは、キーカバーと、キーカバーの内部に備えられた袋部とを備え、キー操作部制御部は、袋部の内部にチューブを介して液体を注入するポンプ部を備え、キー操作部制御部は、点字の凸部に対応した特定キーの袋部の内部に液体を注入する構成とした。このような構成にすることによって、キー操作部制御部は、ポンプから袋部の内部に液体を注入することによって、袋部を膨張させることができ、それにより、点字の凸部に対応した特定キーを突出させることができる。
【0013】携帯電話機の筐体に、次の文字を指定するための第1のサイドスイッチ部と前の文字を指定するための第2のサイドスイッチ部とを備え、キー操作部制御部は、第1のサイドスイッチ部が押された場合には、点字変換された電子メール中の特定キーで表現されている点字の直後の点字を表現し、第2のサイドスイッチ部が押された場合には、特定キーで表現されている点字の直前の点字を表現する。
【0014】音を出力する音声出力部を備え、制御部は、第1のサイドスイッチ部が押された場合に、キー操作部に表現されている点字が電子メール中の最後の文字に対応したものであるときには、文末を示す音を音声出力部から出力させ、第2のサイドスイッチ部が押された場合に、キー操作部に表現されている点字が電子メール中の文頭の文字に対応したものであるときには、文頭を示す音を音声出力部から出力させる。このような構成によれば、利用者(視覚障害者)は、音声出力部から出力される音によって、キー操作部にメール文書の文頭または文末の文字が表現されていることを認識することができる。
【0015】特定キーは、キー操作部において凸部を有する凸部モールドによって他のキーと区画されている。このような構成にすれば、利用者は、凸部モールドを指先等で触れることによって、点字が表現される部位を容易に認識することができる。
【0016】本発明による携帯電話機における点字表現方法は、キー操作部における特定のダイヤルキーを、点字を構成する各点に対応した特定キーとして割り当てるステップと、受信した電子メールに含まれている文字を点字に変換して点字情報を作成するステップと、点字情報にもとづいて特定キーの各キーの突出制御を行うステップとを有することを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明による実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明による点字を表現可能な携帯電話機の構成を示すブロック図である。
【0018】図1に示す携帯電話機は、アンテナ101、無線部102、CPU部103、メモリ部104、変換処理部105、辞書106、点字変換表107、「次の文字」サイドスイッチ部(第1のサイドスイッチ部)108、「前の文字」サイドスイッチ部(第2のサイドスイッチ部)109、キー操作部制御部110、キー操作部111、スピーカ113およびポンプ部114を備えている。なお、特許請求の範囲に記載の制御部は、CPU部103、メモリ部104および変換処理部105に相当する。
【0019】無線部102は、アンテナ101を介して受信した情報をCPU部103に対して出力し、CPU部103から入力した情報をアンテナ101を介して外部(無線基地局等)に対して送信する。メモリ部104は、CPU部103から入力される情報を記憶し、また、既に記憶されている情報をCPU部103に対して出力する。メモリ部104には、さらに、CPU部103を機能させるためのプログラム等も記憶されている。
【0020】スピーカ113は、CPU部103から指示された音声を出力する。図1には図示していないが、CPU部103とスピーカ113との間には、CPU部103から出力されるディジタル音声信号をアナログ音声信号に変換する音声変換部が備えられている。「次の文字」サイドスイッチ部108および「前の文字」サイドスイッチ部109は、スイッチの押下情報をCPU部103に対して出力する。なお、特許請求の範囲に記載の音声出力部は、スピーカ113および音声変換部に相当する。
【0021】「次の文字」サイドスイッチ部108および「前の文字」サイドスイッチ部109は、スイッチの押下情報をCPU部103に対して出力する。すなわち、「次の文字」サイドスイッチ部108は、ユーザによりスイッチが押し下げられた場合には、その情報をCPU部103に対して出力する。「前の文字」サイドスイッチ部109についても同様である。なお、特許請求の範囲に記載の第1のサイドスイッチ部は、「次の文字」サイドスイッチ部108に相当し、第2のサイドスイッチ部は、「前の文字」サイドスイッチ部109に相当する。
【0022】キー操作部制御部110は、CPU部103からの指示に応じて、キー操作部111に対して指示を与える。キー操作部制御部110は、ポンプ部114を備えている。キー操作部111には、ダイヤルボタン等が含まれている。ポンプ部114の詳細については、後述する。
【0023】変換処理部105は、CPU部103からの指示により情報処理(メール文書(電子メール)の点字変換等)を行い、その処理結果をCPU部103に対して出力する。変換処理部105は、辞書106および点字変換表107を備えている。辞書106には、漢字に対応したひらがなが記憶され、点字変換表107には、通常の文字(ひらがな、英字、数字等)に対応した点字が記憶されている。すなわち、辞書106は、漢字をひらがなに変換するために備えられ、点字変換表107は、通常の文字を点字に変換するために備えられている。
【0024】なお、図示していないが、図1に示す携帯電話機には、通話者からの音声を収集するマイクを含む音声入力部や相手先電話番号その他の情報を表示するための表示パネル(液晶パネル)が備えられている。
【0025】図2は、図1に示す携帯電話機の外観を示す斜視図である。携帯電話機は、筐体112によって覆われている。キー操作部111は、筐体112の表面に設けられている。アンテナ101は、筐体112の側面から突出している。「次の文字」サイドスイッチ部108および「前の文字」サイドスイッチ部109は、筐体112の側面(例えば、アンテナ101が突出していない側面)に設けられている。「次の文字」サイドスイッチ部108および「前の文字」サイドスイッチ部109は、例えば、携帯電話機に備えられているサイドボタンに割り当てられている。
【0026】点字は、2行3列(縦3ドット横2ドット)の計6点を一つの単位として構成され、これらの点の凹凸の組み合わせで一つの文字が表現される。そして、本実施の形態では、図2に示すように、キー操作部111を構成するキーのうち6つのキー(特定キー)を点字を構成する点に割り当てている。すなわち、特定キーは、横2行縦3列のマトリクスを構成するように選択されている。特定キーには、例えば、「1」、「2」、「4」、「5」、「7」および「8」のキーが割り当てられる。特定キーは、他のキーと区別するために、図2に示すように、凸部モールド201によって他のキーと区画されている。このように、特定キーが凸部を有する凸部モールド201によって他のキーと区画されることによって、視覚障害者(ユーザ)でも、特定キーを容易に識別することができる。なお、特定キーは、ユーザの選択によって通常のキーとしても使用可能である。
【0027】図3および図4は、特定キーの断面図である。キーカバー301の内部には、軟質性の袋部304が設けられ、その袋部304の先には、チューブ302が接続されている。さらに、チューブ302は、キー操作部制御部110のポンプ部114に接続されている。袋部304の下には、袋部304およびチューブ302を固定するための土台303が設けられている。
【0028】特定キーが通常のキーまたは点字の凹部として使用される場合には、図3に示すように、袋部304は、収縮した状態になっている。すなわち、袋部304内に液体401が注入されていない状態になっている。一方、特定キーが点字の凸部として使用される場合には、袋部304内に液体401が注入され、それにより袋部304が膨張し、キーカバー301が押し上げられた状態になっている。すなわち、図4に示すように、袋部304の膨張により、特定キーが突出した状態になっている。液体401は、チューブ302を介してポンプ部114から注入される。液体401は、気化性が低いものが望ましい。
【0029】次に、動作について説明する。図5および図6は、本発明による点字を表現可能な携帯電話機の動作を説明するためのフローチャートである。
【0030】最初に、ユーザは、特定キーを通常のキーとして使用するか否かの設定(点字変換設定)を例えばキー操作部111におけるボタン操作等によって行う。すなわち、ユーザは、携帯電話機で受信したメール文書の内容を点字で表現させるか否かの設定を予め行う。点字変換設定の情報は、メモリ部104に記憶される。また、携帯電話機の筐体112に点字変換設定を行うためのスイッチが設けられている場合には、ユーザは、そのスイッチの切り替えを行うことによって、点字変換設定を行ってもよい。
【0031】CPU部103は、無線部102からメール着信を示す信号を入力すると(ステップS1)、点字変換設定の内容を判断する(ステップS2)。すなわち、メモリ部104に記憶されている点字変換設定の内容を確認する。なお、CPU部103は、受信したメール文書をメモリ部104に記憶する。
【0032】特定キーを通常キーとして使用する点字変換設定オフの設定がなされている場合には、CPU部103は、通常のメール表示を行う(ステップS3)。すなわち、CPU部103は、受信したメール文書の内容を表示パネルに表示する。
【0033】特定キーを点字表現用として使用する点字変換設定オンの設定がなされている場合には、CPU部103は、受信したメール文書中に漢字が含まれているか否かを確認する(ステップS4)。メール文書中に漢字が含まれていない場合(ステップS5)、CPU部103は、変換処理部105に対してメール文書を構成する文字を点字に変換するように指示する。変換処理部105は、点字変換表107を用いてメール文書を構成する文字を点字に変換し、その変換結果(点字情報)をCPU部103に対して出力する(ステップS7)。CPU部103は、その変換結果をメモリ部104に記憶する。
【0034】一方、メール文書中に漢字が含まれている場合には(ステップS5)、CPU部103は、漢字をひらがなに変換したのち点字に変換するように変換処理部105に対して指示する。変換処理部105は、辞書106を用いてメール文書中に含まれている漢字をひらがなに変換する(ステップS6)。そして、変換処理部105は、そのメール文書中の文字を点字変換表107を用いて点字に変換し、その点字情報をCPU部103に対して出力する(ステップS7)。
【0035】CPU部103は、点字情報および点字表現をすることを指示する情報をキー操作部制御部110に対して出力する。この場合、CPU部103は、点字情報として、メール文書中の最初(文頭)の文字に対応した点字を示す情報をキー操作部制御部110に対して出力する。
【0036】キー操作部制御部110は、CPU部103からの点字情報にもとづいて、キー操作部111に点字を表示させる(ステップS8)。具体的には、キー操作部制御部110は、点字情報が示す点字の凸部に対応した特定キーの袋部304にポンプ部から液体401を注入し、その特定キーを突出させる。
【0037】例えば、CPU部103から「え」を示す点字データを入力した場合には、その点字の凸部に対応した特定キーは、「1」、「2」および「4」であるので、キー操作部制御部110は、ポンプ部114から「1」、「2」および「4」のキー内に設けられている袋部304の内部に対して液体401を注入することにより、それらのキーを突出させる。一方、キー操作部制御部110は、「5」、「7」および「8」に設けられている袋部304に対しては液体を注入しない。すなわち、点字の凸部に対応したキーのみを突出させる。このようにすることにより、図7に示すように、「1」、「2」および「4」のキーのみが突出し、キー操作部111には、「え」を示す点字が表現される。
【0038】「次の文字」サイドスイッチ部108が押された場合(ステップS9)、CPU部103は、受信したメール文書中に次の文字が存在するか否かを判断する(ステップS10)。すなわち、CPU部103は、受信したメール文書中に、現在キー操作部111に表現されている文字(点字)の直後に文字が存在するか否かを判断する。
【0039】メール文書中に次の文字が存在しない場合には、CPU部103は、文書終了と判断し、現在キー操作部111に表現されている点字がメール文書中の文末の文字に対応したものであると判断し、スピーカ113から文書終了を示すアラームを鳴音させる(ステップS11)。また、CPU部103は、スピーカ113から文書終了を示すメッセージ(例えば、「最後の文字です」等)を出力させてもよい。ユーザは、スピーカ113より出力される音により、キー操作部111に文末の文字が表現されていることを認識することができる。
【0040】一方、メール文書中に次の文字が存在する場合には、CPU部103は、キー操作部制御部110を制御させてキー操作部111に次の文字に対応した点字を表現させる(ステップS12)。そして、ユーザによって「次の文字」サイドスイッチ部108が押された場合には(ステップS13(NO)、ステップS9)、ステップS10からの処理が実行される。すなわち、次の文字がキー操作部111に表現される。例えば、次の文字が「あ」である場合には、図8に示すように、キー操作部111において、「1」のキーのみが突出する。
【0041】また、ユーザによって「前の文字」サイドスイッチ部109が押し下げられた場合には(ステップS13(NO)、ステップS14)、CPU部103は、メール文書中に前の文字が存在するか否かについて判断する(ステップS15)。すなわち、CPU部103は、受信したメール文書中に、現在キー操作部111に表現されている文字(点字)の直前に文字が存在するか否かを判断する。
【0042】直前に文字が存在しない場合には、CPU部103は、メール文書の文頭に戻ったと判断して、スピーカ113から文頭に戻ったことを示すアラームを鳴音させる(ステップS16)。また、CPU部103は、文頭に戻ったことを示すメッセージ(例えば、「文頭にもどりました。」等)をスピーカ113から出力させてもよい。ユーザは、スピーカ113から出力される音により、キー操作部111に文頭の文字が表現されていることを認識することができる。一方、前の文字が存在する場合には、CPU部103は、キー操作部制御部110を制御してキー操作部111に前の文字を表現させる(ステップS17)。そして、ステップS13からの処理が実行される。
【0043】以上のように、本実施の形態に係る携帯電話機は、受信したメール文書中の文字を点字に変換し、キー操作部111に割り当てられている特定キーのうち点字の凸部に対応したキーを突起させる制御を行うことで、受信したメール文書の内容を点字で表現するので、視覚障害者であっても、携帯電話機上で受信したメール文書を読むことができる。また、視覚障害者に対してメール文書を送信する場合であっても、メール送信者は、健常者に対するメール送信の場合と同様にメール送信を行うことができる。
【0044】また、視覚障害者は、携帯電話機だけで受信したメール文書を読むことができるので、従来のように、点字を表示させるための点字プリンタ等の特別な装置が不要になる。そのため、視覚障害者における携帯負担を軽減させることができ、より携帯性を向上させることができる。
【0045】さらに、携帯電話機におけるキー操作部111の特別のキーを点字表現用(特定キー)に割り当てているので、携帯電話機上に、新たに点字を表示させるための表示部を設けることが不要になる。それにより、携帯電話機におけるスペースの有効利用を図ることができる。また、特定キーは、他のキーとは凸部モールド201によって区画されているので、視覚障害者は、凸部モールド201を指等で触れることにより、点字が表現される部位を容易に認識することができる。
【0046】なお、視覚障害者は、図1に示す携帯電話機において点字によってメール文書を入力してもよい。この場合、視覚障害者は、点字を構成する凸部に対応した特定キーを押し下げする。例えば、「え」に対応した点字を入力する場合には、「1」、「2」および「4」のキーを押し下げる。すると、キー操作部111はキー操作部制御部110を介してキーの押し下げ情報をCPU部103に対して出力し、CPU部103は、その入力情報にもとづいて入力された点字を認識し、その点字を通常の文字に変換させてメモリ部104に記憶する。通常の文字への変換は、変換処理部105によってなされる。
【0047】次の文字を入力する場合、視覚障害者は、「次の文字」サイドスイッチ部108を押して、先の点字入力と同様な手順で次の点字を入力する。また、メール文書の作成が終了した場合には、視覚障害者は、キー操作部111における終話キー等を押して文書作成完了を指示し、CPU部103は、無線部102を介して、メモリ部104に記憶されているメール文書を視覚障害者によって指示されて宛先に送信する。このようにすることにより、視覚障害者は、携帯電話機上で、点字によってメール文書を作成することができる。
【0048】なお、上記の実施の形態では、ポンプ部114から特定キーの内部の袋部304内に液体401を注入することにより、特定キーを突出させる例について示したが、液体401の代わりに気体を用いてもよい。
【0049】また、キー操作部111を構成するダイヤルキーのうち横2行かつ縦3列のマトリクスを構成するダイヤルキーを特定キーとして選択した例について示したが、横3行かつ縦2列のマトリクスを構成するダイヤルキーを特定キーとしてもよい。このようにすれば、携帯電話機を横にした状態で、視覚障害者は、メール文書を点字で読むことができる。
【0050】さらに、キー操作部111を構成するダイヤルキーを2つの特定キーに割り当てることによって、キー操作部111に2つの点字を表現させるようにしてもよい。例えば、図2に示すダイヤルキーのうち、「1」、「2」、「3」、「4」、「5」および「6」のダイヤルキーを第1の特定キーとして割り当て、「7」、「8」、「9」、「*」、「0」および「#」のダイヤルキーを第2の特定キーとして割り当ててもよい。このようにすれば、視覚障害者は、携帯電話機上で、2文字分ずつメール文書を点字で読むことができる。
【0051】また、上記の実施の形態では、受信した電子メールの内容を点字を表現可能な装置として携帯電話機を例示したが、そのような装置は、携帯電話機に限定されない。例えば、電子メールを受信する機能を有する携帯電話機やパーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用してもよい。特に、情報処理装置に適用する場合には、キーボード中の特定のキー(テンキー等)を点字表現用として割り当ててもよい。
【0052】
【発明の効果】本発明に係る携帯電話機は、キー操作部における特定のダイヤルキーが点字を構成する各点に対応した特定キーとして割り当てられ、受信した電子メールに含まれている文字を点字に変換して点字情報を作成する制御部と、制御部から通知される点字情報にもとづいて特定キーの突出制御を行って点字を表現するキー操作部制御部とを備えた構成にしたので、視覚障害者は、指先等で特定キーの凹凸を認識することによって、携帯電話機上で受信した電子メールを読むことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による点字を表現可能な携帯電話機の構成を示すブロック図である。
【図2】 図1に示す携帯電話機の外観を示す斜視図である。
【図3】 特定キーの断面図である。
【図4】 特定キーの断面図である。
【図5】 本発明による点字を表現可能な携帯電話機の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】 本発明による点字を表現可能な携帯電話機の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】 キー操作部111における点字表現の一例を示す説明図である。
【図8】 キー操作部111における点字表現の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
101 アンテナ
102 無線部
103 CPU部
104 メモリ部
105 変換処理部
106 辞書
107 点字変換表
108 「次の文字」サイドスイッチ部
109 「前の文字」サイドスイッチ部
110 キー操作部制御部
111 キー操作部
112 筐体
113 スピーカ
114 ポンプ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電子メールを受信する機能を有し、受信した電子メールの内容を点字表現する点字を表現可能な携帯電話機であって、キー操作部における特定のダイヤルキーが点字を構成する各点に対応した特定キーとして割り当てられ、受信した電子メールに含まれている文字を点字に変換して点字情報を作成する制御部と、前記制御部から通知される点字情報にもとづいて、前記特定キーの突出制御を行って点字を表現するキー操作部制御部とを備えたことを特徴とする点字を表現可能な携帯電話機。
【請求項2】 特定キーには、2行3列のマトリクスを構成するダイヤルキーが割り当てられる請求項1記載の点字を表現可能な携帯電話機。
【請求項3】 特定キーは、キーカバーと前記キーカバーの内部に備えられた袋部とを備え、キー操作部制御部は、前記袋部の内部にチューブを介して液体を注入するポンプ部を備え、点字の凸部に対応した前記特定キーの袋部の内部に液体を注入する請求項1または請求項2記載の点字を表現可能な携帯電話機。
【請求項4】 携帯電話機の筐体に、次の文字を指定するための第1のサイドスイッチ部と前の文字を指定するための第2のサイドスイッチ部とが設けられ、キー操作部制御部は、前記第1のサイドスイッチ部が押された場合には、点字変換された電子メール中の特定キーで表現されている点字の直後の点字を表現し、前記第2のサイドスイッチ部が押された場合には、特定キーで表現されている点字の直前の点字を表現する請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の点字を表現可能な携帯電話機。
【請求項5】 音を出力する音声出力部を備え、制御部は、第1のサイドスイッチが押された場合に、特定キーで表現されている点字が電子メール中の最後の文字に対応したものであるときには、文末を示す音を前記音声出力部から出力させ、第2のサイドスイッチが押された場合に、特定キーで表現されている点字が電子メール中の文頭の文字に対応したものであるときには、文頭を示す音を前記音声出力部から出力させる請求項4記載の点字を表現可能な携帯電話機。
【請求項6】 特定キーは、キー操作部において凸部を有する凸部モールドによって他のキーと区画されている請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の点字を表現可能な携帯電話機。
【請求項7】 携帯電話機上で、受信した電子メールの内容を点字で表現する携帯電話機における点字表現方法であって、キー操作部における特定のダイヤルキーを、点字を構成する各点に対応した特定キーとして割り当てるステップと、受信した電子メールに含まれている文字を点字に変換して点字情報を作成するステップと、前記点字情報にもとづいて、前記特定キーの各キーの突出制御を行うステップとを有することを特徴とする携帯電話機における点字表現方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2003−60742(P2003−60742A)
【公開日】平成15年2月28日(2003.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−246836(P2001−246836)
【出願日】平成13年8月15日(2001.8.15)
【出願人】(000197366)エヌイーシーアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】