説明

無線伝送システムの伝送方法

【課題】予め設定される伝送周期内で伝送し、リアルタイム性を確保するために伝送時間を短縮する無線伝送システムの無線伝送方法を提供することを目的とする。
【解決手段】送信先前記無線端末に対して、送信する初回の前記リアルタイムデータに第1のプロトコルヘッダを付随させて送信するステップと、第1のプロトコルヘッダの付随する前記リアルタイムデータを受信し、記憶するステップと、送信元から2回目以降に送信する前記リアルタイムデータには、前回送信したプロトコルヘッダとの差分を第2のプロトコルヘッダとしてリアルタイムデータに付随させて送信するステップと、送信された第2のプロトコルヘッダの付随するリアルタイムデータに、予め送信された前回のプロトコルヘッダを付加して再構成し、前記リアルタイムデータを再生するステップとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末間の伝送に関し、特に、リアルタイム性を要するデータのリアルタイム伝送を可能とする無線伝送システムの伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線を使用した伝送技術は、ワイヤレスであることの特質を生かして、各種の産業分野で応用されている。
【0003】
例えば、従来工場等の構内に有線専用線によるネットワークを敷設して、工場内の各所に設置されている設備機械やセンサ等を上記ネットワークに接続して、各設備機械の稼働情報、警報等のデータを、上記ネットワークを介してパソコン等のコンピュータで収集、受信して処理するプロセス制御システムが構築されていた。
【0004】
このような工場等の特定のエリア内にネットワークを敷設して構成されるプロセス制御システムにおいては、有線の場合、通信線を敷設する工事に手間及びコストが掛かり、更に追加や移設を行うにも簡単にはできず手間やコストが掛かるという問題があった。
【0005】
そこで、自立的に中継先を選択可能な複数の無線端末を特定のエリア内に配置して、無線端末間の通信ルートがフレキシブルに決定される無線ネットワークを構築して、簡便に低コストで構築でき、且つ無線端末の追加や移動、環境変化等によるネットワーク構成の変化や通信障害に対しても自動的に中継ルートを選択する信頼性の高いプロセス制御システムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、この場合、無線端末間の中継ルートの選択方法に関しては、他の無線端末との通信品質診断手段を備え、その通信品質に応じて通信路と中継ルートを自動的に選択する方法が使用されている。
【0007】
この、無線端末間のルーティング方法に関しては、基地局や固定局を使わず、無線端末間でホッピング(中継)するマルチホップ無線通信の技術開発も進んでいる。
【0008】
マルチホップ無線ネットワークとは、各無線局に中継機能を持たせ、直接通信できない複数の無線局の間に存在する無線局を無線中継局として用いることで、直接通信できない無線局間の通信を実現するネットワークである。
【0009】
マルチホップ無線ネットワークにおけるルーティングのプロトコルにおいては、無線中継局とその情報転送先の無線局との間の通信安定度が低い場合には、再接続や情報の再伝送などが必要となり、情報伝送にかかる帯域消費が却って増大してしまうという問題があった。
【0010】
そこで、マルチホップ無線ネットワークにおけるルーティング方法において、は無線中継局の候補となる無線局とその情報転送先の無線局との間の通信安定度に基づいて無線中継局を選択し、それらの間における再接続や情報の再伝送が抑制され、それに伴う帯域消費の増大が抑制される技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−34313号公報
【特許文献2】特開2003−188887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した特開2001−34313号公報に開示されたプロセス制御システムにおける無線端末間の通信においては、無線ネットワークの構成の変化や通信障害に対しては、自動的に対応できるが、プロセス制御システムで伝送される、監視制御データのリアルタイム性に関しては、その伝送帯域が確保されていないために、リアルタイムでないデータの伝送が増加した場合や、伝送エラーが発生した場合などに対しては、監視制御に必要とされるデータを、予め設定される伝送周期内で伝送(リアルタイム性を確保)できない問題がある。
【0013】
同様に、上述した特開2003−188887号公報に開示されたマルチホップ無線ネットワークにおいては、データの伝送効率は向上しているが、リアルタイムデータの伝送に際し、伝送帯域を確保していないため、リアルタイムでないデータの伝送が増加した場合や、伝送エラーが発生した場合などに対しては、やはりリアルタイムデータの伝送のリアルタイム性を確保できない問題がある。
【0014】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、無線端末間のリアルタイムデータの伝送において、予め設定される伝送周期内で伝送し、リアルタイム性を確保するために伝送時間を短縮する無線伝送システムの無線伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項1の無線伝送システムの無線伝送方法は、無線端末間でリアルタイムデータを伝送する場合の転送制御プロトコルとしてTCP/IPを使用する無線伝送方法において、前記無線端末には伝送プロトコルプログラムとしてTCP/IPプロトコルのトランスポート層、ネットワーク層及びデータリンク層のTCP/IPヘッダの構成を制御するプロトコルヘッダ変換処理ステップであって、前記リアルタイムデータを送信する場合において、送信元前記無線端末から送信先前記無線端末に対して、前記リアルタイムデータに付随する第1のプロトコルヘッダを、予め送信するステップと、送信先前記無線端末で送信された前記第1のプロトコルヘッダの付随する前記リアルタイムデータを受信し、記憶するステップと、送信元前記無線端末から送信された前記第1のプロトコルヘッダの内データリンク層(MAC)以外のプロトコルヘッダを取り去った、前記リアルタイムデータのシリーズ番号と時刻とを第2のプロトコルヘッダとして前記リアルタイムデータに付随させて送信するステップと、送信先前記無線端末において、送信された前記第2のプロトコルヘッダの付随するリアルタイムデータに、予め送信された前記第1のプロトコルヘッダを付加して再構成し、前記リアルタイムデータを再生するステップとからなることを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項2の無線伝送方法は、無線端末間でリアルタイムデータを伝送する場合の転送制御プロトコルとしてTCP/IPを使用する無線伝送方法において、前記無線端末には伝送プロトコルプログラムとしてTCP/IPプロトコルのトランスポート層、ネットワーク層及びデータリンク層のTCP/IPヘッダの構成を制御するプロトコルヘッダ変換処理テップであって、送信元前記無線端末から送信先前記無線端末に対して、送信する初回の前記リアルタイムデータに第1のプロトコルヘッダを付随させて送信するステップと、送信された前記第1のプロトコルヘッダの付随する前記リアルタイムデータを送信先前記送信端末で受信し、記憶するステップと、送信元前記無線端末から2回目以降に送信する前記リアルタイムデータには、前回送信したプロトコルヘッダとの差分を第2のプロトコルヘッダとして前記リアルタイムデータに付随させて送信するステップと、送信先前記無線端末において、送信された第2のプロトコルヘッダの付随する前記リアルタイムデータに、予め送信された前回のプロトコルヘッダを付加して再構成し、前記リアルタイムデータを再生するステップとからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無線端末間のリアルタイムデータの伝送において、予め設定される伝送周期内で伝送し、リアルタイム性を確保するために伝送時間を短縮する無線伝送システムの無線伝送方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1に係る無線伝送システムの構成図。
【図2】本発明の実施例1に係る無線端末の構成図。
【図3】本発明の実施例1に係る伝送帯域管理テーブルの例を説明する図。
【図4】本発明の伝送帯域管理処理の動作フロー図。
【図5】本発明の実施例2に係る無線伝送システムの無線端末の構成図。
【図6】本発明の実施例2に係る伝送エラー率を使用した伝送帯域管理テーブル。
【図7】本発明の実施例3に係る伝送時刻を通知する場合の伝送帯域管理テーブル。
【図8】本発明の実施例4に係る無線伝送システムの伝送プロトコルの動作を説明する図。
【図9】本発明の実施例4に係る伝送プロトコル変換処理ヘッダの構成を説明する図。
【図10】本発明の実施例5に係る無線伝送システムの無伝送プロトコルの動作を説明する図。
【図11】本発明の実施例5に係る伝送プロトコル変換処理ヘッダの構成を説明する図。
【図12】本発明の実施例6に係る複数の無線エリアの無線端末間を中継する無線伝送システムの構成図。
【図13】本発明の実施例6に係る、異なる無線エリア間の伝送を中継する場合の中継機能を備えた無線端末の伝送帯域管理テーブルの例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0020】
以下に、本発明による実施例1に係る無線伝送システムについて、図1乃至図4を参照して説明する。図1は、無線伝送システムの構成図である。
【0021】
本無線伝送システムの構成は、例えば、無線伝送が可能な無線エリア1内に配置された、無線端末2乃至5で構成され、無線端末2は監視カメラ2aに接続され、無線端末3はマイクに接続され、夫々、リアルタイムデータであるカメラデータ(後述する映像2)及び音声データ(後述する音声3)をサーバ8に接続された無線端末4に送信し、サーバ7で監視している無線LAN(local area network)システムの構成を示している。
【0022】
また、無線エリア1内には、リアルタイムデータを保持しない無線端末5も存在する。
【0023】
この無線端末2乃至5の夫々は同じ構成で、その詳細構成を図2に示す。無線端末2乃至5は、無線アンテナを介して無線端末間での無線信号の送受信信号を制御する無線伝送部11、無線伝送部11との送受信データを演算処理するデータ処理部12、及び送受信する無線データの伝送帯域を管理し、無線伝送部11から送信されるリアルタイムデータの伝送帯域を管理し、伝送周期内に優先送信することを制御する伝送帯域管理部13とから構成される。
【0024】
ここで、この無線LANシステムの無線伝送方式は、例えば、汎用されている2.4GHz帯域の無線LANシステムとし、無線伝送の変復調方式は妨害波や干渉波排除能力の高いスペクトル拡散(spread spectrum)変調方式とする。
【0025】
また、この無線LANシステムの接続形態は、特定の無線端末がアクセスの権利を制御する集中制御方式、または接続方法に柔軟性のある分散制御方式のいずれでも良い。
【0026】
次に、このような無線LANシステムの各部の詳細構成について説明する。
【0027】
図2において、無線伝送部11は、2.4GHzの高速無線伝送が可能な送受信部11a、この無線伝送信号の変復調部11b、及びこの無線伝送システムの伝送アクセスを制御し、後述するデータ処理部12の制御CPU12cのCPUバス12dに接続される無線インタフェース部11cとからなる。
【0028】
また、データ処理部12は、監視カメラ等のプロセスセンサ15との信号をインタフェースする入出力部12a、このデータ処理部12で処理されるデータ及びその処理プログラムを記憶する制御記憶部12b及びこのデータ処理部12からの入出力信号を演算制御する制御CPU12cとから構成される。
【0029】
また、伝送帯域管理部13は、後述する図3に示す伝送帯域管理テーブル13bを備える伝送記憶部13aと、この伝送帯域管理テーブル13bに予め登録され、CPUバス12dを介して無線インタフェース11cに伝送されるリアルタイムデータの伝送周期(制御周期)単位での伝送のリアルタイム性を確保するように制御する伝送管理CPU13cとから構成される。
【0030】
図3に示す伝送帯域管理テーブル13cには、この無線LANシステム内で伝送されるリアルタイムデータのデータ名、その必要伝送帯域、伝送周期(制御周期)、そしてその送信元及びその送信先の無線端末番号(識別番号)が予め登録される。
【0031】
ここではリアルタイムデータとして、例えば、監視カメラ2aからの映像2(信号)と、マイク3aからの音声3(信号)とが登録され、映像2については、必要伝送帯域2Mbps、伝送周期100ms、送信元無線端末2、送信先無線端末4として予め登録されていることを示す。
【0032】
次に、このように構成された無線伝送システムの伝送管理部13の動作について図1乃至図4を参照して説明する。
【0033】
例えば、この無線LANシステムの最大伝送帯域は10Mbpsで、無線端末2から無線端末4への映像2の伝送帯域2Mbps、無線端末3から無線端末4への音声3の伝送帯域は1Mbpsで、リアルタイムデータの伝送帯域3Mbpsbを確保し、その他の非リアルタイムデータの伝送を7Mbps以内に収まる様に伝送制御する場合について説明する。
【0034】
まず、この無線システムの接続形態が、マスター/スレーブ方式により制御される集中制御の場合の動作は、アクセス権を制御する無線端末2が、図3に示した内容の伝送帯域管理テーブル13bを保持し、この伝送帯域管理テーブル13bに登録されたリアルタイムデータと、それ以外の非リアルタイムデータについて、伝送周期100ms内の時間で可能な伝送帯域を割り当て、夫々の無線端末3乃至5に対する伝送許可を無線端末2の伝送管理CPU13cが指示する。
【0035】
図4において、無線端末2は、この無線伝送システムのいずれかの無線端末からデータの送信要求の有無を判定し(s1)、その要求が伝送管理テーブル13bに予め登録されたリアルタイムデータが含まれるか否か判定する(s2)。
【0036】
リアルタイムデータが含まれる場合には、伝送管理帯域テーブル13bを参照して、リアルタイムデータの送信元に送信許可を通知する伝送帯域管理処理を実行し(s3)、リアルタイムデータが含まれない場合はs5の処理に移る(s5)。
【0037】
送信元である伝送を許可された無線端末2及び無線端末3は、映像2及び音声3のリアルタイムデータを送信する(s4)。
【0038】
リアルタイムデータが含まれない場合には、その伝送周期の時間内においてリアルタイムデータの送信が完了したか否かを確認して(s5)、送信が完了していれば、送信元に要求された非リアルタイムデータの伝送帯域がその周期内に送信可能であることを確認して(s6)、要求された非リアルタイムデータの送信を送信元に許可し(s7)、許可された無線端末が送信を実行する。(ステップs8乃至s10の処理は、実施例2で説明する。)。
【0039】
また、この無線システムの接続形態が、分散制御方式の場合には、夫々の無線端末2乃至5の無線インタフェース11cには、図示しないISO(International Organization for Standard)で標準化された7階層構造のOSI参照モデル(open systems interconnection basis reference model)の基礎となっているTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)プロトコルを搭載し、イーサネット(R)のアクセス制御方式であるCSMA−CD(carrier sense multiple access with collision detection)方式に基づいて制御する。
【0040】
そして、この場合、各無線端末2乃至5は、伝送帯域管理テーブル13bを保持し、夫々の無線端末2乃至5がキャリアセンスをして他の無線端末が送信していないことをモニタし、リアルタイムデータと非リアルタイムデータの伝送を制御する。
【0041】
この場合、伝送帯域管理テーブル13bに予め登録されたリアルタイムデータについては、送信要求がいずれかの無線端末からあれば、即時に伝送する。
【0042】
非リアルタイムデータの送信要求の場合には、リアルタイムデータの伝送周期(制御周期)内にリアルタイムデータが送信されたか否かを確認し、伝送済みで、且つ、リアルタイムデータと非リアルタイムデータの伝送帯域の和がこの無線システムの最大伝送帯域内となる場合に伝送し、最大伝送帯域を超える場合には、次以降の伝送周期で伝送する等非リアルタイムデータの伝送帯域を制限、もしくは分割して伝送する。
【0043】
この分割制御方式の場合の動作フローは、前述した図4に示す集中制御方式の場合と基本的に同様である。
【0044】
このように、リアルタイムデータの伝送帯域、伝送周期を予め登録しておき、伝送周期内に確実にリアルタイムデータが送信できることを確認し、非リアルタイムデータの伝送量を制限するように制御するので、非リアルタイムデータの伝送量が増加した場合や、伝送エラーが発生した場合でも、伝送管理テーブルに予め登録されたリアルタイムデータは、伝送周期内に遅延することなく伝送できる。
【実施例2】
【0045】
以下に、本発明の実施例2に係る無線伝送システムについて、図4乃至図6を参照して説明する。
【0046】
図5は、本発明の無線伝送システムの無線端末の構成をブロック図で示したもので、この実施例2の各部について、実施例1の無線伝送システムの無線端末と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0047】
この実施例2が実施例1と異なる点は、伝送帯域管理部13と並列に、伝送されるデータの伝送エラー率を求める伝送エラー率演算部14を備えたことにある。
【0048】
例えば、無線端末2から無線端末4への伝送エラーが発生しやすい伝送環境にある場合、無線端末2は、伝送エラー率演算部14を備え、データ伝送時の伝送エラー率を求め、図6に示すように伝送帯域管理部13の伝送帯域管理テーブル13bにエラー率を登録し、伝送帯域管理部13では、伝送管理テーブル13bに登録された、例えば、映像2の伝送エラー率が10%の場合、その伝送帯域を2,2Mbpsとして、リアルタイムデータの伝送帯域に、そのエラー率10%分の余裕伝送帯域を見込んだ伝送帯域で管理する。
【0049】
また、この伝送環境は短時間で急変することはまれである場合が多いので、図4のステップs8〜s10の動作フローに示すように、例えば、送信するデータのエラー率を予め測定し(s8)、伝送エラー率を更新の要否を判定し(s9)、所定期間の最大エラー率を伝送開始前に予め伝送帯域管理テーブル13bに自動的に登録し、リアルタイムデータの伝送遅れが発生しないように伝送帯域管理部13で管理する。
【実施例3】
【0050】
以下に、本発明の実施例3に係る無線伝送システムについて、図7を参照して説明する。図7は、伝送帯域管理部13の伝送記憶部13aに記憶される伝送帯域管理テーブル13bの他の作成例を示したもので、その他の各部は実施例1に示す構成と同一であるので、その説明を省略する。
【0051】
この実施例3が実施例1と異なる点は、図7の伝送帯域管理テーブル13bに示すように、リアルタイムデータの送信の開始から終了までの開始終了時刻を予め登録するようにしたことにある。
【0052】
例えば、音声3についての伝送時刻は、01:00:00(時、分、秒)から02:00:00の間の1時間の間に送信されることを示す。
【0053】
このように伝送開始終了時刻を指定して、リアルタイムデータの送信時刻を伝送帯域管理テーブル13bによって予め各無線端末に通知することによって、無線伝送システム全体の仕事の伝送効率を計画的に、有効活用することができる。
【実施例4】
【0054】
以下に、本発明の実施例4に係る無線伝送システムの伝送方法について、図8及び図9を参照して説明する。
【0055】
実施例1において、無線システムの接続形態が分散制御方式の場合においてには、OSI参照モデルの第3、4層に相当する、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)プロトコルを搭載し、第2層のデータリンク層として、多重アクセス制御が可能な、イーサネット(R)のアクセス制御方式であるCSMA−CD(carrier sense multiple access with collision detection)方式に基づいて制御される伝送インタフェース11cで構成されるとしたが、実施例4においては、ネットワーク層(3層)、トランスポート層(4層)として付随させるプロトコルヘッダの構成と伝送手順を変えるプロトコルヘッダ変換処理プログラムを送信元(s13)及び送信先(s16)に備えたことにある。
【0056】
図8に示すように、通常、アプリケーション層においてパケット形式で作成される(s11)送信元のリアルタイムデータは、下位の各層を通過するごとにその先頭にプロトコルヘッダが付加される。3層、4層を通過する場合には、TCP(Transmission Control Protocol)、IP(Internet Protocol)、UDP(User Diagram Protocol)、または、伝送周期が早い場合には、リアルタイムデータを再生する伝送プロトコルとしてTCPに替えてRTP(Real time Transport Protocol)が付加され(s12)、またデータリンク層(2層)の副層(MAC:Media access control sub-layer)では各無線端末の送信元論理アドレス、送信先論理アドレス、データシリーズ番号、及び送信時刻が付加される(s14)。
【0057】
送信先では、付加されたヘッダを先頭から解読してゆき(s15から順にs17へ)、そして、アプリケーション層に送信データを引き渡す(s18)。
【0058】
この3層、4層と2層の間に、プロトコルヘッダ変換処理プログラム(s13)を備え、送信元の無線端末では、3、4層で伝送周期にしたがってサイクリック転送されるヘッダ量を削減し、送信先無線端末では、省略されたプロトコルヘッダを付加して再構成するプロトコルヘッダ変換処理プログラム(s16)を備え、リアルタイムデータの伝送周期が短縮されるように伝送帯域管理部13で制御する。
【0059】
例えば、この無線伝送システムの送信元の無線端末からは、最初の送信においては、図9(a)に示すようにリアルタイムデータのプロトコルヘッダとしてH1乃至H6が構成される。そしてこの、3層、4層のプロトコルヘッダH2(IP)、H3(UDP)、H4(RTP)は、図9(a)に示したように付加されるが、以降の伝送周期においては、図9(b)に示すように、リアルタイムデータ固有のデータシリーズ番号と送信時刻とをヘッダHntとして付加して送信する。
【0060】
送信先の無線端末では、省略されたヘッダH2乃至H4を付加して再構成し、アプリケーション層にリアルタイムデータを渡す。
【0061】
このように、繰り返し送信されるプロトコルを削除、再構成するプロトコルヘッダ変換処理プログラム(s13、s16)を備えることによって、送信量の大きなプロトコルヘッダ部分を削除し、伝送周期を短縮することが可能となるので、より早い伝送周期の要求を可能とする。
【実施例5】
【0062】
以下に、本発明の実施例4に係る無線伝送システムの伝送方法について、図10及び図11を参照して説明する。
【0063】
実施例5の各プロトコルヘッダ構成の各部について、実施例4と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0064】
この実施例5が実施例4と異なる点は、サイクリック伝送されるプロトコルヘッダについては初回の伝送周期のタイミングで送信し、2回目以後の伝送周期のプロトコルヘッダについてはリアルタイムデータを識別するヘッダのみを付加するよう制御するプロトコル変換処理(s13、s16)を備えたが、実施例5においては、送信元無線端末では前回送信したプロトコルヘッダと、今回送信するプロトコルヘッダの異なるヘッダ、即ち、差分ヘッダのみを付加するプロトコル差分処理(s23)と、送信先無線端末では差分ヘッダを再構成してデータを再生するプロトコルヘッダ差分処理(s26)とを備えて、プロトコルヘッダを削減するようにしたことにある。
【0065】
従って、このようなプロトコルヘッダ差分処理(s23、s26)によって、繰り返し送信されるプロトコルを削除することができる。したがって、送信量の大きなプロトコルヘッダ部分を削除することができるので、伝送周期を短縮することが可能となり、より早い伝送周期での送信が可能となる。
【実施例6】
【0066】
以下に、本発明の実施例6に係る無線伝送システムについて、図12及び図13を参照して説明する。
【0067】
図12は、異なる無線エリア1、1aを持つ無線伝送システムの構成をブロック図で示したもので、この実施例6の各部について、実施例1の無線伝送システムと同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0068】
この実施例6が実施例1と異なる点は、実施例1においては、伝送が可能な無線エリア1内に置かれた無線端末2乃至5間の伝送を可能とする無線端末であったが、実施例6においては、伝送ができない、異なる無線エリア1a内に置かれた無線端末への伝送を中継する中継機能を備えた無線端末としたことにある。
【0069】
例えば、無線端末2から映像2のリアルタイムデータを、異なる無線エリア1aに置かれた無線端末7に送信する場合を考える。
【0070】
この場合、無線端末2乃至5の無線エリア1の最大伝送帯域10Mbps、無線端末4、無線端末6及び7乃至の無線エリア1aの最大伝送帯域10Mbpsとすると、各無線端末は非リアルタイムデータの伝送帯域を8Mbps以内に収まるように伝送を制御する必要がある。
【0071】
但し、無線エリア1及び無線エリア1aの双方にまたがる伝送が可能な無線端末4の最大伝送帯域は、2つの無線アリアにおいて伝送を行うので非リアルタイムデータの伝送帯域は6Mbps以下になるように制御される。
【0072】
したがって、中継機能を備えた無線伝送システムの場合には、図13に示すように、異なる無線エリア1及び1a内に置かれる無線端末間で伝送が行えるように夫々のリアルタイムデータの送信元、送信先及びその中継先の無線端末番号(識別番号)を予め伝送帯域管理テーブル13bに登録しておく。
【0073】
この無線伝送アクセス制御は、前述した集中制御方式、分散制御方式のいずれでも良く、その動作は、実施例1と同様に行うことが可能で、その説明を省略する。
【0074】
本発明は、上述した実施例に何ら限定されるものではなく、各無線端末を構成する無線伝送部11、データ処理部12、伝送帯域管理部13の各部には、夫々に演算CPU及び記憶部を備え、マルチCPUシステムとしたが、データの処理や伝送速度によっては、共有することも可能で、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0075】
1a 無線エリア
3、4、5、6、7 無線端末
2a 監視カメラ
3a マイク
8 サーバ
11 無線伝送部
11a 送受信部
11b 変復調部
11c 無線インタフェース
12 データ処理部
12a 入出力部
12b 記憶部
12c 制御CPU
13 伝送帯域管理部
13a 伝送記憶部
13a1 伝送帯域管理テーブル
14 伝送エラー率演算部
15 プロセスセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末間でリアルタイムデータを伝送する場合の転送制御プロトコルとしてTCP/IPを使用する無線伝送方法において、
前記無線端末には伝送プロトコルプログラムとしてTCP/IPプロトコルのトランスポート層、ネットワーク層及びデータリンク層のTCP/IPヘッダの構成を制御するプロトコルヘッダ変換処理ステップであって、
前記リアルタイムデータを送信する場合において、送信元前記無線端末から送信先前記無線端末に対して、前記リアルタイムデータに付随する第1のプロトコルヘッダを、予め送信するステップと、
送信先前記無線端末で送信された前記第1のプロトコルヘッダの付随する前記リアルタイムデータを受信し、記憶するステップと、
送信元前記無線端末から送信された前記第1のプロトコルヘッダの内データリンク層(MAC)以外のプロトコルヘッダを取り去った、前記リアルタイムデータのシリーズ番号と時刻とを第2のプロトコルヘッダとして前記リアルタイムデータに付随させて送信するステップと、
送信先前記無線端末において、送信された前記第2のプロトコルヘッダの付随するリアルタイムデータに、予め送信された前記第1のプロトコルヘッダを付加して再構成し、前記リアルタイムデータを再生するステップとからなる無線伝送方法。
【請求項2】
無線端末間でリアルタイムデータを伝送する場合の転送制御プロトコルとしてTCP/IPを使用する無線伝送方法において、
前記無線端末には伝送プロトコルプログラムとしてTCP/IPプロトコルのトランスポート層、ネットワーク層及びデータリンク層のTCP/IPヘッダの構成を制御するプロトコルヘッダ変換処理ステップであって、
送信元前記無線端末から送信先前記無線端末に対して、送信する初回の前記リアルタイムデータに第1のプロトコルヘッダを付随させて送信するステップと、
送信された前記第1のプロトコルヘッダの付随する前記リアルタイムデータを送信先前記送信端末で受信し、記憶するステップと、
送信元前記無線端末から2回目以降に送信する前記リアルタイムデータには、前回送信したプロトコルヘッダとの差分を第2のプロトコルヘッダとして前記リアルタイムデータに付随させて送信するステップと、
送信先前記無線端末において、送信された第2のプロトコルヘッダの付随する前記リアルタイムデータに、予め送信された前回のプロトコルヘッダを付加して再構成し、前記リアルタイムデータを再生するステップとからなる無線伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−35224(P2010−35224A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256475(P2009−256475)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【分割の表示】特願2004−266998(P2004−266998)の分割
【原出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】