説明

熱伝導性樹脂グラファイトコンポジット及びその製造方法

【課題】樹脂に熱伝導性フィラー等が配合された熱伝導性樹脂成形品であって、樹脂に配合された熱伝導性フィラー等の欠落が抑制された熱伝導性樹脂成形品を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂又は導電性ポリマーを水又は有機溶媒で溶解した溶液中に、黒鉛化処理された炭素繊維を分散させ、その溶液を沈降法又は吸引法により炭素繊維をケーキ化し、該ケーキを硬化成形する熱伝導性樹脂グラファイトコンポジット。ここで、得られたケーキの空隙には熱硬化性樹脂組成物を含浸させてから硬化成形を行うことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性樹脂成形品に係り、より詳しくは、熱伝導性及び耐熱性に優れた熱伝導性樹脂グラファイトコンポジット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オーバーヘッドプロジェクターに使用されるレンズホルダーは、使用中の温度上昇を少しでも抑えるため、熱伝導性に優れた樹脂による成形品であることが望まれる。樹脂材料に熱伝導性を付与させる方法としては、樹脂材料に高熱伝導性無機繊維や高熱伝導性無機粉末を混合する方法が多数報告されている。
【0003】
例えば、高熱伝導性無機繊維としては、炭素ウィスカー(特許文献1参照)、黒鉛化炭素繊維(特許文献2参照)、熱伝導性カーボン繊維(特許文献3参照)等が知られ、高熱伝導性無機粉末としては、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ダイヤモンド、炭素及び金属(特許文献1参照)、黒鉛(特許文献3参照)が知られている。
【0004】
また、熱可塑性エラストマーにカーボンナノチューブやピッチ系炭素繊維を配合して水平方向が20W/m・Kの熱伝導シートも知られている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平8−283456号公報
【特許文献2】特開2002−88250号公報
【特許文献3】特開2003−49081号公報
【特許文献4】特開2008−37916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らの解析の結果、特許文献1〜3に記載されているような樹脂成型品のように、通常の高熱伝導フィラーとバインダー樹脂の組合せ、また、従来の製造方法では、市場で要求される10W/m・Kを超える熱伝導率を得ることは困難であることがわかった。また、特許文献4に記載されている熱伝導シートは熱伝導性に優れたものであるが、熱伝導性シートであり、熱硬化性樹脂による成形品とした場合には満足するものが得られていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、樹脂に熱伝導性フィラー等が配合された熱伝導性樹脂成形品、特に、熱硬化性樹脂による成形品であって、熱伝導性に優れたものを提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記の熱伝導性樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、黒鉛化処理された炭素繊維を熱硬化性樹脂又は導電性ポリマーにより事前に処理しておき、必要に応じて熱硬化性樹脂組成物を含浸させてから硬化成形することで、本課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明の熱伝導性樹脂グラファイトコンポジットは、熱硬化性樹脂又は導電性ポリマーを水又は有機溶媒で溶解した溶液中に、黒鉛化処理された炭素繊維を分散させ、その溶液を沈降法又は吸引法により炭素繊維をケーキ化し、該ケーキを硬化成形することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の熱伝導性樹脂グラファイトコンポジットの製造方法は、熱硬化性樹脂又は導電性ポリマーを水又は有機溶媒で溶解した溶液中に、黒鉛化処理された炭素繊維を分散させ、その分散溶液を沈降法又は吸引法により緻密にケーキ化して、硬化成形することを特徴とするものである。ここで、得られたケーキの空隙には熱硬化性樹脂組成物を含浸させてから硬化成形を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱伝導性樹脂グラファイトコンポジット及びその製造方法によれば、熱伝導性に優れ、耐熱性にも優れた樹脂成形品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の熱伝導性樹脂グラファイトコンポジット及びその製造方法について、詳細に説明する。
【0012】
本発明の熱伝導性樹脂グラファイトコンポジットは、黒鉛化処理された炭素繊維と、熱硬化性樹脂と、を含む熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる熱伝導性樹脂グラファイトコンポジットである。
【0013】
本発明で用いられる熱硬化性樹脂組成物は、黒鉛化処理された炭素繊維と、熱硬化性樹脂と、を含むものである。そして、この熱硬化性樹脂組成物を得るために、黒鉛化処理された炭素繊維として、熱硬化性樹脂又は導電性ポリマーを水又は有機溶媒で溶解した溶液中に、黒鉛化処理された炭素繊維を分散させ、その溶液を沈降法又は吸引法によりケーキ化されて得られたものを用いることを特徴とするものである。
【0014】
ここで用いられる黒鉛化処理された炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)、石油系ピッチ、石炭系ピッチ、メソフェーズピッチ等を原料とし、紡糸、不融化及び炭化後に加工され、その後黒鉛化されて得られる繊維である。この炭素繊維はファイバー状のものはもちろん、ウィスカー状、マイクロコイル状、ナノチューブ状等の形状も含まれる。なお、原料としてはメソフェーズピッチを用いると紡糸性が良好で、高い熱伝導性のものが得られ、安定した品質の製品が製造できる点で好ましいものである。
【0015】
ここで、原料ピッチを溶融紡糸する方法としては、メルトスピニング法、メルトブロー法、遠心紡糸法、渦流紡糸法等の公知の方法が挙げられ、特に限定されるものではない。なかでも、メルトブロー法が、紡糸時の生産性、黒鉛化された炭素繊維の品質の点で好ましいものである。
【0016】
また、原料ピッチの軟化点は、紡糸温度に対して低い方が不融化の反応速度が速くなり、製造コスト、製品安定性等の点で好ましいものである。具体的には、原料ピッチの軟化点が、230〜350℃であることが好ましく、250〜310℃であることがより好ましい。
【0017】
また、このピッチ系炭素繊維は紡糸後に不融化処理されるが、不融化処理は、常法により行えばよい。例えば、二酸化窒素(CO)や酸素(O)等の酸化性ガス雰囲気中で加熱処理したり、硝酸やクロム酸等の酸化性水溶液中で処理したり、さらには、光やγ線等により重合処理したり、という方法が挙げられる。また、空気中で加熱処理する不融化処理方法もあり、このとき、平均昇温速度が3℃/分以上であることが好ましく、5℃/分以上であることがより好ましい。この処理条件は用いる原料等により適宜調整すればよく、350℃程度まで昇温させながら加熱処理することが好ましい。
【0018】
そして、不融化処理した繊維を炭化させるために加熱するが、このとき加熱温度は、250〜1500℃であることが好ましく、500〜900℃であることがより好ましい。処理温度が250℃未満では炭化が不充分になりやすく、1500℃を越えると炭素繊維の強度が大きくなって加工が困難となる。
【0019】
そして、上記の温度で不活性ガス中において炭素繊維を軽度に炭化した後、加工する。ここで、軽度に炭化とは、実質的に炭素繊維が処理温度に達していることを意味し、具体的には、処理温度で10分以上処理することを意味する。
【0020】
また、加工とは粉砕することを意味し、これにより新たに黒鉛層面を露出させるようにするものである。このように新たに表面に黒鉛層面を露出させることで、黒鉛層面がより高温で処理され、縮重合反応、環化反応が進みやすくなり、熱伝導性の高い高分子組成物及び熱伝導性成形体を得ることができる。このように不融化した炭素繊維を250〜1500℃の温度で軽度に炭化してから、その後加工することで、加工後に繊維が縦割れを起こすのを抑制することができる。
【0021】
また、紡糸した繊維を高温で黒鉛化してから加工することもできるが、このようにしてしまうと、繊維軸方向に成長した黒鉛層面に沿って開裂が生じやすくなり、特に、粉砕された炭素繊維の全表面積中に占める破断面表面積の割合が大きくなって、熱伝達が阻害される要因となるので好ましくない。
【0022】
また、上記のように不融化し、炭化した後に繊維を粉砕加工するには、ビクトリーミル、ジェットミル、高速回転ミル等の粉砕機又はチョップド繊維の形成に用いられる切断機を利用することができる。この粉砕を効率良く実施するためには、上記方法に共通して、例えば、プレートを取り付けたローターを高速で回転することにより、繊維軸に対して直角に繊維を切断する方法を用いることができる。
【0023】
粉砕された繊維の繊維長は、ローターの回転数、プレートの角度等を調整することにより制御することができる。加工方法としては、ボールミル等の磨砕機による方法もあるが、これらの方法によると繊維の直角方向への加圧力が働き、線維軸方向への割れの発生が多くなり好ましくない。
【0024】
次いで、加工した炭素繊維を高温に加熱して、黒鉛化処理を施し、黒鉛構造を発達させる。その黒鉛化処理の処理温度としては、2500℃以上であることが好ましく、2800℃以上であることがより好ましく、3000℃以上であることが特に好ましい。
【0025】
その結果、得られる黒鉛化処理された炭素繊維の繊維長さ方向の熱伝導率が高まり、その熱伝導率が400W/m・K以上であることが好ましく、900W/m・K以上であることがより好ましい。このように黒鉛化処理を施すことにより、繊維形状が保持された粉末状の黒鉛化炭素繊維を得ることができた。
【0026】
また、黒鉛化処理された粉末状繊維の密度は、2.20〜2.26g/cmであることが好ましい。2.20g/cm未満であると黒鉛化が不充分となり、得られる熱伝導性樹脂組成物及び熱伝導性樹脂成形体の熱伝導性が低下してしまう。そして、最適な黒鉛の密度は2.26g/cmであるが、それを超える密度とすることは非常に困難である。
【0027】
そして、この黒鉛化処理された炭素繊維は、短繊維状のものであることが好ましく、その平均繊維径が1〜50μm、平均繊維長が0.1〜50mmであることが好ましい。このとき、炭素繊維として、複数種の炭素繊維を混合して用いることができ、例えば、平均繊維長1〜50mmの黒鉛化処理された炭素繊維チョップドファイバーと、平均繊維長0.1〜1mm未満の黒鉛化処理された炭素繊維ミルドファイバーと、を混合して用いることができる。そして、このときの混合比は、例えば、炭素繊維チョップドファイバーの100質量部に対して、炭素繊維ミルドファイバーを5〜100質量部混合して用いることが好ましい。
【0028】
なお、チョップドファイバー及びミルドファイバーは平均繊維径が5〜10μmであることが好ましく、それぞれ適当な長さにカットされる。具体的には、日本グラファイトファイバー株式会社製のXN−100(グレード)等が挙げられる。
【0029】
なお、黒鉛化処理された炭素繊維の表面処理により、バインダー樹脂の濡れ性の向上や炭素繊維の樹脂への充填性を向上させることができ、また、バインダー樹脂と炭素繊維界面の剥離強度を改良することができる。このような表面処理は、黒鉛化処理された炭素繊維の表面を、電解酸化等により酸化処理を施したり、カップリング剤やサイジング剤で処理したりすることによって行うことができる。
【0030】
このカップリング剤又はサイジング剤による処理は、黒鉛化処理された炭素繊維を水又は有機溶媒に分散させる際に、水又は有機溶媒中に添加して使用すればよく、例えば、エポキシシランやアミノシラン等のカップリング剤等が挙げられる。
【0031】
そして、上記のような炭素繊維は、熱硬化性樹脂と混合され熱硬化性樹脂組成物として用いられる。このとき用いることができる熱硬化性樹脂としては、加熱することで硬化する樹脂であればよく、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、反応性を有する熱可塑性樹脂、反応性を有するエンジニアリングプラスチックス樹脂及び反応性を有するスーパーエンジニアリングプラスチック樹脂の群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂を用いるものである。ここで反応性を有するとは、加熱により架橋構造をとり、樹脂全体として熱硬化性を呈するものをいう。
【0032】
このとき、熱硬化性樹脂組成物は、炭素繊維 100質量部に対し、熱硬化性樹脂 10〜100質量部、を含有してなるものであることが好ましい。熱硬化性樹脂が10質量部未満では、ボイド、欠陥等が生じやすく、100質量部を超えると、熱伝導性が低くなる傾向にあるためである。
【0033】
本発明は、上記したように黒鉛化処理された炭素繊維と、熱硬化性樹脂と混ぜて熱硬化性樹脂組成物とするものであるが、その前段階として、以下に説明する処理を黒鉛化された炭素繊維に施しておくことが本発明における特徴的な部分である。
【0034】
すなわち、上記説明した黒鉛化処理された炭素繊維は、熱硬化性樹脂と混ぜる前に、まずは、熱硬化性樹脂又は導電性ポリマーを水又は有機溶媒で溶解した溶液中に分散され、このようにして得られた炭素繊維の分散溶液を、沈降法又は吸引法により炭素繊維がケーキ化される。
【0035】
このとき、水又は有機溶媒に溶解させる熱硬化性樹脂としては、上記した熱硬化性樹脂と同一のものを挙げることができ、このとき、この前処理で用いる熱硬化性樹脂と、後で含浸させる熱硬化性樹脂とは異なっていてもよいが、同じものを用いることが好ましい。また、導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等が挙げられる。
【0036】
また、熱硬化性樹脂又は導電性ポリマーを溶解させる水としては、水道水、工業用水、純水等を用いることができるが、純水であることが好ましい。また、有機溶媒としては、熱硬化性樹脂又は導電性ポリマーを溶解させることができるものであればよく、例えば、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類等であることが好ましい。このとき、溶解させる熱硬化性樹脂又は導電性ポリマー 100質量部に対し、水又は有機溶媒を100〜1000質量部を用いることが好ましい。なお、溶媒としては、水と有機溶媒の混合溶媒を用いることもできる。
【0037】
そして、上記のように水又は有機溶媒に熱硬化性樹脂又は導電性ポリマーを溶解させて得られた溶液中に、黒鉛化処理された炭素繊維を分散させる。この分散により得られた分散溶液は、沈降法又は吸引法により炭素繊維をケーキ化させる。
【0038】
ここで、本発明における沈降法は、上記のように得られた炭素繊維の分散溶液を、例えば、所定の時間静置し、上澄みを取り除くことで沈降してケーキ化された炭素繊維を得るものである。これは、例えば、水又は有機溶媒中に炭素繊維を均一に分散させた後、一昼夜放置し、上澄み液をデカンテーションにより取り除き、沈降している炭素繊維層を回収することにより行うことができる。
【0039】
また、本発明における吸引法は、上記のように得られた炭素繊維の分散溶液を、例えば、ろ過等により水又は有機溶媒を除去していき、その残渣としてケーキ化された炭素繊維を得るものである。これは、例えば、水又は有機溶媒中に炭素繊維を均一に分散させた後、10μmカットのろ紙及び吸引ロートを用い、分散液を吸引ろ過し、ろ過残渣である炭素繊維層を回収することにより行うことができる。
【0040】
なお、ここでケーキ化とは、炭素繊維が分散された分散溶液において、固液分離して固形化されたものであり、このとき処理の方法により溶液の含有具合は決まるが、大体 1〜20%程度にすればよい。
【0041】
そして、このように得られたケーキに、上記説明した熱硬化性分をこの炭素繊維に含浸させて、熱硬化性樹脂組成物とすることができる。なお、ケーキ化された段階で、炭素繊維表面に熱硬化性樹脂が十分な量残っている場合には、この熱硬化性樹脂の含浸をすることなく、次の硬化成形の操作を行ってもよい。
【0042】
最後に、得られた熱硬化性樹脂組成物を加熱して硬化成形して熱伝導性樹脂グラファイトコンポジットを得ることができる。このとき、加熱温度は用いる樹脂に応じて適宜調整すればよく、加熱と同時に成形を行うものである。ここで成形方法としては、従来公知の方法を用いればよく、例えば、圧縮成形、射出成型、トランスファー成形、積層成形等により行えばよい。
【0043】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、以下の実施例に何ら限定されるものではない。以下の諸例で採用した物性および評価項目の測定方法は次の通りである。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0045】
(実施例1)
チョップドファイバー(日本グラファイトファイバー株式会社製、商品名:XN−100−035;平均繊維径 10μm、平均繊維長 3mm、熱伝導率900W/m・K) 80質量部、ミルドファイバー(日本グラファイトファイバー株式会社製、商品名:XN−100;平均繊維径 10μm、平均繊維長 0.150mm、熱伝導率900W/m・K) 20質量部、純水 1000質量部、エポキシシランカップリング剤(日本ユニカー株式会社製、商品名:A−187) 10質量部を、1昼夜撹拌の後、ろ過装置に静かに投入し、アスピレータにて静かに減圧ろ過を行った。ろ過残渣の高さより純水面の高い状態で、水溶性レゾール樹脂(昭和高分子株式会社製、商品名:BRL−125S)を過剰に投入し、純水を水溶性レゾール樹脂で置換しながらろ過残渣である炭素繊維に含浸させた。
【0046】
このようにして得られた水溶性レゾール樹脂をバインダー樹脂とし、炭素繊維を充填剤とする複合材料前駆体を、175℃に加熱した平板プレスにて、60kgf/cmの圧力でプレスし、プレスより取り出し、200℃で10時間後加熱して高熱伝導グラファイトコンポジットを得た。該グラファイトコンポジットの熱伝導率は、30W/m・Kであった。
【0047】
(実施例2)
チョップドファイバー(日本グラファイトファイバー株式会社製、商品名:XN−100−035;平均繊維径 10μm、平均繊維長 3mm、熱伝導率900W/m・K) 80質量部、ミルドファイバー(日本グラファイトファイバー株式会社製、商品名:XN−100;平均繊維径 10μm、平均繊維長 0.150mm、熱伝導率900W/m・K) 20質量部、純水 300質量部、水溶性フェノール樹脂(昭和高分子株式会社製、商品名:CKS−380A) 700質量部、エポキシシランカップリング剤(日本ユニカー株式会社製、商品名:A−187) 10質量部を、1昼夜撹拌の後、ろ過装置に静かに投入し、アスピレータにて静かに減圧ろ過を行い、減圧しきった。その後、液状の脂環式エポキシ樹脂(ダイセル株式会社製、商品名:セロキサイド3000) 100質量部、液状硬化触媒(四国化成工業株式会社、商品名:1.2DMZ) 5重量部、からなる液状エポキシ樹脂組成物を炭素繊維に含浸させた。触媒を含む液状エポキシ樹脂組成物をバインダー樹脂とし、炭素繊維を充填剤とする複合材料前駆体を、175℃に加熱した平板プレスにて、60kgf/cmの圧力でプレスし、プレスより取り出し、200℃で10時間後加熱して高熱伝導グラファイトコンポジットを得た。該グラファイトコンポジットの熱伝導率は、24W/m・Kであった。
【0048】
(実施例3)
チョップドファイバー(日本グラファイトファイバー株式会社製、商品名:XN−100−035;平均繊維径 10μm、平均繊維長 3mm、熱伝導率900W/m・K) 80質量部、ミルドファイバー(日本グラファイトファイバー株式会社製、商品名:XN−100;平均繊維径 10μm、平均繊維長 0.150mm、熱伝導率900W/m・K) 20質量部、水溶性レゾール樹脂(昭和高分子株式会社製、商品名:BRL−125S) 500質量部、エポキシシランカップリング剤(日本ユニカー株式会社製、商品名:A−187) 10質量部を、1昼夜撹拌の後、ろ過装置に静かに投入し、ろ過を行った。得られたろ過残渣を80℃で減圧乾燥し、レゾール樹脂コート炭素繊維を得た。この水溶性レゾール樹脂をバインダー樹脂とし、炭素繊維を充填剤とするプリコート繊維を、175℃に加熱した平板プレスにて、60kgf/cmの圧力でプレスし、プレスより取り出し、200℃で10時間後加熱して高熱伝導グラファイトコンポジットを得た。該グラファイトコンポジットの熱伝導率は、18W/m・Kであった。
【0049】
(実施例4)
チョップドファイバー(日本グラファイトファイバー株式会社製、商品名:XN−100−035;平均繊維径 10μm、平均繊維長 3mm、熱伝導率900W/m・K) 80質量部、ミルドファイバー(日本グラファイトファイバー株式会社製、商品名:XN−100;平均繊維径 10μm、平均繊維長 0.150mm、熱伝導率900W/m・K) 20質量部、純水 300質量部、水溶性フェノール樹脂(昭和高分子株式会社製、商品名:BRL−125S) 700質量部、エポキシシランカップリング剤(日本ユニカー株式会社製、商品名:A−187) 10質量部を、1昼夜撹拌の後、ろ過装置に静かに投入し、アスピレータにて静かに減圧ろ過を行い、減圧しきった。その後、液状の脂環式エポキシ樹脂(ダイセル株式会社製、商品名:セロキサイド3000) 100質量部、液状硬化触媒(四国化成工業株式会社、商品名:1.2DMZ) 5重量部、からなる液状エポキシ樹脂組成物を炭素繊維に含浸させた。触媒を含む液状エポキシ樹脂組成物をバインダー樹脂とし、炭素繊維を充填剤とする複合材料前駆体を、175℃に加熱した平板プレスにて、60kgf/cmの圧力でプレスし、プレスより取り出し、200℃で10時間後加熱して高熱伝導グラファイトコンポジットを得た。該グラファイトコンポジットの熱伝導率は、15W/m・Kであった。
【0050】
(実施例5)
チョップドファイバー(日本グラファイトファイバー株式会社製、商品名:XN−100−035;平均繊維径 10μm、平均繊維長 3mm、熱伝導率900W/m・K) 80質量部、ミルドファイバー(日本グラファイトファイバー株式会社製、商品名:XN−100;平均繊維径 10μm、平均繊維長 0.150mm、熱伝導率900W/m・K) 20質量部、熱架橋性のポリフェニレンエーテル(PPE;旭化成工業株式会社製、商品名:ザイロン240Z) 200質量部、エポキシシランカップリング剤(日本ユニカー株式会社製、商品名:A−187) 10質量部、メチルエチルケトン(MEK) 300質量部、を60℃で2時間撹拌した後、ろ過装置に静かに投入し、ろ過した。得られたろ過残渣を80℃で減圧乾燥し、熱硬化性PPE樹脂コート炭素繊維を得た。この熱硬化性PPE樹脂をバインダーとし、炭素繊維を充填剤とするプリコート繊維とする複合材料前駆体を、175℃に加熱した平板プレスにて、60kgf/cmの圧力でプレスし、プレスより取り出し、200℃で10時間後加熱して高熱伝導グラファイトコンポジットを得た。該グラファイトコンポジットの熱伝導率は、12W/m・Kであった。
【0051】
(比較例1)
カーボン繊維(三菱化学株式会社製、商品名:ダイヤリードK223HG;熱伝導率500W/m・K) 300質量部、熱可塑性樹脂(トープレン株式会社製、商品名:T−1) 100質量部を二軸混練機にて溶融混練し、ペレット化を行った。また、得られた成形材料を140℃で5時間除湿乾燥した後、射出成形機を用いて300℃、射出圧力1200kg/cm、金型温度140℃の条件で測定を行い、平板試験片を得た。その試験片の熱伝導率は、10W/m・Kであった。
【0052】
(比較例2)
チョップドファイバー(日本グラファイトファイバー株式会社製、商品名:XN−100−035;平均繊維径 10μm、平均繊維長 3mm、熱伝導率900W/m・K) 80質量部、ミルドファイバー(日本グラファイトファイバー株式会社製、商品名:XN−100;平均繊維径 10μm、平均繊維長 0.150mm、熱伝導率900W/m・K) 20質量部、水溶性レゾール樹脂(昭和高分子抹式会社製、商品名:BRL−125S)を30質量部、エポキシシランカップリング剤(日本ユニカー株式会社製、商品名:A−187) 1質量部を、ヘンシェルミキサーにて混合して、水溶性レゾール樹脂をバインダーとし、炭素繊維を充填剤とする複合材料前駆体を得た、この前駆休を175℃に加熱した平板プレス上にて、60kgf/cmの圧力でプレスし、プレスより取り出し、200℃で10時間後加熟して高熱伝導グラファイトコンポジットを得た。該グラファイトコンポジットの熱伝導率は、3W/m・Kであった。
【0053】
下記に実施例1〜5、比較例1〜2の特性について表1及び表2にまとめて示す。
【表1】

【表2】

【0054】
なお、熱伝導率の測定には、φ5×3mmの試験片を使用し、レーザーフラッシュ法熱伝導率測定装置を用い、試験片の片方の面にレーザー光をあて、その裏側の面の温度上昇率を赤外感知することにより熱伝導率を求める方法で評価した。
【0055】
この結果から、本発明のグラファイトコンポジットの製造方法によれば、グラファイトファイバーを充填剤とし、熱硬化の可能な樹脂をバインダーとする高熱伝導性の新規なグラファイトコンポジットを得ることができる。グラファイトコンポジットは、炭素と熱硬化性樹脂から構成されているため耐熱性にも優れ、フレキシブルプリント配線板に適用することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛化処理された炭素繊維と、熱硬化性樹脂と、からなる熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる熱伝導性樹脂グラファイトコンポジットであって、
前記黒鉛化処理された炭素繊維が、熱硬化性樹脂又は導電性ポリマーを水又は有機溶媒で溶解した溶液中に、黒鉛化処理された炭素繊維を分散させ、その溶液を沈降法又は吸引法によりケーキ化させて得られたものであることを特徴とする熱伝導性樹脂グラファイトコンポジット。
【請求項2】
熱硬化性樹脂又は導電性ポリマーを水又は有機溶媒で溶解した溶液中に、黒鉛化処理された炭素繊維を分散させ、その溶液を沈降法又は吸引法により前記炭素繊維をケーキ化し、得られたケーキを硬化成形することを特徴とする熱伝導性樹脂グラファイトコンポジットの製造方法。
【請求項3】
前記ケーキの空隙に熱硬化性樹脂組成物を含浸させてから硬化成形することを特徴とする請求項2記載の熱伝導性樹脂グラファイトコンポジットの製造方法。
【請求項4】
前記黒鉛化処理された炭素繊維の平均繊維径が1〜50μm、平均繊維長が0.1〜50mmであることを特徴とする請求項2又は3記載の熱伝導性樹脂グラファイトコンポジットの製造方法。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂組成物が、前記黒鉛化処理された炭素繊維を100質量部、前記熱硬化性樹脂を10〜100質量部、含有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項記載の熱伝導性樹脂グラファイトコンポジットの製造方法。

【公開番号】特開2010−23410(P2010−23410A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189968(P2008−189968)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】