説明

照光シート部材及び操作スイッチ用カバー部材

【課題】内部で導光される光の量をより多く確保し易く、小型薄肉化を図り易い照光シートを提供する。
【解決手段】光源11からの光が入射される光入射部41と、光入射部41から入射された光が内部を通して導かれる導光シート部43と、導光シート部43により導光された光を放射する複数の放射部45とを備えた照光シート部材40であり、光入射部41は、導光シート部43の表面に密着して突設されると共に、光源11の発光面11aと対向する入射面51と、入射面51より放射部45側に設けられ、光源11側から放射部45側に向けて薄肉となるように傾斜した光案内面53とを備え、入射面51から入射されて光案内面53に達した光が、光案内面53により導光シート部43の内部に導かれるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光源からの光が内部を通して導かれ、所定の放射部において放射される照光シート部材と、この照光シート部材を用いた操作スイッチ用カバー部材とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操作スイッチ用カバー部材として、背面側から光を照射し、文字などの表示部から光を透過させて表面側に放射することで、表示部を表面側から視認し易くしたものが多数知られている。
【0003】
このような操作スイッチ用カバー部材を用いた装置として、操作スイッチ用カバー部材の背面に光源を配置したものでは、光源を配置する分だけ、装置全体の厚さが厚くなり易く、特に、少ない光源で複数の放射部を照光可能に構成したものでは、操作スイッチ用カバー部材と光源との間を適度に離間させる必要があるため、装置全体の厚さがより厚くなり易かった。
【0004】
そのため、光源を操作スイッチ用カバー部材の側縁側に配置し、この光源からの光を照光シート部材のシート状の内部を通して導き、所定の放射部において放射されるように構成することで、装置を薄肉化することも提案されている。
【0005】
例えば、下記特許文献1では、キーパッドの背面に配置されて、側面側の光源から入射された光をキーパッドに照射可能に構成されたバックライト用導光板が提案されている。ここでは、導光板の側周縁の側方に配置された光源からの光が、導光板の側周縁から入射されて、導光板の内部を通して導かれ、キーパッドの数字や文字と対応する部分に形成されたパターンで乱反射されて放射されることで、各数字や文字と対応する部分を照射するようになっている。このように光源を導光板の側周縁の側方に配置すれば、照光可能な操作スイッチ用カバー部材全体の厚さを薄く形成することが可能である。
【特許文献1】特開2007−80824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光源を導光板の側周縁の側方に配置することで薄型化する場合、光源に比べて導光板が薄いため、光源から放射された光の一部しか導光板に入射されず、導光シート部の内部で導光される光の量が少なくなり易く、光源から放射された光の照光に利用する効率が低くなり易かった。また、導光板の側周縁より外側に光源が配置されるため、平面視における配置スペースが大きくなり易かった。
【0007】
そこで、この発明では、内部で導光される光の量をより多く確保し易く、小型薄肉化を図り易い照光シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する請求項1に記載の照光シート部材は、光源からの光が入射される光入射部と、該光入射部から入射された光が内部を通して導かれる導光シート部と、該導光シート部により導光された光を放射する複数の放射部とを備えた照光シート部材において、前記光入射部は、前記導光シート部の表面に密着して突設されると共に、前記光源の発光面と対向する入射面と、該入射面より前記放射部側に設けられ、前記光源側から前記放射部側に向けて薄肉となるように傾斜した光案内面とを備え、前記入射面から入射されて前記光案内面に達した光が、該光案内面により前記導光シート部の内部に導かれるように構成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の照光シート部材は、請求項1に記載の構成に加え、前記入射面は、前記光源の発光面積と同一以上の入射面積を有することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の照光シート部材は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記光入射部は、前記導光シート部より低い屈折率を有する透明材料からなることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の照光シート部材は、請求項3に記載の構成に加え、前記透明材料は、光硬化性樹脂からなることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の照光シート部材は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記光案内面は、前記導光シート部と平行な光を、前記導光シート部の内面で反射可能な入射角となるように反射させる傾斜を有することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の照光シート部材は、請求項1乃至5の何れか一つに記載の構成に加え、前記光案内面には、該光案内面に達した光を反射可能な反射層が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の操作スイッチ用カバー部材は、請求項1乃至6の何れか一つに記載の照光シート部材が、上面に単数又は複数の表示部を設けたキーシートの下面側に配設され、前記表示部に対応する位置に前記放射部が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の照光シート部材によれば、光入射部が導光シート部の表面に密着して突設されているので、導光シート部の厚さや形状等に拘わらず、光源に対して十分な大きさの光入射部を容易に形成することができる。そのため、光源から発せられる光をより多く光入射部に入射させ易い。
【0016】
また、光入射部には光源側から放射部側に向けて薄肉となるように傾斜した光案内面が設けられ、入射面から入射されて光案内面に達した光が導光シート部の内部に導かれるように構成されているので、光源の発光面からの光を導光シート部により多く導入し易い。
【0017】
しかも、この光入射部は導光シート部の外周より外側に突出させる必要がなく、更に、光源の上方側に光を拡散させるための距離を設ける必要がないため、照光シート部材全体の平面視における配置スペースを少なく抑え易いと共に、側面視における配置厚さを少なく抑えることができ、照光シート部材の小型薄肉化を図り易い。
【0018】
従って、導光シート部の内部で導光される光の量をより多く確保し易くて、小型薄肉化を図り易い照光シート部材を提供することができる。
【0019】
請求項2に記載の照光シート部材によれば、入射面が光源の発光面積と同一以上の入射面積を有するので、光源から放射される光をより多く光入射部に入射させ易くでき、光源から放射される光の無駄をより防止し易くできる。
【0020】
請求項3に記載の照光シート部材によれば、光入射部が導光シート部より低い屈折率を有する透明材料からなるので、光入射部から導光シート部へ入射可能な光の入射角をより大きく確保し易く、光入射部から導光シート部へより多くの光を導入し易い。しかも、光入射部から導光シート部へ入射可能な光の入射角が大きい程、入射された光に導光シート部内で導光され易い光の割合を多くすることができる。
【0021】
同時に、光入射部が導光シート部より低い屈折率を有すれば、光入射部との界面における導光シート部側の全反射条件を満たす入射角を大きくすることができ、既に導光シート部内で導光されている光が、光入射部との界面に導光シート部側から到達した際、光入射部側に入射せずに反射され易くできて、導光シート部の光入射部の配置位置での導光性能を確保し易くできる。
【0022】
その結果、導光シート部の内部で導光される光の量をより多く確保し易くできる。
【0023】
請求項4に記載の照光シート部材によれば、透明材料が光硬化性樹脂からなるので、製造する際、導光シート部と光入射部との間の界面を荒らさずに密着させて成形でき、導光シート部の光入射部の配置位置での導光性能をより確保し易くできる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、光入射部の光案内面が、導光シート部と平行な光を導光シート部の内面で反射可能な入射角となるように反射させる傾斜を有するので、光入射部から導光シート部に入射させた光が導光シート部内で導光され易く、導光シート部の内部で導光されるる光の量をより多く確保し易くできる。
【0025】
請求項6に記載の照光シート部材によれば、光案内面に光を反射可能な反射層が設けられているので、光案内面における全反射条件を満たさない光であっても、導光シート部に導入することができ、導光シート部に導入させる光の量を多く確保し易くできる。
【0026】
請求項7に記載の操作スイッチ用カバー部材によれば、導光シート部の内部で導光される光の量をより多く確保し易くて小型薄肉化を図り易い照光シートが、単数又は複数の表示部を設けたキーシートの下面側に配設されて、表示部に対応する位置に放射部が配置されているので、光源から放射された光を効率よく表示部を照射するために使用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1乃至図3は、この実施の形態を示し、携帯電話の操作スイッチ用カバー部材に照光シート部材を適用した例である。
【0029】
この携帯電話では、図示しない筐体内に、LED等の光源11と、回路の接点端子13と、接点端子13間を離接可能な被押圧部としての弾性ドーム15とが配設された基板10を備え、この基板10上に操作スイッチ用カバー部材としての操作パネル20が配設された構成を有している。
【0030】
操作パネル20は、複数のキートップ31を備えたキーシート30と、キーシート30を基板10側となる下面側から照光可能な照光シート部材40とが、空気層23を介して積層され、周囲のスペーサ21により接合されている。
【0031】
キーシート30は、弾性ドーム15に対応する位置の上面にキートップ31が固定され、このキートップ31に印刷、塗装、蒸着等により遮光層33が形成されると共に、遮光層33に抜き形状に文字、図形、記号等の表示部35が形成されている。キーシート30の基板10側となる下面には、印刷、塗装、蒸着等により遮光層37が形成されると共に、キートップ31に対応する位置に抜き形状に透光部39が形成されている。キーシート30及びキートップ31は何れも光を透過可能な透明樹脂により形成されている。
【0032】
操作パネル20の照光シート部材40は、光源11からの光が入射される光入射部41と、この光入射部41から入射された光が内部を通して導かれる導光シート部43と、この導光シート部43により導光された光を放射するように、各キートップ31に対応する位置の基板10側となる下面に設けられた複数の放射部45と、放射部45と共に下面に設けられた弾性ドーム15を押圧可能なプランジャ部47と、操作パネル20を基板10上に支持するための補強リブ49とを備えている。
【0033】
照光シート部材40の導光シート部43は、内部で光が両面側で反射されつつ導光可能な平坦な透明樹脂シートからなる。この透明樹脂シートの材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。透明性、強靱性を有すると共に高い屈折率を有するという理由で、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートが好適である。
【0034】
この導光シート部43は、照光シート部材40や操作パネル20を薄く抑えるために出来るだけ薄く形成されることが好ましく、例えば、導光シート部43の厚さを0.05mm〜0.4mmとしてもよく、好ましくは、0.1mm〜0.15mmとするのが好適である。このような範囲であれば、導光性能を確保しつつ、薄型化することが可能である。
【0035】
照光シート部材40の光入射部41は、光源11の発光面11aから発光した光を導光シート部43の内部に導くもので、導光シート部43の下面に密着して突設されており、光源11の発光面11aと対向する入射面51と、入射面51より放射部45側に設けられて、光源11側から放射部45側に向けて薄肉となるように傾斜した光案内面53とを備えている。この光入射部41は、接着剤や粘着剤等を介在しないと共に気泡等を存在させず、導光シート部43の下面に直接密着して固定されている。
【0036】
この実施の形態の光源11は、導光シート部43に沿う方向の光がより多く発光されるように発光面11aが基板10及び導光シート部43に沿う方向に配向した側面発光式のものであり、光入射部41の入射面51は、この光源11の発光面11aに対応した形状を有し、発光面11aに出来るだけ近接し、好ましくは密着した平面又は曲面からなる。入射面51は、光源11の発光面積と同一以上の入射面積を有しており、発光面11aの全面に対向している。
【0037】
一方、光案内面53は、入射面51から入射して光案内面53に達した光をより多く導光シート部43の内部に導けるように、入射面51から離間する程、導光シート部43に近接するように、一定の勾配で傾斜した傾斜平面又は曲面により構成されている。
【0038】
この光案内面53は、例えば、光源11からの光を主として導光させる方向が1方又は狭い範囲である場合には、光案内面53は導光シート部43に沿う断面が直線形状となる傾斜平面としてもよく、光源11からの光を比較的広い範囲に導光させる場合には、導光シート部43に沿う断面が曲線形状となる傾斜曲面としてもよい。
【0039】
光案内面53の傾斜面の勾配は、導光シート部43と平行な光を反射させた際、反射光が光入射部41から導光シート部43に入射可能な勾配とするのが好ましく、特に、この反射光が導光シート部43に入射して導光シート部43の空気層23との界面である上面に到達した際、反射光が導光シート部43の上面において全反射条件を満たすような勾配となるように形成するのが好適である。このような光案内面53の勾配は光入射部41や導光シート部43の各材料の屈折率等に応じて適宜設定することが可能である。
【0040】
また、光案内面53には、この実施の形態のように、光案内面に53達した光をより多く反射できるように金属蒸着や白色印刷により形成された反射層55を設けていてもよい。
【0041】
照光シート部材40の放射部45は、導光シート部43の内部で導かれた光を乱反射させて導光シート部43から放射させるもので、導光シート部43の下面に密着して突設された複数の乱反射用突部57からなる。この乱反射用突部57は、各キートップ31に対応する各放射部45毎に複数設けてられている。
【0042】
この乱反射用突部57は、導光シート部43の内部で導光され、乱反射用突部57と導光シート部43との界面に到達した光の一部、即ち、界面での全反射条件を満たさない光を入射させて、乱反射用突部57の突形状の外表面で乱反射させるように構成されている。
【0043】
この乱反射用突部57では、所望の乱反射の強さが得られるように、大きさ、形状、数等が適宜設定されている。形状としては、例えば、球面、円錐、円柱、円錐台、角錐、角柱、角錐台、板状、塊状等、各種の形状が選択できる。また、複数の放射部45の放射部45毎に、乱反射用突部57の形状、大きさ、数等を異ならせることができる。この実施の形態1では、詳細な図示は省略しているが、光源11からの距離が遠い程、乱反射用突部57の数を多くして配置密度を増加させている。
【0044】
照光シート部材40のプランジャ部47は、キートップ31が押圧された際に下降して弾性ドーム14を押圧するもので、各キートップ31に対応する導光シート部43の下面の放射部45に設けられている。この実施の形態では、プランジャ部47は放射部45の一部を構成している。このプランジャ部47は、略円柱形状を呈し、乱反射用突部57より突出して設けられており、基板10側となる下面に乱反射用突部57と同形状の凹凸が設けられている。このプランジャ部47では、導光シート部43の内部で導光されて、プランジャ部47と導光シート部43との界面に到達した光の一部が入射され、外表面で乱反射されるようになっている。
【0045】
これらの乱反射用突部57及びプランジャ部47は、光を透過可能な透明性を有する材料から形成されており、接着剤や粘着剤等を介在しないと共に気泡等を存在させず、導光シート部43の下面に直接密着して固定されている。
【0046】
照光シート部材40の補強リブ49は、導光シート部43の下面の各キートップ31間に設けられている。この補強リブ49は、照光シート部材40の基板10からの位置を位置決めする機能と、各キートップ31の押圧時に、他のキートップ31を含む操作パネル20の他の部位を変形させ難くする機能とを有している。また、操作パネル20の剛性を担保するものであってもよい。この補強リブ49は、導光シート部43より硬質の材料から形成されており、導光シート部43に複数箇所、好ましくは全体が固定されている。
【0047】
このような導光シート部43の下面に形成された光入射部41、乱反射用突部57、及びプランジャ部47は、それぞれ光を透過可能な透明性を有する材料から形成されており、互いに異なる材料から形成されていてもよいが、同一の材料から形成されていることが好ましい。同一の材料から形成されていれば、これらを一度に成形することが可能で、製造し易くできるからである。
【0048】
これらの材料として、導光シート部43の表面上で成形可能な樹脂等の材料を用いるのが好適である。導光シート部43に直接密着して形成することができ、光入射部41、乱反射用突部57、又はプランジャ部47と導光シート部43との界面における、光の伝搬が阻害される部材や気泡を存在させ難くできるからである。
【0049】
具体的には、透明性を有する各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などを用いることができ、光硬化性樹脂を用いれば、成形時に導光シート部43の表面が荒れ難く、乱反射を防止できて好適である。この光硬化性樹脂としては、種々のものが使用可能であるが、加工性、作業性の観点から、アクリル系、シリコーン系、エポキシ系、エステル系などの紫外線硬化樹脂を用いるのがよい。
【0050】
この実施の形態では、光入射部41、乱反射用突部57、プランジャ部47、補強リブ49が、全て同一の紫外線硬化樹脂により形成されており、光入射部41が導光シート部43より低い屈折率を有する材料となるようにしている。導光シート部43より低い屈折率であれば、既に導光シート部43の内部で導光されている光が光入射部41と導光シート部43との界面に入射した際、導光シート部43内で反射させ易いからである。
【0051】
なお、乱反射用突部57には、導光シート部43より高い屈折率を有する材料を用いることも好適である。導光シート部43より高い屈折率であれば、導光シート部43から乱反射用突部57に光を入射させ易くできるからである。
【0052】
このような照光シート部材40は、キーシート30と空気層23を介して積層された状態で、周縁側で両面粘着シート等のスペーサ21を介して接合されて操作パネル20が構成されている。照光シート部材40とキーシート30とが空気層23を介して積層されることで、導光シート部43の上面がキーシート30に比べて屈折率の低い空気層23に接するため、導光シート部43の内部で導かれる光が上面側に到達したときの全反射条件を広くでき、導光性能を向上することができるからである。
【0053】
更に、このように構成された操作パネル20は、図示しない筐体の開口部の周縁に設けられた固定部に固定されると共に、補強リブ49の底面が基板10に固定されることにより、筐体及び基板10に装着されて携帯電話を構成している。
【0054】
なお、操作パネル20が固定部に固定された状態で、補強リブ49に入射された光が補強リブ49から漏れることなどを防止する目的で、補強リブ49と基板10とが接触する部位に金属蒸着や白色印刷等により形成された反射層59を設けることも好ましい。
【0055】
次に、照光シート部材40を製造する方法について説明する。
【0056】
この照光シート部材40を製造するには、まず、図3(a)に示すように、予め少なくとも一方の面が平坦に形成されていて、導光シート部43を構成可能なシート材43Xを作製する。シート材43Xとしては、シート状の素材から切り出して使用してもよく、成形型等を用いて作製してもよい。
【0057】
次に、図3(b)に示すように、光入射部41、乱反射用突部57、プランジャ部47、及び、補強リブ49に対応する形状を有する凹部61と、シート材43Xがインサートされる収容部63とを有する透明な下型65を用い、各凹部61に未硬化状態の紫外線硬化樹脂組成物67を注入し、スクレーパ68により各凹部61に対して過剰量の紫外線硬化樹脂組成物67を除去することにより、全ての凹部61に紫外線硬化樹脂組成物67を適量充填する。
【0058】
次に、図3(c)に示すように、下型65の収容部63にシート材43Xを配置して、上型69により型締めし、シート材43Xに各凹部61内の紫外線硬化樹脂組成物67を各凹部61の開口全面で密着させる。そして、この状態で、下型65の外側から紫外線を照射し、各凹部61内の紫外線硬化樹脂組成物67を硬化する。
【0059】
その後、下型65及び上型69からなる成形型を型開きして、成形品を取り出し、シート材43Xが所定の外形形状を有する導光シート部43となる場合にはそのまま、また、シート材43Xが複数の導光シート部43を含む場合には、所定の外形形状を有する導光シート部43毎に切断分離するなどにより、導光シート部43に光入射部41、乱反射用突部57、プランジャ部47、及び、補強リブ49がそれぞれ一体に形成された照光シート部材40を得ることができる。
【0060】
次に、このような照光シート部材40の使用状態を説明する。
【0061】
この照光シート部材40が所定位置に配置された携帯電話では、光源11を発光させると、図2に示すように、まず、光源11の発光面11aから発光された光が、光入射部41の入射面51に入射される。入射された光のうち、入射面51と導光シート部43との間の界面に到達した光の多くは、直接、導光シート部43に入射される。また、入射された光のうち、導光シート部43に沿って光案内面53にまで到達した光は、光案内面53において反射され、導光シート部43との界面の方向に進行し、該界面から導光シート部43に入射される。
【0062】
導光シート部43の内部に入射された光は、導光シート部43の上面側の空気層23との界面で反射され、その後、導光シート部43の上下面において適宜繰り返し反射されつつ、導光シート部43内で複数の放射部45に導かれる。
【0063】
放射部45では、導光シート部43内で導びかれた光のうち、乱反射用突部57及びプランジャ部47との界面に到達した光の一部が乱反射用突部57及びプランジャ部47に入射される。
【0064】
そして、乱反射用突部57及びプランジャ部47に入射された光が、それぞれの外表面に到達するとその部位で乱反射され、照光シート部材40から放射される。この放射された光のうちキートップ31に向かう光が、透光部39及び表示部35を透過することにより、キートップ31の表示部35の外部に放射される。
【0065】
なお、導光シート部43内で導びかれた光のうち、乱反射用突部57及びプランジャ部47に入射されない光は、更に、導光シート部43内で他の放射部45に導かれ、キートップ31の表示部35の外部に放射される。
【0066】
以上のような照光シート部材40によれば、光入射部41が導光シート部43の表面に密着して突設されているので、導光シート部43の厚さや形状等に拘わらず、光源11に対して十分な大きさの光入射部41を容易に形成することができる。そのため、光源11から発せられる光をより多く光入射部41に入射させ易い。
【0067】
また、光入射部41には光源11側から放射部45側に向けて薄肉となるように傾斜した光案内面53が設けられ、入射面51から入射されて光案内面53に達した光が導光シート部43の内部に導かれるように構成されているので、光源11の発光面11aからの光を導光シート部43により多く導入し易い。
【0068】
しかも、この光入射部41は導光シート部43の外周より外側に突出させる必要がなく、更に、光源11の上方側に光を拡散させるための距離も設ける必要がないため、照光シート部材40全体の平面視における配置スペースを少なく抑え易いと共に、側面視における配置厚さを少なく抑えることができ、小型薄肉化を図り易い。
【0069】
従って、この照光シート部材40によれば、導光される光の量をより多く確保し易くて、小型薄肉化を図り易い照光シート部材40が得られる。
【0070】
また、この照光シート部材40では、入射面51が光源11の発光面積と同一以上の入射面積を有しているので、光源11から放射される光をより多く光入射部41に入射させ易く、光源11から放射される光の無駄を防止し易い。
【0071】
更に、この照光シート部材40では、光入射部41が導光シート部43より低い屈折率を有する透明材料からなるので、光入射部41から導光シート部43へ入射可能な光の入射角をより大きく確保することができ、光入射部41から導光シート部43へより多くの光を導入することができる。この導光シート部43内では、光が両面で反射されつつ導かれるため、光入射部41から入射可能な光の入射角が大きい程、導光シート部43内の両面で全反射され易い光を導光シート部43により多く導入することができ、導光シート部43内で導光され易い光の割合を多くすることができる。
【0072】
同時に、光入射部41が導光シート部43より低い屈折率を有すれば、光入射部41との界面における導光シート部43側の全反射条件を満たす入射角を大きくすることができ、既に導光シート部43の内部で導光されている光が、光入射部41との界面に導光シート部側から到達した際、光入射部41側に入射せずに反射され易くできて、導光シート部43の光入射部41の配置位置での導光性能を確保し易い。
【0073】
その結果、導光シート部43の内部で導光されるる光の量をより多く確保し易くすることが可能である。
【0074】
また、この照光シート部材40によれば、光入射部41が光硬化性樹脂からなるので、製造する際に、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等のように導光シート部43に高温や高圧を与える必要がなく、導光シート部43と光入射部41との間の界面を荒らさずに密着させて成形し易く、導光シート部43の光入射部41の配置位置での導光性能をより確保し易い。
【0075】
更に、光入射部41の光案内面53が、導光シート部43と平行な光を導光シート部43の内面で反射可能な入射角となるように反射させる勾配を有しているので、光入射部41から導光シート部43に入射させた光が導光シート部43内で導光され易く、導光シート部43の内部で導光される光の量をより多く確保し易くできる。
【0076】
また、この照光シート部材40では、光源11が導光シート部43に沿う方向の光を発光可能に構成されたものであり、導光シート部43からの光案内面53の突出量が入射面51の突出量以上であるため、光源11から光入射部41に入射されたより多くの光を導光シート部43に入射させることができる。
【0077】
また、この光入射部41では、光案内面53に光を反射可能な反射層55が設けられているので、光案内面53における全反射条件を満たさない光であっても、導光シート部43に導入することができ、導光シート部43に導入させる光の量を多く確保し易い。
【0078】
そして、このような操作パネル20では、導光シート部43の内部で導光される光の量をより多く確保し易くて小型薄肉化を図り易い照光シート部材40が、複数の表示部35を設けたキーシート30の下面側に配設されて、表示部35に対応する位置に放射部45が配置されているので、光源11から放射された光を効率よく表示部35を照射するために使用することが可能である。
【0079】
なお、上記実施の形態では、光入射部41と共に、乱反射用突起57、プランジャ部47、補強リブ49等を同一の紫外線硬化樹脂により形成した例について説明したが、特に限定されるものではなく、光入射部41をこれらとは異なる材料により形成することが可能である。
【0080】
また、上記では、放射部45として、乱反射用突起57を設けた例について説明したが、特に限定されるものではなく、乱反射用突起57の代わりに、導光シート部43に直接凹凸形状を形成したものであっても、この発明を同様に適用可能である。
【0081】
更に、上記では、導光シート部43の表面に密着して突設された光入射部41として、導光シート部43とは異なる材料から形成されたものについて説明したが、例えば、光入射部41と導光シート部43とが同一の材料により形成されていてもよく、更に、同一材料により一体に形成されることで、密着されていても、この発明を適用することが可能である。
【0082】
また、上記では、光入射部41として、入射面51と光案内面53との各端縁が一致するように隣接して設けた形状の例について説明したが、光入射部51と光案内面53とがそれぞれ異なる位置に設けられた形状とすることも可能である。その場合、入射面51からの光をより多く導光シート部43に導入可能とするために、光案内面53の導光シート部43からの直交方向の突出量が、入射面51の導光シート部43からの直交方向の突出量以上となるのが好適である。このようにすれば、入射面51から入射された光のうち、少なくとも導光シート部43と平行な光の全てを光案内面53に入射させることができ、導光シート部43に導入する光を多く確保し易くできるからである。
[実施の形態2]
【0083】
図4は、この実施の形態2の操作パネル20を示している。
【0084】
この実施の形態2では、光源71及び光入射部41が、例えば図1のP点等のように、周囲の多数の方向にキートップ31が設けられているような位置に配置されている。
【0085】
また、基板10に装着された光源71として、発光面71aが頂部側に設けられていて、発光面71aから導光シート部43側に向かう光がより多く発光される上面発光式のものを用いている。この操作パネル20の照光シート部材40の光入射部41では、入射面51が光源71の発光面71aから発せられる光を入射可能に、光源71の頂部側全体を覆って僅かに離間して対向するように形成されている。ここでは、入射面51が光源71の発光面71aと異なる形状を呈し、発光面71aが平面形状であるのに対し、入射面51が球面などの曲面形状となっている。また、光案内面53は、光源71の全周囲に、入射面51から離間する程、導光シート部43に近接するように傾斜して形成された円錐面又は角錐面から形成されている。
【0086】
その他は、実施の形態1と同様である。
【0087】
このような照光シート部材40であっても、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。ここでは、上面発光式の光源71を用いているが、発光面71aから光入射部41の入射面51に入射された光のうち、光入射部41の光案内面53に到達した光は実施の形態1と同様にして、導光シート部43に導入することができ、また、導光シート部43に直接入射した光が導光シート部43の上面やキーシート30の背面で反射されて再び光入射部41に導入されると、光案内面53により導光シート部43により導入することができる。そのため、光源71の発光面71aと導光シート部43との間の距離が短くても、光源71からの光をより多く導光シート部43に導入し易くできる。
【0088】
また、この照光シート部材40では、入射面51が光源71の発光面71aから離間しており、しかも球面などの曲面形状となっているため、発光面71aから入射面51に到達した光を四方に散乱させることができる。そのため、光案内面53により案内されて、或いは、案内されることなく、導光シート部43に入射された光を導光シート部43内で導光させ易い。
【0089】
なお、この実施の形態2では、光源71の発光面71aと光入射部41の入射面51とが離間して配置された例について説明したが、実施の形態1と同様に発光面71aと入射面51とを同一形状に構成して互いに密着した状態で配置することにより、光源71で発光された光の入射面51における損失を少なく抑えてもよい。
【0090】
また、このように光源71の発光面71aと光入射部41の入射面51とが離間して配置されている場合、発光面71aと入射面51との間に、シリコーンゲル等のように、透明性を有して変形し易い材料を充填することにより、光源71で発光されて入射面51から入射されるまでの間の光の損失を小さく抑えることも可能である。
【0091】
更に、上記実施の形態1、2では、光案内面53を一定勾配を有する傾斜平面又は傾斜曲面面により形成したが、この面の勾配を変化させて設けることも可能であり、例えば、放射方向の縦断面形状が弧状、2次元曲線、多次元曲線形状等に形成してもよい。
【実施例】
【0092】
以下、実施例について説明する。
【0093】
両面が平坦で、厚さ100μmのポリカーボネートフィルム「ユーピロン」(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名)を適宜切断して、図3(a)に示すように、シート材料43Xを作製した。
【0094】
次に、図3(b)に示すように、光入射部41、乱反射用突部57、プランジャ部47、及び補強リブ49の形状に対応する凹部61が設けられた下型65に、未硬化状態の紫外線硬化樹脂組成物67を供給し、過剰な紫外線硬化樹脂組成物67をスクレーパ68により除去することで、各凹部61に未硬化状態の紫外線硬化樹脂組成物67を気泡が入らないように充填した。
【0095】
次に、図3(c)に示すように、下型65の収容部63にシート材料43Xを配置して、上型69により型締めし、シート材料43Xに各凹部61内の紫外線硬化樹脂組成物67を各凹部61の開口全面で密着させた。
【0096】
そして、この状態で、上型69の外側から紫外線を積算光量200mJ/cmとなるように照射して、各凹部61内の紫外線硬化樹脂組成物67を硬化した。
【0097】
その後、型開きして、成形品を取り出し、シート材料43Xを導光シート部43の外形形状となるように切断することにより、光入射部41、乱反射用突部57、プランジャ部47、及び、補強リブ49が、間に気泡等が存在することなく導光シート部43に密着した状態の照光シート部材40を得た。
【0098】
この照光シート部材40を、各キートップ31に抜き文字により表示部35が形成されているキーシート30に、間に空気層23が形成されるようにスペーサ21を用いて積層し、操作パネル20を形成し、この操作パネル20の光入射部41に光源11を配置して発光させたところ、入射部41から導光シート部43に十分に光を導入して導光することが可能であり、各キートップ31の抜き文字からなる表示部35から鮮明に光を放射させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】この発明の実施の形態1の操作パネルを示す平面図である。
【図2】同実施の形態1の操作パネルを示す図1のA−A断面図である。
【図3】同実施の形態1の照光シート部材の製造工程を説明する図である。
【図4】この発明の実施の形態2の操作パネルを示す断面図である。
【符号の説明】
【0100】
10 基板
11 光源
20 操作パネル
30 キーシート
40 照光シート部材
41 光入射部
43 導光シート部
45 放射部
47 プランジャ部
49 補強リブ
51 入射面
53 光案内面
57 乱反射用突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光が入射される光入射部と、該光入射部から入射された光が内部を通して導かれる導光シート部と、該導光シート部により導光された光を放射する複数の放射部とを備えた照光シート部材において、
前記光入射部は、前記導光シート部の表面に密着して突設されると共に、前記光源の発光面と対向する入射面と、該入射面より前記放射部側に設けられ、前記光源側から前記放射部側に向けて薄肉となるように傾斜した光案内面とを備え、
前記入射面から入射されて前記光案内面に達した光が、該光案内面により前記導光シート部の内部に導かれるように構成されたことを特徴とする照光シート部材。
【請求項2】
前記入射面は、前記光源の発光面積と同一以上の入射面積を有することを特徴とする請求項1に記載の照光シート部材。
【請求項3】
前記光入射部は、前記導光シート部より低い屈折率を有する透明材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の照光シート部材。
【請求項4】
前記透明材料は、光硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項3に記載の照光シート部材。
【請求項5】
前記光案内面は、前記導光シート部と平行な光を、前記導光シート部の内面で反射可能な入射角となるように反射させる傾斜を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の照光シート部材。
【請求項6】
前記光案内面には、該光案内面に達した光を反射可能な反射層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の照光シート部材。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一つに記載の照光シート部材が、上面に単数又は複数の表示部を設けたキーシートの下面側に配設され、前記表示部に対応する位置に前記放射部が配置されていることを特徴とする操作スイッチ用カバー部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−87818(P2009−87818A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257598(P2007−257598)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】