説明

熱分解処理装置

【課題】可燃性の廃プラスチックなどの有機物処理材料を、高温で処理する熱分解炉内に安全かつ効率的に連続投入できるようにした熱分解処理装置を提供する。
【解決手段】廃プラスチックなどの有機物処理材料を熱分解炉11内に投入して熱分解処理し、熱分解ガスと残渣とを生成する熱分解処理装置で、内部にスクリュウフィーダ26が設けられ、このスクリュウフィーダ26の一端側が前記熱分解炉11を貫通して内部に突出する材料投入装置15を有する。この材料投入装置15の、熱分解炉11内以外の部分は外気に対して気密に封止されている。また、この材料投入装置15の他端側に、バルブ31,32を有する管路30を介して材料投入ホッパー29を連結し、有気物処理材料廃プラスチックを外気から遮断した状態で供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチック等の有機物処理材料を熱分解炉内に投入して熱分解処理し、熱分解ガスを生成する熱分解処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックの利用が増加するにつれ、廃棄されるプラスチック(以下、廃プラスチック)の量も膨大になり、埋立て処分場の不足、焼却による有害ガスの発生等、環境問題の一因になっている。そこで、このような廃プラスチックの有効活用を図り環境問題を改善する一つの手段として、廃プラスチックを熱分解処理し、熱分解ガスから油を生成して回収し、この回収油を燃料等、各種の用途に利用することが考えられている。そして、このような廃プラスチックを油化処理する装置に関して多くの提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このような廃プラスチックだけでなく、有機物処理材料としての、バイオマス(木材、汚泥、家畜糞尿、生ごみ等)についても、熱分解することにより油回収が可能であり、これらについても、熱分解処理による資源回収が広く行われるようになっている。
【特許文献1】特開2000−167833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような熱分解処理装置では、可燃性の廃プラスチックを含む有機物処理材料を高温で処理するため、取扱を充分に注意しないと、火災が発生したりするおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、有機物処理材料を、高温で処理する熱分解炉内に安全かつ効率的に連続投入できるようにした熱分解処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱分解処理装置は、有機物処理材料を熱分解炉内に投入して熱分解処理し、熱分解ガスを生成する熱分解処理装置であって、内部にスクリューフィーダが設けられ、このスクリューフィーダの一端側が前記熱分解炉を貫通してこの炉内部に突出し、熱分解炉内部以外の部分は外気に対して気密に構成された材料投入装置と、この材料投入装置の、前記熱分解炉外の端部側に、バルブを有する管路を介して連結し、前記有機物処理材料を外気から遮断した状態で前記材料投入装置に供給する材料投入ホッパーとを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明では、材料投入ホッパー内に不活性ガスを注入する不活性ガス注入装置を設け、この不活性ガスの注入により材料投入ホッパー内の酸素濃度を低下させるとよい。
【0008】
また、本発明では、材料投入ホッパー内に水蒸気を注入する水蒸気注入装置を設け、この水蒸気の注入により材料投入ホッパー内への燃焼熱の逆流を防止するようにしてもよい。
【0009】
また、本発明では、材料投入ホッパー内に酸素濃度センサーを設け、不活性ガス注入装置は、上記酸素濃度センサーの測定値により不活性ガス注入量を制御してもよい。
【0010】
また、本発明では、材料投入装置内に温度センサーを設け、その温度測定値によりスクリューフィーダの搬送速度を制御してもよい。
【0011】
また、本発明では、運転停止時、または緊急時には、材料投入装置に連結した管路に設けられたバルブを閉塞動作させ、材料供給を停止させる機能を有する。
【0012】
さらに、本発明では、有機物処理材料は、造粒減容化処理したものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可燃性の廃プラスチック等の有機物処理材料を、外気と遮断した状態で熱分解炉内に連続投入することができるので、火災発生などを確実に防止でき、安全性が向上すると共に、連続投入により処理効率を高く維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明による熱分解処理装置の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
図1は熱分解処理装置の主体となる熱分解炉11の構成を示している。この熱分解炉11は、内筒12及び外筒13からなる2重円筒構造となっており、内筒12は外部に設けられた駆動機構14により、その軸芯を中心として回転駆動される。内筒12内には、その一端(図示左端)に設けられた、詳細を後述する材料投入装置15により廃プラスチック等の有機物処理材料(以下、廃プラスチックとして説明する)が低酸素状態を保って投入される。
【0016】
ここで、内筒12は熱伝導性に優れた、例えばステンレスなどにより造られ、また、外筒13は断熱性に優れたセラミック材などの耐火材によって造られている。これら内筒12と外筒13との間は加熱用ジャケットとして用いられる。この加熱用ジャケット内には、図示しない大形バーナによる加熱装置により高温の加熱ガスが供給される。すなわち、外筒13には熱風入口17及び熱風出口18が形成され、これらは上述した大形バーナと連結して熱風循環路を構成し、加熱ジャケット内に高温ガスを供給している。
【0017】
内筒12内には、多数のセラミックボール19が設けられており、投入された廃プラスチックと混合接触することにより廃プラスチックの熱分解を促進し、効率化をはかっている。また、この内筒12内は環状の仕切り板20により、軸方向に沿って複数区画に区分されており、セラミックボール19が軸方向に流出しないように構成している。
【0018】
したがって、熱分解炉11の内筒12に連続投入される廃プラスチックは、内筒12の回転によりセラミックボール19と混合接触し、図示右方に移動しながら加熱ジャケットからの熱により加熱されて熱分解し、熱分解ガスと残渣とを生成する。
【0019】
ここで、投入される廃プラスチックとしては、造粒処理されたものが好ましい。すなわち、造粒処理により廃プラスチックの嵩密度を高めることにより熱分解処理効率を高めることができる。
【0020】
この熱分解炉11の図示右端には、ガス導出装置21がもうけられ、内筒12内で発生した熱分解ガスを外部に導出して図示しない熱分解ガスエジェクタに供給する。そして、この熱分解ガスエジェクタにより熱分解ガスは凝縮され、回収油となって図示しない回収油タンクに送られる。また、同じくこの熱分解炉11の図示右端下部には、この炉内で発生した粉末状の残渣を外部に排出させる残渣排出装置22が設けられている。
【0021】
前述した材料投入装置15は、筒状の外皮部材25を有し、この外皮部材25内にスクリューフィーダ26が設けられている。このスクリューフィーダ26は、2本のスクリューを互いに噛み合うように平行配置したもので、外部に設けられた駆動装置27により回転駆動される。この材料投入装置15の一端(図示右端)側は熱分解炉11を貫通して内筒12内部に突出している。また、この材料投入装置15の他端(図示左端)側には、後述する材料ホッパー29側と連結する材料入口28が設けられている。そして、これ以外の熱分解炉11外の部分は、外気に対して気密に構成されている。
【0022】
前記材料ホッパー29は、図2で示すように、材料投入装置15の図示左端部、すなわち、熱分解炉11の外側端部に設けられた材料入り口28に管路30を介して連結する。この管路30には、バルブ31,32が設けられている。すなわち、材料ホッパー29の直下にはロータリバルブ31が設けられ、中間部にはボールバルブ32が設けられている。これらの構成により、材料ホッパー29内の廃プラスチックを、外気から遮断した状態で材料投入装置15に供給する。
【0023】
この材料ホッパー29に対しては、その上流側に計量ホッパー34が配置され、ロータリバルブ35及び管路36を介して、外気に対し気密に連結している。さらに、この計量ホッパー34に対しては、図示しない上流工程、例えば、造粒工程からの材料搬送用コンベア37が設けられ、造粒処理された廃プラスチックが供給される。なお、この計量ホッパー34内には、図示しないがロードセルのような計量装置が設けられており、貯留量を計量できるように構成している。
【0024】
前記材料ホッパー29には、廃プラスチックの貯留レベルを検出するセンサー39H,39L,39LLが設けられている。センサー39Hは、材料ホッパー29内における廃プラスチックの貯留レベルが高レベルであることを検出するもので、その検出信号により、前記材料搬送用コンベア37の駆動モータ38を停止制御する。また、センサー39Lは、材料ホッパー29内における廃プラスチックの貯留レベルが低レベルであることを検出するもので、その検出信号により、前記材料搬送用コンベア37の駆動モータ38を起動制御する。さらに、センサー39LLは、材料ホッパー29内における廃プラスチックの貯留レベルが下限レベルであることを検出するもので、その検出信号により、管路30に設けたボールバルブ32を閉操作し、材料ホッパー29から材料供給装置15への廃プラスチック供給を停止させる。
【0025】
41は不活性ガス注入装置で、タンク42に貯留された不活性ガス、例えば窒素を、バルブ43を介して管路44により材料投入ホッパー29内に注入し、材料投入ホッパー29内の酸素濃度を低下させる。また、この不活性ガス注入装置41は、分岐管路45を介して管路30にも連結しており、この管路30を通して材料供給装置15へも不活性ガスを供給している。
【0026】
ここで、前記材料投入ホッパー29に対しては、その内部の酸素濃度を測定するセンサー47設けている。不活性ガス注入装置41は、この酸素濃度センサー47の測定値により不活性ガス注入量を制御する。すなわち、材料投入ホッパー29内の酸素濃度が高ければ不活性ガスの注入量を増やすべくバルブ43の開度を増大させる。また、このセンサー47により測定された材料投入ホッパー29内の酸素濃度により材料投入装置15の搬送速度を制御してもよい。すなわち、材料投入ホッパー29内の酸素濃度が高い場合は、駆動装置27を制御してスクリューフィーダ26の速度を低下させ、材料投入ホッパー29内の酸素濃度が低下するまで、燃焼炉11への廃プラスチック投入量を減少させ、酸素過多による発火を防止することができる。
【0027】
また、材料投入装置15内に温度センサー48を設け、その温度測定値によりスクリューフィーダ26の搬送速度を制御し、熱分解炉11への廃プラスチック投入量を制御するようにしてもよい。
【0028】
さらに、管路30に設けたボールバルブ32は、前述のように、材料ホッパー29内における廃プラスチックの貯留レベルが下限レベルである場合、閉操作され、材料ホッパー29から材料供給装置15への廃プラスチック供給を停止させる。この他、運転停止時や、緊急時にも、このボールバルブ32を閉操作し、材料ホッパー29から材料供給装置15への廃プラスチック供給を停止させるようにしてもよい。
【0029】
上記構成において、図示しない造粒工程で造粒処理された廃プラスチックはコンベア37により計量ホッパー34内に搬送され計量される。その後、ロータリバルブ35、管路36を通って材料ホッパー29内に外気と遮断された状態で送られ、貯留される。このとき、材料ホッパー29内は、不活性ガス供給装置41から供給される不活性ガス(以下、窒素として説明する)により低酸素状態となっている。
【0030】
材料ホッパー29内に貯留された廃プラスチックは、ロータリバルブ31及びボールバルブ32を通って、管路30により材料投入装置15に供給される。材料投入装置15は、スクリューコンベア26により、供給された廃プラスチックを、外気と遮断され、低酸素状態を保って熱分解炉11の内筒12内に投入する。
【0031】
熱分解炉11内に投入された廃プラスチックは、内筒12の回転により、内筒12内のセラミックボール19と混合接触し、加熱ジャケットからの熱を効率よく伝達され、図示右方へ移動しながら熱分解され熱分解ガスと残渣を生成する。熱分解ガスは、ガス導出装置21により外部に導出され、図示しない熱分解ガスエジェクタにより凝縮され、回収油となって図示しない回収油タンクに送られる。また、粉末状の残渣は残渣排出装置22により外部に排出される。
【0032】
ここで、材料ホッパー29内に貯留された廃プラスチックは、窒素ガスの供給により、低酸素状態を保ち、かつロータリバルブ31,35などにより外気と遮断された状態で、熱分解炉内に連続投入されるので、酸素が熱分解炉に浸入して発火が生じるようなことはない。
【0033】
なお、不活性ガス注入装置41に代って水蒸気注入装置を設け、材料投入ホッパー29内に水蒸気を注入してもよい。この水蒸気の注入により、材料投入ホッパー29内を低酸素状態に保つと共に、熱分解炉11側からの材料投入ホッパー29内への燃焼熱の逆流を防止することも可能になる。
【0034】
また、運転終了時や緊急時には、管路30に設けられボールバルブ32を閉操作することにより燃料供給管路が遮断されるので、熱分解炉11内の熱気が、何らかの原因により材料ホッパー29側に逆流することを確実に阻止できる。これらの結果、熱分解処理装置としての安全性が格段に向上する。さらに、廃プラスチックは熱分解炉内に連続投入されるため、熱分解処理が連続処理となり、処理効率が向上する。
【0035】
なお、上記説明では、有機物処理材料として廃プラスチックを対象としているが、前述のようにバイオマス(木材、汚泥、家畜糞尿、生ごみ等)についても、熱分解処理することにより熱分解ガスと残渣とが得られるので、廃プラスチックと同等に取り扱って熱分解処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による熱分解処理装置の一実施の形態を、熱分解炉を中心として示す部分破断斜視図である。
【図2】同上実施の形態における有機物処理材料の供給部分を示すシステム系統図である。
【符号の説明】
【0037】
11 熱分解炉
15 材料投入装置
25 筒体
26 スクリューフィーダ
29 材料ホッパー
30 管路
31,32 バルブ
41 不活性ガス供給装置
47 酸素濃度センサー
48 温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物処理材料を熱分解炉内に投入して熱分解処理し、熱分解ガスを生成する熱分解処理装置であって、
内部にスクリューフィーダが設けられ、このスクリューフィーダの一端側が前記熱分解炉を貫通してこの炉内部に突出し、熱分解炉内部以外の部分は外気に対して気密に構成された材料投入装置と、
この材料投入装置の、前記熱分解炉外の端部側に、バルブを有する管路を介して連結し、前記有機物処理材料を外気から遮断した状態で前記材料投入装置に供給する材料投入ホッパーと
を備えたことを特徴とする熱分解処理装置。
【請求項2】
材料投入ホッパー内に不活性ガスを注入する不活性ガス注入装置を設け、この不活性ガスの注入により材料投入ホッパー内の酸素濃度を低下させることを特徴とする請求項1に記載の熱分解処理装置。
【請求項3】
材料投入ホッパー内に水蒸気を注入する水蒸気注入装置を設け、この水蒸気の注入により材料投入ホッパー内への燃焼熱の逆流を防止することを特徴とする請求項1に記載の熱分解処理装置。
【請求項4】
材料投入ホッパー内に酸素濃度センサーを設け、不活性ガス注入装置は、上記酸素濃度センサーの測定値により不活性ガス注入量を制御することを特徴とする請求項2に記載の熱分解処理装置。
【請求項5】
材料投入装置内に温度センサーを設け、その温度測定値によりスクリューフィーダの搬送速度を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の熱分解処理装置。
【請求項6】
運転停止時、または緊急時には、材料投入装置に連結した管路に設けられたバルブを閉塞動作させ、材料供給を停止させる機能を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱分解処理装置。
【請求項7】
有機物処理材料は、造粒減容化処理したものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の熱分解処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−332222(P2007−332222A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163889(P2006−163889)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】