説明

無停電電源装置

【課題】 入力交流電圧が健全なときには、この交流電圧を通過させつつ負荷に供給し、また、前記入力交流電圧が異常なときには、蓄電池の端子電圧を所望の交流電圧に変換しつつ負荷に供給する主回路構成に特徴を持った無停電電源装置を提供する。
【解決手段】 電力変換回路11、昇圧回路12、制御回路13などにより無停電電源装置10を形成し、入力交流電源4が健全なときには、電力変換回路11のQ1,Q2,Q5,Q6は入力交流電源4の電圧極性の変化に同期してスイッチング動作をさせつつ、電力変換回路11のQ3,Q4は高周波でスイッチング動作をさせると共に、昇圧回路12を不動作とし、また、入力交流電源4が異常なときには、電力変換回路11のQ1,Q2を不動作にしつつ、電力変換回路11のQ3〜Q6は高周波でスイッチング動作をさせると共に、蓄電池設備5の端子電圧を入力とする昇圧回路12を動作させ、その出力直流電圧をコンデンサC1に給電しつつ、電力変換回路11の動作を継続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入力交流電圧が健全なときには、この交流電圧を通過させつつ負荷に供給し、また、前記入力交流電圧が異常なときには、蓄電池の端子電圧を所望の交流電圧に変換しつつ負荷に供給する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、この種の電源装置の従来例を示す回路構成図であり、この電源装置1は周知の半導体電力変換技術を用いて形成される双方向変換回路2、コンタクタ3、図示しないシーケンス回路などから構成され、4は商用電源などの入力交流電源、5は蓄電池設備、6は電源装置1の負荷である。
【0003】
この電源装置1では、入力交流電源4が健全なときには、前記シーケンス回路からの指令により、コンタクタ3を閉路状態にすることで、負荷6には入力交流電源4の交流電圧が供給されると共に、この交流電圧を入力とする双方向変換回路2により蓄電池設備5を充電するための直流電圧に変換している。
【0004】
また、上述の動作を行っている入力交流電源4が健全な状態から、入力交流電源4に停電が発生する、入力交流電源4の電圧が所定の範囲、例えば、停電や定格電圧の−12%〜+20%の範囲を逸脱するなどの異常な状態になると、この電源装置1では、前記シーケンス回路がこれを検知して、コンタクタ3を上述の閉路状態から開路状態に移行させ、この移行動作が完了すると、蓄電池設備5の端子電圧を入力とする双方向変換回路2により交流電圧を発生させて負荷6に供給する。このときの負荷6の両端電圧は、健全時に印加される入力交流電源4の電圧とほぼ同等にしている。
【0005】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献としては、下記のものがある。
【特許文献1】特開2006−25540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3に示した従来の電源装置1では、入力交流電源4が健全な状態でこの入力交流電源4の電圧を負荷6に印加中に、入力交流電源4に上述のような異常な状態が発生すると、コンタクタ3を開路状態に移行させた後、蓄電池設備5と双方向変換回路2とによる負荷6への給電を開始するまでの間に、入力交流電源4の電圧と双方向変換回路2の出力電圧とのオーバラップによるこの双方向変換回路2の損傷を防止するために、少なくとも数ミリ秒間の無電圧期間を必要とし、この期間には負荷6への給電が中断するという問題点があった。
【0007】
この発明の目的は、上記問題点を解消しつつ、低価格の無停電電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、自己消弧形半導体素子とダイオードとの逆並列接続回路2個を直列接続してなる第1アーム,第2アーム,第3アームと、第1コンデンサとを互いに並列接続し、第1リアクトルの一端を第2アームの中間接続点に接続し、第2リアクトルと第2コンデンサとを直列接続してなる出力フィルタのリアクトル側端を第3アームの中間接続点に接続して形成される電力変換回路と、蓄電池設備の端子電圧を昇圧した直流電圧に変換し、この直流電圧を前記第1コンデンサの両端に印加する昇圧回路と、前記電力変換回路への入力交流電源の一端と第1アームの中間接続点とを接続し、該入力交流電源の他端は第1リアクトルの他端と前記出力フィルタのコンデンサ側端とに接続すると共に、第2コンデンサの両端に接続される負荷に交流電圧を供給するために前記電力変換回路および昇圧回路の動作を制御する制御回路とから構成された無停電電源装置において、
前記制御回路では、前記入力交流電源が健全なときには、第1アーム,第3アームは該入力交流電源の電圧極性の変化に同期してスイッチング動作をさせつつ、第2アームは前記入力交流電源の周波数より高い周波数でスイッチング動作をさせると共に、前記昇圧回路を不動作とし、また、前記入力交流電源が異常なときには、第1アームを不動作にしつつ、第2アーム,第3アームは高周波でスイッチング動作をさせると共に、前記昇圧回路を動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、先述の無電圧期間を必要とせず、且つ、価格上昇を抑えた回路構成にすることにより、従来の電源装置の機能を維持しつつ、負荷への給電に対して中断の無い電源装置、すなわち、無停電電源装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、この発明の実施例を示す無停電電源装置の回路構成図である。
【0011】
この無停電電源装置10の電力変換回路11では、ダイオードがそれぞれ逆並列接続された自己消弧形半導体素子としてのIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)のQ1とQ2とを直列接続してなる第1アーム,ダイオードがそれぞれ逆並列接続されたIGBTのQ3とQ4とを直列接続してなる第2アーム,ダイオードがそれぞれ逆並列接続されたIGBTのQ5とQ6とを直列接続してなる第3アーム,コンデンサC1それぞれを互いに並列接続している。また、リアクトルL1の一端を第2アームの中間接続点に接続し、リアクトルL2とコンデンサC2とを直列接続してなる出力フィルタのリアクトルL2側端を第3アームの中間接続点に接続している。
【0012】
また、周知のチョッパ回路などで形成される昇圧回路12は、蓄電池設備5の端子電圧を昇圧した直流電圧に変換し、この直流電圧をコンデンサC1の両端に印加するときに供される。さらに、制御回路13は、負荷6に安定した交流電圧を供給するために、電力変換回路11および昇圧回路12の動作を制御するものである。
【0013】
また、入力交流電源4の一端はコンタクタ14の一方の接点を介して第1アームの中間接続点に接続し、入力交流電源4の他端はコンタクタ14の他方の接点を介してリアクトルL1の他端と前記出力フィルタのコンデンサC2側端とに接続している。ここで、コンデンサC3は入力交流電源のフィルタコンデンサである。さらに、コンデンサC2の両端はコンタクタ15の接点を介して負荷6に接続されている。
【0014】
この無停電電源装置10の動作を、図2の波形図を参照しつつ、以下に説明する。
【0015】
コンタクタ14,15が共に無励磁状態から、先ず、コンタクタ14を励磁すると、電圧検出器PT1を介した入力交流電源4の電圧検出値が、制御回路13に入力される。
【0016】
この入力交流電源4の入力電圧が健全なときには、制御回路13では、図2(イ)に示すように、電力変換回路11の第1アームを形成するQ1,Q2、第3アームを形成するQ5,Q6は前記入力電圧の極性の変化に同期してスイッチング動作をさせつつ、第2アームを形成するQ3,Q4には入力交流電源4の周波数より高い周波数でスイッチング動作をさせると共に、昇圧回路12を不動作(オフ状態)にする。
【0017】
この図2(イ)に示す状態で、電圧検出器PT2を介した電力変換回路11の出力電圧、すなわち、コンデンサC2の両端電圧が確立すると、コンタクタ15が励磁され、負荷6への給電が開始される。
【0018】
この状態では、IGBTのQ1,Q2,Q5,Q6それぞれが入力交流電源4の電圧極性の変化に同期してスイッチング動作をしていることから、負荷6の両端電圧は入力交流電源4の電圧とほぼ同等になっている。すなわち図2(イ)に示すように、入力交流電源4の電圧変動が負荷6の両端電圧にも現れる。また、IGBTのQ3,Q4それぞれが入力交流電源4の周波数より高い周波数でスイッチング動作をさせて、コンデンサC1の両端電圧をほぼ一定値に保つようにしている。なお、図2(イ)では、IGBTのQ3,Q4のオン・オフパルスは一定間隔で表示しているが、これは模式的に示すもので、制御回路13での制御動作に応じてこれらのパルス幅は増減する。
【0019】
また、上述の動作を行っている入力交流電源4が健全な状態から、入力交流電源4の異常な状態として、該電源に停電が発生すると、この無停電電源装置10では、電圧検出器PT1を介した制御回路13がこれを検知して、コンタクタ14を上述の閉路状態から開路状態に移行させると共に、図2(ロ)に示すように、電力変換回路11のIGBTのQ1,Q2それぞれを不動作(オフ状態)にしつつ、IGBTのQ5,Q6,Q3,Q4それぞれは高周波でスイッチング動作をさせると共に、昇圧回路12の動作を開始させて、コンタクタ14の開路動作に伴うコンデンサC1の両端電圧の変動を抑制しつつ、その電圧値の維持を図る。
【0020】
この状態になると、電圧検出器PT2を介した制御回路13により、昇圧回路12では蓄電池設備5の端子電圧を昇圧した直流電圧に変換し、この直流電圧はコンデンサC1の両端電圧を所望の値を維持するために供給され、IGBTのQ3,Q4,Q5,Q6それぞれが高周波のスイッチング動作をすることにより、負荷6の両端電圧を入力交流電源4の定格電圧,周波数とほぼ同等にしている。
【0021】
すなわち、このときには、コンデンサC1を直流電源とし、電力変換回路11の第2アームと第3アームとでインバータ回路を形成することで、電力変換回路11の出力には正弦波状の交流電圧を発生させることができる。なお、図2(ロ)では、IGBTのQ3,Q4,Q5,Q6それぞれのオン・オフパルスは一定間隔で表示しているが、これは模式的に示すもので、制御回路13での制御動作に応じてこれらのパルス幅は増減する。
【0022】
また、図2(ロ)では、入力交流電源4が異常な状態として、停電状態になった場合を例に挙げて説明したが、入力交流電源4の電圧が所定の範囲(例えば、定格電圧の−12%〜+20%)を逸脱するような異常の場合にも、この無停電電源装置10では、電圧検出器PT1を介した制御回路13がこれを検知して、コンタクタ14を閉路状態から開路状態に移行させると共に、第1〜第3アームのスイッチング動作および昇圧回路12の動作は、上述の停電の場合と同様に行われる。
【0023】
この発明の無停電電源装置10によれば、図3に示した従来の電源装置1のように無電圧期間を必要とせず、また、コンバータ回路とインバータ回路からなる本格的な無停電電源装置に比して、低価格な無停電電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施例を示す無停電電源装置の回路構成図
【図2】図1の動作を説明する波形図
【図3】従来例を示す電源装置の回路構成図
【符号の説明】
【0025】
1…電源装置、2…双方向変換回路、3…コンタクタ、4…入力交流電源、5…蓄電池設備、6…負荷、10…無停電電源装置、11…電力変換回路、12…昇圧回路、13…制御回路、14,15…コンタクタ、Q1〜Q6…IGBT、L1,L2…リアクトル、C1〜C3…コンデンサ、PT1,PT2…電圧検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己消弧形半導体素子とダイオードとの逆並列接続回路2個を直列接続してなる第1アーム,第2アーム,第3アームと、第1コンデンサとを互いに並列接続し、第1リアクトルの一端を第2アームの中間接続点に接続し、第2リアクトルと第2コンデンサとを直列接続してなる出力フィルタのリアクトル側端を第3アームの中間接続点に接続して形成される電力変換回路と、
蓄電池設備の端子電圧を昇圧した直流電圧に変換し、この直流電圧を前記第1コンデンサの両端に印加する昇圧回路と、
前記電力変換回路への入力交流電源の一端と第1アームの中間接続点とを接続し、該入力交流電源の他端は第1リアクトルの他端と前記出力フィルタのコンデンサ側端とに接続すると共に、第2コンデンサの両端に接続される負荷に交流電圧を供給するために前記電力変換回路および昇圧回路の動作を制御する制御回路とから構成された無停電電源装置において、
前記制御回路では、
前記入力交流電源が健全なときには、第1アーム,第3アームは該入力交流電源の電圧極性の変化に同期してスイッチング動作をさせつつ、第2アームは前記入力交流電源の周波数より高い周波数でスイッチング動作をさせると共に、前記昇圧回路を不動作とし、
また、前記入力交流電源が異常なときには、第1アームを不動作にしつつ、第2アーム,第3アームは高周波でスイッチング動作をさせると共に、前記昇圧回路を動作させることを特徴とする無停電電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−194952(P2009−194952A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30141(P2008−30141)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】