説明

無線テレメータシステム

【課題】中継機を複数段に渡って追加することで、従来電波状況が悪く設置できなかったような場所でも設置可能にし、広範囲のエリアを親機1台で管理することができる無線テレメータシステムを提供する。
【解決手段】無線テレメータシステムを構成する無線親機12及び無線中継機13(13a,13b・・13n)は、各々配下に無線接続された全ての無線中継機及び無線子機14(14a,14b,14c)の無線接続情報を管理する手段を有し、無線接続情報から各々の配下機器の接続経路を探索する機能を有する。この機能により、システムの全体構造がツリー構造で管理することができ、妨害電波などにより通信障害が発生する場合など、どのエリアで通信障害が発生し易いのかを特定し易くなる。また、無線段数の算出と、無線通信タイムアウト時間を変更する機能、及び縁組解除があったときの再縁組の機能も備えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線テレメータシステムに関し、特に複数段の無線中継を行う、特定小電力無線のテレメータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス、水道などのメータ検針を行うための網制御装置に、無線通信機能を備えた親機と子機及び1段の無線中継のみ可能な中継機とを接続して、網制御装置とメータ間の通信を無線化した無線テレメータシステムが開発されている。
【0003】
図8は、従来の無線テレメータシステムのシステム構成の概略一例を示すブロック図である。図8において、センター側網制御装置101と端末網制御装置(以下、「無線親機」とする)102と無線中継機(1)103aと無線子機104(104a,104b,104c)とメータ機器105とで構成されている。センター側装置101と端末網制御装置102は、電話網を介して接続され、互いにデータ通信を行う機能を備えている。また、無線親機102と無線中継機(1)103aと無線子機104はそれぞれ無線通信機能を備えており、無線親機102は、無線中継機(1)103a及び無線子機104cと無線通信にて接続され、互いにデータ通信を行う機能を備えている。また、無線中継機(1)103aは、無線通信の上流側の無線親機102と、下流側の無線子機104a,104bと無線通信にて接続され、互いにデータ通信を行う機能を備えている。更に、無線子機104a,104bは、それぞれ無線通信の上流側に1台の無線中継機(1)103aと無線接続され、下流側にメータ機器105と有線接続されており、無線子機104cは、無線通信の上流側に1台の無線親機102と無線接続され、下流側にメータ機器105と有線接続されている。
【0004】
無線テレメータシステムとして、例えば、特許文献1には、親機と子機間の無線の電波強度を測定し、通信環境の良い場所を探し、親機の設置場所を決定する無線テレメータシステムが記載されている。特許文献1に開示されている無線テレメータシステムの手法は、電波状況が最適な場所へ機器を設置しようとするものである。それゆえ、設置場所は電波の状況により制限されるという問題がある。
【特許文献1】特開2006−331149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記に鑑み、中継機を複数段に渡って追加することで、従来電波状況が悪く設置できなかったような場所でも設置可能にし、また、広範囲のエリアを親機1台で管理することができる無線テレメータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
特許請求の範囲の請求項(「請求項」と略す。以下、同様)1に記載の発明は、センター側網制御装置に、通信回線を介して接続されている端末網制御装置と、前記端末網制御装置に有線接続された無線親機と、前記無線親機に無線接続された複数段からなる無線中継機と、前記無線親機または前記無線中継機に無線接続され、かつ各々にマイコンメータが有線接続されている複数の無線子機とを備えた無線テレメータシステムであって、前記無線親機及び前記無線中継機は、各々配下に無線接続された全ての前記無線中継機及び前記無線子機の無線接続情報を管理する手段を有し、前記無線接続情報から各々の配下機器の接続経路を探索する機能を有することを特徴とした無線テレメータシステムである。これにより、システムの全体構造がツリー構造で管理することができ、妨害電波などにより通信障害が発生する場合、どのエリアで通信障害が発生し易いのかを特定し易くなる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記無線中継機及び前記無線子機は、各々、前記配下機器の前記無線接続情報と探索した前記接続経路とによって得られた前記無線親機までの無線接続経路情報を記憶するものである。これにより、前記無線中継機及び前記無線子機から見た、前記無線親機及び上流にある前記無線中継機までに経由している機器の経路情報が分かるため、下流の機器から特定の上流の機器へ電文を送信することができ、下流の機器から上流の機器の操作を行うことができる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記無線親機、前記無線中継機及び前記無線子機は、各々無線通信を行う際にどの機器から発信要求が出されたかを示す情報を付加して送信するものである。これにより、通信相手との無線の中継段数の算出が可能となる。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記無線親機及び前記無線中継機は、各々前記無線接続情報に基づいて通信を行う機器との無線の段数を算出し、前記段数に応じて無線通信タイムアウト時間を変更するものである。これにより、想定される無線の最大中継段数に合わせた固定のタイムアウト値に比べ、必要以上に長いタイムアウトをカウントすることがなくなり、低消費電流化が可能となる。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記無線親機、前記無線中継機及び前期無線子機は、既に自機器と縁組されている前記無線中継機の縁組を解除する場合、自機器に縁組されていた上流の機器と自機器に縁組されていた下流の機器間の再縁組を自動で行うものである。これにより、縁組を解除する機器の配下の機器を再度手動で縁組し直す必要がなくなり、作業を容易にすることができる。
【0011】
請求項6に記載の発明は、前記無線親機は、下流の配下機器との通信において通信エラーが発生した場合のエラーログを保持する機能を有し、前記エラーログと前記配下機器の接続経路から通信障害が発生し易いエリアを特定し、前記センター側網制御装置に通知するものである。これにより前記センター側網制御装置でのエリア特定の必要がなくなり、人為的作業や通信回数を低減することができる。
【0012】
以上の構成により、本発明は、無線親機と無線子機間の無線通信において、複数段の無線中継機を追加することで、1台の親機に対し広範囲に通信エリアを拡大することができ、また、無線の中継段数の増加に合わせ、通信タイムアウト時間を変更することができ、低消費電流化を実現できる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、必要以上の通信タイムアウト時間を待つことによる無駄な消費電流を無くし、端末網制御装置における無線親機と無線子機との無線通信において機器の設置範囲を拡大するとともに無線通信の品質を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の無線テレメータシステムにおける実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の無線テレメータシステムにおける、通信を行うためのシステム構成を示すブロック図である。本発明の無線テレメータシステムは、センター側網制御装置11と端末網制御装置(以下、「無線親機」とする)12と無線中継機13(13a,13b〜13n)と無線子機14(14a,14b,14c)とメータ機器15とで構成されている。センター側装置11と端末網制御装置12は、電話網を介して接続され、互いにデータ通信を行う機能を備えている。また、無線親機12と無線中継機13と無線子機14はそれぞれ無線通信機能を備えており、無線親機12は、無線中継機13及び無線子機14と無線通信にて接続され、互いにデータ通信を行う機能を備えている。また、無線中継機13は、無線通信の上流側に1台の無線親機12又は他の無線中継機13と無線通信にて接続され、下流側に更に他の複数台の無線中継機13又は無線子機14と無線通信にて接続され、互いにデータ通信を行う機能を備えている。更に、無線子機14は、無線通信の上流側に1台の無線親機12又は無線中継機13と無線通信にて接続され、下流側に複数台のメータ機器15と有線接続され、互いにデータ通信を行う機能を備えている。
【0016】
図2は、本発明の無線テレメータシステムにおける、無線縁組情報(以下、「縁組情報」と略す)のメモリ構成を示す構成図である。本無線テレメータシステムの縁組情報に含まれるデータは、自機器のID情報21と、縁組情報管理テーブル22に割り振られているIDに対応する機器と縁組されている上流機器のID情報23とで構成されている。各機器は、同様のメモリ領域を有し、縁組情報を管理する機能を備えている。尚、縁組情報テーブル22は、1台の無線親機12の配下内に存在し得る全ての無線中継機と無線子機のID分のメモリを記録する機能を備えている。
【0017】
図3は、本無線テレメータシステムにおける、無線通信経路情報(以下、「経路情報」と略す。図3中の記載において同じ)の参照手順を示す図である。最初に、上流機器から下流機器までの経路情報を参照する場合について説明する。無線親機12(ID:000)が無線子機14a(ID:201)までの経路情報を参照する場合、まず、無線親機12が持つ縁組情報31から、縁組情報管理テーブル22において経路先である無線子機14aの値、即ち、ID:201に対応する上流機器のID情報23の値(この場合、108)を読み出す。次に、読み出したID情報の値(108)と一致する縁組情報管理テーブル22の値(ID:108)に対応する上流機器のID情報23の値(この場合、107)を読み出す。以下、同様にして、読み出した上流機器のID情報23における値が自機器のID情報21における値(この場合、000)と一致するまで、上記の処理を繰り返す。このとき読み出した縁組情報管理テーブル22のID又は上流機器のID23を積み上げていくことで、無線親機12(ID:000)から無線子機14a(ID:201)までの経路情報33を構築することができる。
【0018】
次に、下流機器から上流機器までの経路情報を参照する場合について説明する。無線子機14b(ID:202)が無線親機12(ID:000)までの経路情報を参照する場合、まず、経路先である無線親機12に該当するID値(ID:000)を、無線子機14bが持つ縁組情報32の上流機器のID情報23から検索し、発見したIDが記録されているメモリ領域に対応する縁組情報管理テーブル22の値(ID:101)を読み出す。次に、読み出したIDの値(ID:101)と一致するものを上流機器のID情報23から検索する。以下同様にして、読み出した縁組情報管理テーブル22のID値が、自機器のID情報21の中の値と一致するまで処理を繰り返す。このとき読み出した縁組情報管理テーブル22のID又は上流機器のID23を積み上げていくことで、無線親機12(ID:000)までの経路情報34を構築することができる。
【0019】
このようにして、本無線テレメータシステムは、無線通信を行う相手との無線通信経路情報を参照する機能を備えている。また、無線通信経路情報から、無線通信を行う相手との間の無線段数を取得する機能を備えている。
【0020】
図4は、本無線テレメータシステムにおける、無線通信に用いる通信パケット構成を示す構成図である。無線通信に用いる通信パケットは、送信要求元のID41を含んだ構成となっている。送信要求元のID41は通信要求を出した根源の機器のIDであり、複数段から構成される無線通信において、無線通信を行った全ての機器がパケット送信要求を出した根源の機器を特定する機能を備えている。
【0021】
図5は、本無線テレメータシステムにおける、無線通信段数に応じたタイムアウト設定し無線通信を行うフロー図である。無線通信を行う際は、まず、末端の通信相手先までの無線段数を取得し(ステップS1)、取得した無線段数nを記憶しておく(ステップS2)。次に無線1段の場合の通信タイムアウト時間Tを参照し(ステップS3)、ステップS2にて記憶しておいた無線段数nの値と乗算し、通信タイムアウト時間(t)(=n×T)としてタイマカウンタに設定する(ステップS4)。次に無線データ送信が完了(ステップS5)したら、次に受信待ちになるか否か判断し(ステップS6)、受信待ちと判断した場合、ステップ4で設定したタイマカウンタの値(t)を一定周期でデクリメントするために、タイマカウントを開始する(ステップS7)。受信待ちでないと判断した場合、通信処理を終了する。ステップS7でタイマカウントを開始後、タイムアウト(タイマカウンタの値(t)=0)になっているか否かを判断し(ステップS8)、タイムアウトと判断した場合は処理終了する。タイムアウトでないと判断した場合は、データ受信が完了したか否かを判断し(ステップS9)、データ受信完了していないと判断した場合、ステップS8に戻る。データ受信完了したと判断した場合、通信を継続するか否かを判断し(ステップS10)、通信を継続すると判断した場合、ステップS4に戻る。通信を継続しないと判断した場合、通信処理を終了する。
【0022】
図6は、本無線テレメータシステムにおける、中継機13aの縁組を解除した場合の縁組情報の変化を示した図である。既に縁組済みである無線中継機13aの縁組を解除する際、無線中継機13aに縁組されている上流機器(無線親機12)と下流機器(無線中継機13b、無線子機14b)にその旨通知し、受信した機器は更に上流及び下流の機器に同様の通知を行う機能を備えている。通知を受けた機器は、縁組解除される機器(無線中継機13a)のID(ID:101)に該当する縁組情報テーブル22のID部に記憶されている上流機器のID23を読み出し、上流機器のID23中に縁組解除される機器のID(ID:101)と一致するものがあれば、点線62のように、読み出したデータ(今度は無線親機12が上流機器となり、当該無線親機12のID(ID:000))に書き換える機能を備えている。また、前述の書き換え処理が終了したら、点線61のように登録ID(縁組情報管理テーブル22のID(ID:101)に過去に対応していた上流機器のID23(ID:000)を削除する機能を備えている。
【0023】
図7は、本無線テレメータシステムにおける、下流機器からの受信タイムアウトが発生した場合に返信される通信パケットの構成図である。受信タイムアウト時に用いる通信パケットは、エラー情報71を含んだ構成となっている。受信タイムアウトが発生した場合、タイムアウトと判断した機器が、自身のIDを送信要求元のID41に設定し、エラー情報71にタイムアウトである旨を設定し、無線親機12に送信する機能を備えている。また、無線親機12は受信した送信要求元のID41と、受信タイムアウトとなった時に無線親機12が送信するはずだった機器のIDから、通信エラーとなった区間を特定し、ログとして記憶しておく機能と、ログ情報から通信エラーが発生しやすいエリアを特定する機能とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による無線テレメータシステムにおける、通信構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す無線テレメータシステムにおける、無線縁組情報のメモリ構成を示す構成図である。
【図3】図1に示す無線テレメータシステムにおける、無線通信経路情報の参照手順を示す図である。
【図4】本発明の無線テレメータシステムにおける、無線通信に用いる通信パケット構成を示す構成図である。
【図5】本発明の無線テレメータシステムにおける、無線通信段数に応じたタイムアウト設定を行うフロー図である。
【図6】本発明の無線テレメータシステムにおける、一つの中継機の縁組を解除した場合の縁組情報の変化を示した図である。
【図7】本発明の無線テレメータシステムにおける、下流機器からの受信タイムアウトが発生した場合に返信される通信パケットの構成図である。
【図8】従来の無線テレメータシステムにおける、通信構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0025】
11 センター側網制御装置 12 端末網制御装置(無線親機)
13a〜13n 無線中継機 14a,14b,14c 無線子機
15 メータ機器(マイコンメータ)
21 自機器のID 22 縁組情報管理テーブル
23 上流機器のID
31 無線親機が持つ縁組情報 32 無線子機が持つ縁組情報
33,34 経路情報
41 送信要求元のID
61 書換部分 62 削除部分
71 エラー情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センター側網制御装置に通信回線を介して接続されている端末網制御装置と、前記端末網制御装置に有線接続された無線親機と、前記無線親機に無線接続された複数段からなる無線中継機と、前記無線親機又は前記無線中継機に無線接続され且つ各々にマイコンメータが有線接続されている複数の無線子機とを備えた無線テレメータシステムにおいて、
前記無線親機及び前記無線中継機は、各々配下に無線接続された全ての前記無線中継機及び前記無線子機の無線接続情報を管理する手段を有し、前記無線接続情報から各々の配下機器の接続経路を探索する機能を有することを特徴とする無線テレメータシステム。
【請求項2】
前記無線中継機及び前記無線子機は、各々、前記配下機器の前記無線接続情報と探索した前記接続経路とによって得られた前記無線親機までの無線接続経路情報を記憶する機能を有することを特徴とする請求項1に記載の無線テレメータシステム。
【請求項3】
前記無線親機、前記無線中継機及び前記無線子機は、各々無線通信を行う際にどの機器から発信要求が出されたかを示す情報を付加して送信する機能を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の無縁テレメータシステム。
【請求項4】
前記無線親機及び前記無線中継機は、各々前記無線接続情報に基づいて通信を行う機器との無線の段数を算出し、前記段数に応じて無線通信タイムアウト時間を変更する機能を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線テレメータシステム。
【請求項5】
前記無線親機、前記無線中継機及び前期無線子機は、既に自機器と縁組されている前記無線中継機の縁組を解除する場合、自機器に縁組されていた上流の機器と自機器に縁組されていた下流の機器間の再縁組を自動で行う機能を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の無線テレメータシステム。
【請求項6】
前記無線親機は、下流の配下機器との通信において通信エラーが発生した場合のエラーログを保持する機能を有し、前記エラーログと前記配下機器の接続経路から通信障害が発生し易いエリアを特定し、前記センター側網制御装置に通知する機能を有することを特徴とする請求項1に記載の無線テレメータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−11156(P2010−11156A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168942(P2008−168942)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】