無線タグ通信装置及び無線タグ通信システム
【課題】簡単な構成により実用的なセキュリティシステムを実現する無線タグ通信装置を提供する。
【解決手段】無線タグ14との間の通信の指向性を制御する指向性制御部54と、その指向性制御部54により定められる各指向性における無線タグ14からの返信信号に基づいて所定の領域内における通信状態の変化を検出する通信状態変化検出部66とを、備えたものであることから、電波遮蔽物或いは電波反射物としての移動体94の移動による無線タグ14との間の通信の阻害やマルチパスの形成等を観察することで、所定の領域内における移動体94の移動を簡便に検出することができる。
【解決手段】無線タグ14との間の通信の指向性を制御する指向性制御部54と、その指向性制御部54により定められる各指向性における無線タグ14からの返信信号に基づいて所定の領域内における通信状態の変化を検出する通信状態変化検出部66とを、備えたものであることから、電波遮蔽物或いは電波反射物としての移動体94の移動による無線タグ14との間の通信の阻害やマルチパスの形成等を観察することで、所定の領域内における移動体94の移動を簡便に検出することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグとの間で無線による情報の通信を行う無線タグ通信装置及び無線タグ通信システムに関し、特に、斯かる無線タグとの間の通信を利用したセキュリティシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の情報が記憶された小型の無線タグ(応答器)から所定の無線タグ通信装置(質問器)により非接触にて情報の読み出しを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。このRFIDシステムは、無線タグが汚れている場合や見えない位置に配置されている場合であっても無線タグ通信装置との通信によりその無線タグに記憶された情報を読み出すことが可能であることから、商品管理や検査工程等の様々な分野において実用が期待されている。
【0003】
斯かる無線タグ通信装置を用いた無線タグ通信システムの一形態として、上記無線タグとの間の通信を利用したセキュリティシステムが提案されている。例えば、特許文献1に記載された探知システムがそれである。この技術によれば、電波放射領域に出入りする認可者の任意箇所に取り付けられ、マイクロ波センサから放射される電波を検出して認可者認識用信号を送信する認識用機器を備え、上記マイクロ波センサで認識用機器からの信号を検出するものであることから、簡便な機器によって認可された人物と不審者とを弁別し、不審者が警戒スポットに侵入したことを迅速に探知できるとされている。
【0004】
【特許文献1】特許第3763454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述したように、無線タグ通信を利用した従来のセキュリティシステムは、認可者が携帯する認識用タグとの間で通信を行うことによりその認識者を探知するものであり、無線タグを携帯していないことが前提とされる不審者を好適に探知し得るものではなかった。また、所定の領域内における人や物の移動を検知するシステムとしては、電磁波を用いたレーダ装置や赤外線センサ等があるが、レーダ装置は比較的高価であることに加え建造物近辺又は内部において利用する場合は隣接する建造物や建造物壁面からの反射波を受信してしまうため検出対象物との識別が困難になるという不具合があった。また、赤外線センサは比較的安価であるが、構成上所定の狭小な検知範囲しか検知できず、空間的な広がりを有する領域における検知には適用が困難である。このため、簡単な構成により実用的なセキュリティシステムを実現する技術の開発が求められていた。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、簡単な構成により実用的なセキュリティシステムを実現する無線タグ通信装置及び無線タグ通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる目的を達成するために、本第1発明の要旨とするところは、無線タグに向けて送信アンテナから送信信号を送信すると共に、その送信信号に応じて前記無線タグから返信される返信信号を受信アンテナにより受信することでその無線タグとの間で情報の通信を行う無線タグ通信装置であって、前記無線タグとの間の通信の指向性を制御する指向性制御部と、その指向性制御部により定められる各指向性における前記無線タグからの返信信号に基づいて所定の領域内における通信状態の変化を検出する通信状態変化検出部とを、備えたことを特徴とするものである。
【0008】
また、前記目的を達成するために、本第2発明の要旨とするところは、上記第1発明の無線タグ通信装置を用いて所定の領域内に配設された無線タグとの間で情報の通信を行うことによりその領域内おける通信状態の変化を検出することを特徴とする無線タグ通信システムである。
【発明の効果】
【0009】
このように、本第1発明によれば、前記無線タグとの間の通信の指向性を制御する指向性制御部と、その指向性制御部により定められる各指向性における前記無線タグからの返信信号に基づいて所定の領域内における通信状態の変化を検出する通信状態変化検出部とを、備えたものであることから、電波遮蔽物或いは電波反射物としての移動体の移動による前記無線タグとの間の通信の阻害やマルチパスの形成等を観察することで、前記領域内における移動体の移動を簡便に検出することができる。すなわち、簡単な構成により実用的なセキュリティシステムを実現する無線タグ通信装置を提供することができる。
【0010】
ここで、前記第1発明は、好適には、前記受信アンテナにより受信された受信信号の信号強度を検出する受信信号強度検出部を備え、前記通信状態変化検出部は、その受信信号強度検出部により検出される受信信号の信号強度に基づいて前記領域内における通信状態の変化を検出するものである。このようにすれば、実用的な態様で対象となる領域内における通信状態の変化を検出することができる。
【0011】
また、好適には、前記通信状態変化検出部は、前記受信信号強度検出部により検出される受信信号の信号強度の平均値に基づいて前記領域内における通信状態の変化を検出するものである。このようにすれば、受信信号の信号強度の平均値との比較により、受信信号強度の検出ばらつきや前記領域内の定常的な環境変化によるフェージング等の受信信号強度のゆらぎを吸収でき、実用的な態様で対象となる領域内における通信状態の変化を検出することができる。
【0012】
また、好適には、前記通信状態変化検出部は、前記受信信号強度検出部により検出される受信信号の信号強度と、その受信信号強度検出部により前回検出された受信信号の信号強度とを、比較することにより前記領域内における通信状態の変化を検出するものである。このようにすれば、前回の受信信号の信号強度との比較により実用的な態様で対象となる領域内における通信状態の変化を検出することができる。
【0013】
また、好適には、前記送信信号の搬送波の強度を制御する搬送波強度制御部を備え、前記通信状態変化検出部は、その搬送波強度制御部により強度が変化させられる各搬送波に応じて前記無線タグから返信される返信信号を比較することにより前記領域内における通信状態の変化を検出するものである。このようにすれば、強度の異なる送信信号に応じた受信信号をそれぞれ比較することにより対象となる領域内における通信状態の変化の検出の分解能を向上させることができる。
【0014】
また、好適には、前記無線タグ通信装置は、複数の前記無線タグとの間で情報の通信を行うものであり、前記通信状態変化検出部は、それら複数の無線タグからの返信信号に基づいて前記領域内における通信状態の変化を検出するものである。このようにすれば、通信を行う無線タグの数を増やすことで検出の対象となる領域を拡大することができる。
【0015】
また、好適には、前記送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方は複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナであり、前記指向性制御部は、前記送信信号の送信指向性及び受信信号の受信指向性のうち少なくとも一方を制御するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記無線タグとの間の通信の指向性を制御することができ、各指向性における前記無線タグからの返信信号に基づいて対象となる領域内における通信状態の変化を好適に検出することができる。
【0016】
また、好適には、前記通信状態変化検出部により検出される通信状態の変化に基づいて前記領域内への移動体の侵入を検出するものである。このようにすれば、対象となる領域内への不審者等の移動物の侵入を検出するセキュリティシステムを実現することができる。
【0017】
また、好適には、前記通信状態変化検出部により検出される通信状態の変化に基づいて前記領域内における移動体の移動を検出するものである。このようにすれば、対象となる領域内における不審者等の移動物の移動を検出するセキュリティシステムを実現することができる。
【0018】
また、前記第2発明によれば、前記第1発明の無線タグ通信装置を用いて所定の領域内に配設された無線タグとの間で情報の通信を行うことによりその領域内における通信状態の変化を検出することを特徴とするものであることから、電波遮蔽物或いは電波反射物としての移動体の移動による前記無線タグとの間の通信の阻害やマルチパスの形成等を観察することで、前記領域内における移動体の移動を簡便に検出することができる。すなわち、簡単な構成により実用的なセキュリティシステムを実現する無線タグ通信システムを提供することができる。
【0019】
ここで、前記第2発明は、好適には、複数の前記無線タグ通信装置を備え、それら複数の無線タグ通信装置により前記領域内における通信状態の変化を検出するものである。このようにすれば、複数の無線タグ通信装置を用いて前記領域内における移動体の移動を更に好適に検出することができる。
【0020】
また、好適には、前記複数の無線タグ通信装置は、それぞれ交互に前記無線タグとの間で情報の通信を行うものである。このようにすれば、前記複数の無線タグ通信装置による所定の無線タグとの通信のバッティングを好適に防止することができる。
【0021】
また、好適には、前記領域内には、複数の前記無線タグが位置固定に設けられたものである。このようにすれば、前記領域に対する相対位置が固定された複数の無線タグに対応する受信信号をそれぞれ比較することにより実用的な態様でその領域内における通信状態の変化を検出することができる。
【0022】
また、好適には、前記複数の無線タグは、前記無線タグ通信装置に対してそれぞれ異なる方向に設けられたものである。このようにすれば、前記無線タグ通信装置に対する相対方向が固定された複数の無線タグに対応する受信信号をそれぞれ比較することにより実用的な態様で前記領域内における通信状態の変化を検出することができる。
【0023】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0024】
図1は、本第2発明の一実施例である無線タグ通信システム10について説明する図である。この無線タグ通信システム10は、本第1発明の一実施例である単数乃至は複数(図1では単数)の無線タグ通信装置12と、その無線タグ通信装置12の通信対象である単数乃至は複数(図1では単数)の無線タグ14とから構成される所謂RFID(Radio Frequency Identification)システムであり、上記無線タグ通信装置12はそのRFIDシステムの質問器として、上記無線タグ14は応答器としてそれぞれ機能する。すなわち、上記無線タグ通信装置12から質問波Fc(送信信号)が上記無線タグ14に向けて送信されると、その質問波Fcを受信した上記無線タグ14において所定のコマンド(送信データ)によりその質問波Fcが変調され、応答波Fr(返信信号)として上記無線タグ通信装置12に向けて返信されることで、その無線タグ通信装置12と無線タグ14との間で情報の通信が行われる。この無線タグ通信システム10は、後述するように、上記無線タグ通信装置12により所定の領域内に配設された無線タグ14との間で情報の通信を行うことでその領域内おける通信状態の変化を検出し、その変化に応じて斯かる領域内における移動体の移動を検出するセキュリティシステムを構成する。
【0025】
図2は、上記無線タグ通信装置12の構成を説明する図である。この図2に示すように、本実施例の無線タグ通信装置12は、送信データをディジタル信号として出力したり、上記無線タグ14からの返信信号を復調する等のディジタル信号処理を実行するDSP(Digital Signal Processor)16と、上記送信信号の搬送波の発振出力を行う搬送波発振部18と、その搬送波発振部18から出力される搬送波に上記DSP16から供給される送信データを乗せて出力する送信掛算部20と、その送信掛算部20から出力される信号を質問波Fcとして送信すると共に、その送信信号に応じて上記無線タグ14から返信される応答波Frを受信するために上記無線タグ通信装置12の装置本体に位置固定に設けられた複数(図2では3つ)のアンテナ素子22a、22b、22c(以下、特に区別しない場合には単にアンテナ素子22と称する)を有する送受信共用のアレイアンテナ24と、上記各アンテナ素子22に対応して上記送信掛算部20から出力される送信信号の位相を制御して出力すると共に、各アンテナ素子22により受信された受信信号の位相を制御して出力するPAA(Phased Array Antenna)処理部26と、そのPAA処理部26から出力される位相制御された送信信号を各アンテナ素子22へ供給すると共に、各アンテナ素子22により受信された受信信号をそのPAA処理部26へ供給する複数(図2では3つ)の送受信分離部28a、28b、28c(以下、特に区別しない場合には単に送受信分離部28と称する)と、所定の局所信号を発振する局部発振器30と、上記PAA処理部26から出力される位相制御された各アンテナ素子22に対応する受信信号に上記局部発振器30から出力される局所信号を掛け合わせて上記DSP16へ供給する複数(図2では3つ)の受信掛算部32a、32b、32c(以下、特に区別しない場合には単に受信掛算部32と称する)とを、備えて構成されている。なお、上記搬送波発振部18から出力される搬送波の強度は、上記DSP16から供給される制御指令により制御され得るように構成されている。また、上記送受信分離部28としては、よく知られたサーキュレータ等が好適に用いられる。
【0026】
上記PAA処理部26は、各アンテナ素子22に対応して上記送信掛算部20から出力される送信信号の位相を制御する複数(図2では3つ)の送信移相部34a、34b、34c(以下、特に区別しない場合には単に送信移相部34と称する)と、各送信移相部34から出力される送信信号を増幅して対応する送受信分離部28へ供給する複数(図2では3つ)の送信増幅部36a、36b、36c(以下、特に区別しない場合には単に送信増幅部36と称する)と、各アンテナ素子22により受信され送受信分離部36を介して供給される受信信号の位相を制御する複数(図2では3つ)の受信移相部38a、38b、38c(以下、特に区別しない場合には単に受信移相部38と称する)と、各受信移相部38から出力される受信信号を増幅して対応する受信掛算部32へ供給する複数(図2では3つ)の受信増幅部40a、40b、40c(以下、特に区別しない場合には単に受信増幅部40と称する)とを、備えて構成されている。また、各送信移相部34及び受信移相部38における移相量は、後述する指向性制御部54から供給される制御指令により制御され得るように構成されている。
【0027】
前記DSP16は、中央演算処理装置であるCPU、読出専用メモリであるROM、及び随時書込読出メモリであるRAM等を備え、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う所謂マイクロコンピュータであり、前記無線タグ14との間の通信に関する種々の制御に加え、後述するように、本実施例の無線タグ通信システム10によりセキュリティシステムを実現するための制御を行う。斯かる制御を行うために、搬送波強度制御部50、送信データ生成部52、指向性制御部54、受信信号合成部60、受信信号復調部62、受信信号強度検出部64、通信状態変化検出部66、及び不審移動体検出部68を機能的に備えている。また、情報を記憶し得るRAMやハードディスク等の記憶部70を備えている。
【0028】
上記搬送波強度制御部50は、前記搬送波発振部18により発生させられる搬送波の強度を制御する。また、上記送信データ生成部52は、前記無線タグ14への送信データを生成して前記送信掛算部20へ供給する。この送信データとは、例えば所定のコマンドビット列等であり、前記送信掛算部20は、この送信データ生成部52から供給される送信データを前記搬送波発振部18から供給される搬送波に乗せて出力させる。そのようにして出力された信号は、前記PAA処理部26及び送受信分離部28等を介して前記アレイアンテナ24から送信信号として送信される。
【0029】
前記指向性制御部54は、前記PAA処理部26を介して前記アレイアンテナ24による前記無線タグ14との間の通信指向性を制御する。斯かる制御を行うために、送信指向性制御部56及び受信指向性制御部58を備えている。この送信指向性制御部56は、前記PAA処理部26における各送信移相部34における移相量を制御することで、送信アンテナとしての前記アレイアンテナ24の送信指向性を制御する。また、上記受信指向性制御部58は、前記PAA処理部26における各受信移相部38における移相量を制御することで、受信アンテナとしての前記アレイアンテナ24の受信指向性を制御する。斯かる制御が行われることで、指向性方向に対応するメインローブ方向にビームが向けられる。なお、前記指向性制御部54は、好適には、各指向性方向におけるビームにおけるビーム幅の広狭を種々に制御し得るものであり、通信態様に応じてそのビーム幅を種々に変化させる。
【0030】
前記受信信号合成部60は、前記複数のアンテナ素子22によりそれぞれ受信された受信信号を合成(加算)する。また、前記受信信号復調部62は、その受信信号合成部60により合成された受信信号を復調する。好適には、AM方式により受信信号をAM復調した後、その復調信号をFM復号することで前記無線タグ14による変調に関する情報信号を読み出す。
【0031】
前記受信信号強度検出部64は、受信アンテナとしての前記アレイアンテナ24により受信された受信信号の信号強度すなわち前記受信信号合成部60により合成された受信信号の信号強度を検出する。好適には、前記指向性制御部54により定められる各指向性に対応して斯かる受信信号の信号強度を検出し、その指向性及び信号強度を相互に関連づけて前記記憶部70に記憶する。
【0032】
前記通信状態変化検出部66は、前記指向性制御部54により定められる各指向性における前記無線タグ14からの返信信号に基づいて所定の領域内における通信状態の変化を検出する。また、前記不審移動体検出部68は、前記通信状態変化検出部66により検出される通信状態の変化に基づいて所定の領域内における不審移動体を検出する。これら通信状態変化検出部66及び不審移動体検出部68による制御の詳細については、図4乃至図7等を用いて後述する。
【0033】
図3は、前記無線タグ14に備えられた無線タグ回路素子72の構成を説明する図である。この図3に示すように、上記無線タグ回路素子72は、前記無線タグ通信装置12との間で信号の送受信を行うためのアンテナ部74と、そのアンテナ部74により受信された信号を処理するためのIC回路部76とを、備えて構成されている。そのIC回路部76は、上記アンテナ部74により受信された前記無線タグ通信装置12からの質問波Fcを整流する整流部78と、その整流部78により整流された質問波Fcのエネルギを蓄積するための電源部80と、上記アンテナ部74により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部88に供給するクロック抽出部82と、所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部84と、上記アンテナ部74に接続されて信号の変調及び復調を行う変復調部86と、上記整流部78、クロック抽出部82、及び変復調部86等を介して上記無線タグ回路素子72の作動を制御するための制御部88とを、機能的に含んでいる。この制御部88は、前記無線タグ通信装置12と通信を行うことにより上記メモリ部84に上記所定の情報を記憶する制御や、上記アンテナ部74により受信された質問波Fcを上記変復調部86において上記メモリ部84に記憶された情報信号に基づいて変調したうえで応答波Frとして上記アンテナ部74から反射返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0034】
図4は、本実施例の無線タグ通信システム10を利用したセキュリティシステムを説明する図であり、図5は、図4の無線タグ通信装置12において通信指向性を変化させていった場合の各指向性方向に対応する受信信号の信号強度分布を示すグラフである。図4に示すように、前記無線タグ通信システム10は、所定の領域例えば室90内に配設された無線タグ14との間で情報の通信を行うものであり、その無線タグ通信装置10に備えられた無線タグ通信装置12及び無線タグ14は、好適には、上記室90に対して位地固定に設けられている。このように構成された無線タグ通信システム10において、前記指向性制御部54により前記無線タグ通信装置12と無線タグ14との間の通信の指向性方向を変化させていった場合、各指向性方向に対応する受信信号の信号強度分布は、例えば図5に実線で示すようなものになる。この信号強度分布に関して、角度0°付近におけるピークは、反射によらず前記無線タグ14に到達する送信信号すなわち直接波による通信に対応するものであり、角度±70°付近におけるピークは、上記室90の壁部92において反射された反射波(図4を参照)による通信に対応するものである。
【0035】
ここで、図4に示すように、上記室90内に電波を反射し得る移動体94a、94b(以下、特に区別しない場合には単に移動体94と称する)が存在する場合を考えると、その移動体94aの反射により前記無線タグ通信装置12から無線タグ14への新たな電波伝達経路(マルチパス)が形成され、受信信号の信号強度分布に、図5に一点鎖線で示すような新たなピークが出現する。また、上記移動体94bにより前記室90の一方の壁部92での反射による電波の伝達が遮られ、図5に破線で示すように、その電波伝達経路に対応するピークが消失する。このように、上記室90内において移動体94の移動があった場合、その室90内における前記無線タグ通信装置12と無線タグ14との間の通信状態に変化が生じ、その変化は例えば上述のように受信信号の信号強度分布に反映される。前記通信状態変化検出部66は、好適には、前記受信信号強度検出部64により検出される受信信号の信号強度、更に好適には、その信号強度の平均値に基づいて所定の領域すなわち上記室90内における通信状態の変化を検出する。すなわち、前記受信信号強度検出部64により検出される受信信号の信号強度分布と、その受信信号強度検出部64により前回検出されて前記記憶部70に記憶された受信信号の信号強度分布とを、比較することにより上記室90内における通信状態の変化を検出する。そして、前記不審移動体検出部68は、その通信状態変化検出部66により検出された通信状態の変化に基づいて上記室90内における移動体94の移動を検出する。そのようにして、本実施例の無線タグ通信システム10により上記室90内における簡便なセキュリティシステムを実現することができる。
【0036】
また、前記通信状態変化検出部64は、好適には、前記搬送波強度制御部50により強度が変化させられる各搬送波に応じて前記無線タグ14から返信される返信信号を比較することにより前記室90内における通信状態の変化を検出する。前記送信信号の伝達可能距離は基本的には搬送波の強度によって決まることから、その搬送波の強度を変化させることで伝達可能距離の異なる複数種類の送信信号を送信することができる。そのように強度の異なる送信信号に応じた受信信号をそれぞれ比較することで、対象となる領域すなわち前記室90内における通信状態の変化の検出の分解能を向上させることができ、更に好適にその室90内における移動体94の移動を検出することができる。
【0037】
図6は、本実施例の無線タグ通信システム10を利用したセキュリティシステムの他の一例を説明する図である。この図6に示す無線タグ通信システム10は、前記無線タグ通信装置12に対してそれぞれ異なる方向(無線タグ通信装置12から見てそれぞれ異なる角度方向)に配置された複数(図6では3つ)の無線タグ14a、14b、14c(それぞれの構成は前述した無線タグ14と等価であり、以下、特に区別しない場合には単に無線タグ14と称する)を備え、それら複数の無線タグ14との間の通信を利用してセキュリティシステムを実現するものである。斯かる構成において、前記通信状態変化検出部66は、それら複数の無線タグ14からの返信信号に基づいて前記室90内における通信状態の変化を検出する。例えば、それら複数の無線タグ14を認識(識別)するための通信を行い、認識の可否に基づいて通信状態の変化を検出する。図7は、図6の無線タグ通信システム10による複数の無線タグ14の認識結果を例示する表である。この図7に示す例では、時点t1においてTagA(無線タグ14a)、TagB(無線タグ14b)、TagC(無線タグ14c)共に認識できていたものが、時点t2においてはTagCを認識することができなくなっている。これは、図6に示すように、前記無線タグ通信装置12と無線タグ14cとの間の電波伝達経路に移動体94が位置することで電波の伝達が阻害されたためであり、このように、複数の無線タグ14との間で情報の通信を行い、それら無線タグ14の認識の可否を比較することによっても、前記室90内における移動体94の移動を好適に検出することができる。
【0038】
図8は、本実施例の無線タグ通信システム10を利用したセキュリティシステムの更に別の一例を説明する図である。この図8に示す無線タグ通信システム10は、複数(図8では2つ)の無線タグ通信装置12a、12b(それぞれの構成は前述した無線タグ通信装置12と等価であり、以下、特に区別しない場合には単に無線タグ通信装置12と称する)と、複数の無線タグ14a、14b、14cとを、備え、それら複数の無線タグ14との間の通信を利用してセキュリティシステムを実現するものである。斯かる構成では、上記複数の無線タグ通信装置12により前記室90内における通信状態の変化を検出する。ここで、好適には、上記複数の無線タグ通信装置12は、通信のバッティングを防止するために、それぞれ交互に前記無線タグ14との間で情報の通信を行う。すなわち、先ず、上記無線タグ通信装置12aにより前記無線タグ14a、14b、14cとの間で通信を行い、斯かる通信が完了した後、上記無線タグ通信装置12bによりそれら無線タグ14a、14b、14cとの間で通信を行う。また、図9に示すように、複数の無線タグ通信装置12a、12bと、単数の無線タグ14とを備えて構成された無線タグ通信システム10においても、同様にそれら複数の無線タグ通信装置12により交互に前記無線タグ14との間で情報の通信を行うのが好ましい。このように、複数の無線タグ通信装置12により通信を行うことで、対象となる領域すなわち前記室90内における通信状態の変化の検出の分解能を向上させることができ、更に好適にその室90内における移動体94の移動を検出することができる。
【0039】
図10は、本実施例の無線タグ通信システム10を利用したセキュリティシステムの更に別の一例を説明する図である。この図10に示す無線タグ通信システム10では、前記室90の出入口96付近に複数(図10では2つ)の無線タグ14a、14bが設けられており、前記無線タグ通信装置12は、それら複数の無線タグ14との間で通信を行い、前記通信状態変化検出部66により検出される通信状態の変化に基づいて前記室90内への移動体94の侵入を検出する。すなわち、前記室90内へ移動体94が侵入する場合、その移動体94が出入口96を通過することでその出入口96付近の通信環境が変化し、前記無線タグ通信装置12と無線タグ14a、14bとの間の通信状態に変化が生じる。前記無線タグ通信装置12は、斯かる通信状態の変化を前記通信状態変化検出部66により検出することで、前記室90の出入口96近傍における移動体94の移動すなわちその室90への移動体94の侵入を検出することができる。
【0040】
図11は、前記無線タグ通信装置12のDSP16による不審移動体検出制御の一例の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
【0041】
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、時刻tNが初期値であるt1とされる。次に、S2において、前記無線タグ14との間の通信の指向性方向を示す指向性角度AYが初期値であるA1とされる。次に、S3において、前記無線タグ14との間で通信が行われ、その無線タグ14に記憶された情報が読み出される。次に、前記受信信号強度検出部64の動作に対応するS4において、複数の無線タグ14(タグG1〜GX)からの返信信号に対応する受信信号の信号強度が検出され、指向性角度AYと関連づけられて前記記憶部70に記憶される。次に、S5において、前記指向性角度AYがAY+1とされる。次に、S6において、その時点における指向性角度AYが所定値Amaxであるか否かが判断される。このS6の判断が否定される場合には、S3以下の処理が再び実行されるが、S6の判断が肯定される場合には、S7において、時刻tNがtN+1とされる。次に、S8において、その時点における時刻tNが所定値tcheであるか否かが判断される。このS8の判断が否定される場合には、S2以下の処理が再び実行されるが、S8の判断が肯定される場合には、S9において、時刻tNまでの全受信強度分布Sが前記記憶部70から読み出される。なお、この受信強度分布Sは時刻tN、指向性角度AY、及びタグGXの関数である。次に、S10において、2つの異なる時刻tNにおける受信強度分布S1(GX,AY)及びS2(GX,AY)が選択される。次に、S11において、S10にて選択された2つの受信強度分布S1及びS2が等しいか否かが判断される。このS10の判断が肯定される場合には、S12において、前記室90内における異常なしと判定された後、本ルーチンが終了させられるが、S11の判断が否定される場合には、S13において、前記室90内における移動体94の移動やその室90への移動体94の侵入が検知される。次に、S14において、警報やカメラ記録等の動作が開始された後、本ルーチンが終了させられる。以上の処理において、S2及びS5が前記指向性制御部54の動作に、S9乃至S11が通信状態変化検出部66の動作に、S12及びS13が前記不審移動体検出部68の動作にそれぞれ対応する。
【0042】
なお、上述した図11に示す制御において、S10での受信強度分布S1(GX,AY)及びS2(GX,AY)の選択の態様としては、例えば、その時刻tNにおける受信信号強度を直前の時刻tN-1における受信強度分布と比較するための選択態様、すなわちS1としてS(GX,AY,tN-1)を、S2としてS(GX,AY,tN)を選択する態様が考えられる。また、ある一定時間内における受信強度分布の平均と比較するための選択態様、すなわちS1としてS(GX,AY,tM)乃至S(GX,AY,tN-1)の平均値を、S2としてS(GX,AY,tN)を選択する態様が考えられる。ここで、tMはt1からtN-2の中の任意の時刻である。
【0043】
図12は、前記無線タグ通信装置12のDSP16による不審移動体検出制御の他の一例の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。なお、この図12に示す制御において、前述した図11に示す制御と同一のステップについては共通の符号を付してその説明を省略する。この制御では、前述したS1の処理に続いて、S15において、アンテナ出力すなわち前記アレイアンテナ24から送信される送信信号の強度PZが初期値であるP1とされた後、S2以下の処理が実行される。また、前述したS6の判断が肯定される場合には、S16において、前記送信信号の強度PZがPZ+1とされる。次に、S17において、その時点における送信信号の強度PZが所定値Pmaxであるか否かが判断される。このS17の判断が否定される場合には、前述したS2以下の処理が実行されるが、S17の判断が肯定される場合には、前述したS7以下の処理が実行される。なお、この図12の制御における受信強度分布Sは、送信信号の強度PZ、時刻tN、指向性角度AY、及びタグGXの関数である。また、以上の処理において、S15及びS16が前記搬送波強度制御部50の動作に対応する。
【0044】
図13は、前記無線タグ通信装置12のDSP16による不審移動体検出制御の更に別の一例の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。なお、この図13に示す制御において、前述した図11及び図12に示す制御と同一のステップについては共通の符号を付してその説明を省略する。この制御では、上述したS15の処理に続いて、S18において、リーダRiすなわち複数の無線タグ通信装置12のうち符号Riで識別される所定の無線タグ通信装置12における前記無線タグ14との間の通信の指向性角度AYが初期値であるA1とされる。次に、S19において、リーダR1〜Riすなわち複数の無線タグ通信装置12による前記無線タグ14との間の通信が行われ、その無線タグ14に記憶された情報が読み出される。ここで、好適には、通信のバッティングが発生しないようにリーダR1〜Riが順次対象となる無線タグ14との間で通信を行う。次に、前記受信信号強度検出部64の動作に対応するS20において、リーダR1〜Riそれぞれにおいて複数の無線タグ14(タグG1〜GX)からの返信信号に対応する受信信号の信号強度が検出され、指向性角度AYと関連づけられて前記記憶部70に記憶された後、前述したS5以下の処理が実行される。また、前述したS9の処理に続いて、S21において、リーダRiに関して2つの異なる時刻tNにおける受信強度分布S1i(GX,AYi,PZ)及びS2i(GX,AYi,PZ)が選択された後、前述したS11以下の処理が実行される。
【0045】
このように、本実施例によれば、前記無線タグ14との間の通信の指向性を制御する指向性制御部54(S2及びS5)と、その指向性制御部54により定められる各指向性における前記無線タグ14からの返信信号に基づいて所定の領域内における通信状態の変化を検出する通信状態変化検出部66(S9乃至S11)とを、備えたものであることから、電波遮蔽物或いは電波反射物としての移動体94の移動による前記無線タグ14との間の通信の阻害やマルチパスの形成等を観察することで、所定の領域すなわち前記室90内における移動体94の移動を簡便に検出することができる。すなわち、簡単な構成により実用的なセキュリティシステムを実現する無線タグ通信装置12を提供することができる。
【0046】
また、受信アンテナとしての前記アレイアンテナ24により受信された受信信号の信号強度を検出する受信信号強度検出部64(S4及びS20)を備え、前記通信状態変化検出部66は、その受信信号強度検出部64により検出される受信信号の信号強度に基づいて前記室90内における通信状態の変化を検出するものであるため、実用的な態様で対象となる領域内における通信状態の変化を検出することができる。
【0047】
また、前記通信状態変化検出部66は、前記受信信号強度検出部64により検出される受信信号の信号強度の平均値に基づいて前記室90内における通信状態の変化を検出するものであるため、受信信号の信号強度の平均値との比較により、受信信号強度の検出ばらつきや前記室90内の定常的な環境変化による受信信号強度のゆらぎを吸収でき、実用的な態様で対象となる領域内における通信状態の変化を検出することができる。
【0048】
また、前記通信状態変化検出部66は、前記受信信号強度検出部64により検出される受信信号の信号強度と、その受信信号強度検出部64により前回検出された受信信号の信号強度とを、比較することにより前記室90内における通信状態の変化を検出するものであるため、前回の受信信号の信号強度との比較により実用的な態様で対象となる領域内における通信状態の変化を検出することができる。
【0049】
また、前記送信信号の搬送波の強度を制御する搬送波強度制御部50(S15及びS16)を備え、前記通信状態変化検出部66は、その搬送波強度制御部50により強度が変化させられる各搬送波に応じて前記無線タグ14から返信される返信信号を比較することにより前記室90内における通信状態の変化を検出するものであるため、強度の異なる送信信号に応じた受信信号をそれぞれ比較することにより対象となる領域内における通信状態の変化の検出の分解能を向上させることができる。
【0050】
また、前記無線タグ通信装置12は、複数の前記無線タグ14との間で情報の通信を行うものであり、前記通信状態変化検出部66は、それら複数の無線タグ14からの返信信号に基づいて前記室90内における通信状態の変化を検出するものであるため、通信を行う無線タグ14の数を増やすことで検出の対象となる領域を拡大することができる。
【0051】
また、送信アンテナ及び受信アンテナとして機能する複数のアンテナ素子22を有するアレイアンテナ24を備え、前記指向性制御部54は、前記送信信号の送信指向性及び受信信号の受信指向性のうち少なくとも一方を制御するものであるため、実用的な態様で前記無線タグ14との間の通信の指向性を制御することができ、各指向性における前記無線タグ14からの返信信号に基づいて対象となる領域内における通信状態の変化を好適に検出することができる。
【0052】
また、前記通信状態変化検出部66により検出される通信状態の変化に基づいて前記室90内への移動体94の侵入を検出するものであるため、対象となる領域内への不審者等の移動物の侵入を検出するセキュリティシステムを実現することができる。
【0053】
また、前記通信状態変化検出部66により検出される通信状態の変化に基づいて前記室90内における移動体94の移動を検出するものであるため、対象となる領域内における不審者等の移動物の移動を検出するセキュリティシステムを実現することができる。
【0054】
また、前記無線タグ通信装置12を用いて所定の領域すなわち前記室90内に配設された無線タグ14との間で情報の通信を行うことによりその室90内における通信状態の変化を検出する無線タグ通信システム10により、電波遮蔽物或いは電波反射物としての移動体94の移動による前記無線タグ14との間の通信の阻害やマルチパスの形成等を観察することで、前記室90内における移動体94の移動を簡便に検出することができる。すなわち、簡単な構成により実用的なセキュリティシステムを実現する無線タグ通信システム10を提供することができる。
【0055】
また、複数の前記無線タグ通信装置12を備え、それら複数の無線タグ通信装置12により前記室90内における通信状態の変化を検出するものであるため、複数の無線タグ通信装置12を用いて前記室90内における移動体94の移動を更に好適に検出することができる。
【0056】
また、前記複数の無線タグ通信装置12は、それぞれ交互に前記無線タグ14との間で情報の通信を行うものであるため、前記複数の無線タグ通信装置12による所定の無線タグ14との通信のバッティングを好適に防止することができる。
【0057】
また、前記室90内には、複数の前記無線タグ14が位置固定に設けられたものであるため、前記室90に対する相対位置が固定された複数の無線タグ14に対応する受信信号をそれぞれ比較することにより実用的な態様でその室90内における通信状態の変化を検出することができる。
【0058】
また、前記複数の無線タグ14は、前記無線タグ通信装置12に対してそれぞれ異なる方向に設けられたものであるため、その無線タグ通信装置12に対する相対方向が固定された複数の無線タグ14に対応する受信信号をそれぞれ比較することにより実用的な態様で前記室90内における通信状態の変化を検出することができる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0060】
例えば、前述の実施例において、前記無線タグ通信装置12は、前記指向性制御部54により前記送信信号の送信指向性及び受信信号の受信指向性を制御するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記送信信号の送信指向性及び受信信号の受信指向性のうち少なくとも一方を制御するものであればよく、必ずしもその両方を制御し得るものでなくともよい。
【0061】
また、前述の実施例において、前記搬送波強度制御部50、指向性制御部54、受信信号強度検出部64、及び通信状態変化検出部66等の制御機能は、何れも前記DSP16に機能的に備えられたものであったが、それら制御機能のうち一部乃至は全部が個別の制御装置として備えられたものであってもよい。また、それら制御機能による制御は、ディジタル信号処理であるとアナログ信号処理であるとを問わない。
【0062】
また、前述の実施例において、前記室90内に備えられた複数の無線タグ通信装置12は、それぞれ交互に前記無線タグ14との間で情報の通信を行うものであったが、各無線タグ通信装置12における通信指向性を適宜制御する等して通信のバッティングを防止できるのであれば、必ずしも交互に通信を行うものでなくともよく、それら複数の無線タグ通信装置12が同期して送信信号を送信するものであっても構わない。
【0063】
また、前述の実施例では特に言及していないが、前記不審移動体検出部68により不審な移動体94が検出された場合に、前記室90内の映像を撮像して表示させる構成や警報を鳴らす構成、或いは所定の回線を介して警備会社への通報を行う構成等が設けられてもよいことは言うまでもない。
【0064】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本第2発明の一実施例である無線タグ通信システムについて説明する図である。
【図2】本第1発明の一実施例である無線タグ通信装置の構成を説明する図である。
【図3】図1の無線タグに備えられた無線タグ回路素子の構成を説明する図である。
【図4】図1の無線タグ通信システムを利用したセキュリティシステムを説明する図である。
【図5】図4の無線タグ通信システムに備えられた無線タグ通信装置において通信指向性を変化させていった場合の各指向性方向に対応する受信信号の信号強度分布を示すグラフである。
【図6】図1の無線タグ通信システムを利用したセキュリティシステムの他の一例を説明する図である。
【図7】図6の無線タグ通信システムに備えられた無線タグ通信装置による複数の無線タグの認識結果を例示する表である。
【図8】図1の無線タグ通信システムを利用したセキュリティシステムの更に別の一例を説明する図である。
【図9】図1の無線タグ通信システムを利用したセキュリティシステムの更に別の一例を説明する図である。
【図10】図1の無線タグ通信システムを利用したセキュリティシステムの更に別の一例を説明する図である。
【図11】図2の無線タグ通信装置のDSPによる不審移動体検出制御の一例の要部を説明するフローチャートである。
【図12】図2の無線タグ通信装置のDSPによる不審移動体検出制御の他の一例の要部を説明するフローチャートである。
【図13】図2の無線タグ通信装置のDSPによる不審移動体検出制御の更に別の一例の要部を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
10:無線タグ通信システム
12:無線タグ通信装置
14:無線タグ
22:アンテナ素子
24:アレイアンテナ(送信アンテナ、受信アンテナ)
50:搬送波強度制御部
54:指向性制御部
64:受信信号強度検出部
66:通信状態変化検出部
90:室(領域)
94:移動体
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグとの間で無線による情報の通信を行う無線タグ通信装置及び無線タグ通信システムに関し、特に、斯かる無線タグとの間の通信を利用したセキュリティシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の情報が記憶された小型の無線タグ(応答器)から所定の無線タグ通信装置(質問器)により非接触にて情報の読み出しを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。このRFIDシステムは、無線タグが汚れている場合や見えない位置に配置されている場合であっても無線タグ通信装置との通信によりその無線タグに記憶された情報を読み出すことが可能であることから、商品管理や検査工程等の様々な分野において実用が期待されている。
【0003】
斯かる無線タグ通信装置を用いた無線タグ通信システムの一形態として、上記無線タグとの間の通信を利用したセキュリティシステムが提案されている。例えば、特許文献1に記載された探知システムがそれである。この技術によれば、電波放射領域に出入りする認可者の任意箇所に取り付けられ、マイクロ波センサから放射される電波を検出して認可者認識用信号を送信する認識用機器を備え、上記マイクロ波センサで認識用機器からの信号を検出するものであることから、簡便な機器によって認可された人物と不審者とを弁別し、不審者が警戒スポットに侵入したことを迅速に探知できるとされている。
【0004】
【特許文献1】特許第3763454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述したように、無線タグ通信を利用した従来のセキュリティシステムは、認可者が携帯する認識用タグとの間で通信を行うことによりその認識者を探知するものであり、無線タグを携帯していないことが前提とされる不審者を好適に探知し得るものではなかった。また、所定の領域内における人や物の移動を検知するシステムとしては、電磁波を用いたレーダ装置や赤外線センサ等があるが、レーダ装置は比較的高価であることに加え建造物近辺又は内部において利用する場合は隣接する建造物や建造物壁面からの反射波を受信してしまうため検出対象物との識別が困難になるという不具合があった。また、赤外線センサは比較的安価であるが、構成上所定の狭小な検知範囲しか検知できず、空間的な広がりを有する領域における検知には適用が困難である。このため、簡単な構成により実用的なセキュリティシステムを実現する技術の開発が求められていた。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、簡単な構成により実用的なセキュリティシステムを実現する無線タグ通信装置及び無線タグ通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる目的を達成するために、本第1発明の要旨とするところは、無線タグに向けて送信アンテナから送信信号を送信すると共に、その送信信号に応じて前記無線タグから返信される返信信号を受信アンテナにより受信することでその無線タグとの間で情報の通信を行う無線タグ通信装置であって、前記無線タグとの間の通信の指向性を制御する指向性制御部と、その指向性制御部により定められる各指向性における前記無線タグからの返信信号に基づいて所定の領域内における通信状態の変化を検出する通信状態変化検出部とを、備えたことを特徴とするものである。
【0008】
また、前記目的を達成するために、本第2発明の要旨とするところは、上記第1発明の無線タグ通信装置を用いて所定の領域内に配設された無線タグとの間で情報の通信を行うことによりその領域内おける通信状態の変化を検出することを特徴とする無線タグ通信システムである。
【発明の効果】
【0009】
このように、本第1発明によれば、前記無線タグとの間の通信の指向性を制御する指向性制御部と、その指向性制御部により定められる各指向性における前記無線タグからの返信信号に基づいて所定の領域内における通信状態の変化を検出する通信状態変化検出部とを、備えたものであることから、電波遮蔽物或いは電波反射物としての移動体の移動による前記無線タグとの間の通信の阻害やマルチパスの形成等を観察することで、前記領域内における移動体の移動を簡便に検出することができる。すなわち、簡単な構成により実用的なセキュリティシステムを実現する無線タグ通信装置を提供することができる。
【0010】
ここで、前記第1発明は、好適には、前記受信アンテナにより受信された受信信号の信号強度を検出する受信信号強度検出部を備え、前記通信状態変化検出部は、その受信信号強度検出部により検出される受信信号の信号強度に基づいて前記領域内における通信状態の変化を検出するものである。このようにすれば、実用的な態様で対象となる領域内における通信状態の変化を検出することができる。
【0011】
また、好適には、前記通信状態変化検出部は、前記受信信号強度検出部により検出される受信信号の信号強度の平均値に基づいて前記領域内における通信状態の変化を検出するものである。このようにすれば、受信信号の信号強度の平均値との比較により、受信信号強度の検出ばらつきや前記領域内の定常的な環境変化によるフェージング等の受信信号強度のゆらぎを吸収でき、実用的な態様で対象となる領域内における通信状態の変化を検出することができる。
【0012】
また、好適には、前記通信状態変化検出部は、前記受信信号強度検出部により検出される受信信号の信号強度と、その受信信号強度検出部により前回検出された受信信号の信号強度とを、比較することにより前記領域内における通信状態の変化を検出するものである。このようにすれば、前回の受信信号の信号強度との比較により実用的な態様で対象となる領域内における通信状態の変化を検出することができる。
【0013】
また、好適には、前記送信信号の搬送波の強度を制御する搬送波強度制御部を備え、前記通信状態変化検出部は、その搬送波強度制御部により強度が変化させられる各搬送波に応じて前記無線タグから返信される返信信号を比較することにより前記領域内における通信状態の変化を検出するものである。このようにすれば、強度の異なる送信信号に応じた受信信号をそれぞれ比較することにより対象となる領域内における通信状態の変化の検出の分解能を向上させることができる。
【0014】
また、好適には、前記無線タグ通信装置は、複数の前記無線タグとの間で情報の通信を行うものであり、前記通信状態変化検出部は、それら複数の無線タグからの返信信号に基づいて前記領域内における通信状態の変化を検出するものである。このようにすれば、通信を行う無線タグの数を増やすことで検出の対象となる領域を拡大することができる。
【0015】
また、好適には、前記送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方は複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナであり、前記指向性制御部は、前記送信信号の送信指向性及び受信信号の受信指向性のうち少なくとも一方を制御するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記無線タグとの間の通信の指向性を制御することができ、各指向性における前記無線タグからの返信信号に基づいて対象となる領域内における通信状態の変化を好適に検出することができる。
【0016】
また、好適には、前記通信状態変化検出部により検出される通信状態の変化に基づいて前記領域内への移動体の侵入を検出するものである。このようにすれば、対象となる領域内への不審者等の移動物の侵入を検出するセキュリティシステムを実現することができる。
【0017】
また、好適には、前記通信状態変化検出部により検出される通信状態の変化に基づいて前記領域内における移動体の移動を検出するものである。このようにすれば、対象となる領域内における不審者等の移動物の移動を検出するセキュリティシステムを実現することができる。
【0018】
また、前記第2発明によれば、前記第1発明の無線タグ通信装置を用いて所定の領域内に配設された無線タグとの間で情報の通信を行うことによりその領域内における通信状態の変化を検出することを特徴とするものであることから、電波遮蔽物或いは電波反射物としての移動体の移動による前記無線タグとの間の通信の阻害やマルチパスの形成等を観察することで、前記領域内における移動体の移動を簡便に検出することができる。すなわち、簡単な構成により実用的なセキュリティシステムを実現する無線タグ通信システムを提供することができる。
【0019】
ここで、前記第2発明は、好適には、複数の前記無線タグ通信装置を備え、それら複数の無線タグ通信装置により前記領域内における通信状態の変化を検出するものである。このようにすれば、複数の無線タグ通信装置を用いて前記領域内における移動体の移動を更に好適に検出することができる。
【0020】
また、好適には、前記複数の無線タグ通信装置は、それぞれ交互に前記無線タグとの間で情報の通信を行うものである。このようにすれば、前記複数の無線タグ通信装置による所定の無線タグとの通信のバッティングを好適に防止することができる。
【0021】
また、好適には、前記領域内には、複数の前記無線タグが位置固定に設けられたものである。このようにすれば、前記領域に対する相対位置が固定された複数の無線タグに対応する受信信号をそれぞれ比較することにより実用的な態様でその領域内における通信状態の変化を検出することができる。
【0022】
また、好適には、前記複数の無線タグは、前記無線タグ通信装置に対してそれぞれ異なる方向に設けられたものである。このようにすれば、前記無線タグ通信装置に対する相対方向が固定された複数の無線タグに対応する受信信号をそれぞれ比較することにより実用的な態様で前記領域内における通信状態の変化を検出することができる。
【0023】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0024】
図1は、本第2発明の一実施例である無線タグ通信システム10について説明する図である。この無線タグ通信システム10は、本第1発明の一実施例である単数乃至は複数(図1では単数)の無線タグ通信装置12と、その無線タグ通信装置12の通信対象である単数乃至は複数(図1では単数)の無線タグ14とから構成される所謂RFID(Radio Frequency Identification)システムであり、上記無線タグ通信装置12はそのRFIDシステムの質問器として、上記無線タグ14は応答器としてそれぞれ機能する。すなわち、上記無線タグ通信装置12から質問波Fc(送信信号)が上記無線タグ14に向けて送信されると、その質問波Fcを受信した上記無線タグ14において所定のコマンド(送信データ)によりその質問波Fcが変調され、応答波Fr(返信信号)として上記無線タグ通信装置12に向けて返信されることで、その無線タグ通信装置12と無線タグ14との間で情報の通信が行われる。この無線タグ通信システム10は、後述するように、上記無線タグ通信装置12により所定の領域内に配設された無線タグ14との間で情報の通信を行うことでその領域内おける通信状態の変化を検出し、その変化に応じて斯かる領域内における移動体の移動を検出するセキュリティシステムを構成する。
【0025】
図2は、上記無線タグ通信装置12の構成を説明する図である。この図2に示すように、本実施例の無線タグ通信装置12は、送信データをディジタル信号として出力したり、上記無線タグ14からの返信信号を復調する等のディジタル信号処理を実行するDSP(Digital Signal Processor)16と、上記送信信号の搬送波の発振出力を行う搬送波発振部18と、その搬送波発振部18から出力される搬送波に上記DSP16から供給される送信データを乗せて出力する送信掛算部20と、その送信掛算部20から出力される信号を質問波Fcとして送信すると共に、その送信信号に応じて上記無線タグ14から返信される応答波Frを受信するために上記無線タグ通信装置12の装置本体に位置固定に設けられた複数(図2では3つ)のアンテナ素子22a、22b、22c(以下、特に区別しない場合には単にアンテナ素子22と称する)を有する送受信共用のアレイアンテナ24と、上記各アンテナ素子22に対応して上記送信掛算部20から出力される送信信号の位相を制御して出力すると共に、各アンテナ素子22により受信された受信信号の位相を制御して出力するPAA(Phased Array Antenna)処理部26と、そのPAA処理部26から出力される位相制御された送信信号を各アンテナ素子22へ供給すると共に、各アンテナ素子22により受信された受信信号をそのPAA処理部26へ供給する複数(図2では3つ)の送受信分離部28a、28b、28c(以下、特に区別しない場合には単に送受信分離部28と称する)と、所定の局所信号を発振する局部発振器30と、上記PAA処理部26から出力される位相制御された各アンテナ素子22に対応する受信信号に上記局部発振器30から出力される局所信号を掛け合わせて上記DSP16へ供給する複数(図2では3つ)の受信掛算部32a、32b、32c(以下、特に区別しない場合には単に受信掛算部32と称する)とを、備えて構成されている。なお、上記搬送波発振部18から出力される搬送波の強度は、上記DSP16から供給される制御指令により制御され得るように構成されている。また、上記送受信分離部28としては、よく知られたサーキュレータ等が好適に用いられる。
【0026】
上記PAA処理部26は、各アンテナ素子22に対応して上記送信掛算部20から出力される送信信号の位相を制御する複数(図2では3つ)の送信移相部34a、34b、34c(以下、特に区別しない場合には単に送信移相部34と称する)と、各送信移相部34から出力される送信信号を増幅して対応する送受信分離部28へ供給する複数(図2では3つ)の送信増幅部36a、36b、36c(以下、特に区別しない場合には単に送信増幅部36と称する)と、各アンテナ素子22により受信され送受信分離部36を介して供給される受信信号の位相を制御する複数(図2では3つ)の受信移相部38a、38b、38c(以下、特に区別しない場合には単に受信移相部38と称する)と、各受信移相部38から出力される受信信号を増幅して対応する受信掛算部32へ供給する複数(図2では3つ)の受信増幅部40a、40b、40c(以下、特に区別しない場合には単に受信増幅部40と称する)とを、備えて構成されている。また、各送信移相部34及び受信移相部38における移相量は、後述する指向性制御部54から供給される制御指令により制御され得るように構成されている。
【0027】
前記DSP16は、中央演算処理装置であるCPU、読出専用メモリであるROM、及び随時書込読出メモリであるRAM等を備え、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う所謂マイクロコンピュータであり、前記無線タグ14との間の通信に関する種々の制御に加え、後述するように、本実施例の無線タグ通信システム10によりセキュリティシステムを実現するための制御を行う。斯かる制御を行うために、搬送波強度制御部50、送信データ生成部52、指向性制御部54、受信信号合成部60、受信信号復調部62、受信信号強度検出部64、通信状態変化検出部66、及び不審移動体検出部68を機能的に備えている。また、情報を記憶し得るRAMやハードディスク等の記憶部70を備えている。
【0028】
上記搬送波強度制御部50は、前記搬送波発振部18により発生させられる搬送波の強度を制御する。また、上記送信データ生成部52は、前記無線タグ14への送信データを生成して前記送信掛算部20へ供給する。この送信データとは、例えば所定のコマンドビット列等であり、前記送信掛算部20は、この送信データ生成部52から供給される送信データを前記搬送波発振部18から供給される搬送波に乗せて出力させる。そのようにして出力された信号は、前記PAA処理部26及び送受信分離部28等を介して前記アレイアンテナ24から送信信号として送信される。
【0029】
前記指向性制御部54は、前記PAA処理部26を介して前記アレイアンテナ24による前記無線タグ14との間の通信指向性を制御する。斯かる制御を行うために、送信指向性制御部56及び受信指向性制御部58を備えている。この送信指向性制御部56は、前記PAA処理部26における各送信移相部34における移相量を制御することで、送信アンテナとしての前記アレイアンテナ24の送信指向性を制御する。また、上記受信指向性制御部58は、前記PAA処理部26における各受信移相部38における移相量を制御することで、受信アンテナとしての前記アレイアンテナ24の受信指向性を制御する。斯かる制御が行われることで、指向性方向に対応するメインローブ方向にビームが向けられる。なお、前記指向性制御部54は、好適には、各指向性方向におけるビームにおけるビーム幅の広狭を種々に制御し得るものであり、通信態様に応じてそのビーム幅を種々に変化させる。
【0030】
前記受信信号合成部60は、前記複数のアンテナ素子22によりそれぞれ受信された受信信号を合成(加算)する。また、前記受信信号復調部62は、その受信信号合成部60により合成された受信信号を復調する。好適には、AM方式により受信信号をAM復調した後、その復調信号をFM復号することで前記無線タグ14による変調に関する情報信号を読み出す。
【0031】
前記受信信号強度検出部64は、受信アンテナとしての前記アレイアンテナ24により受信された受信信号の信号強度すなわち前記受信信号合成部60により合成された受信信号の信号強度を検出する。好適には、前記指向性制御部54により定められる各指向性に対応して斯かる受信信号の信号強度を検出し、その指向性及び信号強度を相互に関連づけて前記記憶部70に記憶する。
【0032】
前記通信状態変化検出部66は、前記指向性制御部54により定められる各指向性における前記無線タグ14からの返信信号に基づいて所定の領域内における通信状態の変化を検出する。また、前記不審移動体検出部68は、前記通信状態変化検出部66により検出される通信状態の変化に基づいて所定の領域内における不審移動体を検出する。これら通信状態変化検出部66及び不審移動体検出部68による制御の詳細については、図4乃至図7等を用いて後述する。
【0033】
図3は、前記無線タグ14に備えられた無線タグ回路素子72の構成を説明する図である。この図3に示すように、上記無線タグ回路素子72は、前記無線タグ通信装置12との間で信号の送受信を行うためのアンテナ部74と、そのアンテナ部74により受信された信号を処理するためのIC回路部76とを、備えて構成されている。そのIC回路部76は、上記アンテナ部74により受信された前記無線タグ通信装置12からの質問波Fcを整流する整流部78と、その整流部78により整流された質問波Fcのエネルギを蓄積するための電源部80と、上記アンテナ部74により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部88に供給するクロック抽出部82と、所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部84と、上記アンテナ部74に接続されて信号の変調及び復調を行う変復調部86と、上記整流部78、クロック抽出部82、及び変復調部86等を介して上記無線タグ回路素子72の作動を制御するための制御部88とを、機能的に含んでいる。この制御部88は、前記無線タグ通信装置12と通信を行うことにより上記メモリ部84に上記所定の情報を記憶する制御や、上記アンテナ部74により受信された質問波Fcを上記変復調部86において上記メモリ部84に記憶された情報信号に基づいて変調したうえで応答波Frとして上記アンテナ部74から反射返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0034】
図4は、本実施例の無線タグ通信システム10を利用したセキュリティシステムを説明する図であり、図5は、図4の無線タグ通信装置12において通信指向性を変化させていった場合の各指向性方向に対応する受信信号の信号強度分布を示すグラフである。図4に示すように、前記無線タグ通信システム10は、所定の領域例えば室90内に配設された無線タグ14との間で情報の通信を行うものであり、その無線タグ通信装置10に備えられた無線タグ通信装置12及び無線タグ14は、好適には、上記室90に対して位地固定に設けられている。このように構成された無線タグ通信システム10において、前記指向性制御部54により前記無線タグ通信装置12と無線タグ14との間の通信の指向性方向を変化させていった場合、各指向性方向に対応する受信信号の信号強度分布は、例えば図5に実線で示すようなものになる。この信号強度分布に関して、角度0°付近におけるピークは、反射によらず前記無線タグ14に到達する送信信号すなわち直接波による通信に対応するものであり、角度±70°付近におけるピークは、上記室90の壁部92において反射された反射波(図4を参照)による通信に対応するものである。
【0035】
ここで、図4に示すように、上記室90内に電波を反射し得る移動体94a、94b(以下、特に区別しない場合には単に移動体94と称する)が存在する場合を考えると、その移動体94aの反射により前記無線タグ通信装置12から無線タグ14への新たな電波伝達経路(マルチパス)が形成され、受信信号の信号強度分布に、図5に一点鎖線で示すような新たなピークが出現する。また、上記移動体94bにより前記室90の一方の壁部92での反射による電波の伝達が遮られ、図5に破線で示すように、その電波伝達経路に対応するピークが消失する。このように、上記室90内において移動体94の移動があった場合、その室90内における前記無線タグ通信装置12と無線タグ14との間の通信状態に変化が生じ、その変化は例えば上述のように受信信号の信号強度分布に反映される。前記通信状態変化検出部66は、好適には、前記受信信号強度検出部64により検出される受信信号の信号強度、更に好適には、その信号強度の平均値に基づいて所定の領域すなわち上記室90内における通信状態の変化を検出する。すなわち、前記受信信号強度検出部64により検出される受信信号の信号強度分布と、その受信信号強度検出部64により前回検出されて前記記憶部70に記憶された受信信号の信号強度分布とを、比較することにより上記室90内における通信状態の変化を検出する。そして、前記不審移動体検出部68は、その通信状態変化検出部66により検出された通信状態の変化に基づいて上記室90内における移動体94の移動を検出する。そのようにして、本実施例の無線タグ通信システム10により上記室90内における簡便なセキュリティシステムを実現することができる。
【0036】
また、前記通信状態変化検出部64は、好適には、前記搬送波強度制御部50により強度が変化させられる各搬送波に応じて前記無線タグ14から返信される返信信号を比較することにより前記室90内における通信状態の変化を検出する。前記送信信号の伝達可能距離は基本的には搬送波の強度によって決まることから、その搬送波の強度を変化させることで伝達可能距離の異なる複数種類の送信信号を送信することができる。そのように強度の異なる送信信号に応じた受信信号をそれぞれ比較することで、対象となる領域すなわち前記室90内における通信状態の変化の検出の分解能を向上させることができ、更に好適にその室90内における移動体94の移動を検出することができる。
【0037】
図6は、本実施例の無線タグ通信システム10を利用したセキュリティシステムの他の一例を説明する図である。この図6に示す無線タグ通信システム10は、前記無線タグ通信装置12に対してそれぞれ異なる方向(無線タグ通信装置12から見てそれぞれ異なる角度方向)に配置された複数(図6では3つ)の無線タグ14a、14b、14c(それぞれの構成は前述した無線タグ14と等価であり、以下、特に区別しない場合には単に無線タグ14と称する)を備え、それら複数の無線タグ14との間の通信を利用してセキュリティシステムを実現するものである。斯かる構成において、前記通信状態変化検出部66は、それら複数の無線タグ14からの返信信号に基づいて前記室90内における通信状態の変化を検出する。例えば、それら複数の無線タグ14を認識(識別)するための通信を行い、認識の可否に基づいて通信状態の変化を検出する。図7は、図6の無線タグ通信システム10による複数の無線タグ14の認識結果を例示する表である。この図7に示す例では、時点t1においてTagA(無線タグ14a)、TagB(無線タグ14b)、TagC(無線タグ14c)共に認識できていたものが、時点t2においてはTagCを認識することができなくなっている。これは、図6に示すように、前記無線タグ通信装置12と無線タグ14cとの間の電波伝達経路に移動体94が位置することで電波の伝達が阻害されたためであり、このように、複数の無線タグ14との間で情報の通信を行い、それら無線タグ14の認識の可否を比較することによっても、前記室90内における移動体94の移動を好適に検出することができる。
【0038】
図8は、本実施例の無線タグ通信システム10を利用したセキュリティシステムの更に別の一例を説明する図である。この図8に示す無線タグ通信システム10は、複数(図8では2つ)の無線タグ通信装置12a、12b(それぞれの構成は前述した無線タグ通信装置12と等価であり、以下、特に区別しない場合には単に無線タグ通信装置12と称する)と、複数の無線タグ14a、14b、14cとを、備え、それら複数の無線タグ14との間の通信を利用してセキュリティシステムを実現するものである。斯かる構成では、上記複数の無線タグ通信装置12により前記室90内における通信状態の変化を検出する。ここで、好適には、上記複数の無線タグ通信装置12は、通信のバッティングを防止するために、それぞれ交互に前記無線タグ14との間で情報の通信を行う。すなわち、先ず、上記無線タグ通信装置12aにより前記無線タグ14a、14b、14cとの間で通信を行い、斯かる通信が完了した後、上記無線タグ通信装置12bによりそれら無線タグ14a、14b、14cとの間で通信を行う。また、図9に示すように、複数の無線タグ通信装置12a、12bと、単数の無線タグ14とを備えて構成された無線タグ通信システム10においても、同様にそれら複数の無線タグ通信装置12により交互に前記無線タグ14との間で情報の通信を行うのが好ましい。このように、複数の無線タグ通信装置12により通信を行うことで、対象となる領域すなわち前記室90内における通信状態の変化の検出の分解能を向上させることができ、更に好適にその室90内における移動体94の移動を検出することができる。
【0039】
図10は、本実施例の無線タグ通信システム10を利用したセキュリティシステムの更に別の一例を説明する図である。この図10に示す無線タグ通信システム10では、前記室90の出入口96付近に複数(図10では2つ)の無線タグ14a、14bが設けられており、前記無線タグ通信装置12は、それら複数の無線タグ14との間で通信を行い、前記通信状態変化検出部66により検出される通信状態の変化に基づいて前記室90内への移動体94の侵入を検出する。すなわち、前記室90内へ移動体94が侵入する場合、その移動体94が出入口96を通過することでその出入口96付近の通信環境が変化し、前記無線タグ通信装置12と無線タグ14a、14bとの間の通信状態に変化が生じる。前記無線タグ通信装置12は、斯かる通信状態の変化を前記通信状態変化検出部66により検出することで、前記室90の出入口96近傍における移動体94の移動すなわちその室90への移動体94の侵入を検出することができる。
【0040】
図11は、前記無線タグ通信装置12のDSP16による不審移動体検出制御の一例の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
【0041】
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、時刻tNが初期値であるt1とされる。次に、S2において、前記無線タグ14との間の通信の指向性方向を示す指向性角度AYが初期値であるA1とされる。次に、S3において、前記無線タグ14との間で通信が行われ、その無線タグ14に記憶された情報が読み出される。次に、前記受信信号強度検出部64の動作に対応するS4において、複数の無線タグ14(タグG1〜GX)からの返信信号に対応する受信信号の信号強度が検出され、指向性角度AYと関連づけられて前記記憶部70に記憶される。次に、S5において、前記指向性角度AYがAY+1とされる。次に、S6において、その時点における指向性角度AYが所定値Amaxであるか否かが判断される。このS6の判断が否定される場合には、S3以下の処理が再び実行されるが、S6の判断が肯定される場合には、S7において、時刻tNがtN+1とされる。次に、S8において、その時点における時刻tNが所定値tcheであるか否かが判断される。このS8の判断が否定される場合には、S2以下の処理が再び実行されるが、S8の判断が肯定される場合には、S9において、時刻tNまでの全受信強度分布Sが前記記憶部70から読み出される。なお、この受信強度分布Sは時刻tN、指向性角度AY、及びタグGXの関数である。次に、S10において、2つの異なる時刻tNにおける受信強度分布S1(GX,AY)及びS2(GX,AY)が選択される。次に、S11において、S10にて選択された2つの受信強度分布S1及びS2が等しいか否かが判断される。このS10の判断が肯定される場合には、S12において、前記室90内における異常なしと判定された後、本ルーチンが終了させられるが、S11の判断が否定される場合には、S13において、前記室90内における移動体94の移動やその室90への移動体94の侵入が検知される。次に、S14において、警報やカメラ記録等の動作が開始された後、本ルーチンが終了させられる。以上の処理において、S2及びS5が前記指向性制御部54の動作に、S9乃至S11が通信状態変化検出部66の動作に、S12及びS13が前記不審移動体検出部68の動作にそれぞれ対応する。
【0042】
なお、上述した図11に示す制御において、S10での受信強度分布S1(GX,AY)及びS2(GX,AY)の選択の態様としては、例えば、その時刻tNにおける受信信号強度を直前の時刻tN-1における受信強度分布と比較するための選択態様、すなわちS1としてS(GX,AY,tN-1)を、S2としてS(GX,AY,tN)を選択する態様が考えられる。また、ある一定時間内における受信強度分布の平均と比較するための選択態様、すなわちS1としてS(GX,AY,tM)乃至S(GX,AY,tN-1)の平均値を、S2としてS(GX,AY,tN)を選択する態様が考えられる。ここで、tMはt1からtN-2の中の任意の時刻である。
【0043】
図12は、前記無線タグ通信装置12のDSP16による不審移動体検出制御の他の一例の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。なお、この図12に示す制御において、前述した図11に示す制御と同一のステップについては共通の符号を付してその説明を省略する。この制御では、前述したS1の処理に続いて、S15において、アンテナ出力すなわち前記アレイアンテナ24から送信される送信信号の強度PZが初期値であるP1とされた後、S2以下の処理が実行される。また、前述したS6の判断が肯定される場合には、S16において、前記送信信号の強度PZがPZ+1とされる。次に、S17において、その時点における送信信号の強度PZが所定値Pmaxであるか否かが判断される。このS17の判断が否定される場合には、前述したS2以下の処理が実行されるが、S17の判断が肯定される場合には、前述したS7以下の処理が実行される。なお、この図12の制御における受信強度分布Sは、送信信号の強度PZ、時刻tN、指向性角度AY、及びタグGXの関数である。また、以上の処理において、S15及びS16が前記搬送波強度制御部50の動作に対応する。
【0044】
図13は、前記無線タグ通信装置12のDSP16による不審移動体検出制御の更に別の一例の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。なお、この図13に示す制御において、前述した図11及び図12に示す制御と同一のステップについては共通の符号を付してその説明を省略する。この制御では、上述したS15の処理に続いて、S18において、リーダRiすなわち複数の無線タグ通信装置12のうち符号Riで識別される所定の無線タグ通信装置12における前記無線タグ14との間の通信の指向性角度AYが初期値であるA1とされる。次に、S19において、リーダR1〜Riすなわち複数の無線タグ通信装置12による前記無線タグ14との間の通信が行われ、その無線タグ14に記憶された情報が読み出される。ここで、好適には、通信のバッティングが発生しないようにリーダR1〜Riが順次対象となる無線タグ14との間で通信を行う。次に、前記受信信号強度検出部64の動作に対応するS20において、リーダR1〜Riそれぞれにおいて複数の無線タグ14(タグG1〜GX)からの返信信号に対応する受信信号の信号強度が検出され、指向性角度AYと関連づけられて前記記憶部70に記憶された後、前述したS5以下の処理が実行される。また、前述したS9の処理に続いて、S21において、リーダRiに関して2つの異なる時刻tNにおける受信強度分布S1i(GX,AYi,PZ)及びS2i(GX,AYi,PZ)が選択された後、前述したS11以下の処理が実行される。
【0045】
このように、本実施例によれば、前記無線タグ14との間の通信の指向性を制御する指向性制御部54(S2及びS5)と、その指向性制御部54により定められる各指向性における前記無線タグ14からの返信信号に基づいて所定の領域内における通信状態の変化を検出する通信状態変化検出部66(S9乃至S11)とを、備えたものであることから、電波遮蔽物或いは電波反射物としての移動体94の移動による前記無線タグ14との間の通信の阻害やマルチパスの形成等を観察することで、所定の領域すなわち前記室90内における移動体94の移動を簡便に検出することができる。すなわち、簡単な構成により実用的なセキュリティシステムを実現する無線タグ通信装置12を提供することができる。
【0046】
また、受信アンテナとしての前記アレイアンテナ24により受信された受信信号の信号強度を検出する受信信号強度検出部64(S4及びS20)を備え、前記通信状態変化検出部66は、その受信信号強度検出部64により検出される受信信号の信号強度に基づいて前記室90内における通信状態の変化を検出するものであるため、実用的な態様で対象となる領域内における通信状態の変化を検出することができる。
【0047】
また、前記通信状態変化検出部66は、前記受信信号強度検出部64により検出される受信信号の信号強度の平均値に基づいて前記室90内における通信状態の変化を検出するものであるため、受信信号の信号強度の平均値との比較により、受信信号強度の検出ばらつきや前記室90内の定常的な環境変化による受信信号強度のゆらぎを吸収でき、実用的な態様で対象となる領域内における通信状態の変化を検出することができる。
【0048】
また、前記通信状態変化検出部66は、前記受信信号強度検出部64により検出される受信信号の信号強度と、その受信信号強度検出部64により前回検出された受信信号の信号強度とを、比較することにより前記室90内における通信状態の変化を検出するものであるため、前回の受信信号の信号強度との比較により実用的な態様で対象となる領域内における通信状態の変化を検出することができる。
【0049】
また、前記送信信号の搬送波の強度を制御する搬送波強度制御部50(S15及びS16)を備え、前記通信状態変化検出部66は、その搬送波強度制御部50により強度が変化させられる各搬送波に応じて前記無線タグ14から返信される返信信号を比較することにより前記室90内における通信状態の変化を検出するものであるため、強度の異なる送信信号に応じた受信信号をそれぞれ比較することにより対象となる領域内における通信状態の変化の検出の分解能を向上させることができる。
【0050】
また、前記無線タグ通信装置12は、複数の前記無線タグ14との間で情報の通信を行うものであり、前記通信状態変化検出部66は、それら複数の無線タグ14からの返信信号に基づいて前記室90内における通信状態の変化を検出するものであるため、通信を行う無線タグ14の数を増やすことで検出の対象となる領域を拡大することができる。
【0051】
また、送信アンテナ及び受信アンテナとして機能する複数のアンテナ素子22を有するアレイアンテナ24を備え、前記指向性制御部54は、前記送信信号の送信指向性及び受信信号の受信指向性のうち少なくとも一方を制御するものであるため、実用的な態様で前記無線タグ14との間の通信の指向性を制御することができ、各指向性における前記無線タグ14からの返信信号に基づいて対象となる領域内における通信状態の変化を好適に検出することができる。
【0052】
また、前記通信状態変化検出部66により検出される通信状態の変化に基づいて前記室90内への移動体94の侵入を検出するものであるため、対象となる領域内への不審者等の移動物の侵入を検出するセキュリティシステムを実現することができる。
【0053】
また、前記通信状態変化検出部66により検出される通信状態の変化に基づいて前記室90内における移動体94の移動を検出するものであるため、対象となる領域内における不審者等の移動物の移動を検出するセキュリティシステムを実現することができる。
【0054】
また、前記無線タグ通信装置12を用いて所定の領域すなわち前記室90内に配設された無線タグ14との間で情報の通信を行うことによりその室90内における通信状態の変化を検出する無線タグ通信システム10により、電波遮蔽物或いは電波反射物としての移動体94の移動による前記無線タグ14との間の通信の阻害やマルチパスの形成等を観察することで、前記室90内における移動体94の移動を簡便に検出することができる。すなわち、簡単な構成により実用的なセキュリティシステムを実現する無線タグ通信システム10を提供することができる。
【0055】
また、複数の前記無線タグ通信装置12を備え、それら複数の無線タグ通信装置12により前記室90内における通信状態の変化を検出するものであるため、複数の無線タグ通信装置12を用いて前記室90内における移動体94の移動を更に好適に検出することができる。
【0056】
また、前記複数の無線タグ通信装置12は、それぞれ交互に前記無線タグ14との間で情報の通信を行うものであるため、前記複数の無線タグ通信装置12による所定の無線タグ14との通信のバッティングを好適に防止することができる。
【0057】
また、前記室90内には、複数の前記無線タグ14が位置固定に設けられたものであるため、前記室90に対する相対位置が固定された複数の無線タグ14に対応する受信信号をそれぞれ比較することにより実用的な態様でその室90内における通信状態の変化を検出することができる。
【0058】
また、前記複数の無線タグ14は、前記無線タグ通信装置12に対してそれぞれ異なる方向に設けられたものであるため、その無線タグ通信装置12に対する相対方向が固定された複数の無線タグ14に対応する受信信号をそれぞれ比較することにより実用的な態様で前記室90内における通信状態の変化を検出することができる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0060】
例えば、前述の実施例において、前記無線タグ通信装置12は、前記指向性制御部54により前記送信信号の送信指向性及び受信信号の受信指向性を制御するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記送信信号の送信指向性及び受信信号の受信指向性のうち少なくとも一方を制御するものであればよく、必ずしもその両方を制御し得るものでなくともよい。
【0061】
また、前述の実施例において、前記搬送波強度制御部50、指向性制御部54、受信信号強度検出部64、及び通信状態変化検出部66等の制御機能は、何れも前記DSP16に機能的に備えられたものであったが、それら制御機能のうち一部乃至は全部が個別の制御装置として備えられたものであってもよい。また、それら制御機能による制御は、ディジタル信号処理であるとアナログ信号処理であるとを問わない。
【0062】
また、前述の実施例において、前記室90内に備えられた複数の無線タグ通信装置12は、それぞれ交互に前記無線タグ14との間で情報の通信を行うものであったが、各無線タグ通信装置12における通信指向性を適宜制御する等して通信のバッティングを防止できるのであれば、必ずしも交互に通信を行うものでなくともよく、それら複数の無線タグ通信装置12が同期して送信信号を送信するものであっても構わない。
【0063】
また、前述の実施例では特に言及していないが、前記不審移動体検出部68により不審な移動体94が検出された場合に、前記室90内の映像を撮像して表示させる構成や警報を鳴らす構成、或いは所定の回線を介して警備会社への通報を行う構成等が設けられてもよいことは言うまでもない。
【0064】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本第2発明の一実施例である無線タグ通信システムについて説明する図である。
【図2】本第1発明の一実施例である無線タグ通信装置の構成を説明する図である。
【図3】図1の無線タグに備えられた無線タグ回路素子の構成を説明する図である。
【図4】図1の無線タグ通信システムを利用したセキュリティシステムを説明する図である。
【図5】図4の無線タグ通信システムに備えられた無線タグ通信装置において通信指向性を変化させていった場合の各指向性方向に対応する受信信号の信号強度分布を示すグラフである。
【図6】図1の無線タグ通信システムを利用したセキュリティシステムの他の一例を説明する図である。
【図7】図6の無線タグ通信システムに備えられた無線タグ通信装置による複数の無線タグの認識結果を例示する表である。
【図8】図1の無線タグ通信システムを利用したセキュリティシステムの更に別の一例を説明する図である。
【図9】図1の無線タグ通信システムを利用したセキュリティシステムの更に別の一例を説明する図である。
【図10】図1の無線タグ通信システムを利用したセキュリティシステムの更に別の一例を説明する図である。
【図11】図2の無線タグ通信装置のDSPによる不審移動体検出制御の一例の要部を説明するフローチャートである。
【図12】図2の無線タグ通信装置のDSPによる不審移動体検出制御の他の一例の要部を説明するフローチャートである。
【図13】図2の無線タグ通信装置のDSPによる不審移動体検出制御の更に別の一例の要部を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
10:無線タグ通信システム
12:無線タグ通信装置
14:無線タグ
22:アンテナ素子
24:アレイアンテナ(送信アンテナ、受信アンテナ)
50:搬送波強度制御部
54:指向性制御部
64:受信信号強度検出部
66:通信状態変化検出部
90:室(領域)
94:移動体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグに向けて送信アンテナから送信信号を送信すると共に、該送信信号に応じて前記無線タグから返信される返信信号を受信アンテナにより受信することで該無線タグとの間で情報の通信を行う無線タグ通信装置であって、
前記無線タグとの間の通信の指向性を制御する指向性制御部と、
該指向性制御部により定められる各指向性における前記無線タグからの返信信号に基づいて所定の領域内における通信状態の変化を検出する通信状態変化検出部と
を、備えたものであることを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項2】
前記受信アンテナにより受信された受信信号の信号強度を検出する受信信号強度検出部を備え、前記通信状態変化検出部は、該受信信号強度検出部により検出される受信信号の信号強度に基づいて前記領域内における通信状態の変化を検出するものである請求項1の無線タグ通信装置。
【請求項3】
前記通信状態変化検出部は、前記受信信号強度検出部により検出される受信信号の信号強度の平均値に基づいて前記領域内における通信状態の変化を検出するものである請求項2の無線タグ通信装置。
【請求項4】
前記通信状態変化検出部は、前記受信信号強度検出部により検出される受信信号の信号強度と、該受信信号強度検出部により前回検出された受信信号の信号強度とを、比較することにより前記領域内における通信状態の変化を検出するものである請求項2の無線タグ通信装置。
【請求項5】
前記送信信号の搬送波の強度を制御する搬送波強度制御部を備え、前記通信状態変化検出部は、該搬送波強度制御部により強度が変化させられる各搬送波に応じて前記無線タグから返信される返信信号を比較することにより前記領域内における通信状態の変化を検出するものである請求項1から4の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項6】
前記無線タグ通信装置は、複数の前記無線タグとの間で情報の通信を行うものであり、前記通信状態変化検出部は、それら複数の無線タグからの返信信号に基づいて前記領域内における通信状態の変化を検出するものである請求項1から5の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項7】
前記送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方は複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナであり、前記指向性制御部は、前記送信信号の送信指向性及び受信信号の受信指向性のうち少なくとも一方を制御するものである請求項1から6の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項8】
前記通信状態変化検出部により検出される通信状態の変化に基づいて前記領域内への移動体の侵入を検出するものである請求項1から7の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項9】
前記通信状態変化検出部により検出される通信状態の変化に基づいて前記領域内における移動体の移動を検出するものである請求項1から7の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項10】
請求項1から9の何れかの無線タグ通信装置を用いて所定の領域内に配設された無線タグとの間で情報の通信を行うことにより該領域内おける通信状態の変化を検出することを特徴とする無線タグ通信システム。
【請求項11】
複数の前記無線タグ通信装置を備え、それら複数の無線タグ通信装置により前記領域内における通信状態の変化を検出するものである請求項10の無線タグ通信システム。
【請求項12】
前記複数の無線タグ通信装置は、それぞれ交互に前記無線タグとの間で情報の通信を行うものである請求項11の無線タグ通信システム。
【請求項13】
前記領域内には、複数の前記無線タグが位置固定に設けられたものである請求項10から12の何れかの無線タグ通信システム。
【請求項14】
前記複数の無線タグは、前記無線タグ通信装置に対してそれぞれ異なる方向に設けられたものである請求項13の無線タグ通信システム。
【請求項1】
無線タグに向けて送信アンテナから送信信号を送信すると共に、該送信信号に応じて前記無線タグから返信される返信信号を受信アンテナにより受信することで該無線タグとの間で情報の通信を行う無線タグ通信装置であって、
前記無線タグとの間の通信の指向性を制御する指向性制御部と、
該指向性制御部により定められる各指向性における前記無線タグからの返信信号に基づいて所定の領域内における通信状態の変化を検出する通信状態変化検出部と
を、備えたものであることを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項2】
前記受信アンテナにより受信された受信信号の信号強度を検出する受信信号強度検出部を備え、前記通信状態変化検出部は、該受信信号強度検出部により検出される受信信号の信号強度に基づいて前記領域内における通信状態の変化を検出するものである請求項1の無線タグ通信装置。
【請求項3】
前記通信状態変化検出部は、前記受信信号強度検出部により検出される受信信号の信号強度の平均値に基づいて前記領域内における通信状態の変化を検出するものである請求項2の無線タグ通信装置。
【請求項4】
前記通信状態変化検出部は、前記受信信号強度検出部により検出される受信信号の信号強度と、該受信信号強度検出部により前回検出された受信信号の信号強度とを、比較することにより前記領域内における通信状態の変化を検出するものである請求項2の無線タグ通信装置。
【請求項5】
前記送信信号の搬送波の強度を制御する搬送波強度制御部を備え、前記通信状態変化検出部は、該搬送波強度制御部により強度が変化させられる各搬送波に応じて前記無線タグから返信される返信信号を比較することにより前記領域内における通信状態の変化を検出するものである請求項1から4の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項6】
前記無線タグ通信装置は、複数の前記無線タグとの間で情報の通信を行うものであり、前記通信状態変化検出部は、それら複数の無線タグからの返信信号に基づいて前記領域内における通信状態の変化を検出するものである請求項1から5の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項7】
前記送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方は複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナであり、前記指向性制御部は、前記送信信号の送信指向性及び受信信号の受信指向性のうち少なくとも一方を制御するものである請求項1から6の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項8】
前記通信状態変化検出部により検出される通信状態の変化に基づいて前記領域内への移動体の侵入を検出するものである請求項1から7の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項9】
前記通信状態変化検出部により検出される通信状態の変化に基づいて前記領域内における移動体の移動を検出するものである請求項1から7の何れかの無線タグ通信装置。
【請求項10】
請求項1から9の何れかの無線タグ通信装置を用いて所定の領域内に配設された無線タグとの間で情報の通信を行うことにより該領域内おける通信状態の変化を検出することを特徴とする無線タグ通信システム。
【請求項11】
複数の前記無線タグ通信装置を備え、それら複数の無線タグ通信装置により前記領域内における通信状態の変化を検出するものである請求項10の無線タグ通信システム。
【請求項12】
前記複数の無線タグ通信装置は、それぞれ交互に前記無線タグとの間で情報の通信を行うものである請求項11の無線タグ通信システム。
【請求項13】
前記領域内には、複数の前記無線タグが位置固定に設けられたものである請求項10から12の何れかの無線タグ通信システム。
【請求項14】
前記複数の無線タグは、前記無線タグ通信装置に対してそれぞれ異なる方向に設けられたものである請求項13の無線タグ通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−164379(P2008−164379A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353009(P2006−353009)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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