説明

無線中継ネットワークにおける干渉除去

本発明によれば、少なくとも一つのリンクを通して複数回に渡って送信される第1組の情報を表わす信号情報が既知の信号情報として保存される。この情報は、ノードにおける既に受信した情報及び/又は検出した情報、固有の送信情報、又はその他の入手可能な関連信号情報とすることができる。第2組の情報を表わす信号情報を受信し、この場合、第1組の情報の送信が第2組の情報の受信に干渉する。干渉が生じるにも拘らず、第2組の情報の少なくとも一部は、受信信号情報と、以前に保存された既知の信号情報の少なくとも一部とを利用することにより無事に検出することができる。情報は、受信信号情報と、既知の情報の関連部分とに基づく干渉除去により検出される。一連の既知の信号情報は、新規に検出される情報を継続的に保存することにより更新することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
技術分野
本発明は概して、通信ネットワークに関し、特に複数のユーザが共通通信媒体を共有するマルチホップ、アドホック、及び多段中継ネットワークのような無線ネットワークに関し、本発明はこのようなネットワークにおける性能向上を目標とする。
【0002】
背景技術
無線媒体を効果的に複数ユーザの間で共有するためのプロトコルは、通常、多重アクセスプロトコル、チャネルアクセス方式、又はメディアアクセス方式と呼ばれる。無線媒体を効果的に(多くの場合均等に)共有するために、特にマルチホップ及び/又はアドホックネットワークのような分散ネットワーク用の種々のチャネルアクセス方式がここ数年間に開発された。
従来の多重アクセスプロトコルは2つの主要なカテゴリー、すなわち衝突回避(conflict−free)プロトコル及び競合ベース(contention−based)プロトコルに分類することができる。
【0003】
衝突回避多重アクセスプロトコル
スケジューリングされたチャネルアクセスプロトコルと呼ばれることがある衝突回避プロトコルは、送信がいつ行なわれても確実に無事に行われる、すなわち他の送信によって干渉されないプロトコルである。衝突回避送信は、チャネルをユーザに静的又は動的に割り当てることにより行なうことができる。これは、それぞれ固定スケジューリング又は動的スケジューリングと呼ばれることもある。局間の調整を正確に行なうことの利点は、高い効率が実現すると考えられることであるが、複雑さが増し、且つ時に大量の制御トラフィックが交換されるという不利を伴う。
参考文献[1]の中で、Kleinrock及びSylvesterは、TDMAタイムスロットを空間的にスケジューリングし、再使用することを提案している。この考えでは、互いに有害な干渉を起こすことなく、同時に使用することができるリンク群から成るグループ(衝突回避ベクトル又はクリーク(cliques)とも呼ぶ)を構築する。多くのこのようなグループは識別することができ、次にこれらのグループはTDMAフレームのように繰り返される。この方式は、通常、STDMAと呼ばれ、空間TDMAを表わす。
【0004】
競合ベース多重アクセスプロトコル
競合ベースプロトコルは、送信が無事に行なわれることが保証されない点で衝突回避プロトコルと原理的に異なる。従って、このプロトコルは、競合が生じるとこれらの競合を解消して全てのメッセージが最終的に無事に送信されるようにする手順を定めている。
パケット無線ネットワーク又はアドホックネットワークにおける従来の問題は、所謂隠れ端末の存在である。図1によれば、隠れ端末問題とは、ノードBに送信を行なうノードAが、ノードAのノードBへの送信に干渉する別のノードCのノードDに対する送信(又はノードBに対する送信の場合もある)を認識しないことを指す。その結果、明らかにノードBにおいて衝突が生じ、この衝突によって全ての局面(スループット、遅延など)で性能が悪化する。この問題に対処する手段が1970年代半ば以降提案されてきており、本明細書では結果的に従来の「解決方法」に注目する。しかしながらまず、CSMA(参考文献[1])は、定義によればノードC及びノードAは互いの送信をオーバーヒアしないのでこの問題を扱っていないことに留意されたい。従って、キャリア検知はパケット無線ネットワーク(参考文献[3])には適さないと考えられる。最悪の場合、CSMAの性能はALOHA(参考文献[1])の性能にまで劣化する。
隠れ端末問題を扱う種々の競合ベースについて次に説明する。
【0005】
衝突回避多重アクセス(MACA)
Karn(参考文献[4])により考案されたMACAと呼ばれる方式は、送信要求(RTS)及び送信許可(CTS)を送信することにより、ノードBの隣接ノードに、どのノードが送信を行なうのかを確実に認識させるという考えに基づく。ノードAがRTSを発行すると仮定した場合、ノードBはRTSを受信するとCTSで応答する。ノードAはCTSメッセージを受信し、データ送信を開始する。他方、ノードCは、ノードBからCTSを受信すると送信を全て保留する。同様に、RTSメッセージを受信する、ノードA近傍のノード群は、ノードAがCTSメッセージを待っているときに送信を全て保留する。バックオフ方式を用いてRTSメッセージの衝突再発の影響を軽減する。
【0006】
MACAW
参考文献[5]で、Bhargawanらは、MACAプロトコルを改善し、このプロトコルの呼び名をMACAWに変更した。彼らはリンクレイヤAcksだけでなくCSMAをRTSメッセージに関して導入した。また、Bhargawanらは、ノードではなく送信元−宛先ペアに基づいてバックオフ方式を用いることにより均等性(fairness)を改善した。さらに輻輳制御手段も設けている。現在、IEEE 802.11規格は、DFWMACと呼ばれる非常に類似したRTS−CTS方式をこの規格の動作モードの一つに用いている。
【0007】
ビジートーン多重アクセス(BTMA)
どちらかと言えばMACAに類似する手法は、ビジートーン多重アクセス方式、BTMA(参考文献[6])である。CTSメッセージを送信するのではなく、ノードBは、ノードBがビジーであることを或るパラレルチャネルを通してトーンで通知する(他の周波数を読み出す)。この操作は、ノードBがそのアドレスコンテンツを受信した場合に行なうことができる。しかしながら、別の、有用性にかなり劣る代替的方法では、パケット送信を検出する全てのノードがビジートーンを送出する。後者の代替法は、広い領域に深刻な通信障害を生じる。いずれの方式も実際に使用することはかなり稀であり、ほとんどが学術論文で話題を集めたものである。
【0008】
他の従来の多重アクセスプロトコル
別のメディアアクセス技術はダイレクトシーケンスCDMA(DS−CDMA)に基づくものである。基本的に、2つの手法が可能である。
例えば、再度図1を参照すると、ノードA及びCが直交コードを使用し、従って互いに干渉しないことを保証することを目標とするメカニズムを用いることができる。
別の手法では、受信側に向けられる拡散コードを利用する。後者の手法では、ノードCがそのデータをノードDに向けて送信すると仮定する。ここで、直交コードを使用することにより、利用可能な帯域リソースを送信側が分割することに注目されたい。
【0009】
マルチユーザ指向の多重アクセスプロトコル
参考文献[7]では、STDMA及びマルチユーザ検出を組み合わせた多重アクセスプロトコルが記載されている。この方法では、送信は、時間、空間、並びに受信電力に関してスケジューリングされる。送信電力レベルは、複数の送信を同時に受信することができ、マルチユーザ検出器を使用して復号化できるように選択される。これによる利点は、ネットワークスループットが従来のチャネル方式よりも向上することである。
【0010】
課題を解決するための手段
本発明は、先行技術による構成のこれらの不具合及び他の不具合を解決する。
本発明の一般的な目的は、複数のユーザが共通の通信媒体を共有するマルチホップネットワーク、アドホックネットワーク、多段中継ネットワーク、及びリピータネットワークのような無線中継ネットワークの性能を向上させることにある。
【0011】
特に、スループット及び遅延に関してネットワーク性能を向上させることが望ましい。
本発明の更に別の目的は、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する方法及び構成を改良することである。
これらの目的及び他の目的は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明により達成される。
【0012】
本発明は、ほとんどの干渉が、特にマルチホップネットワーク、多段中継ネットワーク、及びリピータネットワークのような無線中継ネットワークにおいて、少なくとも一つのリンク、通常は複数のリンクを通して、複数回に渡って送信されるパケットによって生じるという考察に基づく。マルチホップネットワークでは、例えば、情報は、送信元と宛先との間で複数のホップ又はセグメントを介して送信することができる。複数の送信は再送信に起因するが、主要な理由は、同じパケット又は情報が宛先に達するまでノードからノードに転送されることである。
既に利用可能になっている情報を信号検出プロセスにおいて利用することを目的とする本発明によれば、少なくとも一つのリンクを通して合計で複数回に渡って送信される少なくとも一つのデータユニットを含む第1組の情報を表わす信号情報を既知の信号情報として保存する。この信号情報は、ノードにおいて、既に受信された情報及び/又は検出された情報、固有に送信される情報(転送される情報を含む)、又は利用可能な関連信号情報とすることができる。続いて、第2組の情報を表わす信号情報を受信し、その際、第1組の情報のデータユニットの内の一つ以上のデータユニットの送信が第2組の情報の受信に干渉する。干渉にも拘らず、第2組の情報の少なくとも一部は、受信信号情報と、既に保存している既知の信号情報の少なくとも一部とを利用することにより無事に検出することができる。情報は、受信信号情報と、既知の情報の関連部分とに基づく干渉除去により検出することが好ましい。
【0013】
例えば、保存している既知の信号情報は、固有に送信される情報、既に受信及び検出した情報を含み、更には既にオーバーヒアした情報も含むことができる。
多くのアプリケーションにおいて、第1組の情報は、複数のリンクを通して合計で複数回に渡って送信される一又は複数のデータユニットを含む。
一連の既知の信号情報を、好ましくは新規に検出される情報を取り入れ、期限切れの情報を除去することにより継続的に更新すると有利である。
【0014】
従って、本発明は、既知の情報を保存及び利用する新規のメカニズムを通してチャネルアクセス問題に新規の次元を取り込むので、ネットワーク性能を向上させ、従来の隠れ端末問題を効果的に解決することができる。更に詳細には、本発明によってスループットが高くなり、遅延が小さくなることが判明している。
検出は、シングルユーザ又はマルチユーザに関して、ビット又はシンボル毎に、或いは一連のビット又は一連のシンボル毎に行なうことができる。検出は、符号化情報に対して、又は情報ビットに対して行なうことができる。これは、検出情報が実際には、復調された符号化情報及び/又は復調且つ復号化された情報とすることができることを意味する。
上に示したように、本発明は、マルチホップネットワーク、多段中継ネットワーク、及びリピータネットワークのような無線中継ネットワークに広く適用することができる。
【0015】
ここで、明示的干渉除去技術及び暗示的干渉除去技術の両方を含む多くの異なるタイプの干渉除去を本発明に使用することができることを理解されたい。例えば、検出プロセスでは、受信信号情報から既知の信号情報を取り除いて残留信号を生成することができ、次に残留信号を復号化する。別の構成として、情報は、既に受信しているベースバンド信号情報の形を採る既知の情報を、現時点で受信するベースバンド信号情報と一緒に一括処理することにより検出することができる。
検出プロセスは更に、送信スケジュール情報に基づいて実行することができ、これにより、既知の信号情報の利用率を、干渉信号情報の通信インスタンスに更に正確に相関させることができる。
【0016】
本発明により次の利点が得られる。
・ネットワーク性能が向上する。
・スループットが高くなり、遅延が小さくなる。
・従来の隠れ端末問題が効果的に解決される。
・信号が無事に検出される確率が高くなる。
・特殊な形で構成されるMAC(Medium Access Control)プロトコル、ルーティング方法、性能を更に向上させることができるRRM(無線リソース管理)方式の利用が活発になる。
本発明が提供する他の利点は、本発明の実施形態の説明を一読することにより明らかになる。
【実施例】
【0017】
本発明は、並びに本発明の更なる目的及び利点は、添付図面と共に以下の記述を参照することによって最も深く理解される。
発明の実施形態の詳細な説明
図全体を通じて、同じ参照記号を同一又は同様な構成要素に使用する。
【0018】
前に述べたように、現在の方法は、スループット及び遅延に関して最適ではない。本発明は、特にマルチホップネットワーク、多段中継ネットワーク、及びリピータネットワークのような無線中継ネットワークにおいて、ほとんどの干渉が、一つ以上のリンクを通して、複数回に渡って送信されるパケットにより生じるという考察に基づく。
本発明は、信号検出プロセスにおいて既に利用可能になっている情報を利用することを目的とし、好ましくは以下に基づく。
・少なくとも一つの(多くの場合複数の)リンクを介して複数回送信される少なくとも一つのデータユニットを含む第1組の情報を表わす信号情報を、既知の信号情報として保存する。
・第2組の情報を表わす信号情報を受信する際、第1組の情報のデータユニットの内の一つ以上のデータユニットの送信が、第2組の情報の受信に干渉する。
・受信信号情報及び以前に保存した既知の信号情報の一部に基づく干渉除去により、第2組の情報の少なくとも一部を検出する。
【0019】
第1組及び第2組の情報はそれぞれ、一つ以上のデータユニットを含み、シングルユーザ検出及びマルチユーザ検出は共に、アプリケーション選択及び構成選択に従って選択することができる可能な検出手段の候補である。ここで、明示的干渉除去方法及び暗示的干渉除去方法の両方を含む多くの異なるタイプの干渉除去を本発明に使用することができることを理解されたい。
このように、既知の信号情報を維持及び利用することにより、従来の隠れ端末問題を効果的に解決することができ、その結果総合的なネットワーク性能が向上する。
【0020】
従って、本発明は、複数の送信が生じる利点を生かす受信機及び/又は信号検出モジュール(デコーダ)を提供する。またこれにより、特殊構成のMAC(Medium Access Control)プロトコル、ルーティング方法、RRM(無線リソース管理)技術などの開発が活発化して性能が更に向上する。
従来のマルチユーザ検出手法は、最大スループットが選択される場合には良好な取り組み法であるが、この手法は利用可能な情報を活用していない。
ここでまた、ハイブリッドARQ(自動再送要求)方式は、以前に送信された古い情報を活用することができることに注目されたい。しかしながらハイブリッドARQでは、以前に送信された情報及び次に再送信される情報が異なるタイムスロットで同じノードに同じリンクを介して送信され、この方式は、単に効率的なARQに使用されるものであって、干渉除去には使用されない。
【0021】
ここで、後述ではマルチホップネットワーク及び所謂多段中継ネットワークを中心に説明を行うが、本発明は広く無線中継ネットワークに適用することができ、この無線中継ネットワークでは、リピータネットワークも含む複数のリンクを介して複数回に渡って同じ情報を送信することができる。
後述では、2つの例示的基本コンセプトについて記載する。第1のコンセプトは、検出パケットを利用する実用的な手法に着目する。これは、主題の導入及び動機部分である。第2のコンセプトはさらに広く、多くの情報が保持及び利用されることで必然的に良好に機能するが、複雑さが増している。次に、第1のコンセプトの低い複雑さと、第2のコンセプトが提供する高性能との均衡をとった第3のハイブリッド版コンセプトを提示する。
【0022】
例示的コンセプト1
前述のように、マルチホップネットワークにおける一部の干渉は、以前に受信及び転送されるパケットによって生じるか、又は他の通信ノードからオーバーヒアし、再度送信されるパケットだけでも生じる。この情報はある意味で既知なので、受信信号から取り除き、復号化される残留信号を残すことができる。従って、信号対雑音及び干渉比(SINR)が改善されるので、システム性能が向上する。このような性能向上には、受信時のスループット増大、遅延低減及び/又は堅牢性向上が含まれる。
【0023】
本発明の好適な実施形態による基本原理の概要を、既知のデータを利用する検出器に関する図2のフロー図に示す。ステップS1では、信号を受信し、該信号に関連する既知のデータの有無、及び既知のデータが該信号にどの程度関連しているかを判断する。ステップ2Aでは、既知の情報に基づいて信号検出を行なう。これは、既知のデータによって生じる干渉を受信信号から除去(差し引く)して残留信号を生成することにより行われるが、これについては後で詳細に説明する。ここで、データは普通、パケット、すなわち1と0の文字により表示されるが、受信信号から差し引かれるデータは通常、変調済みの既知のデータ列の一つ以上のコピーであることに注目されたい。しかしながら、幾つかの検出方法を想定することができる(後で更に説明する)。続いて、残留信号を復号化し、その有効性を、例えばCRC(サイクリックリダンダンシーチェック)を利用してチェックする。チェックに合格すると、ステップS3において、新規の検出データ又は復号化データを前の検出データ列又は復号化データ列と一緒に保存し、既知の信号情報を継続的に更新する。情報は、応答性を考慮して、変調済みの列として保存する(後述する干渉除去方法を使用する場合)ことが好ましいが、記憶容量が小さく、且つ速度が問題とならない場合には、1と0の純粋なデータ列として保存する。ステップS4では、復号化データは、通常、高位レイヤである次の適切な機能にも転送される。データを高位レイヤに送信した後、データを別のノードにルーティングすることができるか、又はノード内のアプリケーションによって使用することができる。別の構成として、レイヤ1転送を、例えば再生リピータ機能に用いる場合、復号化データをレイヤ1のバッファに送信し、続いて送信することができる。再生を行なわないリピータ機能を用いる別のレイヤ1転送例では、残留信号(すなわち、既知列の干渉を除去した後の)をレイヤ1のバッファに送信し、続いて送信することができる。ここで、復号化データの明示的な使用はここでは重要ではないことに留意されたい。データを保存し、次のレイヤに転送する順番は任意である。最後に、或るデータがどんどん離れて行き、従って考察対象の受信機において有害な干渉を全く生じさせないか、又は最終的に宛先ノードに到達し、従ってそれ以上の送信が行なわれとき、このようなデータの影響を除去する意味は無い。従って、ステップS5では、このデータは検出済みのデータ列から除去することができる。除去は、例えばタイマーを使用して開始する(非常に古いメッセージは、必ずという訳ではないが期限切れの可能性がある)、又は明示的な信号を送信することにより開始する。
【0024】
上述の方式は、図3に示すように、マルチユーザ検出の場合に適合及び/又は拡張することができる。一般的構成の検出器はマルチユーザ検出器(MUD)であり、受信信号から複数のパケットを同時に受信し、特定数のメッセージ、又は出来る限り多くのメッセージを検出しようとする。好適な実施形態によれば、マルチユーザ検出は、ステップS2Bに示すように、既知の検出パケット又は復号化パケットを考慮に入れることにより行なわれる。続いて、一連の検出パケット又は復号化パケットを更新して新規の検出パケット又は復号化パケットを格納する。
【0025】
図4は、本発明の好適な実施形態による、既知の情報に基づく干渉除去の構成を取り入れたネットワークノードを示す模式ブロック図である。ネットワークノード100は、受信部分及び送信部分に論理的に分割され、基本的に、従来型受信チェーン10に接続されるアンテナ、検出ユニット20、既知の信号情報を保存する記憶ユニット30、送信スケジュール情報ユニット40、他の(高位レイヤの)機能50、更新制御ユニット60、送信キュー70、カプセルユニット80、変調兼符号化ユニット90、及びアンテナに接続される送信チェーン95を備える。
本発明は、主として、ネットワークノード100の受信機構造に関するものであり、主たる新規性は、既知の信号情報を記憶ユニット30に維持し、この情報を、検出ユニット20が実行するビット及び/又は列検出(復調及び/又は復号化)プロセスにおいて利用することにある。検出ユニット20は、シングルユーザ検出器又はマルチユーザ検出器とすることができ、受信チェーン10からの信号情報、及び記憶ユニット30からの既知の信号情報に基づく干渉除去によって信号情報を検出する。例えば、検出プロセスでは、受信信号情報から既知の信号情報を除去して残留信号を生成することができ、その後残留信号を復号化する。別の構成として、既に受信しているベースバンド信号情報の形を採る既知の情報を、現時点で受信するベースバンド信号情報と一緒に一括処理することにより信号情報を検出することができる。検出プロセスは更に、ユニット40からの送信スケジュール情報に基づいて実行することができ、これについては後で更に詳細に説明する。
【0026】
検出の後、検出データ又は復号化データは通常、一般に高位レイヤに駐在する次の適切な機能50に転送される。データを高位レイヤに送信した後、このデータは別のノードにルーティングすることができるか、又はノード内のアプリケーションによって使用することができる。データを別のノードに送信する場合、このデータは送信キュー70に置かれる。このキューから、データはカプセル化及びアドレス指定を行なうカプセルユニット80に転送される。次に、カプセル化データはユニット90によって変調及び符号化され、最終的に送信チェーン95及びアンテナを介して送信される。
この特定の実施例では、ノードはマルチホップパケット無線ネットワークにおける使用に適合させている。しかしながら、多段中継及び一部のマルチホップ形態は、必ずしもパケットヘッダの使用を必要としないことを理解されたい。再生を行わない中継動作に基づく多段中継方式、つまり変調のような上述の動作の幾つかを省略する中継動作も存在する。
本発明に対する理解を深めるために、本発明を使用することができる幾つかの例示的シナリオを示すことが有用である。まず、固有の転送データの干渉除去を行なう全体的な方式について、図5及び6を参照しながら記載し、次に、既にオーバーヒアしているデータの干渉除去について、図7A〜Cを参照しながら記載する。
【0027】
固有の転送/送信データ:
例示を目的として、タイムスロット化メディアアクセス方式を想定する。図5のメッセージ列を参照すると、時間Tでは、信号Sに符号化されたデータがノードAからノードBに送信され、この場合、この信号が正しく復号化されると仮定する。時間Tでは、SがノードBからノードCに送信され、この場合も、この信号が正しく復号化されると仮定する。時間Tでは、S及びSにそれぞれ符号化された2個のデータパケットが送信される。先行技術においては、ノードBによるノードAからの受信はノードCによる送信の干渉を受ける。しかしながら本発明では、信号Sの影響を除去するので、信号Sの受信及び検出、シンボル検出又は列検出は無事に行なわれる。
時間Tでの干渉は、本発明を用いない場合に深刻になり得る。説明を目的とする単純な実施例を、時間TにおけるノードAからノードBへのパケット送信にShannonによるチャネル容量を考慮に入れることにより示す。本発明の場合、ノードBは信号対雑音比SNR=P・G/Nを有し、ここで、Pは送信電力であり、GはノードAからノードBまでのパス利得であり、Nは雑音電力である。しかしながら、本発明を使用しない場合、ノードCが電力Pで送信を行ない、ノードBまでのパス利得もGであるとすると、実効的な信号対雑音比は上の式ではなく、SNReff=SNR/(SNR+1)となる。
Shannonによる容量限界を図6に示し、提案する干渉除去方法を用いる場合及び用いない場合のスループット性能の例を示す。実際のマルチホップシステムでは、スループット性能は重大な懸案事項であるので、再利用可能距離を大きくしてこの有害な干渉効果が生じないようにする必要がある。これにより今度はスループットが低下する。
【0028】
オーバーヒアしたデータ:
図5に示す例に加えて、異なるシナリオの複数の実施例を図7A〜Dに示す。これらの場合には、オーバーヒアしたデータが後続の干渉除去に使用されている。
具体的には、図7Aでは、信号S及びSに符号化された2つのデータ列を、異なるが隣接するパスに沿って送信する。時間Tでは、ノードFは、ノードAからノードBのリンクを通して送信される信号Sをオーバーヒアする(正しく復号化する)。信号SはノードFに既知の情報として保存される。時間Tでは、ノードBは、信号SをノードCに至る別のリンクを通して送信し、ノードFに対する干渉を生じさせる。ノードFは、ノードEから送信される信号Sを受信し、ノードBからノードCに送信される干渉送信Sを除去することにより復号化する。
性能改善を解析的に判断するのは困難であるが、初期シミュレーションから、既知の信号を上手く抑制して総合スループットを向上させることができることが判明している。しかしながら、性能は、通常、受信先、送信元、送信内容、及び送信時期のスケジューリングによって変わる。通常、本発明によって通信忠実度が向上することを理論的に保証且つ定量化することができることが分かっている。それでもなお、マルチホップ構成における利得は、通常複数のメッセージが除去されるために、普通はさらに高いこと、及び最近オーバーヒアしたか、又は転送されたトラフィックは、通常局所的に有害な干渉を生じさせることが予測される。
【0029】
図7Bは、時間Tにおいて信号Sをいずれかの他のノード、この場合はノードBに送信する所謂マルチキャストノードAのシナリオを示している。この信号は、信号Sを既知の信号情報として保存する隣接ノードFによってオーバーヒアされる(正しく復号化される)。時間Tでは、ノードAは信号Sを更に別のノード、この場合はノードCに送信するので、ノードFがノードEから送信される信号Sを受信すると、ノードFに対する干渉が生じる。ノードFは、干渉送信Sを除去することにより、ノードEから送信される信号Sを正しく復号化する。
図7Cは更に別のシナリオを示し、このシナリオでは、ノードAは信号Sを、ノードDに至る2つの並列パスに沿って送信する。時間Tにおいて、ノードAはノードB及びCに信号Sを送信し、時間Tでは、ノードB及びCは信号SをノードDに中継する。時間Tでは、信号Sは隣接ノードFによってオーバーヒアされ、このノードFは信号Sを既知の信号情報として保存する。時間Tでは、ノードFは、ノードB及びCからノードDに送信される干渉送信Sを除去することにより、ノードEから送信される信号Sを受信し、復号化する。
図7Dは例示的シナリオを示し、このシナリオでは、信号Sは、2つの異なる時間T及びTにおいて、ノードAとノードBの間の同じリンクを介して送信される。時間Tでは、信号は隣接ノードFによってオーバーヒアされ(正しく復号化され)、このノードは信号Sを既知の信号情報として保存する。時間Tでは、ノードAは信号SをノードBに再度送信するので、ノードFがノードEから送信される信号Sを受信すると、ノードFに対する干渉が生じる。ノードFは、干渉送信Sを除去することにより、ノードEから送信される信号Sを正しく復号化する。
【0030】
中継:双方向トラフィック
中継チャネルは情報理論(参考文献[9])における従来からの問題である。特に、3つのノードを有する普通のシナリオが研究課題とされてきた。ここで、3つのノードを有する中継チャネルに関し、具体的には、ノードCを2つの送信元ノードの間に配置した、2つのノードAとBの間の双方向トラフィック(従来の中継チャネルに関しては通常は取り扱われない)に関して本発明を例示する。図8は、5つの例示的方式a〜eに関する2ホップ中継チャネルにおける既知の情報の干渉除去を模式的に示し、ここで、方式a、b及びeは本発明を用いており、残りの方式c及びdは参考のための方式と考える。ここで、本発明の方式a、b及びeでは、ノードCは、利用可能な送信電力を情報SとSに配分することに注意されたい。マルチユーザ検出は必要な場合には必ず用いる。信号交換は、方式a及びeでは2つのフェーズにおいて行われ、方式b及びcでは3つのフェーズにおいて行われ、方式dでは4つのフェーズにおいて行われる。本発明の例示的実施形態によれば、ノードAはその固有の送信信号Sを保存し、ノードBはその固有の送信信号S又はその信号の適切な表示を保存する。これによって、中間中継ノードCは、受信信号S及びSをノードA及びノードBに同時に送信することができる(別々に送信するのではなく)。というのは、ノードAは、同時に送信される信号S及びSから信号Sを除去し、ノードBは、同時に送信される信号S及びSから信号Sを除去するからである。このようにして、ノードAは信号Sを正しく復号化し、ノードBは信号Sを正しく復号化する。方式aでは、全手順は2つのフェーズのみ、すなわち中間中継ノードへの同時送信、及び中間中継ノードからの同時送信の両方を、中間中継ノードCにおけるマルチユーザ検出を使用して行なうフェーズ、並びにノードA及びBにおいて干渉除去を行なうフェーズを含む。
更に細かく分析すると、既知の情報の干渉除去の使用は、情報理論における中継チャネルの、これまでには無かった、新規の拡張版であることが分かる。
【0031】
要約すると、中間中継ノードは、通信ノードから受信する信号情報を同時に転送するように構成され、通信ノードの各々は、当該通信ノード固有の送信信号情報を既知の情報として使用する干渉除去によって、他のノードからの信号情報を検出するように構成される。
また、本発明を種々の公知の拡張版と組み合わせることができることに留意されたい。例えば、方式bでは、ノードA及びBはそれぞれ、ノードB及びAからの一回分の送信による受信エネルギーを保存し、後で利用する。しかしながら、このようにすることによりもたらされる利点は通常極めて小さく、且つ労力をつぎ込むほどのものではない。
【0032】
ノードAからCまでの距離、及びノードBからCまでの距離が等しく、且つ各ノードが合計送信電力Pで送信を行ない、伝播指数α=4を有する、べき法則パス損失モデル及びShannonの容量定理を使用すると仮定すると、総合システムスループットは図9に示すグラフに従う。他の詳細については付録Aを参照されたい。
方式a)及びe)が、異なるSNR範囲においてではあるが、最高のスループットを示すことが分かる。1b/Hz/sを超えるチャネル効率で見ると、本発明を利用する最良の方式(a、b及びe)の利得は、従来の最良の方式(c又はd)よりも2〜8dBだけ良好である。これよりも低い伝搬損失定数の場合、例えばα=2の場合、利得は低くなり、着目するSNR範囲及びレート範囲は1.5〜3dBである。利得は全体的に明白ではないが、それでも明らかに先行技術よりも性能が向上していることを示唆している。しかしながら、方式a)及びe)はさらに広いSNR範囲に渡って最も有望であるように思われる。
【0033】
これらの方式を比較する場合に、固定平均電力(又はサイクル当たりの等価的なエネルギー排出量)などの、固定送信電力レベル以外の他の条件を用いることができる。これを行なうと、図8の2フェーズ方式に比べて、方式b)の性能は

だけ向上し、方式c)の性能は
(文字2)
だけ劣化する。

【0034】
多段中継:
既知の情報に基づく干渉除去コンセプトは、多段中継ネットワークにも使用できる。
多段中継に関する最新のコンセプトは、ある意味で2つのホップしか含まないマルチホップ動作の劣化版と見なすことができるが、同時に、並列パスと信号処理とに一般化してそれを利用することができる。更に、多段中継には、基本的リピータ(非再生式の)機能のような種々の形態の中継情報か、又はマルチホップネットワークにおいて常套的に行われてきた「復号化及び転送」(再生式)を利用することができる。
多段中継に関する更なる情報は、例えば参考文献[10]に記載されている。
【0035】
図10A−Bは、多段中継のコンセプトの一実施例の概略図であり、本実施例では多段中継は双方向(同時)トラフィックとして例示されている。図10Aでは、基地局(BS)100−1及び移動端末(MT)100−2の両方が並列パスに沿ってスロットnで同時に送信を行ない、各パスは少なくとも一つの中間ノードを有する。次いで受信信号は、図10Bに示すように、中間局によってスロットn+1で再送信される前に処理される。この処理では、限定するものではないが、MUDを利用する、Alamoutiダイバーシチ、遅延ダイバーシチのような種々のダイバーシチ方式を導入する、共役、否認、データ再配列、異なる増幅率、及び任意の位相係数を使用する、といった操作を組み合わせることができる。
MT及びBSは共に、MT及びBS並びに他の局が生成する重複情報を受信する。ここで重要な点は、各局が何を送信したかについての既知情報に基づいて、これらの局がそれぞれの影響を除去することができることである。この基本原理を図11に示す。この図は、多段中継の場合における本発明の一の実施形態による干渉除去を示すシーケンス図である。図11は、中間中継ノードC、D、及びEにより互いに通信する2つのノードA及びBのケースを示している。各中間ノードは、上述の処理動作のいずれかを含む「処理ブロック」を有する。タイムスロットn+1において受信を行なうと、ノードA及びBの各々は、各局がタイムスロットnで送信した内容の既知情報に基づいて干渉影響を除去することができる。
ここに記載する方法を拡張して、中継局の集団を介して通信する3つ以上の局を含むことができることに注目されたい。また、この方法を一連の複数のマルチホップ多段中継セットに拡張し、干渉除去を利用するマルチホップ多段中継ハイブリッドを形成することができる。
【0036】
多段中継:「同時」上りリンク及び下りリンクトラフィック
多段中継に基づくネットワークにおける既知の情報の干渉除去の別の使用方法を図12A−B及び図13に示す。この考え方では、上りリンク及び下りリンクでの「同時」送信が可能になり、2つのメッセージが、これらの宛先局に2つのタイムスロットで到達するので、利用率1を達成する、すなわち2タイムスロット毎に2パケットを送信することができる。これにより、トラフィックが一方向に2ホップで転送される場合に比べて、効率が2倍になる。
タイムスロットNでの送信を示す図12Aでは、第1移動端末(MT)200−1は、多数の中継ノードに対して基地局(BS)100の方向に送信を行なう。基地局100は、多数の中間中継ノードに対して第2移動端末(MT)200−2の方向に送信を行なう。
【0037】
タイムスロットN+1での送信を示す図12Bでは、第1移動端末200−1から信号情報を受信した中間中継ノードは、基地局100に対して送信を行なう。信号情報を基地局100から受信した中継ノードは、第2移動端末200−2に対して送信を行なうと同時に、基地局100に対して干渉を生じさせる。MT200−1から、MT200−2に近接する中継ノードに向かう干渉は、通常微小であり、ほとんど問題を生じることがない。しかしながら、この干渉が非常に大きくなる場合には、適切なRRM及びスケジューリングステップを実行する必要がある。
図13に示すように、基地局ノードEにおいて除去される干渉は、中間中継ノードからノードAに送信される途中の信号Sによるものである。図13に示す処理は、前述の方式のいずれかに関するものである。ここで、12A−B及び図13において記載したものと同じ方法をマルチホップ構成にも適用できることに注目されたい。
【0038】
干渉除去
この節の目的は、本発明に適用することができる多くの実用的な干渉除去技術を例示することである。しかしながら、他の公知の干渉除去方法、又はこれから開発される干渉除去方法を使用してもよいことを理解されたい。
まず、例示的システムモデルが必要となる。例えば、説明を簡単にするために、システムは同期するものとし、且つOFDM(直交周波数分割多重方式)を使用することにより過度に正確な(タイミング)同期の問題及びシンボル間干渉(ISI)の問題に関する不必要に詳細な議論は行わない。この考え方は十分に一般的であるので、各々が特殊な考察を必要とする他の変調方法及び完全非同期システムに拡張することができる。
【0039】
ここで、ネットワークに合計dmax個のデータパケットを有し、各データパケットDは、インデックスd={1,...,dmax}によって固有に識別されると仮定する。全てのパケットから成る全集合はDΣ={D;d={1,...,dmax}}により示す。
更に、S=fmod(D)に従ってデータパケットを変調シンボルにマッピングする固有関数fmodを仮定する。特定ノードνがパケットDを送信する場合、パケットと送信ノードは、(符号化/生)データパケットに対して記号

を、対応する(符号化)変調信号に対して記号

を使用することにより、相関させられる。更に、集合V={ν;j={1,...,jmax}}は、タイムスロットnで送信を行なう全てのノードを含む。
【0040】
次に、着目するタイムスロットにおいて、ノードνが信号Rを受信すると仮定し、信号Rは次式に従って計算される。

上の式において、Hijは、ノードνとノードνとの間の複素チャネル利得であり、Pはノードνが使用する送信電力である。
同時に、記憶バッファは既に変調された、及び/又は復号化された(且つ推定される)パケット

から成る集合を含む。この集合を次式で表わす。

上の式において、δはインデックスとして使用され、δmaxは保存データパケットの数である。
【0041】
別の構成として、復号化パケットに対応する信号は保存できる、すなわち

又は上の式と等価な次式で表わされる信号として保存することができる。

本発明による検出(シンボル検出又は列検出)を利用する場合、既知の情報が利用される。検出プロセスは基本的に受信信号R及び既知の情報

を含み、次式に従って復号化データパケットから成る集合を生成する。

従って、目的関数fを用いて、R及び

から

への最適なマッピングが行なわれる。この等式は、最も一般的な形で次式により表現される。

【0042】
次の記述では、種々の方法を使用して復号化を行なうことができることを明らかにするが、コンセプト1に関しては、主として、検出プロセスが2つのステップ、即ち、まず既知の情報による干渉を除去又は消去するステップと、次に従来のMUD/SUD(マルチユーザ検出又はシングルユーザ検出)を実行するステップに分割される場合に焦点を当てる。
次に、時間が明示的に示される次式

を使用して新規に復号化されるデータを取り入れることにより保存データが更新される。
【0043】
例示的方法1−未知の送信パケット及び未知のチャネル
ここで、複数のチャネルが未知であると仮定する。どのパケット(既に復号化された)が送信されるも未知である。
関数f及び目的関数f1optにより表わされる最適化条件の下で得られる一連の重み付けパラメータ

により残留信号が生成される。
この場合、既に復号化されたパケットによる影響は残留信号において最小化される。この信号の最も一般的な形では、信号は次式のように表わすことができる。

上式において、

である。
【0044】
関数fの特殊ケースでは、全てのインデックスに対して次式が成り立つ。

目的関数f1optは、

の変数の期待値(の最小値)として定義することができる。或いは、次式

又は次式

で表わされる。
この式の解は、

の各要素が次式のように表わされるので、比較的簡単である。

【0045】
ここで、上の式は、データメッセージDδを送信したノードνのチャネル

及び送信振幅

の積の推定値と同じであることに注目されたい。データメッセージDδが送信されなかった場合、項aδはほぼゼロでなければならない。ここで、上記の式における主要な前提は、これらのデータメッセージは、一般的にそうであるように相関を有さず、且つスクランブリングにより統計的に保証できるということであることに留意されたい。
【0046】
例示的方法2−未知の送信パケット及び既知のチャネル
例えばパイロットに基づくチャネル推定によりチャネルが既知である場合、別の手法を使用して残留信号を推定することができる。最も一般的な形では、これは関数f及び最適化目的関数f2optを使用して次式のように公式化することができる。

上の式では、

が成り立ち、

は、集合

の濃度jmaxの複数の部分集合から成る、べき集合である。
関数fの特殊ケースは、求めた既に復号化された列の直接減算である。

及び目的関数f2optは、次式で表される残留信号の自乗和(kで示すサンプル)(の最小化)

又は、更に明示的には次式である。

【0047】
追加の構成
送信スケジュールのような更に別の情報と、パケットが現時点でどこに存在するかについての情報とを利用して干渉除去手順を改善し、恐らくは簡素化することができる。これは、回路交換式マルチホップネットワークにおけるように正確な送信スケジュールを認識することができ、よって幾つかのパケットを一部のタイムスロットで送信しない場合、これらのパケットは、既に受信されている場合も考慮に入れる必要がないことを意味する。更に、平均パス損失(の少なくとも推定値)についての機知の情報をある程度持つことができる。送信スケジュールの使用方法は、前述の図2及び3においても示されている。
チャネル識別を行なう場合、パイロット(別名、トレーニングシンボル)に基づく推定などの標準的チャネル推定技術だけでなく、変調又は類似の操作の構造を利用してブラインドチャネル推定を展開することができる。
【0048】
コンセプト例2
本発明の第2のコンセプトでは、既に受信している信号情報の形をとる既知の情報と、現時点で受信する信号情報とに基づく一括処理手順を用いることを提案する。受信信号情報は通常、ベースバンド信号の形をとり、これらの各々は通常、重複した複数の送信を含む。受信ベースバンド信号情報は、主として多数のタイムスロットに関連するものとして例示されるが、さらに一般的には、周波数は通信毎に変化し得るため、受信情報は通信インスタンスに関連付けることができる。
【0049】
実現可能な実施形態の例について、マルチホップネットワークを参照しながら説明する。しかしながら、マルチホップネットワークにおける複数送信の例示的受信モデルから始めると有用である。
複数の送信が複数のタイムスロットで行なわれ、且つ周波数フラットチャネルについて考察する(例えば、OFDMにおける狭帯域信号又はサブキャリアの信号を使用して)と仮定する。まず、全てのデータパケットは時間的に連続した列であり、ネットワークにおいてパケットを固有に識別するインデックスdを付けると仮定する。次の記述では、タイムインデックスは表記を簡単にする意味から使用しない。タイムスロットnにおいて、パケットDは送信することができるか、又は送信できない。パケットを送信するノード(群)はインデックスjにより識別され、パケットを受信するノードはインデックスiにより識別される。この場合、パケットDが送信されると、それに対応する変調済み信号には係数Χ(d)(n)が乗算され、この係数にはとりわけ、ノードiとノードjとの間の複素(準静的)チャネル利得Hij(n)を取り入れ、取り入れないときは、この係数は送信が全く行なわれない場合にゼロとなる。係数Χ(d)(n)はまた、ノードiが、例えばスリープモードにあるか、又は送信を行なっているために受信を行なっていない場合に値がゼロになるものとする。データパケットDは、列S(d)(n,i,j,cntret,cnttot)に変調される。この列は、パケットDの識別情報、どのノード(j)が送信を行なっているのか、どのノード(i)にパケットが送信されるのか、どのタイムスロット(n)でパケットが送信されるのか、のような一連の要素により、恐らくは再送信カウンターcntret(パケット及びノード当たり)の関数として、又は列が送信された合計回数cnttotによって、送信の度に変化する。本実施例は、受信側で拡散コードを使用する場合である。しかしながら、次の記述では、データパケットDの信号波形は常に同じであり、その例外は、

を満たすC(n,d,i,j,cntret,cnttot)で示される複素数乗算シーケンスと仮定する。
【0050】
この乗算シーケンスを使用して、周波数ホッピング、DS−CDMA拡散、nによって変化する複素定数、又は単なる固定値1を取り入れることができる。例えば、複素定数変化を使用して、パケットが同じ局から再送信される場合、一種の簡単な線形時間−空間コーディングを生成することができる。ここで、最も一般的なケースでは、同じパケットは、複数の局によって同じタイムスロットで送信できることに注目されたい。この操作は、参考文献[8]に例示されているように実際には可能であるが、ユニキャストルーティングを行なう従来のマルチホップルーティング方法においては一般的でなく、しかしフラッディングしたブロードキャストトラフィック又はマルチキャストトラフィックには一般的に使用される。米国国防総省高等研究計画局(DARPA)のPRnetでは、複数バージョンのパケットルーティングが、幾つかの場合において行なわれる。ノードiのタイムスロットnでの受信信号を次式に従って、全ての利用可能なパケットに関してパケットdmaxまで合算する。

上の式では、次式が成り立つ。

【0051】
これらの式は、タイムスロットn−m〜タイムスロットnの行列形の等式系として次式のように表現することができる。

又は、等価的に次式により表わすことができる。

上の式では、バーはベクトルであることを示し、バーが付いていないものは行列である。単一ノードiに関しては観察されないが、マルチホップシステム全体の全ての送信、すなわち全てのV個のノードの受信ベクトルは、次式のように表わすことができる。

或いは、もっと簡単な行列形で次式のように表わすことができる。

【0052】
ここで基本事項を繰り返すと、すなわち、上述のこの等式系(ノードi且つシステム全体に関する)はデータパケットを中心にした公式化であり、所与のデータパケットによって、異なるホップに関して干渉が多数回に渡って生じることを示している。従って、情報に関するこの更に完全な表現を照合及び利用することにより、従来の検出/復号化に比べて検出プロセスを強化することができる。
本発明の例示的第2コンセプトでは、ノードiの検出モジュールは、

(直近に受信した信号を含む)を一括処理し、着目するデータを復号化する。ゼロフォーシング(Zero Forcing:ZF)、最尤検出(Maximum Likelihood Detection)−マルチユーザ検出法(MLD−MUD)、及び線形最小自乗誤差(Linear Minimum Mean Squared Error:LMMSE)のような、どのような汎用検出アルゴリズムも本発明において使用することができ、これにより変調列

を検出することができる。純粋な信号処理の観点から、この操作は、空間−時間符号化通信システム(MIMOのような)におけるようなマルチセンサ情報の処理に類似するので、当該分野の幾つかの例に見られる検出手法又は復号化手法を用いることができる。ここで、図14のフロー図では、情報は、ステップS2Cに示すように、一括処理手段により検出されることに注目されたい。また、既知の情報の記憶バッファは、通常、ステップS3Cに示すように、既に受信しているベースバンド信号情報を保持する。図14から、シングルユーザ検出又は更に一般的なケースのマルチユーザ検出を用いることができることも分かる。
【0053】
コンセプト1及び2の例示的複合
図15に模式的に示すこの別の実施形態では、コンセプト2のように全ての情報を保持し、コンセプト1のように情報を出来得る限り復号化して復号化情報の適切な表示を保存するというように、コンセプト1及び2を組み合わせる。この利点は、保存される残留信号に情報を保持しながら復号化の複雑さを減らす(コンセプト2に比べて)ことである。図15は、既知のデータ及び既知の残留ベースバンド信号を利用する複合コンセプトの実施例を示す。
【0054】
補足情報
既知の情報の程度に関する注釈
用いるルーティング方法に応じて、ヘッダ及び/又はCRC等の重要ではない部分は、リンクに依存しても、しなくてもよい。例えば、ルーティング方法において、パケットが転送ノードを使用する必要がある場合、送信側ID及び受信側IDはホップごとに異なる。しかしながら、ルート、従ってIDは、予め求める必要があるか、又は求める必要が全くない(例えば、テーブル駆動型プロトコルを使用する場合は、フローIDのみが必要である)。従って、前もって認識することができないデータは、全データ(ヘッダ又はトレイラーに格納される)の最大5%に達する可能性がある。5%の場合、何らかのインターリーバー構成と連動して符号化を良好に行なうことによって、幾つかの誤差を処理することになる。またここで、回路交換式マルチホップネットワークにおいて、フィールドは各ホップに関して変更する必要がないので、100%の干渉除去が可能になることを理解されたい。多くの場合、パスは既知なので、ID及びCRCのような種々のフィールドが、認識情報が転送されるときにどのように見えるのかを判断することができる。更に、パスが前もって認識されない場合も、各ノードは多くのバージョンの既に正しく復号化されたパケットを計算することができ、この計算は、パケットがそれ自体の近傍のいずれかのノード対の間で送信され、続いて干渉除去プロセスにおいて最適なパケットを使用するという仮定の下に行われる。この場合、正しいバージョンが使用されるとすると、干渉の100%を除去することもできる。
またここで、パケット交換データ(変更フィールドを有する)の場合、別の非衝突制御チャネルを使用してパケットに関する情報を送信することもでき、且つ別の非衝突制御チャネルはパケットがルーティングされると変えることができる。例えば、アドレスフィールド及びCRCは、このような制御チャネルで送信することができる。これは通常データに関する少量の情報を含むので、必ずしも相対的に非常に大きなエネルギーを消費する訳ではないことに注目されたい。従って、衝突回避プロトコルの利用率は効率の観点からすると、データ送信の場合ほどには重要ではない。
【0055】
要約すると、本発明の第1の態様は、少なくとも一つの受信局及び少なくとも一つの送信局を備える通信システムに関するものであり、受信局は、そこから既に送信されたデータ、固有の受信から得られる復号化データ、及び/又は全てのオーバーヒア時の通信から得られる復号化データを保存する。保存データは、保存データのいずれかが少なくとも一つの他の局によって送信される場合に生じる干渉を除去するために後続の受信に利用される。これは、既に復号化しているデータを除去する基本的な考えである。
好適には、保存データは期限が過ぎると取り除かれる。この操作はタイマーを使用して行うか、又は宛先ノードからの通知、又はデータが遠く離れてしまって大きな干渉を生じるほどのものではなくなっているという通知によって制御することができる。
【0056】
特に、少なくとも一つのデータユニットは、複数の送信が重複した構成の受信信号から、所与の既知の保存データを利用して復号化することができる。
保存された既知の信号情報は、例えば、送信される(転送される)固有の情報、既に受信し、且つ検出された情報、更にはオーバーヒアした情報を含むことができる。
【0057】
従って、本発明は、既知の情報を保存して利用する新規の機構により、チャネル接続問題に新規の次元を追加する。本発明は、ネットワーク性能を明らかに向上させ、従来の隠れ端末問題を効果的に解決する。
前に述べたように、検出はビット又はシンボル毎に、或いはビット列又はシンボル列毎に、シングルユーザ又はマルチユーザについて行なうことができる。検出は、符号化情報又は情報ビットに対して行なうことができる。
【0058】
既に示したように、本発明は通常、マルチホップネットワーク、多段中継ネットワーク、及びリピータネットワークのような無線中継ネットワークに適用することができる。
例示的実施形態では、無線中継通信システムは、少なくとも2つの「双方向」通信ノード又は局、及び少なくとも一つの中継ノード又は局を備え、少なくとも2つの「双方向」通信局は、第1フェーズで送信を同時に行なうか、又は2つのフェーズで少なくとも一つの中継局に対して連続して送信を行なう。更に別のフェーズでは、中継局又は複数の中継局は、受信信号を少なくとも2つの双方向通信局(現在受信を行なっている)に対して同時に再送信する。各双方向通信局は、中間中継ノードからの同時送信信号情報及び当該通信局固有の送信信号情報に基づく干渉除去によって、他の通信ノードからの信号情報を検出するように構成される。
【0059】
好適には、受信信号は、中継局による再送信の前に処理され、この処理によって、受信ノードにおいてSNRが確実に向上し、及び/又はダイバーシチ合成が確実に行われるという利点が生じる。
本発明の更に別の例示的実施形態は、データを送信及び受信する(互いの操作の後に)局、データを受信する局、及びデータを送信する局、更には中継局として機能する多数の局を備える通信システムに関するものであり、データを送信及び受信する局は、当該局固有の送信データの影響を除去する。これは、例えば、上りリンク及び下りリンク通信が同時に行われる多段中継ケースに関連するが、マルチホッピングに使用することもできる。
【0060】
ここで、明示的干渉除去技術及び暗示的干渉除去技術の両方を含む多くの異なるタイプの干渉除去を本発明に使用することができることを理解されたい。
本発明の第2の態様では、信号情報は、既に受信したベースバンド信号情報の形式の既知の情報を現時点において受信しているベースバンド信号情報と一緒に一括処理することにより検出することができる。これは、受信局が、既に受信した全てのベースバンド情報を、直近に受信したベースバンド信号の復号化プロセスにおいて利用することを意味する。
【0061】
ここで、第1及び第2の態様を組み合わせて、ベースバンドデータ及び復号化データの両方の保存を含むハイブリッド版コンセプトとすることができる。
要約すると、本発明は、ネットワークがマルチホップネットワーク、多段中継ネットワーク、又はリピータネットワークのいずれであるかに拘らず、例えば、検出された(復調及び/又は復号化された)形式又はベースバンド形式の既知の情報を「除去」することによって、受信における改善を実現する。
【0062】
本発明の利点として例えば次の項目を挙げることができる。
・既知の情報は干渉を全く生じさせないので、スループット、エンドツーエンド遅延、通信堅牢性、及びこれらの組合せが本質的に改善される。
・興味深いことに、本発明により、従来の「隠れ端末問題」の、殆どでないにせよ、非常に多くが解決されることを強調する。これは上に挙げたポイントに含まれるが、これ自体が強調するに値する。
主として無指向アンテナの使用を暗に仮定して本発明を説明したが、例えば、SDMA(Spatial Diversity Multiple Access)のようなアンテナアレイを用いるチャネル接続方式を使用することも可能である。更に、本発明は、ビームフォーミング又はMIMOのような種々の最先端アンテナ技術を用いて使用することができる。
【0063】
上に記載した実施形態は単に例として示したに過ぎず、本発明はこれらの実施形態には限定されないことを理解されたい。本明細書において開示され、特許請求される重要な基本原理に従った更なる変形、変更及び改善は、本発明の技術範囲に含まれる。
【0064】
付録A
コンセプト1に関するチャネル容量計算
図9の曲線を求めるため、次の数学的関係を使用した。
1ホップ転送によるSNRは次式により定義される。

上の式において、Pは送信電力であり、Gは1ホップパス利得であり、Nは受信機での雑音電力である。
伝播指数αを有するべき法則パス損失モデルにおいて、パス損失を下げて、等距離の2ホップに渡って利用すると仮定すると、ノードCでのSNRは次式により与えられる。
SNR’=SNR・2α
3つの基本タイプの送信にまず着目する。まず、シングル送信は次式で与えられるレートを有する。
=lg(1+SNR’)
MUD受信は、等レート伝送ケースに関して、各送信機の最大レートRを与える次式により表わすことができる。
2R=lg(1+2・SNR’)
既知の信号が除去される構成において、2つの重なり信号を送信することにより、各メッセージ(半分の電力を有する)のレートRは次式に従って与えられる。
=lg(1+SNR’/2)
上式が与えられ、且つ送信と、サイクルに使用するスロットの数との両方を考慮に入れると、図8の方式a)〜d)の最大スループットは次式で与えられる。

図9の方式e)の最大スループットを求めるため、受信信号及び雑音を送信前の送信電力Pに対して正規化する。干渉除去を行った後のノードA及びB両方の結果として得られるSNRは次式で与えられる。

各情報フローのレートはRAnalog=lg(1+SNRAnalog)となるので、スループットは
analog=2RAnalog/2
と表わすことができる。
【0065】
参考文献
[1]. R.Nelson及びL. Kleinrock, “Spatial−TDMA: A collision free multi−hop channel access protocol", in IEEE Trans. Commun. vol. 33, no. 9, pp 934−944, September 1985.

[2]. A. S. Tanenbaum, “Computer Networks", Prentice Hall, 1996, pp. 246−254.

[3]. Bertsekas等、“Data Networks", Prentice Hall, 1991, pp. 350−351.

[4]. P. Karn “MACA − A new channel access method for packet radio", Proc. ARRL/CRRL Amateur Radio 9th Computer Networking Conference, pp. 134−140, London, UK, September 1990.

[5]. V. Bhargawan等、“MACAW: A media access protocol for wireless LAN’s" in Proc. ACM SIGCOMM’ 94, pp. 212−225, London, UK, August−September 1994.

[6]. F.A. Tobagi等、“Packet switching in radio channels: part ii−hidden terminal problem in carrier sense multiple access modes and busy−tone solution" IEEE trans. Commun., vol. 23, no. 12, pp. 1417−1433, December 1975.

[7]. S. Brooke及びT. Giles. “Scheduling and performance of multi−hop radio networks with multi user detection", in Proc. Second Swedish Workshop on Wireless Ad−Hoc Networks, Stockholm, March 2002.

[8]. M. Steenstrup及びG.S. Lauer, “Routing in communications networks", Prentice Hall, 1995, pp. 357−396.

[9]. A. El Gamal, “Multiple user information theory", Proc. Of the IEEE, Vol. 68, December 1980.

[10]. P. Larsson, “Large−Scale Cooperative Relaying Network with Optimal Coherent Combining under Aggregate Relay Power Constraints", December 2003.
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】従来の隠れ端末問題を示す。
【図2】本発明の好適な実施形態によって、本発明の基本原理を示す模式フロー図である。
【図3】本発明の好適な実施形態による、特にマルチユーザ検出に基づく本発明の基本原理を示す模式フロー図である。
【図4】本発明の好適な実施形態による、既知の情報に基づく干渉除去の構成を取り入れたネットワークノードを示す模式ブロック図である。
【図5】固有の転送データにより生じる干渉を除去する実施例を示す模式的なシーケンス図である。
【図6】本発明の干渉除去方法を用いる場合と用いない場合の、図5のシステムのスループット性能の例を、信号対雑音比を関数として示すグラフである。
【図7A】オーバーヒアしたデータによって生じた干渉を除去する一実施例を示す模式的シーケンス図である。
【図7B】オーバーヒアしたデータによって生じた干渉を除去する別の実施例を示す模式的シーケンス図である。
【図7C】オーバーヒアしたデータによって生じた干渉を除去する別の実施例を示す模式的シーケンス図である。
【図7D】オーバーヒアしたデータによって生じた干渉を除去する別の実施例を示す模式的シーケンス図である。
【図8】2つの参照方式を含む、5つの例示的方式に関し、2ホップ中継チャネルにおける既知の情報の干渉除去を示す模式的シーケンス図である。
【図9】図8の5つの例示的方式に関し、信号対雑音比を関数としてスループット性能を例示するグラフである。
【図10A】多段中継のコンセプトの一実施例を示す模式図である。
【図10B】多段中継のコンセプトの別の実施例を示す模式図である。
【図11】多段中継の場合の、本発明の一実施形態による干渉除去を示すシーケンス図である。
【図12A】上りリンク及び下りリンクにおいて同時送信されるトラフィックを有する多段中継のコンセプトを示す模式図である。
【図12B】上りリンク及び下りリンクにおいて同時送信されるトラフィックを有する多段中継の別のコンセプトを示す模式図である。
【図13】上りリンク及び下りリンクにおいて同時送信されるトラフィックを有する多段中継の場合の、本発明の一実施形態による干渉除去を示すシーケンス図である。
【図14】本発明の好適な実施形態による、特に一括処理手順に基づく本発明の基本原理を示す模式フロー図である。
【図15】本発明の好適な実施形態による、明示的な干渉除去を、残りの復号化を行ない、残留ベースバンド信号を既知の情報として保存する操作と組み合わせる基本原理を示す模式フロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する方法であって、
− 既知の信号情報として、少なくとも一つのリンクを介して合計で複数回に渡って送信される少なくとも一つのデータユニットを含む第1組の情報を表わす信号情報を保存するステップ、
− 続いて第2組の情報を表わす信号情報を受信し、その際前記少なくとも一つのデータユニットの送信が前記第2組の情報の受信に干渉するステップ、及び
− 受信信号情報と、既に保存している既知の信号情報の少なくとも一部とに基づく干渉除去により、前記第2組の情報の少なくとも一部を検出するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記干渉除去は明示的な干渉除去及び暗示的な干渉除去の内の少なくとも一つを含む、請求項1記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する方法。
【請求項3】
前記少なくとも一つのデータユニットは、複数のリンクを介して合計で複数回に渡って送信される、請求項1記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する方法。
【請求項4】
前記無線中継ネットワークは、無線マルチホップネットワーク、多段中継ネットワーク、及びリピータネットワークの内の少なくとも一つを含む、請求項1記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する方法。
【請求項5】
前記検出するステップでは、シングルユーザ検出及びマルチユーザ検出の内の一つを行なう、請求項1記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する方法。
【請求項6】
前記第2組の情報の少なくとも一部を検出するステップは、次式

によって表わされる、既に検出されたデータパケットを表わす集合

及び受信信号情報Rを処理するステップを含み、上の式において、fは所定の目的関数であり、

は、結果として得られる一連の検出データパケットである、請求項1記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する方法。
【請求項7】
前記第2組の情報の少なくとも一部を検出するステップは、
− 受信信号情報から既知の信号情報を除去して残留信号を生成するステップ、及び
− 前記残留信号を処理して前記第2組の情報の少なくとも一部を検出するステップ
を含む、請求項1記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する方法。
【請求項8】
前記既知の信号情報は既に受信したベースバンド信号情報を含み、前記第2組の情報の少なくとも一部を検出するステップは、前記既に受信したベースバンド信号情報と、次に受信するベースバンド信号情報を一括処理して前記第2組の情報の少なくとも一部を検出するステップを含む、請求項1記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する方法。
【請求項9】
前記既に受信したベースバンド信号情報は多数の以前の通信インスタンスに関連し、次に受信するベースバンド信号情報は現在の通信インスタンスに関連し、前記既に受信したベースバンド信号情報及び前記次に受信するベースバンド信号情報を複素チャネル利得情報と一緒に処理して、少なくとも一つの検出データパケットの推定値を求める、請求項8記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する方法。
【請求項10】
前記既知の信号情報は、既に受信され、且つ検出された情報を含む、請求項1記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する方法。
【請求項11】
既に受信され、且つ検出された前記情報は、既にオーバーヒアした情報を含む、請求項10記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する方法。
【請求項12】
前記既知の信号情報は固有の送信情報を含む、請求項1記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する方法。
【請求項13】
前記第2組の情報の少なくとも一部を検出するステップは送信スケジュール情報に基づく、請求項1記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する方法。
【請求項14】
前記第1組の情報は多数のデータパケットを含み、前記送信スケジュール情報は、前記第2組の情報を表わす信号情報を受信するとき、データパケットの内どのデータパケットを送信すればよいのかについての情報を含み、よって既に保存されている既知の信号情報の適切な部分が、前記検出するステップにおいて利用される、請求項13記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する方法。
【請求項15】
更に、前記既知の信号情報を継続的に更新するステップを含む、請求項1記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する方法。
【請求項16】
少なくとも2つのノードは、少なくとも一つの中間中継ノードを介して双方向に通信を行ない、前記中間中継ノードは、前記少なくとも2つの通信ノードから受信する信号情報を同時に転送し、前記少なくとも2つの通信ノードの各々は、中間中継ノードからの同時転送信号情報及び当該通信ノード固有の送信信号情報に基づく干渉除去により、他の通信ノードからの信号情報を検出する、請求項1記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する方法。
【請求項17】
無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する構成であって、
− 既知の信号情報として、少なくとも一つのリンクを介して合計で複数回に渡って送信される少なくとも一つのデータユニットを含む第1組の情報を表わす信号情報を保存する手段、
− 第2組の情報を表わす信号情報を受信する手段であって、その際前記少なくとも一つのデータユニットの送信が前記第2組の情報の受信に干渉する構成の手段、及び
− 受信信号情報と、既に保存している前記既知の信号情報の少なくとも一部とに基づく干渉除去により、前記第2組の情報の少なくとも一部を検出する手段
を備える構成。
【請求項18】
前記干渉除去は明示的な干渉除去及び暗示的な干渉除去の内の少なくとも一つを含む、請求項17記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する構成。
【請求項19】
前記少なくとも一つのデータユニットは、複数のリンクを介して合計で複数回に渡って送信される、請求項17記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する構成。
【請求項20】
前記無線中継ネットワークは、無線マルチホップネットワーク、多段中継ネットワーク、及びリピータネットワークの内の少なくとも一つを含む、請求項17記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する構成。
【請求項21】
前記検出する手段は、シングルユーザ検出及びマルチユーザ検出の内の少なくとも一つを行なうように動作する、請求項17記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する構成。
【請求項22】
前記第2組の情報の少なくとも一部を検出する手段は、次式

によって表わされる、既に検出されたデータパケットを表わす集合

及び受信信号情報Rを処理する手段を含み、上の式において、fは所定の目的関数であり、

は結果として得られる一連の検出データパケットである、請求項17記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する構成。
【請求項23】
前記第2組の情報の少なくとも一部を検出する手段は、
− 受信信号情報から既知の信号情報を除去して残留信号を生成する手段、及び
− 前記残留信号を処理して前記第2組の情報の少なくとも一部を検出する手段
を備える、請求項17記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する構成。
【請求項24】
前記既知の信号情報は既に受信したベースバンド信号情報を含み、前記第2組の情報の少なくとも一部を検出する手段は、前記既に受信したベースバンド信号情報と、次に受信するベースバンド信号情報を一括処理して前記第2組の情報の少なくとも一部を検出する手段を含む、請求項17記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する構成。
【請求項25】
前記既に受信したベースバンド信号情報は多数の以前の通信インスタンスに関連し、次に受信するベースバンド信号情報は現在の通信インスタンスに関連し、前記一括処理する手段は、前記既に受信したベースバンド信号情報及び前記次に受信するベースバンド信号情報を複素チャネル利得情報と一緒に処理して、少なくとも一つの検出データパケットの推定値を求めるように動作する、請求項24記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する構成。
【請求項26】
前記既知の信号情報は、既に受信され、且つ検出された情報を含む、請求項17記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する構成。
【請求項27】
前記既に受信され、且つ検出された情報は、既にオーバーヒアした情報を含む、請求項26記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する構成。
【請求項28】
前記既知の信号情報は固有の送信情報を含む、請求項17記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する構成。
【請求項29】
前記第2組の情報の少なくとも一部を検出する手段は送信スケジュール情報に基づいて動作する、請求項17記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する構成。
【請求項30】
前記第1組の情報は多数のデータパケットを含み、前記送信スケジュール情報は、前記第2組の情報を表わす信号情報を受信するとき、データパケットの内どのデータパケットを送信すればよいのかについての情報を含み、前記検出する手段は、前記送信スケジュール情報に基づいて、前記既に保存した既知の信号情報の適切な部分を選択して前記第2組の情報の少なくとも一部の検出に使用する手段を含む、請求項17記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する構成。
【請求項31】
更に、新規に検出される情報を取り入れ、期限切れの信号情報を取り除くことにより、前記既知の信号情報を継続的に更新する手段を含む、請求項17記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する構成。
【請求項32】
少なくとも2つのノードは、少なくとも一つの中間中継ノードを介して双方向に通信を行ない、前記中間中継ノードは、前記少なくとも2つの通信ノードから受信する信号情報を同時に転送するように構成され、前記少なくとも2つの通信ノードの各々は、中間中継ノードからの同時転送信号情報及び当該通信ノード固有の送信信号情報に基づく干渉除去により、他の通信ノードからの信号情報を検出するように構成される、請求項17記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する構成。
【請求項33】
前記無線中継ネットワークのネットワークノードにおいて実施される、請求項17記載の、無線中継ネットワークにおいて信号情報を検出する構成。
【請求項34】
無線中継を行なう通信システムであって、少なくとも2つの双方向通信ノード及び少なくとも一つの中間中継ノードを備え、
前記少なくとも2つの双方向通信ノードの各々は、前記少なくとも一つの中継ノードに信号情報を送信し、且つ当該通信ノード固有の送信信号情報を既知の信号情報として保存するように構成され、
前記少なくとも一つの中継ノードは、前記少なくとも2つの双方向通信ノードに対して受信信号情報を同時に送信するように構成され、
前記少なくとも2つの双方向通信ノードの各々は、中継ノードからの同時送信信号情報及び当該通信ノード固有の保存された既知の信号情報に基づく干渉除去により、他の通信ノードからの信号情報を検出するように構成される、
通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−515843(P2007−515843A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532172(P2006−532172)
【出願日】平成16年4月26日(2004.4.26)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000633
【国際公開番号】WO2004/102891
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】