説明

点灯装置および照明装置

【課題】共振回路が寿命末期に至ったことを正確に推定できる点灯装置および照明装置を提供する。
【解決手段】照明装置は、高周波でスイッチングされるスイッチング素子Q1,Q2、および当該スイッチング素子Q1,Q2を介して入力される高周波により励振される共振回路4を具備し、当該共振回路4により生成される高周波電力を供給してランプLAを点灯させる点灯装置Aと、共振回路4の異常の有無を点検するための擬似負荷回路7と、共振回路4に接続される回路を、点灯モードではランプLAを含む負荷回路に切り替えるとともに、点検モードでは擬似負荷回路7に切り替える切替スイッチ回路6および切替制御回路8と、点検モードにおいて共振回路4の異常の有無を検出するインバータ制御回路5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点灯装置および照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、蛍光ランプやHIDランプなどを使用した照明器具が提供されているが、これらの照明器具では、ランプが寿命に達すると点灯しなくなったり、点灯しにくくなったりし、あるいは初期段階の明るさが得られなくなることから、ランプが寿命に達したことを知ることができ、ランプ交換を行うことで初期性能を維持することが可能である。
【0003】
一方、ランプを点灯させるための点灯装置や器具本体にも寿命があり、例えば金属部品の疲労や酸化、プラスチック部品の劣化や変色や破損、さらには点灯装置の構成部品(例えば電解コンデンサやコイルなど)の劣化や絶縁性能の低下などによって現れる。しかしながら、ランプが正常に点灯している間は使用者がこれらに気づくことはなく、そのまま使い続けることが多い。そして、寿命を超えて使い続けることで照明としての適正な性能が得られないばかりか、劣化した部位によっては器具の破損や落下、焼損などの不安全状態を引き起こす危険性がある。
【0004】
そこで、上記のような不安全状態を回避するために、ランプの累積点灯時間から点灯装置の寿命を推定するものが提供されている(例えば特許文献1参照)。この点灯装置では、ランプの点灯時間を積算し、その積算結果が所定の基準値を越えると寿命であると判断し、ランプへの印加電圧の電圧値を低下させたり、発振を停止する保護動作を行うとともに、寿命が来たことを外部に報知するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−185374号公報(段落[0020]−段落[0031]、及び、第1,2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に示した点灯装置では、ランプの累積点灯時間から点灯装置の寿命を推定するものであるから、実際の寿命と必ずしも一致するものではない。また、点灯装置の寿命は、使用場所の周囲温度や器具の形状、照度レベル、電源電圧などによっても変わるため、ランプの累積点灯時間から寿命を推定することに対しては一部合理性に欠ける面も否めない。したがって、点灯装置を構成する電子部品が経年劣化によってその初期性能が維持できなくなった時点、あるいはその直前の状態を点灯装置の寿命として推定するのが望ましい。
【0007】
その一例として、点灯装置を構成する共振回路の出力電圧を検出し、この検出電圧から寿命を推定することも可能であるが、ランプが接続された状態ではランプの経年劣化や性能のばらつき、あるいは周囲温度などによっても出力電圧が変化するため、共振回路の劣化のみに起因する電圧変化を検出できず、結果的に点灯装置の寿命を正確に推定できないものであった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、共振回路が寿命末期に至ったことを正確に推定できる点灯装置および照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、高周波でスイッチングされるスイッチング素子、および当該スイッチング素子を介して入力される高周波により励振される共振回路を具備し、当該共振回路により生成される高周波電力を供給してランプを点灯させる点灯装置と、共振回路の異常の有無を点検するための擬似負荷回路と、共振回路に接続される回路を、点灯モードではランプを含む負荷回路に切り替えるとともに、点検モードでは擬似負荷回路に切り替える切替回路と、点検モードにおいて共振回路の異常の有無を検出する点検回路とを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、点検回路は、電源投入後の所定期間に点検モードを実行することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、ランプが交換されたことを検出するランプ交換検出手段を備え、点検回路は、ランプ交換検出手段によりランプが交換されたことを検出した後、最初の電源投入後の所定期間に点検モードを実行することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、共振回路の異常の有無を点検するための点検信号を外部から入力する点検信号入力手段を備え、点検回路は、点検信号入力手段からの点検信号が入力されると点検モードを実行することを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、ランプの累積点灯時間を計時する累積点灯時間計時手段を備え、点検回路は、累積点灯時間計時手段により計時された累積点灯時間が所定の基準値に到達した後、最初の電源投入後の所定期間に点検モードを実行することを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、擬似負荷回路は、少なくとも1つのインピーダンス素子で構成されることを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、点検モードにおける点灯回路の動作周波数が、共振回路の共振周波数付近の周波数に設定されることを特徴とする。
【0016】
請求項8の発明は、ランプは、フィラメント電極を有する放電ランプからなり、点灯開始時にランプのフィラメント電極に予熱電流を流す予熱モード、および放電を開始させるための高電圧をランプに印加する始動モードを経て安定点灯モードに移行するようにスイッチング素子を制御する制御回路を備え、当該制御回路は、点検モードにおける点灯回路の動作周波数が、始動モードにおける動作周波数と等しくなるように設定することを特徴とする。
【0017】
請求項9の発明は、点検モードにおける共振回路の出力特性が所定の規格値を満足しない場合にはランプへの電力供給を停止させる保護手段を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項10の発明は、擬似負荷回路および切替回路のうち少なくとも何れか一方を点灯装置に設けたことを特徴とする。
【0019】
請求項11の発明は、高周波でスイッチングされるスイッチング素子、および当該スイッチング素子を介して入力される高周波により励振される共振回路を具備し、当該共振回路により生成される高周波電力を供給してランプを点灯させる点灯回路部と、共振回路の異常の有無を点検するための擬似負荷回路と、共振回路に接続される回路を、点灯モードではランプを含む負荷回路に切り替えるとともに、点検モードでは擬似負荷回路に切り替える切替回路とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
ランプを接続した状態で共振回路の電気的特性の変化を検出する場合には、ランプの劣化や性能のばらつき、あるいは周囲温度などによっても電気的特性が変化するため、共振回路の劣化のみに起因する電気的特性の変化を検出することはできないが、請求項1の発明によれば、共振回路に接続される回路を擬似負荷回路に切り替えることによって、上記の不安定要因を排除して共振回路の劣化のみに起因する電気的特性の変化を検出することができるので、この特性変化から共振回路が寿命末期に至ったことを正確に推定することができる。また、切替回路を設けることによって、この切替回路に入力される信号に応じて任意のタイミングで擬似負荷回路に切り替えることができるので、所望のタイミングで共振回路の寿命を点検することができるという効果がある。
【0021】
請求項2の発明によれば、ランプを点灯させる際には必ず点検モードを実行することになるので、共振回路が寿命末期に至ったことを正確に推定できるとともに早期発見が可能であるという効果がある。
【0022】
請求項3の発明によれば、ランプ交換後の最初の点灯時には点検モードを実行することになり、またランプの交換サイクルに比べて共振回路の寿命の方が長いので、点検回数を減らしつつも共振回路が寿命末期に至ったことを正確に推定することができるという効果がある。
【0023】
請求項4の発明によれば、点検信号入力手段からの点検信号に応じて点検モードを実行するので、所望のタイミングで点検モードを実行することができるという効果がある。
【0024】
請求項5の発明によれば、ランプの推定寿命時間に応じて点検モードを実行することになり、またランプの交換サイクルに比べて共振回路の寿命の方が長いので、点検回数を減らしつつも共振回路が寿命末期に至ったことを正確に推定することができるという効果がある。
【0025】
請求項6の発明によれば、インピーダンスが大きい素子を用いた場合には共振回路における共振特性が急峻になるので、共振回路を構成する部品の特性変化が検知しやすくなり、その結果共振回路の寿命を精度よく推定することができるという効果がある。
【0026】
請求項7の発明によれば、点検モードにおける点灯回路の動作周波数を共振周波数付近の周波数に設定することによって、共振特性が急峻な周波数帯で動作させることになるので、共振回路を構成する回路部品の性能劣化による共振回路の出力変化がより顕著に現れ、その結果共振回路の寿命を精度よく推定することができるという効果がある。
【0027】
請求項8の発明によれば、始動モードでは点灯回路の動作周波数が共振周波数付近の周波数に設定されるため、点検モードにおける点灯回路の動作周波数を始動モードに合わせることによって、共振特性が急峻な周波数帯で動作させることになるので、共振回路を構成する回路部品の性能劣化による共振回路の出力変化がより顕著に現れ、その結果共振回路の寿命を精度よく推定することができるという効果がある。
【0028】
請求項9の発明によれば、共振回路の出力特性が所定の規格値を満足しない場合にはランプへの電力供給を停止させるので、共振回路の寿命末期を正確に推定しつつ安全性を向上させた照明装置を提供することができるという効果がある。
【0029】
請求項10の発明によれば、擬似負荷回路および切替回路のうち少なくとも一方は点灯装置に組み込まれているので、両回路を点灯装置とは別体に設けた場合に比べて照明装置の組立工数を削減することができ、組立性が向上するという効果がある。
【0030】
請求項11の発明によれば、共振回路が寿命末期に至ったことを正確に推定可能な点灯装置を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態の照明装置の概略回路図である。
【図2】同上の動作周波数と出力電圧との関係を示すグラフである。
【図3】(a),(b)は同上の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】同上の点検モードにおける動作周波数と出力電圧との関係を示すグラフである。
【図5】(a),(b)は同上の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】同上における点検信号の出力タイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明に係る点灯装置および照明装置の実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。本発明に係る点灯装置は、放電ランプ(例えば蛍光ランプなど)を点灯させるために用いられるものであり、また本発明に係る照明装置は上記点灯装置を備えており、例えば天井などに取り付けられて室内などを照明するために用いられる。
【0033】
図1は本実施形態の照明装置の概略回路図であり、本実施形態の点灯装置Aは、商用交流電源ACを整流する整流回路1と、整流回路1の直流出力を所定の電圧値の直流出力に昇圧する昇圧チョッパ回路2と、昇圧チョッパ回路2の直流出力を高周波に変換し、共振回路4を介して放電ランプLAに高周波電力を供給するインバータ回路3と、インバータ回路3を制御するためのインバータ制御回路5とを備えている。また、本実施形態の照明装置は、上記の点灯装置Aと、共振回路4の異常の有無を点検するための擬似負荷回路7と、共振回路4に接続される回路を、放電ランプLAを含む負荷回路または擬似負荷回路7の一方に切り替える切替スイッチ回路6および切替制御回路8と、後述する点検モードにおいて共振回路4の異常の有無を検出する点検回路とを備えている。なお、本実施形態では、インバータ制御回路5により点検回路が構成されている。
【0034】
インバータ回路(点灯回路)3は、2個のスイッチング素子Q1,Q2からなる所謂ハーフブリッジ型のインバータ回路であり、後述のインバータ発振制御回路50により設定された動作周波数でスイッチング素子Q1,Q2が交互にオン/オフされる。そして、その結果発生する高周波の交番電流を放電ランプLAに印加することで、放電ランプLAが所定の照度レベルで安定点灯するのである。なお、インバータ回路3については従来周知のものであるから、詳細な説明については省略する。
【0035】
共振回路4は、インダクタL1と共振コンデンサC3の直列回路からなり、この共振回路4の共振作用により生じた高電圧を放電ランプLAに印加することで、放電ランプLAが高周波点灯するのである。なお、上記の共振コンデンサC3は、放電ランプLAのフィラメント電極(図示せず)に予熱電流を供給する予熱コンデンサとしての機能も備えており、また図1中のコンデンサC2は直流カット用のコンデンサである。
【0036】
インバータ制御回路5は、インバータ回路3の動作周波数を決定し、決定した動作周波数でスイッチング素子Q1,Q2をオン/オフさせるインバータ発振制御回路50と、放電ランプLAの累積点灯時間を計時する累積点灯時間計時回路51と、検出回路52と、上記各回路の電源を生成する制御電源回路53とを備えている。また、検出回路52は、放電ランプLAが寿命末期であることを検出したり、放電ランプLAが交換されたことを検出したりするランプ寿命末期/無負荷/ランプ交換検出回路52a(以下、ランプ交換検出回路52aと称す。)と、共振回路4の出力電圧(本実施形態では後述の抵抗Rの両端電圧を出力電圧として検出しており、以下出力電圧Vと称す。)を検出する出力電圧検出回路52bとで構成されており、ランプ交換検出回路52aにより放電ランプLAが交換されたことを検出した場合には、検出回路52から後述の切替制御回路8に対して所定の点検信号が出力されるようになっている。すなわち、本実施形態では、検出回路52から点検信号が出力されるタイミングが後述する点検モードの実施タイミングとなる(図6参照)。
【0037】
ここにおいて、放電ランプ用の点灯装置には予熱モード、始動モード、点灯モードの3種類の動作モードがあり、これらの動作モードを経て放電ランプを始動・点灯させることになる。予熱モードは、放電ランプのフィラメント電極に適正な予熱を与えるモードであり、放電ランプの始動を助けるとともにフィラメント電極が早期に断線するのを防止する働きを持つ。また、始動モードは、放電を開始するのに必要な高電圧を放電ランプに印加するモードであり、さらに点灯モードは放電ランプを所定の出力で安定点灯させるモードである。
【0038】
本実施形態の点灯装置Aは、図1に示すように多くの電子部品で構成されており、これらの電子部品は長時間の使用によって劣化するものである。例えば、共振回路4のインダクタL1は、寿命末期時では絶縁性能が劣化して巻線の層間が短絡し、インダクタンスが低下する虞があり、また共振コンデンサC3は、継続的に高いパルス電圧が印加されることでフィルムに蒸着させた金属膜が飛散し、徐々に容量が低下することになる。
【0039】
通常、設計者は、使用される場所の周囲温度や電源の投入回数などを予め想定し、この想定寿命の範囲内では初期特性が得られるように設計する。したがって、想定寿命を大幅に超えて使用されるとインダクタンスやコンデンサ容量の低下が進み、その結果放電ランプLAが点灯しなくなったり、出力が変化したり、あるいは光がちらついたりして初期特性が得られなくなってしまう。ところが、放電ランプが一旦点灯すると、明るさが初期状態と多少変わっていても使用者にはその違いが認識されにくいため、点灯装置が既に寿命に達していてもそのまま継続して使用されることになる。そして、さらに電子部品の劣化が進むことで不点や出力変化がさらに進む可能性があった。
【0040】
インダクタL1や共振コンデンサC3が劣化して特性変化した場合には、放電ランプLAの明るさが変化(低下)することになるが、上述したようにその変化量を認識するのは難しい。一方、これらの部品の特性変化に対して最も変化量が大きく現れるのは始動時における共振回路4の出力電圧であり、特に放電ランプLAが始動する直前、すなわち放電ランプLAが放電路を形成する前の状態での出力電圧が顕著に変化する。
【0041】
例えば、図1に示す回路において放電ランプLAのフィラメント電圧を無視すると、共振回路4の出力電圧は共振コンデンサC3の両端電圧に略等しくなる。そして、インダクタL1のインダクタンスをL[H]、共振コンデンサC3の容量をC[F]とすると、点灯装置Aの共振周波数fは、
【数1】

となる。また、インバータ回路3の動作周波数をf[Hz]とすると、放電ランプLAが始動する直前の共振回路4の出力電圧Vは、
【数2】

となる。なお、式(2)中の電圧Vdcはインバータ回路3への入力電圧(つまりコンデンサC1の両端電圧)であり、インバータ回路3のスイッチングデューティは50%とする。
【0042】
図2はインバータ回路3の動作周波数fと共振回路4の出力電圧Vとの関係を示すグラフであり、動作周波数fが共振周波数f付近の周波数に設定された場合には非常に高い電圧が出力されるため(図2中の実線a参照)、この状態が長く続くと点灯装置Aが故障する虞がある一方、放電ランプLAを点灯させるには数100V以上の高い電圧が必要である。そのため、上述した始動モードでは、放電ランプLAが放電を開始するのに必要な高電圧を確保しつつ、回路が破壊されないようにインバータ回路3の動作周波数fを決定する必要があり、結局のところ共振周波数fの近傍の周波数に設定されることになる。つまり、始動モードでは、共振特性が急峻な周波数帯で動作することになるため、共振回路4のインダクタL1や共振コンデンサC3の僅かな特性変化が共振回路4の出力電圧Vの大きな変化となって現れるのである。
【0043】
しかしながら、始動モードにおいても放電ランプLAが一旦点灯すると、放電ランプLAのインピーダンスにより共振回路4の出力電圧Vが低下し、また始動電圧を印加してから放電ランプLAの放電路が形成されてインピーダンスが低下するまでの時間は、放電ランプLAの劣化状態や性能のばらつき、あるいは使用される場所の周囲温度などによって変化するため、放電ランプLAを接続した状態で共振回路4の出力電圧Vから共振回路4の異常を検出するのは困難であった。
【0044】
ここにおいて、放電ランプLAのインピーダンスをRlaとすると、共振回路4の出力電圧Vは、
【数3】

となる。放電ランプLAの始動直後の過渡状態ではインピーダンスRlaが時間とともに変化するため、式(3)より出力電圧Vも時間的に変化することが分かる。また、インピーダンスRlaが大きいほど出力電圧Vも大きくなり、その結果インダクタL1や共振コンデンサC3の変化量と比較して出力電圧Vの変化量が大きくなることも分かる。
【0045】
本実施形態では、放電ランプLAの特性変化による影響を排除した共振回路4の出力電圧Vを測定するために擬似負荷回路7を用いている。この擬似負荷回路7は、図1に示すように抵抗Rf1,Rf2の直列回路と、抵抗Rf3,Rf4の直列回路と、両端が抵抗Rf1,Rf2の接続点および抵抗Rf3,Rf4の接続点にそれぞれ接続された抵抗Rとで構成されている。そして、2個の切替スイッチSW1,SW2からなる切替スイッチ回路6の切替操作に応じて共振回路4の出力端に接続されるようになっている。なお、抵抗Rf1,Rf2の直列回路の両端は切替スイッチSW1の一方の接点c1,c1に接続され、抵抗Rf3,Rf4の直列回路の両端は切替スイッチSW2の一方の接点c1,c1に接続されている。また、切替スイッチSW1,SW2の他方の接点c2,c2は、放電ランプLAの両端に設けられた各フィラメント電極にそれぞれ接続されている。ここに、上記の切替スイッチ回路6は、切替制御回路8からの所定の切替信号に応じて切替スイッチSW1,SW2を切り替えるようになっており、切替制御回路8とともに切替回路を構成している。
【0046】
また、共振回路4に接続される回路を擬似負荷回路7に切り替えた場合、インバータ回路3の動作周波数が上述した始動モードにおける動作周波数(つまり共振周波数f付近の周波数)に等しくなるように設定され、そのときに測定される出力電圧Vから共振回路4の寿命を推定するのである(以下、点検モードと称す。)。ここにおいて、上記の抵抗Rが大きくなるほど共振回路4の出力電圧Vの共振特性は急峻になるので、インダクタL1や共振コンデンサC3の変化量を検出しやすくなるという利点があるが、それに伴って回路部品へのストレスも大きくなるため、抵抗Rの選定には注意が必要である。
【0047】
次に、本実施形態の照明装置の動作について図3に基づいて説明する。なお、以下の説明では、初期状態において各切替スイッチSW1,SW2が接点c2,c2(つまり放電ランプLAを含む負荷回路)側に接続されているものとして説明する。また、図3(a)は本照明装置のメインフローチャートを示しており、図3(b)は点検モードのフローチャートを示している。
【0048】
まず、電源がONにされると(ステップS1)、インバータ制御回路5は発振停止フラグFlag=1であるか否かを判別し(ステップS2)、発振停止フラグFlag≠1の場合にはランプ交換検出回路52aの検出結果をもとに放電ランプLAが交換されたか否かを判別する(ステップS3)。なお、ステップS2において発振停止フラグFlag=1の場合には、インバータ制御回路5はインバータ回路3の発振動作を停止させる(ステップS9)。次に、ステップS3において放電ランプLAが交換されていない場合には、インバータ制御回路5はインバータ回路3を予熱モード(ステップS4)、始動モード(ステップS5)、点灯モード(ステップS6)の順に移行させて放電ランプLAを所定の照度レベルで安定点灯させる。なお、電源がOFFにされた場合には放電灯LAは消灯する(ステップS7)。
【0049】
ここで、ステップS3において放電ランプLAが交換されている場合には、点検モードを実行する(ステップS8)。点検モードに移行すると、インバータ制御回路5は、切替制御回路8に切替信号(点検信号)を出力して、切替スイッチ回路6の切替スイッチSW1,SW2をそれぞれ接点c1,c1側に切り替えさせ、共振回路4に擬似負荷回路7を接続する(ステップS11)。そして、インバータ制御回路5は始動モードと等しい動作周波数でインバータ回路3を駆動し、そのときの共振回路4の出力電圧Vを測定する(ステップS12)。測定の結果、出力電圧Vが所定の規格値(V≦V≦V)を満足しない場合には、インバータ制御回路5は発振停止フラグFlag=1に設定し(ステップS13)、インバータ回路3の発振動作を停止させる(ステップS14)。また、出力電圧Vが所定の規格値を満足する場合には、インバータ制御回路5は切替制御回路8を介して切替スイッチSW1,SW2を接点c2,c2側に切り替え、共振回路4に放電ランプLAを含む負荷回路を接続する(ステップS15)。その後、メインの動作フローに戻り(ステップS16)、予熱モード以降の動作を実行する(ステップS4〜ステップS7)。なお、上記の動作中に発振停止フラグFlag=1に設定された場合には、インバータ制御回路5は発振停止フラグFlagの値を記憶手段(図示せず)に記憶させており、発振停止フラグFlag=1の場合には既に寿命に達しているのであるから、電源が再び投入されても発振動作を実施しないようになっている。
【0050】
ここにおいて、上記の動作では、ランプ交換がされた後の最初の電源投入時にのみ点検モードが実施されるようになっているが、これは点灯装置の寿命は一般的に4万時間以上であるのに対して放電ランプの定格寿命は一般的に1万時間前後であり、ランプ交換の際に点検モードを実施すれば十分と考えるからである。そして、このようにランプ交換の際に点検モードを実施した場合には、電源が投入されるたびに点検モードを行う場合に比べて、点検回数を減らしつつも共振回路4が寿命末期に至ったことを正確に推定することができる。なお、図6は検出回路52から出力される点検信号のタイミングチャートを示しており、図6によればランプ交換のタイミングで点検信号が出力されることが分かる。
【0051】
次に、図4は上述した点検モードにおける動作周波数fと出力電圧Vとの関係を示すグラフであり、例えば共振コンデンサC3が初期特性を維持している場合の共振周波数f01は、
【数4】

となる。また、共振コンデンサC3の容量がΔCだけ低下したとすると、このときの共振周波数f02は、
【数5】

となる。式(4)、(5)によれば、共振周波数f02は共振周波数f01よりも高周波側にシフトするため、発振周波数fsでインバータ回路3を動作させた場合には出力電圧Vが電圧V01から電圧V02に変化する。そして、出力電圧V=V02の場合には所定の規格値(V≦V≦V)を満足しない値(つまり規格値外の値)となっているので、点灯装置Aが寿命末期に至っていると判断され、上述したようにインバータ回路3の発振動作を停止させることになる。なお、図4中の実線bは共振コンデンサC3が初期性能を維持した状態での出力電圧Vを示し、破線cは共振コンデンサC3の容量が低下した状態での出力電圧Vを示している。ここに、インバータ発振制御回路50により保護手段が構成されている。
【0052】
次に、図5は照明装置の動作を説明するためのタイミングチャートを示しており、図5(a)は通常動作時のタイミングチャート、図5(b)は点検モード時のタイミングチャートである。まず、通常動作時では、時刻t0のときに電源がONにされると予熱モードが実行され、時刻t1のときに予熱モードが終了すると、続けて始動モードが実行される。そして、時刻t2のときに始動モードが終了すると、続けて点灯モード(安定点灯モード)が実行されるので、以後所定の照度レベルで放電ランプLAが安定点灯することになる(図5(a)中の実線d参照)。
【0053】
一方、点検モード時では、時刻t0のときに電源がONにされると最初に上述した点検モードが実行され、この点検モードにおいて出力電圧Vが所定の規格値(V≦V≦V)を満足する場合には、時刻t3のときに点検モードが終了し、続けて予熱モードが実行される。そして、以下同様にして始動モード、点灯モードが実行されるので、以後所定の照度レベルで放電ランプLAが安定点灯することになる(図5(b)中の実線e参照)。
【0054】
以上のことから、放電ランプLAを接続した状態で共振回路4の出力電圧Vを検出する場合には、ランプの劣化や性能のばらつき、あるいは周囲温度などによっても出力電圧が変化するため、共振回路4の劣化のみに起因する電圧変化を検出することはできないが、本実施形態の照明装置によれば、共振回路4に接続される回路を擬似負荷回路7に切り替えることによって、上記の不安定要因を排除して共振回路4の劣化のみに起因する電圧変化を検出することができるので、この電圧変化から共振回路4が寿命末期に至ったことを正確に推定することができる。また、切替回路(切替スイッチ回路6および切替制御回路8)を設けることによって、この切替回路に入力される信号に応じて任意のタイミングで擬似負荷回路7に切り替えることができるので、所望のタイミングで共振回路4の寿命を点検することができる。
【0055】
また、点検モードにおけるスイッチング素子Q1,Q2の動作周波数fを共振周波数f付近の周波数に設定することによって、共振特性が急峻な周波数帯で動作させることになるので、共振回路4を構成する回路部品(本実施形態ではインダクタL1や共振コンデンサC3)の性能劣化による共振回路4の出力変化がより顕著に現れ、その結果共振回路4の寿命を精度よく推定することができる。さらに、共振回路4の出力電圧Vが所定の規格値を満足しない場合には放電ランプLAへの電力供給を停止させるので、共振回路4の寿命末期を精度よく推定しつつ安全性を向上させた照明装置を提供することができる。
【0056】
なお、上記の実施形態では、ランプ交換ごとに点検モードを実施した場合について説明したが、例えば累積点灯時間計時回路51により計時した累積点灯時間が所定の基準値を超えたときに点検モードを実施するようにしてもよく、同様に点検回数を減らしつつも共振回路4が寿命末期に至ったことを正確に推定することができる。また、図1中の点検信号入力手段9からの点検信号により点検モードを実施してもよく、この場合所望のタイミングで点検モードを実行することができる。さらに、電源が投入されるたびに点検モードを実施するように構成してもよく、この場合放電ランプLAを点灯させる際には必ず点検モードを実行することになるので、共振回路4が寿命末期に至ったことを正確に推定できるとともに、早期発見が可能である。
【0057】
また、上記の実施形態では、擬似負荷回路7および切替回路(切替スイッチ回路6および切替制御回路8)を点灯装置Aとは別体に設けているが、少なくとも何れか一方の回路を点灯装置Aに設けてもよく、この場合両回路を点灯装置Aとは別体に設けた場合に比べて照明装置の組立工数を削減することができ、組立性が向上するという利点がある。特に、両回路を点灯装置Aに設けた場合には、共振回路4が寿命末期に至ったことを正確に推定可能な点灯装置Aを提供することができる。
【0058】
さらに、擬似負荷回路7の構成は本実施形態に限定されるものではなく、インダクタL1や共振コンデンサC3の変化量と、出力電圧Vの変化量との間の相関がとれるものであれば他の構成であってもよい。また、本実施形態では、寿命を推定するための物理量として共振回路4の出力電圧Vを検出しているが、寿命を推定できるものであれば他の物理量であってもよく、例えば抵抗Rを流れる電流などでもよい。
【符号の説明】
【0059】
4 共振回路
5 インバータ制御回路(点検回路)
6 切替スイッチ回路(切替回路)
7 擬似負荷回路
8 切替制御回路(切替回路)
A 点灯装置
LA ランプ
Q1,Q2 スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波でスイッチングされるスイッチング素子、および当該スイッチング素子を介して入力される高周波により励振される共振回路を具備し、当該共振回路により生成される高周波電力を供給してランプを点灯させる点灯装置と、共振回路の異常の有無を点検するための擬似負荷回路と、共振回路に接続される回路を、点灯モードではランプを含む負荷回路に切り替えるとともに、点検モードでは擬似負荷回路に切り替える切替回路と、点検モードにおいて共振回路の異常の有無を検出する点検回路とを備えることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記点検回路は、電源投入後の所定期間に前記点検モードを実行することを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
ランプが交換されたことを検出するランプ交換検出手段を備え、前記点検回路は、ランプ交換検出手段によりランプが交換されたことを検出した後、最初の電源投入後の所定期間に前記点検モードを実行することを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項4】
前記共振回路の異常の有無を点検するための点検信号を外部から入力する点検信号入力手段を備え、前記点検回路は、点検信号入力手段からの点検信号が入力されると前記点検モードを実行することを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項5】
ランプの累積点灯時間を計時する累積点灯時間計時手段を備え、前記点検回路は、累積点灯時間計時手段により計時された累積点灯時間が所定の基準値に到達した後、最初の電源投入後の所定期間に前記点検モードを実行することを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項6】
前記擬似負荷回路は、少なくとも1つのインピーダンス素子で構成されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記点検モードにおける点灯回路の動作周波数が、前記共振回路の共振周波数付近の周波数に設定されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
ランプは、フィラメント電極を有する放電ランプからなり、点灯開始時にランプのフィラメント電極に予熱電流を流す予熱モード、および放電を開始させるための高電圧をランプに印加する始動モードを経て安定点灯モードに移行するように前記点灯回路を制御する制御回路を備え、当該制御回路は、前記点検モードにおける前記点灯回路の動作周波数が、前記始動モードにおける動作周波数と等しくなるように設定することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項9】
前記点検モードにおける前記共振回路の出力特性が所定の規格値を満足しない場合にはランプへの電力供給を停止させる保護手段を備えることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項10】
前記擬似負荷回路および切替回路のうち少なくとも何れか一方を前記点灯装置に設けたことを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項11】
高周波でスイッチングされるスイッチング素子、および当該スイッチング素子を介して入力される高周波により励振される共振回路を具備し、当該共振回路により生成される高周波電力を供給してランプを点灯させる点灯回路部と、共振回路の異常の有無を点検するための擬似負荷回路と、共振回路に接続される回路を、点灯モードではランプを含む負荷回路に切り替えるとともに、点検モードでは擬似負荷回路に切り替える切替回路とを備えることを特徴とする点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−9084(P2011−9084A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151638(P2009−151638)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】