説明

熱に強い照射プローブチップ

【課題】熱に強い遠位チップ部を有するプラスチック光ファイバーを有する照射プローブを提供する。
【解決手段】プラスチック光ファイバー202は、熱に強い照射プローブ200を形成するために耐熱遠位部に接合されている。遠位部の長さは短く、耐熱材料からできており、所望の用途で光を誘導するのに適した形状をしており、遠位部の一部分の側面が高屈折率材料または、吸収材料に触れても光線が遠位部の一部分に閉じ込められ、漏れ出さないように反射コーティング剤で被覆されている。遠位部は、耐熱プラスチックロッド、グラス光ファイバー206などの耐熱材料でできている。遠位端部は、徐々に細くなる形をしているかまたは、希望する形状に成形されていてもよい。プラスチック光ファイバー202および、耐熱遠位部は、光学接着剤204を用いて、スチール製カニューレ208、プラスチックハブ、光コネクターなどの内部で連結されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、合衆国法典セクション119に基づき、2007年1月23日に出願された米国仮特許出願第60/886,140に優先権を主張し、この出願の全内容は、参照することにより本願明細書に組み込まれる。この出願は、審査中の以下の米国特許出願に関連し、参照することによりそれらの全部を組み込む。2005年2月15日に出願された米国仮出願番号60/653,265に優先権を主張する、「高処理能力の内部照射機用プローブ」とタイトルが付けられた2006年2月15日に出願された米国特許出願シリアル番号11/354,615。2005年12月16日に出願された米国仮出願番号60/751,175に優先権を主張する、「照射投入カニューレ」とタイトルが付けられた2006年12月18に出願された米国特許出願シリアル番号11/612,234。「手術用広角照射機」とタイトルが付けられた2003年10月30日に出願された米国特許出願シリアル番号10/697,350。これらの全ての出願は本願明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に照射プローブに関する。詳細には、本発明は、遠位ファイバーチップを有する照射プローブに関する。更に詳細には、本発明の実施形態は熱に強い照射プローブチップに関する。
【背景技術】
【0003】
光ファイバーは、照射を利用するあらゆる場面において有効である。例えば、手術部位または、対象物を明るく照らす必要のある医療および、その他の利用分野でライトガイドとして使用される。一般に光プローブは、そのあらゆる望ましい特性のため、プラスチック光ファイバーで作られている。例えば、プラスチック光ファイバーはとても柔軟で、形成しやすく、開口数(「NA」)も比較的高く、また、一般にグラスファイバーよりも安価である。更には、グラスファイバーよりも伸ばしやすく、それらの中に徐々に細くなる形をつくりやすい。市販されているプラスチック光ファイバーは、20基準径においてさえ柔軟で、近位端部をふくらみをもった形にしやすく、開口数0.63と同程度の高い開口数を有する。加えて、プラスチック光ファイバーに関連した光リンク、コネクターおよび、装置は、グラス光ファイバーに比べ比較的安価である。グラス光ファイバーは20基準径では堅く、近接端部にふくらみをもたせることは難しく、取り付け、維持費用は比較的高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラスチック光ファイバーから光プローブを作成する上でのひとつの欠点は、血液または、人体組織のようないかなる吸収材料に触れたときに遠位チップ部が変形しやすいことである。例えば、図1は、プラスチック光ファイバー101および、スチール製カニューレ103を有する単純な内部照射プローブ100の遠位端部を表している。プラスチック光ファイバー101は、既知の方法で被覆層に囲まれたコア部を有する円筒形の誘電体導波管である。プラスチック光ファイバー101は、当業者には既知の光学現象である全内部反射プロセスにより、その軸に沿って光を伝達する。プラスチック光ファイバー101のコア部は、光透過性が高く、プラスチック光ファイバー101を傷めることなく多量の白色光束105を伝達することができる。これは光ファイバーの吸収性がとても低いために可能となる。それゆえに、軟化点、または、変形点まで温められることなく、多量の光がプラスチックファイバーを通過することができる。
【0005】
しかしながら、一滴の血液、または、人体組織の汚れなどの吸収材料がプローブ100の端部に触れると、以下の上昇サイクルが即座に発生する。
・吸収組織が可視光の一部を吸収し、非常に高温まで温まる(例えば、130℃、またはそれ以上)。
・光ファイバーとの物理的接触により、高温の組織がファイバーのチップ部を加熱する。
・ファイバーチップ部の温度がファイバーの軟化点を超過する。
・中実のファイバー内に保存される内蔵された線形圧縮力が放たれて、ファイバーのチップ部が後退し、ファイバーチップ部の直径が増大する。
・チップ部がカニューレ内に後退すると、ファイバーから放出された光が、カニューレの遠位チップ部を照射し加熱する。
・熱せられたカニューレは、軟化温度を越えるまで近接するファイバーを加熱し、結果的に変形させる。
・ファイバーチップ部の変形は非常に速くプローブを無力化する。
【0006】
この連鎖反応により、光エネルギーが閉塞されたファイバーチップ部に到達すると、チップ部の温度が急激に上昇し、チップ部を変形させ、ある時には、チップ部を「キノコ形」にする。もはや作動しないファイバーブローブは望ましくないが、必ずしも安全上の問題があるわけではない。しかしながら、光プローブが小さな切開部より挿入されている場合、ファイバーチップ部がキノコ形をしているということは、変形したプローブチップ部にあわせて切開部を広げる必要があることを意味する。この回避は、外科医に照射源の光出力を制限させる。
【0007】
例えば、シャンデリアプローブは、広範囲の手術部位を照射するのに便利である。眼科手術、特に硝子体網膜手術においては、できるかぎり広範囲の網膜を見渡せることが望ましい。ゆえに、時にはシャンデリアプローブが、強膜の小さい切開穴から挿入されることもある。シャンデリアプローブ内のプラスチック光ファイバーが丸く、直径が肥大した球形へ変形することは、吸収性汚染物質がチップ部に触れた場合に生じる可能性があるが、肥大したチップ部は切開穴から引き抜くのがより難しくなるであろう。その結果、プローブを抜くためには、傷口が裂けないように外科医が切開部を広げることが必要となる可能性がある。このことは患者に危険を及ぼすものではないが、外科医にとって都合が悪く、通常の手術手順を乱してしまう。
【0008】
そこで、遠位チップ部が変形してしまうという問題なく、プラスチック光ファイバーの利点を享受できる新たな解決策が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、照射プローブの遠位チップ部が変形するという問題について新たな解決策を提供する。特に、本発明の実施形態は、熱に強い遠位チップ部を有するプラスチック光ファイバーを有する照射プローブを提供する。
【0010】
本発明の実施形態において、プラスチック光ファイバーの遠位端部は、短く、耐熱材料でできており、目的部位に光を誘導するのに適した形態をした耐熱遠位部に接合されている。ある実施形態において耐熱遠位部は、型成形され、機械加工されまたは、成形されてもよい。ある実施形態において耐熱遠位部は、耐熱プラスチックチップ部、グラス光ファイバーまたは、それらの組み合わせのような光を伝達することができる耐熱材料でできた1以上の部位を有する。その他の適した耐熱材料でもよい。ある実施形態では、耐熱遠位部は遠位部グラスファイバーを有する。ある実施形態では、必要であれば、遠位部グラスファイバーは、成形された遠位端部を有することも可能である。
【0011】
本発明の実施形態において、プラスチック光ファイバーの遠位端部は、光学接着剤を用いて耐熱遠位部に接合されている。光学的接着を補強するために、および/または、付加的な目的のために、追加構成要素が含まれてもよい。例えば、プラスチック光ファイバーの遠位端部は、耐熱遠位部の内側および、スチール製カニューレ、スリーブ、光コネクターまたは、同種のものに接合されてもよい。別の例として、プラスチック光ファイバーの遠位端部は、耐熱遠位部の内側に接合されて、1以上の部品からなるプラスチックハブに接合されていてもよい。このような構成により、プラスチックハブのような構成要素は、照射プローブを定位置に固定する、流体を流すまたは、両方の役目を果たす。それ以外の機能を果たすことが可能である。ある実施形態で照射プローブは、耐熱遠位端部に、広角レンズとして機能する特別な形態のサファイアボールのような光学部品を内蔵することも可能である。
【0012】
ある場合には、反射コーティングで耐熱遠位部の一部分に被覆を施し、その部位の側面が空気以外(例えば、接着剤、カニューレ、強膜、など)に触れたときに、部位内に閉じ込められた光線が漏れないようにする必要がある。適したコーティングには、銀、アルミニウム、高反射率の二色性コーティング、などが含まれる。
【0013】
本発明の実施形態は、先行技術に対して多くの利点を提供する。例えば、従来の遠位ファイバーチップ部と異なり、いくつかの吸収汚染物質がチップ部に触れても、熱に強い照射プローブチップ部は変形せず、使用者は、遠位チップ部の変形により生じる問題と不便さを心配せずに、プラスチック光ファイバーの優位性と利点を享受することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の好ましい実施形態が図面で説明されており、同じ番号が、各種図面の同種のおよび類似の部分を参照するのに使用される。
【0015】
本発明のさまざまな実施形態は、熱に強い遠位チップ部を有するプラスチック光ファイバーを有する照射プローブを備えている。本発明の実施形態は、すべての規格(例えば、20、23、25、など)のプラスチック光ファイバーに適用可能である。最近の傾向は、強膜の創傷無縫合を可能とする小さな直径のプラスチック光ファイバーを指示する25規格と、特に、23規格に向いている。熱に強い照射プローブは、硝子体網膜/後眼部の手術などのさまざまな医療行為で有用な手術システム(例えば、眼科用照射装置)の一部になりうる。典型的な眼科用照射装置は、光源(例えば、キセノン光源、ハロゲン光源、または、同種のもの)からの相対的なインコヒーレント光の光線を、光ファイバーケーブルを通じ手術部位まで伝達するためのハンドピース部を有する。ここで開示されている熱に強い照射プローブの実施形態には、テキサス州フォートワースのAlcon Laboratoriesが販売しているAlcon−Grieshaber Revolution−DSP(登録商標)ハンドピースなどのいかなる適したハンドピースをも使用するために実装することができる。ハンドピース部の遠位端部は、ここで開示されている照射プローブを収容するよう構成されたステム部(カニューレ)または、類似要素に連結されている。ある実施形態では、熱に強い照射プローブは使い捨ての手術用アイテムである。本発明の範囲が眼科に限らず、高性能で、高規格の照射が必要とされるその他の手術領域に通常、適用可能なことを当業者は考慮し、理解する。
【0016】
図2は、本発明の一実施形態による熱に強い内部照射プローブ200を示す。図1のプローブ100と異なり、ステム208(例えば、25規格のスチール製カニューレ)は、光学接着剤204により接合されたプラスチック光ファイバー202とグラス光ファイバー206の異なる2種類の光ファイバーを収容している。光学接着剤204は、当業者には周知されているように、いかなる屈折率を整合する光グレード接着剤(例えば、紫外線または、低波長可視光への露出をすぐに防ぐことができるDymax142−M光学接着剤など)でもよい。同様に、当業者には周知されているように、ステム208は、ステンレススチールまたは、適した生体適合性ポリマー(例えば、PEEK、ポリイミドなど)でもよい。この説明内では、ステム208は、遠位光ファイバーと呼ばれる、ハンドピース部と光源とを接続する光ケーブル内に収容された近位光ファイバーに光学的に結合された上流端部を収容している。近位光ファイバーは、光源に光学的に連結されている。最大の光束性能を得るために、熱に強いファイバーは、プラスチックファイバーの遠位直径と開口数とに等しいまたは、それ以上の近位直径と開口数を有するべきである。放射された光線内の角度不均一性を防ぐため、熱に強いファイバーの近位直径は、プラスチックファイバーの遠位直径にできる限り近くなるべきであり、この両ファイバーは確実に空間的に一直線となるべきである。
【0017】
ある実施形態においては、プラスチック光ファイバー202とグラス光ファイバー206は、遠位光ファイバーを形成するために光学接着剤204で光学的に接合されている。ステム208は、遠位光ファイバーに当業者に周知されているいかなる方法を用いて取り付けられてもよい。グラス光ファイバーは206、手術中に光を放射している間に変形しない照射プローブ200の耐熱部を備えている。プラスチック光ファイバー202は、光源から(例えば、近位光ファイバーおよび/または、その他の光学的な連結を通じて)光を受容する柔軟な光導管を提供する。
【0018】
図3は、本発明のもう一つの実施形態による熱に強いシャンデリアプローブ300を示す。この例においてプラスチック光ファイバー302は、プラスチックハブ310内で、型成形されまたは、機械加工された耐熱プラスチックチップ部306に連結する。ハブ310は、手術中に動かないように強膜上にプローブ300を固定するような構成にしてもよい。ハブ310は、プラスチック光ファイバー302と耐熱プラスチックチップ部306間の機械的な接合部を備え、そうでない場合には、接着を補助する。より詳細には、光学接着剤304は、プラスチック光ファイバー302と耐熱プラスチックチップ部306間からそれらとプラスチックハブ310の間の隙間に広がり、プラスチック光ファイバー302、ハブ310および、耐熱プラスチックチップ部306が接着される。
【0019】
図3で表されているように、耐熱プラスチックチップ部306は、プラスチック光ファイバー302に近接する近位端部および、遠位端部で光を放射する徐々に細くなった部分を有する。徐々に細くなった部分は、機械加工、ダイヤモンド旋盤、鋳造、または、射出成形により加工されてもよい。耐熱プラスチックチップ部306は、光が漏れないよう被覆されていない、成形された耐熱プラスチックロッドである。それゆえ、その開口数は、徐々に細くなった部分の屈折率および、周囲媒質の屈折率に依存する。例えば、徐々に細くなった部分が空気にさらされると、徐々に細くなった部分の開口数は、本質的に1となる。この開口数は、徐々に細くなった部分を通過する光線の開口数よりもずっと大きく、それゆえに、徐々に細くなった部分の光の透過率は、100%にまで高くなる。徐々に細くなった部分が液体(例えば、眼内からの食塩水など)にさらされると、この結果として開口数は減少するが、場合によっては、それでも適度に高く保たれる。例えば、耐熱プラスチックチップ部306の材料が屈折率1.53で、屈折率約1.36の食塩水に浸された場合、この結果、開口数は0.70になる。しかしながら、耐熱プラスチックチップ部306が、一般的に屈折率が1.5、または、それ以上であるオイルか光学接着剤、または、ハブ310か強膜のような吸収材料のいずれかに触れると、光は、プラスチックチップ部より周囲の物質へ漏れ、そして失われる。この現象の発生を防ぐには、耐熱プラスチックチップ部306の中に光を閉じ込めておくために(言い換えれば、光が漏れないように)、耐熱プラスチックチップ部306の外側に反射コーティング312が塗布される。反射コーティング312は、反射金属または、誘電体コーティングでもよい。ある実施形態においては、銀コーティングが使用されている。銀コーティングの長さは、耐熱プラスチックチップ部が空気または、低屈折率の液体以外の周囲媒質にさらされる可能性ばかりでなく、光プローブの特有の形状にも依存する。銀は光を約98%反射するが、100%の反射率ではなく、それゆえに、内部全反射を提供するものではない。この場合、銀コーティングの長さを最小限にするのが望ましい。これに反して、銀コーティングは、耐熱プラスチックロッド部があまりこのましくない媒質(例えば、ハブ310から広がった光学接着剤304、手術部位から流れた流体、など)に触れないようにするのに必要とされる可能性がある。
【0020】
図4は、本発明の更に別の実施形態による熱に強いサファイア広角プローブ400を示す。図2のプローブ200のように、ステム408は、光学接着剤404で接合されたプラスチック光ファイバー402とグラス光ファイバー406の2種類の異なる光ファイバーを収容する。光学接着剤404は、いかなる屈折率を整合する光グレード接着剤(例えば、Dymax142−M光学接着剤)でもよい。同様に、ステム408は、ステンレススチールまたは、適した生体適合性ポリマー(例えば、PEEK、ポリイミドなど)でもよい。この例では、ステム408は、広角レンズの機能を果たすサファイアボール414を結合するように構成されている。ステム408は、プラスチック光ファイバー402とグラス光ファイバー406に、当業者に周知のいかなる方法で取り付けられてもよい。グラス光ファイバー406とサファイアボール414は両方共、手術中に光を照射している間変形しない耐熱材料である。
【0021】
図5は、本発明の一実施形態による熱に強い照射投入カニューレ500の図である。照射投入カニューレ500は、液体を流すこと、眼への加圧および、照射を備えるように、液体通路と照射プローブを結合でき、手術部位に3つの別々のプローブを挿入する必要性を排除する利点がある。この例では、柔軟なプラスチックホース516が、液体が流れる通路を備え、プラスチックキャップまたは、ハブ510に結合されている。プラスチック光ファイバー502および、耐熱プラスチックロッド506は、光学接着剤504によりハブ510内で接合されている。光学接着剤504は、プラスチック光ファイバー502と耐熱プラスチックロッド506間の隙間から接合部周囲の隙間へ広がり、プラスチック光ファイバー502がカニューレ軸に沿って適切に配置するようにハブ510への接着を提供する。しかしながら、必ずしも、ファイバーがカニューレ軸に対して水平方向で中心にある必要はない。例えそれがカニューレ壁の内部に接触しながらカニューレの側面に沿っていても、その光学性能は影響を受けない。プラスチックホース516および、光ファイバー502は、保護用の覆い(非表示)に収容されていてもよい。
【0022】
ハブ510は、特に、トロカールカニューレ508を正確に受容する、場合によっては、しっかりと接続されるように構成されている。トロカールカニューレ508は、流路と同軸であろうがなかろうが、ハブ510の下流端部に適合し、プラスチックホース516からの液体の流路を備えおよび、耐熱プラスチックロッド506を収容できるように構成されている。図3のハブ310と同様に、ハブ510および、カニューレ508は、プラスチックまたは、他の生体適合性材料から型成形または、機械加工されてもよい。カニューレ508は、プローブ500を定位置(例えば、強膜上に)に固定する機能を果たすことができる。ある実施形態では、カニューレ508は、通常、プラスチック内で射出成形されたもうひとつのハブに結合または、接合されている円筒形のスチール、ポリイミドまたは、PEEK製カニューレの二つの部品から構成される。
【0023】
耐熱プラスチックロッド506が強膜のような吸収媒質または、光学接着剤やオイルなどの高屈折率媒質にさらされた場合、さらされた部分は反射コーティング512で被覆され光が漏れるのを防止する。トロカールカニューレ508の遠位端部は、切開部より手術部位へ容易に挿入できるように成形されていてもよい。高温プラスチックロッド506の遠位端部は、徐々に先を細くしあらかじめ決められた形になるように、型成形、機械加工、または、成形(例えば、レーザー熱成形)されてもよい。高放出性能を成し遂げながら効率的に広範囲の角度に光をあてる徐々に細くなる形状は、複合パラボラ型集光器(CPC)、すなわち円錐形である。反射コーティング512は、反射金属(例えば、銀)、または、誘電体(例えば、Teflon(登録商標)または、多層の誘電体積層)コーティングでもよい。
【0024】
図6は、熱に強い照射投入カニューレ内などで、本発明のいくつかの実施形態を実装するのに適した、近位部がフレアー状で、遠位部が徐々に細くなる形状のグラス光ファイバー600を示す。ある実施形態でファイバー600は、複数の菌の中で使用できるFSUファイバーである。それは、熱に強い照射プローブの耐熱遠位部にふさわしい候補となり得る独特の特性を多くもつ。例えば、
・非常に低い屈折率(〜1.30−1.33)を伴う475μ+/−13μTe-flon(登録商標)被覆604(被覆厚9.0μ+/−3.0μ)を有し、ファイバー600が0.66という非常に高い開口数(NA)を達成するのを可能とする。NAとは、光を伝播する光ファイバーの許容角度の単位である。
・遠位端部601は、徐々に細くなり、複合パラボラ型集光器(CPC)に近似した形、すなわち円錐形をしている。これは、601をあらかじめ設定された形に形成するために、精密に制御された高温レーザーを用いたレーザー熱形成により施される。この段階でTeflon(登録商標)被覆(デュポンが開発)は、レーザー成形をする領域(’a’+ ’b’)部分で熱して除かれる。先が細くなっていない’a’の領域は、できる限り短くするべきである。例えば、成形されて先が細くなった’b’の領域は、723.8μとすることができる。むきだしになっているシリカコア603(457μ+/−10μ)が、空気または、食塩水以外に触れなければ、大部分の光は、ファイバーコア603内にとどまる。
・研磨され、平坦な近位端部602は、線形的にフレアー状になっている。この場合もやはり、ファイバーの近位端部をフレアー状にするために、精密に制御された高温レーザーを用いたレーザー熱形成が用いられる。この段階で、Teflon(登録商標)被覆は、レーザー成形をする領域(w4)部分で熱して除かれる。例えば、フレアー状になった領域w5は、近位端部602において直径(d)737μ+/−10μで3100μ−4500μとすることができる。ファイバー600の全長(w1)は、525μ+/−30μのシリコンバッファー605で覆われた部分を含めて12″+/−0.25″でもよい。覆われてない部分(w2および、w3)は、それぞれ11.0mm+/−1.0mmおよび、9.0mm+/−1.0mmでもよい。
【0025】
近位部のフレアー状になった領域にあるむきだしになったコア603が空気以外にはさらされないことが重要である。図7は、空気711の中にグラス光ファイバー600の近位部がフレアー状になった部分をとり囲んでいる保護スリーブ707を有するグラス光ファイバー600を包んでいる光学部品700を示す。ファイバー600は、接着剤704で保護スリーブ707に接合されており、保護スリーブ707はガラス製でもよい。保護ガラススリーブ707は、むきだしのファイバー600のフレアー状の近位部のコア603と、その最近位端部でファイバー600の外周にある接点709でのみ接触している。このことは、フレアー状のコア部から光が周囲領域へ漏れるのを最小限にとどめる。
【0026】
図8は、光コネクター820の内部に、光学部品700に結合するプラスチック光ファイバー802および、耐熱、高開口数のグラス光ファイバー600を有するファイバー結合部800を示す。本発明の一実施形態によると、高性能で、熱に強い照射ファイバープローブは、光学接着剤804および、グラス光ファイバー600の近位部がフレアー状になった部分をとり囲む保護スリーブを有する光学部品700を収容するように特別に設計されたコネクター820を有する。コネクター820を用いてグラス光ファイバー600の近位端部をプラスチック光ファイバー802の遠位端部に接合することにより、組み立てが容易である。
【0027】
図9は、本発明の一実施形態による熱に強い照射プローブを実装するのに適した全方向反射カニューレを示す。本例においては、高性能のファイバープローブ900は、ACMIコネクター930に接続されており、中空の、全方向反射カニューレに光学的に接合されているプラスチック光ファイバー910を有する。カニューレは、特別な性質を持つ円筒形にコーティングした被覆により囲まれた中空の空芯を有する。
【0028】
従来のコーティングは、(1)高反射性、低吸収性であるが、強い波長と角度選択性をもつ誘電体コーティング積層および、(2)吸収損失を伴い、反射率が100%未満の全方向反射物である金属コーティングからなる。ここで説明されている特別なコーティングは、誘電体コーティングに似ているが、屈折率が異なるため、その結果、広いスペクトルと角度帯域に渡る全方向超高反射率の誘電体積層と金属コーティングの最良物を組み合わせて得られるコーティングとなる誘電体材料から構成される。本質的に、一次元バンドギャップは、光の粒子がコーティング構造内に入り込むのを防止するコーティングの中で作られる。光の粒子は、コーティング構造内に入り込めないため、透過することも吸収することもできず、反射するのみである。
【0029】
赤外波長に対する技術が証明され、可視波長帯内で作動するように適応されれば、中空のカニューレ内で潜在的に100%の反射率を生じることが可能である。それゆえに、徐々に細くなった中空コアファイバー920および、まっすぐな中空コアファイバー925は、現在市販され入手可能な最高性能の開口数0.63のファイバー(東レのファイバー)と比べ、可視スペクトルに渡り潜在的に1.0(すなわち、90度軸から外れたのと同じぐらい高い軸外光線の透過率)と同じぐらい高いファイバー開口数を有する。
【0030】
実用においては、おそらく、最大約0.65dB/mまでの減衰損失が発生しうる。長さ100インチ(2.54メートル)のファイバーの場合、これは、68%の光のみが透過されることを意味する。しかしながら、開口数1.0の光線の68%は、開口数0.63の光線の95%よりもかなり多くの光を提供する。更には、最遠位端部に使用される特殊なファイバーは、おそらく数インチの長さにすぎず、結果として生じる減衰損失は少なくすむであろう。
【0031】
そのような特殊なファイバーを徐々に細くなるような形にできるのなら、図9に表されるような高性能設計が可能となる。より詳細には、開口数0.63の東レファイバー910は、ファイバー照射器(例えば、AlconのAccurus xenon照射器)から遠位端部へ効率的に光を伝達する。その際、徐々に細くなる中空コアファイバー920は光線の直径をより小さくし、光線の角度幅(すなわち、光線開口数)を増加させる。開口数1のファイバーであれば、徐々に細くなる部分を経た光線は、ファイバー900の直径の小さいまっすぐな部分である925を通って効率的に伝達される。中空コアファイバーを緩衝生理食塩溶液(BSS)または、油で満たすと、光束を伝播する特性に影響が及ぶ。このような特殊なファイバーを徐々に細くなる形状にできなければ、徐々に細くなったガラスロッドまたは、プラスチックロッド(おそらく、細くなった部分に光を閉じ込めるため側面が銀コーティングされている)が、光をプラスチック近位ファイバー部から中空コア遠位カニューレに連結するために必要となるだろう。
【0032】
本発明について、特定の実施例を参照し説明したが、実施例は例示であり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されないことを理解すべきである。上述の実施形態について多くの変形、修正、追加および、改良が可能である。これらの変形、修正、追加および、改良は、特許請求の範囲に詳述された本発明の範囲内で行われることを意図している。
【0033】
本発明とその利点のより完全な理解は、同じ番号が同種の機能を示す添付図面と関連して明細書中の説明とを参照することにより得られるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】スチール製カニューレおよび、吸収材料がプローブ端部に触れたときに変形しやすい従来の遠位ファイバーチップ部を有するプラスチック光ファイバーを有する単純な内部照射プローブを示す。
【図2】本発明のひとつの実施形態による熱に強い内部照射プローブを示す。
【図3】本発明の別の実施形態によるシャンデリアプローブを示す。
【図4】本発明の更に別の実施形態による熱に強いサファイア広角プローブを示す。
【図5】本発明の一実施形態による照射投入カニューレを示す。
【図6】熱に強い照射投入カニューレ内などのように、本発明のいくつかの実施形態で実装するのに適した近位部がフレアー状で、遠位部の先が徐々に細くなったグラス光ファイバーを示す。
【図7】図7は、グラス光ファイバーのフレアー状になった近位部分をとり囲む保護スリーブを有するグラス光ファイバーを示す。
【図8】本発明の一実施形態による、光コネクター内でグラス光ファイバーのフレアー状の近位部を取り囲む保護スリーブを有し、熱に強いチップ部を有する照射プローブを形成する、グラス光ファイバーに連結されたプラスチック光ファイバーを示す。
【図9】本発明の一実施形態による、熱に強い照射プローブに実装するのに適した全方向反射カニューレを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック光ファイバーと、
耐熱遠位部と、
前記プラスチック光ファイバーが、前記耐熱遠位部を通じて光を伝達するように前記耐熱遠位部に光学的に連結される収容部と、
を有する熱に強い照射プローブにおいて、前記プラスチック光ファイバーが前記耐熱遠位部に前記収容部内で接合され、前記耐熱遠位部がグラス光ファイバー、または、耐熱プラスチックロッドである熱に強い照射プローブ。
【請求項2】
前記収容部がステンレススチールまたは、生体適合性材料である、請求項1に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項3】
前記耐熱遠位部が、1以上の耐熱材料からできている、請求項1に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項4】
前記耐熱遠位部が、成形されたまたは、徐々に細くなる遠位端部を有する、請求項3に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項5】
前記耐熱遠位部が、フレアー状の近位端部を有する、請求項3に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項6】
前記耐熱ロッドの一部が反射コーティングで被覆されている、請求項1に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項7】
前記反射コーティングが銀である、請求項6に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項8】
前記収容部が、1以上のプラスチックを含む生体適合性材料からなる、請求項1に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項9】
前記収容部が、手術中に、前記熱に強い照射プローブを定位置に固定するように構成された、請求項1に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項10】
前記収容部が、前記耐熱遠位部の前記遠位端部で広角レンズと一体化するように構成された、請求項1に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項11】
前記収容部が、前記光学的に接合されたプラスチック光ファイバーおよび、前記耐熱遠位部を通過する光伝達に加え、液体を流す通路を収容するように構成された、請求項1に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項12】
前記収容部が、カニューレへ接続されたハブを有する、請求項11に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項13】
前記カニューレの前記遠位端部が、切開部から手術部位への挿入するように傾斜している、請求項12に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項14】
前記プラスチック光ファイバーと前記耐熱遠位部を接合する光学接着剤を更に有し、前記光学接着剤が前記プラスチックハブの外側へ広がり、前記プラスチック光ファイバーを所望の位置に配置する、請求項12に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項15】
前記プラスチック光ファイバーと前記耐熱遠位部を接合する光学接着剤を更に有する、請求項1に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項16】
前記光学接着剤が、前記プラスチック光ファイバー、前記耐熱遠位部および、前記収容部間の接着部を設ける、請求項15に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項17】
前記グラス光ファイバーが、シリカコアおよび、屈折率が約1.30〜1.33の誘電体被覆を有し、前記グラス光ファイバーが0.66の開口数を実現可能にする、請求項1に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項18】
前記グラス光ファイバーの遠位端部が、徐々に細くなり複合パラボラ型集光器、すなわち、円錐形である、請求項1に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項19】
前記グラス光ファイバーの前記近位端部が、保護スリーブに囲まれている、請求項1に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項20】
前記プラスチックファイバーの前記遠位端部を前記保護スリーブに囲まれた前記グラス光ファイバーの前記近位端部に光学的に連結する、ファイバーをファイバーに連結するコネクターを更に有する、請求項19に記載の熱に強い照射プローブ。
【請求項21】
前記耐熱遠位部が、光の粒子が前記カニューレに侵入するのを防止する反射コーティングにおける一次元バンドギャップを可視波長域内で生成する誘電体材料からなる前記反射コーティングで、内側面が被覆された全方向反射中空カニューレである、請求項1に記載の熱に強い照射プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−209907(P2008−209907A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−12710(P2008−12710)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(500319044)アルコン,インコーポレイティド (87)
【Fターム(参考)】