説明

照光機能を有するキーボード装置

【課題】 光源から発せられた光を効率的に反射して、キートップに設けられた照光表示部を効果的に照光できるキーボード装置を提供する。
【解決手段】 シャーシ2の上に、メンブレン積層体20が積層されている。メンブレン積層体20は基板シート21と押圧シート22とスペーサ層23とで形成されており、接点入力部24には下側接点25a,25aと上側接点26が設けられている。押圧シート22が導光シートとして機能しており、キートップ15の下側に対向する反射領域27では、押圧シート22の裏面22dにレーザーを照射して形成された複数の凹部28が設けられている。押圧シート22内を伝播した光は、凹部28の内面で上方へ反射されてキートップ15に与えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のキートップによって接点を接触させるキーボード装置に係り、特にキートップを照光する機能を有するキーボード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータや各種情報の検索装置には複数のキートップが配列したキーボード装置が装備されている。
【0003】
最近のキーボード装置は、暗所で個々のキートップを識別できるように照光する機能を備えることが要求されている。特に、ブック型またはラップトップ型のパーソナルコンピュータは、暗所において個々のキートップを目視で区別できるように、照光機能を有するキーボード装置を搭載することが望まれている。
【0004】
以下の特許文献1に記載されたキーボード装置は、個々のキートップが支持されたベース基板の裏側にエレクトロルミネッセンス素子が設置されており、エレクトロルミネッセンス素子から発せられた光が、ベース基板に形成された貫通孔を透過してそれぞれのキートップに与えられる。
【0005】
特許文献2に記載されたキーボード装置は、ベースの上に冷光板あるいは冷陰極板で形成された板状の発光素子が設けられ、この発光素子の上に、回路板と弾性体のシートとが重ねられ、弾性体のシートの上に複数のキートップが設けられている。板状の発光素子から発せられた光は、回路板に形成された穴および弾性体のシートに形成された穴を通過して、それぞれのキートップに与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−251937号公報
【特許文献2】実用新案登録第3082585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載されたキーボード装置は、ベース基板の下側にエレクトロルミネッセンス素子が設けられ、光がベース基板に開口する貫通孔を通過してそれぞれのキートップに与えられる。また、特許文献2に記載されたキーボード装置は、板状の発光素子から発せられた光が、回路基板および弾性体のシートに形成された穴を通過してキートップに与えられる。
【0008】
このように、従来のキーボード装置は、光源からの光がその上に位置する他の部材の穴を通過してそれぞれのキートップに与えられる構造であるため、キートップを照光するための光の利用効率が悪く、また、キートップと光源との間に介在するベース基板などで光が遮られるために、それぞれのキートップを均一に照光することが難しかった。
【0009】
また、特許文献1と特許文献2に記載のキーボード装置は、いずれもシート状の光源を使用しているため、それぞれのキートップの照光を必要とする部分に集中的に光を与えることができなかった。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、光源からの光をキートップに効率よく与えることができ、それぞれのキートップの照光箇所を明瞭に照光させることができる照光機能を有するキーボード装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、シャーシと、複数のキートップと、前記シャーシ上で前記キートップを上下動自在に支持する支持部材とを有し、
前記シャーシと前記キートップとの間に、下側接点と、前記下側接点を覆う可撓性の押圧シートと、前記押圧シートの下面に設けられて前記下側接点に対向する上側接点とを有する接点入力部が設けられ、複数の前記接点入力部がそれぞれの前記キートップで押圧できる位置に配置されており、
前記押圧シートまたは前記押圧シートの上側に重ねられた被覆シートが、内部で光を伝播する導光シートであり、前記シャーシの上に、前記導光シートの内部に光を与える光源が設けられており、
前記導光シートの前記キートップに対向する表面と逆側の裏面に複数の凹部が形成され、前記導光シート内を伝播した光が前記凹部で反射されて前記キートップに向けられることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のキーボード装置は、接点入力部を構成する押圧シートまたはその上の被覆シートが導光シートであり、導光シートの表面の広い部分がキートップに対向する。そのため、導光シートの表面から発せられた光が多く遮られることなくキートップに与えられることになり、キートップを効率よく照光することができる。
【0013】
また、導光シートが接点入力部の最上部に設けられているため、導光シートよりも下側に位置しているシートや接点などを透明にする必要がない。導光シートよりも下側を透明にする必要がないため、材料費も低減できる。
【0014】
さらに、導光シートの裏面に凹部が形成されて、導光シート内を伝播する光が、凹部の内面で反射されて導光シートの表面からキートップに与えられるため、キートップの照光したい場所に光を集中させることができる。
【0015】
例えば、本発明は、前記下側接点は、基板シートの上面に形成されており、前記下側接点と前記上側接点とが対向する領域を除いて、前記基板シートと前記押圧シートとが接着層を介して固定されており、前記接着層は、前記下側接点と前記上側接点とが間隔を空けて対向できる厚さに形成されているものが好ましい。
上記構造では、接点入力部を薄型に構成でき、薄いキーボード装置を実現できる。
【0016】
本発明は、それぞれの前記凹部は、開口部が円形または長円形あるいは楕円形であり、内面が平滑面の凹曲面である。
【0017】
導光シートに形成された凹部の内面が平滑面であるため、導光シート内を伝播した光が、前記内面で乱反射せずに凹部の内面で光が指向性を維持したままキートップに向けて反射される。そのため、光が減衰するのを防止しやすく、光源から離れた箇所のキートップに対しても高い輝度で照光することが可能である。
【0018】
本発明は、前記凹部の大きさや形状を任意に変えることで、光源からの距離に応じた照光輝度のばらつきなどを防止できる。
【0019】
例えば、前記凹部の深さ寸法および前記裏面に対する前記内面の立ち上がり角度を、前記導光シートの場所によって相違させる。この場合、前記光源から離れるにしたがって、前記深さ寸法が大きくなり且つ前記角度が大きくなることが好ましい。
【0020】
また、同一の前記キートップに光を与える領域に、前記深さ寸法および前記角度の相違する凹部を混在させることができる。
【0021】
異なる形状の凹部を混在させることで、キートップの照光すべき箇所の場所や形状および広さに応じた最適な照光が可能になる。
【0022】
また、前記凹部の前記開口部の面積を、前記導光シートの場所によって相違させることが可能である。
【0023】
さらに、複数の前記凹部の配列密度を、前記導光シートの場所によって相違させる。この場合、前記光源に近い前記キートップに対向する前記凹部の配列密度よりも、前記光源から離れた前記キートップに対向する前記凹部の配列密度の方が高いことが好ましい。
【0024】
本発明は、前記導光シートに形成された前記凹部が、レーザー光のエネルギーによって前記導光シートを形成する合成樹脂材料の一部が分解されて形成されたものである。
【0025】
本発明のキーボード装置は、前記光源は、隣り合う前記キートップを支持する前記支持部材の間に配置されており、前記導光シートに、前記光源が入り込む穴が形成されていることが好ましい。
【0026】
光源を、隣り合う支持部材の間に配置することで、光源からそれぞれのキートップまでの距離を短くでき、光の利用効率が高くなる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、キーボード装置のキートップを照光する光の利用効率を高めることができる。またキートップの照光すべき箇所に光を集中させることができ、また光源からの距離の変化の影響を受けにくく、それぞれのキートップの照光の明るさのばらつきを少なくできる。さらに、導光シート内を伝播する光が乱反射による減衰を生じにくいので、光源から光でそれぞれのキートップを高い照度で照光することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態のキーボード装置の一部を示す部分平面図、
【図2】図1に示すキーボード装置のキートップを除去した状態を示す部分平面図、
【図3】キーボード装置の断面図であり、図2のIII−III線で切断した断面に相当する断面図、
【図4】照光機能部の構造を拡大して示す説明図、
【図5】第2の実施の形態のキーボード装置の照光機能部の構造を拡大して示す説明図、
【図6】(A)(B)(C)は、導光シートに形成された凹部の形状の実測値を示す線図、
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1ないし4に示す第1の実施の形態のキーボード装置1は、ブック型またはラップトップ型あるいはディスクトップ型のパーソナルコンピュータなどに装備される。
【0030】
キーボード装置1は、金属製のシャーシ2を有しており、シャーシ2の上に複数のキー入力部10a,10b,10c,10d,10eが縦方向および横方向に配列している。図1に示すように、キー入力部10a、キー入力部10b、キー入力部10c、キー入力部10dおよびキー入力部10eは、それぞれのキー入力部に設けられたキートップ15の大きさによって区別している。なお、以下では大きさの相違するキートップを全て同じ符号15を付して説明する。
【0031】
図3は図2のIII−III線での断面で切断したキーボード装置1の断面であり、キー入力部10c,10dが示されている。それ以外のキー入力部10a,10b,10eは、キートップ15の横方向の長さ寸法がキー入力部10c,10dとは相違しているが、それ以外の構造はキー入力部10c,10dと実質的に同じである。
【0032】
図3に示すように、シャーシ2の上には、メンブレン積層体20とマスクシート30が順に重ねられて固定されており、シャーシ2から上方へ離れた位置にキートップ15が設けられている。なお、図4では、シャーシ2とメンブレン積層体20とマスクシート30とが上下に離れて図示されているが、実際は、シャーシ2の上にメンブレン積層体20の基板シート21が接着されて固定されており、押圧シート22にマスクシート30が接着されて固定されている。
【0033】
それぞれのキー入力部10c,10dが設けられる部分では、前記シャーシ2に第1の支持片11aと第2の支持片11bが上方に向けて折り曲げられている。それぞれのキー入力部10c,10dが設けられる部分で、第1の支持片11aが図3の紙面に直交する方向に離れて一対設けられており、第2の支持片11bも前記紙面に直交する方向に離れて一対設けられている。メンブレン積層体20に穴20aが開口し、マスクシート30にも前記穴20aと上下に貫通する穴30aが開口しており、前記第1の支持片11aと第2の支持片11bが、前記穴20aおよび穴30a内を通過してメンブレン積層体20よりも上方に突出している。
【0034】
それぞれのキートップ15とシャーシ2との間に、第1の可動支持部材16と第2の可動支持部材17が設けられている。第1の可動支持部材16は、その一端16aが第1の支持片11aに回動自在に支持され、他端16bがキートップ15の下部に回動自在で且つ横方向へスライド自在に支持されている。第2の可動支持部材17は、一端17aがキートップ15の下部に回動自在に支持され、他端17bが第2の支持片11bに回動自在で且つ横方向へスライド自在に支持されている。第1の可動支持部材16と第2の可動支持部材17は、その中央部どうしが回動自在に連結されており、第1の可動支持部材16と第2の可動支持部材17とでX型の支持リンクが構成されている。この実施の形態では、前記X型の支持リンクが、キートップ15を昇降自在に支持する支持部材である。
【0035】
前記マスクシート30とキートップ15との間に弾性部材18が設けられている。弾性部材18は合成ゴムで形成されており、キートップ15に対してシャーシ2から離れる方向である上向きの付勢力を与える付勢部材である。弾性部材18の下側の内部は空洞であり、この空洞内に下向きの押圧凸部18aが一体に形成されている。
【0036】
図4に拡大して示すように、前記メンブレン積層体20は、基板シート21と押圧シート22と、前記両シート21と22との間に挟まれたスペーサ層23とが積層されて構成されている。前記弾性部材18の押圧凸部18aが対向する部分には、スペーサ層23が形成されていない接点入力部24が設けられている。接点入力部24は、全てのキー入力部10a,10b,10c,10d,10eに設けられた弾性部材18の押圧凸部18aと対向する位置に形成されている。
【0037】
図4に示すように、接点入力部24では、基板シート21の上面に対を成す下側接点25a,25aが設けられ、押圧シート22の下面に、下側接点25a,25aに対向する上側接点26が設けられている。下側接点25a,25aは、基板シート21の上面に配線された導電パターンに個別に導通されている。キー入力部10c,10dなどにおいて、キートップ15が押されると、第1の可動支持部材16の一端16aが第1の支持片11aとの係合部を支点として回動し、第2の可動支持部材17の一端17aがキートップ15の下部で回動して、キートップ15が下降する。このとき、弾性部材18がキートップ15で押し潰されるとともに、押圧凸部18aでマスクシート30を介して接点入力部24の押圧シート22が押され、上側接点26が、一対の下側接点25a,25aに接触して、下側接点25a,25aが互いに導通させられる。これによりキー入力信号が得られる。
【0038】
接点入力部24以外の領域で基板シート21と押圧シート22との間に介在するスペーサ層23は接着層である。スペーサ層23は、基板シート21の表面にレジスト材料などで形成された有機樹脂層23aとその上に積層された接着剤層23bとで構成されている。有機樹脂層23aは、スクリーン印刷工程などで、接点入力部24を除く領域で基板シート21の表面に形成されている。接着剤層23bも、スクリーン印刷工程などで、接点入力部24を除く領域で、有機樹脂層23aの表面に形成され、この接着剤層23bで押圧シート22が固定されている。
【0039】
スペーサ層23を接着層とすることで、メンブレン積層体20を薄いものにできる。また、スペーサ層23を、有機樹脂層23aと接着剤層23bとの積層体で形成することで、基板シート21と押圧シート22との上下の間隔を広く保つことができ、それぞれの接点入力部24において、下側接点25a,25aと上側接点26との上下の対向間隔を保つことができる。
【0040】
図3と図4に示すキーボード装置1では、メンブレン積層体20の最上部の層である押圧シート22が導光シートとして機能している。
【0041】
図4に示すように、メンブレン積層体20に、上下に貫通する穴20bが開口している。シャーシ2の表面に光源である発光ダイオード装置29がフレキシブル配線基板などを介して固定されており、この発光ダイオード装置29が前記穴20bの内部に入り込んでいる。発光ダイオード装置29は、透明なパッケージの内部に発光ダイオードのベアチップが収納されたものであり、周囲の全方向へ光を出射することが可能である。発光ダイオード装置29は、穴20b内において導光シートである押圧シート22の端面22aに対向しており、発光ダイオード装置29から発せられる光が、前記端面22aから押圧シート22の内部に導かれる。
【0042】
押圧シート22は、厚さ寸法が1mm未満であり、好ましくが500μm未満である。この実施の形態の押圧シート22は厚さが300μmである。
【0043】
押圧シート22は、キートップ15に向けられた表面22cとシャーシ2に向けられた裏面22dが、共に平滑な鏡面の平坦面である。押圧シート22には、所定の面積の反射領域27が区分されて設定されており、それぞれの反射領域27に、複数の凹部28が形成されている。
【0044】
個々の凹部28は、押圧シート22の裏面22dのきわめて小さい面積の領域に、CO2レーザーなどを照射してエネルギーを与え、押圧シート22を構成する材料の一部を分解して除去することで形成されている。そのため、押圧シート22は、透明で且つレーザーのエネルギーで分解できる材料で形成される。薄くて可撓性であり、比較的強度が高くレーザーのエネルギーで分解できる透明なフィルム材料が使用され、例えば、ポリカーボネート、ウレタン、シリコンなどが使用可能である。
【0045】
凹部28は、押圧シート22の裏面22dに、微小スポットのレーザーのエネルギーを与えて、押圧シート22を構成する材料の一部を分解して形成されるため、裏面22dから見たときの個々の凹部28の開口部の形状は円形である。この円形は、真円形、長円形または楕円形などである。また、凹部28の開口面積は凹部28の底部に向かうにしたがって徐々に小さくなり、凹部28の内面全体が凹曲面形状である。また、凹部28は材料を分解することで形成されているため、凹部28の内面はその全域において平滑な面すなわち鏡面である。ここでの平滑な面または鏡面とは、面粗度が表面22cおよび裏面22dと同程度または面粗度が表面22cおよび裏面22dよりも小さいことを意味している。また、平滑な面または鏡面とは、押圧シート22の内部を伝播する光がシートの内部から凹部28の内面に当たったときに、その内面において光が乱反射されず、内面の角度に応じてシート内で入射角と反射角の原理にしたがって反射される性質を意味している。
【0046】
図4に示すように、発光ダイオード装置29から発せられ、端面22aから押圧シート22内に入射した光Lは、表面22cでの反射と裏面22dでの反射とを繰り返して押圧シート22の内部を伝播する。押圧シート22の内部を伝播する光が、凹部28の内面に当たると、その光が当たる位置で凹部28の内面に接する仮想平面に対して入射角と反射角がほぼ同等となるように押圧シート22の内部に向けて反射されて表面22cに向けられる。そして、押圧シート22の表面22cから出た光Laでキートップ15が照光される。
【0047】
メンブレン積層体20は、キーボード装置1の全域に延びる広い面積のものであり、全てのキー入力部10a,10b,10c,10d,10eのキートップ15の下側に対向する接点入力部24および反射領域27を有している。例えば、図2に示されるように、発光ダイオード装置29が挿入される穴20bは、図の下から3列目のキー入力部と下から4列目のキー入力部の間の(i)で示す位置に形成されている。隣り合うキー入力部の間で且つ隣り合う位置にある第1の可動支持部材16と第2の可動支持部材17とで構成されるX型リンクの間に穴20bが設けられ、この穴20bの内部に、周囲全方向へ光を与えることができる発光ダイオード装置29が設けられている。
【0048】
そのため、全てのキー入力部の反射領域27において、発光ダイオード装置29からの距離が極端に遠くなるのを避けることができ、発光ダイオード装置29の光を、それぞれのキー入力部10a,10b,10c,10d,10eに設けられた反射領域27に対し、効率的に均一に与えることができるようになる。
【0049】
または、発光ダイオード装置29が図2の(ii)で示す位置に配置されて、発光ダイオード装置29から発せられる光が、押圧シート22の図示下側の縁部から押圧シート22の内部に入射する構造であってもよい。あるいは、発光ダイオード装置29が、押圧シート22の左右に向く縁部に対向してもよい。
【0050】
マスクシート30は、PET(ポリエチレン・テレフタレート)などの透光性で且つ可撓性の基材シート31を有している。ここでの透光性とは、その下の押圧シート22の表面22cから出た光Laを透過させてキートップ15を照光できる性質を意味している。
【0051】
マスクシート30は、遮蔽部32と透光部33を有している。遮蔽部32では、基材シート31の表面に、光を透過させない遮蔽膜が形成されている。この遮蔽膜は黒色または濃緑色の層であり、基材シート31の表面に樹脂層を印刷し、または金属層などの無機層をスパッタすることで形成されている。透光部33は、遮蔽膜が形成されておらず、光を透過させることができる。
【0052】
図2では、マスクシート30の遮蔽部32をハッチングを付して示しており、透光部33はハッチングを付さずに示している。それぞれの透光部33は四角形である。
【0053】
図2に示す平面図において、透光部33は全てのキー入力部10a,10b,10c,10d,10eに設けられたキートップ15の縁部から外側にはみ出ることがないように、透光部33の縁部が、キートップ15の縁部よりも内側に位置し、透光部33の面積はキートップ15の面積よりも小さくなっている。その結果、隣り合うキートップ15の隙間の下側は必ず遮蔽部32が位置している。
【0054】
図2に示すように、メンブレン積層体20に形成された穴20bは、マスクシート30の遮蔽部32で覆われており、穴20b内に設けられた発光ダイオード装置29の上部が遮蔽部32で覆われている。
【0055】
したがって、隣り合うキートップ15の隙間の下側に発光ダイオード装置29が配置されても、発光ダイオード装置29から上方へ発せられる光が遮蔽部32で遮蔽されて隣り合うキートップ15の隙間から光が漏れることがない。また、押圧シート22の内部を伝播する光も隣り合うキートップ15の隙間から上方に漏れることがない。ただし、図4に示すように、多数の凹部28を有する反射領域27は、前記透光部33の下側に設けられているため、押圧シート22の内部を伝播して反射領域27の凹部28で反射された光Laは、透光部33を経てキートップ15に与えられる。
【0056】
図4に示すように、キートップ15の本体部15aはポリカーボネートなどの透明な材料または半透明などの透光性の材料で形成されており、本体部15aの表面に、塗装や無電解メッキで形成された光を透過できない被覆層15bが形成されている。この被覆層15bの一部がCO2レーザーなどで除去されて、照光表示部15cが形成されている。図1に示すキーボード装置1では、個々のキートップ15の表面に形成された照光表示部15cが、文字や記号または数字を表す表示である。
【0057】
図1では、多数の凹部28が形成された反射領域27が、破線で囲まれた領域として図示されている。反射領域27は、それぞれのキートップ15に形成されている照光表示部15cの真下において、照光表示部15cよりもやや広い面積に形成されている。すなわち、図1の平面図において、それぞれのキートップ15に設けられた照光表示部15cは、その下の反射領域27の範囲内に設けられている。
【0058】
図1ないし図4に示すキーボード装置1は、メンブレン積層体20の最上層である押圧シート22が導光シートとして使用され、発光ダイオード装置29から発せられた光が押圧シート22の内部を伝播し、反射領域27に設けられた複数の凹部28で反射され、マスクシート30の透光部33を通過して、キートップ15の照光表示部15cに与えられる。押圧シート22の上には、金属製の基板や樹脂製の回路基板などが配置されておらず、マスクシートの透光部33が対向しているだけであるため、反射領域27から上方へ反射された光Laが、照光表示部15cに効率よく与えられて、全てのキートップ15において照光表示部15cが明瞭に照光される。
【0059】
また、基板シート21や下側接点25a,25aと上側接点26を非透光性の材料で形成できるため、構成部材の材料費を低減できる。
【0060】
図2に示すように、メンブレン積層体20に形成された穴20bが、キー入力部とキー入力部の間に配置され、この穴20b内に発光ダイオード装置29が設けられているため、それぞれのキー入力部に設けられた反射領域27と発光ダイオード装置29との距離が大きく離れるのを防止できるようになる。よって、全てのキー入力部に位置するキートップ15の照光表示部15cの輝度ムラを少なくできる。
【0061】
図3に示すように、反射領域27の凹部28で反射された光Laが照光表示部15cに向かう光の経路に、第1と第2の可動支持部材16,17および弾性部材18が介在している。したがって、第1と第2の可動支持部材16,17および弾性部材18が、透明または半透明の透光性の材料で形成されていることが好ましい。または、第1と第2の可動支持部材16,17および弾性部材18が、表面で光を反射できまたは光を拡散できるように白色系の合成樹脂材料などで形成されており、反射領域27で反射された光が、第1と第2の可動支持部材16,17や弾性部材18で反射されまたは拡散されてキートップ15に与えられてもよい。
【0062】
図6(A)(B)(C)は、ポリカーボネートで形成された押圧シート22の裏面22dにCO2レーザーを照射して実際に加工した凹部28の面の形状をレーザー顕微鏡で測定した結果を示している。図6は、凹部28の中心を通り且つ裏面22dに垂直な面で切断した断面の形状を示す出力線図である。
【0063】
図6(A)(B)(C)に示すように、裏面22dに対するCO2レーザーの照射時間やエネルギーを変えることによって、凹部28の開口部28aの開口面積φや、裏面22dから凹部28の底部28bまでの深さ寸法Dなどを自由に設定することができる。図6(A)はCO2レーザーの照射時間が最も長く、図6(C)はCO2レーザーの照射時間が最も短く、図6(B)はその中間である。よって、開口部28aの開口面積φは、図6(A)が一番大きく、図6(C)が一番小さい。また深さ寸法Dは、図6(A)が最も深く、図6(C)が最も浅い。
【0064】
図6に示す出力線図から、凹部28の内面28cが、開口部28aから底部28bまで滑らかに連続する凹曲面であり、底部28bが滑らかな凹曲面であることを確認できる。裏面22dに対する、凹部28の内面28cの傾斜角度θは、図6(A)が最も大きく、図6(C)が最も小さい。
【0065】
凹部28は開口部28aの開孔径が500μm以下で、好ましくは300μm以下である。深さ寸法Dは、5μm以上であり、押圧シート22の板厚の1/3以下であることが好ましい。
【0066】
図4に示すように、押圧シート22の内部を伝播する光Lが、シートの内部において凹部28の内面28cに当たると、その光は主に表面22cに向けて反射される。図6(A)に示すように、凹部28の深さ寸法Dが大きく、内面28cの傾斜角度θが大きいほど、光を垂直上方に指向させる能力が高くなる。また凹部28の深さ寸法Dが大きく、内面28cの傾斜角度θが大きいほど、ひとつの凹部28の内面28cで反射される光量の総和が多くなる。
【0067】
よって、光源である発光ダイオード装置29から反射領域27までの距離や、反射領域27の広さまたは照光表示部15cの大きさなどに応じて、同じ押圧シート22内で、凹部28の開口面積φや深さ寸法Dを異ならせることで、発光ダイオード装置29から反射領域27までの距離の差による反射光量のばらつきを少なくできる。
【0068】
凹部28の配置としては、発光ダイオード装置29から近い反射領域27よりも遠い反射領域27内に形成される凹部28の深さ寸法Dを大きくし、その結果角度θを大きくすることが好ましい。なお、同じ反射領域27内においても、発光ダイオード装置29から離れるにしたがって深さ寸法Dおよび角度θを段階的に大きくすることも好ましい。
【0069】
また、発光ダイオード装置29から近い反射領域27よりも遠い反射領域27内に形成される凹部28の配列密度を高くすることが好ましい。なお、同じ反射領域27内においても、発光ダイオード装置29から離れるにしたがって配列密度を高くすることが好ましい。
【0070】
なお、同じ反射領域27内において、深さ寸法Dと開口面積φが相違する凹部を混在させると、照光表示部15cに光を集中させたり、照光表示部15cの文字などの大きさに応じた光量の照光などが可能になる。
【0071】
凹部28は押圧シート22の裏面22dにレーザーを照射することで形成しているため、レーザの照射時間や照射エネルギーを変えることで、同じ押圧シート22に複数種類の凹部28を自由に設計して配置することができる。
【0072】
図5は本発明の第2の実施の形態のキーボード装置101を示す断面図であり、図4に示した断面図に相当している。
【0073】
図5に示すキーボード装置101は、第1の実施の形態のキーボード装置1と同じ構成要素に同じ符号を付している。
【0074】
図5に示すキーボード装置101は、メンブレン積層体120が、基板シート21と押圧シート22およびスペーサ層23で形成されており、スペーサ層23が形成されていない部分が接点入力部24となっている。ただし、押圧シート22には凹部28が形成されておらず、押圧シート22は両面が平滑なPETシートなどで形成されている。
【0075】
メンブレン積層体120の押圧シート22とマスクシート30の基材シート31との間に被覆シート40が設けられ、この被覆シート40が押圧シート22と基材シート31とに接着されている。そして、この被覆シート40が導光シートとして機能している。
【0076】
被覆シート40はポリカーボネートなどのレーザーで分解されやすい材料で形成されている。そして反射領域27において、被覆シート40の裏面40bに多数の凹部28が形成されている。この凹部28はレーザーで材料の一部を分解することで形成されている。図6に示したように、凹部28の内面28cは平滑であり、内面28cの面粗度は、被覆シート40の表面40aおよび裏面40bの面粗度と同じであり、または表面40aおよび裏面40bよりも面粗度が小さい。
【0077】
図5に示すように、メンブレン積層体120に穴120bが形成され、被覆シート40に穴41が形成されており、発光ダイオード装置29は、前記穴120bと穴41の内部に位置している。また発光ダイオード装置29は、マスクシート30の遮蔽部32で覆われている。
【0078】
この実施の形態では、メンブレン積層体120の上に導光シートである被覆シート40が重ねられているため、メンブレン積層体120の全てを非透光性の材料で形成することも可能になる。
【符号の説明】
【0079】
1 キーボード装置
2 シャーシ
10a,10b,10c,10d,10e キー入力部
15 キートップ
15a 本体部
15b 被覆層
15c 照光表示部
16 第1の可動支持部材
17 第2の可動支持部材
18 弾性部材
20 メンブレン積層体
21 基板シート
22 押圧シート
23 スペーサ層
24 接点入力部
25a 下側接点
26 上側接点
27 反射領域
28 凹部
29 発光ダイオード装置
30 マスクシート
31 基材シート
32 遮蔽部
33 透光部
40 被覆シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシと、複数のキートップと、前記シャーシ上で前記キートップを上下動自在に支持する支持部材とを有し、
前記シャーシと前記キートップとの間に、下側接点と、前記下側接点を覆う可撓性の押圧シートと、前記押圧シートの下面に設けられて前記下側接点に対向する上側接点とを有する接点入力部が設けられ、複数の前記接点入力部がそれぞれの前記キートップで押圧できる位置に配置されており、
前記押圧シートまたは前記押圧シートの上側に重ねられた被覆シートが、内部で光を伝播する導光シートであり、前記シャーシの上に、前記導光シートの内部に光を与える光源が設けられており、
前記導光シートの前記キートップに対向する表面と逆側の裏面に複数の凹部が形成され、前記導光シート内を伝播した光が前記凹部で反射されて前記キートップに向けられることを特徴とするキーボード装置。
【請求項2】
前記下側接点は、基板シートの上面に形成されており、前記下側接点と前記上側接点とが対向する領域を除いて、前記基板シートと前記押圧シートとが接着層を介して固定されており、前記接着層は、前記下側接点と前記上側接点とが間隔を空けて対向できる厚さに形成されている請求項1記載のキーボード装置。
【請求項3】
それぞれの前記凹部は、開口部が円形または長円形あるいは楕円形であり、内面が平滑面の凹曲面である請求項1または2記載のキーボード装置。
【請求項4】
前記凹部の深さ寸法および前記導光シートの前記裏面に対する前記内面の立ち上がり角度が、前記導光シートの場所によって相違している請求項3記載のキーボード装置。
【請求項5】
前記光源から離れるにしたがって、前記深さ寸法が大きくなり且つ前記角度が大きくなる請求項4記載のキーボード装置。
【請求項6】
同一の前記キートップに光を与える領域に、前記深さ寸法および前記角度の相違する凹部が混在している請求項4または5記載のキーボード装置。
【請求項7】
前記凹部の前記開口部の面積が、前記導光シートの場所によって相違している請求項3ないし6のいずれかに記載のキーボード装置。
【請求項8】
複数の前記凹部の配列密度が、前記導光シートの場所によって相違している請求項3ないし7のいずれかに記載のキーボード装置。
【請求項9】
前記光源に近い前記キートップに対向する前記凹部の配列密度よりも、前記光源から離れた前記キートップに対向する前記凹部の配列密度の方が高い請求項8記載のキーボード装置。
【請求項10】
前記導光シートに形成された前記凹部は、レーザー光のエネルギーによって前記導光シートを形成する材料の一部を分解して形成したものである請求項3ないし9のいずれかに記載のキーボード装置。
【請求項11】
前記光源は、隣り合う前記キートップを支持する前記支持部材の間に配置されており、前記導光シートに、前記光源が入り込む穴が形成されている請求項1ないし10のいずれかに記載のキーボード装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−218995(P2010−218995A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67287(P2009−67287)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】