説明

無線送信装置、無線受信装置、及び、無線送受信装置

【課題】無線ネットワークシステムにおいて、無線受信装置の間欠受信動作回数を低減して省電力化を図る。
【解決手段】無線送信装置100は、送信すべき情報データに、送信先の識別情報及びヘッダの繰り返し数を含み、送信先について定められた数のヘッダを付加して、送信データを生成する信号処理手段30と、信号処理手段によって生成された送信データに基づいて搬送波を変調することにより送信信号を生成する送信回路20と、送信回路によって生成された送信信号が供給されて電波を送信するアンテナ10とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線検針システムやホームネットワーク等の特定小電力無線システムにおいて用いられる無線送信装置、無線受信装置、及び、無線送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信を用いて各家庭におけるガス又は電気の使用量を検針する無線検針システムや、無線通信を用いて室内温度を検出するホームネットワークが利用されている。一般に、そのような無線ネットワークシステムは、特定小電力無線システムと総称され、無線送信装置と無線受信装置、又は、無線の送信機能及び受信機能を有する無線送受信装置によって構成される。それらの装置は、特に、装置間の通信形態に着目して、親機と子機という名称で呼ばれることもある。
【0003】
例えば、子機は各家屋に設置されており、更に、屋内に設置されている冷暖房機器等に搭載された温度センサが子機に接続されている。一方、親機は、複数の子機が点在しているエリアを網羅できるように電柱等に設置され、子機との間で無線通信を行う。親機は、有線回線によって、サーバ等に接続されている。このような構成によって、システムの管理者は、サーバ等を用いて、各家屋の室温情報を集中管理することができる。その結果、管理者が現地に赴いて室温情報を収集するという労力が削減される。
【0004】
そのような無線ネットワークシステムにおいて、例えば、子機がガスメータの近傍に設置されるような場合には、子機において商用電源を利用することが困難となる。そのような理由から、子機の動作電源として、電池が用いられる場合が多い。搭載される電池の消耗を低減するためには、子機の動作における省電力化の実現が重要である。そのために様々な技術が開発されている。
【0005】
例えば、子機は、親機からの伝達情報を受信するために間欠受信動作を行っており、一定の周期で受信動作と受信待機とを繰り返している。親機が特定の子機に対して伝達情報を送信する場合に、宛先の子機は、受信動作期間中に親機から送信される伝達情報が自分宛であるか否かを確認する。伝達情報が自分宛である場合には受信動作を継続し、伝達情報が自分宛でない場合には受信動作を停止して再び間欠受信動作を行う。
【0006】
関連する技術として、下記の特許文献1には、送信側無線機が、システム識別情報及び短縮型呼出名称を符号化して連続的に送信し、受信側無線機が、キャリアセンス動作を間欠的に繰り返し行って、無線電波を検出した場合に、検出電波からシステム識別情報及び短縮型呼出名称情報を検出し、これらの情報に続く自分の無線機の正規の無線呼出名称及び制御情報を受信して無線通信動作を開始する無線システムが開示されている。この無線システムによれば、ノイズ等に影響されることなく、正規の通信のみを適確に識別することができると共に、電池の消耗を低減することができる。しかしながら、特許文献1においては、受信側無線機の間欠受信動作回数を低減して省電力化を図ることに関しては、特に開示されていない。
【特許文献1】特開平10−198881(第7頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、無線ネットワークシステムにおいて、受信側無線装置の間欠受信動作回数を低減して省電力化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る無線送信装置は、送信すべき情報データに、送信先の識別情報及びヘッダの繰り返し数を含み、送信先について定められた数のヘッダを付加して、送信データを生成する信号処理手段と、信号処理手段によって生成された送信データに基づいて搬送波を変調することにより送信信号を生成する送信回路と、送信回路によって生成された送信信号が供給されて電波を送信するアンテナとを具備する。
【0009】
ここで、無線送信装置が、複数の送信先の識別情報を格納する格納手段と、格納手段から所望の送信先の識別情報を読み出して信号処理手段に供給する制御手段とをさらに具備するようにしても良い。
【0010】
また、本発明の第2の観点に係る無線受信装置は、電波を受信して受信信号を発生するアンテナと、アンテナによって発生された受信信号を増幅して復調することにより受信データを生成する受信回路と、受信回路によって生成された受信データに含まれているヘッダにおいて、送信先の識別情報及びヘッダの繰り返し数を検出する信号処理手段と、信号処理手段によって検出された送信先の識別情報が当該無線受信装置に割り当てられている識別情報と一致しないときに、信号処理手段によって検出されたヘッダの繰り返し数に対応する期間において受信動作を停止させる制御手段とを具備する。
【0011】
ここで、無線受信装置が、ヘッダの繰り返し数と受信動作を停止させる期間との対応関係を表す情報を格納する格納手段をさらに具備し、制御手段が、信号処理手段によって検出されたヘッダの繰り返し数に基づいて、受信動作を停止させる期間に関する情報を格納手段から読み出すようにしても良い。
【0012】
さらに、本発明の第3の観点に係る無線送受信装置(親機)は、電波を送受信するアンテナと、送信時に、送信データに基づいて搬送波を変調することにより送信信号を生成してアンテナに供給し、受信時に、アンテナによって発生された受信信号を増幅して復調することにより受信データを生成する送受信回路と、送信すべき情報データに、送信先の識別情報及びヘッダの繰り返し数を含み、送信先について定められた数のヘッダを付加して、送信データを生成し、該送信データを送受信回路に供給する信号処理手段とを具備する。
【0013】
また、本発明の第4の観点に係る無線送受信装置(子機)は、電波を送受信するアンテナと、送信時に、送信データに基づいて搬送波を変調することにより送信信号を生成してアンテナに供給し、受信時に、アンテナによって発生された受信信号を増幅して復調することにより受信データを生成する送受信回路と、送受信回路によって生成された受信データに含まれているヘッダにおいて、送信先の識別情報及びヘッダの繰り返し数を検出する信号処理手段と、信号処理手段によって検出された送信先の識別情報が当該無線送受信装置に割り当てられている識別情報と一致しないときに、信号処理手段によって検出されたヘッダの繰り返し数に対応する期間において受信動作を停止させる制御手段とを具備する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、送信側において情報データに送信先の識別情報及びヘッダの繰り返し数を含むヘッダを付加して送信データを生成し、受信側において送信先の識別情報が当該無線受信装置に割り当てられている識別情報と一致しないときにヘッダの繰り返し数に対応する期間において受信動作を停止させることにより、受信側無線装置の間欠受信動作回数を低減して省電力化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線送信装置の構成を示すブロック図である。無線送信装置100は、アンテナ10と、送信回路20と、信号処理回路30と、CPU40と、メモリ50とを含んでいる。無線送信装置100は、アンテナ10から電波の送信を行い、図3に示す無線受信装置200との間で無線通信を行うことができる。
【0016】
メモリ50は、無線送信装置100の電源が切れてもデータを保持できる不揮発性のメモリで構成され、無線送信装置100のID情報、個々の無線受信装置のID情報、及び、それぞれの無線受信装置における間欠受信動作の周期に関する情報等を格納している。
【0017】
CPU40は、送信すべき情報にエラー訂正コードを付加してエンコードすることにより、情報データを生成する。送信すべき情報としては、例えば、データ長を表す情報、無線送信装置100のID情報、無線受信装置に対する命令情報、及び/又は、サーバ又はセンサ等の外部装置から入力される情報等が該当する。また、制御手段としてのCPU40は、送信回路20及び信号処理回路30に制御信号や必要な情報を供給することにより、これらを制御する。
【0018】
信号処理回路30は、繰返し数生成回路31と、識別番号生成回路32と、フレーム同期信号生成回路33と、ビット同期信号生成回路34と、切換回路35とを含んでいる。繰返し数生成回路31は、CPU40からの情報に基づいて、送信信号に含まれるヘッダの繰返し数を表すデータを生成して、これをCPU40から出力される情報データの先頭に付加する。識別番号生成回路32は、CPU40からの情報に基づいて、識別番号を表すデータを生成して、これを繰返し数生成回路31から出力されるデータの先頭に付加する。
【0019】
フレーム同期信号生成回路33は、フレーム同期信号を生成して、これを識別番号生成回路32から出力されるデータの先頭に付加する。ビット同期信号生成回路34は、ビット同期信号を生成して、これをフレーム同期信号生成回路33から出力されるデータの先頭に付加する。これにより、ビット同期信号と、フレーム同期信号と、識別番号を表すデータと、繰返し数を表すデータとを含むヘッダが、情報データの先頭に付加される。
【0020】
ビット同期信号生成回路34から出力されるデータは、切換回路35に入力される。切換回路35が、ビット同期信号生成回路34から出力されるデータを、必要な回数だけ繰返し数生成回路31に戻すことにより、送信先について定められた数のヘッダが情報データの先頭に付加される。その後、切換回路35は、このようにして生成された送信データを送信回路20に出力する。
【0021】
送信回路20は、信号処理回路30から出力される送信データに基づいて搬送波(キャリア)を変調することにより、変調された搬送波をRF(Radio Frequency)の送信信号としてアンテナ10に供給する。これにより、アンテナ10から電波が送信される。
【0022】
図2は、図1に示す無線送信装置において生成される送信データのフレーム構造を示す図である。無線送信装置100は、無線ネットワークシステムにおいて定められたフォーマットで送信データを構成する。図2に示すように、送信データは、ヘッダ列と情報データとに大別できる。ヘッダ列は、複数のヘッダ1〜Nで構成されており、ここで、「N」は、ヘッダ列に含まれるヘッダ数を表している。例えば、ヘッダ数が3である場合には、N=3であり、ヘッダ1〜3でヘッダ列を構成する。さらに、1つのヘッダは、情報フィールドA〜Dで構成されている。
【0023】
情報フィールドAはビット同期信号によって構成され、情報フィールドBはフレーム同期信号によって構成され、情報フィールドCは識別番号によって構成され、情報フィールドDは繰返し数によって構成されている。ヘッダ1〜Nについて、情報フィールドA〜Dを構成する情報は、繰返し数以外は同じである。ヘッダ列と情報データとによって、送信データが構成される。無線受信装置は、ヘッダNのビット同期信号から受信を開始して、フレーム同期信号、識別番号、繰返し数という順番で、送信データを受信する。
【0024】
ビット同期信号は、「0」と「1」の繰返しで構成される特定のビット列であって、無線受信装置は、ビット同期信号を検出することによって、ビット同期を確立することができる。また、フレーム同期信号は、「0」と「1」の組み合わせで構成される特定のビット列であって、無線受信装置は、フレーム同期信号を検出することによって、フレーム同期を確立し、フレーム同期信号以降に続く信号が有効な情報であることを認識することができる。
【0025】
識別番号は、無線送信装置100から送信される送信信号が、どの無線受信装置に向けられたものであるかを表している。識別番号は、それぞれの無線受信装置によって異なっているので、無線受信装置は、識別番号を検出することにより、無線送信装置100から送信される送信信号が自分宛であるか又は他の無線受信装置宛であるかを判断することができる。
【0026】
本実施形態においては、無線送信装置100がヘッダの繰返し数を送信することにより、無線受信装置における間欠受信動作の回数を低減している。無線受信装置は、受信した繰返し数に基づいて、ヘッダがあと何回繰り返されるかを知ることができるので、送信信号が自分宛でない場合に、ヘッダが繰り返される間は間欠受信動作を停止することができる。これにより、無線受信装置における消費電力が低減され、無線受信装置が電池駆動の場合には電池寿命を長くすることができる。
【0027】
図2に示すように、無線送信装置100は、各々が情報フィールドA〜Dで構成される1つ又は複数のヘッダを生成する。ヘッダの数は、無線送信装置100が伝達情報を送信する宛先である無線受信装置の間欠受信動作の周期に基づいて設定される。例えば、無線送信装置100は、3個のヘッダを生成する場合には、ヘッダ1に含まれる繰返し数を1に設定し、ヘッダ2に含まれる繰返し数を2に設定し、ヘッダ3に含まれる繰返し数を3に設定する。繰返し数を設定する動作については後述する。送信データにおいて、ヘッダ1に含まれる繰返し数の後に情報データが付加される。情報データには、無線受信装置に対する命令情報等が含まれている。
【0028】
本実施形態においては、ビット同期信号が24ビットで構成され、フレーム同期信号が32ビットで構成される。識別番号と繰返し数とは、合わせて96ビットで構成され、情報データについては、データ長を表す情報によって、任意に定めることができる。なお、ノイズ等によって識別番号と繰返し数が影響を受けないように、識別番号と繰返し数を構成する96ビットは、BCH(Bose Chaudhuri Hocquenghem)符号によって符号化されている。本実施形態において、識別番号と繰返し数とを構成する96ビットについては、11ビットの冗長ビットを含む32ビット毎にデータを分割するBCH(32:21)符号化が行われている。
【0029】
図2に示す送信データにおいて、既に説明した情報以外に、例えば、通信状態を表すフラグ信号を付加しても良い。また、識別番号及び繰返し数は、BCH符号によって符号化されているが、例えば、CRC(Cyclic Redundancy Check)符号のような他の符号化方式によって符号化されても良い。
【0030】
本実施形態に係る無線送信装置の動作について、図1を参照しながら説明する。
CPU40は、無線受信装置に対する命令情報等を情報データとして生成し、情報データを繰返し数生成回路31に出力する。また、CPU40は、伝達情報の宛先である無線受信装置の間欠受信動作の周期についての情報をメモリ50から取得し、これに基づいてヘッダの数を決定し、繰返し数を繰返し数生成回路31に設定する。
【0031】
ここで、送信信号に含まれるヘッダの数は、伝達情報の宛先である無線受信装置が確実に伝達情報を受信できるように、その無線受信装置の間欠受信動作の周期よりも長くなるように設定される。例えば、CPU40が、無線受信装置の間欠受信動作の周期に基づいてヘッダの数を3と決定した場合に、繰返し数生成回路31は、まず、繰返し数を1に設定して情報データの先頭に付加し、識別番号生成回路32に出力する。
【0032】
また、CPU40は、伝達情報の宛先である無線受信装置の識別番号をメモリ50から取得し、その識別番号を識別番号生成回路32に設定する。識別番号生成回路32は、繰返し数生成回路31から出力されるデータの先頭に識別番号を付加し、フレーム同期信号生成回路33に出力する。
【0033】
フレーム同期信号生成回路33は、識別番号生成回路32から出力されるデータの先頭にフレーム同期信号を付加し、ビット同期信号生成回路34に出力する。ビット同期信号生成回路34は、フレーム同期信号生成回路33から出力されるデータの先頭にビット同期信号を付加する。このようにして、繰返し数生成回路31〜ビット同期信号生成回路34は、繰返し数を1としたヘッダ1を情報データの先頭に付加する。
【0034】
同様に、繰返し数生成回路31〜ビット同期信号生成回路34は、繰返し数を2としたヘッダ2を、ヘッダ1の先頭に付加する。このような動作を繰り返すことにより、設定された数のヘッダが情報データの先頭に付加されて、送信データが生成される。送信回路20は、送信データに基づいてRFの送信信号を生成し、送信信号をアンテナ10に供給することにより電波を送信する。
【0035】
次に、本発明の第2の実施形態に係る無線受信装置について説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る無線受信装置の構成を示すブロック図である。無線受信装置200は、アンテナ10と、受信回路60と、信号処理回路70と、CPU40と、メモリ50とを含んでいる。受信回路60は、電波を受信したアンテナ10から供給されるRFの受信信号(変調されたキャリア)を復調することにより、受信データを生成して信号処理回路70に出力する。
【0036】
信号処理回路70は、ビット同期信号検出回路71と、フレーム同期信号検出回路72と、識別番号検出回路73と、繰返し数検出回路74と、切換回路75とを含んでいる。受信回路60から出力される受信データは、ビット同期信号検出回路71に入力される。
【0037】
ビット同期信号検出回路71は、入力された受信データに含まれているビット同期信号を検出してビット同期信号の検出をCPU40に通知すると共に、ビット同期信号に後続するデータをフレーム同期信号検出回路72に出力する。フレーム同期信号検出回路72は、入力された受信データに含まれているフレーム同期信号を検出してビット同期信号の検出をCPU40に通知すると共に、フレーム同期信号に後続するデータを識別番号検出回路73に出力する。
【0038】
識別番号検出回路73は、識別番号を表すデータを検出して識別番号をCPU40に通知すると共に、後続するデータを繰返し数検出回路74に出力する。繰返し数検出回路74は、繰返し数を表すデータを検出して繰返し数をCPU40に通知すると共に、後続するデータを切換回路75に出力する。これにより、ビット同期信号と、フレーム同期信号と、識別番号を表すデータと、繰返し数を表すデータとを含むヘッダが、受信データの先頭から取り除かれる。
【0039】
切換回路75が、繰返し数検出回路74から出力されるデータを、必要な回数だけビット同期信号検出回路71に戻すことにより、設定された数のヘッダが取り除かれた情報データが得られる。その後、切換回路75は、このようにして得られた情報データをCPU40に出力する。CPU40は、情報データをデコードしてエラー訂正を行うことにより、無線送信装置から送信された各種の情報を再現する。
【0040】
図4は、図3に示す無線受信装置の間欠動作を説明するための図である。図4に示すように、無線受信装置Aは、通常、受信動作期間T1及び受信待機期間T2を含む一定の周期によって間欠受信動作を行っている。同様に、無線受信装置Bは、通常、受信動作期間T6及び受信待機期間T7を含む一定の周期によって間欠受信動作を行っている。また、間欠受信動作の周期は、それぞれの無線受信装置によって異なっており、必ずしも一致していない。
【0041】
無線受信装置Aは、受信動作期間T1において、無線送信装置から送信されるキャリアの検出を行う。無線送信装置は、受信動作期間T1においては伝達情報を送信していないので、無線受信装置Aは、受信動作期間T1においてキャリアを検出することができない。従って、無線受信装置Aは、受信動作を停止して、受信待機期間T2において待機する。
【0042】
受信待機期間T2の経過後、無線受信装置Aは、再び受信動作を開始して、受信動作期間T3において、無線送信装置から送信されるキャリアの検出を行う。この時、図4に示すように、無線送信装置が無線受信装置Aに対する伝達情報を送信しているので、無線受信装置Aは、受信動作期間T3において、無線送信装置から送信されるキャリアを検出することができる。従って、無線受信装置Aは、受信動作期間T3において、受信信号を復調することにより、受信データに含まれている識別番号の検出を行う。
【0043】
無線受信装置Aは、検出された識別番号が、無線受信装置Aに割り当てられている識別番号と一致することを確認すると、識別番号以降の伝達情報を続けて受信する。無線受信装置Aは、一連の伝達情報の受信が終了した後に、再び、受信動作期間T4及びT5において間欠受信動作を行う。
【0044】
無線受信装置Bは、受信動作期間T6において、無線送信装置から送信されるキャリアを検出することができないので、受信動作を停止して、受信待機期間T7において待機する。受信待機期間T7の経過後、受信動作期間T8において、無線受信装置Bは、再び、無線送信装置から送信されるキャリアの検出を行う。この時、無線送信装置が伝達情報を送信しているので、無線受信装置Bは、受信動作期間T8において、無線送信装置から送信されるキャリアを検出することができる。従って、無線受信装置Bは、受信動作期間T8において、受信信号を復調することにより、伝達情報に含まれている識別番号の検出を行う。
【0045】
しかしながら、無線送信装置から送信されている伝達情報は無線受信装置Aに向けられたものであるので、無線受信装置Bは、検出された識別番号が無線受信装置Bに割り当てられている識別番号と一致しないことを確認する。さらに、無線受信装置Bは、識別番号に続いて、伝達情報に含まれている繰返し数の検出を行う。
【0046】
以下においては、無線送信装置から送信される送信データにおいてヘッダ列に含まれているヘッダ数が5である場合について説明する。その場合に、送信データは、ヘッダ1〜5と情報データとによって構成され、無線送信装置は、ヘッダ5、ヘッダ4、ヘッダ3、ヘッダ2、ヘッダ1、情報データの順に送信する。また、ヘッダ5に含まれている繰返し数は5であり、ヘッダ4に含まれている繰返し数は4となり、同様に、ヘッダ1に含まれている繰返し数は1となる。
【0047】
無線受信装置Bは、受信動作期間T8において検出した繰返し数が5である場合に、ヘッダがあと4回繰り返されることが分かるので、ヘッダが4回繰り返される期間(受信待機期間T9)において受信動作を停止することができる。そのために、図3に示すメモリ50には、繰返し数と受信待機期間との対応関係を表すテーブルが格納されている。
【0048】
従来において、無線受信装置Bは、間欠受信動作を行うので、破線で示す受信動作期間T10〜T12においても一定の周期で間欠受信動作を行うことにより、キャリアが検出されると受信信号を復調して識別番号の検出を行っていた。一方、本実施形態においては、無線送信装置から送信される伝達情報に繰返し数の情報が含まれているので、無線受信装置Bは、伝達情報が無線受信装置Bに向けられたものでないと判断した場合に、一連の伝達情報が送信されている期間においては、間欠受信動作を停止することができる。これにより、無線受信装置Bにおける消費電力が低減され、無線受信装置Bが電池駆動の場合には電池寿命を長くすることができる。
【0049】
なお、送信データに含まれているヘッダ数が5であっても、無線受信装置Bが受信動作期間T8において検出する繰返し数が5であるとは限らない。例えば、無線受信装置Bは、繰返し数として3を検出した場合には、ヘッダがあと2回繰り返されることが分かるので、ヘッダが2回繰り返される期間、間欠受信動作を停止することができる。
【0050】
図5は、図3に示す無線受信装置の動作を示すフローチャートである。
ステップS10において、無線受信装置200は、無線送信装置から送信される伝達情報を間欠受信し、受信回路60は、受信信号を復調して得られた受信データを、ビット同期信号検出回路71に出力する。
【0051】
ビット同期信号検出回路71は、受信データに含まれているビット同期信号を検出すると、ビット同期信号の検出をCPU40に通知する。また、フレーム同期信号検出回路72は、受信データに含まれているフレーム同期信号を検出すると、フレーム同期信号の検出をCPU40に通知する。さらに、識別番号検出回路73は、受信データに含まれている識別番号を検出すると、識別番号をCPU40に通知する。
【0052】
ステップS11において、CPU40は、ビット同期が確立されたか否かを判定する。CPU40は、ビット同期が確立されたと判定すると、処理をステップS12に移行し、ビット同期が確立されていないと判定すると、処理をステップS10に戻す。
【0053】
ステップS12において、CPU40は、フレーム同期が確立されたか否かを判定する。CPU40は、フレーム同期が確立されたと判定すると、処理をステップS13に移行し、フレーム同期が確立されていないと判定すると、処理をステップS10に戻す。
【0054】
ステップS13において、CPU40は、識別番号検出回路73によって検出された識別番号が無線受信装置200に割り当てられている識別番号と一致するか否かを判定する。CPU40は、両者の識別番号が一致すると判定すると、処理をステップS14に移行し、両者の識別番号が一致しないと判定すると、処理をステップS15に移行する。
【0055】
ステップS14において、CPU40は、無線送信装置から送信されている伝達情報が無線受信装置200に向けられたものであると判断して、受信動作を続行するように各部を制御する。繰返し数検出回路74は、受信データに含まれている繰返し数を検出する。切換回路75は、繰返し数が1でない場合には、繰返し数に後続するデータをビット同期信号検出回路71に戻し、繰返し数が1となったら、繰返し数に後続するデータを情報データとしてCPU40に出力する。CPU40は、情報データを取得すると、その情報データに含まれている各種の情報に従って処理を行う。処理が終了すると、無線受信装置200は、再びステップS10において間欠受信動作を開始する。
【0056】
識別番号検出回路73によって検出された識別番号が無線受信装置200に割り当てられた識別番号と一致しない場合には、ステップS15において、繰返し数検出回路74が、受信データに含まれている繰返し数を検出する。繰返し数検出回路74は、検出された繰返し数をCPU40に通知する。
【0057】
ステップS16において、CPU40は、繰返し数検出回路74から通知された繰返し数に基づいて、メモリ50に格納されている繰返し数と受信待機期間との対応関係を表すテーブルを参照して、繰返し数に対応する受信待機期間を読み出すことにより、受信待機期間を決定する。例えば、このテーブルには、繰返し数10、9、・・・、1に対応して、受信待機期間5秒、4.5秒、・・・、0.5秒が格納されている。
【0058】
ステップS17において、CPU40は、無線受信装置200の間欠受信動作を受信待機期間において停止するように各部を制御する。ステップS18において、CPU40は、間欠受信動作を停止させている期間を、タイマー機能等を用いて測定し、受信待機期間が経過すると、処理を再びステップS10に戻して、間欠受信動作を開始するように各部を制御する。
【0059】
図1及び図3において、信号処理回路30及び70がCPU40の外部に構成されているが、信号処理回路30及び70の機能をCPU40及びソフトウェアによって実現するようにしても良い。その場合に、ソフトウェアは、メモリ50に格納される。その結果、本実施形態の特徴である繰返し数生成回路31及び繰返し数検出回路74がCPU40の内部機能として構成されるので、従来のハードウエアを変更する必要がないというメリットがある。
【0060】
次に、本発明の第3の実施形態に係る無線送受信装置について説明する。
図6は、本発明の第3の実施形態に係る無線送受信装置の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る無線送受信装置は、例えば無線ネットワークシステムにおいて親機として用いられるものであり、図7に示す子機400との間で無線通信を行う。無線送受信装置(以下、「親機」ともいう)300は、アンテナ10と、送受信回路80と、信号処理回路30及び110と、CPU40と、メモリ50と、外部インタフェース90とを含んでいる。
【0061】
送受信回路80は、親機が子機に電波を送信する場合と子機から電波を受信する場合とに応じて、図1に示す送信回路20又は図3に示す受信回路60と同様に機能する。また、信号処理回路110は、ビット同期信号検出回路71と、フレーム同期信号検出回路72と、識別番号検出回路73とを含んでいる。通常、子機から送信信号が送信される親機300は単一に決定され、親機300は、図7に示す子機400のように間欠受信動作を行わないので、信号処理回路110において、繰返し数検出回路74と切換回路75は省略されている。
【0062】
図6に示すように、CPU40は、外部インタフェース90を介して、無線ネットワークシステム全体を管理するサーバ310に接続されている。サーバ310には、親機300のエリアに存在する子機の数に関する情報、無線ネットワークシステムにおける子機の稼動状態や間欠受信動作の周期に関する情報、及び、無線ネットワークシステムを運用する上で必要な情報が集中管理されている。
【0063】
親機300は、必要に応じて、サーバ310からデータを収集し、メモリ50に格納しておくことができる。例えば、親機300は、サーバ310から子機に対する命令情報を取得してメモリ50に格納しておき、必要に応じて、メモリ50から命令情報を取り出して子機400に送信する。また、子機から親機300に送信されたデータは、サーバ310に転送される。
【0064】
次に、本発明の第4の実施形態に係る無線送受信装置について説明する。
図7は、本発明の第4の実施形態に係る無線送受信装置の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る無線送受信装置は、例えば無線ネットワークシステムにおいて子機として用いられるものであり、図6に示す親機300との間で無線通信を行う。図7に示す無線送受信装置(以下、「子機」ともいう)400において、CPU40は、外部インタフェース90を介して、温度等を感知するセンサ410に接続されている。
【0065】
送受信回路80は、子機が親機に電波を送信する場合と親機から電波を受信する場合とに応じて、図1に示す送信回路20又は図3に示す受信回路60と同様に機能する。また、信号処理回路120は、識別番号生成回路32と、フレーム同期信号生成回路33と、ビット同期信号生成回路34とを含んでいる。通常、子機400から送信信号が送信される親機は単一に決定され、親機は、子機400のように間欠受信動作を行わないので、信号処理回路120において、繰返し数生成回路31と切換回路35は省略されている。
【0066】
センサ410は、例えば、屋内に置かれる冷暖房機器に設置される温度センサである。子機400が親機からセンサ410の温度情報の取得命令を含む伝達情報を受信した場合に、CPU40は、その温度情報の取得命令に従って、センサ410を制御して温度情報を取得する。さらに、子機400は、取得した温度情報を親機に対して送信する。
【0067】
図6及び図7においては、信号処理回路30及び110、又は、信号処理回路70及び120がCPU40の外部に構成されているが、信号処理回路30及び110、又は、信号処理回路70及び120の機能をCPU40及びソフトウェアによって実現するようにしても良い。その場合に、ソフトウェアは、メモリ50に格納される。
【0068】
図8は、親機と複数の子機とによって構成される無線ネットワークシステムを示す図である。このように、繰返し情報を含む送信データを生成する親機300と、繰返し情報によって間欠受信動作の停止が可能な複数の子機400とによって、無線ネットワークシステムが構成される。この無線ネットワークシステムは、複数の子機において間欠受信動作の周期がそれぞれ異なる場合に大きな効果を奏する。
【0069】
例えば、間欠受信動作の周期が1時間の子機Aと間欠受信動作の周期が1秒の子機Bとが同一の親機エリアに混在している場合に、親機から子機B宛に伝達情報を送信すると、子機Aは、その伝達情報の送信期間において受信動作期間がほとんど無いので消費電力は問題とならない。
【0070】
しかしながら、親機から子機A宛に伝達情報を送信すると、子機Bは、その伝達情報の送信期間において間欠受信する回数が多く、しかも、それらの間欠受信動作は、子機B宛のデータを受信するためのものではないので、子機Bにとって余分な電力を消耗しているといえる。
【0071】
本実施形態によれば、親機からヘッダの繰り返し数が送信されるので、子機Bにおいてその間は間欠受信動作を停止することができる。これにより、子機Bにおける消費電力が低減され、子機Bが電池駆動の場合には電池寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線送信装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1に示す無線送信装置で生成される送信データのフレーム構造を示す図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る無線受信装置の構成を示すブロック図。
【図4】図3に示す無線受信装置の間欠動作を説明するための図。
【図5】図3に示す無線受信装置の動作を示すフローチャート。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る無線送受信装置の構成を示すブロック図。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る無線送受信装置の構成を示すブロック図。
【図8】親機と複数の子機とによって構成される無線ネットワークシステムを示す図。
【符号の説明】
【0073】
10 アンテナ、 20 送信回路、 30、70、110、120 信号処理回路、 31 繰返し数生成回路、 32 識別番号生成回路、 33 フレーム同期信号生成回路、 34 ビット同期信号生成回路、 35 切換回路、 40 CPU、 50 メモリ、 60 受信回路、 71 ビット同期信号検出回路、 72 フレーム同期信号検出回路、 73 識別番号検出回路、 74 繰返し数検出回路、 75 切換回路、 80 送受信回路、 90 外部インタフェース、 100 無線送信装置、 200 無線受信装置、 300 無線送受信装置(親機)、 310 サーバ、 400 無線送受信装置(子機)、 410 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線送信装置であって、
送信すべき情報データに、送信先の識別情報及びヘッダの繰り返し数を含み、送信先について定められた数のヘッダを付加して、送信データを生成する信号処理手段と、
前記信号処理手段によって生成された送信データに基づいて搬送波を変調することにより送信信号を生成する送信回路と、
前記送信回路によって生成された送信信号が供給されて電波を送信するアンテナと、
を具備する無線送信装置。
【請求項2】
複数の送信先の識別情報を格納する格納手段と、
前記格納手段から所望の送信先の識別情報を読み出して前記信号処理手段に供給する制御手段と、
をさらに具備する請求項1記載の無線送信装置。
【請求項3】
無線受信装置であって、
電波を受信して受信信号を発生するアンテナと、
前記アンテナによって発生された受信信号を増幅して復調することにより受信データを生成する受信回路と、
前記受信回路によって生成された受信データに含まれているヘッダにおいて、送信先の識別情報及びヘッダの繰り返し数を検出する信号処理手段と、
前記信号処理手段によって検出された送信先の識別情報が当該無線受信装置に割り当てられている識別情報と一致しないときに、前記信号処理手段によって検出されたヘッダの繰り返し数に対応する期間において受信動作を停止させる制御手段と、
を具備する無線受信装置。
【請求項4】
ヘッダの繰り返し数と受信動作を停止させる期間との対応関係を表す情報を格納する格納手段をさらに具備し、前記制御手段が、前記信号処理手段によって検出されたヘッダの繰り返し数に基づいて、受信動作を停止させる期間に関する情報を前記格納手段から読み出す、請求項3記載の無線受信装置。
【請求項5】
無線送受信装置であって、
電波を送受信するアンテナと、
送信時に、送信データに基づいて搬送波を変調することにより送信信号を生成して前記アンテナに供給し、受信時に、前記アンテナによって発生された受信信号を増幅して復調することにより受信データを生成する送受信回路と、
送信すべき情報データに、送信先の識別情報及びヘッダの繰り返し数を含み、送信先について定められた数のヘッダを付加して、送信データを生成し、該送信データを前記送受信回路に供給する信号処理手段と、
を具備する無線送受信装置。
【請求項6】
無線送受信装置であって、
電波を送受信するアンテナと、
送信時に、送信データに基づいて搬送波を変調することにより送信信号を生成して前記アンテナに供給し、受信時に、前記アンテナによって発生された受信信号を増幅して復調することにより受信データを生成する送受信回路と、
前記送受信回路によって生成された受信データに含まれているヘッダにおいて、送信先の識別情報及びヘッダの繰り返し数を検出する信号処理手段と、
前記信号処理手段によって検出された送信先の識別情報が当該無線送受信装置に割り当てられている識別情報と一致しないときに、前記信号処理手段によって検出されたヘッダの繰り返し数に対応する期間において受信動作を停止させる制御手段と、
を具備する無線送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−11048(P2008−11048A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178117(P2006−178117)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】