無段階に調節可能な変速比を有するパワースプリット式の伝動装置
無段階に調節可能な変速比を有するパワースプリット式の伝動装置は、相対回動不能に駆動軸(6)に結合された入力車(24;50;70)を備えた、入力側の分配伝動装置(12)と、バリエータ(14)と、被動軸(10)と、2つのクラッチK1,K2とを有しており、分配伝動装置の入力車が、分配伝動装置の、少なくとも1つの車を介して、バリエータの入力軸(20)に回転係合しており、分配伝動装置の出力車(30;54;82)が、バリエータに対して機能的に並列に配置された中間軸(32)に回転係合しており、該中間軸(32)がバリエータの出力軸に回転係合しており、中間軸(32)が、第1のクラッチK1を介して、被動軸(10)に回転係合することができ、かつ入力軸(20)が、第2のクラッチK2を介して、被動軸(10)に回転係合することができるようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段階に調節可能な変速比を有するパワースプリット式もしくは動力分割式の伝動装置(leistungsverzweigtes Getriebe)に関する。
【0002】
無段階に調節可能な変速比を有する伝動装置は乗用車両において、それにより可能な走行快適性のためばかりでなく、可能な消費量節減のためにも、人気がますます高まりつつある。その性能は一般にバリエータのトルク伝達能力と変速比幅領域とにより制限されている。バリエータは自体公知の形式で、巻掛け手段、例えばリンクプレートチェーンが巻回する2つの円錐円盤(コニカルプーリ)対を有する円錐円盤巻掛け伝動装置(Kegelscheibenumschlingungsgetriebe)の形で形成されていることができる。変速比の調節は、円錐円盤対の円盤間の間隔を逆方向に変更することにより実施される。バリエータは例えば自体公知の形式で摩擦車伝動装置(Reibradgetriebe)として形成されていてもよい。摩擦車伝動装置の場合、車もしくは円盤またはその他の転動体が互いに転動する有効半径が変更される。
【0003】
連続的に調節可能な変速比を有するそのような伝動装置のレンジ領域を、パワースプリットを伴って作動することにより拡大することが知られている。この場合、パワースプリットされた領域では、トルク伝達がバリエータを介して、ならびにバリエータに対して並列に配置された固定変速比を介して実施され、スプリットされない領域では、トルク伝達がバリエータを介してのみ実施される。一般にパワースプリット式の伝動装置の被動側に、すなわちバリエータの下流に配置されている合算伝動装置(Summiergetriebe)が両スプリット分(分流)を1つの被動軸にまとめる。バリエータの変速比領域はパワースプリットされた領域とパワースプリットされない領域とでは逆向きに通走される。その結果、伝動装置は、バリエータに対して拡大されたレンジを可能にする。合算伝動装置は単純な遊星機構伝動装置(einfaches Planetengetriebe)として、または2つの遊星機構平面から成る遊星機構複合伝動装置もしくは遊星機構連結伝動装置(Planetenkoppelgetriebe)として構成されていることができる。
【0004】
本発明の課題は、高い変速比幅と高いトルク伝達能力とを有する、無段階に調節可能な変速比を有する伝動装置を提供することである。
【0005】
上記課題は、
‐相対回動不能に駆動軸に結合されたまたは発進クラッチを介して駆動軸に結合された入力車を備えた、入力側の分配伝動装置と、
‐バリエータと、
‐被動軸と、
‐2つのクラッチとが設けられており、
‐連結伝動装置の入力車が、バリエータの入力軸に回転係合しており、
‐連結伝動装置の出力車が、バリエータに対して機能的に並列に配置された中間軸に回転係合しており、該中間軸がバリエータの出力軸に回転係合しており、
‐中間軸が、第1のクラッチを介して、被動軸に回転係合することができ、かつ
‐入力軸が、第2のクラッチを介して、被動軸に回転係合することができる、
無段階に調節可能な変速比を有するパワースプリット式の伝動装置により解決される。
【0006】
本発明による伝動装置は、常時パワースプリット式に運転される3軸式伝動装置(Dreiwellengetriebe)であり、これにより、トルク伝達能力も変速比幅も拡大される。
【0007】
有利には、分配伝動装置が、単純な遊星機構伝動装置として、または2つの遊星機構平面から成る遊星機構連結伝動装置として構成されている。
【0008】
既に上で説明した常時的なパワースプリットのために、かつ分配伝動装置の、これに由来する常時的な転動のために、単純遊星機構伝動装置または遊星機構連結伝動装置を、負の単純歯車列変速比を備えて構成することが有利である。これにより、効率を減じ、その結果として、常に高められた燃料消費量を招く、転動パワー(Waelzleistung)の発生が最小化されることができる。特に構成スペース上の理由から、単純遊星機構伝動装置の単純歯車列変速比が−1.5〜約−2.5の変速比に制限されていることができる。
【0009】
有利な実施形態では、分配伝動装置が、単純遊星機構伝動装置である。この場合、駆動軸が相対回動不能に遊星キャリアに結合されており、該遊星キャリアの遊星車が、中間軸に回転係合している太陽車と、内歯車とに回転係合しており、該内歯車が相対回動不能にバリエータの入力軸に結合されている。
【0010】
本発明によるパワースプリット式の伝動装置の、別の有利な実施形態では、分配伝動装置が、連結された2つの遊星機構伝動装置から成る連結遊星機構伝動装置である。この場合、駆動軸が相対回動不能に遊星キャリアに結合されており、該遊星キャリアの遊星車が、中間軸に回転係合している太陽車と、内歯車とに回転係合しており、該内歯車が相対回動不能に第2の遊星キャリアに結合されており、該第2の遊星キャリアの遊星車が太陽車と別の内歯車とに回転係合しており、該別の内歯車が相対回動不能にバリエータの入力軸に結合されている。
【0011】
パワースプリット式の伝動装置の別の実施形態では、分配伝動装置が連結伝動装置として構成されており、駆動軸が相対回動不能に遊星キャリアに結合されており、該遊星キャリアの遊星車が太陽車と内歯車とに回転係合しており、太陽車が相対回動不能にバリエータの入力軸に結合されており、内歯車が相対回動不能に別の遊星キャリアに結合されており、該遊星キャリアの遊星車が太陽車と別の内歯車とに回転係合しており、該別の内歯車が中間軸に回転係合している。
【0012】
後進段を実現するために、バリエータの出力軸が後進走行クラッチを介して相対回動不能に後進車に結合されている。
【0013】
両パワースプリット間の切換時の、快適性を減じるショックを減じるために、伝動装置の個々の車間の変速比は有利には、第1のクラッチおよび第2のクラッチの操作により実施される領域切換時に、バリエータの第1の円錐円盤対および第2の円錐円盤対の動的なパワーの飛躍が最小であるように選択されている。
【0014】
本発明によるパワースプリット式の伝動装置により、無段階に変更可能な変速比を有する、快適な自動的な伝動装置、すなわち自動変速機が、より高いトルク、例えば500Nmおよびこれを超える領域のトルクを有する機関のためにも、新しい使用分野を開拓する。
【0015】
以下に概略図を参照しながら本発明の実施例について詳説する。
図1:分配伝動装置が単純遊星機構伝動装置または連結遊星機構伝動装置として構成されていることができる、本発明による伝動装置の一実施形態のブロック図である。
図1a:分配伝動装置が単純遊星機構伝動装置として構成されている、本発明による伝動装置の一実施形態のブロック図である。
図2:図1aに示した伝動装置の簡単化された構成図である。
図3:図1aに示した伝動装置のシフト表である。
図4:単純遊星機構伝動装置として構成された分配伝動装置を備えた、本発明による伝動装置の可能な構成表である。
図5:図4に示したバリエーション1,4,5に関して、全変速比を、バリエータ変速比に依存して示すグラフである。
図6:図4に示したバリエーション1に関して、円錐円盤対の、機関回転数に合わせて規格化された回転数を、全変速比に依存して示すグラフである。
図7:図4に示したバリエーション1に関して、円錐円盤対1における、機関モーメントに合わせて規格化された有効モーメントを、全変速比に依存して示すグラフである。
図8:図4に示したバリエーション1の、領域切換を伴うキックダウン・シフト中の、バリエータ変速比(iVar)と、全変速比(iGes)と、機関回転数(nMot)と、円盤セット1および円盤セット2の、質量慣性モーメントにより引き起こされる動的なパワー(Pdyn,SS1およびPdyn,SS2)とを、時間に依存して示すグラフである。
図9:分配伝動装置が連結遊星機構伝動装置として構成されている、本発明による伝動装置の一実施形態のブロック図である。
図10:分配伝動装置がやはり遊星機構連結伝動装置として構成されている、伝動装置の、変更された別のバリエーションのブロック図である。
図11:図4に示したバリエーション4に基づく、単純遊星機構伝動装置を備えた伝動装置に関して、チェーン負荷を、種々異なるパラメータセットに依存して示すグラフである。
図12:図4に示したバリエーション4の、種々異なるパラメータセットを有する、単純遊星機構伝動装置を備えた伝動装置に関して、全効率を、全変速比に依存して示すグラフである。
図13:図10に示した連結遊星機構伝動装置を備えた伝動装置に関して、チェーン負荷を、種々異なるパラメータセットに依存して示すグラフである。
【0016】
図1によれば、図示されていない内燃機関のクランク軸2は発進クラッチ4を介して、全体として符号8を付与されたパワースプリット式の伝動装置の駆動軸6に結合されている。伝動装置の被動軸には符号10を付与した。クランク軸2および被動軸10に付記された矢印は、図示されていない内燃機関の駆動時の、伝動装置を通流するトルク流れ方向を表している。
【0017】
伝動装置8は、連結伝動装置(Koppelgetriebe)12と、第1の円錐円盤対16および第2の円錐円盤対18を備えたバリエータ(Variator)14とを有している。バリエータの構造は自体公知である。第1の円錐円盤対はバリエータの入力軸20に相対回動不能に結合されている。第2の円錐円盤対18はバリエータの出力軸22に相対回動不能に結合されている。
【0018】
駆動軸6は、図1a、図9および図10に詳細に示されている分配伝動装置(Verteilergetriebe)12のための入力軸として役立つ。出力側で、中間軸32がクラッチK1を介して相対回動不能にクラッチ車38に結合されている。クラッチ車38は、相対回動不能に被動軸10に結合されている被動車40に噛み合う。
【0019】
入力軸20はクラッチK2を介して相対回動不能に被動軸10に結合可能である。
【0020】
バリエータの出力軸22はクラッチKRを介して相対回動不能に後進車42に結合されており、後進車42は車両の後進駆動のために自体公知の形式で設けられている。図示された伝動装置の個々のエレメントにより生ぜしめられる変速比はその都度iと所属のインデックスとで表記されている。
【0021】
図1aには、単一遊星機構伝動装置12′として構成された分配伝動装置12の一実施例が示されている。この場合、駆動軸6は相対回動不能に分配伝動装置12のキャリア24に結合されている。キャリア24に支承された遊星車(ピニオン)26は、相対回動不能に入力軸20に結合されている内歯車(リングギア)28の内歯列に噛み合う。
【0022】
さらに、遊星車26は太陽車(サンギア)30の第1の歯列に噛み合う。太陽車30は図示の例では分配伝動装置の出力車を形成し、かつ相対回動不能に中間軸32に結合された中間車34に噛み合う。中間軸32は機能的にバリエータ14に対して並列に配置されている。中間車34は、相対回動不能に出力軸22に結合された車36に噛み合う。
【0023】
図1bには、連結された2つの遊星機構伝動装置112a,112bから形成されている分配伝動装置112を備えた伝動装置が示されている。その際、遊星機構伝動装置112bの太陽車130bと、遊星機構伝動装置112aのキャリア124aとは、入力軸106に結合されている。遊星機構伝動装置112bのキャリア124bは回動可能に入力軸106上に支承されており、かつ中間軸132上に支承された空回り車160を介して円盤セット116の軸122に結合されている。空回り車130と軸122との間で、変速比i2が設定され、キャリア124bと空回り車160との間で、変速比i1が設定される。遊星機構伝動装置112aの内歯車128aは遊星機構伝動装置122bのキャリア124bに連結されており、かつ変速比i3を形成する。遊星機構伝動装置112bの内歯車128bは中間軸132に連結されており、遊星機構伝動装置112aの太陽車130aは第1の円盤セット114の軸120に連結されている。軸120はクラッチK1により中間軸132に、変速比i4の形成下で連結可能である。
【0024】
図2には、図1aに示した伝動装置が、簡単化された回路図で示されている。その際、Tは遊星キャリアを、Hは内歯車を、かつSは太陽車を表している。
【0025】
図3には、図1に示した伝動装置のシフト表が示されている。後進走行(R)のために、クラッチKRが閉鎖されており、かつクラッチK1およびクラッチK2が開放されている。
【0026】
ニュートラル段(N)では、すべてのクラッチが開放されている。
【0027】
高い変速比、すなわち低い車両速度の領域(D−Low:ドライブ・ロー)では、クラッチKRが開放されており、クラッチK2が開放されており、かつクラッチK1が閉鎖されている。それにより、被動軸10への被動は中間軸32を介して実施される。
【0028】
低い変速比もしくは高い走行速度の領域(D−High:ドライブ・ハイ)では、クラッチK2だけが閉鎖されている。
【0029】
見て取れるように、伝動装置は高い変速比の場合も低い変速比の場合もパワースプリット式に運転される。すなわち、伝達されるすべてのトルクの一部分だけがバリエータ14を介して伝達される。それにより、バリエータ14の負荷も、両円錐円盤対16,18を巻回するチェーンの負荷も減じられることができるので、従来慣用の伝動装置に比してより高いトルクが可能である。
【0030】
図4に示した表の列(伝動装置配置構成)には、図1に示した単純な遊星機構伝動装置の要素の結合次第で、6つの異なるバリエーションが可能であることが示されている。
【0031】
第3の列(ロー領域MSS1/MMot)は、伝動装置がロー領域(Low−Bereich)にある際の、第1の円盤対16のモーメントの、駆動軸6のモーメントに対する比を表示している。第4の列(ハイ領域MSS1/MMot)は、伝動装置がハイ領域(High−Bereich)にある際の、バリエータの第1の円盤対16もしくは入力軸20のモーメントの、駆動軸6のモーメントに対する比を表示している。
【0032】
伝動装置の設計もしくは6つの伝動装置配置構成の設計のために、キャリアを固定して遊星機構伝動装置を単純な歯車列とした場合の変速比(Standuebersetzung)、いわゆる「単純歯車列変速比」i0と、ハイ領域、ただし直接両領域間の切換点での、機関モーメントに合わせて規格化された、第1の円錐円盤対16におけるモーメントとが予め設定される。簡単化するために、固定変速比(Festuebersetzung)i1,i3(図1参照)がとりあえず同一であるとすると、この設定により、すべての変速比が確定されている。i0の設定により、ロー領域での、入力軸10の回転数と駆動軸6の回転数との比は確定されている。構成スペースに基づいて、−1.5〜−2.5の値を有する負の単純歯車列変速比に制限されると、バリエーション2,3,6は失われる。それというのも、上記モーメント比が1よりも明らかに大きく、かつこれにより、高いチェーン損傷の危険が生じるからである。
【0033】
図5には、バリエーション1,4,5に関して、全変速比iges(縦座標)がバリエータ変速比(横座標)に依存して示されている。左側のグラフはバリエーション1を、中央のグラフはバリエーション4を、右側のグラフはバリエーション5を示している。見て取れるように、バリエーション4とバリエーション5に関する経過は同一である。領域変更(Bereichswechsel)はすべてのバリエーションでほぼiVar=0.4で実施されるが、バリエーション1では比較的低い全変速比で実施される。図5に示した曲線の直線的な部分はパワースプリットのためにこの領域(ロー領域)でも原点を通る直線(Ursprungsgerade)ではない。両走行領域でのパワースプリットにより、バリエータの両円盤対の回転数もしくは入力軸20および出力軸22の回転数の最大値および最小値を最も近似のレベルにすることが可能である。
【0034】
このことは図6にバリエーション1に関して示されている。その際、縦座標には、円盤対の回転数と駆動軸6の回転数との間の比が示されており、横座標には、全変速比igesが示されている。実線で示した曲線は第1の円盤対16に関する比を示しており、破線で示した曲線は円盤対18に関する比を示している。最小値および最大値は図示の例では機関回転数の約0.5倍と機関回転数の約1.5倍との間で変動する。これにより、第2の円盤対18は、特に領域変更点(Bereichswechselpunkt)で、最小のバリエータ変速比に達し、明らかに低い回転数レベルにもたらされることができ、これにより、チェーン損傷は、減じられた遠心力と僅かな動的効果とに基づいて、明らかに減じられる。このことはとりわけ、より高い最大回転数を有する昨今の機関に関連して重要である。低い回転数の別の利点は、図4に示したバリエーションのうちのいくつかで、遠心油補償が省略されることができ、それにより、コスト上の利点が達成される点にある。
【0035】
図7には、バリエーション1に関して、機関から作用するモーメントに関する、第1の円盤対16で有効なモーメント(縦座標)が、全変速比(横座標)に依存して示されている。見て取れるように、両走行領域でのパワースプリットにより第1の円盤対で有効なモーメントが、領域変更点付近の狭い変速比領域でのみ、機関モーメントよりも大きい。これにより、以下に挙げる多数の別の利点が得られる。
【0036】
−巻掛け手段の押し付け力が、バリエータにより伝達したいモーメントに応じて減じられる、やはり引き下げられることができる。これにより、揺動式ジョイント部の負荷と、巻回するリンクプレートチェーンのリンクプレート内の応力とが減じられており、これにより、チェーン寿命が延長されている。
【0037】
−比較的低いモーメントレベルにより、減じられた押し付けが可能である。これにより、チェーンと円錐面との間の直接的な摩擦接触が減じられているとともに、調節円盤に加えたい押し付け圧力も減じられる。このことはバリエータならびに押し付けのための液圧系統のエネルギ消費量の減少をもたらし、燃料消費量を低下させる。
【0038】
−円錐円盤対での高いモーメントは軸の強度に関して高い要求を課す。減じられたモーメントレベルにより、この要求が弱められるので、さらなるスプレッド幅もしくはレンジ(変速比幅)の拡大が可能である。
【0039】
図5に示した6つの伝動装置配置構成を分析することにより、場合によっては発生するチェーン損傷と、チェーンの、ここから得られる寿命とに関連して、バリエーション4が特に有利であり得ることが判る。図11にはこのために例示的に、単純遊星機構伝動装置12′(図1a参照)として構成された分配伝動装置の、固定的な単純歯車列変速比が−1.5である場合の、バリエーション4に関するチェーンの負荷Bが、設計上の種々異なるパラメータセット1〜5に関して示されている。最小のチェーン損傷はパラメータセット3に基づく設計により達成される。パラメータセット3とは、以下の変速比値に相当する:単純歯車列変速比i0=−1.5、固定変速比i1=i3=−1.414、i2=−1.871ならびに軸変速比iAchse=3.623。変速比に関する、このパラメータセットから逸脱した設計は、図11に基づき、常にチェーン負荷の上昇に至る。それゆえ、このパラメータセットが特に有利である。ただし、伝動装置の特別な調整のために、より高い負荷を伴うパラメータセット、例えばパラメータセット2およびパラメータセット4が有利な場合もある。それにより、最大の機関モーメントが相応に適合される限りにおいて、約2.5〜約3.0の負荷に対する設定が可能である。
【0040】
図12には、全効率の、パラメータセット3に応じた曲線が、全変速比にわたって、オーバードライブODを起点としてアンダードライブUDにかけて示されている。パラメータセット3が最も平均的な曲線を有しており、この点で見てもやはり極めて有利であることは明らかである。
【0041】
実験的かつ理論的な研究は、以下の関係:
diVar/dt=diVar/diGes×diGes/dt
(ただし、diGes/dtは目標・全伝動装置変速比である。)
が成立する、バリエータ変速比の時間的な変化に関して、図4に示した伝動装置配置構成により、遊星機構伝動装置もしくは遊星機構連結伝動装置が例えばバリエータの下流に配置されている別のパワースプリット式の伝動装置に対して、改善が達成可能であることを示している。
【0042】
パワースプリット式の伝動装置の場合に重要な観点は、同期点(クラッチK1が閉じ、クラッチK2が開く際の同じ全変速比、ならびにクラッチK1が開き、クラッチK2が閉じる際の同じ全変速比)で実施される領域切換(Bereichsumschaltung)の快適性にある。クラッチの切換はできるだけ認識されないのが望ましい。パワースプリット式の伝動装置の、典型的な特徴は、両走行領域での慣性質量の、それぞれ異なる加速から生じる、領域変更における、ドライブトレーンに配置された慣性質量の動的なパワー(dynamische Leistung)の変化である。既に、伝動装置構造の上手な選択および設計(個々の変速比i)により、変速比経過への影響、ひいては領域変更点における動的なパワー成分の変更が執り行われることができる。
【0043】
本願の伝動装置構造のために、第1の円盤対16(SS1)の回転数と第2の円盤対18(SS2)の回転数とが、以下の方程式:
nSS1=nMot×iVar×f(iVar)
nSS2=nMot×f(iVar)
により与えられている。ただし、nMotは機関もしくは駆動軸6の回転数であり、iVarはバリエータ変速比であり、f(iVar)はバリエータ変速比の関数である。
【0044】
本願の、ロー領域およびハイ領域でのパワースプリットを有する伝動装置の特色は、円盤セット1の回転数nSS1の、バリエータ変速比iVarへの依存性である。関数f(iVar)はその都度のバリエーション(図4)に依存する。バリエータ変速比の他に、関数fは個々の変速比iに依存する。
【0045】
nSS1およびnSS2に関する方程式により、円盤対16,18に関する動的なパワーPdyn,SS1およびPdyn,SS2が算出されることができる。その際、例えば図4のバリエーション4に関して、以下の方程式が成立する。
【0046】
【数1】
【0047】
ただし、ΘSS1およびΘSS2は円盤対16および円盤対18の質量慣性モーメントである。ハイ領域およびロー領域での異なる変速比経過iVar(iGes)と、領域変更点での導関数diVar/diGesにおける不連続性とは、Pdyn,SS1ならびにPdyn,SS2が領域変更点で飛躍(Sprung)を示す原因となる。飛躍の高さは直接上記の公式により暗示されることができる。dnMot/dtおよびdiGes/dt(車両固有に確定されている)に至るまで、すべてのその他の値は伝動装置構成およびその設計に依存している。目的は、全伝動装置および設計を、飛躍の高さが領域変更点で最小であるように選択することである。このことはもちろん、最小のチェーン損傷への要求といった別の目的と両立可能でなければならない。
【0048】
別の観点は、異なる走行領域での第1の円盤対16または第2の円盤対18における大きなPdyn値の発生である。本願の伝動装置構造の利点は、領域変更点でのPdyn・不連続性がその他の構造に比べて僅かである点にある。本発明による構造では、領域変更時に、一方の円盤セットの加速プロセスが確かに終了される、またはそれどころか反転されるが、しかし同時に領域変更時に、他方の円盤セットの加速プロセスが開始される、もしくは制動プロセスが加速プロセスに反転される。両アクションは、伝動装置入力から伝動装置出力への、より連続的なパワーフロー、つまりより快適な領域変更につながる。
【0049】
図8には、図4のバリエーション4の伝動装置に関する、顧客に関連したサイクルで実施されるキックダウン・シフト(Kickdown−Rueckschaltung)の例における関係が示されている。図面にはnMot、iVar、iGes、Pdyn,SS1、Pdyn,SS2の経過が示されている。ただし、時間は左から右に横座標上を経過する。領域切換時のPdyn,SS1およびPdyn,SS2の不連続性が明らかに認識されることができる。適当な設計により、この不連続性は減じられる。さらに、不連続性が、異なる方向性を有しており、その結果、部分的に補償されることが見て取れる。
【0050】
分析により、回転質量、すなわち質量慣性モーメントを適当に選択することより、飛躍の高さを、両円盤セットの動的なパワーの合計が連続的に経過するように変更し得ることが判っている。これにより、それどころか完全な補償にまで至る補償の向上が構造的に実現可能である。ここに示した伝動装置では、円盤セット1の回転質量を、円盤セット2の回転質量のほぼ2倍の大きさにすることが有利である。
【0051】
図1を基に、この条件を実現するための、構造的な可能性が示されることができる。有利には、例えば小さなフライホイールが第1の円盤セット・軸20に設けられることできる。やはり、第2の円盤セット・軸22において、中空軸によりまたは半径方向で小さく構成された液圧式のチャンバ18により、その質量慣性モーメントを減じることが有利である。クラッチK1を歯車38の近傍に配置するのではなく、歯車34の近傍、すなわち可能な限り第2の円盤セット22の近傍に配置することも有利である。これにより、できるだけ僅かに、中間軸32の回転質量が、第2の円盤セット22に所属するものとして見なされなければならない。同じことはクラッチKRに該当する。
【0052】
本発明による、3つの軸を伴って作動するとともに、バリエータの上流に接続された分配伝動装置の助けを借りて2つの切換可能な前進領域で常にパワースプリット式に作動する、無段階に調節可能な変速比を有するパワースプリット式の伝動装置は、図1および図4に示した、単純遊星機構伝動装置を分配伝動装置として使用する例に限定されるものではない。
【0053】
図9には、図1に対して簡単化された描写で、分配伝動装置の別の実施形態が示されている。以下に、図1に示した実施形態との相違点だけを説明する。
【0054】
図9によれば、駆動軸6はまず、図1に示した実施形態の場合と同様に、第1の遊星機構段(Planetenstufe)の遊星キャリア50に相対回動不能に結合されている。遊星キャリア50の遊星車52は太陽車54の第1の外歯列と内歯車56の内歯列とに噛み合う。内歯車56は相対回動不能にもしくはインテグラルに別の遊星機構段の遊星キャリア58に結合されている。
【0055】
別の遊星キャリア58の遊星車60は、太陽車54の、第1の外歯列と同じかまたは異なっていてよい別の外歯列に噛み合い、さらに相対回動不能に入力軸20に結合されている内歯車62の内歯列に噛み合う。太陽車54のさらに別の外歯列は、図1と同様に相対回動不能に中間軸32に結合されている中間車34に噛み合う。
【0056】
図10には、2つの遊星機構段を有する分配伝動装置の、図9に対して改変された実施形態が示されている。
【0057】
図10に示した実施形態では、駆動軸6が相対回動不能にもしくは一体的に遊星キャリア70に結合されている。遊星キャリア70の遊星車72は太陽車74の第1の外歯列と内歯車76の内歯列とに噛み合う。内歯車76は相対回動不能にもしくは一体的に別の遊星キャリア78に結合されている。別の遊星キャリア78の遊星車80は、相対回動不能にもしくは一体的に入力軸20に結合されている太陽車74の別の外歯列に噛み合う。さらに、遊星車80は内歯車82の内歯列に噛み合う。内歯車82は、中間車34に噛み合う外歯列を備えて形成されている。
【0058】
図13には、図1bに示した実施例に示されているような連結伝動装置112の使用下での伝動装置のためのチェーンの負荷Bが示されている。その際、両遊星機構伝動装置112a,112bの単純歯車列変速比は2.5に確定されている。固定変速比i1,i2の積はi1×i2=0.849であり、固定変速比i3,i4の積はi3×i4=2.070である。軸変速比i(Achse)は3.775である。これから、2.308〜0.433のバリエータレンジが得られる。チェーンの、結果的に生じる負荷は、これらの値を基にするパラメータセット4に関して、最も僅かな負荷をなす。その他のパラメータセットも、相応の構成例にとっては有利である場合がある。
【0059】
図示の実施形態が例示的なものにすぎず、連結伝動装置の別のバリエーションがバリエータに、本発明による3軸式伝動装置をなすために組み合わせ可能であることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】分配伝動装置が単純遊星機構伝動装置または連結遊星機構伝動装置として構成されていることができる、本発明による伝動装置の一実施形態のブロック図である。
【図1a】分配伝動装置が単純遊星機構伝動装置として構成されている、本発明による伝動装置の一実施形態のブロック図である。
【図1b】分配伝動装置が連結遊星機構伝動装置として構成されている、本発明による伝動装置の一実施形態のブロック図である。
【図2】図1aに示した伝動装置の簡単化された構成図である。
【図3】図1aに示した伝動装置のシフト表である。
【図4】単純遊星機構伝動装置として構成された分配伝動装置を備えた、本発明による伝動装置の可能な構成表である。
【図5】図4に示したバリエーション1,4,5に関して、全変速比を、バリエータ変速比に依存して示すグラフである。
【図6】図4に示したバリエーション1に関して、円錐円盤対の、機関回転数に合わせて規格化された回転数を、全変速比に依存して示すグラフである。
【図7】図4に示したバリエーション1に関して、円錐円盤対1における、機関モーメントに合わせて規格化された有効モーメントを、全変速比に依存して示すグラフである。
【図8】図4に示したバリエーション1の、領域切換を伴うキックダウン・シフト中の、バリエータ変速比(iVar)と、全変速比(iGes)と、機関回転数(nMot)と、円盤セット1および円盤セット2の、質量慣性モーメントにより引き起こされる動的なパワー(Pdyn,SS1およびPdyn,SS2)とを、時間に依存して示すグラフである。
【図9】分配伝動装置が連結遊星機構伝動装置として構成されている、本発明による伝動装置の一実施形態のブロック図である。
【図10】分配伝動装置がやはり遊星機構連結伝動装置として構成されている、伝動装置の、変更された別のバリエーションのブロック図である。
【図11】図4に示したバリエーション4に基づく、単純遊星機構伝動装置を備えた伝動装置に関して、チェーン負荷を、種々異なるパラメータセットに依存して示すグラフである。
【図12】図4に示したバリエーション4の、種々異なるパラメータセットを有する、単純遊星機構伝動装置を備えた伝動装置に関して、全効率を、全変速比に依存して示すグラフである。
【図13】図10に示した連結遊星機構伝動装置を備えた伝動装置に関して、チェーン負荷を、種々異なるパラメータセットに依存して示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段階に調節可能な変速比を有するパワースプリット式もしくは動力分割式の伝動装置(leistungsverzweigtes Getriebe)に関する。
【0002】
無段階に調節可能な変速比を有する伝動装置は乗用車両において、それにより可能な走行快適性のためばかりでなく、可能な消費量節減のためにも、人気がますます高まりつつある。その性能は一般にバリエータのトルク伝達能力と変速比幅領域とにより制限されている。バリエータは自体公知の形式で、巻掛け手段、例えばリンクプレートチェーンが巻回する2つの円錐円盤(コニカルプーリ)対を有する円錐円盤巻掛け伝動装置(Kegelscheibenumschlingungsgetriebe)の形で形成されていることができる。変速比の調節は、円錐円盤対の円盤間の間隔を逆方向に変更することにより実施される。バリエータは例えば自体公知の形式で摩擦車伝動装置(Reibradgetriebe)として形成されていてもよい。摩擦車伝動装置の場合、車もしくは円盤またはその他の転動体が互いに転動する有効半径が変更される。
【0003】
連続的に調節可能な変速比を有するそのような伝動装置のレンジ領域を、パワースプリットを伴って作動することにより拡大することが知られている。この場合、パワースプリットされた領域では、トルク伝達がバリエータを介して、ならびにバリエータに対して並列に配置された固定変速比を介して実施され、スプリットされない領域では、トルク伝達がバリエータを介してのみ実施される。一般にパワースプリット式の伝動装置の被動側に、すなわちバリエータの下流に配置されている合算伝動装置(Summiergetriebe)が両スプリット分(分流)を1つの被動軸にまとめる。バリエータの変速比領域はパワースプリットされた領域とパワースプリットされない領域とでは逆向きに通走される。その結果、伝動装置は、バリエータに対して拡大されたレンジを可能にする。合算伝動装置は単純な遊星機構伝動装置(einfaches Planetengetriebe)として、または2つの遊星機構平面から成る遊星機構複合伝動装置もしくは遊星機構連結伝動装置(Planetenkoppelgetriebe)として構成されていることができる。
【0004】
本発明の課題は、高い変速比幅と高いトルク伝達能力とを有する、無段階に調節可能な変速比を有する伝動装置を提供することである。
【0005】
上記課題は、
‐相対回動不能に駆動軸に結合されたまたは発進クラッチを介して駆動軸に結合された入力車を備えた、入力側の分配伝動装置と、
‐バリエータと、
‐被動軸と、
‐2つのクラッチとが設けられており、
‐連結伝動装置の入力車が、バリエータの入力軸に回転係合しており、
‐連結伝動装置の出力車が、バリエータに対して機能的に並列に配置された中間軸に回転係合しており、該中間軸がバリエータの出力軸に回転係合しており、
‐中間軸が、第1のクラッチを介して、被動軸に回転係合することができ、かつ
‐入力軸が、第2のクラッチを介して、被動軸に回転係合することができる、
無段階に調節可能な変速比を有するパワースプリット式の伝動装置により解決される。
【0006】
本発明による伝動装置は、常時パワースプリット式に運転される3軸式伝動装置(Dreiwellengetriebe)であり、これにより、トルク伝達能力も変速比幅も拡大される。
【0007】
有利には、分配伝動装置が、単純な遊星機構伝動装置として、または2つの遊星機構平面から成る遊星機構連結伝動装置として構成されている。
【0008】
既に上で説明した常時的なパワースプリットのために、かつ分配伝動装置の、これに由来する常時的な転動のために、単純遊星機構伝動装置または遊星機構連結伝動装置を、負の単純歯車列変速比を備えて構成することが有利である。これにより、効率を減じ、その結果として、常に高められた燃料消費量を招く、転動パワー(Waelzleistung)の発生が最小化されることができる。特に構成スペース上の理由から、単純遊星機構伝動装置の単純歯車列変速比が−1.5〜約−2.5の変速比に制限されていることができる。
【0009】
有利な実施形態では、分配伝動装置が、単純遊星機構伝動装置である。この場合、駆動軸が相対回動不能に遊星キャリアに結合されており、該遊星キャリアの遊星車が、中間軸に回転係合している太陽車と、内歯車とに回転係合しており、該内歯車が相対回動不能にバリエータの入力軸に結合されている。
【0010】
本発明によるパワースプリット式の伝動装置の、別の有利な実施形態では、分配伝動装置が、連結された2つの遊星機構伝動装置から成る連結遊星機構伝動装置である。この場合、駆動軸が相対回動不能に遊星キャリアに結合されており、該遊星キャリアの遊星車が、中間軸に回転係合している太陽車と、内歯車とに回転係合しており、該内歯車が相対回動不能に第2の遊星キャリアに結合されており、該第2の遊星キャリアの遊星車が太陽車と別の内歯車とに回転係合しており、該別の内歯車が相対回動不能にバリエータの入力軸に結合されている。
【0011】
パワースプリット式の伝動装置の別の実施形態では、分配伝動装置が連結伝動装置として構成されており、駆動軸が相対回動不能に遊星キャリアに結合されており、該遊星キャリアの遊星車が太陽車と内歯車とに回転係合しており、太陽車が相対回動不能にバリエータの入力軸に結合されており、内歯車が相対回動不能に別の遊星キャリアに結合されており、該遊星キャリアの遊星車が太陽車と別の内歯車とに回転係合しており、該別の内歯車が中間軸に回転係合している。
【0012】
後進段を実現するために、バリエータの出力軸が後進走行クラッチを介して相対回動不能に後進車に結合されている。
【0013】
両パワースプリット間の切換時の、快適性を減じるショックを減じるために、伝動装置の個々の車間の変速比は有利には、第1のクラッチおよび第2のクラッチの操作により実施される領域切換時に、バリエータの第1の円錐円盤対および第2の円錐円盤対の動的なパワーの飛躍が最小であるように選択されている。
【0014】
本発明によるパワースプリット式の伝動装置により、無段階に変更可能な変速比を有する、快適な自動的な伝動装置、すなわち自動変速機が、より高いトルク、例えば500Nmおよびこれを超える領域のトルクを有する機関のためにも、新しい使用分野を開拓する。
【0015】
以下に概略図を参照しながら本発明の実施例について詳説する。
図1:分配伝動装置が単純遊星機構伝動装置または連結遊星機構伝動装置として構成されていることができる、本発明による伝動装置の一実施形態のブロック図である。
図1a:分配伝動装置が単純遊星機構伝動装置として構成されている、本発明による伝動装置の一実施形態のブロック図である。
図2:図1aに示した伝動装置の簡単化された構成図である。
図3:図1aに示した伝動装置のシフト表である。
図4:単純遊星機構伝動装置として構成された分配伝動装置を備えた、本発明による伝動装置の可能な構成表である。
図5:図4に示したバリエーション1,4,5に関して、全変速比を、バリエータ変速比に依存して示すグラフである。
図6:図4に示したバリエーション1に関して、円錐円盤対の、機関回転数に合わせて規格化された回転数を、全変速比に依存して示すグラフである。
図7:図4に示したバリエーション1に関して、円錐円盤対1における、機関モーメントに合わせて規格化された有効モーメントを、全変速比に依存して示すグラフである。
図8:図4に示したバリエーション1の、領域切換を伴うキックダウン・シフト中の、バリエータ変速比(iVar)と、全変速比(iGes)と、機関回転数(nMot)と、円盤セット1および円盤セット2の、質量慣性モーメントにより引き起こされる動的なパワー(Pdyn,SS1およびPdyn,SS2)とを、時間に依存して示すグラフである。
図9:分配伝動装置が連結遊星機構伝動装置として構成されている、本発明による伝動装置の一実施形態のブロック図である。
図10:分配伝動装置がやはり遊星機構連結伝動装置として構成されている、伝動装置の、変更された別のバリエーションのブロック図である。
図11:図4に示したバリエーション4に基づく、単純遊星機構伝動装置を備えた伝動装置に関して、チェーン負荷を、種々異なるパラメータセットに依存して示すグラフである。
図12:図4に示したバリエーション4の、種々異なるパラメータセットを有する、単純遊星機構伝動装置を備えた伝動装置に関して、全効率を、全変速比に依存して示すグラフである。
図13:図10に示した連結遊星機構伝動装置を備えた伝動装置に関して、チェーン負荷を、種々異なるパラメータセットに依存して示すグラフである。
【0016】
図1によれば、図示されていない内燃機関のクランク軸2は発進クラッチ4を介して、全体として符号8を付与されたパワースプリット式の伝動装置の駆動軸6に結合されている。伝動装置の被動軸には符号10を付与した。クランク軸2および被動軸10に付記された矢印は、図示されていない内燃機関の駆動時の、伝動装置を通流するトルク流れ方向を表している。
【0017】
伝動装置8は、連結伝動装置(Koppelgetriebe)12と、第1の円錐円盤対16および第2の円錐円盤対18を備えたバリエータ(Variator)14とを有している。バリエータの構造は自体公知である。第1の円錐円盤対はバリエータの入力軸20に相対回動不能に結合されている。第2の円錐円盤対18はバリエータの出力軸22に相対回動不能に結合されている。
【0018】
駆動軸6は、図1a、図9および図10に詳細に示されている分配伝動装置(Verteilergetriebe)12のための入力軸として役立つ。出力側で、中間軸32がクラッチK1を介して相対回動不能にクラッチ車38に結合されている。クラッチ車38は、相対回動不能に被動軸10に結合されている被動車40に噛み合う。
【0019】
入力軸20はクラッチK2を介して相対回動不能に被動軸10に結合可能である。
【0020】
バリエータの出力軸22はクラッチKRを介して相対回動不能に後進車42に結合されており、後進車42は車両の後進駆動のために自体公知の形式で設けられている。図示された伝動装置の個々のエレメントにより生ぜしめられる変速比はその都度iと所属のインデックスとで表記されている。
【0021】
図1aには、単一遊星機構伝動装置12′として構成された分配伝動装置12の一実施例が示されている。この場合、駆動軸6は相対回動不能に分配伝動装置12のキャリア24に結合されている。キャリア24に支承された遊星車(ピニオン)26は、相対回動不能に入力軸20に結合されている内歯車(リングギア)28の内歯列に噛み合う。
【0022】
さらに、遊星車26は太陽車(サンギア)30の第1の歯列に噛み合う。太陽車30は図示の例では分配伝動装置の出力車を形成し、かつ相対回動不能に中間軸32に結合された中間車34に噛み合う。中間軸32は機能的にバリエータ14に対して並列に配置されている。中間車34は、相対回動不能に出力軸22に結合された車36に噛み合う。
【0023】
図1bには、連結された2つの遊星機構伝動装置112a,112bから形成されている分配伝動装置112を備えた伝動装置が示されている。その際、遊星機構伝動装置112bの太陽車130bと、遊星機構伝動装置112aのキャリア124aとは、入力軸106に結合されている。遊星機構伝動装置112bのキャリア124bは回動可能に入力軸106上に支承されており、かつ中間軸132上に支承された空回り車160を介して円盤セット116の軸122に結合されている。空回り車130と軸122との間で、変速比i2が設定され、キャリア124bと空回り車160との間で、変速比i1が設定される。遊星機構伝動装置112aの内歯車128aは遊星機構伝動装置122bのキャリア124bに連結されており、かつ変速比i3を形成する。遊星機構伝動装置112bの内歯車128bは中間軸132に連結されており、遊星機構伝動装置112aの太陽車130aは第1の円盤セット114の軸120に連結されている。軸120はクラッチK1により中間軸132に、変速比i4の形成下で連結可能である。
【0024】
図2には、図1aに示した伝動装置が、簡単化された回路図で示されている。その際、Tは遊星キャリアを、Hは内歯車を、かつSは太陽車を表している。
【0025】
図3には、図1に示した伝動装置のシフト表が示されている。後進走行(R)のために、クラッチKRが閉鎖されており、かつクラッチK1およびクラッチK2が開放されている。
【0026】
ニュートラル段(N)では、すべてのクラッチが開放されている。
【0027】
高い変速比、すなわち低い車両速度の領域(D−Low:ドライブ・ロー)では、クラッチKRが開放されており、クラッチK2が開放されており、かつクラッチK1が閉鎖されている。それにより、被動軸10への被動は中間軸32を介して実施される。
【0028】
低い変速比もしくは高い走行速度の領域(D−High:ドライブ・ハイ)では、クラッチK2だけが閉鎖されている。
【0029】
見て取れるように、伝動装置は高い変速比の場合も低い変速比の場合もパワースプリット式に運転される。すなわち、伝達されるすべてのトルクの一部分だけがバリエータ14を介して伝達される。それにより、バリエータ14の負荷も、両円錐円盤対16,18を巻回するチェーンの負荷も減じられることができるので、従来慣用の伝動装置に比してより高いトルクが可能である。
【0030】
図4に示した表の列(伝動装置配置構成)には、図1に示した単純な遊星機構伝動装置の要素の結合次第で、6つの異なるバリエーションが可能であることが示されている。
【0031】
第3の列(ロー領域MSS1/MMot)は、伝動装置がロー領域(Low−Bereich)にある際の、第1の円盤対16のモーメントの、駆動軸6のモーメントに対する比を表示している。第4の列(ハイ領域MSS1/MMot)は、伝動装置がハイ領域(High−Bereich)にある際の、バリエータの第1の円盤対16もしくは入力軸20のモーメントの、駆動軸6のモーメントに対する比を表示している。
【0032】
伝動装置の設計もしくは6つの伝動装置配置構成の設計のために、キャリアを固定して遊星機構伝動装置を単純な歯車列とした場合の変速比(Standuebersetzung)、いわゆる「単純歯車列変速比」i0と、ハイ領域、ただし直接両領域間の切換点での、機関モーメントに合わせて規格化された、第1の円錐円盤対16におけるモーメントとが予め設定される。簡単化するために、固定変速比(Festuebersetzung)i1,i3(図1参照)がとりあえず同一であるとすると、この設定により、すべての変速比が確定されている。i0の設定により、ロー領域での、入力軸10の回転数と駆動軸6の回転数との比は確定されている。構成スペースに基づいて、−1.5〜−2.5の値を有する負の単純歯車列変速比に制限されると、バリエーション2,3,6は失われる。それというのも、上記モーメント比が1よりも明らかに大きく、かつこれにより、高いチェーン損傷の危険が生じるからである。
【0033】
図5には、バリエーション1,4,5に関して、全変速比iges(縦座標)がバリエータ変速比(横座標)に依存して示されている。左側のグラフはバリエーション1を、中央のグラフはバリエーション4を、右側のグラフはバリエーション5を示している。見て取れるように、バリエーション4とバリエーション5に関する経過は同一である。領域変更(Bereichswechsel)はすべてのバリエーションでほぼiVar=0.4で実施されるが、バリエーション1では比較的低い全変速比で実施される。図5に示した曲線の直線的な部分はパワースプリットのためにこの領域(ロー領域)でも原点を通る直線(Ursprungsgerade)ではない。両走行領域でのパワースプリットにより、バリエータの両円盤対の回転数もしくは入力軸20および出力軸22の回転数の最大値および最小値を最も近似のレベルにすることが可能である。
【0034】
このことは図6にバリエーション1に関して示されている。その際、縦座標には、円盤対の回転数と駆動軸6の回転数との間の比が示されており、横座標には、全変速比igesが示されている。実線で示した曲線は第1の円盤対16に関する比を示しており、破線で示した曲線は円盤対18に関する比を示している。最小値および最大値は図示の例では機関回転数の約0.5倍と機関回転数の約1.5倍との間で変動する。これにより、第2の円盤対18は、特に領域変更点(Bereichswechselpunkt)で、最小のバリエータ変速比に達し、明らかに低い回転数レベルにもたらされることができ、これにより、チェーン損傷は、減じられた遠心力と僅かな動的効果とに基づいて、明らかに減じられる。このことはとりわけ、より高い最大回転数を有する昨今の機関に関連して重要である。低い回転数の別の利点は、図4に示したバリエーションのうちのいくつかで、遠心油補償が省略されることができ、それにより、コスト上の利点が達成される点にある。
【0035】
図7には、バリエーション1に関して、機関から作用するモーメントに関する、第1の円盤対16で有効なモーメント(縦座標)が、全変速比(横座標)に依存して示されている。見て取れるように、両走行領域でのパワースプリットにより第1の円盤対で有効なモーメントが、領域変更点付近の狭い変速比領域でのみ、機関モーメントよりも大きい。これにより、以下に挙げる多数の別の利点が得られる。
【0036】
−巻掛け手段の押し付け力が、バリエータにより伝達したいモーメントに応じて減じられる、やはり引き下げられることができる。これにより、揺動式ジョイント部の負荷と、巻回するリンクプレートチェーンのリンクプレート内の応力とが減じられており、これにより、チェーン寿命が延長されている。
【0037】
−比較的低いモーメントレベルにより、減じられた押し付けが可能である。これにより、チェーンと円錐面との間の直接的な摩擦接触が減じられているとともに、調節円盤に加えたい押し付け圧力も減じられる。このことはバリエータならびに押し付けのための液圧系統のエネルギ消費量の減少をもたらし、燃料消費量を低下させる。
【0038】
−円錐円盤対での高いモーメントは軸の強度に関して高い要求を課す。減じられたモーメントレベルにより、この要求が弱められるので、さらなるスプレッド幅もしくはレンジ(変速比幅)の拡大が可能である。
【0039】
図5に示した6つの伝動装置配置構成を分析することにより、場合によっては発生するチェーン損傷と、チェーンの、ここから得られる寿命とに関連して、バリエーション4が特に有利であり得ることが判る。図11にはこのために例示的に、単純遊星機構伝動装置12′(図1a参照)として構成された分配伝動装置の、固定的な単純歯車列変速比が−1.5である場合の、バリエーション4に関するチェーンの負荷Bが、設計上の種々異なるパラメータセット1〜5に関して示されている。最小のチェーン損傷はパラメータセット3に基づく設計により達成される。パラメータセット3とは、以下の変速比値に相当する:単純歯車列変速比i0=−1.5、固定変速比i1=i3=−1.414、i2=−1.871ならびに軸変速比iAchse=3.623。変速比に関する、このパラメータセットから逸脱した設計は、図11に基づき、常にチェーン負荷の上昇に至る。それゆえ、このパラメータセットが特に有利である。ただし、伝動装置の特別な調整のために、より高い負荷を伴うパラメータセット、例えばパラメータセット2およびパラメータセット4が有利な場合もある。それにより、最大の機関モーメントが相応に適合される限りにおいて、約2.5〜約3.0の負荷に対する設定が可能である。
【0040】
図12には、全効率の、パラメータセット3に応じた曲線が、全変速比にわたって、オーバードライブODを起点としてアンダードライブUDにかけて示されている。パラメータセット3が最も平均的な曲線を有しており、この点で見てもやはり極めて有利であることは明らかである。
【0041】
実験的かつ理論的な研究は、以下の関係:
diVar/dt=diVar/diGes×diGes/dt
(ただし、diGes/dtは目標・全伝動装置変速比である。)
が成立する、バリエータ変速比の時間的な変化に関して、図4に示した伝動装置配置構成により、遊星機構伝動装置もしくは遊星機構連結伝動装置が例えばバリエータの下流に配置されている別のパワースプリット式の伝動装置に対して、改善が達成可能であることを示している。
【0042】
パワースプリット式の伝動装置の場合に重要な観点は、同期点(クラッチK1が閉じ、クラッチK2が開く際の同じ全変速比、ならびにクラッチK1が開き、クラッチK2が閉じる際の同じ全変速比)で実施される領域切換(Bereichsumschaltung)の快適性にある。クラッチの切換はできるだけ認識されないのが望ましい。パワースプリット式の伝動装置の、典型的な特徴は、両走行領域での慣性質量の、それぞれ異なる加速から生じる、領域変更における、ドライブトレーンに配置された慣性質量の動的なパワー(dynamische Leistung)の変化である。既に、伝動装置構造の上手な選択および設計(個々の変速比i)により、変速比経過への影響、ひいては領域変更点における動的なパワー成分の変更が執り行われることができる。
【0043】
本願の伝動装置構造のために、第1の円盤対16(SS1)の回転数と第2の円盤対18(SS2)の回転数とが、以下の方程式:
nSS1=nMot×iVar×f(iVar)
nSS2=nMot×f(iVar)
により与えられている。ただし、nMotは機関もしくは駆動軸6の回転数であり、iVarはバリエータ変速比であり、f(iVar)はバリエータ変速比の関数である。
【0044】
本願の、ロー領域およびハイ領域でのパワースプリットを有する伝動装置の特色は、円盤セット1の回転数nSS1の、バリエータ変速比iVarへの依存性である。関数f(iVar)はその都度のバリエーション(図4)に依存する。バリエータ変速比の他に、関数fは個々の変速比iに依存する。
【0045】
nSS1およびnSS2に関する方程式により、円盤対16,18に関する動的なパワーPdyn,SS1およびPdyn,SS2が算出されることができる。その際、例えば図4のバリエーション4に関して、以下の方程式が成立する。
【0046】
【数1】
【0047】
ただし、ΘSS1およびΘSS2は円盤対16および円盤対18の質量慣性モーメントである。ハイ領域およびロー領域での異なる変速比経過iVar(iGes)と、領域変更点での導関数diVar/diGesにおける不連続性とは、Pdyn,SS1ならびにPdyn,SS2が領域変更点で飛躍(Sprung)を示す原因となる。飛躍の高さは直接上記の公式により暗示されることができる。dnMot/dtおよびdiGes/dt(車両固有に確定されている)に至るまで、すべてのその他の値は伝動装置構成およびその設計に依存している。目的は、全伝動装置および設計を、飛躍の高さが領域変更点で最小であるように選択することである。このことはもちろん、最小のチェーン損傷への要求といった別の目的と両立可能でなければならない。
【0048】
別の観点は、異なる走行領域での第1の円盤対16または第2の円盤対18における大きなPdyn値の発生である。本願の伝動装置構造の利点は、領域変更点でのPdyn・不連続性がその他の構造に比べて僅かである点にある。本発明による構造では、領域変更時に、一方の円盤セットの加速プロセスが確かに終了される、またはそれどころか反転されるが、しかし同時に領域変更時に、他方の円盤セットの加速プロセスが開始される、もしくは制動プロセスが加速プロセスに反転される。両アクションは、伝動装置入力から伝動装置出力への、より連続的なパワーフロー、つまりより快適な領域変更につながる。
【0049】
図8には、図4のバリエーション4の伝動装置に関する、顧客に関連したサイクルで実施されるキックダウン・シフト(Kickdown−Rueckschaltung)の例における関係が示されている。図面にはnMot、iVar、iGes、Pdyn,SS1、Pdyn,SS2の経過が示されている。ただし、時間は左から右に横座標上を経過する。領域切換時のPdyn,SS1およびPdyn,SS2の不連続性が明らかに認識されることができる。適当な設計により、この不連続性は減じられる。さらに、不連続性が、異なる方向性を有しており、その結果、部分的に補償されることが見て取れる。
【0050】
分析により、回転質量、すなわち質量慣性モーメントを適当に選択することより、飛躍の高さを、両円盤セットの動的なパワーの合計が連続的に経過するように変更し得ることが判っている。これにより、それどころか完全な補償にまで至る補償の向上が構造的に実現可能である。ここに示した伝動装置では、円盤セット1の回転質量を、円盤セット2の回転質量のほぼ2倍の大きさにすることが有利である。
【0051】
図1を基に、この条件を実現するための、構造的な可能性が示されることができる。有利には、例えば小さなフライホイールが第1の円盤セット・軸20に設けられることできる。やはり、第2の円盤セット・軸22において、中空軸によりまたは半径方向で小さく構成された液圧式のチャンバ18により、その質量慣性モーメントを減じることが有利である。クラッチK1を歯車38の近傍に配置するのではなく、歯車34の近傍、すなわち可能な限り第2の円盤セット22の近傍に配置することも有利である。これにより、できるだけ僅かに、中間軸32の回転質量が、第2の円盤セット22に所属するものとして見なされなければならない。同じことはクラッチKRに該当する。
【0052】
本発明による、3つの軸を伴って作動するとともに、バリエータの上流に接続された分配伝動装置の助けを借りて2つの切換可能な前進領域で常にパワースプリット式に作動する、無段階に調節可能な変速比を有するパワースプリット式の伝動装置は、図1および図4に示した、単純遊星機構伝動装置を分配伝動装置として使用する例に限定されるものではない。
【0053】
図9には、図1に対して簡単化された描写で、分配伝動装置の別の実施形態が示されている。以下に、図1に示した実施形態との相違点だけを説明する。
【0054】
図9によれば、駆動軸6はまず、図1に示した実施形態の場合と同様に、第1の遊星機構段(Planetenstufe)の遊星キャリア50に相対回動不能に結合されている。遊星キャリア50の遊星車52は太陽車54の第1の外歯列と内歯車56の内歯列とに噛み合う。内歯車56は相対回動不能にもしくはインテグラルに別の遊星機構段の遊星キャリア58に結合されている。
【0055】
別の遊星キャリア58の遊星車60は、太陽車54の、第1の外歯列と同じかまたは異なっていてよい別の外歯列に噛み合い、さらに相対回動不能に入力軸20に結合されている内歯車62の内歯列に噛み合う。太陽車54のさらに別の外歯列は、図1と同様に相対回動不能に中間軸32に結合されている中間車34に噛み合う。
【0056】
図10には、2つの遊星機構段を有する分配伝動装置の、図9に対して改変された実施形態が示されている。
【0057】
図10に示した実施形態では、駆動軸6が相対回動不能にもしくは一体的に遊星キャリア70に結合されている。遊星キャリア70の遊星車72は太陽車74の第1の外歯列と内歯車76の内歯列とに噛み合う。内歯車76は相対回動不能にもしくは一体的に別の遊星キャリア78に結合されている。別の遊星キャリア78の遊星車80は、相対回動不能にもしくは一体的に入力軸20に結合されている太陽車74の別の外歯列に噛み合う。さらに、遊星車80は内歯車82の内歯列に噛み合う。内歯車82は、中間車34に噛み合う外歯列を備えて形成されている。
【0058】
図13には、図1bに示した実施例に示されているような連結伝動装置112の使用下での伝動装置のためのチェーンの負荷Bが示されている。その際、両遊星機構伝動装置112a,112bの単純歯車列変速比は2.5に確定されている。固定変速比i1,i2の積はi1×i2=0.849であり、固定変速比i3,i4の積はi3×i4=2.070である。軸変速比i(Achse)は3.775である。これから、2.308〜0.433のバリエータレンジが得られる。チェーンの、結果的に生じる負荷は、これらの値を基にするパラメータセット4に関して、最も僅かな負荷をなす。その他のパラメータセットも、相応の構成例にとっては有利である場合がある。
【0059】
図示の実施形態が例示的なものにすぎず、連結伝動装置の別のバリエーションがバリエータに、本発明による3軸式伝動装置をなすために組み合わせ可能であることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】分配伝動装置が単純遊星機構伝動装置または連結遊星機構伝動装置として構成されていることができる、本発明による伝動装置の一実施形態のブロック図である。
【図1a】分配伝動装置が単純遊星機構伝動装置として構成されている、本発明による伝動装置の一実施形態のブロック図である。
【図1b】分配伝動装置が連結遊星機構伝動装置として構成されている、本発明による伝動装置の一実施形態のブロック図である。
【図2】図1aに示した伝動装置の簡単化された構成図である。
【図3】図1aに示した伝動装置のシフト表である。
【図4】単純遊星機構伝動装置として構成された分配伝動装置を備えた、本発明による伝動装置の可能な構成表である。
【図5】図4に示したバリエーション1,4,5に関して、全変速比を、バリエータ変速比に依存して示すグラフである。
【図6】図4に示したバリエーション1に関して、円錐円盤対の、機関回転数に合わせて規格化された回転数を、全変速比に依存して示すグラフである。
【図7】図4に示したバリエーション1に関して、円錐円盤対1における、機関モーメントに合わせて規格化された有効モーメントを、全変速比に依存して示すグラフである。
【図8】図4に示したバリエーション1の、領域切換を伴うキックダウン・シフト中の、バリエータ変速比(iVar)と、全変速比(iGes)と、機関回転数(nMot)と、円盤セット1および円盤セット2の、質量慣性モーメントにより引き起こされる動的なパワー(Pdyn,SS1およびPdyn,SS2)とを、時間に依存して示すグラフである。
【図9】分配伝動装置が連結遊星機構伝動装置として構成されている、本発明による伝動装置の一実施形態のブロック図である。
【図10】分配伝動装置がやはり遊星機構連結伝動装置として構成されている、伝動装置の、変更された別のバリエーションのブロック図である。
【図11】図4に示したバリエーション4に基づく、単純遊星機構伝動装置を備えた伝動装置に関して、チェーン負荷を、種々異なるパラメータセットに依存して示すグラフである。
【図12】図4に示したバリエーション4の、種々異なるパラメータセットを有する、単純遊星機構伝動装置を備えた伝動装置に関して、全効率を、全変速比に依存して示すグラフである。
【図13】図10に示した連結遊星機構伝動装置を備えた伝動装置に関して、チェーン負荷を、種々異なるパラメータセットに依存して示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無段階に調節可能な変速比を有するパワースプリット式の伝動装置において、
‐相対回動不能に駆動軸(6)に結合された入力車(24;50;70)を備えた、入力側の分配伝動装置(12)と、
‐バリエータ(14)と、
‐被動軸(10)と、
‐2つのクラッチK1,K2とが設けられており、
‐連結伝動装置の入力車が、分配伝動装置の、少なくとも1つの車を介して、バリエータの入力軸(20)に回転係合しており、
‐分配伝動装置の出力車(30;54;82)が、バリエータに対して機能的に並列に配置された中間軸(32)に回転係合しており、該中間軸(32)がバリエータの出力軸に回転係合しており、
‐中間軸(32)が、第1のクラッチK1を介して、被動軸(10)に回転係合することができ、かつ
‐入力軸(20)が、第2のクラッチK2を介して、被動軸(10)に回転係合することができる
ことを特徴とする、無段階に調節可能な変速比を有するパワースプリット式の伝動装置。
【請求項2】
分配伝動装置(12)が遊星機構伝動装置である、請求項1記載のパワースプリット式の伝動装置。
【請求項3】
分配伝動装置(12)が単純遊星機構伝動装置である、請求項1または2記載のパワースプリット式の伝動装置。
【請求項4】
駆動軸(6)が相対回動不能に遊星キャリア(50)に結合されており、該遊星キャリア(50)の遊星車(52)が、中間軸(32)に回転係合している太陽車(54)と、内歯車(56)とに回転係合しており、該内歯車(56)が相対回動不能に第2の遊星キャリア(58)に結合されており、該第2の遊星キャリア(58)の遊星車(60)が太陽車(54)と別の内歯車(62)とに回転係合しており、該別の内歯車(62)が相対回動不能にバリエータの入力軸(20)に結合されている、請求項1または2記載のパワースプリット式の伝動装置。
【請求項5】
駆動軸(6)が相対回動不能に遊星キャリア(70)に結合されており、該遊星キャリア(70)の遊星車(72)が太陽車(74)と内歯車(76)とに回転係合しており、太陽車(74)が相対回動不能にバリエータ(14)の入力軸(6)に結合されており、内歯車(76)が相対回動不能に別の遊星キャリア(78)に結合されており、該遊星キャリア(78)の遊星車(80)が太陽車(74)と別の内歯車(82)とに回転係合しており、該別の内歯車(82)が中間軸(32)に回転係合している、請求項1または2記載のパワースプリット式の伝動装置。
【請求項6】
バリエータ(14)の出力軸(22)が後進走行クラッチKRを介して相対回動不能に後進車(42)に連結可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載のパワースプリット式の伝動装置。
【請求項7】
伝動装置の個々の車間の変速比が、第1のクラッチおよび第2のクラッチの操作により実施される領域切換時に、バリエータの第1の円錐円盤対および第2の円錐円盤対の動的なパワーの飛躍が最小であるように選択されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のパワースプリット式の伝動装置。
【請求項8】
変速比変更時のパワー吸収を規定する回転質量が、領域変更点におけるすべてのパワー吸収の飛躍が無視可能であるように高められる、請求項1から7までのいずれか1項記載のパワースプリット式の伝動装置。
【請求項9】
変速比変更時のパワー吸収を規定する回転質量が、領域変更点で、すべてのパワー吸収の飛躍が生じないように減じられる、請求項1から8までのいずれか1項記載のパワースプリット式の伝動装置。
【請求項10】
回転質量の減少もしくは増加が、領域クラッチの組付け場所を、これによりできるだけ多くの回転質量が連結解除もしくは連結されるように選択することにより達成される、請求項8または9記載のパワースプリット式の伝動装置。
【請求項1】
無段階に調節可能な変速比を有するパワースプリット式の伝動装置において、
‐相対回動不能に駆動軸(6)に結合された入力車(24;50;70)を備えた、入力側の分配伝動装置(12)と、
‐バリエータ(14)と、
‐被動軸(10)と、
‐2つのクラッチK1,K2とが設けられており、
‐連結伝動装置の入力車が、分配伝動装置の、少なくとも1つの車を介して、バリエータの入力軸(20)に回転係合しており、
‐分配伝動装置の出力車(30;54;82)が、バリエータに対して機能的に並列に配置された中間軸(32)に回転係合しており、該中間軸(32)がバリエータの出力軸に回転係合しており、
‐中間軸(32)が、第1のクラッチK1を介して、被動軸(10)に回転係合することができ、かつ
‐入力軸(20)が、第2のクラッチK2を介して、被動軸(10)に回転係合することができる
ことを特徴とする、無段階に調節可能な変速比を有するパワースプリット式の伝動装置。
【請求項2】
分配伝動装置(12)が遊星機構伝動装置である、請求項1記載のパワースプリット式の伝動装置。
【請求項3】
分配伝動装置(12)が単純遊星機構伝動装置である、請求項1または2記載のパワースプリット式の伝動装置。
【請求項4】
駆動軸(6)が相対回動不能に遊星キャリア(50)に結合されており、該遊星キャリア(50)の遊星車(52)が、中間軸(32)に回転係合している太陽車(54)と、内歯車(56)とに回転係合しており、該内歯車(56)が相対回動不能に第2の遊星キャリア(58)に結合されており、該第2の遊星キャリア(58)の遊星車(60)が太陽車(54)と別の内歯車(62)とに回転係合しており、該別の内歯車(62)が相対回動不能にバリエータの入力軸(20)に結合されている、請求項1または2記載のパワースプリット式の伝動装置。
【請求項5】
駆動軸(6)が相対回動不能に遊星キャリア(70)に結合されており、該遊星キャリア(70)の遊星車(72)が太陽車(74)と内歯車(76)とに回転係合しており、太陽車(74)が相対回動不能にバリエータ(14)の入力軸(6)に結合されており、内歯車(76)が相対回動不能に別の遊星キャリア(78)に結合されており、該遊星キャリア(78)の遊星車(80)が太陽車(74)と別の内歯車(82)とに回転係合しており、該別の内歯車(82)が中間軸(32)に回転係合している、請求項1または2記載のパワースプリット式の伝動装置。
【請求項6】
バリエータ(14)の出力軸(22)が後進走行クラッチKRを介して相対回動不能に後進車(42)に連結可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載のパワースプリット式の伝動装置。
【請求項7】
伝動装置の個々の車間の変速比が、第1のクラッチおよび第2のクラッチの操作により実施される領域切換時に、バリエータの第1の円錐円盤対および第2の円錐円盤対の動的なパワーの飛躍が最小であるように選択されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のパワースプリット式の伝動装置。
【請求項8】
変速比変更時のパワー吸収を規定する回転質量が、領域変更点におけるすべてのパワー吸収の飛躍が無視可能であるように高められる、請求項1から7までのいずれか1項記載のパワースプリット式の伝動装置。
【請求項9】
変速比変更時のパワー吸収を規定する回転質量が、領域変更点で、すべてのパワー吸収の飛躍が生じないように減じられる、請求項1から8までのいずれか1項記載のパワースプリット式の伝動装置。
【請求項10】
回転質量の減少もしくは増加が、領域クラッチの組付け場所を、これによりできるだけ多くの回転質量が連結解除もしくは連結されるように選択することにより達成される、請求項8または9記載のパワースプリット式の伝動装置。
【図1】
【図1a】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1a】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2006−504051(P2006−504051A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545718(P2004−545718)
【出願日】平成15年10月21日(2003.10.21)
【国際出願番号】PCT/DE2003/003492
【国際公開番号】WO2004/038257
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau Beteiligungs KG
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月21日(2003.10.21)
【国際出願番号】PCT/DE2003/003492
【国際公開番号】WO2004/038257
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau Beteiligungs KG
【Fターム(参考)】
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