説明

無線機

【課題】基地局からのトーン信号に基いて周波数調整を行うアナログ方式の無線機を提供する。
【解決手段】基地局とアナログ無線通信を行う通信部14と、通信部から受けたトーン信号に基き、通信部を周波数調整用チャンネルに切り換えて基地局から調整用周波数を受信し、この調整用周波数に基いて周波数調整を行う制御部20をもつ無線機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基地局から周波数調整信号を受けることで周波数調整を行うアナログ無線通信の無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムとして、例えば、業務用の無線通信システムは、アナログ通信機器とデジタル通信機器に分けられる。又、業務用の無線通信システムの通信方式構成は、基地局を介した通信と、基地局を介さずに直接、他の移動無線機と通信をおこなうモードの二つを持つタイプの無線機がある。
【0003】
このような無線機では、送信周波数精度を上げるため、無線機一台ごとにキャリブレーションを行い、その調整値が対応するキャリブレーションデータエリアに設定される。設定の後に、フィールドで無線機を使用し始め、周波数ずれ補正のための定期点検を行うことなく使用し続けていると、この間に温度変化や経年変化により周波数偏差が大きくなる可能性が生じてくる。この対策としてデジタル通信方式を有する無線機では、基地局からの電波に基いて周波数調整を行う技術が知られている。
【0004】
特許文献1は、基地局からの電波を受信している状態で、基地局から送信される高精度の受信周波数に基づいて受信電界強度とビットエラーレートを測定することにより、周波数偏差の調整を行い温度変化や経年変化に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−199523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、アナログ無線通信システムでは、例えば、業務用の移動局無線機においては、基地局(リピーター機能のみ有する)より電波を受信している場合は、デジタルシステムのような受信周波数に基づく発振周波数の調整(ずれ補正)は行なえない。従って、アナログ無線通信システムでは、使用している間に温度変化や経年変化により周波数偏差が大きくなる可能性があり、特許文献1ではどう対応すべきかがわからないという問題がある。
【0007】
本発明は、基地局からのトーン信号に基いて周波数調整を行うアナログ方式の無線機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決する一実施形態は、
基地局とアナログ無線通信を行う通信部と、
前記通信部から受けたトーン信号に基き、前記通信部を周波数調整用チャンネルに切り換えて前記基地局から調整用周波数を受信し、この調整用周波数に基いて周波数調整を行う制御部を具備することを特徴とする無線機。
【発明の効果】
【0009】
アナログ無線通信方式の無線機においても、デジタル無線通信方式と同様に、基地局からの電波を受信している状態で、基地局から送信される高精度の受信周波数を利用して周波数調整処理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線機を伴う通信システムの一例を示すシステム図。
【図2】本発明の一実施形態に係る無線機のAFC部の一例を示すブロック図。
【図3】当該無線機の周波数調整処理の一例を示すタイムチャート。
【図4】当該無線機のキャリブレーションデータテーブルの一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る無線機を含む通信システムは、図1に示すように、制御卓C1からの操作信号を受ける基地局Kと、基地局Kと通信を行う複数のアナログ無線通信方式の複数の無線機R,Rを有している。
【0012】
ここで、無線機Rの無線機AFC(auto frequency control)部1は、図2に示すように、アンテナ11と、アンテナ11の後段に設けられたロウパスフィルタ12と、ロウパスフィルタ12の後段に設けられた送信処理と受信処理を選択する送受信選択部13と、送受信選択部13の後段に設けられた周波受信部14と、周波受信部14の後段に設けられた第1ミキサ15と、第1ミキサ15の後段に設けられたIFフィルタ16と、IFフィルタ16の後段に設けられた第2ミキサ17と、第2ミキサ17の後段に設けられたIFフィルタ18と、IFフィルタ18の後段に設けられたアンプ部19と、アンプ部19の後段に設けられたA/D変換部22を有している。
さらに、無線機AFC部1は、全体の動作を制御すると共に後述する周波数調整処理を行なう制御部20と、制御部20に接続されるメモリ21と、制御部20の後段に設けられたD/A変換部23と、D/A変換部23の後段に設けられた基準信号発生部24と、基準信号発生部24の後段にそれぞれ設けられ、それぞれ出力を第1ミキサ15と第2ミキサ16に供給する第1ローカルシンセサイザ25と、第2ローカルシンセサイザ26を有している。
【0013】
(周波数調整処理)
このような構成をもつ無線機Rにおいて、アナログ無線通信方式にはスケルチ制御用トーン信号があるが、本発明の一実施形態では、このトーン信号の一つを周波数調整機能として割り当てる。無線機の周波数ずれ補正の開始は、基地局Kの制御卓C1からの操作により開始する。
【0014】
すなわち、図3のフローチャートにおいて、制御卓C1より操作を行い、基地局Kから周波数トーン信号を送信する(ステップS11)。無線機Rの制御部20の制御下において、無線機受信チャンネルでトーン信号を受信し、このトーン信号をデコードする(ステップS21)。無線機Rがこのトーン信号をデコードできたと制御部20が判断すると、周波数調整用チャネルに切り替える(ステップS22)。制御部20は、周波数調整用チャネルが指定値レベルの電界強度がないと判断すれば(ステップS23)、調整処理を中止する(ステップS24)。
【0015】
制御部20は、周波数調整用チャネルが指定値レベルの電界強度があると判断すれば(ステップS23)、ステップS25に進み、A/D変換部22は、受信ベースバンド信号のA/D変換を行なってデータを蓄積する。そして、制御部20は、蓄積したデータのFFT(Fast Fourier Transform)解析を行う(ステップS25)。制御部20は、解析結果に基いて周波数ズレ量を算出する(ステップS26)。制御部20は、算出した周波数ズレ量に基き、AFC値を変更して設定する(ステップS27)。制御部20は、周波数ズレ量が所定量以下または最小の値となったと判断するまで、ステップS25乃至ステップS27の工程を反復する(ステップS28)。制御部20は、算出した周波数ズレ量が所定量以下または最小の値となったと判断すると、そのときの周波数を設定すべき周波数であると判断して、図4のキャリブレーションデータテーブルに周波数調整値を設定する(ステップS29)。
【0016】
このような手順で、無線機Rの制御部20は、基地局からの電波を受信している状態で、アナログ方式の通信を介して基地局から受けた調整用周波数信号に従って周波数調整値を設定するものである。そして、無線機Rの制御部20は、キャリブレーションデータテーブルに設定された周波数調整値に基いて、以降の送受信処理を行う。
【0017】
以上詳細に説明したように、本発明の一実施形態である無線機Rによる周波数調整処理によれば、従来からのアナログ無線通信システムにおいても基地局からの電波を受信している状態で、基地局から送信される高精度の受信周波数を利用して、周波数ずれ補正を行うことができる。
【0018】
これにより、周波数ずれ補正のための定期点検をなくし、アナログ無線通信システムでも移動局無線機の周波数補正を容易に行うことができるシステムを提供することができる。
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能であり、これらの記載により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0019】
C1…制御卓、K…基地局、R…無線機、1…無線機AFC(auto frequency control)部、11…アンテナ、12…ロウパスフィルタ、13…送受信選択部、14…高周波受信部、15…第1ミキサ、16…IFフィルタ、17…第2幹さ、18…IFフィルタ、19…アンプ部、20…制御部、21…メモリ、22…A/D変換部、23…D/A変換部、24…基準信号発生部、25…第1ローカルシンセサイザ、26…第2ローカルシンセサイザ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局とアナログ無線通信を行う通信部と、
前記通信部から受けたトーン信号に基き、前記通信部を周波数調整用チャンネルに切り換えて前記基地局から調整用周波数を受信し、この調整用周波数に基いて周波数調整を行う制御部を具備することを特徴とする無線機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−273206(P2010−273206A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124323(P2009−124323)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(507207498)株式会社五洋電子 (43)
【Fターム(参考)】