説明

熱処理装置及び基板処理方法

【課題】基板に形成する膜の厚さの均一性を制御することができる熱処理装置及び基板処理方法を提供する。
【解決手段】基板を処理する処理室と、前記処理室に収容された基板を基板の外周側から加熱する加熱装置と、前記加熱装置と処理室との間に設けられた冷却ガス流路と、前記冷却ガス流路に冷却ガスを流す冷却装置と、前記加熱装置を上方から下方にかけて分割した領域の前記冷却ガス流路とそれぞれ連通し、前記冷却装置により前記冷却ガス流路へ冷却ガスを流す複数の冷却ガス吸気路と、前記複数の冷却ガス吸気路にそれぞれ設けられた圧力検出器と、前記圧力検出器が検出する圧力値に基づいて、前記冷却装置を制御する制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板を熱処理する熱処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、ウエハの周縁部の温度を検出する第1の熱電対の測定値と、ウエハの中心部の温度を検出する中心部熱電対の測定値を取得して両測定値の偏差を求め、ウエハの処理を行う前に、予め記憶された偏差と両測定値の偏差とを比較し、予め記憶された偏差と両測定値の偏差とが異なる場合には、反応管における圧力値を補正し、この補正後の圧力値に基づいて、制御部により加熱装置及び冷却装置を制御して基板を処理する熱処理装置を開示する。
【0003】
このような熱処理装置において、炉内の温度を急速に冷却するための急冷機構を備えるものが知られている。これらの急冷機構では、急冷吸気口と急冷ブロア排気口と顧客施設排気が接続されるが、下部分に吸気口を設置する為、反応炉の上下方向において冷却性能に差が出てしまい、成膜時にこの急冷機構を使用する場合、ウエハ間膜厚偏差に悪影響を及ぼすという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−205426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、反応炉上下方向における冷却性能の差を減少し、基板に形成する膜の厚さや、膜質の均一性を制御することができる熱処理装置及び基板処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴とするところは、基板を処理する処理室と、前記処理室に収容された基板を基板の外周側から加熱する加熱装置と、前記加熱装置と処理室との間に設けられた冷却ガス流路と、前記冷却ガス流路に冷却ガスを流す冷却装置と、前記加熱装置を上方から下方にかけて分割した領域の前記冷却ガス流路とそれぞれ連通し、前記冷却装置により前記冷却ガス流路へ冷却ガスを流す複数の冷却ガス吸気路と、前記複数の冷却ガス吸気路にそれぞれ設けられた圧力検出器と、前記圧力検出器が検出する圧力値に基づいて、前記冷却装置を制御する制御部と、を有する熱処理装置にある。
【0007】
好適には、前記冷却ガス流路の下流側で、前記冷却ガス流路と連通する冷却ガス排気路をさらに有し、前記冷却ガス排気路には、圧力検出器が設けられ、前記圧力検出器が検出する圧力値に基づいて、前記加熱装置又は前記冷却装置の少なくとも一方が制御される。
【0008】
また、好適には、前記制御部は、基板の周縁の状態を検出する第1検出部の測定値と、基板の中心部の状態を検出する第2検出部の測定値とを取得して、前記第1検出部の測定値と前記第2検出部の測定値との第1の偏差を求め、予め記憶された前記第1検出部の測定値と前記第2検出部の測定値との第2の偏差と、前記第1検出部の測定値と前記第2検出部の測定値との前記第1の偏差とを比較し、前記第2の偏差と、前記第1の偏差が異なる場合には、前記第1の偏差に基づいて、前記冷却ガス流路における圧力値の圧力補正値を算出し、該圧力補正値により前記圧力値を補正する。
【0009】
また、本発明の第2の特徴とするところは、基板を処理する処理室内に収容された基板を加熱装置により基板の外周側から加熱する工程と、前記加熱装置を上方から下方にかけて分割した領域にそれぞれ接続された複数の冷却ガス吸気路から前記加熱装置と前記処理室との間に設けられた冷却ガス流路へ冷却装置により冷却ガスを流し、前記基板の外周側を冷却する工程と、前記複数の冷却ガス吸気路内の圧力値を圧力検出器により検出する工程と、前記圧力検出器が検出する圧力値に基づいて、制御部により前記冷却装置を制御する工程と、を有する基板処理方法にある。
【0010】
好適には、前記制御部は、基板の周縁の状態を検出する第1検出部の測定値と、基板の中心部の状態を検出する第2検出部の測定値とを取得して、前記第1検出部の測定値と前記第2検出部の測定値との第1の偏差を求め、予め記憶された前記第1検出部の測定値と前記第2検出部の測定値との第2の偏差と、前記第1検出部の測定値と前記第2検出部の測定値との前記第1の偏差とを比較し、前記第2の偏差と、前記第1の偏差が異なる場合には、前記第1の偏差に基づいて、前記冷却ガス流路における圧力値の圧力補正値を算出し、該圧力補正値により前記圧力値を補正する工程と、前記処理室を前記加熱装置で加熱しつつ、前記冷却ガス流路内に冷却装置により冷却ガスを流し、前記補正後の圧力値に基づいて、前記制御部により前記加熱装置及び前記冷却装置を制御して基板を処理する工程と、を有する。
【0011】
また、好適には、前記基板処理方法は、冷却性能一定化、冷却ガス流量制御の方法をプログラム化し計算機上に実装した実装部(実装装置)に基づき基板を処理する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、反応炉上下方向における冷却性能の差を減少し、基板に形成する膜の厚さや、膜質の均一性を制御することができる熱処理装置及び基板処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体製造装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る反応管の周辺の構成を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る冷却機構の構成を模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る半導体製造装置の構成を模式的に示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る半導体製造装置で、ウエハの中心部温度補正値を用いて設定温度を補正する構成・方法について説明する説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る半導体製造装置で取得された中心部温度偏差のデータを示す図表である。
【図7】本発明の実施形態に係る半導体製造装置の圧力補正量の算出について説明する第1の図である。
【図8】本発明の実施形態に係る半導体製造装置の圧力補正量の算出について説明する第2の図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る半導体製造装置で処理されたウエハの、膜厚等のデータを示す図表である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る半導体製造装置の圧力補正量の算出について説明する第1の図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る半導体製造装置の圧力補正量の算出について説明する第2の図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る冷却機構の構成を模式的に示す図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る半導体製造装置で処理されたウエハの、膜厚等のデータを示す図表である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る半導体製造装置のDEPO処理時間補正量の算出について説明する第1の図である。
【図15】本発明の第4の実施形態に係る半導体製造装置のDEPO処理時間補正量の算出について説明する第2の図である。
【図16】本発明の第5の実施形態に係る半導体製造装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には、本発明の実施形態に係る熱処理装置の一例である半導体製造装置10の構成が模式的に示されている。
【0015】
半導体製造装置10は、均熱管12を有し、均熱管12は、例えばSiC等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞され、下端に開口を有する円筒状の形状をしている。均熱管12の内側には、反応容器として用いられる反応管14が設けられている。反応管14は、例えば、石英(Si02)等の耐熱性材料からなり下端に開口を有する円筒状の形状を有し、均熱管12内に同心円状に配置されている。
【0016】
反応管14の下部には、例えば石英からなるガスの供給管16と、排気管18が連結されている。供給管16には、連結するように、反応管にガスを導入する導入口が形成された導入部材20が設けられていて、供給管16、及び導入部材20は、反応管14下部から、反応管14側部に添って、例えば細管状に立ち上がり、反応管14の天井部で反応管14内部に到達するようになっている。
また、排気管18は、反応管14に形成された排気口22に接続されている。
【0017】
供給管16は、反応管14の天井部から反応管14の内部にガスを流し、反応管14下部に接続された排気管18は、反応管14下部からの排気に用いられる。反応管14には、導入部材20、供給管16を介して、反応管14で用いられる処理用のガスが供給されるようになっている。また、ガスの供給管16には、ガスの流量を制御する流量制御手段として用いられるMFC(マスフローコントローラ)24、又は図示を省略する水分発生器とが接続されている。MFC24は、制御部26(制御装置)が備えるガス流量制御部28(ガス流量制御装置)に接続されていて、ガス流量制御部28によって、供給するガスや水蒸気(H20)の流量が、例えば、予め定められた所定の量に制御される。
【0018】
制御部26は、先述のガス流量制御部28と併せて、温度制御部30(温度制御装置)、圧力制御部32(圧力制御装置)、及び駆動制御部34(駆動制御装置)を有している。また、制御部26は、上位コントローラ36に接続されていて、上位コントローラ36によって制御される。
【0019】
排気管18には、圧力調整器として用いられるAPC38と、圧力検出手段として用いられる圧力センサ40とが取り付けられている。APC38は、圧力センサ40によって検出された圧力に基づいて、反応管14内から流出するガスの量を制御し、反応管14内を、例えば一定の圧力になるように制御する。
【0020】
また、反応管14の下端に形成された開口部には、例えば石英からなり、例えば円板形状を有し、保持体として用いられるベース42が、Oリング44を介して取り付けられている。ベース42は、反応管14に対して着脱が可能であり、反応管14に装着された状態で、反応管14を気密にシールする。ベース42は、例えば、略円板形状からなるシールキャップ46の重力方向上向きの面に取り付けられている。すなわち、反応管14の下端に形成された開口部にOリング44を介してベース42が取り付けられることで処理室45が形成される。
【0021】
シールキャップ46には、回転手段として用いられる回転軸48が連結されている。回転軸48は、図示省略する駆動源からの駆動伝達を受けて回転し、保持体として用いられる石英キャップ50、基板保持部材として用いられるボート52、及びボート52に保持され基板にあたるウエハ54を回転させる。回転軸48が回転する速度は、先述の制御部26によって制御がなされる。
【0022】
また、半導体製造装置10は、ボート52を上下方向に移動させるために用いられるボートエレベータ56を有しており、先述の制御部26によって制御がなされる。
【0023】
反応管14の外周には、加熱装置(加熱手段)として用いられるヒータ58が同心円状に配置されている。ヒータ58は、反応管14内の温度を上位コントローラ36で設定された処理温度にするように、第1の熱電対62、第2の熱電対64、第3の熱電対66にある温度検出部60(温度検出装置)で検出された温度に基づいて、温度制御部30によって制御される。
【0024】
図2には、反応管14の周辺の構成が模式的に示されている。
半導体製造装置10は、先述のように温度検出部60を有し、温度検出部60は、第1の熱電対62、第2の熱電対64及び第3の熱電対66を備えている。これらに加え、図2に示すように、温度検出部60は、ウエハ54の略中心部の位置の温度を検出する中心部熱電対68と、ボート52の天井部付近の温度を検出する天井部熱電対70とを有している。尚、中心部熱電対68は、第3の熱電対66の代替としての機能を有することも可能である為、第3の熱電対66はなくても良い。
【0025】
第1の熱電対62はヒータ58の温度を検出するために用いられ、第2の熱電対64は均熱管12と反応管14の間の温度を検出するために用いられる。ここで、第2の熱電対64は、反応管14とボート52との間に設置し、反応管14内の温度を検出することもできるようにしても良い。第3の熱電対66は、反応管14とボート52との間に設置され、第2の熱電対64よりもボート52に近い位置に設置され、よりボート52に近い位置の温度を検出する。また、第3の熱電対66は、温度安定期における反応管14内の温度の均一性を測定する用途で使用されている。
【0026】
以上ように構成された半導体製造装置10において、反応管14内(処理室45)で、ウエハ54の酸化、拡散処理がなされる場合の動作の一例を説明する(図1参照)。
まず、ボートエレベータ56によりボート52を下降させる。次に、ボート52に複数枚のウエハ54を保持する。次いで、ヒータ58により加熱し、処理室45の温度を予め定められた所定の処理温度にする。
【0027】
そして、ガスの供給管16に接続されたMFC24により、予め反応管14内(処理室45)を不活性ガスで充填しておき、ボートエレベータ56により、ボート52を上昇させて反応管14内に移し、反応管14の内部温度を所定の処理温度に維持する。反応管14内を所定の圧力に保った後、回転軸48により、ボート52及びボート52に保持されているウエハ54を回転させる。同時に、ガスの供給管16から処理用のガスを供給するか、又は水分発生器(不図示)から水蒸気を供給する。供給されたガスは、反応管14を下降し、ウエハ54に対して均等に供給される。
【0028】
酸化・拡散処理中の処理室45においては、排気管18を介して排気され、所定の圧力になるようAPC38により圧力が制御され、所定時間、ウエハ54の酸化・拡散処理がなされる。この酸化・拡散処理が終了すると、連続して処理がなされるウエハ54のうち、次の処理がなされるウエハ54の酸化・拡散処理に移るべく、反応管14内のガスを不活性ガスで置換するとともに、圧力を常圧にし、その後、ボートエレベータ56によりボート52を下降させて、ボート52及び処理済のウエハ54を反応管14から取出す。
反応管14から取出されたボート52上の処理済のウエハ54は、未処理のウエハ54と交換され、再度、反応管14内に上昇され、ウエハ54に酸化・拡散処理がなされる。
【0029】
図3には、図1及び2に示される構成に加えて冷却機構を備える構成が模式的に示されている。
【0030】
図3に示すように、本発明の実施形態に係る半導体製造装置10は、加熱装置であるヒータ58の外周に反応管14内を冷却する冷却機構を設ける。ここで、ヒータ58の配置された領域を上方から下方にかけて分割する。具体的には、ヒータ58の配置された領域を上方から順にヒータ58−1、58−2、58−3、58−4とする。ヒータ58−1の領域には、第1の熱電対62−1、第2の熱電対64−1、中心部熱電対68−1が配置される。また、ヒータ58−2の領域には、第1の熱電対62−2、第2の熱電対64−2、中心部熱電対68−2が配置される。また、ヒータ58−3の領域には、第1の熱電対62−3、第2の熱電対64−3、中心部熱電対68−3が配置される。また、ヒータ58−4の領域には、第1の熱電対62−4、第2の熱電対64−4、中心部熱電対68−4が配置される。
【0031】
また、ヒータ58の分割された領域に合わせて冷却ガスを吸気する吸気口72を備える。具体的には、ヒータ58−1の領域に吸気口72−1を設け、ヒータ58−2の領域に吸気口72−2を設け、ヒータ58−3の領域に吸気口72−3を設け、ヒータ58−4の領域に吸気口72−4を設ける。
【0032】
吸気口72−1〜72−4は、それぞれ吸気管74−1〜74−4に接続され、吸気管74−1〜74−4は冷却ガスを吸気する冷却ガス吸気装置76に接続される。また、吸気管74−1〜74−4の冷却ガス吸気装置76よりには、それぞれ吸気管74−1〜74−4内の圧力値を弁の開度によって制御する制御弁78−1〜78−4が設けられている。また、吸気口72−1〜72−4と制御弁78−1〜78−4の間にはそれぞれ吸気管74−1〜74−4内の圧力を検出する検出部(検出装置)として用いられる圧力センサ80−1〜80−4が設けられている。ここで、圧力センサ80は吸気口72と制御弁78の間に設けるとしたが、より吸気口72近傍に設けるのが好ましい。
【0033】
反応管14の上方には、排気部82が設けられ、排気部82は、例えばブロア等からなる冷却ガス排気装置84と、ラジエタ86とを有する。冷却ガス排気装置84は、排気部82を構成する排気管88の先端側に装着されていて、ラジエタ86は、排気管88の基端部と冷却ガス排気装置84との間の位置に装着されている。また、排気管88のラジエタ86の冷却ガスの流れる方向における上流側と下流側には、それぞれシャッタ90、90が設けられている。シャッタ90、90は、図示を省略するシャッタ制御部(シャッタ制御装置)によって制御されて開閉する。また、排気管88の、ラジエタ86と冷却ガス排気装置84との間の位置には、排気管88内の圧力を検出する検出部(検出装置)として用いられる圧力センサ92が設けられている。ここで、圧力センサ92が設けられる位置としては、冷却ガス排気装置84とラジエタ86とを結ぶ排気管88中でも、ラジエタ86にできる限り近い位置に設けることが望ましい。
【0034】
冷却ガス流路77は、冷却ガスを通過させるようにヒータ58と均熱管12との間に形成され、冷却ガス吸気装置76から供給される冷却ガスは吸気管74−1〜74−4を介して吸気口72−1〜72−4からヒータ58内に供給され、冷却ガスを均熱管12の上方に向けて通過させる。冷却ガスは、例えば空気又は窒素(N2)などである。また、冷却ガス流路77は、第1の熱電対62−1〜62−4それぞれの間から均熱管12に向けて冷却ガスが吹き出すようにされている。
【0035】
冷却ガスは均熱管12を冷却し、冷却された均熱管12は反応管52内のボート14にセットされたウエハ54を周方向(外周側)から冷却する。
つまり、冷却ガス流路77を通過する冷却ガスにより、均熱管12、反応管14及びボート52にセットされたウエハ54が周方向(外周側)から冷却されるようになっており、冷却ガス流路77を通過した冷却ガスは冷却ガス排気路として用いられる排気部82を介して装置外へ排気される。
【0036】
制御部26(制御装置)は、先述のように、ガス流量制御部28(ガス流量制御装置)、温度制御部30(温度制御装置)、圧力制御部32(圧力制御装置)、及び駆動制御部34(駆動制御装置)を有し(図1参照)、併せて、図4に示されるように冷却ガス流量制御部94(冷却ガス制御装置)を有する。
【0037】
図4は、本発明の実施形態に係る冷却機構の構成をヒータ58−1の領域を例にとって説明した図である。
冷却ガスの流量を制御する冷却ガス流量制御部94は、減算器96と、PID演算器98と、制御弁開度変換器100とから構成される。
減算器96には、上位コントローラ36から圧力目標値Sが入力される。また、減算器96には、圧力目標値Sに加えて、圧力センサ80−1によって計測された圧力値Aが入力され、減算器96で、圧力目標値Sから圧力値Aを減算した偏差Dが出力される。
【0038】
偏差Dは、PID演算器98に入力される。PID演算器98では、入力された偏差Dに基づいてPID演算がなされ操作量Xが算出される。算出された操作量Xは、制御弁開度変換器100に入力され、制御弁開度Wへと変換され出力される。出力された制御弁78−1の開度Wにより制御弁の開度が変更される。
圧力センサ80−1からの圧力値Aは、常時又は所定時間間隔で減算器96へと入力され、この圧力値Aに基づいて、圧力目標値Sと圧力値Aとの偏差Dが0となるように、冷却ガス吸気装置76の制御弁78−1の開度の制御が続けられる。
すなわち、圧力センサ80−1によって計測された圧力値Aとあらかじめ設定された圧力目標値Sの偏差が零になるように制御弁78−1を制御する事で吸気口72−1の圧力をある一定の値に制御する。
【0039】
なお、ヒータ58−1の領域を例にとって説明したが、ヒータ58−2〜ヒータ58−4の領域も同様にそれぞれ制御弁78−2〜78−4の開度の制御がなされる。
【0040】
以上のように、半導体製造装置10では、冷却ガス吸気装置76を用いて、ヒータ58の内側と反応管14との間に冷却媒体として用いられる空気を流し、ヒータ58を構成する素線や、反応管14を冷却し、反応管14を上下方向に分割した領域それぞれの温度制御がなされる。このため、反応管14内に保持されるウエハ54の温度制御性が良好である。
【0041】
すなわち、伝熱には輻射による伝熱と伝達による伝熱があり、半導体製造装置10では、輻射による伝熱のみがウエハ54に伝わってウエハ54の温度上昇に寄与する一方で、伝達による伝熱は、ほとんどがヒータ58内側と反応管14との間に流れるエアにより空冷され放熱されている。このため、ヒータ58の素線付近で、空気の冷却によって放出する熱量を補うために、ヒータ58の出力を増加させる。そしてヒータ58出力の増加により、ヒータ58の素線温度はより高くなり、輻射熱が増大する。ここで、輻射による伝熱は、伝達による伝熱に比べてはるかに伝播速度が速い。このため、輻射熱により、反応管14内のウエハの加熱がなされる半導体製造装置10は、温度制御性が良好である。
【0042】
また、反応管14温度も、空気による冷却で低下する。そして、反応管14温度が低下すると、ウエハ54のエッジ部から反応管14への熱伝達が行われる。そして、この結果、ウエハ54の温度分布が、中央部よりエッジ部の方が低くなり、エッジ部の温度が中央部の温度よりも高い、いわゆる凹型の温度分布から、エッジ部の温度が中央部の温度よりも低い、いわゆる凸型の温度分布にすることが可能になる。
【0043】
ウエハ54に形成される薄膜の膜厚は、仮にウエハ54の温度分布が均一である場合、エッジ部の膜厚が中央部の膜厚よりも厚い凹型となってしまう。これに対して、上述のように温度を制御することで、ウエハ54の温度分布を凸型とすれば、ウエハ54の膜厚の均一性を向上させることができる。
【0044】
また、半導体製造装置10では、先述のように、排気管88の先端側が半導体製造装置10の設置される工場等の排気施設に接続されていて、排気管88を介して反応管14から冷却ガスの排気がなされるため、冷却ガス排気装置84による冷却の効果は、工場等の排気施設の排気圧力によって大きく変動する可能性がある。そして、冷却ガス排気装置84による冷却の効果が変動すると、ウエハ54表面での温度分布にも影響を与えるため、排気管88からの排気圧が一定となるように、冷却ガス排気装置84の周波数を制御している。
【0045】
また、半導体製造装置10では、例えば、第1の熱電対62等の熱電対を交換するなどのメンテナンスをした際に、第1の熱電対62を取り付ける位置に誤差が生じてしまい、メンテナンスの前に処理したウエハ54とメンテナンス後に処理したウエハ54とで形成される薄膜の膜厚に差異が生じる虞がある。また、同一仕様の半導体製造装置10が複数ある場合、それぞれの半導体製造装置10で形成される薄膜の膜厚に差異が生じる虞がある。
そこで、本発明に係る半導体製造装置10では、例えばメンテナンスの前後や、同一仕様の複数の半導体製造装置10の間で形成される薄膜の均一性を向上させるため、さらなる工夫を施している。
【0046】
すなわち、半導体製造装置10では、第2の熱電対64からの出力に基づいて、ウエハ54が予め定められた温度となるように制御されているときの、中心部熱電対68からの値であるウエハ54の中心部の温度と、天井部熱電対70からの値であるボート52の天井部の温度を取得しておき、例えばメンテナンスを行った後に、これらの取得しておいたデータから圧力設定値(大気との差圧)に対する補正値を算出するようにしている。以下、ヒータ58−1の領域を例に具体的に説明する。
【0047】
図5は、ヒータ58−1の領域において、ウエハ54の中心部温度補正値を用いて設定温度を補正する構成・方法について説明する説明図である。先述の制御部26は、ウエハ中心部温度補正演算部102(ウエハ中心部温度補正演算装置)を有している。
ここでは、第2の熱電対64−1を600℃とする場合を例として説明する。ウエハ中心部温度補正演算部102は、第2の熱電対64−1で制御したときの、中心部熱電対68−1の出力値(ウェハ中心部温度)と、天井部熱電対70の出力値(天井部温度)を取得し、それぞれ第2の熱電対64−1の出力値(内部温度)との偏差を記憶する。
【0048】
このとき、
内部温度 − ウエハ中心部温度 = ウエハ中心部温度偏差
又は、
内部温度 − 天井部温度 = 天井部温度偏差
として記憶する。また、その時の圧力設定値も同時に記憶する。設定温度は一定で、圧力設定値を変更し、複数個の条件で上記データを取得しておく。
【0049】
例えば、設定温度が600℃、内部温度が600℃、ウエハ中心部温度が607℃の場合を例とすると、内部温度をウエハ54のエッジ部の温度と見ると、設定温度は600℃であるものの、ウエハ中心部温度は607℃とズレが発生している事になる。
そこで、
ウエハ中心部温度偏差 = 600℃ − 607℃ = −7℃
を上位コントローラ36に出力し、設定値に対して補正する事で、上位コントローラ36を用いてウエハ54の中心部を600℃に変化させることが可能となる。
図6に、取得された複数のデータの一例を示す。
【0050】
続いて、圧力補正値の算出について説明する。
例えば、現在のボート天井部温度偏差をt1、現在の圧力設定値をp1、p1に対応したボート天井部温度補正値をb1、取得されたデータにおけるプラス側の圧力測定値をpp、プラス側のボート天井部温度補正値をtp、取得されたデータにおけるマイナス側の圧力測定値をpm、マイナス側のボート天井部温度補正値をtmとすると、圧力補正量pxは、t1とb1との大小に応じ、以下に示す式(11)、式(12)で求められる。
【0051】
すなわち、
t1 < b1 の場合は、
px=(b1−t1)*{(p1−pm)/(b1−tm)}・・・(式11)
t1 > b1 の場合は、
px=(b1−t1)*{(pp−p1)/(tp−b1)}・・・(式12)
で求められる。
以下、t1 < b1の場合と、t1 > b1の場合のそれぞれについて、具体例を示
しつつ説明する。
【0052】
図7は、t1 < b1 の場合の圧力補正量pxの算出について説明する説明図であ
る。
まず、b1−t1として、予め取得したボート天井部温度偏差b1と現在のボート天井部温度偏差t1との温度偏差を求める。
次に、(p1−pm)/(b1−tm)として、予め取得したデータから「現在の圧力設定値p1とそれに対応したボート天井部温度偏差b1」と「マイナス側の圧力値pmとそれに対応したボート天井部温度偏差tm」との関係から、ボート天井部温度偏差を+1℃とするための圧力補正量を求める。
【0053】
図7に示される例では、300Paに対応したボート天井部温度補正値は−4℃であり、マイナス側として図6におけるNo.4の−6℃が抽出される。
また、予め取得したデータから、圧力設定値p1が300paで、ボート天井部温度偏差b1は、−4℃になる。
また、圧力設定値pmが500paで、ボート天井部温度偏差tmを、−6℃から−4℃に+2℃変化させるには、
300Pa(p1)− 500Pa(pm) = −200Pa
の圧力補正量が必要となる。
【0054】
現在の圧力測定値が300Pa、測定結果から得られる現在のボート天井部温度偏差が−5℃の場合を例とする。
この場合、まず、現在使用している圧力設定値に対応したボート天井部温度補正値を検索キーとして、検索キーからプラス側とマイナス側とで、それぞれ最も近いボート天井部補正値を図6に示される取得された複数のデータから選択し、選択されたデータから算出を行う。
以上から、
+1℃分の圧力補正量= −200Pa/+2℃= −100Pa/℃
が求められる。
つまり、(b1−t1)を+1℃分補正したいので、
+1℃*(−100Pa/℃)=−100Pa
の圧力補正量が算出される。
【0055】
図8は、t1 > b1 の場合の圧力補正量pxの算出について説明する説明図である。
【0056】
まず、予め取得したボート天井部温度偏差b1と現在のボート天井部温度偏差t1との温度偏差を求める。
次に、(pp−p1)/(tp−b1)として、予め取得したデータから、「現在の圧力設定値p1とそれに対応したボート天井部温度偏差b1」と「取得されたデータにおけるプラス側の圧力値ppとそれに対応したボート天井部温度偏差tp」との関係から、ボート天井部温度偏差を−1℃とするための圧力補正量を求める。
【0057】
ここでは、現在の圧力測定値が300Pa、測定結果から得られる現在ボート天井部温度偏差が−3℃の場合を例とすると、図6に示される予め取得したデータによると圧力設定値ppが、300Paでボート天井部温度偏b1は−4℃になる。また、圧力設定値plが200Paで、ボート天井部温度偏差tpは−2℃となる。
このため、予め取得したデータからボート天井部温度偏差tpである−2℃から、b1である−4℃へ、−2℃温度を変化させるには、
300Pa(p1)−200Pa(pp)=+100Pa
の圧力補正量が必要となる。
【0058】
すなわち、300Paに対応したボート天井部温度補正値は−4℃であり、プラス側として、図5におけるNo.2の−2℃が検出される。
以上から、
+1℃分の圧力補正量=−100Pa/2℃=−50Pa/℃が求められる。
この例では、(b1−t1)=−1℃分補正したいので、
−1℃*(−50Pa/℃)=+50Paの圧力補正量が算出される。
【0059】
以上で、ボート天井部温度偏差をt1、及びボート天井部温度補正値をb1のいずれか一方が他方よりも大きい場合における圧力補正量pxについて説明をしたが、t1とb1とが同じ値である場合は補正の必要はない。
【0060】
また、以上で説明をした圧力補正値の算出で、検出したプラス側あるいはマイナス側の圧力値と、それに対応したボート天井部温度偏差と、現在の圧力設定値p1及びそれに対応したボート天井部温度偏差b1の関係からボート天井部温度偏差を1℃上昇させるため
の圧力補正量を求めているのは、ボート天井部温度によって圧力補正量は変化することが考えられるからである。
例えば、ボート天井部温度補正値を−6℃から−4℃に+2℃変化する為の圧力補正量と、−4℃から−2℃に+2℃変化する為の圧力補正量とは、ヒータ58の素線からの輻射熱の変化、ウエハ54のエッジ部から反応管14への熱伝達、ウエハ54の中央部とウエハ54のエッジ部の熱伝達の関係が変化することによって、必ずしも一致するとは限らない。
【0061】
そこで、この実施形態に係る半導体製造装置10では、より近いボート天井部温度補正値の偏差変化状況から圧力補正量を算出する為に、現在の圧力設定値に対応したボート天井部温度偏差より、現在のボート天井部温度偏差が低い場合は、マイナス側のボート天井部温度偏差及び圧力設定値を用いて圧力補正量を算出し、現在の圧力設定値に対応したボート天井部温度偏差より、現在のボート天井部温度偏差が高い場合は、プラス側のボート天井部温度偏差及び圧力設定値を用いて圧力補正量を算出している。
【0062】
次に本発明の第2の実施形態を説明する。
先述の実施形態では、圧力補正量pxを、ボート天井部の温度補正値を用いて求めていたのに対して、この他の実施形態では、圧力補正量pxを、事前に薄膜形成処理がなされたウエハ54の膜厚を用いて求めている。以下、詳細に説明する。説明にあたっては、図9に示す、予め所定の条件で薄膜形成がなされたウエハ54に、測定された膜厚等のデータを用いる。
【0063】
ウエハ54の現在の膜厚をa1、現在の圧力設定値をp1、現在の圧力設定値p1に対応した膜厚をc1、検索されたプラス側の圧力測定値をpp、予め取得された複数のデータ中におけるプラス側の膜厚をpc、予め取得された複数のデータ中におけるマイナス側の圧力測定値をpm、マイナス側の膜厚をtcとすると、圧力補正量pxは、現在の膜厚a1と現在の圧力設定値p1に対応した膜厚をc1との大小に応じ、以下に示す式(21)、式(22)で求められる。
【0064】
すなわち、
a1 < c1の場合は、
px = (c1−a1)*{(p1−pm)/(c1−tc)}・・・(式21)
a1 > c1の場合は、
px = (c1−a1)*{(pp−p1)/(pc−c1)}・・・(式22)
で求められる。
【0065】
以下、a1 < c1の場合と、a1 > c1の場合とのそれぞれについて、具体例を
示しつつ説明する。
【0066】
図10は、a1 < c1 の場合の圧力補正量pxの算出について説明する説明図で
ある。
まず、c1−a1として、予め取得した膜厚c1と現在の膜厚a1との差を求める。
次に、(p1−pm)/(c1−tc)として、予め取得したデータから、「現在の圧力設定値p1とそれに対応した膜厚c1」と、「検出したマイナス側の圧力値pmとそれに対応した膜厚tc」との関係から、膜厚を−1Åとするための圧力補正量を求める。すなわち、図9に示されるように、圧力測定値300Paに対応した膜厚は630Åであり、マイナス側のデータとしてNo.2の580Åが抽出される。
【0067】
図9に示される予め取得したデータによると、圧力設定値p1が300Paで、膜厚c1は630Åになる。また、圧力設定値pmが200Paで、膜厚tcは580Åとなる。つまり、膜厚tcを580Åから630Åに50Å変化させるには、
300Pa(p1)−200Pa(pm) =+100Pa
の圧力補正量が必要となる。
【0068】
現在の圧力測定値が300Pa、測定結果から得られる膜厚が600Åの場合を例とする。
この場合、まず、現在使用している圧力設定値に対応した膜厚を検索キーとして、検索キーからプラス側とマイナス側とで、それぞれ最も近い膜厚を記憶したデータを図9に示される予め測定された値から選択し、その選択されたデータから算出を行う。
以上から、
+1Å分の圧力補正量 = +100Pa/50Å=+2Pa/Å
が求められる。
つまり、
c1−a1 = +30Å分補正したいので、
+30Å*(+2Pa/Å) = +60Paの圧力補正量が算出される。
【0069】
図11は、a1 > c1の場合の圧力補正量pxを算出する式について説明する説明
図である。
【0070】
まず、先述のa1 < c1の場合と同様に、予め取得した膜厚c1と現在の膜厚a1との
差を求める。
次に、(pp−p1)/(pc−c1)として、予め取得したデータから「現在の圧力設定値p1とそれに対応した膜厚c1」と、「検出したプラス側の圧力値ppとそれに対応した膜厚pc」との関係から、膜厚を+1Å増加させるための圧力補正量を求める。すなわち、図9に示されるように、300Paに対応した膜厚は630Åであり、プラス側のデータとして、図9におけるNo.4の730Åが検出される。
【0071】
図9に示される予め取得したデータによると、圧力設定値p1が300Paで、膜厚c1は630Åになる。また、圧力設定値ppが500Paで、膜厚pcは730Åとなる。つまり、膜厚を730Åから630Åに−100Å変化させるには、
300Pa(p1)−500Pa(pp) = −200Pa
の圧力補正量が必要となる。
【0072】
例えば、現在の圧力測定値が300Pa、測定結果から得られる膜厚が680Åの場合を例とする。
この場合、まず、現在使用している圧力設定値に対応した膜厚を検索キーとして、検索キーからプラス側とマイナス側とで、それぞれ最も近い膜厚を記憶したデータを図9に示される予め測定された値から選択し、その選択されたデータから算出を行う。
以上から、
+1Å分の圧力補正量 = −200Pa / −100Å = +2Pa/Å
が求められる。
つまり、
(c1−a1) = −50Å分補正したいので、
−50Å*(+2Pa/Å) = −100Paの圧力補正量が算出される。
【0073】
以上で、ウエハ54の現在の膜厚をa1、及び現在の圧力設定値p1に対応した膜厚c1のいずれか一方が他方よりも大きい場合における圧力補正量pxについて説明をしたが、a1とc1とが同じ値である場合は補正の必要はない。
【0074】
また、以上で説明をした圧力補正値の算出で、検出したプラス側あるいはマイナス側の圧力値と、それに対応した膜厚と、現在の圧力設定値p1及びそれに対応した膜厚c1の関係から、膜厚を1Å増加させるための圧力補正量を求めているのは、膜厚によって圧力補正量は変化することが考えられるからである。
例えば、膜厚を580Åから630Åに+50Å変化させるための圧力補正量と、630Åから680Åに+50Å変化させるための圧力補正量とは、ヒータ58の素線からの輻射熱の変化、ウエハ54のエッジ部から反応管14への熱伝達、ウエハ54の中央部とウエハ54のエッジ部の熱伝達の関係が変化することによって、ウエハ54が受ける熱量が変化する為、必ずしも一致するとは限らない。
【0075】
そこで、この実施形態に係る半導体製造装置10では、より近い膜厚の変化状況から圧力補正量を算出する為、現在の圧力設定値に対応した膜厚より、現在の膜厚が低い時は、マイナス側の膜厚及び圧力設定値を用いて圧力補正量を算出し、現在の圧力設定値に対応した膜厚より、現在の膜厚が高い時は、プラス側の膜厚及び圧力設定値を用いて圧力補正量を算出している。
【0076】
本発明ではボート天井部熱電対で測定したボート天井部温度補正値を使用して圧力補正量を求めているが、キャップTCあるいはウエハ中心部熱電対で測定できる、キャップ部温度補正値あるいはウエハ中心部温度補正値で代用することができる。
また、例えば、ボート天井部熱電対で測定したボート天井部温度補正値とキャップTCで測定したキャップ部温度補正値の2つの平均温度偏差、あるいはウエハ中心部熱電対で測定したウエハ中心部温度補正値を加えた3つの平均温度偏差から圧力補正値を算出することも可能である。
【0077】
次に本発明の第3の実施形態を説明する。
先述の実施形態では、図3に示すように、1つの冷却ガス吸気装置76に対して、複数の吸気管74−1〜74−4が接続され、それぞれの吸気管74−1〜74−4から吸気口72−1〜72−4を介して冷却ガス流路77に接続されていたが、第3の実施形態では、図12に示すように、複数の冷却ガス吸気装置76−1〜76−4を設け、複数の冷却ガス吸気装置76−1〜76−4に対して、複数の吸気管74−1〜74−4がそれぞれ接続され、それぞれの吸気管74−1〜74−4から吸気口72−1〜72−4を介して冷却ガス流路77に接続されている。
【0078】
すなわち、冷却ガス吸気装置を吸気管毎に複数設けることで、冷却ガス流路毎に冷却ガス吸気装置76−1〜76−4の出力、例えば、ブロアの周波数を制御することにより、より細かくかつ広範囲で冷却ガス供給側の圧力値を制御することが可能となる。
【0079】
次に本発明の第4の実施形態を説明する。
先述の実施形態では、圧力補正量pxを、ボート天井部の温度補正値を用いて求めていたのに対して、この第4の実施形態では、デポ処理時間補正量txを、事前に薄膜形成処理がなされたウエハ54の膜厚を用いて求めている。以下、詳細に説明する。説明にあたっては、図9に示す、予め所定の条件で薄膜形成がなされたウエハ54に、測定された膜厚等のデータを用いる。
【0080】
ウエハ54の現在の膜厚をa1、現在のデポ処理時間をt1、現在のデポ処理時間t1に対応した膜厚をc1、検索されたプラス側のデポ処理時間をtp、予め取得された複数のデータ中におけるプラス側の膜厚をpc、予め取得された複数のデータ中におけるマイナス側のデポ処理時間をtm、マイナス側の膜厚をtcとすると、デポ処理時間txは、現在の膜厚a1と現在のデポ処理時間t1に対応した膜厚をc1との大小に応じ、以下に示す式(23)、式(24)で求められる。
【0081】
すなわち、
a1 < c1の場合は、
tx = (c1−a1)*{(t1−tm)/(c1−tc)}・・・(式23)
a1 > c1の場合は、
tx = (c1−a1)*{(tp−t1)/(pc−c1)}・・・(式24)
で求められる。
【0082】
以下、a1 < c1の場合と、a1 > c1の場合とのそれぞれについて、具体例を示しつつ説明する。
【0083】
図14は、a1 < c1 の場合のデポ処理時間補正量txの算出について説明する説明図である。
まず、c1−a1として、予め取得した膜厚c1と現在の膜厚a1との差を求める。
次に、(t1−tm)/(c1−tc)として、予め取得したデータから、「現在のデポ処理時間t1とそれに対応した膜厚c1」と、「検出したマイナス側のデポ処理時間tmとそれに対応した膜厚tc」との関係から、膜厚を−1Åとするためのデポ処理時間補正量を求める。すなわち、図13に示されるように、デポ処理時間90minに対応した膜厚は630Åであり、マイナス側のデータとしてNo.2の580Åが抽出される。
【0084】
図13に示される予め取得したデータによると、デポ処理時間t1が90minで、膜厚c1は630Åになる。また、デポ処理時間tmが60minで、膜厚tcは580Åとなる。つまり、膜厚tcを580Åから630Åに50Å変化させるには、
90min(t1)−60min(tm) =+30min
のデポ処理時間補正量が必要となる。
【0085】
現在のデポ処理時間が90min、測定結果から得られる膜厚が600Åの場合を例とする。
この場合、まず、現在使用しているデポ処理時間に対応した膜厚を検索キーとして、検索キーからプラス側とマイナス側とで、それぞれ最も近い膜厚を記憶したデータを図13に示される予め測定された値から選択し、その選択されたデータから算出を行う。
以上から、
+1Å分のデポ処理時間補正量 = +30min/50Å=+0.6min/Å
が求められる。
つまり、
c1−a1 = +30Å分補正したいので、
+30Å*(+0.6min/Å) = +18minのデポ処理時間補正量が算出される。
【0086】
図15は、a1 > c1の場合のデポ処理時間補正量txを算出する式について説明する説明図である。
【0087】
まず、先述のa1 < c1の場合と同様に、予め取得した膜厚c1と現在の膜厚a1との差を求める。
次に、(tp−t1)/(pc−c1)として、予め取得したデータから「現在のデポ処理時間t1とそれに対応した膜厚c1」と、「検出したプラス側のデポ処理時間tpとそれに対応した膜厚pc」との関係から、膜厚を+1Å増加させるためのデポ処理時間補正量を求める。すなわち、図13に示されるように、90minに対応した膜厚は630Åであり、プラス側のデータとして、図13におけるNo.4の730Åが検出される。
【0088】
図13に示される予め取得したデータによると、デポ処理時間t1が90minで、膜厚c1は630Åになる。また、デポ処理時間tpが120minで、膜厚pcは730Åとなる。つまり、膜厚を730Åから630Åに−100Å変化させるには、
90min(t1)−120min(tp) = −30min
のデポ処理時間補正量が必要となる。
【0089】
例えば、現在のデポ処理時間が90min、測定結果から得られる膜厚が680Åの場合を例とする。
この場合、まず、現在のデポ処理時間に対応した膜厚を検索キーとして、検索キーからプラス側とマイナス側とで、それぞれ最も近い膜厚を記憶したデータを図13に示される予め測定された値から選択し、その選択されたデータから算出を行う。
以上から、
+1Å分のデポ処理時間補正量 = −30min / −100Å = +0.3min/Åが求められる。
つまり、
(c1−a1) = −50Å分補正したいので、
−50Å*(+0.3min/Å) = −15minのデポ処理時間補正量が算出される。
【0090】
以上で、ウエハ54の現在の膜厚をa1、及び現在のデポ処理時間t1に対応した膜厚c1のいずれか一方が他方よりも大きい場合におけるデポ処理時間補正量txについて説明をしたが、a1とc1とが同じ値である場合は補正の必要はない。
【0091】
また、以上で説明をしたデポ処理時間補正値の算出で、検出したプラス側あるいはマイナス側のデポ処理時間と、それに対応した膜厚と、現在のデポ処理時間t1及びそれに対応した膜厚c1の関係から、膜厚を1Å増加させるためのデポ処理時間補正量を求めているのは、膜厚によってデポレート、つまり膜の累積量は変化することが考えられるからである。
例えば、膜厚を580Åから630Åに+50Å変化させるためのデポ処理時間補正量と、630Åから680Åに+50Å変化させるためのデポ処理時間補正量とは、ヒータ58の素線からの輻射熱の変化、ウエハ54のエッジ部から反応管14への熱伝達、ウエハ54の中央部とウエハ54のエッジ部の熱伝達の関係が変化することによって、ウエハ54が受ける熱量が変化する為、必ずしも一致するとは限らない。
【0092】
そこで、この実施形態に係る半導体製造装置10では、より近い膜厚の変化状況からデポ処理時間補正量を算出する為、現在のデポ処理時間に対応した膜厚より、現在の膜厚が低い時は、マイナス側の膜厚及びデポ処理時間を用いてデポ処理時間補正量を算出し、現在のデポ処理時間に対応した膜厚より、現在の膜厚が高い時は、プラス側の膜厚及びデポ処理時間を用いてデポ処理時間補正量を算出している。
【0093】
次に本発明の第5の実施形態を説明する。
図16には、本発明の第5の実施形態に係る半導体製造装置10の構成が示されている。先述の実施形態においては、半導体製造装置10は、例えば、均熱管12と反応管14との間にウエハ54の積載方向に沿って延びる第2の熱電対64を1つ有し、この1つの熱電対を上方から下方にかけて分割し、この分割した領域に配置された熱電対64−1〜64−4を用いて制御を行っていた。これに対して、この第5の実施形態に係る半導体製造装置10では、ウエハ54の円周方向であって、均熱管12と反応管14との間にウエハ54の積載方向に沿って延びる複数の熱電対64a、64b、64c及び64dを配置する。この複数の熱電対64a〜64dを上方から下方にかけて分割し、この同じ高さ領域に配置された熱電対64a―1〜64d−1、64a―2〜64d−2、64a―3〜64d−3、64a―4〜64d−4から検出される温度をそれぞれ平均化した値が制御に用いられる。
【0094】
具体的には、図16に示されるように、例えば第2の熱電対64a−1、第2の熱電対64b−1、第2の熱電対64c−1、及び第2の熱電対64d−1からの出力が、制御部104が有する平均温度算出部108へと入力され、平均温度算出部108において、これらの平均値が算出され、この平均値が温度制御部106におけるPID演算部110へと出力され、PID演算部110の出力が、例えばヒータ58の制御等の制御に用いられる。
【0095】
すなわち、複数の第2の熱電対64a〜64dが検出した同じ高さの温度検出点による温度の平均化がなされ、あらかじめ設定された温度設定値の偏差が零となるようにPID制御することで、ウエハ54の円周部の制御がなされる。
【0096】
以上のようにウエハ54に円周方向に配置された複数の第2の熱電対64a〜64dが検出した同じ高さの温度検出点による温度を平均化し、温度制御することによって、ボート52が回転する際のウエハ54にエッジ部(外周部)近傍の温度を予測することが可能になり、ウエハ54のエッジ部をより適切な値で制御することが可能となる。
【0097】
すなわち、第5の実施形態に係る半導体製造装置10では、基板周縁部近傍に複数の温度検出部を有し、検出される温度を平均化した値を制御に用いることで、基板円周方向の温度差を軽減することができ、膜厚の再現性向上が見込まれる。
【0098】
なお、第5の実施形態に係る半導体製造装置10においては、第2の熱電対64を複数設ける例について説明したが、これに限らず、第1の熱電対62等の他の熱電対についても適用できる。
【0099】
なお、各実施形態に係る半導体製造装置10において、以上で特に説明をした構成以外の構成は、先述の本発明の適用される第1の実施形態と同一であるため説明を省略する。
【0100】
本発明によれば、反応炉上下方向の冷却性能の変動を検出し、その変動に応じて冷却ガス供給側の圧力値を制御することによって、特に成膜時に急冷機構を使用する場合に、ウエハ間の膜厚均一性や膜質の再現性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0101】
10 半導体製造装置
12 均熱管
14 反応管
16 供給管
18 排気管
20 導入部材
22 排気口
24 MFC
26 制御部(制御装置)
28 ガス流量制御部(ガス流量制御装置)
30 温度制御部(温度制御装置)
32 圧力制御部(圧力制御装置)
34 駆動制御部(駆動制御装置)
36 上位コントローラ
38 APC
40 圧力センサ
42 ベース
44 リング
46 シールキャップ
48 回転軸
50 石英キャップ
52 ボート
54 ウエハ
56 ボートエレベータ
58 ヒータ
60 温度検出部(温度検出装置)
62 第1の熱電対
64 第2の熱電対
66 第3の熱電対
68 中心部熱電対
70 天井部熱電対
72 吸気口
74 吸気管
76 冷却ガス吸気装置
78 制御弁
80 圧力センサ
82 排気部
84 冷却ガス排気装置
86 ラジエタ
90 シャッタ
92 圧力センサ
94 冷却ガス流量制御部(冷却ガス流量制御装置)
96 減算器
98 PID演算器
100 制御弁開度変換器
102 ウエハ中心部温度補正演算部(ウエハ中心部温度補正演算装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記処理室に収容された基板を基板の外周側から加熱する加熱装置と、
前記加熱装置と処理室との間に設けられた冷却ガス流路と、
前記冷却ガス流路に冷却ガスを流す冷却装置と、
前記加熱装置を上方から下方にかけて分割した領域の前記冷却ガス流路とそれぞれ連通し、前記冷却装置により前記冷却ガス流路へ冷却ガスを流す複数の冷却ガス吸気路と、
前記複数の冷却ガス吸気路にそれぞれ設けられた圧力検出器と、
前記圧力検出器が検出する圧力値に基づいて、前記冷却装置を制御する制御部と、
を有する熱処理装置、
【請求項2】
前記冷却ガス流路の下流側で、前記冷却ガス流路と連通する冷却ガス排気路をさらに有し、前記冷却ガス排気路には、圧力検出器が設けられ、前記圧力検出器が検出する圧力値に基づいて、前記加熱装置又は前記冷却装置の少なくとも一方が制御される請求項1記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、基板の周縁の状態を検出する第1検出部の測定値と、基板の中心部の状態を検出する第2検出部の測定値とを取得して、前記第1検出部の測定値と前記第2検出部の測定値との第1の偏差を求め、予め記憶された前記第1検出部の測定値と前記第2検出部の測定値との第2の偏差と、前記第1検出部の測定値と前記第2検出部の測定値との前記第1の偏差とを比較し、前記第2の偏差と、前記第1の偏差が異なる場合には、前記第1の偏差に基づいて、前記冷却ガス流路における圧力値の圧力補正値を算出し、該圧力補正値により前記圧力値を補正する請求項1又は2記載の熱処理装置。
【請求項4】
基板を処理する処理室内に収容された基板を加熱装置により基板の外周側から加熱する工程と、
前記加熱装置を上方から下方にかけて分割した領域にそれぞれ接続された複数の冷却ガス吸気路から前記加熱装置と前記処理室との間に設けられた冷却ガス流路へ冷却装置により冷却ガスを流し、前記基板の外周側を冷却する工程と、
前記複数の冷却ガス吸気路内の圧力値を圧力検出器により検出する工程と、
前記圧力検出器が検出する圧力値に基づいて、制御部により前記冷却装置を制御する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項5】
前記制御部は、基板の周縁の状態を検出する第1検出部の測定値と、基板の中心部の状態を検出する第2検出部の測定値とを取得して、前記第1検出部の測定値と前記第2検出部の測定値との第1の偏差を求め、予め記憶された前記第1検出部の測定値と前記第2検出部の測定値との第2の偏差と、前記第1検出部の測定値と前記第2検出部の測定値との前記第1の偏差とを比較し、前記第2の偏差と、前記第1の偏差が異なる場合には、前記第1の偏差に基づいて、前記冷却ガス流路における圧力値の圧力補正値を算出し、該圧力補正値により前記圧力値を補正する工程と、
前記処理室を前記加熱装置で加熱しつつ、前記冷却ガス流路内に冷却装置により冷却ガスを流し、前記補正後の圧力値に基づいて、前記制御部により前記加熱装置及び前記冷却装置を制御して基板を処理する工程と、
を有する請求項2記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−216854(P2011−216854A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6732(P2011−6732)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】