説明

熱ナノインプリントリソグラフィ用モールド、それを作製するプロセス、およびそれを用いた熱ナノインプリントプロセス

【課題】熱ナノインプリントリソグラフィ用モールドを提供する。
【解決手段】第1主面22、および第2主面23と、スルーキャビティ24を有し、基板21と、熱伝導層33と、任意で、前記熱伝導性機械的支持層33の下方に位置する絶縁層と、前記第2開口28の上方32における前記第2の膜30の領域内において前記第2の膜30の他方の側35に位置する加熱手段34と、前記加熱手段34を覆い、前記第2の膜30を少なくとも部分的に覆う絶縁断熱層36と、前記第2開口28の上方における前記絶縁断熱層36の領域内において前記絶縁断熱層36上に位置するインプリントパターン37と、前記加熱手段34に電流を供給するための手段38とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱あるいは熱利用ナノインプリントリソグラフィ用モールドに関するものである。
【0002】
さらに本発明は、このモールドを作製するためのプロセスに関するものである。
【0003】
また本発明は、このモールドを用いる熱ナノインプリントリソグラフィプロセスに関するものである。
【背景技術】
【0004】
本発明の技術分野は、一般にナノインプリントリソグラフィすなわちNILの分野とされ得る。
【0005】
ナノインプリントリソグラフィは、限界寸法の小さい電子ビームリソグラフィと歩留りの高い光学技術(スキャナまたはステッパ技術)を組み合わせたものであり、よって高精細リソグラフィに有利に適用し得る技術である。
【0006】
多種のナノインプリントリソグラフィが存在するが、最も一般的なのは、熱ナノインプリントリソグラフィおよび紫外線利用ナノインプリントリソグラフィである。
【0007】
熱ナノインプリントリソグラフィは、これらの技術のうちで最も古いものであり、Stephen Chou教授および彼のチームによって1995年に開発された。
【0008】
熱あるいは熱利用ナノインプリントリソグラフィ技術について図1A〜1Fに示す。この技術は、複製用のためレリーフとされた構造・パターン(2)を有する、シリコンまたはシリコンを含む化合物(SiO、窒化珪素等)、ポリマ、またはニッケルで作製された剛性モールド(1)を一方で用い、基板(4)上に積層されパターニングに供される熱可塑性ポリマまたは有機樹脂のような材料層(3)を他方で用いる。モールドは、従来のリソグラフィまたはエッチング技術によって作製される。
【0009】
材料層(3)は、加熱素子(5)によってガラス転移温度または材料の融点を超える温度まで加熱される(図1B)。
【0010】
次に、モールドの背面に圧力を加えてこれを加熱された材料層(3)に押し付ける(図1C)。
【0011】
このホットプレスの後、例えば加熱素子(5)を停止状態にして、材料の温度をガラス転移温度または材料の融点未満にまで低下させ、材料層にインプリントされた構造が硬化される(図1D)。
【0012】
次にモールドが外される、すなわちパターン(6)がインプリントされた材料層を支持する基板からモールド(1)が分離される(図1E)。
【0013】
最後に、インプリントパターン(6)の下に残る残存部(7)が完全に取り除かれる(図1F)。
【0014】
熱ナノインプリントプロセスの後、モールドパターンがポリマのような材料層に複製され、エッチングマスクとして機能することが可能になる。
【0015】
こうして、数ナノメートル〜数ミクロンの範囲のパターンをポリマのような材料に複製し、その後で基板に転写することが可能になる。
【0016】
開発から10年以上経って、このリソグラフィ技術は、既にいくつかの産業部門で利用されている。例えば、こうしたリソグラフィ技術は、下記に挙げた先行技術文献(特許文献1〜3参照)のそれぞれに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開2004/058479A1号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開1726991A2号公報
【特許文献3】米国特許出願公開2006/279022A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
フラッシュインプリントリソグラフィまたは光ナノインプリントリソグラフィとしても知られる紫外線利用ナノインプリントリソグラフィの場合、例えば石英製の透明モールドが、室温でモノマまたはプレポリマ溶液にわずかな圧力で押し入れられる。次に、パターンが、紫外線を用いたモノマの光重合、架橋または硬化によって硬化させられる。この技術は、透明モールドを用いて様々なレベル間での位置合わせが可能であるため、現在ではかなり普及している。
【0019】
全てのナノインプリント技術において、ナノインプリンティングおよびナノモールディングによって得られる精細性および製品歩留りは、使用されるモールドの品質によって大いに左右されるので、モールドの作製は重要な工程である。
【0020】
熱ナノインプリント技術においては、標準的リソグラフィ(光、電子ビーム、または、X線リソグラフィ)およびエッチング技術を用いてパターンが形成されたバルクでソリッドなシリコン基板からモールドが作製される。基板上における操作および位置決めを可能とし、また従来のマイクロ加工およびナノ加工技術によって標準的な厚さの基板を用いて作製されるモールド表面の品質がインプリントが施されることになる基板の品質と匹敵する旨を保証し得るようにするため、モールドの厚さは一般に数百ミクロン〜数ミリメートルの範囲内とされる。
【0021】
図1に例示の熱ナノインプリントプロセスの流れ図から分かるように、前記モールド、インプリント材料、およびそれを支持する基板を加熱する工程が必要である(図1B)。
【0022】
係る温度は一般に60℃〜250℃の範囲内である。それらの温度は、都合のよいことにガラス転移温度(T)またはインプリント材料の融点(T)に対応する。
【0023】
したがってモールドを外すのに十分な機械的安定性を確保するためには、すなわちインプリント材料(転写される材料)からの離型を確実にするためには、アセンブリをTまたはT未満まで冷却することが必要になる。この温度サイクルを完了するのに必要な時間は数分、または数十分にまでなる可能性がある。このプロセスの実施に関連した他の作業、すなわち樹脂のような材料の塗布、モールドの接触、プレス、および離型の所要時間を考慮すると、結果として、この温度サイクルの所要時間によって、この種の技術の歩留りが制限されることになる。
【0024】
さらに、熱ナノインプリント技術で一般に用いられるシリコンモールドの場合、モールド上のパターンとインプリントされるウェハ上に既に形成されているパターンとの位置合わせは可能ではあるが、極めて困難である。
【0025】
これは、シリコンモールドが可視波長では透明ではないので、位置合わせに二重対物レンズカメラと呼ばれるものを利用することが必要になるためである。
【0026】
さらに、この位置合わせはカメラを配置できることが必須であることから、モールドおよびプレス用プレートすなわちウェハが互いに極めて接近している場合には実施できない。よってこの位置合わせは、必然的にモールドとプレス用プレートすなわちウェハとのギャップが数センチメートルを超える場合において実施される。この制約条件によって位置合わせの許容性が制限される。
【0027】
通常、数百ナノメートルレンジの位置合わせ精度の実現が期待できるが、依然として多くの用途において全く不十分である。したがって、シリコンモールドの利用は熱ナノインプリント技術の適用分野を制限する。
【0028】
石英基板から作製されたモールドの場合、紫外線にさらすことによってポリマの架橋または硬化を実施する前に、インプリント構造(転写される構造)とウェハすなわちプレートの表面に存在する構造との位置合わせをとることが可能になる。しかしながら、石英基板はより高価かつパターニングがより困難であり、また作製プロセス制御がシリコンのスライス、ウェハのような基板の場合ほど進歩していないので、このモールドの作製には依然として問題が残る。
【0029】
上記に鑑み、作業温度に達するのに必要なエネルギが少なく、余熱が低く、加熱サイクル(温度上昇、冷却、および温度低下)の所要時間が可及的に短い、少なくとも既存の熱ナノインプリントモールドで実現可能な熱サイクルの所要時間よりもはるかに短い熱利用ナノインプリントリソグラフィモールド(より簡潔には熱ナノインプリントモールド)が必要とされている。
【0030】
さらに、作製が容易で、操作しやすく、容積が小さく、優れた表面品質と精細性を備える熱ナノインプリントモールドが必要とされている。
【0031】
最後に、例えば石英モールドのように10nm〜50nmの範囲内の高精度の位置合わせおよび位置決めを容易に施すことが可能であるが、石英モールドの欠点がなく、二重対物レンズカメラのような複雑な装置に頼らない熱ナノインプリントモールドが必要とされている。
【0032】
本発明の目的は、とりわけ上記に列挙した要請を満足する熱ナノインプリントリソグラフィ用モールドを提供することにある。
【0033】
本発明の目的は、先行技術に係るモールドの欠点、欠陥、制限、および不利がなく、先行技術に係るモールドの問題を解決する熱ナノインプリントリソグラフィ用モールドを提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明によればこの目的等は、
第1主面(22)および第2主面(23)と、前記第1主面(22)の第1開口(27)から前記第2主面(23)の第2開口(28)まで延びるスルーキャビティ(24)とを有し、前記第1主面(22)は、任意で、前記第1開口(27)を完全もしくは部分的に閉塞するまたは開放したままとしておく第1の膜(29)に少なくとも部分的に覆われ、前記第2開口(28)は、一方の側(31)が前記第2主面(23)上に位置して該第2主面(23)を少なくとも部分的に覆う絶縁断熱性の第2の膜(30)により完全に閉塞されている基板(21)と、
任意で、前記第2開口(28)の上方(32)において前記第2の膜(30)の前記第1の側(31)で前記第2の膜(30)を機械的に支持する熱伝導層(33)と、
任意で、前記熱伝導性機械的支持層(33)の下方に位置する絶縁層と、
前記第2開口(28)の上方(32)における前記第2の膜(30)の領域内において前記第2の膜(30)の他方の側(35)に位置する加熱手段(34)と、
前記加熱手段(34)を覆い、前記第2の膜(30)を少なくとも部分的に覆う絶縁断熱層(36)と、
前記第2開口(28)の上方における前記絶縁断熱層(36)の領域内において前記絶縁断熱層(36)上に位置するインプリントパターン(37)と、
前記加熱手段(34)に電流を供給するための手段(38)と
を備える熱ナノインプリントリソグラフィ用加熱モールドにより達成される。
【0035】
本発明に係るモールドは、先行技術によってこれまで説明および示唆されたことのない新規の構造を備えている。
【0036】
本発明に係るモールドは、その主たる特徴として、熱可塑性ポリマまたは樹脂のような材料の層に後でインプリントされる構造またはパターンを担持することを意図した、「懸垂膜」と称し得る膜に組み込まれた加熱手段である加熱素子を備えている。
【0037】
これらの構造またはパターンは、数ナノメートルから数ミクロンまでのさまざまなサイズとすることが可能である。
【0038】
本発明に係るモールドは、とりわけ熱ナノインプリントリソグラフィ用モールドに関する上述の要請を満足し、このタイプのモールドに係る全ての要件および基準を満足し、先行技術のモールドの欠点、欠陥、制限、および不利性を備えず、先行技術のモールドにおける課題に対する解決策を提供する。
【0039】
本発明に係るモールドは容積が小さく、その全容積は、膜、加熱素子、およびナノ構造またはマイクロ構造を含むアセンブリにまで縮小および制限されるので、作業温度に達するのに必要なエネルギ量が少なくて済む。加熱および冷却時間も大幅に短縮され、そのため、プロセスの速度、その能力、およびその歩留りが大幅に増し、そのコストが大幅に節減される。
【0040】
一般に、加熱(例えば100℃〜200℃の範囲内の温度に達する)と冷却(例えば30℃に戻る)のサイクルの所要時間は、数分から(数十分からさえ)数秒にまで短縮可能である。
【0041】
好ましくは、前記第1主面(22)および前記第2主面(23)が平坦かつ平行であることとしてもよい。
【0042】
好ましくは、前記第1主面(22)および前記第2主面(23)は、水平であることとしてもよく、この場合第1主面(22)は底面と、第2主面(23)は上面と定義可能である。
【0043】
好ましくは、本発明に係るモールドは、さらに位置合わせマーク(39、40)をさらに備えてもよい。
【0044】
好ましくは、前記位置合わせマーク(39、40)は、第2の膜(30)内、前記絶縁断熱層内、および前記絶縁断熱層(36)上のインプリントパターン(37)の近傍に配置されてもよい。
【0045】
これらの位置合わせまたは位置決めマーク(39)は、基準レベルおよびインプリントされる試料に既に形成されているパターンに対してモールドに担持されたインプリントパターン(37)を精密位置合わせまたは位置決めすることを可能にする。
【0046】
よって熱ナノインプリント技術において現在用いられているバルクでソリッドなシリコンモールドによってはこれまで実現できなかった精密な、すなわち位置ずれやギャップが100nm未満の位置合わせが可能になる。
【0047】
好ましくは、シリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ゲルマニウム、サファイア、GaAsのようなマイクロ加工およびナノ加工プロセスに適合する材料、一般にマイクロ電子工学やマイクロ技術に寄与する技術(例えばMEMS)、ならびにこれらの材料のいくつかを含む複合材料から選択された材料で前記基板が作製されてもよい。
【0048】
好ましくは、前記基板がシリコン製の場合には、Siのように基板材料の異方性エッチングに対して耐性を有する材料から選択された材料で前記第1の膜(29)および前記第2の膜(30)が作製されてもよい。
【0049】
好ましくは、白金、窒化チタン、単結晶シリコン、多結晶シリコン、ならびに一般にマイクロ電子工学やマイクロ技術に寄与する技術(いわばマイクロ加工およびナノ加工技術)に適合する全ての導電材料から選択された材料で前記加熱手段(34)が作製されてもよい。
【0050】
好ましくは、SiO、Si、Al、HfO、ならびにマイクロ加工およびナノ加工技術に適合する全ての絶縁断熱材料から選択された材料で前記絶縁断熱層(36)が作製される。
【0051】
好ましくは、Si、SiO、Si、Al、HfO、ならびにマイクロ加工およびナノ加工技術に適合する全ての材料から選択された材料で前記インプリントパターン(37)が作製される。
【0052】
さらに本発明は、
a)第1主面(22)と第2主面(23)を有する基板(21)を用意する工程と、
b)任意で、前記基板(21)の前記第2主面(23)における領域に熱伝導性機械的支持層(33)を形成する工程と、
c)任意で、前記第1主面(22)上に第1の膜(29)を積層する工程と、
d)前記第2主面(23)上に絶縁断熱性の第2の膜(30)を積層する工程と、
e)前記熱伝導性機械的支持層(33)の上方における前記第2の膜(30)の領域に、電気抵抗加熱層を積層する工程と、
f)前記電気抵抗加熱層を成形する工程と、
g)前記成形された電気抵抗加熱層(34)および前記第2の膜(30)に、絶縁断熱層(36)を積層する工程と、
h)前記絶縁断熱層(36)にインプリントパターン(37)を形成する工程と、
i)前記電気抵抗加熱層に電流を供給するための少なくとも1つのリード(38)を作製する工程と、
j)任意で、前記第1の膜にエッチングを施し、次いで前記第1主面の第1開口から前記第2主面の領域内における前記熱伝導性機械的支持層(33)まで、前記基板にキャビティを形成する工程と、
任意で、前記膜層(30)内、前記絶縁層(36)内、および前記絶縁断熱層(36)上の前記インプリントパターン(37)の近傍の少なくとも一つに、位置合わせまたは位置決めマークを作製する工程と
が連続して実施される前述モールドを作製するプロセスに係る。
【0053】
好ましくは、前記少なくとも一つの電流リードが、前記第1の膜、任意で前記第2の膜、および前記基板を通る少なくとも1つのバイアのエッチングを施し、電着でこのバイアを充填することによって作製される。
【0054】
最後に、本発明は、前述のモールドを用いた熱ナノインプリントリソグラフィによってナノ構造面を含む基板を作製するプロセスに係る。
【0055】
こうしたプロセスは専ら本発明に係るモールドを用い、当該モールドに係る全ての利点(ほとんどは前述)を本来的に備えているので、先行技術のプロセスとは基本的に異なるものである。
【0056】
添付の図面を参照しつつ実施例(限定を意図するものではない)を通じて示される下記の詳細な説明を読むことにより、本発明に対するより明確な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1A】熱ナノインプリントプロセスによってナノ構造基板を作製するための工程を連続して示す模式縦断面図である。
【図1B】熱ナノインプリントプロセスによってナノ構造基板を作製するための工程を連続して示す模式縦断面図である。
【図1C】熱ナノインプリントプロセスによってナノ構造基板を作製するための工程を連続して示す模式縦断面図である。
【図1D】熱ナノインプリントプロセスによってナノ構造基板を作製するための工程を連続して示す模式縦断面図である。
【図1E】熱ナノインプリントプロセスによってナノ構造基板を作製するための工程を連続して示す模式縦断面図である。
【図1F】熱ナノインプリントプロセスによってナノ構造基板を作製するための工程を連続して示す模式縦断面図である。
【図2A】本発明に係る加熱モールドの模式平面図である。
【図2B】本発明に係る加熱モールドの模式縦断面図である。
【図3A】パターンとインプリントパターンの近くに配置された位置合わせマークを備えた本発明に係る加熱モールドの模式平面図である。
【図3B】パターンとインプリントパターンの近くに配置された位置合わせマークを備えた本発明に係る加熱モールドの模式縦断面図である。
【図3C】「台地」、第2の膜(30)、および絶縁断熱層(36)を含む、好ましくは不要な面を凹ませるようにエッチング処理された基板も含み得る構造を備えた本発明に係る加熱モールドの模式縦断面図である。
【図4A】本発明に係るモールドを作製するための工程を連続して示す模式縦断面図である。
【図4B】本発明に係るモールドを作製するための工程を連続して示す模式縦断面図である。
【図4C】本発明に係るモールドを作製するための工程を連続して示す模式縦断面図である。
【図4D】本発明に係るモールドを作製するための工程を連続して示す模式縦断面図である。
【図4E】本発明に係るモールドを作製するための工程を連続して示す模式縦断面図である。
【図4F】本発明に係るモールドを作製するための工程を連続して示す模式縦断面図である。
【図4G】本発明に係るモールドを作製するための工程を連続して示す模式縦断面図である。
【図4H】本発明に係るモールドを作製するための工程を連続して示す模式縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下の説明において、モールドの第1の要素の位置を第2の要素に対して定義するために用いられる「〜の上」および「〜の上方」といった用語は、第1の要素が鉛直面において第2の要素より高い位置にあることを表わすものではなく、正しくは、ただ単に第2の要素に対する第1の要素の相対位置を表わすことを目的としたものであって、これら2つの要素が必ずしも鉛直面内に位置しているとは限らない点に先ず言及しておく。同じことが、「〜の下」および「〜の下方」といった用語や「上部」および「下部」といった用語にも当てはまる。
【0059】
図2Aおよび2Bには、本発明に係るモールドが示されている。モールドは、第1主面(22)と第2主面(23)を有する基板(21)を備えている。
【0060】
図2Bにおいて、第1主面(22)と第2主面(23)は水平かつ平行な平面である。したがって第1主面(22)は底面と定義でき、一方、第2主面(23)は上面と定義できる。もちろん第1主面(22)および第2主面(23)のこの構成は、単なる例証として示されたものであり、これら2つの面の他の構成を想定することもできる。
【0061】
よって基板(21)は、例えば正方形、矩形、または円形等の2つの平面状の平行面(22、23)を含むプレートすなわちウェハの形態をとることができる。
【0062】
基板(21)の厚さ、すなわち基板(21)の第1主面(22)と第2主面(23)との間の距離は、用いる基板の厚さに応じて通常350μm〜735μmの間とされる。
【0063】
基板(21)は、シリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ゲルマニウム、サファイア、GaAs、およびこれらの材料のいくつかを含む複合材料のような、マイクロ加工およびナノ加工プロセスに適合する任意の材料から作製可能であり、シリコンが望ましい。
【0064】
側壁(25、26)によって画成されたキャビティ(24)が、第1主面(22)の第1開口(27)から第2主面(23)の第2開口(28)まで貫通している。
【0065】
このキャビティ(24)すなわち2つの開口は、用いる作製プロセスに応じて一般に円形または矩形の断面をなし、第2開口(28)は、第1開口(27)以下のサイズを通常有している。例えば第2開口(28)は、とりわけ異方性ウェットエッチング処理が施された場合、一般に第1開口の直径より小さい直径を有している。
【0066】
よって図2Bに示すように、キャビティ(24)はその側壁(25、26)が第1主面(22)から第2主面(23)まで収束する円錐台を形成し得る。
【0067】
しかしながら、キャビティ(24)が傾斜側面(25、26)を備えるという事実は特に重要ではなく、キャビティ(24)の側壁(25、26)に関して他の構成を想定することもできる。
【0068】
第1主面(22)は、第1の膜(29)(図では下部膜として示されている)によって被覆されてもよい。
【0069】
第1の膜(29)が存在する場合、それは基板の第1主面(22)の全てまたは一部を覆うこととしてよく、第1開口(27)を完全に開放しておくか、完全にまたは部分的に閉塞することとしてよい。
【0070】
図には、第1の膜(29)が前記第1開口(27)を開放したままにしておく実施形態が例示されている。換言するとこの第1の膜(29)は、前記第1主面(22)を完全にまたは部分的に覆うが、前記第1開口(27)を閉塞することはないし、前記第1開口(27)の縁を越えて延びることもない。
【0071】
第1の膜(29)は必須ではなく、厳密に言うと膜ではなくて、基板にエッチングを施してボイドまたはキャビティ(24)を形成するのをより容易にするマスクである。
【0072】
本発明に係るモールドでは、第1開口(27)が開放したままにされる(図示例)か部分的に閉塞されるだけの場合、キャビティ(24)はボイドと定義することができる。しかしながらボイドの形態をなすキャビティのこの構成は必須というわけではなく、つまりキャビティ(24)のいずれかの端部を閉塞することが可能である。これは膜(29)が第1開口(27)を完全に覆って閉塞する場合である。
【0073】
ボイドの形態をなすキャビティ構成は、構造を位置決めするための位置合わせマークが存在する場合に役立つ。この場合、構造の位置決めの際にボイドを通して位置合わせマークを視認し得る。
【0074】
位置合わせが不要の場合、ボイドは無意味である。この場合はスルーボイドではなく閉じたキャビティ(24)が望ましい。
【0075】
第2の膜(30)の一方の側、すなわち図2Bに示す例では下側を基板(21)の前記第2主面(23)上に載置することにより、第2開口(28)が閉塞される。第2の膜(30)は、前記第2主面(23)を完全にまたは部分的に覆う。
【0076】
加熱素子(34)を含み、かつパターン(37)が実装された層(36)の支持層として第2の膜(30)を定義することができる。一般にパターン(37)の直近に配置されねばならない加熱素子(34)がこの膜に埋設されているので、この膜(30)は電気絶縁性でかつ断熱性である。
【0077】
一般に「直近」とは、加熱素子(34)がパターン(37)から数ナノメートル(例えば2、3、5、10、20nm)乃至100nmまたは数百ナノメートル(例えば200、300、500、1000、2000nm)程度の距離をおいて配置されていると解される。前記第1および第2の膜(29、30)は、厚さが通常100nm〜200nmである。
【0078】
これら第1の膜(29)および第2の膜(30)は、一般に基板のエッチングに対して耐性を有するもの、とりわけSiのようなシリコン基板の異方性エッチングに対して耐性を有するものから選択された材料で作製される。留意すべきは、膜(30)は必ずしもエッチングストッパー膜として用いられるとは限らず、このために用いることができれば好適ということである。
【0079】
第2の膜(30)の下側(31)すなわち第2開口(28)の側における開放部分(32)、つまり基板(21)の第2主面(23)に載置されていない部分は熱伝導性の層(33)を備えてもよい。
【0080】
通常この層(33)は、Si、金属、または半導体から選択された材料で作製され、例えば、SiまたはTiNで作製することができる。層(33)は、厚さが通常500nm〜5μmである。
【0081】
層(33)は必須ではない。層(33)は、加熱手段(34)の下方の面全体にわたって均一な温度が得られるように、熱伝導性であって、断熱性ではない。しかしながら対流を阻止し、基板(21)内への熱の拡散を制限するため、この層(33)の下方に断熱層(不図示)を追加するのが望ましい場合もある。
【0082】
通常この第1の層(33)は、第2の膜(30)の下側(31)の開放部分(32)の一部だけを覆い、以て当該開放部分の中心に配置されて前記第2開口(28)の中心に位置合わせされる。
【0083】
加熱手段(34)は、キャビティ(24)の第2開口(28)の上方領域における第2の膜(30)の他方の側(35)、かつ任意の第1の層(33)の上方に配置されている。通常これらの加熱手段または加熱素子(34)は、前記領域を少なくとも部分的に覆う電気抵抗加熱層(耐熱層)にある。この電気抵抗加熱層(34)は、厚さが通常10nm〜500nmである。通常この電気抵抗加熱層は、その層の面内に所定のパターン、形状、配置を有するように画成されている。
【0084】
加熱素子(34)の正確な位置、形状、配置、および寸法は、当業者であればシミュレーション実験に基づいて容易かつ任意に指定することができる。加熱素子(34)の寸法は、とりわけモールドの熱的性質、樹脂のようなインプリントされる材料の熱的性質のみならず、到達する最高温度およびインプリントパターンの密度によって決まる。加熱素子(34)の形状および配置によって、温度分布、必要な電力、および加熱回路のインピーダンスが決まる。
【0085】
加熱素子(34)は、任意の導体で作製することができるが、その電気的性質およびマイクロ加工およびナノ加工技術との適合性に鑑みると、白金、窒化チタン、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン、望ましくはドープした単結晶または多結晶シリコン、より望ましくは高濃度にドープした単結晶または多結晶シリコンが好適である。
【0086】
加熱素子の配置を最適化することによって、加熱素子の上方に位置するモールド面の領域全体、すなわち、インプリントパターンを含む中心領域全体にわたって均一な温度を得ることができる。図2Aに示す加熱素子の配置は、こうした最適化された配置の一例である。均一な温度は、膜(30)の厚さ全体にわたって同様に得られる。
【0087】
加熱素子(34)の温度は、通常は加熱素子と同じ材料で作製される一体化されたセンサによって、あるいはこれらの加熱素子に供給される電力を精密に制御することによって制御できる。
【0088】
絶縁断熱層(36)は、前記加熱手段(34)および前記第2の膜(30)を覆っている。換言すると絶縁断熱層(36)は、第2の膜(30)の面(35)において加熱素子(34)が設けられた部位のみならず、加熱素子(34)が設けられていない部位をも覆っている。
【0089】
この絶縁断熱層(36)は、通常SiO、Si、Al、およびHfOから選択された材料で作製され、厚さは通常10nm〜500nmである。
【0090】
層(36)は断熱性であるが、それでもパターン(37)は加熱に供される。これは層(36)がパターンに対する垂直熱拡散(熱伝達)を可能にするのに十分なほど薄い(10nm〜500nm)ためであるが、この厚さによって側方熱拡散(熱伝達)が可能になることはない。したがって熱の大部分は基板(21)ではなくパターン(37)の加熱に使用される。
【0091】
本発明に係るモールドは、インプリントパターン(転写されるパターン)(37)を任意で形成された第1の層(33)の上方領域、すなわちキャビティ(24)の第2開口(28)の上方における絶縁断熱層(36)上に備えている。
【0092】
モールドのこれらのパターン(37)は、有機樹脂または無機材料のようなインプリントされる材料の構造または組織構造に対応する、例えばナノ構造、ナノ組織構造といった構造または組織構造から成る。
【0093】
例えば、モールドのナノ構造、ナノ組織構造といった構造または組織構造は、周期的配列から構成することができる。この周期的配列は一次元配列または二次元配列とすることができる。
【0094】
こうした一次元配列は、例えば、周期Pおよび高さhの周期的パターンを備えた線の配列とすることができる。周期Pは、10nm〜1乃至数ミクロン、望ましくは100nm〜1μm、さらに望ましくは200nm〜600nmとすればよく、高さhは、少なくとも5nm〜500nm、望ましくは50〜200nmとすればよい。
【0095】
二次元配列の場合、配列は、とりわけ、正方形、三角形、矩形、および六角形配列、または、アルキメデスの螺旋パターンまたは切り嵌め細工のようなより複雑な配列から選択することができる。配列はパッドの配列としてもよい。
【0096】
なお構造および組織構造は、通常単純で非円形の幾何学パターンから構成される。例えば線の断面は、三角形、矩形、または正方形とされ得る。
【0097】
また加熱手段または加熱素子(34)は通常パターン(37)の直近、すなわち両者間の距離が厚さ方向において数ナノメートル〜100乃至数百ナノメートルの範囲となるように配置される。
【0098】
本発明に係るモールドには、さらに、前記加熱手段(34)に電流を供給するための手段が含まれている。これらの手段は、基板(21)の任意に形成された第1の膜(29)(下膜)および第2の膜(30)(上膜)を厚み方向に貫いて加熱素子(34)と導通される少なくとも一つの電流リード(38)により構成するとよい。
【0099】
図3Aおよび図3Bに示すように、本発明に係るモールドは、位置合わせまたは位置決め用のマークもしくは構造(39)を備えるとよい。
【0100】
これらのマークまたは構造(39)は、正方形または十字形の形状を呈するようにしてもよく、あるいは例えば光リソグラフィで用いられるような位置合わせスケールの形態をとることもできる。実際のところいずれの形状を選択するかは、後述するソフトウェアおよび画像認識方式すなわち用いられる装置の特性に依存して定まる。
【0101】
これらのマークの加熱は必須ではないので、マイクロ加工およびナノ加工プロセスに適合する材料がこれら位置決めマークの材料として適宜用いられる。
【0102】
図3Aおよび3Bには、インプリントパターン(37)の近傍に絶縁断熱層(36)に設けられた位置合わせマークまたは構造が示されている。同図に示すように、一般にこれらのマークはインプリントパターンが位置する絶縁層(36)の領域外に配置され得る。
【0103】
さらに同図に示すように、一般にこれらのマークは任意に形成された層(33)の上方を除く第2開口(28)の上方に配置され得る。より正確には、第2の膜(30)の下側(31)の開放部分(32)における任意に形成された層(33)によって覆われていない区画あるいは部分の上方にこれらのマークが位置している。
【0104】
機能領域の外側に亘って基板の不要な表面を凹ませるように層(30)および(36)を、可能であれば好ましくは基板(21)もエッチングを施した(「台地」を形成したとも表現可能な)本発明に係る加熱モールドの一実施形態を図3Cに示す。
【0105】
こうした処理によって、モールド正面の樹脂との接触領域が縮小され、以て欠陥が減少し、モールドの取外しが容易になる。図3Cに示すこの構成によれば、機械支持体へのモールドの取り付けも容易になり得る。
【0106】
より正確に言うと「機能領域」とは、基板や層群において、加熱手段もしくは加熱素子(34)、インプリントパターン(37)、加熱手段(34)に電流を供給するための手段(38)、および任意で設ける位置決めもしくは位置合わせマーク(38)を備える領域か支持する領域、あるいはその双方である。
【0107】
層(36)および(30)はその厚み全体に亘ってエッチングを施される。基板は数十ナノメートル(例えば、20、30、40、または、50nm)〜数百ナノメートル(例えば200、300、400、および500nm)の深さまでエッチングを施してもよい(図3C)。
【0108】
図4A〜4Hには、本発明に係るモールドを作製するためのプロセスの各種工程が示されている。
【0109】
図4Aに示す第1の工程において、膜(30)を機械的に支持し、かつインプリント領域において均一な温度が得られるようにもする熱伝導層(33)が、基板(21)の第2主面(上面とされ得る)(23)において画定された領域に形成される。
【0110】
この層(33)は、シリコンのような基板材料の選択的ドーピングを行なってイオンとりわけNイオンを注入し、続いてアニーリングを施すことによって、または拡散を行なうことによっても形成することができる。こうして例えばSiN層(33)が得られることになる。高濃度のドープ層は、Siの異方性エッチングによってエッチングされない性質を備えている。
【0111】
図4Bに示す第2の工程において、基板材料の異方性エッチングに対して耐性のある材料(例えばSi)製の膜層(29、30)が、基板(21)の両側(22、23)の面全体に積層される。
【0112】
図4Cに示す第3の工程において、例えば、白金、窒化チタンのような金属、または、ポリシリコン製の電気抵抗加熱層(耐熱層)(34)が、第2の膜(上膜)の上面(35)全体に積層される。次にフォトリソグラフィおよび乾式または湿式エッチングによって抵抗層(抵抗)がパターニングおよび成形される。図2Bおよび3Bに(34)として示すような任意かつ最適化された所望の抵抗配置が、このパターニングおよび成形によって与えられる。
【0113】
図4Dに示す第4の工程において、例えば、SiO、Si、Al、またはHfOのような材料で作製された絶縁断熱層(36)が、加熱素子(34)および第2の膜層(30)上に積層される。この絶縁層(36)は、任意で複数の層から構成することが可能であり、各層が任意の異なる材料から作製されることとしてもよい。通常絶縁層(36)は積層後に化学的機械的研磨(CMP)によって平坦化される。
【0114】
図4Eに示す第5の工程において、絶縁層(36)に、インプリントパターン(37)(構造および組織構造またはナノ構造およびナノ組織構造)が形成される。通常これらのパターン(37)は、例えば、Si、SiO、Si、Al、HfOまたはこれらの複合層から成る薄膜にフォトリソグラフィおよび選択的エッチングによって構造を付与する(薄膜を構造化する)ことによって作製されるとよい。
【0115】
図4Fに示す第6の工程において、加熱素子に電流を供給するリードが作製される。これを行うため、例えば、ディープRIE(RIEは反応性イオンエッチングを表わす)を利用したディープエッチングを基板に施し、2つの膜および基板を厚さ方向に貫通するバイアが形成される。次に電着によって銅のような導体(導電性材料)がこのバイアに充填される。
【0116】
図4Gに示す第7の工程において、通常はまず第一に、リソグラフィおよびドライエッチングによって、例えばSi製の下部膜または保護層にパターニングおよび成形が施される。次に、例えば水酸化カリウム(KOH)または水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAHまたはTMAOH)を用いて基板材料の異方性エッチングを基板(21)の底面または裏面(22)から施すことによって上膜(30)が除去される。
【0117】
図3Aおよび3Bに示すような基板を作製することが求められる場合、このプロセスには任意で第8の工程を含むことが可能であり、その実施中に例えば絶縁層(36)のインプリントパターン(37)の近傍に位置決めまたは位置合わせマーク(39)が作製される。
【0118】
通常これらのマークは、プロセスの終了時または層(30、34)およびパターン(37)の形成と同時に作製可能である。これらのマークは、層(30)または層(36)に設けることが可能であり、マーク(39)のサイズがパターン(37)のサイズより小さい場合は、パターン(37)と同じ高さの面に設けることもできる(図3Bに示されているのはこの実施形態である)。
【0119】
これらのマークは、任意でレリーフ状にすることもできるし、あるいは、凹ませることもできる、換言すれば、これらのマークは、隆起または穴とすることができる。
【0120】
図4Hは図4Cに示す第3の工程の変形例であり、上膜(30)上におけるパターニングおよび成形された加熱素子(34)の近傍に位置決めまたは位置合わせマーク群(40)が作製される。これらのマーク(39、40)は、次いで構造を先行のレベルと位置合わせするのに用いられる。その後、作製プロセスは前述と同じ工程(図4D〜4G)をたどる。
【0121】
一般にこれらのマーク(39、40)は、電気抵抗加熱層のパターニングおよび成形中において同導電層(34)をさらにパターニングすることによって作製可能である。モールドの表面上、通常は層(36)上にシリコン層のような不透明層を積層し、次いでリソグラフィによるパターニングおよび選択的エッチング工程でパターニングを行なうことによってもマーク(39)を作製可能である。
【0122】
本発明に係るモールドは、熱ナノインプリントリソグラフィによってナノ構造化された表面を備える基板を作製するためのプロセスにおいて用いることができる。
【0123】
こうしたプロセスは、例えば、連続した下記の工程を備え得る。
a)有機樹脂または低融点無機材料の層が基板の平らな表面上に積層される。
b)有機樹脂が、そのガラス転移温度Tもしくは融点以上の温度まで加熱される。または無機材料がその融点以上の温度まで加熱される。そして有機樹脂または液状無機材料の層がナノ組織構造を備える本発明に係るモールドでインプリントされ、結果として有機樹脂または無機材料の層に、モールドのナノ構造あるいは組織構造に対応する第1のナノ構造あるいは組織構造が形成される。
c)有機樹脂または無機材料の温度が固化する温度まで下げられる。
d)基板と一体化した有機樹脂または無機材料の固化層からモールドが分離される。
【実施例】
【0124】
次に、図示された限定を意図しない実施例を参照しつつ本発明について説明する。
【0125】
この実施例では、図4A〜4Hに図示の本発明に係るプロセスによる本発明に係るモールドの作製について説明する。
【0126】
1)先ず図4Aに示すように、従来の(典型的なインプラントレベルの)マイクロ電子プロセスによって樹脂マスクを作製した。樹脂は厚さが少なくとも500nmであり、基板上の次いでインプラントに供される特定の1つまたは複数の領域をむき出しにすることを可能としているものを用いた。この領域は「活性」領域と呼ばれる箇所の局所的な均一加熱を可能とする。
【0127】
例えば、約200keVおよび1015A/cmでPイオンをインプラントし、約30秒間にわたって1100℃でRTP熱処理を施すことによって、膜の下方の領域を選択的にn++にドープした。
【0128】
2)次に図4Bに示すように、Siの異方性エッチングに耐性を有する膜層(典型的にはSi)を積層した。ここでは基板の両側において100nm〜200nmの厚さに達するウェハ(プレート)スケールの積層を行なった。
【0129】
3)次に図4Cに示すように、電気抵抗加熱層(好ましくはPt(50nm)またはTiN(150nm)製)のウェハ(プレート)スケールの積層を行ない、例えば100nm未満の寸法を実現するため、150nmの樹脂を用いた電子ビームフォトリソグラフィプロセスによる抵抗のパターニングが行われ、ドライイオンエッチング(IBE/RIE)を施した。こうして加熱パターンの形態、形状を画成した。
【0130】
4)次に図4Dに示すように、絶縁層(典型的にはSiO)を積層した。この層の厚さは、エッチングを施される導電層の厚さを上回る(典型的にはステップ高さの2〜3倍)とした。平面層を得るためのCMP平坦化工程を積層に引き続いて実施した。
【0131】
5)次に図4Eに示すように、インプリントパターンを作製した。好適な例として、100nm未満の精細性を実現するため、厚さ100nmのシリコン薄膜に電子ビームリソグラフィによりパターニングを施し、さらに選択性エッチングを施してパターンを作製した。
【0132】
6)図4Fに示すように、工程2)の間に積層した層に局所的エッチングを施すため、光リソグラフィプロセスを基板の裏面に実施した。次いでディープエッチングプロセスによってSi基板の厚み全体にわたるエッチングを施した。エッチングは、工程3)の間にパターニングおよび成形された導電層の終端で停止した。次に裏面と加熱回路とを導通するために、こうして得られた孔に電気メッキした銅を充填した。
【0133】
7)最後に図4Gに示すように、工程2)の間に作製された保護層にエッチングを施し、次いでKOHまたはTMAHを用いて裏面のSiに異方性エッチングを施すことによって膜を除去した。このエッチング工程は、浴の温度および濃度に応じて数時間にわたって一般的に継続した。エッチングは工程2)の間に積層した層で停止した。リソグラフィおよびドライエッチングによって裏面保護層(典型的にはSi製)をパターニングおよび構造化した。
【符号の説明】
【0134】
21 基板
24 スルーキャビティ
29 第1の膜
30 第2の膜
34 加熱素子
36 断熱層
37 パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面(22)および第2主面(23)と、前記第1主面(22)の第1開口(27)から前記第2主面(23)の第2開口(28)まで延びるスルーキャビティ(24)とを有し、前記第1主面(22)は、任意で、前記第1開口(27)を完全もしくは部分的に閉塞するまたは開放したままとしておく第1の膜(29)に少なくとも部分的に覆われ、前記第2開口(28)は、一方の側(31)が前記第2主面(23)上に位置して該第2主面(23)を少なくとも部分的に覆う絶縁断熱性の第2の膜(30)により完全に閉塞されている基板(21)と、
任意で、前記第2開口(28)の上方(32)において前記第2の膜(30)の前記第1の側(31)で前記第2の膜(30)を機械的に支持する熱伝導層(33)と、
任意で、前記熱伝導性機械的支持層(33)の下方に位置する絶縁層と、
前記第2開口(28)の上方(32)における前記第2の膜(30)の領域内において前記第2の膜(30)の他方の側(35)に位置する加熱手段(34)と、
前記加熱手段(34)を覆い、前記第2の膜(30)を少なくとも部分的に覆う絶縁断熱層(36)と、
前記第2開口(28)の上方における前記絶縁断熱層(36)の領域内において前記絶縁断熱層(36)上に位置するインプリントパターン(37)と、
前記加熱手段(34)に電流を供給するための手段(38)と
を備えることを特徴とする熱ナノインプリントリソグラフィ用加熱モールド。
【請求項2】
前記第1主面(22)および前記第2主面(23)が平坦かつ平行であることを特徴とする、請求項1に記載のモールド。
【請求項3】
前記第1主面(22)および前記第2主面(23)が水平であることを特徴とする、請求項2に記載のモールド。
【請求項4】
位置合わせマーク(39、40)をさらに備えることを特徴とする、先の請求項のいずれかに記載のモールド。
【請求項5】
前記位置合わせマークは、前記第2の膜(30)内、前記絶縁断熱層(36)内、および前記絶縁断熱層(36)上における前記インプリントパターン(37)の近傍の少なくとも一つに配置されることを特徴とする、請求項4に記載のモールド。
【請求項6】
シリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ゲルマニウム、サファイア、GaAsのようなマイクロ加工およびナノ加工プロセスに適合する材料、ならびにこれらの材料のいくつかを含む複合材料から選択された材料で前記基板が作製されることを特徴とする、先の請求項のいずれかに記載のモールド。
【請求項7】
前記基板がシリコン製の場合には、Siのように基板材料の異方性エッチングに対して耐性を有する材料から選択された材料で前記第1の膜(29)および前記第2の膜(30)が作製されることを特徴とする、先の請求項のいずれかに記載のモールド。
【請求項8】
白金、窒化チタン、単結晶シリコン、多結晶シリコン、ならびにマイクロ加工およびナノ加工技術に適合する全ての導電材料から選択された材料で前記加熱手段(34)が作製されることを特徴とする、先の請求項のいずれかに記載のモールド。
【請求項9】
SiO、Si、Al、HfO、ならびにマイクロ加工およびナノ加工技術に適合する全ての絶縁断熱材料から選択された材料で前記絶縁断熱層(36)が作製されることを特徴とする、先の請求項のいずれかに記載のモールド。
【請求項10】
Si、SiO、Si、Al、HfO、ならびにマイクロ加工およびナノ加工技術に適合する全ての材料から選択された材料で前記インプリントパターン(37)が作製されることを特徴とする、先の請求項のいずれかに記載のモールド。
【請求項11】
a)第1主面(22)と第2主面(23)を有する基板(21)を用意する工程と、
b)任意で、前記基板(21)の前記第2主面(23)における領域に熱伝導性機械的支持層(33)を形成する工程と、
c)任意で、前記第1主面(22)上に第1の膜(29)を積層する工程と、
d)前記第2主面(23)上に絶縁断熱性の第2の膜(30)を積層する工程と、
e)前記熱伝導性機械的支持層(33)の上方における前記第2の膜(30)の領域に、電気抵抗加熱層を積層する工程と、
f)前記電気抵抗加熱層を成形する工程と、
g)前記成形された電気抵抗加熱層(34)および前記第2の膜(30)に、絶縁断熱層(36)を積層する工程と、
h)前記絶縁断熱層(36)にインプリントパターン(37)を形成する工程と、
i)前記電気抵抗加熱層に電流を供給するための少なくとも1つのリード(38)を作製する工程と、
j)任意で、前記第1の膜にエッチングを施し、次いで前記第1主面の第1開口から前記第2主面の領域内における前記熱伝導性機械的支持層(33)まで、前記基板にキャビティを形成する工程と、
任意で、前記膜層(30)内、前記絶縁層(36)内、および前記絶縁断熱層(36)上の前記インプリントパターン(37)の近傍の少なくとも一つに、位置合わせまたは位置決めマークを作製する工程と
が連続して実施される請求項1〜10のいずれかに記載のモールドを作製するプロセス。
【請求項12】
前記少なくとも一つの電流リードが、前記第1の膜、任意で前記第2の膜、および前記基板を通る少なくとも1つのバイアのエッチングを施し、電着でこのバイアを充填することによって作製されることを特徴とする、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかに記載のモールドを用いた熱ナノインプリントリソグラフィによってナノ構造面を含む基板を作製するプロセス。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【公開番号】特開2011−121358(P2011−121358A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−208182(P2010−208182)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】