説明

無人搬送車

【課題】カーブ周辺に障害物が設けられ走行スペースに制約がある場合でも、障害物と車体との接触を回避することができる無人搬送車を提供すること。
【解決手段】無人搬送車1によれば、慣性航法装置78により算出された車体2の位置座標に基づいて、その車体2の位置座標において操舵すべき操舵角となるように各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRをそれぞれ個別に操舵することができる。よって、カーブ入口側や出口側に障害物O1,O2が設けられ走行スペースに制約がある場合でも、カーブ走行中における車体2の姿勢を考慮し、車体2が走行スペースからはみ出さないように各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRの操舵角をそれぞれ設定しておくことで、障害物O1,O2と車体2との接触を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車に関し、特に、カーブ周辺に障害物が設けられ走行スペースに制約がある場合でも、障害物と車体との接触を回避することができる無人搬送車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、無人搬送車のカーブ走行時における車輪の操舵方法としては、前輪をカーブ内側へ向けて操舵する一方、後輪をカーブ外側へ向けて操舵する操舵方法が採用されている。しかしながら、かかる操舵方法では、車体の進行方向後方部がカーブ外側へ振られるので、カーブ外側に障害物が設けられている場合には、車体が障害物に接触する恐れがあった。
【0003】
そこで、例えば、特開平11−327648号公報には、ライン検知用センサ9によりカーブ予告用基準マーカ41を検知した時点から、走行距離が所定距離Dを越えるまでのカーブ走行路11bにおいては、進行方向後方側の第2の走行車輪8を進行方向前方側の第1の走行車輪7と同様にカーブ内側へ向けて操舵する一方、走行距離が所定距離Dを越えた後のカーブ走行路11bにおいては、第2の走行車輪8を第1の走行車輪7とは逆にカーブ外側へ向けて操舵する操舵方法が開示されている。かかる操舵方法によってカーブを走行する無人搬送車1によれば、まずカーブ内側へ斜行してカーブ外側に設けられた隔壁部14から離間するので、車体2の進行方向後方部がカーブ外側へ振られても、隔壁部14と車体2との接触を回避することができる。
【特許文献1】特開平11−327648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した無人搬送車1では、進行方向に対してカーブ走行路11bの入口側でカーブ外側に設けられた隔壁部14と車体2との接触は回避できるが、カーブ走行路11bの出口側やカーブ内側といった隔壁部14とは異なる位置に設けられた障害物と車体2との接触は回避することができないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、カーブ周辺に障害物が設けられ走行スペースに制約がある場合でも、障害物と車体との接触を回避することができる無人搬送車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を解決するために請求項1記載の無人搬送車は、車体と、その車体に操舵自在に配設される複数の駆動輪と、それら複数の駆動輪をそれぞれ個別に操舵する複数の操舵手段と、前記車体の方位角を検出する方位角検出手段と、走行距離を検出する走行距離検出手段と、その走行距離検出手段により検出された走行距離および前記方位角検出手段により検出された車体の方位角に基づいて、前記車体の位置を算出する位置算出手段と、その位置算出手段により算出された車体の位置に応じて前記複数の操舵手段により前記複数の駆動輪をそれぞれ個別に操舵することで、走行経路に沿って走行するように、前記複数の操舵手段をそれぞれ個別に制御する制御手段とを備えるものであって、更に、前記走行経路を複数の点の配列として記憶すると共に、それら複数の点の各点に対応するデータをそれぞれ記憶するデータ記憶手段を備え、そのデータ記憶手段には、前記複数の点の各点の位置が記憶されていると共に、前記複数の点の各点に対応して、前記複数の駆動輪の各操舵角がそれぞれ記憶され、前記制御手段は、前記位置算出手段により算出された車体の位置に応じて前記複数の点の内のいずれか1の点を目標点とし、その目標点に対応して前記データ記憶手段に記憶されている複数の駆動輪の各操舵角に基づいて、前記複数の操舵手段をそれぞれ個別に制御する。
【0007】
請求項2記載の無人搬送車は、請求項1記載の無人搬送車において、前記データ記憶手段には、更に、前記複数の点の各点に対応して、前記車体の方位角が記憶され、前記方位角検出手段により検出された車体の方位角と前記目標点に対応して前記データ記憶手段に記憶されている車体の方位角との角度差を算出する角度差算出手段と、その角度差算出手段により算出された角度差が所定値よりも大きい場合に、走行状態を変更する走行状態変更手段とを備えている。
【0008】
請求項3記載の無人搬送車は、請求項1又は2に記載の無人搬送車において、前記位置算出手段により算出された車体の位置から、前記目標点に対応して前記データ記憶手段に記憶されている位置までの距離を算出する距離算出手段と、その距離算出手段により算出された距離が所定値よりも小さい場合に、前記目標点を進行方向前方側に位置する次の点に変更する目標点変更手段とを備えている。
【0009】
請求項4記載の無人搬送車は、請求項3記載の無人搬送車において、前記目標点に対応して前記データ記憶手段に記憶されている複数の駆動輪の各操舵角に基づいて、前記複数の操舵手段を前記制御手段によりそれぞれ個別に制御した場合に、前記距離算出手段により算出された距離を走行した後の前記車体の位置を推定する位置推定手段と、その位置推定手段により推定された車体の位置と前記目標点に対応して前記データ記憶手段に記憶されている位置とのずれ量を算出するずれ量算出手段と、そのずれ量算出手段により算出されたずれ量が減少するように、前記目標点に対応して前記データ記憶手段に記憶されている複数の駆動輪の各操舵角をそれぞれ個別に補正する補正手段とを備え、前記制御手段は、前記補正手段により補正された複数の駆動輪の各操舵角に基づいて、前記複数の操舵手段をそれぞれ個別に制御する。
【0010】
請求項5記載の無人搬送車は、請求項4記載の無人搬送車において、前記補正手段は、前記ずれ量算出手段により算出されたずれ量および前記角度差算出手段により算出された角度差がそれぞれ減少するように、前記目標点に対応して前記データ記憶手段に記憶されている複数の駆動輪の各操舵角をそれぞれ個別に補正する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の無人搬送車によれば、位置算出手段により算出された車体の位置に応じて複数の点の内のいずれか1の点が目標点とされ、その目標点に対応してデータ記憶手段に記憶されている複数の駆動輪の各操舵角に基づいて、制御手段により複数の操舵手段がそれぞれ個別に制御される。
【0012】
よって、位置算出手段により算出された車体の位置に基づいて、その車体の位置において操舵すべき操舵角となるように複数の駆動輪をそれぞれ個別に操舵することができるので、カーブ周辺に障害物が設けられ走行スペースに制約がある場合でも、カーブ走行中における車体の姿勢を考慮し、車体が走行スペースからはみ出さないように複数の駆動輪の各操舵角をそれぞれ設定しておくことで、障害物と車体との接触を回避することができるという効果がある。
【0013】
また、カーブ走行中における車体の姿勢を考慮して複数の駆動輪の各操舵角をそれぞれ設定しておくことにより、車体の姿勢を安定した状態に保ったままで、連続したカーブや複雑なカーブを走行することができるという効果がある。
【0014】
請求項2記載の無人搬送車によれば、請求項1記載の無人搬送車の奏する効果に加え、方位角検出手段により検出された車体の方位角と目標点に対応してデータ記憶手段に記憶されている車体の方位角との角度差が角度差算出手段により算出され、その算出された角度差が所定値よりも大きい場合には、走行状態変更手段により走行状態が変更される。
【0015】
よって、横風や路面の傾斜等といった外乱により車体の方位角が大きく変化した場合には、走行状態の変更として、例えば、駆動輪の回転を停止することができるので、走行経路から外れてしまうことを事前に防止することができるという効果がある。
【0016】
請求項3記載の無人搬送車によれば、請求項1又は2に記載の無人搬送車の奏する効果に加え、位置算出手段により算出された車体の位置から、目標点に対応してデータ記憶手段に記憶されている位置までの距離が距離算出手段により算出され、その算出された距離が所定値よりも小さい場合には、目標点変更手段により目標点が進行方向前方側に位置する次の点に変更される。
【0017】
よって、常に、車体の位置から進行方向前方側へ所定値以上離れた位置の点を目標点とすることができるので、たとえ車速が早い場合でも、目標点を通り越してしまうことがなく、車体の位置座標に応じた点を正確に目標点とすることができるという効果がある。
【0018】
請求項4記載の無人搬送車によれば、請求項3記載の無人搬送車の奏する効果に加え、位置推定手段により推定された車体の位置と目標点に対応してデータ記憶手段に記憶されている位置とのずれ量がずれ量算出手段により算出され、その算出されたずれ量が減少するように、目標点に対応してデータ記憶手段に記憶されている複数の駆動輪の各操舵角が補正手段によりそれぞれ個別に補正される。また、補正された複数の駆動輪の各操舵角に基づいて、制御手段により複数の操舵手段がそれぞれ個別に制御される。よって、横風や路面の傾斜等といった外乱により走行経路から外れてしまった場合でも、走行経路に復帰することができるという効果がある。
【0019】
請求項5記載の無人搬送車によれば、請求項4記載の無人搬送車の奏する効果に加え、ずれ量算出手段により算出されたずれ量および角度差算出手段により算出された角度差がそれぞれ減少するように、目標点に対応してデータ記憶手段に記憶されている複数の駆動輪の各操舵角が補正手段によりそれぞれ個別に補正される。
【0020】
ここで、ずれ量算出手段により算出されたずれ量のみを減少させるように補正する場合には、角度差算出手段により算出された角度差、即ち、方位角検出手段により検出された車体の方位角と目標点に対応してデータ記憶手段に記憶されている車体の方位角との角度差が補正されないので、走行経路に復帰後、再び走行経路から外れてしまう恐れがある。
【0021】
これに対し、本発明における無人搬送車によれば、ずれ量算出手段により算出されたずれ量を減少させるように補正すると共に、角度差算出手段により算出された角度差を減少させるように補正するので、走行経路に復帰後も、走行経路から外れてしまうことを防止することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態における無人搬送車1を上面から視た模式図である。なお、図1では、発明の理解を容易とするために、車体2及び4個の駆動輪3(3LF,3LR,3RF,3RR)のみが図示されている。また、図1では、走行経路Rが2点鎖線を用いて仮想的に図示されていると共に、無人搬送車1の進行方向が矢印FWDにより図示され、地上座標系におけるX軸およびY軸が矢印X,Yによりそれぞれ図示されている。
【0023】
まず、図1を参照して、無人搬送車1の概略構成について説明する。無人搬送車1は、工場等の生産現場において、生産設備の間で材料や製品を無人で搬送する車両であり、車体2と、その車体2を支持する4個の駆動輪3(左の前輪3LF、左の後輪3LR、右の前輪3RF及び右の後輪3RR)とを主に備えて構成されている。
【0024】
また、この無人搬送車1は、後述する慣性航法装置78(図2参照)により地上座標系における車体2の位置座標(X座標およびY座標)を逐次算出しつつ、その算出した車体2の位置座標に応じた操舵角で各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRをそれぞれ個別に操舵することで、走行経路Rに沿って走行するように構成されている。なお、走行経路Rは、例えば、走行路面に敷設された磁気テープや磁気マーカ等により構成されるものではなく、レイアウトとなるマップを後述するデータメモリ72aに記憶することにより構成されている。
【0025】
駆動輪3は、無人搬送車1が走行するための走行装置であり、一対の車輪3aと、それら一対の車輪3aをそれぞれ連結する車軸3bとを主に備えて構成されている。また、本実施形態における無人搬送車1では、4個の駆動輪3を備え、それら4個の駆動輪3が左の前輪3LF、左の後輪3LR、右の前輪3RF及び右の後輪3RRとして構成されるように、車体2にそれぞれ操舵自在に配設されている。これら4個の駆動輪3は、後述する回転駆動装置76(図2参照)によりそれぞれ個別に回転駆動されると共に、後述する操舵駆動装置77(図2参照)によりそれぞれ個別に操舵駆動される。
【0026】
次に、図2を参照して、無人搬送車1の電気的構成について説明する。図2は、無人搬送車1の電気的構成を示したブロック図である。
【0027】
制御装置70は、無人搬送車1の各部を制御するための制御装置であり、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、これらがバスライン74を介して入出力ポート75にそれぞれ接続されている。また、入出力ポート75には、回転駆動装置76、操舵駆動装置77、慣性航法装置78及び他の入出力装置79等の複数の装置が接続されている。
【0028】
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図4及び図5に図示される走行制御処理や図6に図示される緊急停止処理)や固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリであり、このROM72には、データメモリ72a、第1閾値メモリ72b及び第2閾値メモリ72c等の各種メモリが設けられている。
【0029】
データメモリ72aには、上述したように、走行経路Rのレイアウトとなるマップが記憶されている。ここで、図3を参照して、データメモリ72aに記憶されている内容について説明する。図3(a)は、図1のAで示す部分を拡大した走行経路Rの拡大図であり、図3(b)は、データメモリ72aに記憶されている内容を模式的に示した模式図である。なお、図3(b)では、図3(a)に図示される走行経路Rに対応する部分の内容のみが図示され、その他の部分については省略されている。
【0030】
図3(a)に示すように、走行経路Rは、複数の点Pを一定の距離間隔(本実施形態では、30mm間隔)で配列することにより構成され、図3(b)に示すように、それら複数の点Pの各点Pに対応づけられた符号と、各点Pの地上座標系における位置座標(X座標およびY座標)とがデータメモリ72aにマップとして記憶されている。
【0031】
また、データメモリ72aには、走行経路Rのレイアウトとなるマップに加え、複数の点Pの各点Pに対応して、各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RR(図1参照)の操舵角がそれぞれ記憶されている。この各点Pに対応してそれぞれ記憶されている各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRの操舵角は、各点Pにおいて操舵すべき各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRの操舵角を指示するものである。後述するように、CPU71は、複数の点Pの内のいずれか1の点Pを目標点Tとし、その目標点Tに対応する点Pでの操舵角をデータメモリ72aからそれぞれ読み出して、その読み出した操舵角となるように各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRをそれぞれ個別に操舵する。
【0032】
更に、データメモリ72aには、複数の点Pの各点Pに対応して、車体2(図1参照)の方位角が記憶されている。この各点Pに対応して記憶されている車体2の方位角は、各点Pにおいて向くべき車体2の方位角を規定するものである。なお、本実施形態では、図3(a)の2点鎖線で示すように、複数の点Pの隣り合う点Pを結んだ仮想線に対する各点Pの接線方向を、各点Pにおいて向くべき車体2の方位角として規定している。
【0033】
図2に戻って第1閾値メモリ72bについて説明する。第1閾値メモリ72bには、後述する慣性航法装置78により算出された車体2の位置座標から、データメモリ72aに記憶されている目標点Tに対応する点Pの位置座標までの距離が所定値よりも小さい場合に、後述する目標点メモリ73aの値を1加算することにより、目標点Tを変更するための閾値が記憶されている。なお、本実施形態では、500mmが記憶されている。
【0034】
第2閾値メモリ72cには、データメモリ72aに記憶されている目標点Tに対応する点Pでの車体2の方位角と、後述する慣性航法装置78により検出された車体2の方位角との角度差が所定値よりも大きい場合に、各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRの回転を停止するための閾値が記憶されている。なお、本実施形態では、10°が記憶されている。
【0035】
RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであり、このRAM73には、目標点メモリ73a等の各種メモリが設けられている。
【0036】
目標点メモリ73aは、走行経路Rを構成する複数の点Pの内のいずれか1の点Pに対応づけられた符号(図3参照)の値を記憶するためのメモリである。CPU71は、目標点メモリ73aの値に基づいて、複数の点Pの内から目標点Tとなる点Pを認識する。この目標点メモリ73aの値は、上述したように、慣性航法装置78により算出された車体2の位置座標から、データメモリ72aに記憶されている目標点Tに対応する点Pの位置座標までの距離が第1閾値メモリ72bの値よりも小さい場合に1加算される。
【0037】
回転駆動装置76は、駆動輪3を回転駆動するための装置であり、各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRにそれぞれ回転駆動力を付与する4個の回転モータ76LF,76LR,76RF,76RRと、それら各回転モータ76LF,76LR,76RF,76RRをCPU71からの命令に基づいてそれぞれ個別に駆動制御する駆動回路および駆動源(いずれも図示せず)とを備えている。CPU71は、各回転モータ76LF,76LR,76RF,76RRをそれぞれ個別に駆動制御することで、各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRをそれぞれ個別に回転する。
【0038】
操舵駆動装置77は、駆動輪3を操舵駆動するための装置であり、各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRにそれぞれ操舵駆動力を付与する4個の操舵モータ77LF,77LR,77RF,77RRと、それら各操舵モータ77LF,77LR,77RF,77RRをCPU71からの命令に基づいてそれぞれ個別に駆動制御する駆動回路および駆動源(いずれも図示せず)とを備えている。CPU71は、各操舵モータ77LF,77LR,77RF,77RRをそれぞれ個別に駆動制御することで、各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRをそれぞれ個別に操舵する。
【0039】
慣性航法装置78は、地上座標系(図1参照)における車体2の位置座標(X座標およびY座標)を算出すると共に、車体2の方位角を検出するための装置であり、左の前輪3LF及び右の前輪3RFの回転速度をそれぞれ検出するパルス検出器78a,78bと、車体2の方位角を検出するジャイロコンパス78cと、それらパルス検出器78a,78b及びジャイロコンパス78cの検出結果が入力されると共にその入力された検出結果に基づいて各種の演算を行う演算部78dと、その演算部78dの演算結果を書き換え可能に記憶すると共にその記憶した内容を電源遮断後においても保持する記憶部78eとを主に備えて構成されている。
【0040】
パルス検出器78a,78bは、駆動輪3の車軸3b(図1参照)にそれぞれ設けられ、その車軸3bの回転速度をパルス信号として演算部78dへ出力するロータリエンコーダから構成されている。
【0041】
ジャイロコンパス78cは、車体2の回転角速度を検出すると共に、その検出した車体2の回転角速度を時間で積分することにより車体2の方位角を検出して演算部78dへ出力するジャイロスコープから構成されている。
【0042】
ここで、上述のように構成される慣性航法装置78により車体2の位置座標を算出する方法について説明する。なお、車体2の位置座標は、演算部78dにより所定時間間隔で繰り返し算出され、その都度、記憶部78eに記憶される。
【0043】
まず、演算部78dは、パルス検出器78a,78bによりそれぞれ検出した左の前輪3LF及び右の前輪3RFの回転速度を平均して平均回転速度を算出すると共に、その算出した平均回転速度に基づいて車速を算出する。
【0044】
次いで、ジャイロコンパス78cにより検出した車体2の方位角に基づいて、算出した車速を地上座標系におけるX軸方向の成分とY軸方向の成分とに分解し、X軸方向の車速とY軸方向の車速とを算出すると共に、その算出したX軸方向の車速とY軸方向の車速とをそれぞれ時間で積分してX軸方向への走行距離とY軸方向への走行距離とをそれぞれ算出する。
【0045】
そして、算出したX軸方向への走行距離およびY軸方向への走行距離を記憶部78eの値、即ち、前回算出した車体2の位置座標に加算して、車体2の位置座標を算出する。
【0046】
なお、算出した車体2の位置座標は、その都度、ジャイロコンパス78cにより検出した車体2の方位角と共に、入出力ポート75を介して制御装置70へ出力される。
【0047】
次に、図4を参照して、制御装置70で実行される処理について説明する。図4は、走行制御処理を示すフローチャートである。なお、図4の説明においては、図3及び図5を適宜参照して説明する。図5は、無人搬送車1を上面から視た模式図であり、カーブ走行時における車体2の姿勢の変化が図示されている。なお、図5では、発明の理解を容易とするために、車体2のみが図示されている。
【0048】
図4に図示される走行制御処理は、無人搬送車1を走行経路Rに沿って走行させるための処理である。この走行制御処理は、制御装置70の電源が投入されている間、CPU71により繰り返し実行される。なお、CPU71は、制御装置70の電源が投入された場合に、走行制御処理の実行前に実行する処理(図示せず)として、慣性航法装置78により算出された車体2の位置座標に基いて、その車体2の位置座標に最も近い位置座標にある点Pを目標点Tとし、目標点メモリ73aにセットする。
【0049】
CPU71は、走行制御処理に関し、まず、慣性航法装置78により算出された車体2の位置座標を取得する(S11)。次いで、取得した車体2の位置座標から目標点メモリ73aの値が示す目標点Tの位置座標までの距離を算出する(S12)。
【0050】
ここで、目標点Tの位置座標は、目標点メモリ73aの値に対応する符号が付された点Pの位置座標であり、その点Pの位置座標は、データメモリ72aから読み出される。例えば、目標点メモリ73aの値が100の場合には、図3(b)において、点P100が目標点Tとなり、その点P100の位置座標、即ち、座標(X100,Y100)が目標点Tの位置座標となる。
【0051】
S12の処理を実行した後は、S12の処理で算出した距離が第1閾値メモリ72bの値よりも小さいかを判断する(S13)。即ち、本実施形態では、500mmよりも小さいかを判断する。
【0052】
S13の処理の結果、車体2の位置座標から目標点Tの位置座標までの距離が第1閾値メモリ72bの値よりも小さいと判断された場合には(S13:Yes)、目標点メモリ73aの値を1加算する(S14)。これにより、目標点Tが進行方向FWD(図1参照)の前方側に位置する次の点Pに変更される。例えば、目標点メモリ73aの値を100から1加算した場合には、図3(b)において、目標点Tが点P100から点P101に変更される。
【0053】
S14の処理を実行した後は、再びS11、S12及びS13の処理を順に実行して、S13の処理で車体2の位置座標から目標点Tの位置座標までの距離が第1閾値メモリ72bの値よりも大きいと判断されるまで目標点メモリ73aの値を1ずつ加算する。
【0054】
一方、S13の処理の結果、車体2の位置座標から目標点Tの位置座標までの距離が第1閾値メモリ72bの値よりも大きいと判断された場合には(S13:No)、目標点メモリ73aの値が示す目標点Tでの各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRの操舵角をデータメモリ72aからそれぞれ読み出す(S15)。
【0055】
ここで、目標点Tでの各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRの操舵角は、目標点メモリ73aの値に対応する符号が付された点Pでの各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRの操舵角であり、その点Pでの各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRの操舵角は、データメモリ72aから読み出される。例えば、目標点メモリ73aの値が100の場合には、図3(b)において、点P100が目標点Tとなり、その点P100での各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRの操舵角、即ち、左の前輪3LFの操舵角は操舵角LF100、左の後輪3LRの操舵角は操舵角LR100、右の前輪3RFの操舵角は操舵角RF100、右の後輪3RRの操舵角は操舵角RR100となる。
【0056】
S15の処理を実行した後は、S15の処理でデータメモリ72aからそれぞれ読み出した操舵角となるように、各操舵モータ77LF,77LR,77RF,77RRをそれぞれ個別に駆動制御し、各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRをそれぞれ個別に操舵して(S16)、この走行制御処理を終了する。
【0057】
上述したように、本実施形態における無人搬送車1によれば、慣性航法装置78により算出された車体2の位置座標に応じて、走行経路Rを構成する複数の点Pの内のいずれか1の点Pを目標点Tとし、その目標点Tでのデータメモリ72aに記憶されている各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRの操舵角に基づいて、各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRをそれぞれ個別に操舵するので、慣性航法装置78により算出された車体2の位置座標に基づいて、その車体2の位置座標において操舵すべき操舵角となるように各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRをそれぞれ個別に操舵することができる。よって、図5に示すように、カーブ入口側や出口側に障害物O1,O2が設けられ走行スペースに制約がある場合でも、カーブ走行中における車体2の姿勢を考慮し、車体2が走行スペースからはみ出さないように各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRの操舵角をそれぞれ設定しておくことで、障害物O1,O2と車体2との接触を回避することができる。
【0058】
また、カーブ走行中における車体2の姿勢を考慮して各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRの操舵角をそれぞれ設定しておくことにより、車体2の姿勢を安定した状態に保ったままで、連続したカーブや複雑なカーブを走行することができる。
【0059】
また、慣性航法装置78により算出された車体2の位置座標からデータメモリ72aに記憶されている目標点Tの位置座標までの距離が第1閾値メモリ72bの値よりも小さい場合には、目標点Tを進行方向FWD(図1参照)の前方側に位置する次の点Pに変更するので、常に、車体2の位置座標から進行方向FWDの前方側へ第1閾値メモリ72bの値以上離れた位置座標の点Pを目標点Tとすることができる。よって、たとえ車速が早い場合でも、目標点Tを通り越してしまうことがなく、車体2の位置座標に応じた点Pを正確に目標点Tとすることができる。
【0060】
次に、図6を参照して、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、データメモリ72aにそれぞれ記憶されている操舵角となるように各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRを操舵する場合を説明したが、第2実施形態では、横風や路面の傾斜等といった外乱に対処できるように、データメモリ72aに記憶されている操舵角を補正し、その補正した操舵角となるように各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRを操舵する。なお、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0061】
図6は、第2実施形態における走行制御処理を示すフローチャートである。なお、S11からS15の処理は、第1実施形態と同一の処理であり、第2実施形態では、S15の処理を実行した後、S26以降の処理を実行する。
【0062】
CPU71は、S15の処理を実行した後、S15の処理でデータメモリ72aから読み出した操舵角となるように各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRを操舵した場合に、S12の処理で算出した距離を走行した後の車体2の位置座標を推定する(S26)。
【0063】
次いで、推定した車体2の位置座標と目標点メモリ73aの値が示す目標点Tの位置座標とを比較して、位置座標のずれ量、即ち、推定した車体2の位置座標から目標点Tの位置座標までの距離を算出する(S27)。
【0064】
次いで、目標点メモリ73aの値が示す目標点Tでの車体2の方位角をデータメモリ72aから読み出すと共に(S28)、慣性航法装置78により検出された車体2の方位角を取得する(S29)。
【0065】
ここで、目標点Tでの車体2の方位角は、目標点メモリ73aの値に対応する符号が付された点Pでの車体2の方位角であり、その点Pでの車体2の方位角は、データメモリ72aから読み出される。例えば、目標点メモリ73aの値が100の場合には、図3(b)において、点P100が目標点Tとなり、その点P100での車体2の方位角は角度A100となる。
【0066】
S29の処理を実行した後は、S28の処理でデータメモリ72aから読み出した車体2の方位角とS29の処理で取得した車体2の方位角とを比較して、車体2の方位角の角度差を算出する(S30)。
【0067】
次いで、S27の処理で算出したずれ量とS30の処理で算出した角度差とに基づいて、それらずれ量と角度差とがそれぞれ減少するように、データメモリ72aに記憶されている目標点メモリ73aの値が示す目標点Tでの各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRの操舵角をそれぞれ個別に補正すると共に(S31)、その補正した操舵角となるように、各操舵モータ77LF,77LR,77RF,77RRをそれぞれ個別に駆動制御し、各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRをそれぞれ個別に操舵して(S32)、この走行制御処理を終了する。
【0068】
なお、本実施の形態では、各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRの操舵角の補正量Mは、ホイールベースをL、車体2の位置座標を原点とした場合の目標点Tの位置座標を(X,Y)及びS30の処理で算出した角度差をθとすると、補正量M=((2・L(3・Y−Tanθ))/X)・0.05で表される。但し、補正量Mの算出式は、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、最終項の0.05を0.05より大きくしても良い。この場合には、補正量Mが大きくなり、操舵角を大きく補正することができる。
【0069】
上述したように、本実施形態によれば、推定した車体2の位置座標と目標点Tの位置座標とのずれ量に基づいて、そのずれ量が減少するように、データメモリ72aに記憶されている目標点Tでの各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRの操舵角をそれぞれ個別に補正し、その補正した操舵角となるように各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRをそれぞれ個別に操舵するので、横風や路面の傾斜等といった外乱により走行経路Rから外れてしまった場合でも、走行経路Rに復帰することができる。
【0070】
更に、推定した車体2の位置座標と目標点Tの位置座標とのずれ量が減少するように操舵角を補正すると共に、慣性航法装置78により検出された車体2の方位角とデータメモリ72aに記憶されている目標点Tでの車体2の方位角、即ち、慣性航法装置78により算出された車体2の位置座標に基づいて、その車体2の位置座標において向くべき車体2の方位角との角度差に基づいて、その角度差が減少するように、データメモリ72aに記憶されている目標点Tでの各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRの操舵角をそれぞれ個別に補正し、その補正した操舵角となるように各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRをそれぞれ個別に操舵するので、ずれ量のみを減少させるように操舵角を補正する場合と比較して、走行経路Rに復帰後も、走行経路Rから外れてしまうことを防止することができる。
【0071】
次に、図7を参照して、第3実施形態について説明する。第2実施形態では、横風や路面の傾斜等といった外乱に対処できるように、データメモリ72aに記憶されている操舵角を補正し、その補正した操舵角となるように各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRを操舵する場合を説明したが、第3実施形態では、補正した操舵角となるように各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRを操舵し、更に、外乱により車体2の方位角が大きく変化した場合に、各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRの回転駆動を停止する。なお、第1実施形態および第2実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0072】
図7は、第3実施形態における緊急停止処理を示すフローチャートである。図7に図示される緊急停止処理は、横風や路面の傾斜等といった外乱により車体2の方位角が大きく変化した場合に、無人搬送車1を緊急停止させるための処理である。この緊急停止処理は、制御装置70の電源が投入されている間、CPU71により繰り返し実行され、第1実施形態または第2実施形態における走行制御処理と並行して実行される。
【0073】
CPU71は、緊急停止処理に関し、慣性航法装置78により算出された車体2の位置座標を取得する(S41)。次いで、取得した車体2の位置座標から目標点メモリ73aの値が示す目標点Tの位置座標までの距離を算出する(S42)。
【0074】
ここで、目標点Tの位置座標は、目標点メモリ73aの値に対応する符号が付された点Pの位置座標であり、その点Pの位置座標は、データメモリ72aから読み出される。
【0075】
S42の処理を実行した後は、S42の処理で算出した距離が第1閾値メモリ72bの値よりも小さいかを判断する(S43)。即ち、本実施形態では、500mmよりも小さいかを判断する。
【0076】
S43の処理の結果、車体2の位置座標から目標点Tの位置座標までの距離が第1閾値メモリ72bの値よりも小さいと判断された場合には(S43:Yes)、目標点メモリ73aの値を1加算する(S44)。これにより、目標点Tが進行方向FWD(図1参照)の前方側に位置する次の点Pに変更される。
【0077】
S44の処理を実行した後は、再びS41、S42及びS43の処理を順に実行して、S43の処理で車体2の位置座標から目標点Tの位置座標までの距離が第1閾値メモリ72bの値よりも大きいと判断されるまで目標点メモリ73aの値を1ずつ加算する。
【0078】
一方、S43の処理の結果、車体2の位置座標から目標点Tの位置座標までの距離が第1閾値メモリ72bの値よりも大きいと判断された場合には(S43:No)、目標点メモリ73aの値が示す目標点Tでの車体2の方位角をデータメモリ72aから読み出すと共に(S45)、慣性航法装置78により検出された車体2の方位角を取得する(S46)。
【0079】
ここで、目標点Tでの車体2の方位角は、目標点メモリ73aの値に対応する符号が付された点Pでの車体2の方位角であり、その点Pでの車体2の方位角は、データメモリ72aから読み出される。
【0080】
S46の処理を実行した後は、S45の処理でデータメモリ72aから読み出した車体2の方位角とS46の処理で取得した車体2の方位角とを比較して、車体2の方位角の角度差を算出する(S47)。
【0081】
次いで、S47の処理で算出した角度差が第2閾値メモリ72cの値よりも大きいかを判断する(S48)。即ち、本実施形態では、10°よりも大きいかを判断する。
【0082】
S48の処理の結果、データメモリ72aから読み出した車体2の方位角とS46の処理で取得した車体2の方位角との角度差が第2閾値メモリ72cの値よりも大きいと判断された場合には(S48:Yes)、各回転モータ67LF,67LR,67RF,67RRの回転駆動をそれぞれ駆動停止し、各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRをそれぞれ停止して(S49)、この緊急停止処理を終了する。
【0083】
一方、S48の処理の結果、データメモリ72aから読み出した車体2の方位角とS46の処理で取得した車体2の方位角との角度差が第2閾値メモリ72cの値よりも小さいと判断された場合には(S48:No)、S49の処理をスキップして、この緊急停止処理を終了する。
【0084】
上述したように、本実施形態によれば、データメモリ72aに記憶されている目標点Tでの車体2の方位角と、慣性航法装置78により検出された車体2の方位角との角度差を比較して、その角度差が第2閾値メモリ72cの値よりも大きい場合には、各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRをそれぞれ停止するので、横風や路面の傾斜等といった外乱により車体2の方位角が大きく変化した場合でも、走行経路Rから外れてしまうことを事前に防止することができる。
【0085】
なお、本実施形態では、請求項2記載の走行状態の変更として、各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRの停止を行ったが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、各回転モータ67LF,67LR,67RF,67RRの回転数をそれぞれ減少して、各駆動輪3LF,3LR,3RF,3RRをそれぞれ減速しても良い。
【0086】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0087】
例えば、上記各実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0088】
また、上記各実施形態では、駆動輪3が4個の場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば駆動輪3を6個や8個、或いはそれ以上で構成しても良い。この場合には、それら全ての駆動輪3の各点Pに対応する操舵角をデータメモリ72aにそれぞれ記憶しておくことで、障害物が設けられ走行スペースが制約されている場合でも、障害物と車体2との接触を回避することができる。
【0089】
また、上記各実施形態では、4個の駆動輪3の全てが操舵駆動装置77により操舵駆動される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば4個の駆動輪3の内の一部の駆動輪3のみを操舵駆動装置77により操舵駆動するように構成しても良い。この場合には、操舵駆動装置77により操舵駆動される4個の駆動輪3の内の一部の駆動輪3の操舵角のみをデータメモリ72aにそれぞれ記憶しておく。これにより、無人搬送車1の製造コスト削減を図ることができると共に、消費エネルギーの低減を図ることができる。
【0090】
また、上記各実施形態では、慣性航法装置78により地上座標系における車体2の位置座標を算出する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えばGPS(グローバル・ポジショニング・システム)を設けて構成しても良い。これにより、車体2の位置座標をより正確に知ることができるので、障害物と車体2との接触を高精度に回避することができる。
【0091】
また、上記第2実施形態では、推定した車体2の位置座標と目標点Tの位置座標とのずれ量が減少するように操舵角を補正すると共に、慣性航法装置78により検出された車体2の方位角とデータメモリ72aに記憶されている目標点Tでの車体2の方位角との角度差が減少するように操舵角を補正する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ずれ量のみを減少させるように操舵角を補正しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1実施形態における無人搬送車を上面から視た模式図である。
【図2】無人搬送車の電気的構成を示したブロック図である。
【図3】(a)は、図1のAで示す部分を拡大した走行経路の拡大図であり、(b)は、データメモリに記憶されている内容を模式的に示した模式図である。
【図4】第1実施形態における走行制御処理を示すフローチャートである。
【図5】無人搬送車を上面から視た模式図である。
【図6】第2実施形態における走行制御処理を示すフローチャートである。
【図7】緊急停止処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
1 無人搬送車
2 車体
3LF,3LR,3RF,3RR 駆動輪
70 制御装置(制御手段)
72a データメモリ(データ記憶手段)
72b 第1閾値メモリ(第1閾値記憶手段)
72c 第2閾値メモリ(第2閾値記憶手段)
77LF,77LR,77RF,77RR 操舵モータ(操舵手段)
78 慣性航法装置(位置算出手段、走行距離検出手段)
78a,78b パルス検出器(走行距離検出手段の一部)
78c ジャイロコンパス(方位角検出手段)
P 点
R 走行経路
T 目標点
S12,S42 距離算出手段
S14,S44 目標点変更手段
S26 位置推定手段
S27 ずれ量算出手段
S31 補正手段
S47 角度差算出手段
S49 走行状態変更手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、その車体に操舵自在に配設される複数の駆動輪と、それら複数の駆動輪をそれぞれ個別に操舵する複数の操舵手段と、前記車体の方位角を検出する方位角検出手段と、走行距離を検出する走行距離検出手段と、その走行距離検出手段により検出された走行距離および前記方位角検出手段により検出された車体の方位角に基づいて、前記車体の位置を算出する位置算出手段と、その位置算出手段により算出された車体の位置に応じて前記複数の操舵手段により前記複数の駆動輪をそれぞれ個別に操舵することで、走行経路に沿って走行するように、前記複数の操舵手段をそれぞれ個別に制御する制御手段とを備えた無人搬送車において、
前記走行経路を複数の点の配列として記憶すると共に、それら複数の点の各点に対応するデータをそれぞれ記憶するデータ記憶手段を備え、
そのデータ記憶手段には、前記複数の点の各点の位置が記憶されていると共に、前記複数の点の各点に対応して、前記複数の駆動輪の各操舵角がそれぞれ記憶され、
前記制御手段は、前記位置算出手段により算出された車体の位置に応じて前記複数の点の内のいずれか1の点を目標点とし、その目標点に対応して前記データ記憶手段に記憶されている複数の駆動輪の各操舵角に基づいて、前記複数の操舵手段をそれぞれ個別に制御することを特徴とする無人搬送車。
【請求項2】
前記データ記憶手段には、更に、前記複数の点の各点に対応して、前記車体の方位角が記憶され、
前記方位角検出手段により検出された車体の方位角と前記目標点に対応して前記データ記憶手段に記憶されている車体の方位角との角度差を算出する角度差算出手段と、
その角度差算出手段により算出された角度差が所定値よりも大きい場合に、走行状態を変更する走行状態変更手段とを備えていることを特徴とする請求項1記載の無人搬送車。
【請求項3】
前記位置算出手段により算出された車体の位置から、前記目標点に対応して前記データ記憶手段に記憶されている位置までの距離を算出する距離算出手段と、
その距離算出手段により算出された距離が所定値よりも小さい場合に、前記目標点を進行方向前方側に位置する次の点に変更する目標点変更手段とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の無人搬送車。
【請求項4】
前記目標点に対応して前記データ記憶手段に記憶されている複数の駆動輪の各操舵角に基づいて、前記複数の操舵手段を前記制御手段によりそれぞれ個別に制御した場合に、前記距離算出手段により算出された距離を走行した後の前記車体の位置を推定する位置推定手段と、
その位置推定手段により推定された車体の位置と前記目標点に対応して前記データ記憶手段に記憶されている位置とのずれ量を算出するずれ量算出手段と、
そのずれ量算出手段により算出されたずれ量が減少するように、前記目標点に対応して前記データ記憶手段に記憶されている複数の駆動輪の各操舵角をそれぞれ個別に補正する補正手段とを備え、
前記制御手段は、前記補正手段により補正された複数の駆動輪の各操舵角に基づいて、前記複数の操舵手段をそれぞれ個別に制御することを特徴とする請求項3記載の無人搬送車。
【請求項5】
前記補正手段は、前記ずれ量算出手段により算出されたずれ量および前記角度差算出手段により算出された角度差がそれぞれ減少するように、前記目標点に対応して前記データ記憶手段に記憶されている複数の駆動輪の各操舵角をそれぞれ個別に補正することを特徴とする請求項4記載の無人搬送車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−197922(P2008−197922A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32566(P2007−32566)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】