説明

無電解金めっき方法及び電子部品

【解決手段】無電解ニッケルめっき皮膜と無電解パラジウムめっき皮膜と無電解金めっき皮膜とが形成されためっき皮膜積層体の無電解金めっき皮膜の一部又は全部を、水溶性金化合物と、錯化剤と、ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物と、一般式R1−NH−C24−NH−R2又はR3−(CH2−NH−C24−NH−CH2n−R4で表されるアミン化合物とを含有する無電解金めっき浴を用いた無電解金めっきにて形成する。
【効果】フラッシュ金めっき浴と、厚付け金めっき浴の2種類の浴を準備する必要がなく、1種の金めっき浴で、はんだ接合向け又はワイヤボンディング向けとして好適とされる様々な膜厚の金めっき皮膜を形成することができ、特に、膜厚0.15μm以上の無電解金めっき皮膜を、1種のめっき浴で、1工程で効率よく、有効に形成することができることから、工程の簡略化が可能であり、コスト的に有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無電解金めっき方法、及びこの方法により無電解金めっき処理した電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板や電子部品の実装工程で、高信頼性が要求される用途の表面処理には、無電解ニッケル/置換金めっきが多用されている。置換金めっきは下地となるニッケルとめっき浴中の酸化還元電位の差を利用して金を析出させるため、金がニッケルを溶解してニッケルが腐食され、また、金皮膜上へのニッケルの拡散が起こるため、ワイヤボンディング性が低下する。これを防ぐために、無電解ニッケル/置換金めっき皮膜の上に、更に還元金めっきを施し、金の膜厚を厚くすることで、ワイヤボンディング性の低下を抑えているが、コスト的な問題がある。
【0003】
一方、近年の鉛フリー化の推進によって、Sn−Ag−Cuはんだを使用する動きがあるが、従来の錫−鉛共晶はんだと比べ、はんだ接合時に熱負荷がかかるため、接合特性が低下するという問題がある。そこで無電解ニッケルめっき層と置換型金めっき層の間に無電解パラジウムめっきによりパラジウム皮膜を挟むことで、上記問題を回避する方法が近年行われるようになった。
【0004】
【特許文献1】特開平10−242205号公報
【特許文献2】特許第3565302号公報
【特許文献3】特許第3596335号公報
【特許文献4】特許第3345529号公報
【特許文献5】特開2004−332025号公報
【特許文献6】特開2002−1181134号公報
【特許文献7】特開2006−0339609号公報
【特許文献8】特開平8−269726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
はんだ接合を対象とする表面処理の場合、パラジウム皮膜上の金皮膜は0.05μm程度の薄付け(フラッシュ金めっき)でよい。金めっき皮膜が厚すぎると、錫とニッケルの合金形成が均一でなくなるため、はんだ接合性が低下するおそれがある。はんだ接合を対象とする表面処理であれば、下地金属の防錆的な機能を与える厚みとして、コストから0.05μm程度が通例である。
【0006】
ワイヤボンディングを対象とする表面処理の場合、パラジウム皮膜上の金皮膜は0.2μm以上の厚みが必要となり、現状、置換金めっきで薄付け(フラッシュ金めっき)後、還元金めっきによる厚付けを行なっている。ワイヤボンディング性は、金皮膜の膜厚が厚い方が有利である。これは、下地ニッケルの拡散を抑制できることに加えて、ボンディング強度は金皮膜が厚い方が高いことにある。
【0007】
また、同一の基板において、はんだ接合とワイヤボンディングの双方が施される場合、例えば、基板の表裏で次工程の処理が異なる(例えば、表面ではワイヤボンディング、裏面でははんだ接合)場合、パラジウム皮膜上の金皮膜の厚みは、0.2〜0.3μm程度とされる。ワイヤボンディングは、金皮膜の膜厚が厚い方がよく、はんだ接合性は、薄いほうがよい。ワイヤボンディングとはんだ接合のどちらがより高い特性を要求されるかによって、最適な膜厚は変化するが、互いのバランスが取れた膜厚としては、0.2〜0.3μm程度が最適と考えられる。
【0008】
従来、パラジウム皮膜上に、ある程度の厚み(特に、0.15μm以上)の金めっき皮膜を形成する場合、パラジウム皮膜上に、直接還元金めっきによる厚付けが不可能であったため、パラジウム皮膜上に、一旦置換金めっきで薄付け(フラッシュ金めっき)を行なった後に、還元金めっきで膜厚を稼ぐ必要があった。置換金めっきで膜厚0.15μm以上の膜厚の金めっき皮膜を形成するのは、ほとんど困難である。一方、直接還元金めっきにより金めっき皮膜の厚付けを行なうと、金皮膜の膜厚のバラつき等が発生して、ワイヤボンディングやはんだ接合に必要な特性が得られない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、無電解ニッケルめっき皮膜と無電解パラジウムめっき皮膜と無電解金めっき皮膜とが形成されためっき皮膜積層体の無電解金めっき皮膜を、効率よく形成することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記問題を解決するため鋭意検討を行なった結果、無電解ニッケルめっき皮膜と無電解パラジウムめっき皮膜と無電解金めっき皮膜とが形成されためっき皮膜積層体の該無電解金めっき皮膜を、
水溶性金化合物と、錯化剤と、ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物と、下記一般式(1)又は(2)
1−NH−C24−NH−R2 (1)
3−(CH2−NH−C24−NH−CH2n−R4 (2)
(式(1)及び(2)中、R1、R2、R3及びR4は−OH、−CH3、−CH2OH、−C24OH、−CH2N(CH32、−CH2NH(CH2OH)、−CH2NH(C24OH)、−C24NH(CH2OH)、−C24NH(C24OH)、−CH2N(CH2OH)2、−CH2N(C24OH)2、−C24N(CH2OH)2又は−C24N(C24OH)2を表し、同じであっても異なっていてもよい。nは1〜4の整数である。)
で表されるアミン化合物とを含有する無電解金めっき浴を用いた無電解金めっきにより形成することにより、無電解金めっき皮膜をはんだ接合向け又はワイヤボンディング向けとして好適とされる様々な膜厚に対して1種のめっき浴で効率よく形成することができ、特に、はんだ接合及びワイヤボンディング向け、又はワイヤボンディング向けとして好適な膜厚0.15μm以上の無電解金めっき皮膜を、1種のめっき浴で、1工程で効率よく、有効に形成することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
即ち、本発明は、以下の無電解金めっき方法及び電子部品を提供する。
[1] プリント配線板、セラミクス基板又は半導体基板である電子部品の被めっき面上に、触媒を介して膜厚0.1〜20μmの無電解ニッケルめっき皮膜が形成され、該無電解ニッケルめっき皮膜上に膜厚0.001〜0.3μmの無電解パラジウムめっき皮膜が形成され、更に該無電解パラジウムめっき皮膜上に膜厚0.01〜1.0μmの無電解金めっき皮膜が形成されためっき皮膜積層体の上記無電解金めっき皮膜を形成する方法であって、
水溶性金化合物と、錯化剤と、ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物と、下記一般式(1)又は(2)
1−NH−C24−NH−R2 (1)
3−(CH2−NH−C24−NH−CH2n−R4 (2)
(式(1)及び(2)中、R1、R2、R3及びR4は−OH、−CH3、−CH2OH、−C24OH、−CH2N(CH32、−CH2NH(CH2OH)、−CH2NH(C24OH)、−C24NH(CH2OH)、−C24NH(C24OH)、−CH2N(CH2OH)2、−CH2N(C24OH)2、−C24N(CH2OH)2又は−C24N(C24OH)2を表し、同じであっても異なっていてもよい。nは1〜4の整数である。)
で表されるアミン化合物とを含有する無電解金めっき浴を用いた第1の無電解金めっきにより上記無電解金めっき皮膜の一部又は全部を形成することを特徴とする無電解金めっき方法。
[2] 上記第1の無電解金めっきのみにより、上記無電解金めっき皮膜の全部を膜厚0.15μm以上に形成することを特徴とする[1]記載の無電解金めっき方法。
[3] 上記第1の無電解金めっき浴を用いた無電解金めっきにより、上記無電解金めっき皮膜の一部を形成し、次いで、上記無電解金めっき浴と異なる還元型金めっき浴を用いた第2の無電解金めっきにより上記無電解金めっき皮膜の残部を形成することを特徴とする[1]記載の無電解金めっき方法。
[4] 上記無電解金めっき皮膜表面が、被はんだ接合面をなすことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の無電解金めっき方法。
[5] 上記無電解金めっき皮膜表面が、ワイヤボンディング面をなすことを特徴とする[2]又は[3]記載の無電解金めっき方法。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の無電解金めっき方法で無電解金めっき皮膜を形成したことを特徴とする電子部品。
【発明の効果】
【0012】
フラッシュ金めっき浴と、厚付け金めっき浴の2種類の浴を準備する必要がなく、1種の金めっき浴で、はんだ接合向け又はワイヤボンディング向けとして好適とされる様々な膜厚の金めっき皮膜を形成することができ、特に、膜厚0.15μm以上の無電解金めっき皮膜を、1種のめっき浴で、1工程で効率よく、有効に形成することができることから、工程の簡略化が可能であり、コスト的に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について更に詳述する。
本発明の無電解金めっき方法は、電子部品の被めっき面上に、触媒を介して膜厚0.1〜20μmの無電解ニッケルめっき皮膜が形成され、該無電解ニッケルめっき皮膜上に膜厚0.001〜0.3μmの無電解パラジウムめっき皮膜が形成され、更に該無電解パラジウムめっき皮膜上に膜厚0.01〜1.0μmの無電解金めっき皮膜が形成されためっき皮膜積層体の無電解金めっき皮膜を形成する方法である。
【0014】
本発明において、このめっき皮膜積層体の、触媒、無電解ニッケルめっき皮膜及び無電解パラジウムめっき皮膜の形成は、従来公知の方法が適用でき、本発明の無電解金めっき方法は、いわゆるENEPIG(Electroless Nickel Electroless Palladium Immersion Gold)、即ち、(銅上に形成された)下地無電解ニッケルめっき皮膜上に無電解パラジウムめっき皮膜を介して金めっき皮膜を形成する方法として適用されるものである。
【0015】
ここで、被めっき面(例えば、銅基体の表面)上に触媒を介して無電解ニッケル皮膜を形成する際、触媒となる金属は、ニッケル、コバルト、鉄、銀、金、ルテニウム、パラジウム、白金等があるが、特にパラジウムが好ましい。また、触媒の析出量は、被めっき面上に無電解ニッケル皮膜が析出する程度に活性化する析出量でよく、0.1×10-4mg/dm2以上、特に1×10-4mg/dm2以上の析出量があれば連続膜でなくてもよい。
【0016】
また、形成される無電解ニッケルめっき皮膜は、めっき浴に特に制限はないが、特に、特開平8−269726号公報(特許文献8)に記載されているめっき浴で形成されためっき皮膜が好ましい。この無電解ニッケルめっき浴は、水溶性ニッケル塩、還元剤及び錯化剤を含むめっき浴に、S−S硫黄結合を有する化合物を添加することを特徴とする無電解ニッケルめっき浴である。
【0017】
ここで、水溶性ニッケル塩としては、硫酸ニッケル、塩化ニッケル等が用いられ、その使用量は0.01〜1mol/L、特に0.05〜0.2mol/Lとすることが好ましい。また、還元剤としては、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸塩、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、ヒドラジン等が用いられる。その使用量は0.01〜1mol/L、特に0.05〜0.5mol/Lであることが好ましい。
【0018】
錯化剤としては、りんご酸、こはく酸、乳酸、クエン酸などやそのナトリウム塩などのカルボン酸類、グリシン、アラニン、イミノジ酢酸、アルギニン、グルタミン酸等のアミノ酸類が用いられる。その使用量は0.01〜2mol/L、特に0.05〜1mol/Lであることが好ましい。
【0019】
更に、S−S硫黄結合を有する化合物としては、有機硫黄化合物でもよいが、無機硫黄化合物、特にチオ硫酸塩、二チオン酸塩、ポリチオン酸塩(例えばO3S−Sn−SO3においてn=1〜4)、亜二チオン酸塩が好ましい。なお、塩としてはナトリウム塩等の水溶性塩が用いられる。上記硫黄結合を有する化合物の添加量は、0.01〜100mg/L、特に0.05〜50mg/Lであることが好ましい。0.01mg/Lより少ないと上述した本発明の目的が十分達成されず、100mg/Lより多いとめっきが全く付着しない現象が起こる。
【0020】
この無電解ニッケルめっき液には、更に通常安定剤として水溶性鉛塩の酢酸鉛、硫黄化合物のチオジグリコール酸などを添加することができる。その添加量は0.1〜100mg/Lであることが好ましい。なお、無電解ニッケルめっき液のpHは4〜7、特に4〜6であることが好ましい。
【0021】
上記めっき浴によりニッケル皮膜を形成するとニッケルめっきの析出速度は向上し、パターン外析出を抑制し、パラジウムめっきの析出速度の低下を抑制する。また、無電解ニッケルめっき皮膜がNi−P合金皮膜の場合、皮膜中のP含有量は3〜10質量%が好ましい。上記範囲を外れると、はんだ接合性及びワイヤボンディング性が低下するおそれがある。
【0022】
形成する無電解ニッケルめっき皮膜の膜厚は0.1〜20μmが好ましく、特に1〜15μmが好ましい。0.1μm未満の場合、ワイヤボンディング性が低下するおそれがあり、20μmを超える場合は、めっき時間がかかり、生産性が悪く、コスト的に不利となる場合がある。
【0023】
一方、形成される無電解パラジウムめっき皮膜は、置換型、還元型(ギ酸浴、次亜りん酸浴、亜りん酸浴など)など、めっき浴に特に制限は無いが、例えば、パラジウム化合物と、錯化剤としてアンモニア及びアミン化合物から選ばれる少なくとも1種と、還元剤として次亜リン酸及び次亜リン酸塩から選ばれる次亜リン酸化合物を少なくとも1種と、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸塩及び不飽和カルボン酸誘導体から選ばれる不飽和カルボン酸化合物を少なくとも1種とを含有することを特徴とする無電解パラジウムめっき浴で形成されためっき皮膜が好ましい。
【0024】
ここで、パラジウム化合物としては、水溶性のものであればいずれのものでもよく、例えば塩化パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、テトラアンミンパラジウム塩酸塩などを用いることができる。その含有量はパラジウム濃度として、0.001〜0.5mol/L、特に0.005〜0.1mol/Lとすることが望ましい。少なすぎるとめっき速度が低下し、多すぎると皮膜物性が低下するおそれがある。
【0025】
また、還元剤としては、次亜リン酸及び次亜リン酸塩から選ばれる少なくとも1種を含有する。その含有量は0.001〜5mol/L、特に0.2〜2mol/Lとすることが好ましい。少なすぎると析出速度が低下し、多すぎると浴が不安定になるおそれがある。次亜リン酸塩としては、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0026】
更に、錯化剤としてアンモニア及びアミン化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する。その含有量は0.001〜10mol/L、特に0.1〜2mol/Lとすることが好ましい。少なすぎると浴の安定性が低下し、多すぎるとめっき速度が低下する。アミン化合物としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ベンジルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、EDTA、EDTAナトリウム、EDTAカリウム、グリシンなどが挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0027】
無電解パラジウムめっき浴は、上記成分と共に、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸塩及び不飽和カルボン酸誘導体から選ばれる不飽和カルボン酸化合物を少なくとも1種含有するが、不飽和カルボン酸として具体的には、アクリル酸、プロピオール酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、トランス−2−ブテン−1,4−ジカルボン酸、イタコン酸、テトロル酸、アコニット酸、ムコン酸、ソルビン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、セネシオ酸、グルタコン酸、メサコン酸、オレイン酸、リノール酸、桂皮酸などが挙げられ、また、不飽和カルボン酸無水物及び不飽和カルボン酸塩としては、これら不飽和カルボン酸の酸無水物及びナトリウム塩、アンモニウム塩等の塩が挙げられる。更に、不飽和カルボン酸誘導体としては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸イソブチル、プロピオール酸メチル、マレイン酸ヒドラジド等が挙げられ、これら不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸塩又は不飽和カルボン酸誘導体は1種単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0028】
特に、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸塩及び不飽和カルボン酸誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸並びにそれらの無水物、塩及び誘導体が好ましい。これら不飽和カルボン酸化合物を用いることで、浴安定性に優れ、なおかつはんだ付け性及びワイヤボンディング性等に優れたパラジウム皮膜を得ることができる。
【0029】
不飽和カルボン酸化合物の含有量は0.001〜10mol/L、特に0.01〜0.5mol/Lとすることが好ましい。この量が少なすぎるとめっき浴の安定性に対する効果が十分に達成されず、また多すぎるとめっき速度が低下する傾向にある。
【0030】
無電解パラジウムめっき浴はpH4〜10、特に6〜8であることが好ましく、pHが低すぎるとめっき浴の安定性が低下し、pHが高すぎるとめっき速度が上昇してはんだ接合特性及びワイヤボンディング特性が低下する傾向にある。
【0031】
形成される無電解パラジウムめっき皮膜の膜厚は0.001〜1.0μm、特に0.01〜0.3μmが好ましい。0.001μm未満の場合、ワイヤボンディング性が低下するおそれがあり、1.0μmを超える場合、はんだ接合性が低下し、コスト的に不利となる場合がある。
【0032】
本発明においては、水溶性金化合物と、錯化剤と、ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物と、下記一般式(1)又は(2)
1−NH−C24−NH−R2 (1)
3−(CH2−NH−C24−NH−CH2n−R4 (2)
(式(1)及び(2)中、R1、R2、R3及びR4は−OH、−CH3、−CH2OH、−C24OH、−CH2N(CH32、−CH2NH(CH2OH)、−CH2NH(C24OH)、−C24NH(CH2OH)、−C24NH(C24OH)、−CH2N(CH2OH)2、−CH2N(C24OH)2、−C24N(CH2OH)2又は−C24N(C24OH)2を表し、同じであっても異なっていてもよい。nは1〜4の整数である。)
で表されるアミン化合物とを含有する無電解金めっき浴を用いた第1の無電解金めっきにより上記無電解金めっき皮膜の一部又は全部を形成する。
【0033】
本発明の無電解金めっき浴は、従来の置換金めっき浴とは異なり、同一のめっき浴中で、置換反応と還元反応との双方が進行する置換−還元型無電解金めっき浴である。金めっき浴に、ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物と、上記一般式(1)又は(2)で表される特有の構造を有するアミン化合物とを含有させることで、本発明の無電解金めっき浴は、下地金属上で、置換反応により金が析出すると共に、その析出した金を触媒として還元剤により金が析出する。
【0034】
下地がパラジウムの場合、パラジウムと金は電位差が小さい。そのため、従来の置換型の金めっき浴を用いてパラジウム上に金めっきを行なうと、均一な膜厚が得られず、更に十分な膜厚を得ることもできない。これに対して、本発明の無電解金めっき浴は、パラジウム表面を活性化し、パラジウムを触媒として還元剤により金を析出させることができ、また析出した金を触媒として更に金を析出させることができることから、パラジウム上においても金めっき皮膜の厚膜化が可能である。そのため、本発明においては、上記第1の無電解金めっきのみにより、無電解金めっき皮膜の全部を膜厚0.15μm以上(1.0μm以下)、特に無電解金めっき皮膜の表面をワイヤボンディング面とする場合に好適な0.2μm以上とすることができ、とりわけはんだ接合面及びワイヤボンディング面の双方として好適な0.2〜0.3μmに形成する場合に好適である。
【0035】
本発明の無電解金めっき浴中に含まれる水溶性金化合物としては、シアン化金、シアン化金カリウム、シアン化金ナトリウム、シアン化金アンモニウム等のシアン化金塩、金の亜硫酸塩、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、メタンスルホン酸塩、テトラアンミン錯体、塩化物、臭化物、ヨウ化物、水酸化物、酸化物等が挙げられるが、特にシアン化金塩であることが好ましい。
【0036】
水溶性金化合物の含有量は、金基準で0.0001〜1mol/Lであることが好ましく、0.002〜0.03mol/Lであることがより好ましい。上記範囲未満であると析出速度が低下するおそれがあり、上記範囲を超えると経済的に不利となる場合がある。
【0037】
本発明の無電解金めっき浴中に含まれる錯化剤としては、無電解めっき浴で用いられている公知の錯化剤を用いることができるが、例えば、リン酸、ホウ酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ジヒドロキシルグリシン、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、ヒドロキシエチリデン二リン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンリン酸)、又はそのアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム)塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0038】
錯化剤濃度は0.001〜1mol/Lであることが好ましく、0.01〜0.5mol/Lであることがより好ましい。上記範囲未満であると溶出した金属によって析出速度が低下するおそれがあり、上記範囲を超えると経済的に不利となる場合がある。
【0039】
本発明の無電解金めっき浴中には、ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物が含まれる。このホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物としては、具体的にはホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒド重亜硫酸カリウム、ホルムアルデヒド重亜硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0040】
これらのホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物の濃度は0.0001〜0.5mol/Lであることが好ましく、0.001〜0.3mol/Lであることがより好ましい。上記範囲未満であると下地ニッケルが腐食するおそれがあり、上記範囲を超えると浴が不安定になるおそれがある。
【0041】
本発明の無電解金めっき浴は、下記一般式(1)又は(2)
1−NH−C24−NH−R2 (1)
3−(CH2−NH−C24−NH−CH2n−R4 (2)
(式(1)及び(2)中、R1、R2、R3及びR4は−OH、−CH3、−CH2OH、−C24OH、−CH2N(CH32、−CH2NH(CH2OH)、−CH2NH(C24OH)、−C24NH(CH2OH)、−C24NH(C24OH)、−CH2N(CH2OH)2、−CH2N(C24OH)2、−C24N(CH2OH)2又は−C24N(C24OH)2を表し、同じであっても異なっていてもよい。nは1〜4の整数である。)
で表されるアミン化合物を含有する。本発明のホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物は、ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物みでは還元剤として作用せず、このアミン化合物と共存することで還元作用が生じる。
【0042】
これらのアミン化合物濃度は0.001〜3mol/Lであることが好ましく、0.01〜1mol/Lであることがより好ましい。上記範囲未満であると析出速度が低下するおそれがあり、上記範囲を超えると浴が不安定になるおそれがある。
【0043】
なお、上記ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物と、アミン化合物の含有量のモル比は、ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物:アミン化合物=1:30〜3:1、特に1:10〜1:1であることが好ましい。ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物が上記範囲より多いと浴が不安定になるおそれがあり、アミン化合物が上記範囲より多いと経済的に不利になる場合がある。
【0044】
本発明の無電解金めっき浴のpHは、5〜10であることが好ましい。上記範囲未満であると析出速度が低下するおそれがあり、上記範囲を超えると浴が不安定になるおそれがある。pH調整剤としては、公知のめっき浴で使用されている水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、硫酸、リン酸、ホウ酸等を使用することができる。
【0045】
また、本発明の無電解金めっき浴の使用温度は、40〜90℃であることが好ましい。上記範囲未満であると析出速度が低下するおそれがあり、上記範囲を超えると浴が不安定になるおそれがある。
【0046】
本発明の無電解金めっき浴を用い、パラジウムめっき皮膜を無電解金めっき浴に接触させることにより、パラジウムめっき皮膜表面を無電解金めっき処理することができる。この場合、例えば5〜60分の接触時間で、厚さ0.01〜2μmの金めっき皮膜を形成することが可能であり、例えば、0.002〜0.03μm/分の析出速度で金めっき皮膜を成膜することができる。
【0047】
本発明の無電解金めっき方法においては、上記第1の無電解金めっきのみにより、無電解金めっき皮膜の全部を膜厚0.15μm以上に形成することが可能であるが、上記第1の無電解金めっき浴を用いた無電解金めっきにより、上記無電解金めっき皮膜の一部を形成し、次いで、上記無電解金めっき浴と異なる還元型金めっき浴を用いた第2の無電解金めっきにより上記無電解金めっき皮膜の残部を形成することも可能である。この場合、還元型金めっき浴としては、従来公知の還元型の金めっき浴を用いて、従来公知の条件で実施することができる。
【0048】
また、本発明の無電解金めっき方法では、無電解金めっき皮膜を膜厚0.15μm以上に形成する場合のみならず、(0.01μm以上)0.15μm未満、特に無電解金めっき皮膜の表面をはんだ接合面とする場合に好適な0.01〜0.10μmに形成する場合にも好適である。
【0049】
本発明の無電解金めっき方法は、例えば、プリント配線板、セラミクス基板、半導体基板、ICパッケージ等の電子部品の配線回路実装部分や端子部分を金めっき処理する場合に好適である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0051】
[実施例1〜5、比較例1〜4]
表1に示される無電解ニッケルめっき浴、無電解パラジウムめっき浴及び無電解金めっき浴を用いて、表2に示される条件で、基板に各めっきを施して形成しためっき皮膜積層体のワイヤボンディング特性とはんだ接合性を下記の方法で評価した。各皮膜の膜厚並びにワイヤボンディング特性及びはんだ接合性の評価結果を表1に示す。
【0052】
はんだ接合性
Dage社製ボンドテスタSERIES4000により1条件につき20点評価した。破壊モードのはんだ破断率を表1に示す。なお、測定条件は以下のとおりである。通常、はんだ破断率が85%以上が「良」、85%未満が「不良」とされる。
【0053】
〔測定条件〕
測定方式:ボールプルテスト
基板:上村工業(株)製BGA基板(パット径 φ0.5mm)
半田ボール:千住金属製 φ0.6mm Sn−3.0Ag−0.5Cu
リフロー装置:タムラ製作所製 TMR−15−22LH
リフロー条件:Top 260℃
リフロー環境:Air
リフロー回数:1回及び5回
フラックス:千住金属製 529D−1(RMAタイプ)
テストスピード:5000μm/秒
半田マウント後エージング:1時間
【0054】
ワイヤボンディング性
TPT社製セミオートマチックワイヤボンダHB16によりワイヤボンディングを行い、Dage社製ボンドテスタSERIES4000により1条件につき20点評価した。W/B(ワイヤボンディング)平均強度および変動係数を表1に示す。なお、測定条件は以下のとおりである。通常、W/B平均強度においては、8g以上が「良」、8g未満が「不良」とされ、CVにおいては、15%以下が「良」、15%を超えると「不良」とされる。
【0055】
〔測定条件〕
キャピラリー:B1014−51−18−12(PECO)
ワイヤ:1Mil−Gold
ステージ温度:150℃
超音波(mW):250(1st),250(2nd)
ボンディング時間:(ミリ秒):200(1st),50(2nd)
引っ張り力(gf):25(1st),50(2nd)
ステップ(第1から第2への長さ):0.700mm
測定方式:ワイヤープルテスト
基板:上村工業(株)BGA基板
テストスピード:170μm/秒
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板、セラミクス基板又は半導体基板である電子部品の被めっき面上に、触媒を介して膜厚0.1〜20μmの無電解ニッケルめっき皮膜が形成され、該無電解ニッケルめっき皮膜上に膜厚0.001〜0.3μmの無電解パラジウムめっき皮膜が形成され、更に該無電解パラジウムめっき皮膜上に膜厚0.01〜1.0μmの無電解金めっき皮膜が形成されためっき皮膜積層体の上記無電解金めっき皮膜を形成する方法であって、
水溶性金化合物と、錯化剤と、ホルムアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド重亜硫酸塩付加物と、下記一般式(1)又は(2)
1−NH−C24−NH−R2 (1)
3−(CH2−NH−C24−NH−CH2n−R4 (2)
(式(1)及び(2)中、R1、R2、R3及びR4は−OH、−CH3、−CH2OH、−C24OH、−CH2N(CH32、−CH2NH(CH2OH)、−CH2NH(C24OH)、−C24NH(CH2OH)、−C24NH(C24OH)、−CH2N(CH2OH)2、−CH2N(C24OH)2、−C24N(CH2OH)2又は−C24N(C24OH)2を表し、同じであっても異なっていてもよい。nは1〜4の整数である。)
で表されるアミン化合物とを含有する無電解金めっき浴を用いた第1の無電解金めっきにより上記無電解金めっき皮膜の一部又は全部を形成することを特徴とする無電解金めっき方法。
【請求項2】
上記第1の無電解金めっきのみにより、上記無電解金めっき皮膜の全部を膜厚0.15μm以上に形成することを特徴とする請求項1記載の無電解金めっき方法。
【請求項3】
上記第1の無電解金めっき浴を用いた無電解金めっきにより、上記無電解金めっき皮膜の一部を形成し、次いで、上記無電解金めっき浴と異なる還元型金めっき浴を用いた第2の無電解金めっきにより上記無電解金めっき皮膜の残部を形成することを特徴とする請求項1記載の無電解金めっき方法。
【請求項4】
上記無電解金めっき皮膜表面が、被はんだ接合面をなすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の無電解金めっき方法。
【請求項5】
上記無電解金めっき皮膜表面が、ワイヤボンディング面をなすことを特徴とする請求項2又は3記載の無電解金めっき方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の無電解金めっき方法で無電解金めっき皮膜を形成したことを特徴とする電子部品。

【公開番号】特開2008−266668(P2008−266668A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107198(P2007−107198)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000189327)上村工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】