説明

無線通信装置

【課題】高いスループットを得ることができる。
【解決手段】本開示の一実施形態は、伝搬路情報取得部と、スケジューリング部とを含む。伝搬路情報取得部は、1以上のアンテナを含む複数の張り出し基地局から伝搬路の干渉の状態を示す干渉電力値を取得する。スケジューリング部は、干渉電力値に応じて、複数の張り出し基地局がそれぞれ形成するセルを複数のグループに分け、第1グループに属するセル内で通信が可能な第1期間のスケジューリングを行う第1タイミングと、第2グループに属するセル内で通信が可能な第2期間のスケジューリングを行う第2タイミングとの時間差を、第2グループに属するセルを形成する張り出し基地局が干渉電力値を取得する期間を含む第3期間以上に決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラーシステムにおいて、無線部とベースバンド部とが分離し、1台のベースバンド部で複数の無線部を接続する分散設置型基地局がある。例えば、初期の分散設置型基地局における複数セルのスケジューリング(ユーザ選択及びチャネル割り当て)では、従来の一体型基地局のスケジューリングを複数同時に実施することになると想定される。すなわち、隣接する複数セルのスケジューリングが同一タイミングで実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−206945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現行のセルラーシステムで利用可能なチャネル情報を用いて、隣接セル間で同時にスケジューリングが実施されると、実施のタイミングが複数の隣接セルにおいて同時である場合は、互いにチャネルの割り当てを自粛することとなり、いずれのセルにもチャネルが割り当てられていない無駄な空き時間が多く発生する。また、干渉を与え合うユーザ端末が隣接セルで同時に選択される可能性があることから、周波数利用効率の低いスケジューリング結果となる。
【0005】
本発明の一観点は、高いスループットを実現することができる無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る無線通信装置は、伝搬路情報取得部と、スケジューリング部とを含む。伝搬路情報取得部は、1以上のアンテナを含む複数の張り出し基地局から伝搬路の干渉の状態を示す干渉電力値を取得する。スケジューリング部は、前記干渉電力値に応じて、前記複数の張り出し基地局がそれぞれ形成するセルを複数のグループに分け、前記グループのうち、第1グループに属するセル内で通信が可能な第1期間のスケジューリングを行う第1タイミングと、該第1タイミングよりも後であって第2グループに属するセル内で通信が可能な第2期間のスケジューリングを行う第2タイミングとの時間差を、該第2グループに属するセルを形成する張り出し基地局が前記干渉電力値を取得する期間を含む第3期間以上に決定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【図2】実施形態に係る物理層信号処理部を示すブロック図。
【図3】上りリンクのキャリアセンス結果を用いるスケジューリングタイミングの一例を示す図。
【図4】下りリンクの受信電力測定結果を用いるスケジューリングタイミングの一例を示す図。
【図5】セルグループごとのスケジューリングタイミングの一例を示す図。
【図6】基地局及びユーザ端末の干渉到達範囲の一例を示す図。
【図7】セルグループごとのスケジューリングタイミングの別例を示す図。
【図8】シミュレーション結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る無線通信装置について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
なお、本実施形態では、シングルキャリア伝送を想定して記述するが、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing、直交周波数分割多重伝送)に代表されるマルチキャリア伝送や、さらにこのOFDMを用いてユーザ端末を周波数方向及び時間方向に多重するシステムについても同様に適用されてもよい。また、上下リンクの多重方法についても特に限定されず、TDD(Time Division Duplex)またはFDD(Frequency Division Duplex)に適用することができる。
【0009】
本実施形態に係る無線通信装置について図1を参照して説明する。
本実施形態に係る無線通信装置100は、複数の張り出し基地局150と、中央制御ユニット101とを含む。張り出し基地局150は、1以上のアンテナ151と、アナログ部152とを含む。中央制御ユニット101は、物理層信号処理部102と、スケジューリング部103と、ネットワークインターフェース部104とを含む。図1の例では、張り出し基地局150−1から張り出し基地局150−N(Nは2以上の自然数)までN個の張り出し基地局150が中央制御ユニット101に接続される。
【0010】
アンテナ151は、1つの張り出し基地局150に1以上接続され、図1の例では、アンテナ151−1からアンテナ151−M(Mは2以上の自然数)までM個のアンテナが1つの張り出し基地局150に接続される。
【0011】
アナログ部152は、複数のアンテナ151にそれぞれ対応してアンテナ151と同数存在し、図1の例では、アナログ部152−1からアナログ部152−MまでM個のアナログ部152がある。
信号送信時のアナログ部152は、後述の物理層信号処理部102からデジタル信号を受け取り、デジタル信号をアナログ信号に変換して、アナログ信号をアンテナ151を介して外部へ送信する。送信時のアナログ部152のデジタル−アナログ処理は、デジタルアナログ(D/A)変換器や局部発振回路、周波数変換器、帯域通過フィルタ、電力増幅器を含む一般的な構成を用いて一般的な処理を行うため、ここでの詳細な説明は省略する。
信号受信時のアナログ部152は、アナログ信号をアンテナ151を介して受け取り、アナログ信号をデジタル信号に変換して、デジタル信号を物理層信号処理部102へ送る。受信時のアナログ部152のアナログ−デジタル処理は、帯域通過フィルタ、電力増幅器、局部発振回路、周波数変換器、アナログデジタル(A/D)変換器を含む一般的な構成を用いて一般的な処理を行うため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0012】
物理層信号処理部102は、複数の張り出し基地局150にそれぞれ対応して同数存在し、図1の例では、物理層信号処理部102−1から物理層信号処理部102−NまでN個の物理層信号処理部102がある。なお、複数の物理層信号処理部102を物理的に同一のDSP(Digital Signal Processor)上に実装してそれぞれの処理を行うようにしてもよい。物理層信号処理部102の詳細については、図2を参照して後述する。
【0013】
スケジューリング部103は、物理層信号処理部102からユーザ端末との伝搬路の干渉の状態を示す情報である干渉電力値と、物理層信号処理に関する情報を除去した情報ビットを受け取る。スケジューリング部103は、干渉電力値に応じて、通信を行う際に張り出し基地局150により形成されるセルが互いに干渉しないようにグループ分けを行い、1以上のセルグループを生成する。スケジューリング部103は、その後、セルグループごとに、スケジューリングタイミングを決定する。スケジューリングタイミングとは、基地局によってスケジューリングされた結果が、各ユーザに対して通知され、各ユーザがそのスケジューリング結果に従って動作を開始するタイミングをいう。干渉電力値は、伝搬路の干渉の度合いを算出できるものであればどのようなものでもよい。例えば、各張り出し基地局150における上りリンクの電力測定結果、すなわちキャリアセンス結果、または、各ユーザ端末における下りリンクの受信電力測定結果を表す情報である。
下りリンクの受信電力測定結果を表す情報としては、例えばXGP(eXtended Global Platform)システムにおいては、下りリンクの受信電力が規定の閾値を超えているかどうかを示す情報であり、IEEE802.16mでは、CINR(Carrier to Interference plus Noise Ratio:搬送波電力対干渉雑音電力比)を示す情報である。また、3GPP LTEでは、ユーザ端末から要求されるMCS(Modulation and Coding Scheme)インデックスなどの情報である。これらの情報により、セル間干渉の程度を推測することができる。なお、その他の無線通信システムにおいてもデータ伝送が行われるチャネルのセル間干渉電力の程度を推測することができる情報であればよく、それがいかなる形態で通知されてもよい。
ネットワークインターフェース部104は、ユーザ端末ごとに送信するデータに関して全ての制御を行う。例えば、ネットワークインターフェース部104は、ユーザ端末ごとのデータを生成したり、データトラフィック量を監視する。
【0014】
次に、物理層信号処理部102について図2を参照して詳細に説明する。
物理層信号処理部102は、デジタル信号受信処理部201と、データ検出部202と、伝搬路情報取得部203と、データ生成部204と、デジタル信号送信処理部205とを含む。
【0015】
デジタル信号受信処理部201は、伝搬路等化器、デマッパ、デコーダを含み、必要に応じシリアル/パラレル変換器、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)演算器、パラレル/シリアル変換器、受信ウェイト乗算器、デスクランブラ、デビットインターリーバ等を含む。デジタル信号受信処理部201は、張り出し基地局150のアナログ部152からデジタル信号を受け取り、復号化、デスクランブリング、デビットインタリーブ、復調、シリアル/パラレル変換、FFT、パラレル/シリアル変換などを行い情報ビットを抽出する。
【0016】
データ検出部202は、デジタル信号受信処理部201から情報ビットを受け取り、物理層信号処理に関する情報を除去する。ここでのデータ処理は一般的な処理を行うため、詳細な説明は省略する。
【0017】
伝搬路情報取得部203は、デジタル信号受信処理部201から情報ビットを受け取り、張り出し基地局150ごとの干渉電力値を算出する。また、伝搬路情報取得部203は、デジタル信号受信処理部201から受け取った情報ビットより、セル内の各ユーザ端末の下りリンクの受信電力測定結果を表す情報を取得してもよい。
【0018】
データ生成部204は、スケジューリング部103からユーザデータや制御情報を示す情報ビット系列を受け取り、物理層信号処理に関する情報ビットを付加する。ここでのデータ処理は一般的な処理を行うため、詳細な説明は省略する。
【0019】
デジタル信号送信処理部205は、マッパ、エンコーダを有し、必要に応じスクランブラ、ビットインターリーバ、シリアル/パラレル変換器、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:高速逆フーリエ変換)演算器、パラレル/シリアル変換器、送信ウェイト乗算器を含む。そして、デジタル信号送信処理部205は、データ生成部204から情報ビット系列を受け取り、符号化、スクランブリング、ビットインタリーブ、変調、シリアル/パラレル変換、高速逆FFT、パラレル/シリアル変換などを行いデジタル信号を生成する。
【0020】
また、張り出し基地局150が2本以上のアンテナ数を有する場合、デジタル信号受信処理部201又はデジタル信号送信処理部205は、AAA(Adaptive Array Antenna)処理を適用するためのAAAウェイト計算部及び乗算部を含んでもよい。AAA処理は、所望波電力を最大化する最大比合成(MRC:Maximum Ratio Combining)や干渉電力を最小化するヌルステアリングといった一般的な手法を用いればよいため、ここでの詳細な説明は省略するが、いかなる方法であっても本実施形態に影響を与えることなく適用可能である。
【0021】
次に、スケジューリング部103で設定されるスケジューリングについて図3及び図4を参照して説明する。図3は、上りリンクのキャリアセンス結果を用いてスケジューリングする場合を示し、図4は、下りリンクの受信電力測定結果を表す情報を用いてスケジューリングする場合を示す。
各セルのスケジューリングは、上りリンクのキャリアセンス結果に基づいて、あるチャネルの上りリンクのキャリアセンス結果による干渉電力値が規定の閾値以上であれば、このチャネルに対してユーザ端末を割り当てず、干渉電力値が規定の閾値未満である場合は、ユーザ端末を割り当てて通信を行う。
【0022】
このとき、チャネルに割り当てるユーザ端末の選択方法は、ユーザ端末の通信要求の大きさに基づいて行われてもよく、公平性を考慮し全ユーザ端末に均一に通信機会を提供してもよい。また、伝搬路情報取得部203が各ユーザ端末の下りリンクの受信電力測定結果を表わす情報を取得している場合は、この情報を用いて被干渉量の多いユーザ端末を選択しない規範で実施してもよい。各セルのスケジューリングにおけるユーザ選択方法は、このように上りリンクのキャリアセンス結果及び下りリンクの受信電力測定結果を表わす情報の一方または両方を用いてセル間の干渉を回避する規範であればいかなる方法であってもよい。
【0023】
スケジューリング部103は、第1から第Nまでの張り出し基地局150を、第1から第K(Kは、N以下の2以上の整数)までのK個のグループに分割してセルグループを生成する。スケジューリング部103は、同一のセルグループに属するセルのスケジューリングタイミングは同一時刻として設定する。スケジューリング部103は、セルグループごとに異なるスケジューリングタイミングを割り当てる。図3の例では、第(k−1)のセルグループのスケジューリングタイミング301と第kのセルグループのスケジューリングタイミング302とが異なる時刻に設定されていることを示す。
【0024】
第kのセルグループの上りリンクのキャリアセンスは、第(k−1)のセルグループのスケジューリングタイミング301よりも後に開始する。そのため、第(k−1)のセルグループのスケジューリングタイミング301から第kのセルグループのスケジューリングタイミング302までの時間差314(Δt_k)は、式(1)で表せる。
【数1】

【0025】
ここで、l_ulcs_kは、第kのセルグループに属するセルの上りリンクのキャリアセンス期間311であり、l_us_kは、セル内に存在する1以上のユーザ端末の中から通信を行うユーザを選択するユーザ選択期間312であり、l_ntf_kは、ユーザ端末へスケジューリングの結果を通知するためのスケジューリング結果通知期間313である。なお、異なるセルグループのスケジューリングタイミングの間隔を時間差314以上に確保することが望ましい。
【0026】
また、図4に示すように、下りリンクの場合も上りリンクの場合と同様に、第(k−1)のセルグループのスケジューリングタイミング401と第kのセルグループのスケジューリングタイミング402とが異なる時刻に設定される。第(k−1)のセルグループのスケジューリングタイミング401から第kのセルグループのスケジューリングタイミング402までの時間差415(Δt_k)は、式(2)で表せる。
【数2】

【0027】
ここで、l_dlcs_kは、ユーザ端末の下りリンクの受信電力を測定する受信電力測定期間411であり、l_fb_kは、ユーザ端末の受信電力測定結果の基地局へのフィードバック期間412である。なお、下りリンクの受信電力測定結果を用いる場合も同様に、異なるセルグループのスケジューリングタイミングの間隔を時間差415以上に確保することが望ましい。
【0028】
なお、上りリンクのキャリアセンス結果及び下りリンクの受信電力測定結果を表す情報を用いてスケジューリングを実施する場合には、式(3)の関係を満たす。
【数3】

【0029】
この場合、上りリンクのキャリアセンス期間311か、受信電力測定期間411及びフィードバック期間412かのどちらか期間が長い方に依存して、時間差が決定される。
【0030】
次に、セルのグループピング方法及びセルグループごとのスケジューリングタイミングの一例について図5を参照して説明する。
図5に示すように、セルグループごとに、同一のセルグループ内において任意のスケジューリングタイミングから次のスケジューリングタイミングまでの既定の時間間隔521(以下、スケジューリング間隔ともいう)でスケジューリングが周期的に実施される。また、第1から第Kまでのセルグループの順にスケジューリングが繰り返し実施される。Δt_1の時間差522−1を、第Kのセルグループのスケジューリングタイミング501−Kから第1のセルグループのスケジューリングタイミング501−1までの時間とすると、スケジューリング間隔521は、以下の式(4)を満たす必要がある。
【数4】

【0031】
また、上りリンクのキャリアセンス結果を用いてスケジューリングを実施するシステムの場合では、全セルの上りリンクのキャリアセンス期間、ユーザ選択期間及びスケジューリング結果通知期間に必要な時間がそれぞれl_ulcs、l_us及びl_ntfとすると、セルグループ数Kは式(5)のように表せる。
【数5】

【0032】
同様に、下りリンクの受信電力測定結果を表す情報を用いてスケジューリングを実施するシステムの場合では、全ユーザ端末の受信電力測定期間と受信電力の測定結果のフィードバックに必要な期間とを、それぞれl_dlcs_kとl_fb_kとすると、セルグループ数Kは式(6)のように表せる。
【数6】

【0033】
さらに、上りリンクのキャリアセンス結果及び下りリンクの受信電力測定結果を表す情報を用いてスケジューリングを実施する場合には、式(7)のように表せる。
【数7】

【0034】
また、下りリンクの受信電力測定が基地局からの指示により開始されるシステムの場合には、第kのセルグループに属する基地局が、第(k−1)のセルグループのスケジューリングタイミング以降の適切な時刻に、ユーザ端末に下りリンクの受信電力測定を開始させる必要がある。第kのセルグループに属するセルのユーザ端末に基地局からの下りリンクの受信電力の測定結果を基地局へ送信するように要求する、要求信号の受信処理に必要な時間をl_rx_kとすると、第kのセルグループの基地局は、要求信号を第kのセルグループのスケジューリングタイミングよりも式(8)に示す時間Tinst以前に送信する必要がある。
【数8】

【0035】
次に、セルのグルーピング方法について説明する。
セルのグルーピングは、セル間の干渉の影響が閾値以上であれば、異なるグループに属させる。このとき、セル間の干渉の度合いが大きいほど、それらのセルが優先的に異なるセルグループに属するように分けることが望ましい。セル間の干渉の判定方法は、具体的に、実地で測定した結果を用いてセル間の干渉度合いを判定してもよく、セル内に属するユーザ数が多いほど干渉の影響が多いと判定してもよい。また、張り出し基地局150同士の距離が近いほど干渉の影響が大きいと判定してもよい。さらに、ユーザ端末のハンドオーバ履歴を参照することにより、ハンドオーバの回数が多いほどセル間で重なるエリアが多いため、干渉の影響が大きいと判定してもよい。このような判定方法により、干渉の影響が大きいそれぞれのセルを異なるグループに属させる。
【0036】
このグルーピングについては、グラフ彩色問題として扱うことができ、よく知られている周波数割り当てと同様のアルゴリズムを適用することが可能である。また、このグルーピング処理は頻繁に行う必要はなく、基地局を新規に敷設したとき、変更したとき、さらには、ビルの建設などにより伝搬環境に大きな変化が生じた場合に実施すればよい。
【0037】
次に、本実施形態に係る無線通信装置の動作の一例を図6及び図7を参照して説明する。図6は、基地局が形成する下りリンクの干渉到達範囲、またはユーザ端末が形成する上りリンクの干渉到達範囲を示す。図7は、セルグループごとのスケジューリングタイミングの一例を示す。
【0038】
図6に示すように、基地局A,B,Cがそれぞれ設置され、基地局ごとにセルを形成する。また、基地局ごとの下りリンクの干渉到達範囲601A,601B,602Cが実線で示される。一方、ユーザ端末a,b1,b2,cは各基地局に属する。具体的には、ユーザ端末aは基地局Aが形成するセルAに属し、ユーザ端末b1,b2は基地局Bに形成するセルBに属し、ユーザ端末cは基地局Cに形成するセルCに属する。また、ユーザ端末ごとの上りリンクの干渉到達範囲602a,602b−1,602b−2,602cが破線で示される。
【0039】
セルグループ数Kは3つとし、セルA,B,Cが、異なるセルグループAからCまでにそれぞれ属する場合を想定する。
次に、本実施形態に係るチャネルの割り当て状況について図7を参照して説明する。ここでは、全セルグループは同一のスケジューリング間隔731でスケジューリングを実施するが、各セルグループのスケジューリングタイミングが異なるように設定する。
【0040】
セルグループAは、スケジューリングタイミング701A,702A,・・・,707Aにおいて、その直前に実施されたスケジューリング結果を適用して、チャネルをユーザ端末に割り当てて通信を行うかどうかを決定する。同様に、セルグループB及びCに対しても、スケジューリングタイミング701B,702B,・・・,707B、スケジューリングタイミング701C,702C,・・・,707Cにおいて、その直前に実施されたスケジューリング結果をそれぞれ適用して、チャネルをユーザ端末に割り当てて通信を行うかどうかを決定する。
図7に示すように、初めに時刻701AにおいてセルAに属するユーザ端末aのデータ通信711が行われた場合を想定する。このデータ通信711の期間中に、ユーザ端末b1及びcが通信要求を行ったと想定する。このとき、セルB及びセルCでは、時刻701A−701Bの期間内及び時刻701B−701Cの期間内でそれぞれ実施される、上りリンクのキャリアセンスにおいてユーザ端末aの干渉電力が閾値以上で検出される(キャリアセンス結果721及び722)。よって、セルグループB及びCのそれぞれのスケジューリングタイミング701B及び701Cではチャネルを割り当てることができない。
【0041】
ここで、ユーザ端末aの通信が時刻702Aで終了すると、時刻702A−702Bの期間内で、基地局Bの上りリンクのキャリアセンス及びユーザ端末b1の下りリンク受信電力測定では他の干渉が検出されない。よって、ユーザ端末b1に対してチャネルが割り当てられてデータ通信712が行われる。また、時刻702B−702Cの期間内では、基地局Cの上りリンクのキャリアセンスでユーザ端末b1の干渉が検出されず、ユーザ端末cの下りリンク受信電力測定においても基地局Bの干渉が検出されないことから、セルCのスケジューリングタイミング702Cでユーザ端末cに対してチャネルが割り当てられ、データ通信713が行われる。
ここで、時刻702A−702Bの期間は、いずれのユーザ端末にもチャネルが割り当てられていない空き期間である。従来の手法では、例えば全セルのスケジューリングタイミングが同時である場合、空き期間がスケジューリング間隔Tとなるが、本実施形態では、空き期間がスケジューリング周期Tより短い期間とすることができる。本実施形態におけるスケジューリングでは、式(5)から式(7)までの条件を満たす最大のセルグループ数Kに設定することにより空き期間が必要最小限とすることができる。
【0042】
続いて、時刻702B−702Cの期間内で、ユーザ端末aの通信要求が発生しているが、時刻702C−703Aの期間でユーザ端末b1及びユーザ端末cが通信を行っていることから閾値以上の干渉電力が検出される。よって、ユーザ端末b1及びユーザ端末cのデータ通信712及び713がそれぞれ終了した後、スケジューリングタイミング704Aでユーザ端末aにチャネルが割り当てられ、データ通信714が開始される。
また、時刻703C−704Aの期間内においてユーザ端末b2から、及び時刻704A−704Bの期間内においてユーザ端末cからそれぞれ通信要求が発生したとする。このとき、セルB及びセルCでは、時刻704A−704Bの期間内及び時刻704B−704Cの期間内のそれぞれで実施される上りリンクのキャリアセンスにおいて、ユーザ端末aがデータ通信714を行っていることによる干渉電力が閾値以上で検出される(キャリアセンス結果725及び726)。よって、それぞれのスケジューリングタイミング704B及び704Cでチャネルを割り当てることができない。
【0043】
そこで、ユーザ端末aのデータ通信714が時刻705Aで終了すると、時刻705A−705Bの期間ではどのセルグループも通信をしていないので、スケジューリングタイミング705Bにおいてユーザ端末b2が選択され、データ通信715を行う。このとき、時刻705B−705Cの期間では、ユーザ端末b2の干渉が基地局Cで検出される(キャリアセンス結果727)。よって、スケジューリングタイミング705Cでユーザ端末cが選択されることはなく、時刻706Bでユーザ端末b2のデータ通信715終了後、スケジューリングタイミング706Cにおいてユーザ端末cにチャネルが割り当てられデータ通信716が行われる。
なお、従来の手法のように、全セルのスケジューリングタイミングが同時で、全てセルグループAと同一であった場合、ユーザ端末aの通信終了時刻705A後の最初のスケジューリングタイミング706Aで、ユーザ端末b2とユーザ端末cとが同時に選択されることとなる。この場合、ユーザ端末b2と基地局Cとは、互いに干渉を検出する位置関係にあるため、通信品質が劣化してしまう。一方、本実施形態に係るスケジューリング方法では、隣接セルの関係にあるセルB及びセルCのスケジューリングタイミングにオフセットを設けているため、セル間干渉を及ぼし合うユーザ端末同士が同時に選択されることなく、各ユーザ端末の通信は高い通信品質を維持することができる。
【0044】
なお、図7の例では、セルグループAが通信をおこなった場合、スケジューリングタイミング601Aから次のスケジューリングタイミング602Aまでの期間(スケジューリング間隔中)で通信を続ける例を示したが、通信すべきデータがスケジューリング間隔に満たない場合は、スケジューリング間隔に達するまでダミーデータなどを送ってもよい。
また、通信すべきデータがスケジューリング間隔に満たない場合に、他のセルグループがスケジューリングタイミングに基づいて通信を行ってもよい。例えば、図7では、時刻701Aから701Bまでの期間内でセルグループAの通信が終了した場合を想定する。この場合、時刻701Bから701Cまでの期間内でのセルグループCにおけるキャリアセンス結果により、どのセルグループも通信を行っていないことがわかるので、セルグループCがスケジューリングタイミング701Cにおいてチャネルの割り当てを行ってもよい。
【0045】
本実施形態に係る無線通信装置のシミュレーション結果の一例について図8を参照して説明する。
セル半径200mの正六角形セルを平面上に27個のセルを配置し、各セルに8個のユーザ端末を一様分布に配置したモデルを想定する。チャネルモデルはITU−R Pedestrian A(3km/h)とし、スケジューリングにおけるユーザ選択はProportional Fairness規範で行う。張り出し基地局のアンテナ数は4、ユーザ端末のアンテナ数は1とし、AAAにおいてMMSE(Minimum Mean Square Error)規範のヌルステアリングを行う。基地局及びユーザ端末の送信電力は、それぞれ43dBm及び23dBmとする。
【0046】
従来手法は、全セルが同一スケジューリングタイミングで3フレームごとにスケジューリング結果を適用するのに対し、本実施形態に係るスケジューリング手法では、隣接セル同士が同一セルグループとならないように3つのセルグループに分け、セルグループ間のスケジューリングタイミングには1フレームのオフセットを設けている。ただし、上りリンクのキャリアセンス及び下りリンクの受信電力測定は、スケジューリングタイミングの直前1フレームで行い、図3及び図4を用いて上述したその他の処理に必要な時間は考慮していない。
図8に示すように、下りリンクのユーザSINRをCDF(Cumulative Distribution Function:累積分布関数)で示す。グラフ801は従来手法であり、グラフ802は本実施形態に係るスケジューリング手法である。グラフ801とグラフ802とを比較すると、グラフ802がグラフ801よりもユーザSINRが約1.5dB向上する。なお、セル全体のスループットは11.4%向上する。
【0047】
以上に示した本実施形態によれば、基地局が形成するセルをセル間干渉の程度によって複数のセルグループにグループ分けを行い、セルグループごとに異なるスケジューリングタイミングを設定することにより、無駄な空き時間を低減し、かつセル間の干渉回避を効率的に行うことができ、周波数利用効率を高め、高いスループットを実現することができる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
100・・・無線通信装置、101・・・中央制御ユニット、102・・・物理層信号処理部、103・・・スケジューリング部、104・・・ネットワークインターフェース部、150・・・張り出し基地局、151・・・アンテナ、152・・・アナログ部、201・・・デジタル信号受信処理部、202・・・データ検出部、203・・・伝搬路情報取得部、204・・・データ生成部、205・・・デジタル信号送信処理部、301,302,401,402,501,701A〜C,702A〜C,703A〜C,704A〜C,705A〜C,706A〜C・・・スケジューリングタイミング(時刻)、311・・・キャリアセンス期間、312・・・ユーザ選択期間、313・・・スケジューリング結果通知期間、314,415,522・・・時間差、411・・・受信電力測定期間、412・・・フィードバック期間、521,731・・・スケジューリング間隔、601A,601B,601C・・・基地局、602A,602B,602C,604a,604b,604c・・・干渉到達範囲、603a,603b−1,603b−2,603c・・・ユーザ端末、711〜716・・・データ通信、721〜727・・・キャリアセンス結果、801,802・・・グラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のアンテナを含む複数の張り出し基地局から伝搬路の干渉の状態を示す干渉電力値を取得する伝搬路情報取得部と、
前記干渉電力値に応じて、前記複数の張り出し基地局がそれぞれ形成するセルを複数のグループに分け、前記グループのうち、第1グループに属するセル内で通信が可能な第1期間のスケジューリングを行う第1タイミングと、該第1タイミングよりも後であって第2グループに属するセル内で通信が可能な第2期間のスケジューリングを行う第2タイミングとを決定するスケジューリング部とを備え、
前記第1タイミングと前記第2タイミングとの時間差は、該第2グループに属するセルを形成する張り出し基地局が干渉電力値を取得する期間を含む第3期間以上であることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記スケジューリング部は、第1セルと第2セルとの間の干渉電力値が閾値以上である場合、前記第1セルと前記第2セルとを異なるグループに属させることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記スケジューリング部は、第1張り出し基地局と第2張り出し基地局との間の距離が閾値以下である場合に、前記第1張り出し基地局に属する第1セルと第2張り出し基地局に属する第1セルとを異なるグループに属させることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記スケジューリング部は、第1セルから第2セルあるいは前記第2セルから前記第1セルへのユーザのハンドオーバの回数が閾値以上である場合に、前記第1セルと前記第2セルとを異なるグループに属させることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記第1グループのスケジューリング間隔と前記第2グループのスケジューリング間隔とは等しく、
前記スケジューリング部は、グループの数を、前記第3期間を定数倍した時間が前記スケジューリング間隔以下となるときの該定数の値以下に設定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記第3期間は、ユーザから張り出し基地局へのリンクを示す上りリンクの該張り出し基地局で受信電力を測定するキャリアセンス期間、チャネルを割り当てるユーザを選択するユーザ選択期間、及びユーザを選択した結果を前記チャネルが割り当てられたユーザへ通知する通知期間を含むことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記第3期間は、張り出し基地局からユーザへのリンクを示す下りリンクの受信電力の測定期間、該受信電力の測定値を前記ユーザから前記張り出し基地局へフィードバックするフィードバック期間、チャネルを割り当てるユーザを選択するユーザ選択期間、及びユーザを選択した結果を前記チャネルが割り当てられたユーザへ通知する通知期間を含むことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項8】
ユーザから張り出し基地局へのリンクを示す上りリンクの該張り出し基地局で受信電力を測定するキャリアセンス期間が、前記張り出し基地局からユーザへのリンクを示す下りリンクの受信電力の測定期間と、該受信電力の測定値を前記ユーザから前記張り出し基地局へフィードバックするフィードバック期間との和よりも長い場合は、前記第3期間は、前記測定期間及び前記フィードバック期間の和を含み、
前記キャリアセンス期間が前記測定期間と前記フィードバック期間との和以下である場合は、前記第3期間は、前記キャリアセンス期間を含むことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記スケジューリング部は、前記第1グループに属するセル内で通信が可能なユーザに受信電力の測定結果を張り出し基地局へ送信するように要求する要求信号を、前記第1タイミングよりも、前記第3期間とユーザが前記要求信号を受信処理するのに必要な時間とをあわせた期間以上前に送信することを特徴とする請求項7及び8に記載の無線通信装置。
【請求項10】
1以上のアンテナを含む複数の張り出し基地局と、
前記複数の張り出し基地局における通信を制御する制御部と、を具備する無線通信装置であって、
前記制御部は、
複数の張り出し基地局から伝搬路の干渉の状態を示す干渉電力値を取得する伝搬路情報取得部と、
前記干渉電力値に応じて、前記複数の張り出し基地局がそれぞれ形成するセルを複数のグループに分け、前記グループのうち、第1グループに属するセル内で通信が可能な第1期間のスケジューリングを行う第1タイミングと、該第1タイミングよりも後であって第2グループに属するセル内で通信が可能な第2期間のスケジューリングを行う第2タイミングとを決定するスケジューリング部とを備え、
前記第1タイミングと前記第2タイミングとの時間差は、該第2グループに属するセルを形成する張り出し基地局が前記干渉電力値を取得する期間を含む第3期間以上であることを特徴とする無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−65047(P2012−65047A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206003(P2010−206003)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】