説明

熱伝導性シートの製造方法及びその製造方法で製造された熱伝導性シート

【課題】溶剤を含まない塗布材料を用いても均一な塗布が可能で、表面の平滑性が高い熱伝導性シートを提供する。
【解決手段】本発明の熱伝導性シートの製造方法は、重合性樹脂材料と、熱伝導性材料とを含み、且つ、溶剤を含まない塗布材料を作製する第1の工程と、基材21の上に、上記塗布材料をナイフコータ10で塗布して塗布膜を形成する第2の工程と、上記塗布膜に含まれる上記重合性樹脂材料を重合させて、上記塗布膜を硬化させる第3の工程とを含み、上記塗布材料の粘度が100〜100000mPa・sであり、ナイフコータ10のナイフロール12と、基材21との間隔が10〜1000μmであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の放熱を支援する熱伝導性シートの製造方法及びその製造方法で製造された熱伝導性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ等の電子機器の小型化、高性能化が進んでおり、それに伴いこれらの電子機器から発生する熱の放熱対策が重要となってきており、その対策として発熱する電子部品等とヒートシンクや放熱フィンといった放熱部材との間を熱伝導率が高い熱伝導性シートを介して接合することが行われている。この際、熱伝導性シートによる接合部に残留空気等により空隙が生じると放熱効率が低下するため、熱伝導性シートには、電子部品等の表面の凹凸に対する高い追従性と接着性とが要求される。このため、熱伝導性シートには、高い柔軟性が求められるとともに、高い粘着性も求められる。
【0003】
通常、熱伝導性シートは、シリコーン樹脂、アクリル樹脂といったマトリックス樹脂に熱伝導率の高いフィラーを混合させ、シート化することで作製される。例えば、特許文献1には、溶剤としてのトルエンに、アクリル共重合体、粘着付与樹脂及び熱伝導性材料としての水和金属化合物を混合させた塗布材料を、基材としての熱伝導性ポリイミドフィルムに塗布し、乾燥させて熱伝導性シートを作製した例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−269438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のように、溶剤を含んだ塗布材料を用いて熱伝導性シートを作製する場合、基材に塗布材料を塗布した後に溶剤を揮発させる乾燥工程が必要となるが、塗布膜中の溶剤が揮発する際に、空孔が塗布膜中に残って表面に凹凸が発生しやすく、熱伝導性シートの表面の均一な平滑性が得られにくい。
【0006】
一方、溶剤を含まない塗布材料を用いて熱伝導性シートを作製しようとすると、塗布材料の粘度が高くなりやすく、均一に塗布することが困難であり、この場合も熱伝導性シートの表面の均一な平滑性が得られにくい。
【0007】
このように、熱伝導性シートの表面の平滑性が低下すると、熱伝導性シートと放熱部材との接合部に空隙が生じ、放熱効率が低下するという問題ある。
【0008】
本発明は上記問題を解決したもので、溶剤を含まない塗布材料を用いても均一な塗布が可能で、表面の平滑性が高い熱伝導性シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の熱伝導性シートの製造方法は、重合性樹脂材料と、熱伝導性材料とを含み、且つ、溶剤を含まない塗布材料を作製する第1の工程と、基材の上に、前記塗布材料をナイフコータで塗布して塗布膜を形成する第2の工程と、前記塗布膜に含まれる前記重合性樹脂材料を重合させて、前記塗布膜を硬化させる第3の工程とを含み、前記塗布材料の粘度が、100〜100000mPa・sであり、前記ナイフコータのナイフロールと、前記基材との間隔が、10〜1000μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、溶剤を含まない塗布材料を用いても均一な塗布が可能で、表面の平滑性が高い熱伝導性シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の熱伝導性シートの製造方法に用いるナイフコータの一例を示す模式図である。
【図2】本発明の熱伝導性シートの一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
先ず、本発明の熱伝導性シートの製造方法について説明する。本発明の熱伝導性シートの製造方法は、重合性樹脂材料と、熱伝導性材料とを含み、且つ、溶剤を含まない塗布材料を作製する第1の工程と、基材の上に、上記塗布材料をナイフコータで塗布して塗布膜を形成する第2の工程と、上記塗布膜に含まれる上記重合性樹脂材料を重合させて、上記塗布膜を硬化させる第3の工程とを含んでいる。また、本発明の熱伝導性シートの製造方法では、上記塗布材料の粘度は、100〜100000mPa・sであり、上記ナイフコータのナイフロールと、上記基材との間隔は、10〜1000μmに設定される。
【0013】
上記塗布材料の粘度及び上記ナイフロールと上記基材との間隔を、上記範囲に設定することで、溶剤を含まない塗布材料を用いても、均一な塗布が可能で、表面の平滑性が高い熱伝導性シートを提供することができる。
【0014】
(第1の工程)
先ず、本発明の熱伝導性シートの製造方法の第1の工程を説明する。
【0015】
上記重合性樹脂材料としては特に限定されないが、粘着性に優れた(メタ)アクリル系ポリマーを形成可能な(メタ)アクリル系モノマーが好ましい。なお、本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタアクリルを意味する。
【0016】
上記(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル又はその誘導体が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜18のものが使用でき、具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸2エチルヘキシル等である。上記モノマーは、1種又は2種以上を使用できる。
【0017】
上記重合性樹脂材料には、重合時に架橋構造を形成するために、必要に応じて官能基含有モノマーを含めることができる。上記官能基含有モノマーとしては、例えば、重合性の二重結合と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を分子内に有するモノマーであり、好ましくは、ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー等が使用でき、具体的には、アクリル酸2ヒドロキシエチル、アクリル酸2ヒドロキシプロピル、アクリル酸2ヒドロキシブチル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等である。これらの官能基含有モノマーも1種又は2種以上を使用できる。上記官能基含有モノマーの含有量は、重合性樹脂材料の全モノマーの1〜30重量%が好ましく、さらに好ましくは1〜15重量%である。
【0018】
上記塗布材料には溶剤は含まれないが、上記重合性樹脂材料の一部が重合した(メタ)アクリル系ポリマーを含んでいてもよい。塗布材料が、上記モノマー及び後述する熱伝導性材料のみからなり溶剤を含まないと、粘度の調整が困難となる場合があるが、上記ポリマーを含有させることで塗布材料の粘度の調整が容易となる。上記ポリマーの含有量は塗布材料の設定粘度に応じて適宜調整可能であるが、上記重合性樹脂材料と上記ポリマーとの合計重量に対して、10〜40重量%が好ましい。この範囲であれば、上記ポリマーを上記重合性樹脂材料に溶解させることができるからである。
【0019】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、上記重合性樹脂材料の単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合することにより得られる。その重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等のいずれの方式でも行うことができる。
【0020】
上記熱伝導性材料としては特に限定されないが、熱伝導率が高い無機材料が好ましく、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。上記熱伝導性材料の使用量は、上記重合性樹脂材料100重量部に対して、10〜900重量部が好ましく、より好ましくは25〜400重合部である。上記範囲であれば、熱伝導性シートの柔軟性と熱伝導率とのバランスをよくすることができる。
【0021】
後述する第3の工程において、塗布膜に紫外線等を照射して上記重合性樹脂材料を重合させて上記塗布膜を硬化させる場合には、上記塗布材料には、さらに光重合開始剤を含ませる。
【0022】
上記光重合開始剤としては、アセトフェノン類、べンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン化合物、ジスルフィド化合物、チウラム化合物、フルオロアミン化合物等を使用できる。これらの光重合開始剤は1種又は2種以上を使用できる。上記光重合開始剤の使用量は特に限定されないが、通常、上記重合性樹脂材料100重量部に対して、0.1〜10重量部程度である。
【0023】
上記塗布材料には、架橋剤を含ませてもよい。上記架橋剤としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記架橋剤の使用量は、上記重合性樹脂材料100重量部に対して、0.05〜1重量部とすればよい。
【0024】
上記塗布材料には、熱硬化性材料を含ませてもよい。上記熱硬化性材料としては、有機多価イソシアナート化合物、有機多価エポキシ化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート化合物等を使用できる。上記熱硬化性材料の使用量は、上記重合性樹脂材料100重量部に対して、0.1〜10重量部とすればよい。
【0025】
上記塗布材料の作製は、上記重合性樹脂材料、上記熱伝導性材料及び必要に応じて上記他の材料を、攪拌機で十分混合して、上記熱伝導性材料を上記重合性樹脂材料中に分散させる。上記熱伝導性材料の分散が不十分であると、作製した熱伝導性シートの熱伝導率を均一にすることができないからである。
【0026】
上記攪拌機は特に限定されないが、例えば、ディスパー、ホモミキサー、リボンミキサー、パドルミキサー、プラネタリミキサー、ロールミル、ニーダー、ボールミル等を用いることができる。
【0027】
また、上記塗布材料の粘度は、100〜100000mPa・sに調整され、好ましくは500〜10000mPa・sに調整される。上記粘度が、100mPa・s未満になると、粘度が低すぎて、塗布材料が基材上に定着せず、また塗布材料がナイフコータから漏れるなどにより、塗布が困難となり、100000mPa・sを超えると、粘度が高すぎて、塗布材料の流動性が無くなり、均一な塗布が困難となるからである。
【0028】
(第2の工程)
次に、本発明の熱伝導性シートの製造方法の第2の工程を説明する。
【0029】
上記基材としては、紫外線を照射する場合を考慮して紫外線透過可能な樹脂フィルム等を用いることができ、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、トリアセチルセルロース系樹脂等の樹脂材料を、フィルム状又はシート状に加工したものを用いることができる。上記樹脂材料をフィルム状又はシート状に加工する方法としては、例えば、押し出し成形、カレンダー成形、圧縮成形、射出成形、上記樹脂材料を溶剤に溶解させてキャスティングする方法等が挙げられる。上記基材の厚さは、通常10〜500μm程度である。
【0030】
上記基材の少なくとも片面には、シリコーン樹脂等で離形層を設けることが好ましい。これにより、作製した熱伝導性シートと上記基材との剥離性が向上する。
【0031】
上記離形層を有する基材を用いる場合、上記第1の工程で作製した塗布材料は、上記記基材の離形層側にナイフコータを用いて塗布される。
【0032】
上記ナイフコータを図面に基づき説明する。図1は、本発明の熱伝導性シートの製造方法に用いるナイフコータの一例を示す模式図である。図1において、ナイフコータ10は、バックアップロール11(回転ロール)と、ナイフロール12(固定ロール)と、塗布材料供給プレート13とを備えている。ナイフコータ10による塗布工程は、基材21をバックアップロール11とナイフロール12との間に通し、塗布材料供給プレート13に供給された塗布材料14を基材21に塗布するものである。塗布膜の厚さは、バックアップロール11とナイフロール12との間の隙間により決定されるナイフロール12と基材21とのギャップ間隔により調整されるが、本発明の熱伝導性シートの製造方法では、ナイフロール12と基材21とのギャップ間隔は、10〜1000μmに設定され、好ましくは50〜500μmに設定される。上記ギャップ間隔が10μm未満では、間隔が狭すぎて、塗布膜の平滑性が著しく低下し、1000μmを超えると、間隔が広すぎて、均一な塗布が困難となるからである。
【0033】
従って、上記塗布膜の厚さは、ナイフロール12と基材21とのギャップ間隔に応じて適宜設定できる。但し、上記塗布膜の厚さは、上記範囲に限定されず、ナイフコータ10による塗布を繰り返すことにより、塗布膜を多層構造にすることで、塗布膜の総厚さを上記ギャップ間隔より大きくすることができる。
【0034】
その後、上記塗布膜の上に、後述する図2で示す基材22をさらに貼り付けることが好ましい。これにより、塗布膜が基材21と22とで挟まれることになり、熱伝導性シートの作製工程における塗布膜の取り扱い性が向上するとともに、塗布膜が外界の酸素と遮断されるため、次の第3の工程における上記塗布膜に含まれる上記重合性樹脂材料の酸素による重合阻害を抑制できる。
【0035】
(第3の工程)
続いて、本発明の熱伝導性シートの製造方法の第3の工程を説明する。
【0036】
上記第3の工程では、上記塗布膜に含まれる上記重合性樹脂材料を重合させて、上記塗布膜を硬化させる。重合方法は特に限定されず、加熱による熱重合、光の照射による光重合を採用できるが、紫外線照射による光重合が簡便であり好ましい。
【0037】
上記光重合に用いる光源としては特に限定されないが、ブラックライトランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等を用いることができる。
【0038】
上記本発明の熱伝導性シートの製造方法では、基材22を用いて塗布膜を基材21及び22で挟み込んだ例を示したが、基材21のみを用い基材22を用いないで且つ光重合開始剤を用いて重合する場合には、酸素による重合阻害を防止するため、上記重合性樹脂材料の重合による塗布膜の硬化は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0039】
上記第3の工程が終了すると、図2に示すように、本発明の熱伝導性シートが得られる。図2は、上記本発明の熱伝導性シートの製造方法で製造した熱伝導性シートの一例を示す模式断面図である。図2において、基材付き熱伝導性シート20は、基材21と、基材21の上に形成された熱伝導性シート23と、熱伝導性シート23の上に貼り付けられた基材22とを備えている。
【0040】
上記熱伝導性シート23の熱伝導率は、0.3W/m・K以上であることが好ましい。熱伝導性材料を含まない樹脂のみからなるシートの熱伝導率は、約0.2W/m・K程度であるため、熱伝導率が0.3W/m・K以上であれば、上記熱伝導性シート23を介して電子部品等の熱を放熱部材に伝導することができる。上記熱伝導性シート23の熱伝導率の上限は特に限定されないが、通常は0.3〜5W/m・K程度である。
【0041】
作製された熱伝導性シート23を電子部品等に接着して使用する際は、基材付き熱伝導性シート20から基材21及び22を剥離して用いる。
【0042】
また、上記例では、基材22を用いた例を説明したが、基材22を用いずに基材21のみを用いて熱伝導性シートを作製してもよい。この場合には、熱伝導性シートの取り扱い性を向上させるため、熱伝導性シートと接していない側の基材21の表面に離形層を形成して、テープ状に巻き取った状態で保存することが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例に基いて本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。特に指摘がない場合、下記において、「部」は「重量部」を意味する。
【0044】
(実施例1)
重合性樹脂材料として(メタ)アクリル系ポリマーを24重量%含む(メタ)アクリル系モノマー混合液である綜研化学社製の“シロップB”700部と、熱伝導性材料として昭和電工社製の窒化ホウ素“ショウビーエヌUHP−1”300部と、光重合開始剤としてチバスペシャリティケミカルズ社製の“イルガキュア369”1.6部とを、ディスパーにて攪拌して塗布材料Aを作製した。作製した塗布材料Aの粘度を芝浦システム社製のB型粘度計“ビスメトロンVS−A1”で測定したところ、38000mPa・sであった。
【0045】
次に、基材として片面に離形層を形成したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを準備し、このPETフィルムの離形層側に廉井精機社製のナイフコータを用いて、上記塗布材料Aを塗布して塗布膜を形成した。上記PETフィルムとナイフロールとのギャップ間隔は350μmに設定した。その後、上記塗布膜に上記PETフィルムの離形層が接するように、上記塗布膜の上にさらに上記PETフィルムを貼り合せて、熱伝導性シート前駆体を作製した。続いて、この熱伝導性シート前駆体に、365nmに照度ピークを有するブラックライトにて積算光量300mJ/cm2の条件で紫外線を照射させた後、高圧水銀灯にて積算光量1000mJ/cm2の条件で紫外線を照射させ、上記熱伝導性シートの塗布膜を硬化させて、熱伝導性シートAを作製した。作製したシートAの熱伝導率を、京都電子工業社製の迅速熱伝導率計“QTM−500”で測定したところ、0.74W/m・Kであった。
【0046】
(実施例2)
重合性樹脂材料として、(メタ)アクリル系ポリマーを24重量%含む(メタ)アクリル系モノマー混合液である綜研化学社製の“シロップB”350部と、京都和光純薬社製のアクリル酸2エチルヘキシル280部と、京都和光純薬社製のアクリル酸70部とを準備した。この重合性樹脂材料と、熱伝導性材料として水島合金鉄社製の窒化ホウ素“HP−1”300部と、光重合開始剤としてチバスペシャリティケミカルズ社製の“イルガキュア369”1.6部とを、ディスパーにて攪拌して塗布材料Bを作製した。作製した塗布材料Bの粘度を実施例1と同様にして測定したところ、6000mPa・sであった。
【0047】
次に、塗布材料Aに代えて上記塗布材料Bを用いた以外は、実施例1と同様にして熱伝導性シートBを作製した。作製したシートBの熱伝導率を実施例1と同様にして測定したところ、0.69W/m・Kであった。
【0048】
(比較例1)
重合性樹脂材料として(メタ)アクリル系ポリマーを24重量%含む(メタ)アクリル系モノマー混合液である綜研化学社製の“シロップB”300部と、熱伝導性材料として住友化学社製のアルミナ“AA−3”700部と、光重合開始剤としてチバスペシャリティケミカルズ社製の“イルガキュア369”0.9部とを、ディスパーにて攪拌して塗布材料Cを作製した。作製した塗布材料Cの粘度を実施例1と同様にして測定したところ、110000mPa・sであった。
【0049】
次に、塗布材料Aに代えて上記塗布材料Cを用い、PETフィルムとナイフロールとのギャップ間隔を500μmに設定した以外は、実施例1と同様にして樹脂材料CをPETフィルムに塗布したが、塗布材料Cの粘度が100000mPa・sを超えて流動性が乏しかったため、PETフィルム上に均一に塗布材料Cを塗布できず、熱伝導性シート前駆体の作製に至らなかった。
【0050】
(比較例2)
重合性樹脂材料として(メタ)アクリル系ポリマーを24重量%含む(メタ)アクリル系モノマー混合液である綜研化学社製の“シロップB”1000部と、光重合開始剤としてチバスペシャリティケミカルズ社製の“イルガキュア819”2.3部とを、ディスパーにて攪拌して、熱伝導性材料を含まない塗布材料Dを作製した。作製した塗布材料Dの粘度を実施例1と同様にして測定したところ、7900mPa・sであった。
【0051】
次に、塗布材料Aに代えて上記塗布材料Dを用いた以外は、実施例1と同様にして熱伝導性シートDを作製した。作製したシートDの熱伝導率を実施例1と同様にして測定したところ、0.23W/m・Kであり、熱伝導率が低く熱伝導性シートとしての性能は不十分であった。
【0052】
(比較例3)
重合性樹脂材料として(メタ)アクリル系ポリマーを24重量%含む(メタ)アクリル系モノマー混合液である綜研化学社製の“シロップB”100部と、京都和光純薬社製のアクリル酸2エチルヘキシル700部と、熱伝導性材料として昭和電工社製の窒化ホウ素“ショウビーエヌUHP−1”200部と、光重合開始剤としてチバスペシャリティケミカルズ社製の“イルガキュア819”1.75部とを、ディスパーにて攪拌して、塗布材料Eを作製した。作製した塗布材料Eの粘度を実施例1と同様にして測定したところ、40mPa・sであった。
【0053】
次に、塗布材料Aに代えて上記塗布材料Eを用い、PETフィルムとナイフロールとのギャップ間隔を100μmに設定した以外は、実施例1と同様にして樹脂材料EをPETフィルムに塗布したが、塗布材料Eの粘度が100mPa・sを下回り流動性が大きすぎたため、塗布材料EがPETフィルム上で定着せず流れ出し、また塗布材料Eがナイフコータから漏れるなどにより、塗布材料Eの塗布ができず、熱伝導性シート前駆体の作製に至らなかった。
【0054】
(比較例4)
塗布材料Aに代えて上記塗布材料Bを用い、PETフィルムとナイフロールとのギャップ間隔を5μmに設定した以外は、実施例1と同様にして樹脂材料BをPETフィルムに塗布したが、PETフィルムとナイフロールとの間隔が10μmを下回り狭すぎたため、ナイフコータの塗布部において塗布材料Bの凝集体を起点とするスジが発生し、塗布された塗布膜に厚さの異なる部分が多数生じることとなり、熱伝導性シート前駆体の作製に至らなかった。
【0055】
次に、シートを作製することができた実施例1、2及び比較例2の熱伝導性シートの表面平滑性を目視により観察したところ、スジや凹凸が全くなく、表面平滑性が高いことが分かった。
【0056】
表1に、実施例1、2及び比較例1〜4の塗布材料の種類、塗布材料の粘度、PETフィルムとナイフロールとのギャップ間隔、熱伝導性シートの表面平滑性及び熱伝導率を示した。なお、実施例1、2及び比較例1〜4の塗布材料には、溶剤は一切含まれていない。
【0057】
【表1】

【0058】
表1から、実施例1、2では溶剤を含まない塗布材料を用いても均一な塗布が可能で、表面の平滑性が高く、熱伝導率の高い熱伝導性シートを作製できたことが分かる。一方、塗布材料の粘度が高すぎた比較例1、塗布材料の粘度が低すぎた比較例3及びギャップ間隔が狭すぎた比較例4では、均一な塗布ができず、熱伝導性シート前駆体自体の作製ができなかった。また、塗布材料に熱伝導性材料を含まない比較例2では、熱伝導性シートの熱伝導率が低く、実用には用いられないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、溶剤を含まない塗布材料を用いても均一な塗布が可能で、表面の平滑性が高い熱伝導性シートを提供することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 ナイフコータ
11 バックアップロール
12 ナイフロール
13 塗布材料供給プレート
14 塗布材料
20 基材付き熱伝導性シート
21、22 基材
23 熱伝導性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性樹脂材料と、熱伝導性材料とを含み、且つ、溶剤を含まない塗布材料を作製する第1の工程と、
基材の上に、前記塗布材料をナイフコータで塗布して塗布膜を形成する第2の工程と、
前記塗布膜に含まれる前記重合性樹脂材料を重合させて、前記塗布膜を硬化させる第3の工程とを含み、
前記塗布材料の粘度が、100〜100000mPa・sであり、
前記ナイフコータのナイフロールと、前記基材との間隔が、10〜1000μmであることを特徴とする熱伝導性シートの製造方法。
【請求項2】
前記第2の工程と前記第3の工程との間に、前記塗布膜の上にさらに他の基材を貼り合せる工程を含む請求項1に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項3】
前記塗布材料が、紫外線重合開始剤をさらに含み、前記第3の工程において、前記塗布膜に紫外線を照射して前記重合性樹脂材料を重合させて、前記塗布膜を硬化させる請求項1又は2に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項4】
前記重合性樹脂材料が、(メタ)アクリル系モノマーである請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項5】
前記熱伝導性材料が、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種類を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法により製造された熱伝導性シートであって、
前記熱伝導性シートの熱伝導率が、0.3W/m・K以上であることを特徴とする熱伝導性シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−132474(P2011−132474A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295291(P2009−295291)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】