説明

無段変速装置

【課題】クラッチのキャンセラー室の小型化や、キャンセラーばねの負荷荷重の低減、または、キャンセラーばねの廃止が可能な構造を実現する。
【解決手段】低速側リターンスプリング65を設けている低速側キャンセラー室75と高速側油圧室69に圧油を導入する高速側油圧導入油路76とを低速側キャンセラー室連通油路77により連通させる。また、高速側リターンスプリング68を設けている高速側キャンセラー室78と低速側油圧室66に圧油を導入する低速側油圧導入油路79とを高速側キャンセラー室連通油路80により連通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能で、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを組み合わせた無段変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用自動変速装置としてトロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを組み合わせて無段変速装置を構成する事が、従来から提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。例えば、図3の無段変速装置の概略断面図に示すように無段変速装置には、トロイダル型無段変速機1と遊星歯車式変速機20とを備える。
【0003】
このうちのトロイダル型無段変速機1は、回転トルクが入力される入力軸2と、前記入力軸2に支持され入力軸2と一体で回転する一対の入力側ディスク3,3と、前記入力側ディスク3,3との間に挟持されるパワーローラ4,4を介して入力側ディスク3,3から変更可能な変速比で回転トルクが伝達される出力側ディスク5と、前記パワーローラ4,4を挟持した状態の入力側ディスク3,3および出力側ディスク5に軸方向への押圧力を付与する押圧装置(図示略)とを備えている。すなわち、トロイダル型無段変速機1は、互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスク3,3および出力側ディスク5と、これらの両ディスク3,5間に挟持される複数のパワーローラ4,4とを有する。
【0004】
また、入力側ディスク3,3および出力側ディスク5の回転中心に配置される入力軸2に対して捻れの位置にあり且つ互いに同心的に設けられた一対の枢軸を中心に傾転するとともに、各パワーローラ4,4を軸受6を介して回転自在に支持する複数のトラニオン7,7を備える。また、入力側ディスク3,3および出力側ディスク5には、それぞれパワーローラ4,4の周面4a、4aと油膜を介して接触する凹面3a,5aを備える。
【0005】
また、この例では、一対の入力側ディスク3,3の間に出力側ディスク5が配置されるとともに、出力側ディスク5は、一対の出力側ディスクをそれらの背面同士を重ねるように接合して一体化した状態となっており、1つの出力側ディスク5の両側面にそれぞれ入力側ディスク3,3に対向する凹面5a,5aが設けられている。また、出力側ディスク5の内周側には、その入力軸2との間にトロイダル型無段変速機1の出力軸となる円筒状の筒状軸8が設けられており、当該筒状軸8内を入力軸2が貫通した状態となっている。そして、筒状軸8と出力側ディスク5とが入力軸2に対して一体に回転自在に構成され、入力軸2に入力された回転トルクは、入力側ディスク3,3からパワーローラ4,4を介して出力側ディスク5,5に伝動されて筒状軸8から出力される。なお、同軸上に配置される入力軸2および筒状軸8は、トロイダル型無段変速機1のリア側(図中右側)に延出し、後述のように遊星歯車式変速機20に接続されている。
【0006】
そして、この際に、例えば、パワーローラ4,4の周面4a、4aが入力側ディスク3,3の外周側に接触するとともに出力側ディスク5,5の内周側に接触した増速状態から中立位置を経て入力側ディスク3,3の内周側に接触するとともに出力側ディスク5,5の外周側に接触した減速状態まで変速比を変更することが可能となっている。
【0007】
また、遊星歯車式変速機20は、入力軸2およびリア側(後側、図中右側)の入力側ディスク3に結合固定された第1キャリア21を備えている。この第1キャリア21は、伝達軸22aを介して同軸上に前後に一体に回転可能に配置された2つの第1遊星歯車22および第2遊星歯車23を自転自在および公転自在に支持するようになっている。なお、一体に回転する第1遊星歯車22および第2遊星歯車23は、第1キャリア21に複数組が支持されている。また、上述の筒状軸8は、前後に一体に回転可能に配置された2つの第1および第2遊星歯車22,23のうちの前側の第1遊星歯車22に対応する軸方向位置まで延出して配置され、当該筒状軸8の端部に第1太陽歯車24が一体に回転可能に設けられている。
【0008】
そして、トロイダル型無段変速機1の筒状軸8と一体に回転する第1太陽歯車24と、第1太陽歯車24に噛み合うとともに第2遊星歯車23と一体に回転する第1遊星歯車22と、トロイダル型無段変速機1の入力軸2と一体に回転するとともに第1遊星歯車22および第2遊星歯車23を自転自在および公転自在に支持する第1キャリア21とから第1遊星歯車機構ユニットが構成されている。なお、第1遊星歯車機構ユニットおよび後述の第2遊星歯車機構ユニットには、リング歯車が無い構成となっている。
【0009】
そして、入力軸2の筒状軸8よりもリア側となる部分の外周には、後述の3つの第2から第4太陽歯車25,26,27を前後に間隔をあけて並べた状態で一体に回転可能に支持する円筒状の伝達軸28が設けられている。当該伝達軸28には、前側から順に同軸上で一体に回転可能に第2太陽歯車25、第3太陽歯車26、第4太陽歯車27が備えられている。なお、これら第2太陽歯車25、第3太陽歯車26、第4太陽歯車27は、第1太陽歯車24と同軸上に配置される。
【0010】
そして、第2遊星歯車23は、第2太陽歯車25と噛み合っており、第2太陽歯車25と第2遊星歯車23と、第2遊星歯車23を支持する第1キャリア21(第1遊星歯車機構ユニットのキャリアと第2遊星歯車機構ユニットのキャリアとを兼ねる)とから、第2遊星歯車機構ユニットが形成されている。
【0011】
また、第3太陽歯車26には、無段変速装置のケーシング40に固定された状態の第3キャリア29に支持された複数の第3遊星歯車30が噛み合っている。また、第3遊星歯車30には、第3リング歯車31が噛み合っている。そして、これら第3太陽歯車26、第3キャリア29、第3遊星歯車30および第3リング歯車31とにより、第3遊星歯車機構ユニットが構成されている。
【0012】
また、第3リング歯車31は、高速用クラッチ32を介して遊星歯車式変速機20の出力軸33、すなわち、無段変速装置の出力軸33に接続され、高速用クラッチ32が接続状態となっていると(なお、後述の低速用クラッチ37は切断状態)、第3リング歯車31と出力軸33とが一体に回転可能となる。
【0013】
また、第4太陽歯車27には、第4キャリア34に自転自在および公転自在に支持された第4遊星歯車35が噛み合っている。また、第4遊星歯車35には、トロイダル型無段変速機1の入力軸2と一体に回転可能な第4リング歯車36が噛み合っている。そして、これら第4太陽歯車27、第4キャリア34、第4遊星歯車35および第4リング歯車36により、第4遊星歯車機構ユニットが構成されている。そして、第4キャリア34は、低速用クラッチ37を介して出力軸33に接続され、低速用クラッチ37が接続状態で、高速用クラッチ32が切断状態となっていると、第4キャリア34と出力軸33とが一体に回転可能となる。
【0014】
このような構成の無段変速装置においては、低速用クラッチ37を接続するとともに高速用クラッチ32の接続を断った、所謂低速モード状態では、トロイダル型無段変速機1の変速比を変える事により、無段変速装置全体としての変速比である、入力軸2と出力軸33との間の変速比が変化する。このような低速モード状態では、無段変速装置全体としての変速比は、無限大に変化する。すなわち、トロイダル型無段変速機1の変速比を調節する事により、入力軸2を一方向に回転させた状態のまま出力軸33の回転状態を、停止状態を挟んで、正転、逆転の変換自在となる。
【0015】
これに対して、低速用クラッチ37の接続を断ち、高速用クラッチ32を接続した、所謂高速モード状態では、トロイダル型無段変速機1の変速比を変える事により、無段変速装置全体としての変速比が変化するが、この場合には、トロイダル型無段変速機1の変速比を大きくする程、無段変速装置全体としての変速比が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許5607372号公報
【特許文献2】特開2003−307266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、上記の無段変速装置は、通常二つのクラッチ(高速用クラッチと低速用クラッチ)が必要であり、各クラッチの油圧室に圧油を導入、排出することで、クラッチの断接が行われる。また、切断されているクラッチの油圧室には遠心油圧力が発生するため、この遠心油圧力を相殺するためのキャンセラー室やキャンセラーばねが設けられる。
【0018】
しかし、クラッチの回転数が高くなるほど、遠心油圧力が大きくなるため、遠心油圧力を相殺するには、キャンセラー室を大きくし、キャンセラー室の受圧面積を油圧室の受圧面積に近づけたり、キャンセラーばねの負荷荷重を大きくしたりする必要がある。
【0019】
そのため、キャンセラー室が大きくなる分のクラッチの設置スペースの確保や、クラッチを接合する際に、キャンセラー室の遠心油圧力やキャンセラーばねの負荷荷重より大きな油圧力を油圧室に導入しなければならず、油圧ポンプの大型化やポンプ動力の増加が問題となる。
【0020】
本発明は、上記の様な事情に鑑みて、キャンセラー室の小型化や、キャンセラーばねの負荷荷重の低減、または、キャンセラーばねの廃止が可能な構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の無段変速装置は、従来から知られている無段変速装置と同様に、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを、クラッチ装置を介して組み合わせて成る。
このうちのクラッチ装置は、減速比を大きくする第一のモード(例えば低速モード)を実現する際に接続されて同じく小さくする第二のモード(例えば高速モード)を実現する際に接続を断たれる第一のクラッチ(例えば低速用クラッチ)と、この第二のモードを実現する際に接続されて上記第一のモードを実現する際に接続を断たれる第二のクラッチ(例えば高速用クラッチ)とから成る。
そして、前記第一のクラッチには、第一のモードを実現する際にクラッチが接続されるべく圧油が導入される第一の油圧室と、クラッチの回転により発生する遠心油圧力を相殺するための第一のキャンセラー室が設けられ、前記第二のクラッチには、第二のモードを実現する際にクラッチが接続されるべく圧油が導入される第二の油圧室と、クラッチの回転により発生する遠心油圧力を相殺するための第二のキャンセラー室が設けられ、前記第一の油圧室と前記第二のキャンセラー室とが連通し、前記第二の油圧室と前記第一のキャンセラー室とが連通している。
【発明の効果】
【0022】
本発明の無段変速装置によれば、キャンセラー室の小型化や、キャンセラーばねの負荷荷重の低減、または、キャンセラーばねの廃止が可能となることから、キャンセラー室の小型化により重量の低減や、重量の低減による無段変速装置の燃費の向上、また、キャンセラーばねの負荷荷重の低減によりキャンセラーばねの小型化や、小型化による部品コストの低減、更には、キャンセラーばねの廃止により部品点数削減ができ、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示す断面図。
【図2】図1のA部拡大図。
【図3】従来の無段変速装置を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1〜2は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本例の場合は、前述の特許文献1に模式的に記載された構造を具体化すると共に、キャンセラー油圧室の小型化や、キャンセラーばねの負荷荷重の低減、または、キャンセラーばねの廃止を図るべく、低速用、高速用各クラッチ47、48の構造を工夫した点にある。先ず、本例の無段変速装置自体の構成を簡単に説明してから、本例の特徴である、低速用、高速用各クラッチ47、48の構造を説明する。本例の無段変速装置は、トロイダル型無段変速機44と3個の遊星歯車式変速機45a、45b、45cとを備える。そして、上記トロイダル型無段変速機44を構成する出力側ディスク(内側ディスク)42と、このトロイダル型無段変速機44に隣接して設けた第一遊星歯車式変速機45aを構成する第一太陽歯車49aとを、入力軸43の周囲に設置した中空回転軸50により連結している。又、上記第一遊星歯車式変速機45aを構成する第一キャリア51を、上記入力軸43に結合固定している。そして、この第一キャリア51に互いに同軸に支持されたステップピニオン式の第一遊星歯車52a、52bのうち、一方(トロイダル型無段変速機44に近い側で、図1〜2の左方)の第一遊星歯車52aを、上記第一太陽歯車49aに噛合させている。
【0025】
これに対して、他方(トロイダル型無段変速機44から離れた側で、図1〜2の右方)の第一遊星歯車52bを、伝達軸53の一端部(図1〜2の左端部)に固定した別の第一太陽歯車49bに噛合させている。又、この伝達軸53は、その中間部に、第二遊星歯車式変速機5bを構成する第二太陽歯車54を設けると共に、その他端部(図1〜2の右端部)に、第三遊星歯車式変速機45cを構成する第三太陽歯車55を設けている。又、第二遊星歯車式変速機45bを構成する第二キャリア56は無段変速装置のケーシング57に固定されている。そして、上記第二太陽歯車54の回転を、上記第二遊星歯車式変速機45bを構成するリング歯車58と共に回転する高速側出力部材59と、この高速側出力部材59と出力軸49との間に設けた高速用クラッチ48とを介して、この出力軸49に取り出し自在としている。又、上記第三遊星歯車式変速機45cを構成する第三リング歯車60は、前記入力軸3に結合固定している。そして、上記第三太陽歯車55の回転を、上記第三遊星歯車式変速機45cを構成する第三キャリア71と共に回転する低速側出力部材61と、この低速側出力部材61と上記出力軸49との間に設けた低速用クラッチ47とを介して、この出力軸49に取り出し自在としている。尚、この様な無段変速装置の基本構成は、前記特許文献1、2に記載されている為、これ以上の詳しい説明は省略し、以下、本例の特徴である、上記低速用、高速用各クラッチ47、48の構造を説明する。
【0026】
本例の場合には、これら低速用、高速用各クラッチ47、48を、それぞれ湿式多板式の油圧クラッチとしている。このうちの低速用クラッチ47は、複数のセパレータプレート(クラッチプレート)62a、62aと、複数のコアプレート(プレッシャプレート)63a、63aと、低速側ピストン部材64と、低速側リターンスプリング65と、低速側油圧室66とを備える。又、上記高速用クラッチ48は、同じく複数のセパレータプレート(クラッチプレート)62b、62bと、複数のコアプレート(プレッシャプレート)63b、63bと、高速側ピストン部材67と、高速側リターンスプリング68と、高速側油圧室69とを備える。そして、上記低速用クラッチ47の各セパレータプレート62a、62aを、上記低速側出力部材61に、上記高速用クラッチ48の各セパレータプレート62b、62bを、上記高速側出力部材59に、軸方向の変位を可能に、且つ、回転方向の変位を不能に、それぞれ支持している。又、上記低速用、高速用両クラッチ47、48の各コアプレート63a、63bを、互いに共通する出力部材である、上記出力軸49と共に回転する出力軸側出力部材70に、軸方向の変位を可能に、且つ、回転方向の変位を不能に、それぞれ支持している。尚、上記各セパレータプレート62a、62b及び上記各コアプレート63a、63bは、上記低速用クラッチ47と上記高速用クラッチ48とで同じものとしている(同種の部品としている)。
【0027】
そして、減速比を大きくする低速モードを実現する際には、上記低速用クラッチ47の低速側油圧室66に圧油を導入する事により、低速側ピストン部材64を介して各セパレータプレート62a、62a及び各コアプレート63a、63aを互いに近付く方向に押圧し(低速側ピストン部材64と低速側止め輪72とにより挟持し)、これら両プレート62a、62a同士の間で動力の伝達を可能にする。この様な低速モードの際に、上記高速用クラッチ8は、高速側リターンスプリング68により高速側ピストン部材67が、高速側油圧室69の軸方向寸法が小さくなる方向に押し戻され、この高速用クラッチ8の各セパレータプレート62b、62b及び各コアプレート63b、63bが互いに隙間を介して対向する。一方、高速モードを実現する際には、上記高速用クラッチ8の高速側油圧室69に圧油を導入する事により、高速側ピストン部材67を介して各セパレータプレート62b、62b及び各コアプレート63b、63bを互いに近付く方向に押圧し(高速側ピストン部材67の端部に設けた押圧板74と高速側止め輪73とにより挟持し)、これら両プレート62b、63b同士の間で動力の伝達を可能にする。この様な高速モードの際に、上記低速用クラッチ7は、低速側リターンスプリング65により低速側ピストン部材64が低速側油圧室66の軸方向寸法が小さくなる方向に押し戻され、この低速用クラッチ47の各セパレータプレート62a、62a及び各コアプレート63a、63aが互いに隙間を介して対向する。尚、本例の場合には、上記低速用クラッチ47の各セパレータプレート62a、62a及びコアプレート63a、63aの数を、同じく上記高速用クラッチ48の数に比べて多くしている。この理由は、ギヤードニュートラル状態を実現できる上記低速モード時の伝達トルクが、パワースプリットモードを実現できる上記高速モード時の伝達トルクに比べて大きくなる為である。
【0028】
更に、本例の場合には、低速側リターンスプリング65を設けている低速側キャンセラー室75と高速側油圧室69に圧油を導入する高速側油圧導入油路76とを低速側キャンセラー室連通油路77により連通させている。また、高速側リターンスプリング68を設けている高速側キャンセラー室78と低速側油圧室66に圧油を導入する低速側油圧導入油路79とを高速側キャンセラー室連通油路80により連通させている。即ち、低速モードの際には、切断している高速用クラッチ48の高速側キャンセラー室78に圧油が導入され、高速側油圧室69に発生している遠心油圧力に対向した油圧力を発生させる。また、高速モードの際には、切断している低速用クラッチ47の低速側キャンセラー室75に圧油が導入され、低速側油圧室66に発生している遠心油圧力に対向した油圧力を発生させる。
【0029】
この様な本例の場合、キャンセラー室の小型化や、キャンセラーばねであるリターンスプリングの負荷荷重の低減、または、キャンセラーばねの廃止を図ることができる。即ち、切断されているクラッチの油圧室に発生する遠心油圧力を、切断されているクラッチのキャンセラー室に圧油を導入することで、そのキャンセラー室に遠心油圧力を発生させ、クラッチの油圧室に発生した遠心油圧力を相殺する。
【符号の説明】
【0030】
1 トロイダル型無段変速機
2 入力軸
3 入力側ディスク
3a 凹面(内側面)
4 パワーローラ
4a 周面
5 出力側ディスク
5a 凹面(内側面)
6 軸受
7 トラニオン
8 筒状軸
20 遊星歯車式変速機
21 第1キャリア
22 第1遊星歯車
22a 伝達軸
23 第2遊星歯車
24 第1太陽歯車
25 第2太陽歯車
26 第3太陽歯車
27 第4太陽歯車
28 伝達軸
29 第3キャリア
30 第3遊星歯車
31 第3リング歯車
32 高速用クラッチ
33 出力軸
34 第4キャリア
35 第4遊星歯車
36 第4リング歯車
37 低速用クラッチ
40 ケーシング
41 入力側ディスク
42 出力側ディスク
43 入力軸
44 トロイダル型無段変速機
45a、45b、45c 遊星歯車式変速機
46 パワーローラ
47 低速用クラッチ
48 高速用クラッチ
49 出力軸
49a、49b 第一太陽歯車
50 中空回転軸
51 第一キャリア
52a、52b 第一遊星歯車
53 伝達軸
54 第二太陽歯車
55 第三太陽歯車
56 第二キャリア
57 ケーシング
58 第二リング歯車
59 高速側出力部材
60 第三リング歯車
61 低速側出力部材
62a、62b セパレータプレート(クラッチプレート)
63a、63b コアプレート(プレッシャプレート)
64 低速側ピストン部材
65 低速側リターンスプリング
66 低速側油圧室
67 高速側ピストン部材
68 高速側リターンスプリング
69 高速側油圧室
70 出力軸側出力部材
71 第三キャリア
72 低速側止め輪
73 高速側止め輪
74 押圧板
75 低速側キャンセラー室
76 高速側油圧導入油路
77 低速側キャンセラー室連通油路
78 高速側キャンセラー室
79 低速側油圧導入油路
80 高速側キャンセラー室連通油路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とをクラッチ装置を介して組み合わせて成り、このクラッチ装置は、減速比を大きくする第一のモードを実現する際に接続されて同じく小さくする第二のモードを実現する際に接続を断たれる第一のクラッチと、この第二のモードを実現する際に接続されて上記第一のモードを実現する際に接続を断たれる第二のクラッチとから成るものである無段変速装置に於いて、
前記第一のクラッチには、第一のモードを実現する際にクラッチが接続されるべく圧油が導入される第一の油圧室と、クラッチの回転により発生する遠心油圧力を相殺するための第一のキャンセラー室が設けられ、
前記第二のクラッチには、第二のモードを実現する際にクラッチが接続されるべく圧油が導入される第二の油圧室と、クラッチの回転により発生する遠心油圧力を相殺するための第二のキャンセラー室が設けられ、
前記第一の油圧室と前記第二のキャンセラー室とが連通しており、前記第二の油圧室と前記第一のキャンセラー室とが連通している事を特徴とする無段変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−24331(P2013−24331A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159936(P2011−159936)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】