説明

熱処理装置

【課題】シリコンウェハの表裏に電極を設ける際の焼成工程に利用される熱処理装置を改良するものであり、焼成に際して理想的な温度プロファイルを実現する。
【解決手段】熱処理部を有しており、熱処理部は、断熱筐体内に棚状部材(設置部及び熱源部)11が設けられたものである。棚状部材11は、7段の棚部材16a〜16gを有し、棚部材16bの内部は、上下のユニット室25,26に仕切られている。上下のユニット室25,26には、それぞれ9本の横列用ハロゲンランプ27と、36本の縦列用ハロゲンランプ28が縦横格子状に配列されていて熱源ユニット35が構成されている。各熱源ユニット35の照度は、個々に制御され、上下の熱源ユニット群47の照度を異ならせたり、一つの段の上側の熱源ユニット35と、他の段の上側の熱源ユニット35の照度に変化を付けることもできる。また点灯中に照度を変えることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池を製造する際に使用する熱処理装置に関するものである。本発明の熱処理装置は、特に太陽電池の製造工程中、シリコンウェハの表面(表面又は裏面、あるいはその双方)に電極を設ける際の焼成工程に利用されることが推奨される。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素による地球温暖化現象が問題となっており、二酸化炭素を排出しない発電装置として太陽電池が注目されている。
代表的な太陽電池の層構成は図14の通りであり、太陽電池100は、シリコンウェハ101の表裏面に複数の電極102,103が設けられたものである。即ちシリコンウェハ101の表面側(受光面側)に表電極102が複数列に渡って設けられ、シリコンウェハ101の裏面側に裏電極103が複数列に渡って設けられている。
【0003】
ここで太陽電池の主体となるシリコンウェハ101は、例えばP型のシリコンウェハ120(図15)が素材として使用される。そしてシリコンウェハ120の表面側(受光面側)にはリンが拡散されて薄くN型半導体層105が形成されている。そのためシリコンウェハ101は、元のP型半導体部106と、その表面のN型半導体層105によってPN結合が構成されている。
またシリコンウェハ101の表面側には、TiO2 (二酸化チタン)の反射防止膜107が成膜されている。
そして前記した表電極102は、図14の様に、その基部が反射防止膜107を突き破ってシリコンウェハ101の表面に直接接している。
一方、シリコンウェハ101の裏面には、裏面電界層108が形成されている。
前記した裏電極103は、シリコンウェハ101の裏面に形成された裏面電界層108に接している。
【0004】
前記した表電極102及び裏電極103は、いずれも銀等の導電性材料を含んだペーストを焼成して作られたものである。
以下、太陽電池100の製造方法を図15を参照しつつ簡単に説明する。
最初の工程として、公知の手段によって素材としてのP型半導体たるシリコンウェハ120を準備する(図15a)。そして次の工程として、塗布拡散法等を利用してシリコンウェハ120の表面にN+(Nプラス)拡散を行い、N型半導体層105を形成する(図15b)。
より具体的には、シリコンウェハ120の表面にP2 5 (五酸化二リン)を塗布し、さらに熱処理してN型半導体層105を形成する(図15b)。
なおこの工程で、太陽電池の主体となるシリコンウェハ101ができる。
【0005】
続いてシリコンウェハ101の裏面にアルミペーストを塗布した後に熱処理を行い、P+裏面電界層108を形成する(図15c)。
【0006】
さらに続いてシリコンウェハ101の表面側に、TiO2 (二酸化チタン)の反射防止膜107を成膜する(図15d)。
【0007】
その後、銀を含むペースト110a,110bを、シリコンウェハ101の表面側及び裏面側に線状に塗布する。具体的には、印刷によってシリコンウェハ101の表面側に表電極用ペースト110aを置く。また印刷によってシリコンウェハ101の裏面側に裏電極用ペースト110bを置く(図15e)。
【0008】
そして電極用ペースト110a、110bを200°C(摂氏)程度の環境で乾燥する。実務上、この乾燥工程は、電極用ペースト110a,110bを印刷した直後に行う。そしてさらに続いて電極用ペースト110a,110bを焼成する。即ちシリコンウェハ101を加熱し、ペースト110a,110bを焼成して表電極102と裏電極103を形成する。
この焼成工程によって、表面側の表電極用ペースト110aは硬化し、その際に表電極用ペースト110aの基部が反射防止膜107を貫通してシリコンウェハ101の表面と接触する(図15f)。
その結果、表電極用ペースト110aの硬化物が、シリコンウェハ101から電気を取り出す表電極102となる。
【0009】
また焼成工程によって裏面側の裏電極用ペースト110bが硬化し、その際に裏電極用ペースト110bの基部が裏面電界層108と接触する。その結果、裏電極用ペースト110bの硬化物が、シリコンウェハ101から電気を取り出す裏電極103となる。
【0010】
ここで従来技術においては、ペースト110a,110bを焼成する工程は、特許文献1に開示された様に、コンベア装置121と赤外線ランプ122とが一体となったコンベア式焼成炉120を使用して行われていた。
ここでコンベア式焼成炉120とは、図16、図17の様に、コンベア装置121を有し、その走行面の上下に複数の赤外線ランプ122を並べたものである。
従来技術においては、図16、図17の様なコンベア式焼成炉120のコンベア装置121に、焼成を行おうとするシリコンウェハ101を載置し、コンベア装置121を一定の速度で走行させる。従来技術においては、赤外線ランプ122が配置されたエリアを通過する際にシリコンウェハ101が加熱され、ペースト110a,110bが焼成される。即ち従来技術においては、コンベア装置121に載置されて一定の距離を進む間に、ペースト110a,110bが焼成されて硬化する。そしてこの間に表電極用ペースト110aの基部が反射防止膜107を貫通し、表電極102がシリコンウェハ101の表面と接触する(図15f)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3933389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、太陽電池を製造する工程におけるペースト110a,110bの焼成は、ペースト110a,110bの温度を特有の温度プロファイルに基づいて変化させることが望ましい。
即ち上記した様に、表電極用ペースト110aは、焼成の際に反射防止膜107を貫通してシリコンウェハ101の表面と接触する。しかしながら、この様に表電極用ペースト110aを反射防止膜107に貫通させるためには、表電極用ペースト110aの温度を一気に高温領域まで立ち上げることが望ましい。また表電極用ペースト110aが高温領域にある時間は、短いことが望ましい。
即ち表電極用ペースト110aが長時間に渡って高温状態となると、シリコンウェハ101自体を傷つけてしまう。また表電極用ペースト110aが長時間に渡って高温状態となると、硬化後に形成される表電極102が酸化するといった不具合が懸念される。
【0013】
その一方で、表電極用ペースト110aを高温に昇温する前段階として、表電極用ペースト110aの揮発成分を十分除去して焼結させる必要がある。そのため表電極用ペースト110aは、中温に昇温し、この状態をしばらく保持しておくことが望ましい。
従って、表電極用ペースト110aを焼成するためには、最初に中温に表電極用ペースト110aを昇温させ、この状態を一定時間保持して、揮発成分を除去した後、一気に表電極用ペースト110aの温度を高温領域に立ち上げ、直ちに温度低下させることが望ましい。
しかしながら、図16に示すような従来技術のコンベア式焼成炉120では、この様な理想的な温度プロファイルを実現することができない。
即ちコンベア式焼成炉120では、炉内の温度は常に一定もしくはそれに近い状態であり、場所や時間によって温度変化をつけることが難しい。
またコンベア式焼成炉120で理想的な温度プロファイルを実現するためには、コンベアの全長がいたずらに長くならざるを得ない。
【0014】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題に注目し、装置を過度に大型化することなく、理想的な温度プロファイルを実現し、また温度プロファイルを任意に設定することができる熱処理装置の開発を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、太陽電池を製造する際に使用され、被加熱物を加熱する熱処理部を備えた熱処理装置において、前記熱処理部は、被加熱物を複数段に載置する設置部と、前記設置部の各段の上部又は下部の少なくとも一方に設置され、それぞれの被加熱物に輻射熱を照射する熱源部とを有し、前記熱源部は、複数段に分かれており各段に複数の熱源ランプが平面的に分布し、前記熱源部は被加熱物に対する輻射熱の照射量を熱処理中に増減することが可能であることを特徴とする熱処理装置である。
【0016】
本発明の熱処理装置は、シリコンウェハ等の被加熱物を設置部に載置して熱処理する。即ち本発明の熱処理装置は、被加熱物が静止した状態で熱処理を行う。そして本発明の熱処理装置では、被加熱物に対する輻射熱の照射量を熱処理中に増減することが可能である。そのためシリコンウェハを理想的な温度プロファイルにすることができる。
また本発明の熱処理装置は、複数の熱源ランプが平面的に分布しているので、被加熱物の温度ばらつきが小さく、被加熱物を均一に加熱することができる。
さらに本発明の熱処理装置では、被加熱物を複数段に載置することができ、複数段に置かれた被加熱物を並行して熱処理することができる。そのため本発明の熱処理装置は、処理能力が高く、逆にいえば、処理量のわりに全体形状が小さい。
【0017】
請求項2に記載の発明は、各段の熱源部は、熱源ユニットによって構成されており、各熱源ユニットに複数の熱源ランプが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置である。
【0018】
本発明の熱処理装置では、各段の熱源部は、熱源ユニットによって構成されている。そしてさらに各熱源ユニットに複数の熱源ランプが設けられている。そのため熱源ランプの出力バランスを調整し易く、被加熱物の各部の温度ばらつきを小さくすることができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、熱源部は、前記段ごと及び/又は各熱源ユニットごとに輻射熱の照射量を増減することができることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱処理装置である。
【0020】
本発明によると、各段又は各熱源ユニットが担当する被加熱物ごとに個別に熱処理を行うことができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、熱源部から被加熱物に対して低照射量で照射した後、被加熱物に対して高照射量で照射することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の熱処理装置である。
【0022】
本発明の熱処理装置によると、電極を形成するペーストを理想的な温度プロファイルで焼成することができる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、低照射量での照射時間よりも短い時間だけ高照射量で照射されることを特徴とする請求項4に記載の熱処理装置である。
【0024】
本発明の熱処理装置によると、ペーストを焼成する際の温度プロファイルをさらに理想に近づけることができる。
【0025】
熱源ランプは管状であり、当該熱源ランプは水平且つ並列的に並べられていることが望ましい。
【0026】
本構成によると、熱源ランプを密に配置することができる。
【0027】
熱処理装置には、熱処理部から被加熱物を出し入れする搬送装置を装備することが望ましく、搬送装置としては、例えば工業用ロボットを採用することができる。
【0028】
また設置部は各段にそれぞれ複数の被加熱物を載置可能であり、搬送装置は複数の被加熱物を同時に熱処理部から被加熱物を出し入れする構成としてもよい。
【0029】
本発明の熱処理装置では、複数の被加熱物を同時に熱処理部から出し入れすることができるから、一枚あたりのスループットが短い。
【0030】
さらに被加熱物を冷却する冷却棚を装備することが望ましい。
被加熱物を冷却する冷却棚を設けることにより、被加熱物を安全な温度に冷却した後に、次工程に送ることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の熱処理装置は、太陽電池を製造する際の熱処理工程において、理想的な温度プロファイルを実現することができる。そのため本発明の熱処理装置で処理され、作られることにより、太陽電池の変換効率等の性能を高めることが期待される。
また本発明の熱処理装置は、外形を過度に大きくする必要が無く、太陽電池の製造ラインを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態の熱処理装置の斜視図である。
【図2】図1の熱処理装置の熱処理部の正面図である。
【図3】図1の熱処理装置の熱処理部の棚状部材の正面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図3の棚状部材の一部であって、熱源部と設置部とシリコンウェハとの位置関係を示す斜視図である。
【図6】図5の棚状部材の一段の分解斜視図である。
【図7】図1の熱処理装置の搬送装置の斜視図である。
【図8】図7の搬送装置のアーム部にシリコンウェハを載置した状態を示す斜視図である。
【図9】図1の燃焼装置で処理されるシリコンウェハの温度プロファイルを示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施形態で採用する熱処理部の内部構造を示す説明図である。
【図11】図10の熱処理部の内部構造を示す斜視図である(棚部は図示せず)。
【図12】図10の熱処理部の要部の分解斜視図である。
【図13】(a)は図10の熱処理部内に設置される設置部の斜視図であり、(b)〜(f)は縦主梁と桟部材の断面図である。
【図14】太陽電池の断面図である。
【図15】太陽電池の製造工程を説明する説明図である。
【図16】特許文献1に開示された熱処理装置の断面図である。
【図17】特許文献1に開示された熱処理装置をコンベアの進行方向から観察した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態の熱処理装置1は、太陽電池を製造する際に使用されるものであり、より詳細には、シリコンウェハ101を被加熱物として、シリコンウェハ101上の表電極用ペースト110aと、裏電極用ペースト110bとを焼成して表電極102と裏電極103を形成させるものである。なお本実施形態で焼成しようとするシリコンウェハ101は、図5の様に略正方形である。
【0034】
実施形態の熱処理装置1は、図1の様に、熱処理部2と、プレ冷却棚3と、本冷却棚5と、搬送装置6と、台部材7及び排出装置8によって構成されている。
以下、順次説明する。
【0035】
熱処理部2は、図2の様に、直方体の断熱筐体10を有し、断熱筐体10内に棚状部材(設置部及び熱源部)11が設けられたものである。熱処理部2の断熱筐体10は、前記した様に直方体であり、周囲が図示しない断熱壁によって囲まれている。
また断熱筐体10の正面には、図2の様に3個の出し入れ口13a,b,cが設けられている。出し入れ口13a,b,cには、それぞれ開閉蓋15a,b,cが設けられている。開閉蓋15a,b,cには、図示しないエアーシリンダー等の駆動部が取り付けられており、所定の信号によって開閉する。
断熱筐体10には、図示しない排気ダクトが接続され、内部の換気を行うことができる。
【0036】
棚状部材11は、図3〜図6に示すように4本の柱部材12に7段の棚部材16a〜16gが支持されたものである。
7段の棚部材16a〜16gの内、二段目以下の棚部材16b〜16gは、シリコンウェハ101を載置する設置部としての機能と、シリコンウェハ101を加熱する熱源部としての機能を備えている。また最上段の棚部材16aは、シリコンウェハ101を加熱する熱源部としての機能のみを備える。
【0037】
前記した7段の棚部材16a〜16gの内、中間の5個の棚部材16b〜16fは、同一の構造であるから、代表して上から2段目の棚部材16bの構造を説明する。
棚部材16bの外観形状は、図5の様に略直方体をしている。即ち棚部材16bは、天板部17、底板部18及び4面の周壁部20を有している。
ここで天板部17、底板部18は透明なガラス板(望ましくは石英ガラス)で構成されており、光を透過することができる。
これに対して周壁部20は、剛性を確保するために鋼板で作られており、光を透過しない。
天板部17は、設置部としても機能するものであり、複数の支持ピン21が立設されている。支持ピン21は、ガラス等の透明な素材で作られている。支持ピン21は、2行8列に設けられている。支持ピン2は、図5の様にシリコンウェハ101の各4隅を支持するものであり、行間隔及び列間隔がシリコンウェハ101の大きさに合わせて設計されている。より具体的には、4本の支持ピン21に囲まれる空間33(図6)が4か所に形成されていおり、この空間33は、焼成しようとするシリコンウェハ101よりも僅かに小さい。
【0038】
棚部材16bの内部には、図6の様に、仕切り板22が設けられ、内部が図3、図6の様に上ユニット室25と、下ユニット室26に仕切られている。仕切り板22は、金メッキ加工された板であり、光を反射する。
また各ユニット室25,26の内壁も金メッキ加工されており、光を反射する。従って各ユニット室25,26の内面の内、天板部17又は底板部18を除く5面はすべて光を反射し、天板部17又は底板部18だけが光を透過する。
なお、熱により金メッキが劣化することを防止するために冷却することが望ましい。
【0039】
そして上ユニット室25と、下ユニット室26にそれぞれ複数のハロゲンランプ(熱源ランプ)27,28が設けられており、上ユニット室25及びハロゲンランプ(熱源ランプ)27,28で一つの熱源ユニット35bが構成され、下ユニット室26及びハロゲンランプ(熱源ランプ)27,28で他の熱源ユニット35cが構成されている。
【0040】
本実施形態で採用するハロゲンランプ(熱源ランプ)27,28は、いずれも長管状のランプであるが、長寸の横列用ハロゲンランプ27と、短寸の縦列用ハロゲンランプ28がある。
そしてそれぞれのユニット室25,26には、9本の横列用ハロゲンランプ27と、36本の縦列用ハロゲンランプ28が縦横格子状に配列されている。
より詳細には、仕切り板22に近い位置に、9本の横列用ハロゲンランプ27が並行に配されている。即ち横列用ハロゲンランプ27の全長は、ユニット室25,26の全長に匹敵する長さを有する。そして横列用ハロゲンランプ27は、並列的に並べられて一つの平面30を構成し、この平面30が仕切り板22や天板部17、底板部18と並行になる様に配列されている。即ち平面30が水平姿勢となる様に配置されている。
【0041】
一方、縦列用ハロゲンランプ28は、上下のユニット室25,26の幅に匹敵する長さを有する。縦列用ハロゲンランプ28は9本ずつが一組となって4組の平面31を形成している。即ち平面31が水平姿勢となる様に配置されている。
そして各平面31が、縦列ハロゲンランプ28と、天板部17又は底板部18の間に配されている。
各ユニット室25,26内においては、4組の平面31は同一の平面上にあるが、4組の平面31の間には隙間32が設けられている。
また各平面31の位置は、天板部17に設けられた支持ピン21の配列と対応しており、支持ピン21に囲まれる空間33の真下の位置に縦列ハロゲンランプ28の平面31がある。
【0042】
この様に各ユニット室25,26内には、ハロゲンランプ(熱源ランプ)27,28が平面的に配置されている。
そのためハロゲンランプ27,28が発光すると、棚部材16bの天板部17又は底板部18から外部に向かって輻射熱が照射される。また棚部材16bから照射される輻射熱の強度分布が一様になる様に、各ハロゲンランプ27,28の位置その他が微調整されている。
上下のユニット室25,26の内面は、天板部17又は底板部18を除いて光を反射するから、各ハロゲンランプ27,28の光は、天板部17側又は底板部18側に集光される。
【0043】
また7段の棚部材16a〜16gの内、最上段の棚部材16aは、中間部の棚部材16b〜16fの下半分だけの構造を有するものであると言える。
即ち最上段の棚部材16aは、下ユニット室26だけを有し、下ユニット室26に9本の横列ハロゲンランプ27と、36本の縦列ハロゲンランプ28が縦横格子状に配列されたものである。
従って最上段の棚部材16aでは、ハロゲンランプ27,28が発光すると、棚部材16aの底板部18から外部に向かって輻射熱が照射される。
【0044】
また7段の棚部材16a〜16gの内、最下段の棚部材16gは、中間部の棚部材16b〜16fの上半分だけの構造を有するものであると言える。
即ち最下段の棚部材16gは、上ユニット室25だけを有し、上ユニット室25に9本の横列ハロゲンランプ27と、36本の縦列ハロゲンランプ28が縦横格子状に配列されたものである。
従って最下段の棚部材16gでは、ハロゲンランプ27,28が発光すると、棚部材16gの天板部17から外部に向かって輻射熱が照射される。
【0045】
本実施形態の棚状部材(設置部及び熱源部)11は、天板部17の支持ピン21に、シリコンウェハ101を載置し、シリコンウェハ101に対して上下から輻射熱を照射できる様に設計されたものである。
より具体的には、本実施形態の棚状部材11は、4本の柱部材12に7段の棚部材16a〜16gをシリコンウェハ101を挿入するための間隔部36a〜36fを開けて支持されたものである。
【0046】
また前記した様に、中間部の棚部材16b〜16fは、それぞれ内部に二つの熱源ユニット35を有するから、本実施形態の棚状部材11は、12個の熱源ユニット35a〜35lを有し、これらが段状に配置されたものである。
各間隔部36a〜36fと、それぞれの棚部材16a〜16gの熱源ユニット35a〜35lとの関係を説明すると、最も上の間隔部36aの上下に、第1熱源ユニット35aと、第2熱源ユニット35bがある。また2段目の間隔部36bの上下に、第3熱源ユニット35cと、第4熱源ユニット35dがある。同様に、3段目の間隔部36cの上下に、第5熱源ユニット35eと、第6熱源ユニット35fがあり、4段目の間隔部36dの上下に、第7熱源ユニット35gと、第8熱源ユニット35hがある。さらに5段目の間隔部36eの上下に、第9熱源ユニット35iと、第10熱源ユニット35jがあり、6段目の間隔部36fの上下に、第11熱源ユニット35kと、第12熱源ユニット35lがある。
【0047】
また本実施形態では、各ユニット35の照度は、熱源ユニット35ごとに制御される。即ち熱源ユニット35ごとに輻射熱の照射量に強弱を付けることができ、各間隔部36a〜36fに対する上下の熱源ユニット35の照度を異ならせたり、間隔部36a〜36fのうち一つの段の熱源ユニット35と、他の段の熱源ユニット35の照度に変化を付けることもできる。また点灯中に照度を変えることもできる。
本実施形態では、各段毎にハロゲンランプ27,28の点灯・消灯や、照度の変更を行うことができるから、各段毎に温度プロファイルを調整して焼成処理を行うことができ、処理する時刻を段ごとにずらすことによってシリコンウェハ101を連続的に処理できる。
【0048】
熱処理部2は、前記した様に断熱筐体10と、棚状部材11によって構成されており、棚状部材11が断熱筐体10内に配置されたものである。また棚状部材11に設けられた6個の間隔部36a〜36fは、2個ずつの組に分かれて断熱筐体10の、3個の出し入れ口13a,b,cに対応している。
即ち間隔部36a,36bが出し入れ口13a及び開閉蓋15aに対応する位置にある。間隔部36c,36dが出し入れ口13b及び開閉蓋15bに対応する位置にあり、間隔部36e,36fが出し入れ口13c及び開閉蓋15cに対応する位置にある。
【0049】
次にプレ冷却棚3について説明する。
プレ冷却棚3は、図1の様な2段の棚である。プレ冷却棚3の前面には蓋はなく、棚の正面側は開放されている。
プレ冷却棚3には図示しない送風機が設けられており、棚に対して送風することができる。
【0050】
次に本冷却棚5について説明する。
本冷却棚5は、6段の棚である。本冷却棚5の前面には蓋はなく、棚の正面側は開放されている。
本冷却棚5には図示しない送風機と冷却装置が設けられており、棚に対して冷風を送風することができる。
【0051】
次に搬送装置6について説明する。
搬送装置6は、具体的にはシリコンウェハ101を載置する支持部材48a,48bを備えた搬送ロボット60である。搬送ロボット60は、図7の様に昇降・回転軸50と、前後移動部51及び機構部52を有し、昇降方向と、回転方向と、前後方向に自由度を持つ。
昇降・回転軸50は、機構部52の天面から垂直方向に突出しており、機構部52内の図示しない装置によって機構部52からの突出量を変化させることができる。即ち昇降・回転軸50は、図7の矢印A方向に昇降する。
【0052】
また昇降・回転軸50は、機構部52内の図示しない装置によって回転する。即ち昇降・回転軸50は、図7の矢印B方向に回転する。
【0053】
搬送ロボット60の前後移動部51は、昇降・回転軸50の上端に取り付けられており、上下2段のレール53a,53bを有している。そして当該レール53a,53bに直線駆動装置55a,55bが係合している。
直線駆動装置55a,55bは、内部に図示しないモータが内蔵されており、直線駆動装置55a,55bをレール53a,53bに沿って直線移動することができる。
【0054】
そのため、搬送ロボット60は、昇降方向(矢印A方向)と、回転方向(矢印B方向)と、前後方向(矢印C方向)に自由度を持つ。
【0055】
支持部材48a,48bは、幹部61と、枝部62と、小枝部63を有し、小枝部63の先端に「コ」の字状の載置部58が設けられたものである。
即ち幹部61は直線状であり、その先端が二股に分かれて枝部62を構成している。また枝部62から4本の小枝部63が分岐している。そして各小枝部63の先端に載置部58が取り付けられている。
本実施形態では、支持部材48a,48bを構成する幹部61と、枝部62と、小枝部63及び載置部58は、いずれも同一平面上にある。そして載置部58は、いずれも水平姿勢を保持している。
【0056】
台部材7は、熱処理部2の高さを調整するための台である。
排出装置8は、公知のコンベア装置であり、シリコンウェハ101を次工程に送るために使用されるものである。
【0057】
本実施形態の熱処理装置1を構成する各装置の配置レイアウトは、図1の通りである。即ち熱処理装置1は、搬送装置6を中心として、その正面に熱処理部2があり、その側面に本冷却棚5が配置されている。
また熱処理部2は台部材7に載置されており、プレ冷却棚3は、熱処理部2のさらに上に積み上げられている。
【0058】
次に、本実施形態の熱処理装置1の作用を、シリコンウェハ101の焼成を例にあげて説明する。
本実施形態の熱処理装置1は、シリコンウェハ101上の表電極用ペースト110aと、裏電極用ペースト110bとを焼成して表電極102と裏電極103を形成させる際に使用される。
焼成工程の最初の工程として、熱処理装置1の熱処理部2にシリコンウェハ101を収納する。なおシリコンウェハ101は、前工程で、シリコンウェハ101の表面側に表電極用ペースト110aが印刷され、シリコンウェハ101の裏面側に裏電極用ペースト110bが印刷されている。
【0059】
本実施形態では、熱処理部2にシリコンウェハ101を収納する作業は、搬送装置6が実行する。
即ち図示しないウェハ供給装置からシリコンウェハ101を受け取る。具体的には、搬送ロボット60の昇降・回転軸50を旋回して支持部材48a,48bをウェハ供給装置側に向け、図8の様に支持部材48a,48bの上にシリコンウェハ101を載置させる。本実施形態では、支持部材48a,48bは、「コ」の字状の載置部58を4個有しているので、一基の支持部材48a,48bに4個のシリコンウェハ101を載置することができる。即ち4個2段にシリコンウェハ101を載置することができ、合計8個のシリコンウェハ101を載置することができる。
【0060】
そして昇降・回転軸50を旋回して支持部材48a,48bを熱処理部2側に向け、昇降・回転軸50を昇降して支持部材48a,48bの高さを熱処理部2の出し入れ口13a〜13cのいずれかの高さに合わせる。
そして図示しないエアーシリンダー等の駆動部を動作させて熱処理部2の開閉蓋15a,b,cのいずれかを開く。その後、前後移動部51を動作させて支持部材48a,48bを前進し、シリコンウェハ101を載置した状態の支持部材48a,48bを断熱筐体10の中に挿入する。より具体的には、棚状部材11の棚部材16間に設けられた2個の間隔部36に支持部材48a,48bを挿入する。
【0061】
そして断熱筐体10の内部で支持部材48a,48bを降下させ、シリコンウェハ101を天板部17に設けられた支持ピン21に載置させる。
こうしてシリコンウェハ101を、支持部材48a,48bから熱処理部2内の天板部17のいずれかに受け渡す。
【0062】
なお本実施形態では、支持部材48aは、4個の載置部58を有し、この数は、空間33の数と同数であって天板部17に載置可能なシリコンウェハ101の数と同一であるから、各載置空間33に一度にシリコンウェハ101を満載することができる。
即ち本実施形態では、複数のシリコンウェハ101を同時に扱うことができ、一回の動作で一つの間隔部36にシリコンウェハ101を満載することができる。
【0063】
2個(一組)の間隔部36にシリコンウェハ101を満載すると、直ちに、間隔部36を照らす熱源ユニット35を点灯する。
例えば、最も上段の間隔部36aと二段目の間隔部36bにシリコンウェハ101を満載した場合は、上下の熱源ユニットたる第1熱源ユニット35a〜第4熱源ユニット35dを点灯させ、第1熱源ユニット35aと第2熱源ユニット36bによって第1段目の間隔部36aのシリコンウェハ101に輻射熱を照射して焼成を開始し、第3熱源ユニット35cと第4熱源ユニット36dによって第2段目の間隔部36bのシリコンウェハ101に輻射熱を照射して焼成を開始する。
また仮に第3段目と第4段目の間隔部36c,36dにシリコンウェハ101を満載した場合には、その上下の熱源ユニット群たる第5熱源ユニット35e〜第8熱源ユニット35hを点灯させてシリコンウェハ101を焼成する。
即ち第5熱源ユニット35eは、シリコンウェハ101の上にあって、下側から光を輻射するから、シリコンウェハ101の上面側を加熱することができる。
一方、第6熱源ユニット35fは、シリコンウェハ101の下にあって、光の照射面が上向きであるから、シリコンウェハ101の下面側を加熱することができる。
【0064】
また天板部(設置部)17の支持ピン21は、空間33を開けて設置されている。そしてシリコンウェハ101の中央部は、空間33の空間上に位置することとなるから、シリコンウェハ101の下側から照射される熱源ユニット35の光は、なんら妨げられることなくシリコンウェハ101に到達する。
さらにシリコンウェハ101を支えるのは支持ピン21であり、且つこの支持ピン21は透明であるから、シリコンウェハ101上に陰を作らない。
そのためシリコンウェハ101は、均等に加熱される。
【0065】
また特定の間隔部36で焼成が行われている際に、搬送装置6は、他の段(間隔部36)に対するシリコンウェハ101の供給を続ける。即ち本実施形態では、特定の段の間隔部36に載置されたシリコンウェハ101の焼成と、他の間隔部36にシリコンウェハ101を供給する作業とが同時並行的に実施される。
【0066】
シリコンウェハ101の焼成工程に説明を戻すと、シリコンウェハ101は、図9に示すような温度プロファイルに沿って昇温される。
即ち本実施形態で採用する熱源部は、照度が熱源ユニット35ごとに制御されており、熱源ユニット35ごとに自由に照度を変化させることができる。また熱源ユニット35の点灯中に照度を変えることもできる。
本実施形態で採用する熱処理装置1では、熱源ユニット35の照度が図9に示すような温度プロファイルに沿って変化する様にプログラムされており、シリコンウェハ101は、自動的にこの温度変化にさらされる。
より具体的には、熱源ユニット35から輻射される輻射熱(光量)が、グラフの様に変化する様、予めプログラムされている。
【0067】
本実施形態では、シリコンウェハ101が搬入されて暫くの間は、シリコンウェハ101の表面が表電極用ペースト110a及び裏電極用ペースト110bの焼結に適する温度となる様に制御される。より具体的には、摂氏300度から摂氏500度程度の中温領域となる様に制御され、この状態を一定時間維持する。
熱源ユニット35側から説明すると、シリコンウェハ101が搬入されて暫くの間は、少ない光量で発光し、照射する輻射熱が弱い。
そしてこの間のゆるやかな加熱によって、表電極用ペースト110a及び裏電極用ペースト110bが焼結する。また焼結に伴って表電極用ペースト110a及び裏電極用ペースト110bから揮発成分等のガスが放出されるが、当該ガスは、換気用のダクトによって排気される。
【0068】
そして一定の時間が経過すると、熱源ユニット35の照度を一気に上昇させ、表電極102を反射防止膜107に貫通させ、表電極102をシリコンウェハ101の表面と接触させる。
より具体的には、摂氏600度から摂氏950度程度の高温領域となる様にハロゲンランプ27,28の光量を制御し、所定の温度に至った後、直ちに熱源ユニット35のハロゲンランプ27,28を消灯する。
【0069】
ハロゲンランプ27,28が消灯すると、前記した搬送ロボット60を動作させ、支持部材48a,48bをシリコンウェハ101の下に挿入し、シリコンウェハ101をすくい上げると共に支持部材48a,48bを後退させて、シリコンウェハ101を熱処理部2から排出する。
そして排出されたシリコンウェハ101は、熱処理部2の上部に載置されたプレ冷却棚3に搬入され、一定の温度となるまで冷却される。
さらにプレ冷却棚3で冷却されたシリコンウェハ101は、搬送ロボット60によって本冷却棚5に移送され、常温まで冷却される。
常温まで冷却されたシリコンウェハ101は、搬送ロボット60によって排出装置8に載置され、次工程に送られる。
【0070】
なお搬送ロボット60によって焼成後のシリコンウェハ101を熱処理部2から排出している最中や、シリコンウェハ101が冷却されている最中、他の段(間隔部36)では、シリコンウェハ101の焼成が行われている。
また間隔部36のいずれかが空いた場合は、新たなシリコンウェハ101を搬入する。
こうして熱処理部2は、間隔部36a〜36fごとにシリコンウェハ101を焼成し、常にいずれかの間隔部36a〜36fで焼成作業を行う。そのため熱処理部2は、休むことなく焼成作業を行うことができる。
また搬送ロボット60についても、休むことなく稼働する。
そのため本実施形態の熱処理装置1は稼働率が高い。また本実施形態の熱処理装置1によると、シリコンウェハ101を適切な温度プロファイルで焼成することができるので、できあがったシリコンウェハ101の性能が高い。
【0071】
本実施形態の熱処理装置1によると、シリコンウェハ101を急速に昇温することができ、太陽電池セルの性能(バルクライフタイムや表面再結合速度等の改善)にも寄与できる。
【0072】
上記した実施形態では、長管状のランプを熱源として使用し、このランプを水平に配列して熱源ランプを平面的に分布させたが、短管あるいは球状、ラグビーボール状等の形状のランプを使用することもできる。即ち白熱電球の様な形のランプを使用することもできる。
以下、ラグビーボールの様な短管状のランプを使用した熱処理部70を第2実施形態として説明する。
図10〜図13は、短管状のランプを使用する場合の構成例を示すものである。
第2実施形態の熱処理部70は、前記した実施形態と同様に断熱筐体10を有し、その中に図13に示すような棚状の設置部74と、多数の熱源ユニット71が配されたものである。
設置部74は、図13に示すように鋼材等で直方体に枠組みされたものであり、4段の棚部72a〜72dを有するものである。棚部72a〜72dは、枠状であり、長方形の枠を構成する主梁73a〜73dと、主梁73b,73dにかけ渡された3本の桟部材73e〜73gによって構成されている。
そのため2本の縦主梁73a,73cと3本の桟部材73e〜73gの間にそれぞれ載置空間75a〜75dが形成されている。
各載置空間75a〜75dの大きさは、正方形のシリコンウェハ101を二個並べることができる大きさである。また前記した主梁73a〜73dと、主梁73b,73dにかけ渡された3本の桟部材73e〜73gには、図13(a)(b)(c)(d)(e)の様にそれぞれ支持ピン21が立設されている。
【0073】
熱源部12は、複数の段に分かれており、それぞれの段が図10、図11、図12の様に複数の熱源ユニット71によって構成されている。熱源ユニット71は、図12の様に、略正方形の本体箱76を有し、当該本体箱76の中に、短管状のハロゲンランプ(熱源ランプ)77が垂直姿勢で複数設置されたものである。本体箱76は、平面視が前記した様に略正方形であり、高さの低い箱体である。
本体箱76の大きさは、被加熱物たるシリコンウェハ101の大きさと略等しい。
本体箱76の一方の正方形の面は開放されている。当該面にガラス板が設けられていてもよい。
そして前記した本体箱76の中に、本実施形態では、9個のハロゲンランプ77が行列状に並べて配置されている。即ち本実施形態では、9個のハロゲンランプ77が平面的に配置されている。
そのためハロゲンランプ77が発光すると、本体箱76の開放部(またはガラス板)から外部に向かって輻射熱が照射される。また本体箱76から照射される輻射熱の強度分布が一様になる様に、各ハロゲンランプ77の位置その他が微調整されている。
【0074】
本実施形態の熱処理部70は、前記した棚部72a〜72dに対して上下から輻射熱を照射できる様に熱源ユニット71を配列したものである。
より具体的には、熱源ユニット71は、棚部72a〜72dを上下から照らすことができる様に、棚部72a〜72dの上面側と下面側に設けられ、いずれも前記開放部を棚部72側に向けて配置されている。
【0075】
また本実施形態では、棚部72に対して均等に輻射熱を照射することができる様に、棚部72a〜72dの格段の上下にそれぞれ8個ずつ、熱源ユニット71が設けられている(図10,図11)。
言い換えると、本実施形態では、8個の熱源ユニット71が同じ向きであって4行2列に配列されて一組の熱源ユニット群78を構成し、当該熱源ユニット群78がそれぞれ棚部72a〜72dの上下に、棚部72a〜72dと平行に配置されている。
【0076】
また本実施形態では、各ユニット71の照度は、熱源ユニット群78ごとに制御される。即ち熱源ユニット群78の輻射熱の照射量に強弱を付けることができ、上下の熱源ユニット群78の照度を異ならせたり、一つの段の上側の熱源ユニット群78と、他の段の上側の熱源ユニット群78の照度に変化を付けることもできる。また点灯中に照度を変えることもできる。
第2実施形態の熱処理部70を使用してのシリコンウェハ101の焼成作業は、先の実施形態と同一である。
【0077】
次に、本発明を実施するのに際して参考となる変形例や設計例を説明する。以下に説明する変形例等は、第1実施形態に基づいて説明するが、もちろん第2実施形態にも応用することができる。
以上の説明では、シリコンウェハ101を焼成する際の表裏面の温度差について触れなかったが、本実施形態の熱処理装置1では、熱源ユニット35ごとに照度を制御することができるから、シリコンウェハ101の表裏面に温度差を設けてもよい。
第1実施形態について説明すると、例えば、シリコンウェハ101の表電極102側を上にして最上部の間隔部36aに設置するのであれば、上部側の熱源ユニット35aの照度を下部側の熱源ユニット35bよりも高くしてもよい。
もちろん、下部側の熱源ユニット35bの方を高くしてもよい。
【0078】
また中程度の照度から高い照度に切り換えるタイミングを間隔部36の上下で異ならせてもよい。言い換えれば、シリコンウェハ101の表面側と裏面側を異なる温度プロファイルで焼成することもできる。
【0079】
温度プロファイルに沿って昇温させるための制御としては、実際のシリコンウェハ101の温度をセンサーによって検知する方法や、予め予備実験を行い、この実験データからシリコンウェハ101の温度と、照度及び時間の関係を得、そのデータに基づいて照度と照射時間を制御する方策によることも可能である。
【0080】
また上記した実施形態では、各間隔部36の上下に、熱源ユニット35を配置したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、一方だけに熱源ユニット35が設けられているものであってもよい。
【0081】
本実施形態では、熱源ユニット35の照度を熱源ユニット35ごとに変化させることができる構成を開示したが、さらに進んで、個々のシリコンウェハ101ごとに照度を変化することができる構成としてもよい。
ここで本実施形態では、縦列用ハロゲンランプ28で構成される平面31の位置及び大きさを焼成しようとするシリコンウェハ101の位置及び大きさと合致させているので、平面31ごとに照度を変化させることができる構成を採用するならば、シリコンウェハ101を一枚ずつ焼成することができることとなる。
また更に進んで、個々のハロゲンランプ27,28を一本ずつ、あるいは数本ずつ、照度調整できるものであってもよい。
【0082】
また前記した様に、本実施形態では、熱源ユニット35で4枚のシリコンウェハ101を焼成したが、本発明は、この構成に限定されるものではなく、一つの熱源ユニット35で1枚から3枚のシリコンウェハ101を焼成したり、4枚を越える数のシリコンウェハ101を焼成してもよい。逆に、複数の熱源ユニット35で一枚のシリコンウェハ101を焼成してもよい。
また本実施形態では、熱源部11を熱源ユニット35という長方形の最小単位に区切ったが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、縦列用ハロゲンランプ28で構成される略正方形の平面31に相当する大きさが最小単位であってもよい。
【0083】
また本実施形態では、熱源としてハロゲンランプ27,28を採用したが、他のランプであってもよい。例えば、キセノンランプや、その他の赤外線ランプを採用することもできる。
【0084】
上記した実施形態では、シリコンウェハ101を冷却する装置として、プレ冷却棚3と、本冷却棚5とを設けたが、いずれか一方だけでもよく、また全く冷却装置が無いものであってもよい。
特に熱処理部2の処理能力に対して搬送ロボット60の処理能力が低い場合は、プレ冷却棚3を廃し、熱処理部2から直接本冷却棚5にシリコンウェハ101を搬送することが望ましい場合もある。
【0085】
出し入れ口13a,b,cの数や形状、開閉蓋15a,b,cの数、形状、構造、間隔部36a〜36fの段数、奥行側に設置できるシリコンウェハ101の個数、幅方向に設置できる個数等は、設計事項であり、必要に応じて任意に決定することができる。
【0086】
上記した実施形態では、4個の支持ピン21で一枚のシリコンウェハ101を支持したが、支持ピン21の数は任意である。
また支持ピン21の形状は任意であり、針状のもの、棒状のもの、円錐や角錐状のもの、先端の丸いもの等が考えられる。
また支持ピン21に代わってバーでシリコンウェハ101の辺部を支持するものであってもよい。
【0087】
図9に示す温度プロファイルは、シリコンウェハ101を焼成する場合の一例を示すものに過ぎず、本発明は、この温度プロファイルに限定されるものではない。即ち他の温度プロファイルを実現するために本発明の熱処理装置を使用することもできる。
上記した本実施形態で採用する搬送装置6は、支持部材48a,48bを上下に2本有する工業用の搬送ロボット60であるが、支持部材48a,48bの数は任意であり、1本だけでもよく、3本以上であってもよい。また工業用ロボットよりも自由度の少ない搬送装置を使用することもできる。
上記した実施形態では、棚部材16の内部(ユニット室25,26の内壁)に金メッキ加工を施したものを例示したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、他の構成によって反射面を形成してもよい。また本発明は、反射面を有しないものを否定するものではない。
【符号の説明】
【0088】
1 熱処理装置
2 熱処理部
3 プレ冷却棚
5 本冷却棚
6 搬送装置
7 台部材
8 排出装置
10 断熱筐体
11 棚状部材(設置部及び熱源部)
17 天板部
18 底板部
21 支持ピン
27,28 ハロゲンランプ(熱源ランプ)
35 熱源ユニット
36 間隔部
48a,48b 支持部材
50 昇降・回転軸
51 前後移動部
60 搬送ロボット
70 熱処理部
71 熱源ユニット
77 ハロゲンランプ(熱源ランプ)
78 熱源ユニット群
101 シリコンウェハ
102 表電極
103 裏電極
110a 表電極用ペースト
110b 裏電極用ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池を製造する際に使用され、被加熱物を加熱する熱処理部を備えた熱処理装置において、前記熱処理部は、被加熱物を複数段に載置する設置部と、前記設置部の各段の上部又は下部の少なくとも一方に設置され、それぞれの被加熱物に輻射熱を照射する熱源部とを有し、前記熱源部は、複数段に分かれており各段に複数の熱源ランプが平面的に分布し、前記熱源部は被加熱物に対する輻射熱の照射量を熱処理中に増減することが可能であることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
各段の熱源部は、熱源ユニットによって構成されており、各熱源ユニットに複数の熱源ランプが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
熱源部は、前記段ごと及び/又は各熱源ユニットごとに輻射熱の照射量を増減することができることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
熱源部から被加熱物に対して低照射量で照射した後、被加熱物に対して高照射量で照射することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項5】
低照射量での照射時間よりも短い時間だけ高照射量で照射されることを特徴とする請求項4に記載の熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−84637(P2012−84637A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228405(P2010−228405)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】