説明

焼成装置およびフラットパネルディスプレイの製造方法

【課題】焼成装置におけるガラス基板の過焼成を防止する。
【解決手段】焼成装置40は、被焼成物74を、複数本のローラー51により構成した焼成経路用搬送部50によって搬送しながら焼成する第1経路である焼成経路53と、焼成経路53で焼成した被焼成物74を、複数本のローラー61により構成した冷却経路用搬送部60によって搬出口42へ搬送する第2経路である冷却経路63と、焼成経路53と冷却経路63とを連結し、焼成経路53で焼成した被焼成物74を冷却経路63へ搬送する連結経路83と、連結経路83に直結した待避領域93とを備え、連結経路83内の昇降部80は、冷却経路63内における搬送動作が停止したときに、被焼成物74を待避領域93に待避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成装置、および壁掛けテレビや大型モニターに用いられるプラズマディスプレイ装置等の製造工程において用いられるフラットパネルディスプレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と略記する)に代表されるフラットパネルディスプレイ(以下、「FPD」と略記する)は、大型ガラス基板を画像表示領域とすることで、平面でかつ大型の表示ディスプレイとして、市場に広く普及しつつある。
【0003】
ここで、PDPについて説明する。PDPは、対向配置された前面板と背面板との間に多数の放電セルが形成されている。前面板は、1対の走査電極と維持電極とからなる表示電極対が前面ガラス基板上に互いに平行に複数対形成され、それら表示電極対を覆うように誘電体層および保護層が形成されている。背面板は、背面ガラス基板上に複数の平行なデータ電極が形成され、それらデータ電極を覆うように誘電体層が形成され、さらに誘電体層の上にデータ電極と平行に配置された複数の隔壁が形成され、誘電体層の表面と隔壁の側面とに蛍光体層が形成されている。そして、表示電極対とデータ電極とが立体交差するように前面板と背面板とが対向配置されて密封され、内部の放電空間には、例えば分圧比で5%のキセノンを含む放電ガスが封入されている。ここで表示電極対とデータ電極とが対向する部分に放電セルが形成される。このような構成のPDPにおいて、各放電セル内でガス放電により紫外線を発生させ、この紫外線で赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
【0004】
PDPを駆動する方法としては、サブフィールド法、すなわち、1フィールドを複数のサブフィールドに分割した上で、発光させるサブフィールドの組み合わせによって階調表示を行う方法が一般に用いられている。
【0005】
各サブフィールドは、初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。初期化期間では初期化放電を発生し、続く書込み動作に必要な壁電荷を各電極上に形成するとともに、書込み放電を安定して発生させるためのプライミング粒子(書込み放電を発生させるための励起粒子)を発生させる。
【0006】
書込み期間では、走査電極に走査パルス電圧を印加するとともにデータ電極に選択的に書込みパルス電圧を印加して表示を行うべき放電セルに選択的に書込み放電を発生させ壁電荷を形成する(以下、この動作を「書込み」とも記す)。そして維持期間では、走査電極と維持電極とからなる表示電極対に交互に維持パルス電圧を印加し、書込み放電を起こした放電セルで維持放電を発生させ、対応する放電セルの蛍光体層を発光させることにより画像表示を行う。
【0007】
このようなPDPを製造する工程には、主に、前面ガラス基板および背面ガラス基板(以下、前面ガラス基板、背面ガラス基板を総称して単に「ガラス基板」とも記す)の表面に、印刷、乾燥、焼成の各工程を繰り返す厚膜形成工程を経て、電極、誘電体、蛍光体等のパネル構造物(以下、各電極、誘電体層、保護層、蛍光体層、隔壁等のPDPを構成する上で必要な各構造物を、焼成前の前駆体も含めて「パネル構造物」と呼称する)を逐次形成する工程と、パネル構造物の形成が完了した前面板と背面基板とを重ね合わせて封着する工程とがある。そして、乾燥、焼成の各工程には、「焼成装置」と呼ばれる製造装置が用いられる。
【0008】
焼成装置の主なものとしては、複数本のローラーをガラス基板の搬送方向に並べて配置することにより構成した搬送手段を備え、大量生産に適した、ローラーハース式連続焼成炉が知られている。ローラーハース式連続焼成炉では、ガラス基板に形成したパネル構造物を焼成する際に、ガラス基板が搬送手段によって傷つかないように、ガラス基板をセッターと呼ばれる載置台に載せた状態で搬送しながら焼成を行う。
【0009】
図5は、PDPの製造に用いられる従来の焼成装置の構成を概略的に示す断面図である。焼成装置210は、搬入口211から搬入されたガラス基板101を搬送しながら焼成する焼成経路223と、焼成後のガラス基板101を冷却しながら搬出口212へと搬送する冷却経路233と、焼成経路223と冷却経路233とを連結する連結経路243とを備える。
【0010】
また、焼成装置210は、ガラス基板101を搬送する搬送手段として、被搬送物を搬入口211から連結経路243に向けて搬送するように構成された複数のローラー221を有する焼成経路用搬送部220と、被搬送物を連結経路243から搬出口212に向けて搬送するように構成された複数のローラー231を有する冷却経路用搬送部230と、被搬送物を焼成経路用搬送部220から受け入れ、かつ受け入れた被搬送物を冷却経路用搬送部230へ搬送するように構成され、焼成経路用搬送部220と冷却経路用搬送部230との間を移動可能に構成した複数のローラー241を有する昇降部240とを備えている。
【0011】
このように構成された焼成装置210においては、まず、パネル構造物が形成されたガラス基板101をセッター103上に載置して搬入口211に搬入する。この搬入動作は自動で行われるように構成されていてもよく、あるいは手動で行われるように構成されていてもよい。そして、セッター103上に載置されたガラス基板101(以下、セッター103上に載置されたガラス基板101を「被焼成物104」と呼称する)を焼成経路用搬送部220の始端部222からローラー221上に載せる。被焼成物104は、焼成経路223内部に設けられたヒーター等の加熱部(図示せず)によって所定の焼成温度まで加熱されて焼成されながら焼成経路223内を焼成経路用搬送部220によって搬送される。その後、被焼成物104は、加熱部に続く徐冷部(図示せず)において徐々に冷却されながら、焼成経路用搬送部220の終端部224に向かって搬送される。焼成経路用搬送部220は、被焼成物104が終端部224に到達した後も、引き続き搬送動作を継続し、被焼成物104は昇降部240上に移送される。
【0012】
昇降部240のローラー241は、昇降部240上に移動した被焼成物104が昇降部240上で一旦静止するように動作を停止する。そして、昇降部240は、焼成経路223と冷却経路233とを連結する連結経路243を、冷却経路用搬送部230と実質的に同じ高さになるまで降下する。そして、ローラー241は、被焼成物104を焼成経路用搬送部220から受け入れたときとは逆方向に回転して、昇降部240上の被焼成物104を、冷却経路用搬送部230の始端部232にあるローラー231上に載せる。こうして、焼成経路223を通って焼成された被焼成物104は冷却経路用搬送部230上に移送される。
【0013】
その後、被焼成物104は、冷却経路233内を冷却経路用搬送部230によって搬出口212に向かって搬送されながら、常温まで徐々に冷却される。そして、搬出口212から搬出された被焼成物104は、焼成済のガラス基板101としてセッター103から取り上げられ、空になったセッター103は新たなガラス基板101を載置するために再度搬入口211に移動される。なお、この搬出動作は自動で行われるように構成されていてもよく、あるいは手動で行われるように構成されていてもよい。
【0014】
このような焼成装置において、セッターとローラーとの接触面を洗浄する洗浄手段を設け、セッターの裏面に付着した磨耗粉等の異物を除去することでセッターに付着した異物が搬送動作により焼成装置内に撒き散らされることを防止し、パネル構造物への異物付着や混入を防止してパネル構造物の品質を均一にして、高い製造歩留まりでPDPを製造することが可能となる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−22166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
近年、PDPに代表されるFPDは、大画面化にともない、ガラス基板が大型化してきている。厚みを変えることなくサイズだけを大型化したガラス基板は、中小型のガラス基板と比較して壊れやすく、例えば、焼成前のガラス基板を焼成装置へ搬入するときのわずかな衝撃や、焼成済のガラス基板を焼成装置から搬出するときのわずかな衝撃、あるいは冷却時の熱収縮により生じる応力等で、ガラス基板にひびが生じたり割れたりすることがある。
【0016】
このとき、例えば、焼成装置210の搬入口211付近でガラス基板が割れ、搬入動作が停止したとしても、焼成経路223内の搬送動作を停止する必要はなく、焼成経路223内にある被焼成物104に対し、通常通りの焼成を行うことができる。一方、搬出口212付近でガラス基板が割れ、搬出作業が停止したときには、冷却経路用搬送部230の搬送動作を停止せざるを得ず、その結果、昇降部240の搬送動作が停止して焼成経路用搬送部220の搬送動作が停止し、焼成経路223内にある被焼成物104が過焼成されるという問題が発生していた。
【0017】
また、保守、点検、整備作業等のために、焼成装置全体を停止するときには、あらかじめ装置内から被焼成物104を全て取り除き、焼成経路223内を空にして、焼成装置210全体を停止させる必要があった。この場合、近年ではFPDの大型化にともない被焼成物104は巨大になり、また生産能力の高効率化にともない焼成装置210内にある被焼成物104の数も多くなってきている。このため被焼成物104を全て取り除くことに要する時間、労力は膨大になっている。
【0018】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、FPDの構造物を形成したガラス基板を搬送しながら焼成する第1経路と焼成後のガラス基板を搬送しながら冷却する第2経路とを備えた焼成装置において、第1経路における搬送動作を継続したまま第2経路における搬送動作を停止することができ、第1経路におけるガラス基板の過焼成を防止することができる焼成装置およびFPDの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の焼成装置は、FPDの構造物を形成したガラス基板を搬送しながら焼成する第1経路と、第1経路で焼成したガラス基板を搬出口へ搬送する第2経路と、第1経路と第2経路とを連結し、第1経路で焼成したガラス基板を第2経路へ搬送する連結部と、連結部に直結した待避領域とを備えたことを特徴とする。
【0020】
これにより、連結部から第2経路へ搬送すべきガラス基板を待避領域に待避することができるので、第1経路の搬送動作を継続したまま第2経路における搬送動作を停止することが可能になり、第1経路におけるガラス基板の過焼成を防止することが可能となる。
【0021】
また、この焼成装置において、連結部は、第2経路における搬送動作が停止したときにガラス基板を待避領域へ搬送することを特徴とする。これにより、第2経路内や搬出口付近でガラス基板割れ等の問題が発生し、第2経路における搬送動作を停止せざるを得ないとき、第1経路における搬送動作を継続したまま第2経路における搬送動作を停止することができるので、第1経路におけるガラス基板の過焼成を防止することが可能となる。
【0022】
また、この焼成装置において、待避領域は、所定時間に第2経路が搬出口に搬送するガラス基板の枚数と同数のガラス基板を保持可能な容量を有することを特徴とする。これにより、第1経路における搬送動作を継続したまま、第2経路における搬送動作を所定時間までは停止することができる。
【0023】
また、このパネルの焼成装置において、所定時間は1時間以上24時間以内であってもよい。
【0024】
また、本発明のFPDの焼成装置は、FPDの構造物を形成したガラス基板を、載置台に載せ、複数本のローラーにより構成した搬送部によって搬送しながら焼成する第1経路と、第1経路で焼成したガラス基板を、載置台に載せたまま、複数本のローラーにより構成した搬送部によって搬出口へ搬送する第2経路と、第1経路と第2経路とを連結し、第1経路で焼成したガラス基板を、載置台に載せたまま第2経路へ搬送する連結部と、連結部に直結した待避領域とを備え、連結部は、第2経路における搬送動作が停止したときに、ガラス基板を載置台に載せたまま待避領域に待避することを特徴とする。
【0025】
これにより、第2経路内や搬出口付近でガラス基板割れ等の問題が発生し、第2経路における搬送動作を停止せざるを得ないとき、連結部から第2経路へ搬送すべきガラス基板を待避領域に待避することができるので、第1経路における搬送動作を継続したまま第2経路における搬送動作を停止することが可能となり、第1経路におけるガラス基板の過焼成を防止することが可能となる。
【0026】
また、本発明のFPDの製造方法は、FPDの構造物を形成したガラス基板を、第1経路が有する搬送部によって搬送しながら焼成した後、第1経路と第2経路とを連結する連結部を介して第2経路へ搬送し、第2経路が有する搬送部によって第1経路で焼成したガラス基板を搬出口へ搬送するFPDの製造方法であって、第2経路における搬送動作が停止したときに、連結部に直結した待避領域に、第1経路で焼成したガラス基板を待避することを特徴とする。
【0027】
これにより、第2経路内や搬出口付近でガラス基板割れ等の問題が発生し、第2経路における搬送動作を停止せざるを得ないとき、連結部から第2経路へ搬送すべきガラス基板を待避領域に待避することができるので、第1経路における搬送動作を継続したまま第2経路における搬送動作を停止することが可能となり、第1経路におけるガラス基板の過焼成を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、FPDの構造物を形成したガラス基板を搬送しながら焼成する第1経路と焼成後のガラス基板を搬送しながら冷却する第2経路とを備えた焼成装置において、第1経路における搬送動作を継続したまま第2経路における搬送動作を停止することができ、第1経路におけるガラス基板の過焼成を防止することができる焼成装置およびFPDの製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態における焼成装置について、図面を用いて説明する。なお、ここでは、PDPの製造工程において用いられる焼成装置を例に挙げて説明を行うが、本発明は、何らPDP用の焼成装置に限定されるものではない。
【0030】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態におけるPDP10の構造を示す分解斜視図である。前面板20は、前面ガラス基板21上に形成された走査電極22と維持電極23とからなる複数の表示電極対24、遮光層(図示せず)、走査電極22、維持電極23および遮光層を覆うように形成された誘電体層25、誘電体層25上に形成された保護層26を有する。
【0031】
なお、保護層26は、放電セルにおける放電開始電圧を下げるために、PDPの材料として使用実績があり、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)ガスを封入した場合に2次電子放出係数が大きく耐久性に優れたMgOを主成分とする材料から形成されている。
【0032】
背面板30は、背面ガラス基板31上に形成された複数のデータ電極32、データ電極32を覆うように形成された誘電体層33、さらにその上に形成された井桁状の隔壁34を有する。そして、隔壁34の側面および誘電体層33上には赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。
【0033】
これら前面板20と背面板30とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対24とデータ電極32とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして、内部の放電空間には、ネオンとキセノンの混合ガスが放電ガスとして封入されている。なお、本実施の形態では、発光効率を向上させるためにキセノン分圧を約10%とした放電ガスを用いている。放電空間は隔壁34によって複数の区画に仕切られており、表示電極対24とデータ電極32とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。
【0034】
なお、PDP10の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。また、放電ガスの混合比率も上述した数値に限られるわけではなく、その他の混合比率であってもよい。
【0035】
図2は、本発明の一実施の形態におけるPDP10の電極配列図である。PDP10には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜走査電極SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜維持電極SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜データ電極Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUiと1つのデータ電極Dk(k=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。そして、m×n個の放電セルが形成された領域がPDP10の表示領域となる。
【0036】
なお、本実施の形態におけるPDP10は、サブフィールド法、すなわち1フィールドを時間軸上で複数のサブフィールドに分割し、各サブフィールドに輝度重みをそれぞれ設定し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御することによって階調表示を行うものとする。
【0037】
このサブフィールド法では、例えば、1フィールドを8つのサブフィールド(第1SF、第2SF、・・・、第8SF)で構成し、各サブフィールドはそれぞれ1、2、4、8、16、32、64、128の輝度重みを有する構成とすることができる。また、複数のサブフィールドのうち、1つのサブフィールドの初期化期間においては全ての放電セルに初期化放電を発生させる全セル初期化動作を行い(全セル初期化動作を行うサブフィールドを「全セル初期化サブフィールド」と呼称する)、他のサブフィールドの初期化期間においては維持放電を行った放電セルに対して選択的に初期化放電を発生させる選択初期化動作を行う(選択初期化動作を行うサブフィールドを「選択初期化サブフィールド」と呼称する)ことで、階調表示に関係しない発光を極力減らしコントラスト比を向上させることが可能である。
【0038】
しかし、本実施の形態は、サブフィールド数や各サブフィールドの輝度重みが上記の値に限定されるものではなく、また、画像信号等にもとづいてサブフィールド構成を切換える構成であってもよい。
【0039】
次に、このように構成されたPDP10の製造方法について説明する。
【0040】
まず、前面ガラス基板21上に、走査電極22および維持電極23と遮光層とを形成する。これらの走査電極22および維持電極23は透明電極と金属バス電極とで構成し、透明電極と金属バス電極は、フォトリソグラフィ法等を用いて所定のパターンを形成することで形成する(以下、所定のパターンを形成することを「パターニング」とも記す)。透明電極は薄膜プロセス等を用いて形成し、金属バス電極は銀材料を含むペーストを所定の温度で焼成して固化する。また、遮光層も同様に、黒色顔料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や黒色顔料を前面ガラス基板21の全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする方法等により所定のパターンを形成し、焼成することにより形成する。
【0041】
この後、走査電極22、維持電極23および遮光層を覆うように前面ガラス基板21上に誘電体ペーストをダイコート法等により塗布して誘電体ペースト層(誘電体材料層)を形成する。誘電体ペーストを塗布した後、所定の時間放置することによって、塗布された誘電体ペースト表面を平坦化する。その後、誘電体ペースト層を焼成固化することにより、走査電極22、維持電極23および遮光層を覆う誘電体層25を形成する。なお、誘電体ペーストはガラス粉末等の誘電体材料、バインダおよび溶剤を含む塗料である。次に、誘電体層25上に酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層26を真空蒸着法により形成する。以上の工程により前面ガラス基板21上に所定のパネル構造物(走査電極22および維持電極23からなる表示電極対24、遮光層、誘電体層25、保護層26)を形成し、前面板20が完成する。
【0042】
背面板30は次のようにして形成する。まず、背面ガラス基板31上に、銀材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や、金属膜を全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いて所定のパターンを形成する方法等によりデータ電極32用の構成物となる材料層を形成し、それを所定の温度で焼成することによりデータ電極32を形成する。
【0043】
次に、データ電極32を形成した背面ガラス基板31上にダイコート法等によりデータ電極32を覆うように誘電体ペーストを塗布して誘電体ペースト層を形成する。その後、誘電体ペースト層を焼成することにより誘電体層33を形成する。なお、誘電体ペーストはガラス粉末等の誘電体材料とバインダおよび溶剤を含んだ塗料である。
【0044】
この後、誘電体層33上に隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストを塗布して所定の形状にパターニングすることにより隔壁材料層を形成し、それを焼成することにより隔壁34を形成する。ここで、誘電体層33上に塗布した隔壁用ペーストをパターニングする方法としては、フォトリソグラフィ法やサンドブラスト法を用いることができる。
【0045】
そして、隔壁34を形成した背面ガラス基板31には、隣接する隔壁34間の誘電体層33上および隔壁34の側面に蛍光体材料を含む蛍光体ペーストを塗布し、焼成することにより蛍光体層35を形成する。以上の工程により、背面ガラス基板31上に所定のパネル構造物(データ電極32、誘電体層33、隔壁34、蛍光体層35)を形成し、背面板30が完成する。
【0046】
そして、厚膜印刷やインクジェットまたはディスペンサーを備えた塗布装置を用いて前面板20または背面板30の周囲の所定の位置に封着材を塗布し、封着材に含まれる樹脂成分を燃焼できる温度で前面板20または背面板30を加熱して、前面板20または背面板30の仮焼成を行う。その後、前面板20と背面板30とを電極形成面側が向かい合うように対向配置させてPDP10を組み立てる。続いて、前面板20および背面板30の周囲を気密封着する工程、および、排気および放電ガス導入用の排気管(いわゆるチップ管)を封着材によって気密封着する工程に移る。そして、排気管を通してPDP10内部の真空排気とPDP10内部への放電ガスの導入を行った後、排気管を加熱して溶融し排気管を閉塞して封じ切る。この排気管は鉛成分を含まないガラス成分を材料にして形成されていてもよく、軟化点温度以上の温度で加熱することで溶融させることが可能である。このとき、溶融に際しては軟化点温度よりも200℃以上高い温度で加熱することが望ましい。
【0047】
次に、これらの焼成工程で用いる本実施の形態における焼成装置40について説明する。なお、本実施の形態における焼成装置40は、通常時と、第2経路における搬送動作が停止したときとで異なる動作をする。そこで、まず、図3を用いて焼成装置40の構成を、通常時の動作を踏まえて説明し、次に、図4を用いて第2経路における搬送動作が停止したときの焼成装置40の動作を説明する。
【0048】
図3は、本発明の一実施の形態における焼成装置40の構成を概略的に示す断面図である。焼成装置40は、搬入口41から搬入された前面ガラス基板21または背面ガラス基板31(以下、前面ガラス基板21および背面ガラス基板31を総称して単に「ガラス基板71」と記す)を搬送しながら焼成する第1経路である焼成経路53と、焼成後のガラス基板71を冷却しながら搬出口42へと搬送する第2経路である冷却経路63と、焼成経路53と冷却経路63とを連結する連結経路83と、連結経路83に直結した待避領域93とを備える。
【0049】
また、焼成装置40は、ガラス基板71を搬送する搬送手段として、被搬送物を搬入口41から連結経路83に向けて搬送するように構成された複数のローラー51を有する焼成経路用搬送部50と、被搬送物を連結経路83から搬出口42に向けて搬送するように構成された複数のローラー61を有する冷却経路用搬送部60と、被搬送物を焼成経路用搬送部50から受け入れ、かつ受け入れた被搬送物を冷却経路用搬送部60へ搬送するように構成され、焼成経路用搬送部50と冷却経路用搬送部60との間を移動可能に構成した複数のローラー81を有する昇降部80と、冷却経路用搬送部60の搬送動作が停止したときに被搬送物を昇降部80から受け入れて保持するように構成した複数のローラー91を有する複数の待避台90とを備えている。
【0050】
このように構成された焼成装置40においては、まず、パネル構造物が形成されたガラス基板71を載置台であるセッター73上に載置して搬入口41に搬入する。この搬入動作は自動で行われるように構成されていてもよく、あるいは手動で行われるように構成されていてもよい。そして、セッター73上に載置されたガラス基板71(以下、セッター73上に載置されたガラス基板71を「被焼成物74」と呼称する)を焼成経路用搬送部50の始端部52からローラー51上に載せる。被焼成物74は、焼成経路53内部に設けられたヒーター等の加熱部(図示せず)によって所定の焼成温度まで加熱されて焼成されながら焼成経路53内を焼成経路用搬送部50によって搬送される。その後、被焼成物74は、加熱部に続く徐冷部(図示せず)において徐々に冷却されながら、焼成経路用搬送部50の終端部54に向かって搬送される。焼成経路用搬送部50は、被焼成物74が終端部54に到達した後も、引き続き搬送動作を継続し、被焼成物74は昇降部80上に移送される。
【0051】
昇降部80のローラー81は、昇降部80上に移動した被焼成物74が昇降部80上で一旦静止するように動作を停止する。そして、昇降部80は、焼成経路53と冷却経路63とを連結する連結経路83内(ここでは、連結経路83と昇降部80とを合わせて「連結部」とする)を、冷却経路用搬送部60と実質的に同じ高さになるまで降下する。そして、ローラー81は、被焼成物74を焼成経路用搬送部50から受け入れたときとは逆方向に回転して、昇降部80上の被焼成物74を、冷却経路用搬送部60の始端部62にあるローラー61上に載せる。こうして、焼成経路53を通って焼成された被焼成物74は冷却経路用搬送部60上に移送される。
【0052】
その後、被焼成物74は、冷却経路63内を冷却経路用搬送部60によって搬出口42に向かって搬送されながら、常温まで徐々に冷却される。そして、搬出口42から搬出された被焼成物74は、焼成済のガラス基板71としてセッター73から取り上げられ、空になったセッター73は新たなガラス基板71を載置するために再度搬入口41に移動される。なお、この搬出動作は自動で行われるように構成されていてもよく、あるいは手動で行われるように構成されていてもよい。
【0053】
図4は、本発明の一実施の形態における冷却経路63内の搬送動作が停止したときの焼成装置40の動作を概略的に示す断面図である。
【0054】
図5に示したように、従来技術では、搬出口212付近でガラス基板101が割れる等して搬出作業が停止したときには、冷却経路用搬送部230の搬送動作を停止し、搬出作業が可能になった後、冷却経路用搬送部230の搬送動作を再開させていた。この構成では、冷却経路用搬送部230の搬送動作を停止させている期間、昇降部240の搬送動作を停止せざるを得ないため、その間、焼成経路用搬送部220の搬送動作が停止し、焼成経路223内にある被焼成物104が過焼成されるという問題が発生していた。
【0055】
しかし、本実施の形態に示す焼成装置40では、搬出口42付近でガラス基板71が割れる等して搬出作業が停止し、冷却経路用搬送部60の搬送動作が停止したときには、昇降部80は、冷却経路用搬送部60に搬送する被焼成物74を、待避領域93の待避台90上に移送する。具体的には、昇降部80のローラー81は、被焼成物74を焼成経路用搬送部50から受け入れたときと同方向に回転して、昇降部80上の被焼成物74を、待避台90のローラー91上に載せる。待避台90のローラー91は、待避台90上に移動した被焼成物74が待避台90上で静止するように動作を停止する。こうして、焼成経路53を通って焼成された被焼成物74を待避台90上に移送される。
【0056】
これにより、冷却経路63における搬送動作が停止しても、昇降部80は焼成経路53を通過した焼成後の被焼成物74を待避領域93に移送できるので、焼成経路53における搬送動作を継続することができる。すなわち、搬出口42付近でガラス基板71が割れる等して搬出作業が停止したとしても、焼成経路53における搬送動作を継続したまま、冷却経路63における搬送動作を停止することができるので、焼成経路53において被焼成物74の過焼成が発生するのを防止することが可能となる。
【0057】
なお、冷却経路の終端部と搬出口との間に待避領域を設ける構成であっても、搬出口での搬出作業を停止したまま焼成経路内の搬送動作を継続させることは可能である。しかし、この構成では、冷却経路内の搬送動作が停止したときには、焼成経路内の搬送動作を停止させなければならない。したがって、例えば、保守、点検、整備作業等のために冷却経路用搬送部の搬送動作を停止させなければならないときには、焼成経路の動作を合わせて停止させなければならない。
【0058】
しかし、本実施の形態に示す焼成装置40は、待避領域93を連結経路83に直結させて設け、被焼成物74を連結経路83から待避領域93に直接移送する構成としているので、例えば、保守、点検、整備作業等のために冷却経路用搬送部60の搬送動作を完全に停止させたときでも、焼成経路用搬送部50の搬送動作を継続させることが可能である。したがって、保守、点検、整備作業による生産ロスを低減させることも可能となる。
【0059】
また、保守、点検、整備作業等のために、焼成装置40全体を停止するときには、あらかじめ焼成装置40内から被焼成物74を全て取り除き、焼成経路53内を空にして、焼成装置40全体を停止させる必要があるが、本実施の形態に示す焼成装置40では、焼成経路53内の被焼成物74を待避領域93に移動させることができるので、被焼成物74を全て取り除くことに要する時間、労力を低減することができる。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態によれば、パネル構造物を形成したガラス基板71を搬送しながら焼成する焼成経路53と焼成後のガラス基板71を搬送しながら冷却する冷却経路63とを備えた焼成装置40において、焼成経路53における搬送動作を継続したまま冷却経路63における搬送動作を停止することができるので、搬出口42での搬出作業が停止したとき等に焼成経路53におけるガラス基板71の過焼成を防止することが可能となる。また、保守、点検、整備作業等のために冷却経路用搬送部60の搬送動作を完全に停止させたときでも、焼成経路用搬送部50の搬送動作を継続させることが可能となり、保守、点検、整備作業による生産ロスを低減させることが可能となる。また、保守、点検、整備作業等のために、焼成装置40内から被焼成物74を全て取り除くことに要する時間、労力を低減することが可能となる。
【0061】
なお、本実施の形態においては、昇降部80が被焼成物74を冷却経路63へ搬送するか、待避領域93へ搬送するかの切換えを手動で行う構成であってもよいが、冷却経路用搬送部60の搬送動作に連動して自動的に搬送先を切換える構成であってもよい。この自動的に搬送先を切換える方法としては、例えば、冷却経路用搬送部60の搬送動作を強制的に停止させる搬送動作停止ボタンを焼成装置40に設け、その搬送動作停止ボタンの操作状態に連動して自動的に切換える方法や、冷却経路用搬送部60のローラー61の動作状態に連動して自動的に切換える方法等がある。しかし、本発明は何らこれらの方法に限定されるものではなく、その他の方法で搬送先を切換える構成であってもよい。
【0062】
なお、待避領域93に待避させたガラス基板71は、待避領域93から直接取り出す構成であってもよく、あるいは、通常よりも搬送速度を高めた冷却経路用搬送部60を介して取り出す構成であってもよい。
【0063】
なお、保守、点検、整備作業には比較的長い時間がかかるため、待避領域93は、所定時間、すなわち、保守、点検、整備作業に要する時間に冷却経路用搬送部60が搬出口42に搬送するガラス基板71の枚数と同数のガラス基板71を保持可能な容量を有することが望ましい。ただし、待避領域93の容量を大きくすると、その分、焼成装置40の設置面積が大きくなるため、この所定時間は、1時間以上24時間以内であることが望ましい。しかし、本発明は、何ら待避領域93の容量が上述した数値に限定されるものではない。
【0064】
なお、焼成経路53では被焼成物74の焼成および徐冷を行うのに対し、冷却経路63では、焼成後の被焼成物74の温度を常温付近まで下げているだけなので、被焼成物74が通過するのに要する時間が焼成経路53と比べて短時間で済む。そのため、焼成経路53の設置数を冷却経路63の設置数よりも多くすることが可能であり、本実施の形態に示す焼成装置40では、焼成経路53と冷却経路63とを2:1の割合で備えた構成を示している。しかし、これは単なる一構成例に過ぎず、本発明は焼成経路53と冷却経路63との設置数が何ら限定されるものではない。
【0065】
なお、本実施の形態では、焼成経路53を配置的に見て上段側に、冷却経路63を配置的に見て下段側にそれぞれ配置し、昇降部80は連結経路83内を上下に移動する構成を説明したが、例えば、焼成経路53と冷却経路63とを配置的に見て同じ高さになるように配置し、昇降部80に代えて連結経路83内を水平方向に移動する移動部を備えた構成であってもよい。
【0066】
なお、本実施の形態では、PDP用の焼成装置を説明したが、本発明は何らPDP用に限定されるものではなく、PDP以外のFPDの製造工程における焼成装置にも適用でき、また、焼成経路と冷却経路とを有するあらゆる焼成装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、FPDの構造物を形成したガラス基板を搬送しながら焼成する第1経路と焼成後のガラス基板を搬送しながら冷却する第2経路とを備えた焼成装置において、第1経路における搬送動作を継続したまま第2経路における搬送動作を停止することができ、第1経路におけるガラス基板の過焼成を防止することができるので、焼成装置およびFPDの製造方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施の形態におけるPDPの構造を示す分解斜視図
【図2】同PDPの電極配列図
【図3】本発明の一実施の形態における焼成装置の構成を概略的に示す断面図
【図4】本発明の一実施の形態における冷却経路内の搬送動作が停止したときの焼成装置の動作を概略的に示す断面図
【図5】PDPの製造に用いられる従来の焼成装置の構成を概略的に示す断面図
【符号の説明】
【0069】
10 PDP
20 前面板
21 前面ガラス基板
22 走査電極
23 維持電極
24 表示電極対
25,33 誘電体層
26 保護層
30 背面板
31 背面ガラス基板
32 データ電極
34 隔壁
35 蛍光体層
40,210 焼成装置
41,211 搬入口
42,212 搬出口
50,220 焼成経路用搬送部
51,61,81,91,221,231,241 ローラー
52,62,222,232 始端部
53,223 焼成経路
54,224 終端部
60,230 冷却経路用搬送部
63,233 冷却経路
71,101 ガラス基板
73,103 セッター
74,104 被焼成物
80,240 昇降部
83,243 連結経路
90 待避台
93 待避領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラットパネルディスプレイの構造物を形成したガラス基板を搬送しながら焼成する第1経路と、
前記第1経路で焼成した前記ガラス基板を搬出口へ搬送する第2経路と、
前記第1経路と前記第2経路とを連結し、前記第1経路で焼成した前記ガラス基板を前記第2経路へ搬送する連結部と、
前記連結部に直結した待避領域とを備えた焼成装置。
【請求項2】
前記連結部は、前記第2経路における搬送動作が停止したときに前記ガラス基板を前記待避領域へ搬送することを特徴とする請求項1に記載の焼成装置。
【請求項3】
前記待避領域は、所定時間に前記第2経路が前記搬出口に搬送する前記ガラス基板の枚数と同数の前記ガラス基板を保持可能な容量を有することを特徴とする請求項2に記載の焼成装置。
【請求項4】
前記所定時間は1時間以上24時間以内であることを特徴とする請求項3に記載の焼成装置。
【請求項5】
フラットパネルディスプレイの構造物を形成したガラス基板を、載置台に載せ、複数本のローラーにより構成した搬送部によって搬送しながら焼成する第1経路と、
前記第1経路で焼成した前記ガラス基板を、前記載置台に載せたまま、複数本のローラーにより構成した搬送部によって搬出口へ搬送する第2経路と、
前記第1経路と前記第2経路とを連結し、前記第1経路で焼成した前記ガラス基板を、前記載置台に載せたまま前記第2経路へ搬送する連結部と、
前記連結部に直結した待避領域とを備え、
前記連結部は、前記第2経路における搬送動作が停止したときに、前記ガラス基板を前記載置台に載せたまま前記待避領域に待避することを特徴とするフラットパネルディスプレイの焼成装置。
【請求項6】
フラットパネルディスプレイの構造物を形成したガラス基板を、第1経路が有する搬送部によって搬送しながら焼成した後、前記第1経路と第2経路とを連結する連結部を介して前記第2経路へ搬送し、前記第2経路が有する搬送部によって前記第1経路で焼成した前記ガラス基板を搬出口へ搬送するフラットパネルディスプレイの製造方法であって、
前記第2経路における搬送動作が停止したときに、前記連結部に直結した待避領域に、前記第1経路で焼成した前記ガラス基板を待避することを特徴とするフラットパネルディスプレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−48513(P2010−48513A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214939(P2008−214939)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】