説明

無線VOIP電話システムとその通信制御方法

【課題】 複雑なリンガ信号の送信制御を行うことなく無線LANを介して接続される複数のVOIP電話端末の間でリンガトーンを同期して鳴動する。
【解決手段】 アクセスポイント3は、自分に接続された無線VOIP電話端末4の間で予め統一して設定されたリンガパタンを設定し、そのリンガパタンの鳴動タイミングを一致させる為のタイムスタンプを付けたビーコンを一定周期で送信するとともに、自分に接続された無線VOIP電話端末4を呼び出す為にリンガパルスに代わるショートメッセージの着呼パケットを生成して送信する。無線VOIP電話端末4は、自分を呼び出した着呼パケットを受信した場合、予め各無線VOIP電話端末の間に統一して設定されたリンガパタンと、受信したビーコンから判読したタイムスタンプとを照合することにより同期して鳴動と休止するリンガトーンを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LANを用いた無線VOIP電話システムとその通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット電話システムの導入が進みLAN等を介したVOIP(Voice Over Internet Protocol)電話の利用が進んでいる。PBX始め交換機に接続される従来の有線電話では、交換機で生成されるタイミングの揃ったリンガ信号が各電話機に送信される。その結果、複数の電話機に対しそれぞれ異なる発信元から電話がかけられたとしても、各電話機の間では鳴動と休止時間が同期したリンガトーンとして一斉に鳴動する。
【0003】
ところが、従来の有線電話のリンガ信号は数10V以上の大振幅電圧の変調波であるため、交換機の呼接続情報をサーバを介して各VOIP電話端末へ送受信しなければならない。しかしながら、有線電話の回線とインターネット網では物理層が異なっているので、有線電話のリンガ信号は、VOIP電話端末へそのまま送信出来ない。そこで、VOIP電話を取り扱うサーバは、自身に接続されたVOIP電話端末への接続要求の検出を交換機が出力する着呼情報によって行うか又は、リンガ信号を変換して検出する。そして、サーバはその接続要求があったVOIP電話端末へリンガ信号の代わりにVOIP電話端末の宛先アドレスと着呼情報をインターネットを介して送信し、それを受信したVOIP電話端末は、宛先アドレスを判読して着呼情報を受信し、リンガトーンを自ら生成することによりベルを鳴らしている。
【0004】
従って、複数のVOIP電話端末に同時にそれぞれ異なった発信元から電話がかけられると、各端末はそれぞれ勝手なタイミングで鳴動するので、同一事務所等に居る人間にとってベル音は煩い雑音になる。この様な各VOIP電話端末の間で鳴動するベル音を揃える為に、サーバが交換機から送信されるリンガ信号の振幅情報とタイミング情報を読みとり、その鳴動パタンをデータパケットにしてVOIP電話端末に送信することにより、リンガトーンを同期させる方法がある(例えば、特許文献1。)。
【0005】
ところが、特許文献1の方法によっても、サーバは数秒間連続した鳴動パタンのリンガ信号のデータパケットをVOIP電話端末に送信するためにソフトウェア制御が複雑となり、サーバのCPUの負荷が大きくなる。また、サーバは各VOIP電話端末からの応答を監視して端末毎にリンガ信号の送信を行うように制御しなければならない。更に、リンガ信号を送信するために伝送路のトラフィックを増やす問題がある。特に、無線LANを介したVOIP電話端末では、無線帯域の制限があるのでリンガ信号の伝送によるトラフィックの増加を避け、また、サーバと無線VOIP電話端末の間にアクセスポイントを介して通信するのでリンガ信号の送信制御を簡単にすることが重要な課題になる。
【特許文献1】特開2002−369232号公報 (第4頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無線LANを介したVOIP電話システムでは、事務所に設置された複数のVOIP電話端末に同時に電話がかけられると、各電話端末では勝手なタイミングでリンガトーンが鳴動して煩い雑音になる問題がある。これを防ぐ為に、サーバによって各VOIP電話端末が一斉に同期してリンガトーンを鳴動する制御が提案されているが、その方法ではサーバの負荷が増加し、また無線LAN上のトラフィックが増加する問題があった。
【0007】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、複雑なリンガ信号の送信制御を行うことなく無線LANを介して接続される複数の無線VOIP電話端末の間でリンガトーンの鳴動が同期する無線VOIP電話システム、通信制御方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の無線VOIP電話システムは、着呼情報を出力するSIPサーバと、前記SIPサーバと複数の無線VOIP電話端末との間に設けられ、予め定められた時間間隔で鳴動と休止を繰り返すリンガパタンを記憶し、内部タイマを参照して前記リンガパタンの鳴動タイミングを示すタイムスタンプが設定されたビーコンを前記複数の無線VOIP電話端末へ送信し、前記SIPサーバから着呼情報を受信した場合、少なくとも宛先アドレスと着呼メッセージが設定された着呼パケットを生成して当該宛先アドレスの無線VOIP電話端末へ送信するアクセスポイントと、送信された前記ビーコンから判読した前記タイムスタンプと自端末が備える内部タイマとを照合し、前記アクセスポイントが生成した前記リンガパタンの鳴動タイミングに同期するリンガ信号を再生する端末であって、前記着呼パケットを受信した端末は再生した前記リンガ信号によりリンガトーンを出力する前記複数の無線VOIP電話端末とを具備することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の無線VOIP電話システムの通信制御方法は、SIPサーバと、前記SIPサーバに接続された無線LANのアクセスポイント、および前記アクセスポイントに接続されたVOIP電話を行う複数の無線VOIP電話端末とを備える無線VOIP電話システムの通信制御方法であって、前記SIPサーバは、前記無線LANのアクセスポイントを介して前記無線VOIP電話端末へ着呼情報を送信し、前記アクセスポイントは、前記複数の無線VOIP電話端末の間で予め定められた鳴動と休止を繰り返すリンガパタンを記憶し、内部タイマを参照して前記リンガパタンの鳴動タイミングを示すタイムスタンプが設定されたビーコンを前記複数の無線VOIP電話端末へ送信し、前記SIPサーバから前記着呼情報を受信した場合に、少なくとも宛先アドレスと着呼メッセージが設定された着呼パケットを生成して当該宛先アドレスの無線VOIP電話端末へ送信し、送信された前記ビーコンに設定されたタイムスタンプを判読して前記アクセスポイントが設定した前記リンガパタンの鳴動タイミングに同期するリンガ信号を再生する前記複数の無線VOIP電話端末の中で、送信された前記着呼パケットを受信する前記無線VOIP電話端末は、前記再生した前記リンガ信号によりリンガトーンを出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複雑なリンガ信号の送信制御をすることなく、無線VOIP電話端末の間でリンガトーンが同期して鳴動する無線VOIP電話システムを提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の実施例に係る無線VOIP電話システムの全体を示す構成図である。
【0013】
図1において無線VOIP電話システムは、SIP(Session Initiation Protocol)サーバ1、インターネット網2、SIPサーバ1とインターネット網2を介して接続されるアクセスポイント3、およびアクセスポイント3と無線LAN通信する複数の無線端末4A〜4N(以下、無線端末4A〜4Nに共通する事項の説明にあたっては、単に無線端末4と称する。)を備えている。無線端末4は、アクセスポイント3とインターネット網2を介してSIPサーバ3にアクセスしてVOIP電話を行う。
【0014】
本実施例では、アクセスポイント3と無線端末4との間は、国際標準であるIEEE802.11の通信プロトコルに準じた無線LAN通信を行う。SIPサーバ1は、アクセスポイント3を介して無線端末4との間で無線端末のアドレスを付与した音声パケットと、無線端末4への呼出を行う着呼情報のデータパケットを生成して送信する。
【0015】
アクセスポイント3は、各無線端末4との間のパケット伝送のブリッジとして音声パケットを送受信し、また、着呼時のリンガトーンが同期して鳴動するためのタイムスタンプが設定されたビーコン電波(以下、単にビーコンと称する。)を一定の時間間隔で各無線端末4へ一斉に送信する。このビーコンは、IEEE802.11が規定するマネージメントフレームにタイムスタンプが設定されたものである。図1における無線VOIP電話システムで、各無線端末4にリンガトーンを鳴動させる処理について以下に説明する。
【0016】
SIPサーバ1は、外部からインターネット網2を介して無線端末4への電話の着呼情報を受信すると、その宛先である無線端末4のIPアドレスを判読する。そして、着呼パケットを生成し、そのIPアドレスを持つ無線端末4を接続しているアクセスポイント3を介して当該無線端末4に送信して呼接続処理を行う。
【0017】
アクセスポイント3と各無線端末4との間では、各無線端末4で揃ってリンガトーンが鳴動するように所定の鳴動(例えば、1秒間)と休止(例えば、2秒間)時間で繰り返される統一されたリンガパタンが設定される。
【0018】
即ち、アクセスポイント3は、自身に接続された無線端末4のリンガトーンが同期して鳴動するために、リンガパタンと鳴動タイミングを一致させる為のタイムスタンプが設定されたビーコンを一定の時間間隔(例えば、100msecの間隔)で各無線端末4に送信する。
【0019】
図2は、IEEE802.11の規定のパケットのフォーマットの説明図である。
【0020】
図2において、送信されるビーコンのパケットは、MACヘッダMH、フレームボディFB、フレームチェックFCSからなり、MACヘッダMHには、フレーム制御フィールドf1が含まれることを示している。そして、フレーム制御フィールドf1に当該パケットがビーコンであることを示す記述、即ち、先頭から8ビットまで「00001000」と記述される。また、パケットのフレームボディFBにタイムスタンプがマイクロ秒単位で記述され、ここでは、100ms毎にリセットされて繰り返される。
【0021】
一方、各無線端末4は、そのタイムスタンプが設定されたビーコンを受信すると、受信したタイムスタンプに同期したタイミングでリンガトーンが鳴動と休止するリンガパタンのリンガ信号を生成して待機する。
【0022】
アクセスポイント3から自端末宛の着呼信号を受信した無線端末4は、生成したリンガ信号を出力して鳴動する。同じアクセスポイント3に接続されてログオンしている他の無線端末4も同じタイムスタンプにより同期しているので、これらの無線端末4の間ではリンガトーンの鳴動時間と休止時間が揃って鳴動する。
【0023】
図3は、図1におけるアクセスポイント3の内部構成を示すブロック図である。以下、図3によりアクセスポイント3の各構成とその処理を説明する。
【0024】
図3において、アクセスポイント3は、ネットワークインタフェース31、制御部32、内部タイマ33および送受信器34が内部バスによって接続され、送受信器34には無線端末4と無線通信するアンテナ35が接続されている。また、ネットワークインタフェース31はインターネット網2と接続されている。
【0025】
制御部32は、無線端末4との間で送受信するIPパケットをネットワークインタフェース31と送受信器34との間で入出力して伝送制御を行うことによりブリッジとして機能する。また、制御部32は、内部タイマ33を参照して、所定の時間間隔のタイムスタンプを設定したビーコンを生成して送受信器34に出力する。そして、送受信器34は、入力されたビーコンをアンテナ35を介して各無線端末4へ一斉同報により送信する。
【0026】
また、SIPサーバ1からインターネット網2とネットワークインタフェース31を介して着呼情報を受信すると、制御部32は宛先アドレスをつけたデータパケットに変換して、当該アドレスを持つ無線端末4へ送受信器34とアンテナ35を介して送信する。
【0027】
図4は、図1における無線端末4の内部構成を示すブロック図である。
【0028】
図4において、無線端末4は、制御部41、内部タイマ42、リンガ発生部43および送受信器44が内部バスによって接続され、送受信器44にはアクセスポイント3と無線通信するアンテナ45が接続されている。
【0029】
制御部41は、アンテナ45と送受信器44を介してアクセスポイント3との間で送受信するIPパケットの送受信制御を行うとともに、リンガ発生部43を制御してリンガトーンを出力させる。リンガ発生部43は、リンガトーンを統一されたリンガパタンで鳴動する回路である。このリンガパタンは、リンガ発生部43に自走発振器を設けて生成するものであっても、制御部41又は、リンガ発生部43にリンガパタン情報を記憶して、それに基づいてプログラム制御により生成するものであっても良い。
【0030】
無線端末4の送受信器44は、アンテナ45からビーコンを受信すると、内部バスを介して制御部41とリンガ発生部43に当該ビーコンに設定されたタイムスタンプ情報を出力する。制御部41とリンガ発生部43は、その情報からタイムスタンプを判読し、内部タイマ42と照合してアクセスポイント3が生成するリンガパタンと同期する(同じタイミングで鳴動と休止する)リンガ信号を生成して待機する。
【0031】
制御部41は、送受信器44からのデータパケットのアドレスとデータとを判読して自端末への着呼情報を受信すると、制御信号をリンガ発生部43へ出力する。リンガ発生部43は、その制御信号に応じてタイムスタンプに同期した(即ち、アクセスポイント3が生成するリンガパタンに同期した)リンガトーンを出力して鳴動する。このリンガパタンは全ての無線端末4で統一して設定されている。
【0032】
図5は、ビーコンと着呼情報、およびリンガパタンの関係を示すタイミング図である。図5(a)は、アクセスポイント3から送信されているビーコンのパケットである(各ビーコンのフォーマットを図2参照。)。
【0033】
図5(b)は、アクセスポイント3、および各無線端末4の間で統一されているリンガパタンであって、例えば、1秒間の鳴動期間riに続く2秒間の休止期間reの組合せのリンガトーンが繰り返される。
【0034】
リンガトーンの鳴動開始時刻には、時刻「0」をタイムスタンプとしたビーコンb0が送信される。以降100msec間隔でタイムスタンプ「1」〜「29」のビーコン(b1〜b29)が送信され、3秒経過すると次の繰り返しサイクルに入る。そして、再びリンガトーンが鳴動を開始するタイミングになるので、タイムスタンプが「0」にリセットされたビーコンb0が送信される。図5(a)でタイムスタンプ「0」は、リンガトーンの鳴動開始(立ち上がり)のタイミングを示し、以降、括弧内の数値は100msec単位で設定されたタイムスタンプである。タイムスタンプ「10」は、立ち上がり後、1秒経過した時点のタイミングである。
【0035】
図5(c)、(e)は、SIPサーバ1が受信する無線端末4A、4Bへの着呼信号rbと無線端末4へ着呼を通知する為に送信される着呼パケットrcを示している。また、図5(d)、(f)は、着呼パケットを受信した無線端末4A、4Bが生成するリンガ信号rsである。
【0036】
以下、図5、および図6を参照して、本発明の無線VOIP電話システムの各構成の動作と着呼動作を説明する。図6は、無線VOIP電話システムの着呼動作の手順を説明するフローチャートである。
【0037】
本発明の実施例における無線VOIP電話システムでは、アクセスポイント3と各無線端末4との間では、統一されたリンガパタンが設定されている。そのため、アクセスポイント3の制御部32および各無線端末4の制御部41又はリンガ発生部43の内部メモリには、上記の図5(b)に示される1秒間鳴動、2秒間休止するリンガパタンが予め初期設定されている。(ステップs1、s2)。
【0038】
アクセスポイント3は、タイムスタンプが設定されたビーコンを定期的に(図5(a)参照。)各無線端末4へ一斉に送信している。即ち、アクセスポイント3の制御部32は、内部タイマ33を参照して、100msec間隔でタイムスタンプが設定されたビーコンb0〜b29を生成して送受信器34とアンテナ35を介して送信する(ステップs3)。このタイムスタンプは、上記のリンガパタンの鳴動開始タイミング「0」を基準にして設定される。
【0039】
アンテナ45と送受信器44を介してビーコンb0〜b29を受信した各無線端末4の制御部41は、ビーコンb0〜b29からタイムスタンプを判読して(ステップs4)、内部タイマ42を照合する。そして、アクセスポイント3が生成するリンガパタンのタイミングに同期したリンガ信号を再生して(ステップs5)、リンガ発生部43を待機させる。(各無線端末4は、この時点では着呼がないので、まだリンガトーンは鳴動していない。)。
【0040】
さて、SIPサーバ1は、外部からインターネット網2を介して例えば無線端末4A宛の着呼情報を受信すると、インターネット網2を介して無線端末4Aが接続されているアクセスポイント3へ着呼情報を送信する。アクセスポイント3のネットワークインタフェース31は、その着呼情報を受信する(ステップs6)と、内部バスを介して制御部32へその着呼情報を出力する(図5(C))。この着呼情報がアクセスポイント3に入力されたタイミングは、リンガパタンの立ち上がりから1.6秒経過後であるとする。
【0041】
制御部32は、その着呼情報から無線端末4Aのアドレス情報を判読して、無線端末4Aのアドレス情報が設定された着呼信号rbにデータパケット(以下着呼パケットrcと呼ぶ。)を生成して、送受信器34に出力する(ステップs7)。例えば、着呼がある状態では信号レベルが「H」であるが、アクセスポイント3の制御部32は、入力された着呼信号rbの立ち上がり時に着呼を示すショートメッセージの着呼パケットrcを生成する(図5(c)参照)。そして、着呼パケットrcをビーコン「b16」の送信終了後に送受信器34に出力する。送受信器34は、入力された着呼パケットrcをアンテナ35を介して無線端末4Aへ送信する(ステップs8)。
【0042】
無線端末4Aの制御部41は、アンテナ45と送受信器44を介して着呼パケットrcを受信する(ステップs9)と、その宛先アドレスを判読する。そして自端末宛であった場合、着呼パケットrcを受信したことを示す応答パケット(図示せず)を送受信器44とアンテナ45を介してアクセスポイント3に送信する。なお、アクセスポイント3は、着呼パケットrcを送信後、無線端末4Aから応答パケットが送信されるまで着呼パケットrcの送信を繰り返す。
【0043】
そして、無線端末4Aの制御部41は着呼パケットcrを受信すると、図5(d)に示す様にリンガ信号rsをリンガ発生部42へ出力する(ステップs10)。即ち、制御部41は、着呼パケットrcの受信タイミング又は最新のタイムスタンプ「b16」から着呼パケットrcの受信タイミングを調べる(ステップs11)。そこで、タイムスタンプ「b16」は、休止時間reに属するタイミング(ステップs12がNo)であるので、リンガトーンを出力するリンガ信号rsをリンガ発生部43には送信せず、内部タイマ42を監視しながらタイムスタンプ「b0」になるまで待機する(ステップs13)。そして、次のタイムスタンプ「b0」を受信すると鳴動するタイミングとなり(ステップs12がYes)、リンガトーンを出力するリンガ制御rsをリンガ発生部43に送信する(ステップs14)。これにより、無線端末4Aのリンガ発生部43が鳴動時間riだけ鳴動する。
【0044】
なお、タイムスタンプ「b16」の様にリンガパタンが休止する時間である場合には、リンガトーンは鳴動しないので上記ステップs11、s12を省略してもよい。
【0045】
以上は、1台の無線端末4Aについてのリンガトーン制御処理であるが、無線端末4Aに着呼がある前に、図5(e)のように無線端末4Bにも着呼があったとする。その場合、無線端末4Bにおけるリンガ信号rsは図5(f)に示す様に、図5(b)のアクセスポイント3が生成するリンガパタンに従って鳴動する。従って、これらの2台の無線端末4Aと4Bからは、鳴動と休止する時間(タイミング)が同期してリンガトーンが出力される。なお、無線端末4Bにおける着呼パケットrcの受信タイミングは鳴動時間riであるので、図5(f)ではその一部で鳴動する状態を図示している。
【0046】
ところで、上記の実施例によれば、無線端末4がリンガトーンの休止時間に着呼情報を受信した場合、鳴動を開始するまでの時間が長くなる。これを解決するため、着呼パケットrcを受信次第、予備鳴動音によって着呼を受話者に知らせる(ステップs13−1)手順を加えても良い。
【0047】
図7は、予備鳴動音を発生する場合の無線端末4Aの着呼情報、リンガ信号および予備鳴動音との間の対応関係を説明する図である。図7(a)〜(c)は、図5(a)〜(c)と同様である。そして図7(d)では、図5(d)でのリンガ信号rsに予備鳴動信号prが加わっている。即ち、図7(d)では、着呼パケットrc受信後に短時間の予備鳴動信号prがリンガ発生部43に出力される。リンガ発生部43は、この予備鳴動信号prにより予備鳴動した後は鳴動を休止し、上記の様にタイムスタンプ「b0」となると、上記と同様の手順でリンガ発生部43が鳴動時間riだけ鳴動を行う。
【0048】
以上説明したように、本発明による無線VOIP電話システムによれば、アクセスポイントと各無線端末の間で統一したリンガパタンを設定し、記憶し、無線LANのアクセスポイントからタイムスタンプが設定されたビーコンを送信することにより、そのタイムスタンプ情報に合わせてリンガトーンの鳴動を同期させることが出来る。
【0049】
また、無線端末へ着呼を通知する着呼パケットは、通常のデータパケットで構成されるものであるから、各無線端末は、この着呼パケットの受信に対して送信する応答パケットは、ショートメッセージで、かつ通常のデータパケットの応答手順で良い。従って、アクセスポイントおよびSIPサーバは、着呼処理を行う特別なソフトウェア制御を必要としない。そして、リンガ信号は、予め無線端末に記憶されているリンガパタンを読み出して再生されるので、無線LAN区間ではリンガ信号が送信されることも無くリンガ信号の伝送によるトラフィック増加が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施例に係る無線VOIP電話システムの全体構成図。
【図2】IEEE802.11の規定により送信されるパケットのフォーマット。
【図3】アクセスポイントの内部構成を示すブロック図。
【図4】無線端末の内部構成を示すブロック図。
【図5】ビーコンと着呼信号、およびリンガ信号の関係を示すタイミング図。
【図6】本発明の実施例に係る無線VOIP電話システムの着呼動作の手順を説明するフローチャート。
【図7】ビーコンと着呼信号、リンガ信号、および予備鳴動信号の関係を示すタイミング図。
【符号の説明】
【0051】
1 SIPサーバ
2 インターネット網
3 アクセスポイント
31 ネットワークインタフェース
32 制御部
33 内部タイマ
34 送受信器
35 アンテナ
4A〜4N 無線端末
41 制御部
42 内部タイマ
43 リンガ発生部
44 送受信器
45 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着呼情報を出力するSIPサーバと、
前記SIPサーバと複数の無線VOIP電話端末との間に設けられ、予め定められた時間間隔で鳴動と休止を繰り返すリンガパタンを記憶し、内部タイマを参照して前記リンガパタンの鳴動タイミングを示すタイムスタンプが設定されたビーコンを前記複数の無線VOIP電話端末へ送信し、前記SIPサーバから着呼情報を受信した場合、少なくとも宛先アドレスと着呼メッセージが設定された着呼パケットを生成して当該宛先アドレスの無線VOIP電話端末へ送信するアクセスポイントと、
送信された前記ビーコンから判読した前記タイムスタンプと自端末が備える内部タイマとを照合し、前記アクセスポイントが生成した前記リンガパタンの鳴動タイミングに同期するリンガ信号を再生する端末であって、前記着呼パケットを受信した端末は再生した前記リンガ信号によりリンガトーンを出力する前記複数の無線VOIP電話端末とを
具備することを特徴とする無線VOIP電話システム。
【請求項2】
前記タイムスタンプは、前記繰り返す周期の時間間隔よりも短い所定の一定の時間間隔で送信されるビーコン毎に設定され、且つ前記無線VOIP電話端末が受信した前記ビーコンには前記リンガトーンの開始タイミングのタイムスタンプが設定されることを特徴とする請求項1に記載の無線VOIP電話システム。
【請求項3】
無線VOIP電話端末は、前記着呼パケットを受信した時、前記リンガトーンによる鳴動のタイミングか、又は休止タイミングであるかを判定することを特徴とする請求項1に記載の無線VOIP電話システム。
【請求項4】
前記判定は、前記着呼パケットを受信した時に示す前記内部タイマのタイムスタンプ又は前記ビーコンを受信した際の最新のタイムスタンプから判定することを特徴とする請求項3に記載の無線VOIP電話システム。
【請求項5】
前記着呼パケットを受信したタイミングが前記休止するタイミングである場合、前記着呼パケットの受信直後に短時間の予備鳴動時間を前記リンガ信号に加えることにより予備鳴動音のリンガトーンとを出力することを特徴とする請求項1に記載の無線VOIP電話システム。
【請求項6】
SIPサーバと、前記SIPサーバに接続された無線LANのアクセスポイント、および前記アクセスポイントに接続されたVOIPによって電話を行う複数の無線VOIP電話端末とを備える無線VOIP電話システムの通信制御方法であって、
前記SIPサーバは、前記無線LANのアクセスポイントを介して前記無線VOIP電話端末へ着呼情報を送信し、
前記アクセスポイントは、前記複数の無線VOIP電話端末の間で予め定められた鳴動と休止を繰り返すリンガパタンを記憶し、内部タイマを参照して前記リンガパタンの鳴動タイミングを示すタイムスタンプが設定されたビーコンを前記複数の無線VOIP電話端末へ送信し、前記SIPサーバから前記着呼情報を受信した場合に、少なくとも宛先アドレスと着呼メッセージが設定された着呼パケットを生成して当該宛先アドレスの無線VOIP電話端末へ送信し、
送信された前記ビーコンに設定されたタイムスタンプを判読して前記アクセスポイントが設定した前記リンガパタンの鳴動タイミングに同期するリンガ信号を再生する前記複数の無線VOIP電話端末の中で、送信された前記着呼パケットを受信する前記無線VOIP電話端末は、前記再生した前記リンガ信号によりリンガトーンを出力することを特徴とする無線VOIP電話システムの通信制御方法。
【請求項7】
前記着呼パケットを受信したタイミングが前記休止する時間である場合、前記着呼パケットの受信直後に短時間の予備鳴動時間を前記リンガ信号に加えることにより予備鳴動音のリンガトーンを出力することを特徴とする請求項6に記載の無線VOIP電話システムの通信制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−197262(P2006−197262A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6879(P2005−6879)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】