説明

無停電電源装置

【課題】UPSの蓄電池運転時に放電終止電圧に到達しても、そのときの負荷量に応じた時間だけ継続運転を行なうことが可能な無停電電源装置を提供する。
【解決手段】交流を直流に変換する交流/直流変換器1と、この出力を再び交流に変換して負荷3に給電する直流/交流変換器2と、直流/交流変換器2の直流入力側に接続された蓄電池4と、蓄電池4の直流出力電圧を検出する電圧検出器5とを具備し、蓄電池4を用いて直流/交流変換器2を介して負荷3に給電中、直流出力電圧が所定の第1の閾値以下になったときアラームを発し、直流出力電圧が第1の閾値より低い所定の第2の閾値以下となるか、または直流出力電圧が負荷4の許容する最低電圧に見合う第3の閾値以下となったとき、蓄電池4から前記直流/交流変換器2への給電を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、交流−直流−交流変換装置と、その直流部に蓄電池を接続し、交流入力停電時は、蓄電池を電源として負荷に交流電力を供給する、無停電電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無停電電源装置(以下UPSと称する。)においては、蓄電池運転時にUPSに接続された蓄電池が、予め定められた放電終止電圧に達すると、UPSを停止させて蓄電池の劣化を防止する保護を行なっていた(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−93424号公報(全体)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のUPSにおいては、蓄電池運転時にUPSに接続された蓄電池が、予め定められた放電終止電圧に達すると、そのときの負荷の量に、無関係にUPSが停止する。この場合の放電終止電圧は蓄電池メーカが推奨する限度電圧であり、この放電終止電圧で蓄電池の放電を中止し、再び充電して使用すれば、基本的に劣化は発生せず、予定された蓄電池寿命までの使用を可能とする。
【0005】
然るに、通常UPSの負荷は給電停止するとその影響が大きく、多少の蓄電池の性能劣化や寿命の低下を許容しても運転継続を優先したいというニーズは少なからずある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、UPSの蓄電池運転時に放電終止電圧に到達しても、そのときの負荷量に応じた時間だけ継続運転を行なうことが可能な無停電電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の無停電電源装置は、交流を直流に変換する交流/直流変換器と、この交流/直流変換器の直流出力を再び交流に変換して負荷に給電する直流/交流変換器と、前記直流/交流変換器の直流入力側に接続された蓄電池と、前記蓄電池の直流出力電圧を検出する電圧検出器とを具備し、前記蓄電池を用いて前記直流/交流変換器を介して前記負荷に給電中、前記直流出力電圧が所定の第1の閾値以下になったときアラームを発し、前記直流出力電圧が前記第1の閾値より低い所定の第2の閾値以下となるか、または前記直流出力電圧が前記負荷の許容する最低電圧に見合う第3の閾値以下となったとき、前記蓄電池から前記直流/交流変換器への給電を停止するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、UPSの蓄電池運転時に放電終止電圧に到達しても、そのときの負荷量に応じた時間だけ継続運転を行なうことが可能な無停電電源装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1に係る無停電電源装置のブロック構成図。
【図2】本発明の実施例1に係る無停電電源装置動作説明図。
【図3】本発明の実施例2に係る無停電電源装置のブロック構成図。
【図4】本発明の実施例2に係る無停電電源装置の動作説明図。
【図5】本発明の実施例3に係る無停電電源装置のブロック構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施例1に係る無停電電源装置を図1及び図2を参照して説明する。図1は本発明の実施例1に係る無停電電源装置のブロック構成図である。
【0012】
図1において、交流電源から与えられる交流電圧を交流/直流変換器1によって直流に変換し、その直流出力を直流/交流変換器2に与える。直流/交流変換器2は直流電圧を再び交流電圧に変換して負荷3に給電する。直流/交流変換器2の入力部には蓄電池4が接続されており、万一交流電源が停電したとき、蓄電池4から直流/交流変換器2を介して負荷3に電力を供給する構成となっている。尚、上記構成において、交流/直流変換器1交流入力部及び直流出力部並びに直流/交流変換器2の交流出力部には通常フィルタ回路が設けられるが、簡単のため図示を省略している。また、交流/直流変換器1あるいは直流/交流変換器2の故障時や保守点検時に交流電源から直接負荷3に給電するためのバイパス回路が設けられるのが通常であるが、このバイパス回路の図示も省略している。
【0013】
蓄電池4の直流出力電圧は電圧検出器5によって検出され、比較回路6、比較回路7及び比較回路8の一方の入力端子に各々与えられる。比較回路6の他方の入力端子には放電終止電圧設定器9の出力信号が接続されている。そして、比較回路6は電圧検出器5の検出電圧が放電終止電圧設定器9によって設定された電圧(第1の閾値)以下となったとき、アラーム信号を出力する。このアラーム信号によって、例えば重要負荷の運転継続を行なう必要がない運転状態のときは、手動によってUPSの運転を停止することが可能となる。
【0014】
比較回路7の他方の入力端子には許容最低電圧設定器10の出力信号が接続されている。
【0015】
そして、比較回路7は電圧検出器5の検出電圧が許容最低電圧設定器10によって設定された電圧(第2の閾値)以下となったとき、OR回路12に信号「1」を出力する。また、比較回路8の他方の入力端子には最低許容負荷電圧設定器11の出力信号が接続されている。そして、比較回路7は電圧検出回路5の検出電圧が許容最低負荷電圧設定器11によって設定された電圧(第3の閾値)以下となったとき、OR回路12に信号「1」を出力する。OR回路12は比較回路7または比較回路8が「1」を出力したとき、UPSの運転を停止する運転停止指令を出力する。UPSの運転が停止されると蓄電池4から直流/交流変換器2への給電が停止される。
【0016】
以下、本実施例1の作用効果について図2も参照して説明する。
【0017】
放電終止電圧設定器9の設定電圧は前述した通りの蓄電池メーカが推奨する放電終止電圧である。例えば、エンジン始動用の鉛蓄電池の一例ではこの電圧は1.6V/セルとなっている。許容最低電圧設定器10の設定電圧は、これ以上蓄電池4が放電すると、過放電状態となって寿命及び特性劣化に多大な影響を及ぼすとされる電圧である。上記エンジン始動用の鉛蓄電池ではこの許容最低電圧を1.2V/セルとして使用した例がある。また、許容最低負荷電圧設定器11の設定電圧は、この場合負荷3の要求する最低電圧を直流電圧に換算した値となる。この実施例1の構成においては、許容最低負荷電圧設定器11の設定電圧は許容最低電圧設定器10の設定電圧とほぼ等しくなるように直流/交流変換器2の電圧余裕の設計を行なっておくことが好ましい。
【0018】
尚、直流/交流変換器2から負荷3までにはケーブルのインピーダンス降下などがあり、負荷率によって上述の換算の条件が異なる。このため、何らかの方法で負荷率を検出し、この検出値に応じて許容最低負荷電圧設定器11の設定電圧を補正するようにしても良い。
【0019】
以上の条件により、蓄電池4が放電して放電終止電圧に達するとアラームが発せられるがUPSの運転は継続される。そして許容最低電圧設定器10の設定電圧または許容最低負荷電圧設定器11の設定電圧まで蓄電池4の電圧が低下したとき、UPSの運転を停止して蓄電池4の放電を中止する。
【0020】
図2は蓄電池4が放電して放電終止電圧に達してから放電停止するまでの時間、すなわちUPSの運転継続時間を負荷率を横軸にプロットした動作説明図である。この図から分かるように、負過電流が小さければ運転継続時間は長くなる。従って、例えば蓄電池でUPSを運転中に停止を特に嫌う負荷のみを残してそれ以外の負荷を切り離すなどの処置を行なえば、運転継続時間を更に延ばすことが可能となる。
【実施例2】
【0021】
以下、本発明の実施例2に係る無停電電源装置を図3及び図4を参照して説明する。
【0022】
図3は本発明の実施例2に係る無停電電源装置のブロック構成図である。この実施例2の各部について、図1の本発明の実施例1に係る無停電電源装置のブロック構成図の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明は省略する。この実施例2が実施例1と異なる点は、電圧検出器5の出力を入力とする変化率検出器13を設け、その出力を放電終止電圧設定器9及び許容最低電圧設定器10に与える構成とした点である。
【0023】
この実施例2の作用効果について図4も参照して以下に説明する。
【0024】
蓄電池の放電終止電圧は、蓄電池の放電電流によって変化する特性があることが知られている。この特性を適用する場合、放電電流が定格電流より小さいときの放電終止電圧は、放電電流が定格電流のときの放電終止電圧に比べて高く設定する必要がある。放電電流は負荷率にほぼ比例する。そして放電電流の大きさに応じて蓄電池4の電圧の低減率は決まるので、変化率検出器13によって直流電圧の変化率を検出すれば、間接的に放電電流または負荷率を検出していることと等価となる。尚変化率検出器13は、例えば所定時間の平均値を検出するようにし、短時間の変動分を除去するようなフィルタ機能を持つようにすることが好ましい。
【0025】
図4はこの実施例2の動作説明図である。図示したようにセルベースの放電終止電圧は負荷率が100%のとき(この例では1.6V/セル)に比して負荷率低減と共に上昇している。また、許容最低電圧についても同様である。そして、許容最低負荷電圧設定器11の設定電圧を負荷端が定格の90%となるような電圧とし、図示したように1.6Vより僅かに低い電圧となるように直流/交流変換器2の電圧余裕の設計を行なっておく。このようにすれば、図4の網掛けの部分が放電終止電圧以下の電圧となってもUPSの運転を継続することが可能な領域となる。運転継続時間は負荷率に依存するので、この実施例2においても、実施例1の図2に示した特性が成り立つことが分かる。尚、図4においては、許容最低負荷電圧設定器11の設定電圧をほぼ負荷率が100%のときの放電終止電圧となるようにしたので、負荷率が100%のときの運転継続時間は図2に比べて短時間となる。
【0026】
また、前述したように配線のインピーダンス降下分を考慮して変化率検出器13の出力を許容最低負荷電圧設定器11に与え、負荷率の低減に従って許容最低負荷電圧設定器11の設定電圧を低減させる補正を行なうようにしても良い。
【実施例3】
【0027】
図5は本発明の実施例3に係る無停電電源装置のブロック構成図である。この実施例3の各部について、図3の本発明の実施例2に係る無停電電源装置のブロック構成図の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明は省略する。この実施例3が実施例2と異なる点は、変化率検出器13に代えて、電流検出器14及びこの電流検出器14の出力からその有効電流を求める有効電流演算器15を設け、その出力を終止電圧設定器9及び許容最低電圧設定器10に与える構成とした点である。尚、有効電流演算器15によって有効電流を分離するには直流/交流変換器2の出力位相などの信号が必要であるがここでは図示を省略している。
【0028】
実施例2における説明と同様、出力の有効電流と蓄電池4の放電電流の大きさはほぼ比例するので、有効電流演算器15は間接的に放電電流または負荷率を検出していることと等価となる。従ってこの実施例3についても図4で説明した特性と同様の動作特性が得られる。
【0029】
尚、この実施例3の有効電流演算器15についても、短時間の変動分を除去するようなフィルタ機能を持つようにすることが好ましい。
【符号の説明】
【0030】
1 交流/直流変換器
2 直流/交流変換器
3 負荷
4 蓄電池
5 電圧検出器
6、7、8 比較回路
9 放電終止電圧設定器
10 許容最低電圧設定器
11 許容最低負荷電圧設定器
12 OR回路
13 変化率検出器
14 電流検出器
15 有効電流演算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流を直流に変換する交流/直流変換器と、
この交流/直流変換器の直流出力を再び交流に変換して負荷に給電する直流/交流変換器と、
前記直流/交流変換器の直流入力側に接続された蓄電池と、
前記蓄電池の直流出力電圧を検出する電圧検出器と
を具備し、
前記蓄電池を用いて前記直流/交流変換器を介して前記負荷に給電中、
前記直流出力電圧が所定の第1の閾値以下になったときアラームを発し、
前記直流出力電圧が前記第1の閾値より低い所定の第2の閾値以下となるか、または前記直流出力電圧が前記負荷の許容する最低電圧に見合う第3の閾値以下となったとき、
前記蓄電池から前記直流/交流変換器への給電を停止するようにしたことを特徴とする無停電電源装置。
【請求項2】
前記蓄電池の放電電流を直接または間接的に検出する負荷率検出手段を有し、
前記負荷率検出手段が検出する負荷率に応じて前記第1の閾値及び前記第2の閾値を変化させるようにしたことを特徴とする請求項1に記戴の無停電電源装置。
【請求項3】
前記負荷率検出手段は前記電圧検出器で検出した電圧の変化率を検出してなることを特徴とする請求項2に記戴の無停電電源装置。
【請求項4】
前記負荷率検出手段は前記前記直流/交流変換器の出力電流の有効分を検出してなることを特徴とする請求項2に記戴の無停電電源装置。
【請求項5】
前記負荷率検出手段の検出値の変化に応じて前記第3の閾値を補正するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記戴の無停電電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−166955(P2011−166955A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27497(P2010−27497)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】