説明

熱スプレーによって、ケイ素およびジルコニウムに基づくターゲットを製造する方法

(Zr、Mo、Ti、Nb、Ta、Hf、Cr)群およびケイ素に属する成分Mから特に選択された異なるタイプの原子に基づく少なくとも1種の化合物を含むターゲットを、熱スプレー、特にプラズマスプレーによって製造する方法であって、
共有および/またはイオンおよび/または金属結合により結合する成分である該化合物の少なくとも一部分が該プラズマジェットに、注入され、該ターゲットの表面部分上に該化合物の被膜を堆積させるように、該ターゲットの上に該化合物の成分をスプレーすることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレーまたはイオン源によってターゲットを生成する方法に関し、該ターゲットは、特に磁気的増強スパッタリングにより、真空蒸着工程で、不活性または反応性雰囲気下、使用されることを目的とする。
【0002】
本発明の別の形態に従い、本発明はまた、該方法を実施することによって得られるターゲットに関し、そして該ターゲットからスパッタされた材料に基づくフィルムを得る目的で、そうしたターゲットの使用、および本発明の方法によって、該ターゲットを製造するための化合物の組成物にも関する。
【背景技術】
【0003】
粉体混合物を生成することによって製造されるターゲットを生じさせる種々の技術は、公知である。従って、問題になっているターゲットは、該混合物が鋳造されまたは焼結される工程、そうでなければ、より従来的ではないが、熱スプレー技術、およびさらに特にプラズマスプレー技術でもたらされてもよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱スプレー技術は、単一成分でできたターゲットを製造するために使用されるという条件において満足であるが、ターゲットが幾つかの成分に基づく場合、ターゲットは一般的に堆積されたフィルムの不均一性に繋がる構造的な異質性を示す。
【0005】
さらに特に、パウダーが、実質的に異なる密度、例えばケイ素(密度=2.34)、アルミニウム(密度=2.7)および密度が5〜10であることができる別の成分Mを含む粉体に基づく混合物を有する粉体混合物の場合は、一方でSi、Al間、そして他の場合のMの密度の相違は、以下の問題となることを、発明者らは見出した:
分離のリスク、およびしたがって、注入前の粉体混合物中の異質性は、結局組成的に不均一なターゲットを生じ;そして
異なる密度の粉体のプラズマ流中のそれぞれの種の異なる軌道は、異なる密度のレベルと同じ位多くのビーム(または混合物中の種または成分と同じくらい多くのビーム)へ、粒子ビームの分離を生じさせる。これらの分離したビームは、次にターゲット中で微細構造的な異質性となり、微細構造は、その結果多層タイプ(層AとBとの重ね合わせ)となる。
【0006】
ターゲット中のこれらの異質性は、スパッタリングによって薄いフィルムの形成の間にマイナスの効果(パラシティク弧、薄いフィルムの組成物中の異質性)を生じる。これは、ターゲット内の種々の領域でのスプレー効率の変化の結果として、ターゲット表面の粗さも増加させることができる。粗さでのこの増加は、極端な場合、表面弧を生じさせるかなりのサイズ(直径/高さで数mm)の突起が現れる(ティップ効果による電界の増強)ことになる。
【0007】
さらに、成分と混合されなければならないある種は、特にプラズマスプレーに必要な粒子サイズ範囲内の(かなり広い範囲での)純粋な粉状金属の形で存在する場合には、高い工業的リスク(酸素へのそれらの極端な結合活性のために、ある粉状金属の場合は爆発のリスク)を示す。
【0008】
したがって、本発明の目的は、熱スプレー、特にプラズマスプレーによってターゲットを生成する方法を提案することによって、これらの欠点を軽減することであり、初期の粉体混合物を構成するそれぞれの種のそれぞれの密度の相違にもかかわらず、均質の微細構造を有するターゲットを得ることを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、熱スプレー、特にプラズマスプレーによってターゲットを生成するための本発明に従う方法は、該ターゲットが(Zr、Mo、Ti、Nb、Ta、Hf、Cr)群およびケイ素に属する成分Mから特に選ばれた、異なるタイプの原子に基づく少なくとも1種の化合物を含み、共有および/またはイオンのおよび/または金属結合によって結合される成分である該化合物の少なくとも一部分が、該ターゲットの表面部分上に該化合物の被膜を堆積するように、該ターゲット上へ該化合物の成分をスプレーする該プラズマジェットに、注入されることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
合金タイプの化合物(または親密な原子の混合物を有するもの)を、プラズマ流へ注入することによって、該堆積された材料中で、該化合物の成分原子間の何らかの異質性のリスクはもはやない。
【0011】
本発明の方法を実施する好ましい方法で、1または2以上の、以下の配置も任意選択的に使用されてもよい:
粉体混合物の形で、該化合物の別の一部分が注入され;
混合物を形成するそれぞれの粉体の粒子サイズは、粒子のそれぞれの平均質量ができるだけ近くなるように、粒子のそれぞれの密度によって選定され;
それぞれのチャネルに注入された材料による注入パラメーターが独立して調整される、幾つかの注入チャネルが使用され;
化合物は、予め真空パージした後、不活性雰囲気で満たされたチャンバー内でスプレーされ;
化合物は、真空パージされ、そして次に50ミリバール〜1000ミリバールの範囲にわたることができる圧力の不活性ガスで満たされチャンバー内でスプレーされ;
ターゲットとプラズマとの間の相対的な動作が行われ;
ターゲットは、該化合物の堆積の前に表面処理を受け;
表面処理は、ターゲットの表面部分上で行われるクリーニング作業を含み;
表面処理は、ターゲットの表面部分上での結合材料の層の堆積を含み;
ターゲットの表面部分は、プラズマスプレー間に熱的に調節され;
該金属Mの少なくとも1種のケイ化物が注入される。
【0012】
本発明の主題は、またスパッタリングターゲット、特にマグネトロンスパッタリングターゲットであり、主にケイ素を含む該ターゲットは、全般的に見れば組成物がSiAlMタイプ(ここでMは、Zr、Mo、Ti、Nb、Ta、HfおよびCrから選択された金属である)であること、そして少なくともSiタイプの化合物を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様において、1または2以上の、以下の配置が任意選択的に用いられてもよい:
ターゲットは、該金属のケイ化物からなるタイプの化合物も含み;
ターゲットは、平面またはチューブ状幾何学的構造を有し;
ターゲットは、銅または銅合金でできた支持材に基づき;
ターゲットは、銅合金に基づく結合層で被覆されており;
ターゲットは、ステンレススチールでできた支持材に基づき;そして
ターゲットは、ニッケル合金に基づく結合層で被覆されている。
【0014】
また別のその特徴に従う本発明の別の主題は、下記に規定され、そして重量パーセンテージで表された成分を含む化合物の組成物がターゲットを生成するために、以下のものからなることを特徴とすることである:
Al:2〜20%;
Si:25〜45%;および
ZrSi:45〜70%。
【0015】
本発明に従うターゲットを製造する好ましい方法に従って、該ターゲットは、支持材料合金またはステンレススチールでできた円筒型または平面支持体を含む。この金属支持体は、結合副層の接着を促進するために、本質的には、その表面を研磨剤粒子(例えば、36または24グリット)でブラストすることによる、または線もしくは筋を加工することによる、クリーニング作業からなる表面処理を受ける。
【0016】
異なる材料が、ターゲット支持体を形成する材料の性質に依存するこの結合副層に使用されるであろう。従って、銅に基づく支持板ためには、副層は、例えばCu−Al−FeまたはCu−Alタイプ(80〜95%Cu、5〜20%Alおよび0〜5%Fe)の銅に基づく合金である一方で、スチール支持体では、副層Niに基づく合金(例えば75〜100重量%Niを有するNiAl)でできている(比率が重量で表されている)。
【0017】
この副層は、従来のプラズマスプレー技術によって堆積されてもよい。電気アークスプレーまたはオキシアセチレンフレームスプレーによっても適用可能である。もし必要であれば、幾つかの注入チャネルが使用され、注入パラメーターはそれぞれチャネルへ注入される材料に従って独立して調整される。これは、密度の相違のマイナスの効果を除くことも可能とする。
【0018】
従って、結合副層で被覆されたこの支持体は、チャンバー内に設置され、チャンバーが50〜1000ミリバールの圧力で、不活性雰囲気(例えばアルゴン)で満たされる前のチャンバーは、最初に真空に引かれている。
【0019】
ターゲットおよびプラズマスプレーデバイスを形成することを目的とする支持体間の相対的な動作が行われた後で、および金属支持体内の熱移送流体の循環による熱の調節の後で、SiZrAl組成の化合物が注入され、化合物は、以下の組成を有する粉体混合物から得られる:
ZrSi:粒子サイズ=15〜50μm;密度=4.88g/cm
Si:粒子サイズ=30〜90μm;密度=2.34g/cm;そして
Al:粒子サイズ=45〜75μm;密度=2.7g/cm
3つの粉体は、必要な比率で混合された、すなわち:
60重量%ZrSi
34.5重量%Si;および
5.5重量%Al。
【0020】
この例で、ケイ化物の形でケイ素に結合する選択された金属Mは、ジルコニウムであるが、もちろんZr、Mo、Ti、Nb、Ta、HfおよびCrから選択される金属Mの形の成分を使用することは可能であろう。
【0021】
官能性Si−M−Al層は、その組成物が主にSiである領域の並置からなる微細構造、組成物MaSibの領域および組成部物Alの領域を有し、これらは一様に分散され、これらの領域のサイズは、数μm〜約100μmである。
【0022】
このターゲットは、真空フィルム堆積の堆積装置(不活性または反応性雰囲気中のマグネトロン、特に磁気的増強スパッタリングによる、コロナ放電によるまたはイオンスプレーによる)内で、該ターゲットが形成されている材料に基づくフィルムを得る目的で、使用されることを目的とする、このフィルムは、混合ケイ素ジルコニウム窒化物に基づき、その屈折率は2.10〜2.30、好ましくは2.15〜2.25である。このフィルムは、(つまり基材上に直接、またはそれ自身が基材と接触する別のフィルム上に間接的に堆積され)有機材料(PMMAまたはPC)または無機材料(シリカに基づくガラス)でできた基材へ結合することを目的とする。
【0023】
図1および2に見るように、構造は薄板状である。より濃い灰色を有する相は、ZrSiまたはZrNに相当する一方で、白色または明るい灰色色の層はアルミニウムに相当する。黒色点は残留孔である。
【0024】
これらの図の薄板状微細構造は、図3中に示される構造と比較されるべきである。黒色相が孔に相当し、そして白色相がZrおよびAlである一方で、この図3は、微細構造が薄板状(着色または灰色層はない)では全くなく、灰色相がSiであることを示す。材料は、構造内に一様に分散された粒子の形で見える。
【0025】
この定性分析の結論としては、微細構造に基づいて、このように分析されたターゲットを製造する方法を特徴づけることは完全に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の他の特徴および利点は、限定されない例および以下の図により具体的に説明されることによって与えられる以下の記載で明らかになるであろう:
【図1】図1は、本発明に従う製造方法によって得られるSiZrNAlターゲットの微細構造を示す断面図である;
【図2】図2は、本発明に従う製造方法によって得られるZrSiAlターゲットの微細構造を示す断面図である;および
【図3】図3は、(焼結による)従来の製造方法によって得られるZrSiAlターゲットの微細構造を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Zr、Mo、Ti、Nb、Ta、Hf、Cr)群およびケイ素に属する成分Mから特に選択された異なるタイプの原子に基づく少なくとも1種の化合物を含むターゲットを、熱スプレー、特にプラズマスプレーによって製造する方法であって、
共有および/またはイオンおよび/または金属結合により結合する成分である該化合物の少なくとも一部分が、プラズマジェットに注入され、該ターゲットの表面部分上に該化合物の被膜を堆積させるように、該プラズマジェットが、該ターゲットの上に該化合物の成分をスプレーすることを特徴とする方法。
【請求項2】
粉体混合物の形で、該化合物の別の一部分が注入されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該混合物を形成するそれぞれの粉体の粒子サイズを、粉体それぞれの平均質量ができるだけ近くなるように、粉体それぞれの密度に従って適合させことを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
該化合物が、不活性雰囲気で満たされたチャンバー内でスプレーされることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
真空パージされ、そして次に50ミリバール〜1000ミリバールの範囲にわたることができる圧力の不活性ガスで満たされたチャンバー内で、該化合物がスプレーされることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該ターゲットと該プラズマとの間で、相対的な動作が行われることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
該ターゲットが、該化合物の該堆積前に表面処理を受けることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
該表面処理が、該ターゲットの該表面部分上で行われるクリーニング作業を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
該表面処理が、該ターゲットの該表面部分上への結合材料層の堆積を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
該ターゲットの該表面部分が、該化合物の該プラズマスプレーの間に、熱的に調節されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
該金属Mの少なくとも1種のケイ化物が注入されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
注入パラメーターが、それぞれのチャネルに注入される該材料により独立して調整される、幾つかの注入チャネルが使用されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法によって得られる、主にケイ素を含む該ターゲットが、SiAlM(ただし、MはZr、Mo、Ti、Nb、Ta、HfおよびCrから選択された金属である)タイプの組成を有することを特徴とする、スパッタリングターゲット、特にマグネトロンスパッタリングターゲット。
【請求項14】
該金属のケイ化物からなるタイプの化合物を含むことを特徴とする、請求項13に記載のターゲット。
【請求項15】
平面またはチューブ状幾何学的構造を有することを特徴とする、請求項13または14のいずれか一項に記載のターゲット。
【請求項16】
銅または銅合金でできた支持材に基づくことを特徴とする、請求項13〜15のいずれか一項に記載のターゲット。
【請求項17】
銅合金に基づく結合層で被覆されることを特徴とする、請求項16に記載のターゲット。
【請求項18】
ステンレススチールでできた支持材に基づくことを特徴とする、請求項13〜15のいずれか一項に記載のターゲット。
【請求項19】
ニッケル合金に基づく結合層で被覆されることを特徴とする、請求項18に記載のターゲット。
【請求項20】
請求項13〜19のいずれか一項に記載のターゲットを製造するために、下記で規定され、そして重量パーセンテージで表される成分を含む化合物の組成物であって、以下の成分
Al:2〜20%;
Si:25〜45%;および
ZrSi2:45〜70%
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項21】
粉体混合物から得られ、それぞれの粒子サイズが下記:
該ZrSi粒子サイズが、15〜50μmであり;
該Si粒子サイズが、30〜90μmであり;
そして
該Al粒子サイズが、45〜75μmである
ことを特徴とする請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
混合ケイ素ジルコニウム窒化物に基づいており、屈折率が2.10〜2.30、好ましくは2.15〜2.25であることを特徴とする請求項13〜19のいずれか一項に記載のターゲットから得られるフィルム。
【請求項23】
該フィルムが該基材に結合している、請求項22に記載の基材および少なくとも1つのフィルムを含む組立品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−530353(P2008−530353A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553670(P2007−553670)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050094
【国際公開番号】WO2006/085020
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】