説明

熱制御システムを備えた塗布装置

【課題】基板上に制御可能に一貫して材料を塗布できるように、塗布装置の温度を制御するための、改良された熱制御システムを備える塗布装置を求める要望がある。
【解決手段】熱制御条件下において基板上に材料を塗布する装置であって、かかる装置は、内部空間を画定し、開口部を有してなる、囲み部材と、オリフィスを備えて基板上に材料を塗布できる塗布装置を備える。塗布装置は内部空間の中に配置され、開口部は、オリフィスを囲み部材の外部環境に連通する。装置はさらに、囲み部材に機能上結合され、前記内部空間を加熱及び冷却するための熱制御装置を具備する。熱制御装置は、加圧ガス源に結合されるべく適合してなる入口を備えた渦巻管と、内部空間に連通して内部空間に低温ガスを送り届けるような低温ガス出口と、内部空間に連通して内部空間に高温ガスを送り届けるような高温ガス出口とを備えている。渦巻管からの低温ガス及び高温ガスは、塗布装置の温度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には材料の塗布工程に関し、より詳しくは材料塗布工程において温度を制御するための熱制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
材料を塗布する工程は、電子組立、電子機械組立、及び機械組立など広範囲の産業用途において一般的に使用されている。多くの用途、限定せずに例示すれば、グリース、潤滑剤、インク、シーラント、エポキシ、接着剤、半田ペースト、シアノアクリレート、下地材、封止材、熱化合物、及びその他の液体及び半液体の材料などの組立用の流体を、制御されて一貫したやり方で、基板やワークピースに塗布することが求められる。材料の温度が変動したり及び/又は運転温度が最適でなかったりすると、一般に、塗布工程中に問題点が生じる。
【0003】
例えば、材料の粘性は材料の重要な特性であって、塗布工程の全体的な品質と一貫性とに対してかなり影響する。一般的に、粘性は温度に依存し、代表的には温度に反比例する。従って、運転温度が高くなると材料の粘性は低くなり、温度が低くなれば粘性は高くなる。多くの塗布装置において、所望の量の材料を基板上に塗布するためには、通例、圧力を利用している。例えば、理想運転温度を仮定し、例えば既知の量の材料が基板上に塗布されるような放出圧力を決定することにより、これを行うことができる。例えば、もしも実際の運転温度が理想温度に比べて高いならば、材料の粘性は想定値よりも小さくなるので、結果的に、望ましい量よりも多くの材料が基板上に塗布されることになる。他方において、実際の運転温度が理想温度に比べて低いならば、材料の粘性は想定値よりも高くなるので、結果的に、望ましい量よりも少ない材料が基板上に塗布されることになる。実際の運転温度がわずか1〜2℃でも変動すると、塗布工程の一貫性に対して著しい変化が生じる。この程度の変化は、塗布工程が行われる環境の温度変化によって、しばしば起こることである。例えば、製造設備の温度は、1日のうちで変化する傾向があって、夜間の室温は低く、昼間には温まって、このことが、実際の運転温度を変化させて塗布工程に影響する。
【0004】
粘性の変動に加えて、温度変動及び/又は非理想的な運転温度は、時期尚早な材料の劣化の原因になる。例えば、適温から極端な温度に変動すると、ある種のエポキシや接着剤、又はその他の硬化性材料は硬化を開始する。さらに、複合組成材料における1又は複数の成分、例えば半田ペーストに含まれる金属粒子などは、かかる条件においては溶液から漏れ始める。これらの及びその他の理由のために、塗布工程の温度を制御して維持することは望ましい。
【0005】
材料塗布工程における温度を制御しようとして、いくつかの方法が用いられて来た。例えば、製造業者は、しばしば、製造領域全体に空調を行い、または、特定の機器に対して空調を行っている。しかしながら、建物全体に空調を設けることは、購入、維持、及び運転に費用がかかると共に、建物と、塗布装置が局在する領域、つまり照明やモータ、コンピュータ、換気扇など発熱するコンポーネントが存する領域との間に、実質的に温度変化をもたらす。また、建物用の空調ユニットは、温度変化に対する応答が遅くて、おそらく、局所的な温度に影響を与えるまでには数時間を要する。電子産業における現在の流行は、機器部分の全体を所定の設定温度に保つべくデザインされた、大型で高価な熱制御装置に向かっている。しかしながら、これらの装置は、購入、維持、及び運転に費用がかかると共に、相当な床面積を占有する。温度的に制御される空間が比較的大きくなると、こうした熱制御装置もまた、機械内の温度変化に関する応答が遅くなる。
【0006】
点熱源を用いたいくつかの加熱又は冷却装置も当業者に知られている。例えば、ペルチェ式の熱電子装置は、コンピュータやチップなどの電子要素を冷却するために使用されて来た。このため、ペルチェ素子は、代表的に部品の支持面に直接結合され、熱伝導を介して部品を加熱し又は冷却する。しかしながら、これらの装置にはいくつかの不都合があって、それらには、囲みをあつらえ品としたりや設定が必要であることや、部品にわたって熱制御が不規則になることなどがある。さらに、ペルチェ素子と部品とを直接結合するならば、保守や修理のための組立及び分解作業には、費用と時間とがかかることになる。
【0007】
その他の加熱及び冷却システムとしては、水を用いるシステムなどが知られている。これらのシステムは普通は好ましくなく、というのは、システム内に水が存在又はその他の液体が存在することは、万一の漏れの場合に危険がある。さらに、水を用いるシステムは、ヒートシンク(例えばフィンのまわりに空気を吹き付けるファン)を必要とし、しかも利用可能な冷却量は制約される。さらに、これらの装置は、あつらえ品としての設定を必要とし、運転及び維持には費用がかかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、基板上に制御可能に一貫して材料を塗布できるように、塗布装置の温度を制御するための、改良された熱制御システムを備える塗布装置を求める要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によって提供されるのは、熱制御条件下において基板上に材料を塗布する装置である。かかる装置は、内部空間を画定し、開口部を有する囲み部材と、オリフィスを備えて基板上に材料を塗布できる塗布装置とを具備する。塗布装置は囲み部材の内部空間の中に配置され、開口部は、オリフィスを囲み部材の外部環境に連通させるようになっている。装置はさらに、囲み部材に機能上結合されて、囲み部材の内部空間を加熱及び冷却するための熱制御装置を具備する。熱制御装置は、加圧ガス源から低温及び高温のガス流れを発生させるような渦巻管を具備している。渦巻管は、加圧ガス源に結合されているようになっている入口と、内部空間に連通して内部空間に低温ガスを送り届けるようになっている低温ガス出口と、内部空間に連通して該内部空間に高温ガスを送り届けるべくようになっている高温ガス出口とを備える。渦巻管からの低温ガス及び高温ガスは、塗布装置の温度を制御するようになっている。
【0010】
熱制御ユニットは、囲み部材の内部空間へのガス流を制御すべく、追加的なコンポーネントを備えることもできる。例えば、低温ガス出口と高温ガス出口とのうち少なくともひとつには出口バルブを結合してもよい。出口バルブは、低温ガス出口及び/又は高温ガス出口を通って囲み部材の内部空間へと送り届けられるガスの流れを変化させる機能をもつ。ひとつの実施形態においては、第1の出口バルブは低温ガス出口に結合され、第2の出口バルブは高温ガス出口に結合される。第1及び第2の出口バルブは、例えば、ソレノイドバルブであって、低温ガス又は高温ガスを囲み部材の内部空間へと、または、囲み部材の外部環境へと導く。熱制御ユニットは出口バルブを動作させるべく、出口バルブに機能上結合されてなる制御装置であって、内部空間へのガスの流れを制御する制御装置を備える。渦巻管の入口には入口バルブが結合されていて、渦巻管へ送り届けられるガス流を変化させる。制御装置は、入口バルブに機能上結合されており、渦巻管へのガスの流れを制御する。制御装置に機能上結合されてなる温度検出装置は、塗布装置に関連付けられた温度を制御装置へと伝達する。
【0011】
上述した装置は、材料塗布工程における熱制御に用いられる。このため、塗布装置は、囲み部材の内部空間の中に配置される。塗布装置はオリフィスを備え、基板上に材料を塗布できるものである。運転中には、塗布装置に関連付けられた温度を、温度検出装置が測定する。測定された温度に基づき、渦巻管から低温ガス又は高温ガスのうちの少なくともひとつが、囲み部材の内部空間へと送り届けられて、塗布装置を冷却又は加熱する。このため、本発明の例示的な実施形態においては、望ましい運転温度が制御装置に記憶されている。望ましい運転温度は、単一の所望の温度であるか、所望の温度範囲である。例えば、制御装置は、ユーザが手動で、望ましい運転温度を入力できる入力装置を備えても良い。ひとつの運転モードにおいては、囲み部材の内部空間には低温ガスが送り届けられる。塗布装置に関連付けられた測定温度が望ましい運転温度を下回ったときには、低温ガスの流れを遮断して、高温ガスの流れを起動し、囲み部材の内部空間に高温ガスを送り届ける。塗布装置に関連付けられた測定温度が望ましい運転温度を上回ったときには、高温ガスの流れを遮断して、低温ガスの流れを起動し、囲み部材の内部空間に低温ガスを送り届ける。これらの段階を繰り返すことによって、材料塗布工程の温度は実質的に望ましい運転温度に維持される。
【0012】
本発明の別の実施形態においては、塗布装置のための熱制御システムは、オリフィスを備え、基板上に材料を塗布できる。熱制御システムは、塗布装置を収容すべき内部空間を形成する囲み部材を具備し、オリフィスを囲み部材の外部環境に連通させるべく適合している開口部を備える。このため、熱制御システムはさらに、囲み部材に機能上結合されてなる熱制御装置を具備し、囲み部材の内部空間に加熱及び冷却を提供する。熱制御装置は、加圧ガス源から低温ガス及び高温ガスの流れを発生させる渦巻管を具備する。渦巻管は加圧ガス源に結合されるようになっている入口と、内部空間に連通して該内部空間に低温ガスを送り届けるべくようになっている低温ガス出口と、内部空間に連通して該内部空間に高温ガスを送り届けるようになっている高温ガス出口とを備える。
【0013】
本発明のさらに別の実施形態においては、塗布装置を収容している囲み部材に加熱及び冷却を提供するようになっている熱制御装置を提供する。熱制御装置は、加圧ガス源から低温ガス及び高温ガスの流れを発生させるための渦巻管を具備している。渦巻管は加圧ガス源に結合されるようになっている入口と、内部空間に連通して該内部空間に低温ガスを送り届けるべくようになっている低温ガス出口と、内部空間に連通して該内部空間に高温ガスを送り届けるようになっている高温ガス出口とを備える。また、熱制御装置は、低温ガス出口及び/又は高温ガス出口のうちの少なくともひとつに結合されてなる出口バルブを具備し、低温ガス出口及び/又は高温ガス出口を介して、囲み部材に届けるガスの流れを変化させる。制御装置は、出口バルブに機能上結合されていて、出口バルブを動作させ、囲み部材へのガスの流れを制御する。装置は、制御装置に機能上結合されてなる温度検出装置を備え、塗布装置に関連付けられた温度を前記制御装置へと伝達する。
【0014】
本発明のこれらの及びその他の目的及び利点については、添付図面を参照しつつ以下の詳細な説明を読むことで当業者にさらに明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1及び図2に示すように、材料塗布工程では一般に、塗布装置10を具備し、該塗布装置は、オリフィス12に対し隣接し又は離間して配置される基板16上に材料14を塗布できるオリフィス12を有する。本発明は、特定のタイプの塗布装置に限定されるわけではないが、例示的な目的のために、吐出バルブ18を備えた塗布装置10を図1に示し、吐出シリンダ20を備えた装置を図2に示している。しかしながら、当業者にあっては、これらとは異なるが、本発明に使用できる、塗布装置を認識するだろう。例えば、カートリッジ式や、チューブ式、印刷工程用の封止頭部、及びその他の当業者に公知である塗布装置は、本発明においても用いることができる。さらに、本願において「塗布」とは、一般的に液体や半液体状の材料を基板上に配置することを意味し、材料をどのようにして配置ないし塗布するかによって制限されることはない。例えば、塗料の塗布、吐出、印刷、及びその他の工程を用いた塗布は、本発明の範囲に含まれる。さらに、「吐出」には、ビードの塗布、ドット塗布、スプレー吹付、ジェット噴射、及びその他のタイプの吐出が含まれる。
【0016】
図1には例示的な吐出バルブ18を示していて、吐出器本体22と、材料の入口24と、出口26と、材料14の流れを導くことができるように、材料の入口24と出口26との間に設けられた流路28とを具備している。流路28は、出口26の近くにバルブ座30を備えている。バルブ軸32は、吐出器本体22の中に取り付けられていて、往復運動するものである。バルブ軸32は、ボール34などのバルブ要素を具備していて、かかる要素がバルブ座30と協働することで、吐出バルブ18から材料14を選択的に放出する。特に、バルブ軸32は開状態と閉状態との間を往復運動する。開状態においては、ボール34はバルブ座30から係脱し、両者の間に隙間が形成されて、材料14が出口26から放出されるようになる。閉状態においては、ボール34はバルブ座30に係合し、材料14が出口26から放出されることを防ぐ。従って、バルブ軸32を開状態と閉状態との間において移動させると、吐出バルブ18からの材料の放出が制御される。オリフィス12を画定しているバルブノズル33は、出口26の近くにおいて、吐出バルブ18に結合され、基板16に塗布される前の材料14の流れを導く。
【0017】
吐出バルブ18はさらに、バルブ軸32に機能上結合されてなるアクチュータを備え、バルブ軸32を開状態と閉状態との間にて動かして、材料14を出口26から選択的に放出させる。例示的な実施形態においては、アクチュータは、バルブ軸32の端部に結合されてなるピストン36を備え、該ピストンは空気通路38の中に配置され、ピストン36の底面は空気通路38を閉じて、ピストンシール40によって封止する。空気入口42を介して空気通路38に加圧空気が導入されると、ピストン36が動き、バルブ軸32を上方へ動かして、バルブ座30との係合状態を係脱させて、材料を出口26から放出する。また、アクチュータは、戻りバネ式の機構を具備し、機能上はバルブ軸32に結合されていて、ピストン36を付勢し、バルブ軸32を押し下げて、バルブ座30に係合させる。このため、空気通路40の圧力が解放されると、バネ44が下向きの力を働かせて、ボール34をバルブ座30に係合させて、出口26から材料が流れることを防ぐ。アクチュータの構造については、当業者は別の構造を用いても良いことを認識するだろう。例えば、戻りバネ式の機構に代えて、または、かかる機構に加えて、ピストンの両側に通路を備えてなる複動式のピストンを用いても良い。変形例としては、電気式のアクチュータを用いることで、バルブ軸32を開状態と閉状態との間にて選択的に動かしても良い。
【0018】
本発明は、上述した吐出バルブに限定されるものではなく、当業者は理解できるであろうが、別のタイプの塗布バルブを用い、異なるやり方にて、材料を基板上に塗布することもできる。例えば、半田ペーストなど、高い粘性をもった材料の塗布に用いる塗布バルブについては、回転オーガを用いて、基板上に材料を塗布しても良い。これらの装置は、本発明の範囲に包含されるものと考えられる。様々な塗布バルブは、ロードアイランドのイーストプロヴィデンスにあるEFD社から、例えば同社の販売する、例えば740Vシリーズ、725Dシリーズ、752Vシリーズ、及び790シリーズのバルブとして、商業的に入手可能である。
【0019】
図2に示すように、塗布装置10の変形例としては、吐出シリンジ20の形態を採用することができる。吐出シリンジ20は一般的に、管状であるシリンジのバレル46を具備し、その内部はシリンジ20から放出されるべき材料14のためのリザーバ48として機能するようになっている。シリンジのバレル46の第1の端部50には、ネジなどの結合部材が設けられ、オリフィスを画定しているシリンジの先端部52を、第1の端部50に結合できるようにしている。特定の用途及びユーザの要望に応じて、広範囲のシリンジ・チップを第1の端部50に結合することができる。吐出シリンジ20はさらに、バレル46の第2の端部に隣接するプランジャー54を具備している。プランジャー54は、リザーバ48の内部にある材料14に作用して、シリンジの先端部52から基板16上へと材料を放出させる。プランジャー54は、様々なやり方で動作させることができる。例えば、プランジャー54に軸(図示せず)を結合し、これを第2の端部56から延ばして、ユーザが、手動で軸とプランジャー54とを押し下げて、材料14を放出させても良い。変形例としては、図2に模式的に示す如く、バレル46の第2の端部56を加圧ガス源58に結合して、圧縮空気がプランジャー54を動作させても良い。制御装置60は、ガス供給源58に接続されて、加圧ガスを制御し、もってシリンジ20から材料の制御された吐出を行う。吐出シリンジシステムについては、ロードアイランドのイーストプロヴィデンスにあるEFD社から、例えば同社の販売する、例えばUltra(登録商標)2400シリーズや、Ultra(登録商標)1400シリーズの吐出装置として、商業的に入手可能である。EFD社は、これら以外にも広範囲のシリンジ20とシリンジ・チップ54を販売している。
【0020】
本発明によれば、材料塗布工程の温度を制御するための熱制御システム62は、囲み部材64と、囲み部材64に機能上結合されて囲み部材64を加熱及び冷却するような熱制御ユニット66とを具備している。囲み部材64は内部空間68を画定し、その中には塗布装置、つまり吐出バルブ18や吐出シリンジ20が収容される。ある種の塗布装置10においては、塗布装置10に例えば入口24を介して材料を供給する材料供給源69は、好ましくは囲み部材64の内部に配置され、適当な配管を介して塗布装置10に結合される。例示としては、材料供給源69はシリンジや、圧力ポット、又はその他のコンテナ容器であって、塗布装置10のためのリザーバとして機能する。望ましくは、囲み部材64は二重壁のチャンバになっていて、内側壁70と、外側壁72と、内側壁70と外側壁72との間に断熱ギャップ74を備えている。断熱ギャップ74は好ましくは、空気又はその他の適切なガスで満たされているか、あるいは、2枚の壁の間は真空にされているか、あるいは、別の低熱伝導率の材料によって満たされている。囲み部材64における二重壁の構造は、外部環境との間での熱の出入りの移動を防ぎ、もって塗布工程を行う温度の環境をより良く制御する。しかしながら、本発明はかかる構成に限定されるものではなく、単一壁の構造もまた、本発明において使用することができる。
【0021】
例示的な実施形態においては、囲み部材64は、透明な素材、つまりプレキシガラスや、透明なPVC、又はその他の構造的に安定した素材から作られる。このようにして、オペレータは、囲み部材64の内部に設置した塗布装置10を視認観察することができ、塗布装置10を適切に設定し運転することを容易にする。さらに、少なくとも吐出シリンジ20に関しては、囲み部材64が透明であることによって、オペレータはリザーバ48の内部にある材料14の量を視認することができ、材料が無くなる前にリザーバ48への補充を行うことができる。ある種の用途において有利である場合には、囲み部材の素材には処理を施して、静電防止や遮光能力などの特性をもたせても良い。当業者は理解するであろうが、材料塗布工程に用いられる特定の塗布装置10に応じて、特定の形状及びサイズをもった囲み部材64が使用される。しかしながら、一般的には、囲み部材64の形状は塗布装置10の形状に対して相補的になっていて、塗布装置10のまわりを必要に応じて充分に加熱及び冷却できるように空間76が設けられる。例えば、囲み部材64は塗布装置10のまわりに、充分にガスが流れられる空間76を提供することによって、熱制御の要求条件を満足する。
【0022】
囲み部材64は、低温ガス入口ポート78と高温ガス入口ポート80とを具備し、これらはそれぞれ囲み部材64の内部空間68に連通していて、詳しくは後述される熱制御ユニット66から、それぞれ低温ガスと高温ガスとを受け入れる。囲み部材64はさらに、塗布装置10に作動空気を届けるための作動空気入口ポート82を具備している。当業者は理解するだろうが、囲み部材64はこれら以外にも、特定の塗布装置10に適合するための入口又は出口を具備している。例えば、手動操作式の吐出シリンジの場合には、囲み部材はプランジャーの軸を囲み部材64の外部にまで延在させるための開口部を有することになる。さらに、材料供給源69が囲み部材64の外部に配置される場合には、吐出バルブ18のために、囲み部材64は材料を入口24に届けるための開口部を具備することになる。
【0023】
塗布装置10は、オリフィス12、つまりシリンジ先端部52の出口や、バルブノズル33の出口を基板に対して間隔を隔てた関係において、材料を基板16上に塗布できるように具備している。このために、囲み部材64は、開口部84を具備していて、塗布装置10のオリフィス12を囲み部材64の外部環境に連通させている。例えば、オリフィス12は、囲み部材64の内部に配置して、開口部84を介して、材料14を基板16上に塗布しても良い。変形例としては、図1及び図2に示すように、バルブノズル33の端部部分やシリンジ先端部52からなるオリフィス12を、開口部84に延通させて、材料14を基板16上に塗布しても良い。当業者は認識するだろうが、材料14を基板16上に塗布するための開口部84を得るには、広範囲の塗布装置/囲み部材の構造によることができる。
【0024】
図3に詳細に示すように、材料塗布工程における熱制御は、熱制御ユニット66を用いて行われ、該装置は囲み部材64に操作可能に結合され(図3に模式的に示している)、囲み部材64の内部空間68を加熱し及び冷却する。とりわけ、熱制御ユニット66は、低温ガス及び高温ガスの流れを囲み部材64へと流し、もって塗布装置10を所望の運転温度に維持する。本願にいう所望の運転温度とは、例えば70゜Fといった単一の温度であるか、あるいは、65〜72゜Fといった温度範囲である。例えば、ある種の用途にあっては、塗布装置10を単一の温度値に保つことが求められる一方、別の用途にあっては温度範囲が望ましい。いずれの事例も本発明の概念に含まれ、「所望の/望ましい運転温度」とは両方の可能性を包含する意味である。
【0025】
囲み部材64の内部空間68に低温ガス及び高温ガスの両方を提供するため、熱制御ユニット66は、符号86にて示した渦巻管を備えている。渦巻管は長く使用されていて、当業者には一般的に知られている。従って、本願においては簡潔に述べるにとどめる。渦巻管は、その入口に圧縮ガスを受け入れ、かかる入口は、渦巻管本体に対して、斜めに配置されている。圧縮ガスは管本体に角度をもって流入し、一端部へ向かって急速に螺旋回転する。ガスに生じる急速な螺旋回転(例えばおよそ百万回転/分)の結果、管内には螺旋流が発生し、回転ガスの内側部分が膨張して、回転ガスの外側部分を圧縮する。従って、外側領域のガスは、回転する内側領域のガスから熱を取得する。管体の一端部には、高温である外側領域のガスだけを取り出す開口部が設けられ、もって高温ガス出口流れを得る。管体の他端部には、低温である内側領域のガスだけを取り出す開口部が設けられ、もって低温ガス出口流れを得る。商業的に入手可能である渦巻管においては、低温側については−55゜Fの温度、高温側については265゜Fの温度が得られ、かかる温度は、ほとんどの産業用途において充分に望ましい運転温度の範囲内である。本発明において利用可能な、そうした渦巻管は、オハイオ州フェアフィールドにあるMax Air社から入手することができる。
【0026】
このために、熱制御ユニット66は、ハウジング88の内部に渦巻管86を収容して具備している。渦巻管86は、その入口90を加圧ガス供給源92に結合されており、この加圧ガス供給源は、例えば、加圧ガスタンクや圧縮機、加圧ガス供給管、又はその他の当業者に周知である加圧ガス供給源である。本発明においては、渦巻管86と共に加圧空気を用いることを想定しているけれども、空気以外のガスも本発明においては使用することができる。渦巻管86に送り届けられるガスは、少なくともおよそ30psi以上の圧力であり、好ましくはおよそ100psiの圧力である。しかしながら、本発明にあっては、特定の用途と温度の要求条件とに依存して、広範囲のガス圧力が用いられることを当業者は認識するだろう。ハウジング88が備えているガス供給ポート94は、適切なコネクタと配管とを介して、ガス供給源92に接続されるように適合している。ガス供給ポート94と入口90とは、入口配管96を経由して接続される。
【0027】
渦巻管86はさらに、渦巻管86で発生させた低温ガスと高温ガスとを受けるために、低温ガス出口98と、高温ガス出口100とをそれぞれ具備している。ハウジング88は、配管104を介して低温ガス出口98に結合された低温ガスポート102と、配管108を介して高温ガス出口100に結合された高温ガスポート106とを具備している。低温ガスポート102と高温ガスポート106とはそれぞれ、低温ガス入口78と高温ガス入口80とに接続されるようになっていて、低温ガス出口98と高温ガス出口100とは囲み部材64の内部空間68に連通して低温ガス及び高温ガスを提供する。例えば、所定長さの配管110,112が、低温及び高温のガス流を熱制御ユニット66から囲み部材64へと導く。当業者は認識するだろうが、低温ガスと高温ガスとに関連した配管は(すなわち配管104,108,110,112)、好ましくは、伝熱性の低いプラスチック材料から作ると良いが、様々な材料から作ることはできる。さらに、配管には断熱材を取り付けて、ガス流に出入りする熱伝達を少なくする。さらに、熱制御ユニット66の内部要素は、熱伝達率の低いプラスチックで作られるが、これに限定されるものではない。
【0028】
材料塗布工程の熱制御をするために、渦巻管86からの高温ガス及び/又は低温ガスの流れを制御して、囲み部材64の内部空間68に送り届けることが必要になる。このために、熱制御ユニット66は、低温ガス出口98又は高温ガス出口のうちの少なくともひとつに結合された出口バルブを備える。こうして、出口バルブが動作して、関連する低温ガス出口98及び/又は高温ガス出口100を介して囲み部材64へ送り届けられる低温ガス及び/又は高温ガス流れを変化させる。例えば、図3に示すように、熱制御ユニット66は、低温ガス出口98に結合されてなる第1のバルブ114を具備し、これは低温ガス出口98と低温ガスポート102との間の配管104に設けられている。第1のバルブ114は、囲み部材64の内部空間68へ送り届けられる低温ガスの流れを変化させる機能をもつ。同様にして、熱制御ユニット66は、高温ガス出口100に結合されてなる第2のバルブ116を具備し、これは高温ガス出口100と高温ガスポート106との間の配管108に設けられている。第2のバルブ116は、囲み部材64の内部空間68へ送り届けられる高温ガスの流れを変化させる機能をもつ。当業者は認識するだろうが、本発明にあって、囲み部材64への低温ガス及び/又は高温ガスの流れを変化させるには、広範囲のバルブ構造を採用することができる。例えば、低温ガス出口98および高温ガス出口100のいずれか一方だけ、又は両方に、ひとつだけのバルブを結合しても良い。こうした変形例は、本発明の範囲に包含されると考えられる。
【0029】
例としては、図3に示すように、第1及び第2のバルブ114,116はソレノイドバルブであって、ガス供給位置と排出位置との間において可動ないし作動可能になっている。このため、バルブ114に関して見ると、バルブ114は、単一のバルブ入口114aと、2つのバルブ出口114b及び114cとを有している。バルブ114がガス供給位置にあるとき、バルブ入口114aはバルブ出口114bに連通しており、このバルブ出口114bは低温ガスポート102に結合されている。バルブ114が排出位置にあるとき、バルブ入口114aはバルブ出口114cに連通しており、このバルブ出口114cは、ハウジング88に設けられた低温ガス排出ポート118に結合される。低温ガス排出ポート118は、囲み部材64の内部空間68とは連通していなくて、低温ガスを囲み部材64の外部環境へと放散する。バルブ116も同様なやり方にて動作する。従って、バルブ116がガス供給位置にあるとき、バルブ入口116aはバルブ出口116bに連通しており、このバルブ出口116bは高温ガスポート106に結合されている。バルブ116が排出位置にあるとき、バルブ入口116aはバルブ出口116cに連通しており、このバルブ出口116cは、ハウジング88に設けられた高温ガス排出ポート120に結合される。高温ガス排出ポート120は、囲み部材64の内部空間68とは連通していなくて、高温ガスを囲み部材64の外部環境へと放散する。本発明は、ソレノイドバルブに限定されるものではなく、当業者に知られているその他のバルブもまた、本発明において用いることができる。
【0030】
熱制御ユニット66はさらに、出口バルブに、または図3に示す如く、第1及び第2のバルブ114及び116に、機能上結合された制御装置122を備える。制御装置122は、第1のバルブ114と第2のバルブ116とを動作させて、囲み部材64の内部空間68へのガスの流れを制御する。特に、制御装置122は、第1のバルブ114と第2のバルブ116とを動作させるべく構成されており、塗布装置10を望ましい運転温度に保つものである。例えば、制御装置122は、デジタル式のコントローラであって、電源124に電気的に接続されていると共に、さらに適当な電気配線を介して電気的にバルブ114及び116に接続されている。ハウジング88は、例えば、電源124に結合させるのに適した電気アダプタ126を具備する。そして、アダプタ126は、適当な配線を介して、制御装置122に電気的に接続される。制御装置122は、リレー128へと信号を送出するが、リレーはソリッド・ステート・リレーやその他の当業者に公知であるスイッチなどであり、リレーは第1及び第2のバルブ114及び116へと信号を送出して、バルブ114及び116をガス供給位置と排出位置との間において動作させる。当業者は認識するだろうが、制御装置122は、デジタル式のコントローラとこれに関連して上述した電気回路に限定されるものではなく、出口バルブを動作させられる限り、あらゆるタイプの制御装置を用いることができる。
【0031】
例示的な実施形態においては、オペレータは、制御装置122によって、塗布装置10を維持すべき温度又は温度範囲つまり望ましい運転温度を入力する。このために、制御装置122は、キーパッド130などの入力装置を具備していて、オペレータが望ましい運転温度を入力できるようになっている。制御装置122はまた、LDE表示装置(図示せず)などの出力装置を具備し、望ましい運転温度をオペレータに対して表示する。
【0032】
例示的な実施形態においては、熱制御ユニット66はさらに、制御装置122に機能上結合されてなる温度検出装置132を備え、塗布装置10に関連付けられた温度を制御装置122へと伝達する。このように、制御装置122は第1及び第2のバルブ114及び116を動作させて、塗布装置10を望ましい運転温度に保つ。例えば、ハウジング88は、温度検出ソケット134を具備し、これを適当な配線を介して、制御装置122に接続する。温度検出装置132の片端は、熱電対や、サーミスタ、温度抵抗素子、赤外線パイロメータ、又はその他の公知の装置であって、ソケット134を介して接続され、他端は塗布装置10に関連した温度を測定すべく配置されている。制御装置122は、塗布装置10に関連して測定された温度をLED表示装置に表示するように構成されている。
【0033】
ひとつの例としては、例えば、温度検出装置132は、塗布装置10に直接結合させても良い。その場合、測定された温度は、塗布装置10の実際の温度になる。別の例としては、温度検出装置132は、塗布装置10と囲み部材の内壁70との間の空間に配置しても良い。測定される温度は、塗布装置10の実際の温度ではないけれども、測定された温度は、塗布装置10の実際の温度と関連をもち相関する。さらに別の例としては、温度検出装置132は、ブロックなどの模擬部材136を囲み部材64の内部に配置して、これに結合し、塗布装置10には接触させなくても良い。模擬部材136は、熱的な特性が塗布装置10と実質的に同一であるような、温度特性をもつように構成されている。例えば、模擬部材136は、塗布装置10と同一の材料から作ると良い。こうして、模擬部材136について測定された温度は、塗布装置10の温度と同一又は類似の温度になる。上述した非接触方法、つまりガス温度や代用品の温度を測定する方法は、囲み部材64を塗布装置10のまわりに配置するのが、迅速かつ簡便で、さしたる組立や分解を伴わないという点において有利である。いずれにしても、塗布装置10に関連がある温度を用いて、塗布装置10の実際の温度を見積もって、それにより、塗布装置10の温度を制御する。当業者は認識するだろうが、本発明においては、塗布装置10に関連を有するその他の温度を用いても良い。
【0034】
使用に際しては、上述した熱制御ユニット66を用いて、塗布装置10を望ましい運転温度に維持する。このため、塗布装置10のまわりには囲み部材64が配置されている。次に、熱制御ユニット66を配管110及び112を介して囲み部材64に結合させる。温度検出装置132を囲み部材64の内部に配置し、塗布装置10に関連した温度を測定するようにする。オペレータは、キーパッド130を操作して、望ましい運転温度を制御装置122に入力する。次に、渦巻管86を始動させるべく、渦巻管86を加圧ガス供給源92に結合することによって、低温ガスと高温ガスの流れを発生させる。第1のバルブ114と第2のバルブ116との動作としては、いくつかの異なるやり方が想定される。例えば、例示的な実施形態においては、第1のバルブ114についての初期設定の位置はガス供給位置になっていて、このため、低温ガスを囲み部材64へと送り届けるが、他方において、第2のバルブ116についての初期設定の位置は排出位置になっていて、このため、囲み部材64の外部の周辺環境に高温ガスは放出される。従って、デフォルト位置においては、高温ガスはまったく用いず、低温ガスだけを囲み部材64の内部空間68に導くようになっている。この特定の構成は、望ましい運転温度が、室温付近であるか又はおよそ70゜Fである場合には有利であろう。
【0035】
もしも、温度検出装置132によって測定された温度が望ましい運転温度を下回った場合には、制御装置122はリレー128及び第1のバルブ114に対して信号を送出し、囲み部材64への低温ガスの流れを遮断すべく、第1のバルブ114を排出位置とし、低温ガスを周辺環境へと放出する。同時に、制御装置122はリレー128及び第2のバルブ116に対して信号を送出し、囲み部材64へ高温ガスの流れを導くべく、第2のバルブ116をガス供給位置とし、高温ガスを囲み部材64へと送り届ける。この状態が継続するのは、塗布装置10に関連するとして測定された温度が望ましい運転温度を越えるまでである。この状態になると、制御装置122はリレー128及び第2のバルブ116に対して信号を送出し、囲み部材64への高温ガスの流れを遮断すべく、第2のバルブ116を排出位置へと動作させる。同時に、制御装置122はリレー128及び第1のバルブ114に対して信号を送出し、囲み部材64へ低温ガスの流れを導くべく、第1のバルブ114をガス供給位置へと動作させる。これらの段階を繰り返して、関連する測定によって判断された、望ましい運転温度に塗布装置10を維持する。
【0036】
本発明の上述した実施形態においては、低温ガスを囲み部材64に導くか、あるいは、高温ガスを囲み部材64に導くかによっており、低温ガスと高温ガスとが一緒に用いられる場合はない。上述のように、望ましい運転温度がおよそ70゜Fであるとき、この構成は有利である。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成も可能である。例えば、望ましい運転温度が比較的高い場合には、常に囲み部材64へ高温ガスを導き、測定された温度が望ましい運転温度を上回ったときに低温ガスを(高温ガスと併せて)導入するような構成が有利である。変形例として、望ましい運転温度が比較的低い場合には、常に囲み部材64へ低温ガスを導き、測定された温度が望ましい運転温度を下回ったときに高温ガスを(低温ガスと併せて)導入するような構成が有利である。上述した例示的な実施形態と類似している他の変形例としては、囲み部材64へ高温ガスを導く状態を初期設定として、測定された温度が望ましい運転温度を越えたときに、高温ガスを止めて、(高温ガスは導入せずに)低温ガスだけを導くと良い。測定された温度が望ましい運転温度を下回ったときには、低温ガスを止めて、(低温ガスは導入せずに)高温ガスだけを導く。従って、当業者は認識するだろうが、囲み部材64へ低温ガス及び/又は高温ガスを導くための構成には多くがあり、それらは本発明の範囲に包含される。
【0037】
熱制御ユニット66はさらに、安全及び/又は便利な特許をユーザに提供すべく、多数の慣例的な特徴を具備している。例えば、熱制御ユニット66は、電源スイッチ138を、電気アダプタ126と制御装置122との間に介在させて有している。制御装置122と第1及び第2のバルブ114及び116とは電気的に動作するソレノイドバルブであるから、オペレータはまず、熱制御ユニット66を起動した後、これを用いて材料塗布工程の制御に用いる。熱制御ユニット66はさらに、手動バルブ140を具備し、加圧ガス供給源92に結合されたとき、渦巻管86が必ずしも動作しないようにする。従って、オペレータが意図的にバルブ140を開くことで、渦巻管86は低温及び高温ガスの流れを発生するようになる。
【0038】
本発明の別の実施形態においては、上述した手動バルブ140の概念と類似させて、入口90とガス供給ポート94との間に設けた配管96のように、渦巻管86への入口90を入口バルブ142と結合し、渦巻管86へ届けられるガス流を変化させるように操作できるようにする。入口バルブ142は、制御装置122に操作可能に結合されていて、渦巻管86へのガス流を制御するために制御装置122でバルブ142を動作させることもできる。本質的には、入口バルブ142は渦巻管86をオン/オフする。入口バルブ142がオンであるとき、渦巻管86へガスが流れて、低温ガスと高温ガスのガス流が発生する。入口バルブ142がオフであるとき、渦巻管86へのガス流れは妨げられて、低温ガスや高温ガスの流れは発生しない。例えば、塗布装置10を望ましい運転温度に保つのに、極めて少ない熱量の制御が必要とされる場合には、入口バルブ142は有利である。入口バルブ142がなければ、渦巻管86は常に低温のガス流及び高温のガス流を発生させるので、おそらく、第1のバルブ114と第2のバルブ116とは不要なサイクル動作を繰り返し、関連するガス流れを消磁させるだろう。入口バルブ142があれば、熱制御を行う必要がない時には、制御装置122は本質的に、渦巻管86を停止させることになる。
【0039】
本願において図示して説明した本発明は、既存の熱制御システムには見られない、多数の利点を提供する。例えば、本発明によって提供される囲み部材64は、塗布装置10だけを取り囲み包囲するものであり、多くの従来の熱制御システムの如く、機械全体や、あるいは建物全体の熱制御をするものではない。従って、熱制御は局所的なものになり、このため、本発明はコスト効率的になるのみならず、迅速な温度応答が得られることになり、例えば望ましい運転温度に対して±0.5゜Fといった、狭い公差内に塗布装置10を保つことが可能になる。渦巻管をベースとする熱制御ユニット66は、小型でコンパクトなモジュールユニットであり、広範囲の所望の運転温度について、吐出バルブ18や吐出シリンジ20など、広範囲の塗布装置10と併用することができる。例えば、非限定的に例示すれば、グリース、潤滑剤、インク、シーラント、エポキシ、接着剤、半田ペースト、シアノアクリレート、下地材、封止材、熱化合物、及びその他の液体及び半液体の材料などの組立用の流体は、およそ50〜100゜Fの理想塗布温度をもつ。そうした温度範囲に限定はされないけれども、本発明は容易にそうした温度範囲に適合することができる。簡単に言えば、熱制御システム62は、最小限の空間をもった囲み部材64の内部において、可動部品の少ない熱制御ユニット66を用いて、塗布装置10の加熱及び冷却を行い、運転及び維持のコストを安価にするもので、塗布装置10を望ましい運転温度に保つ上で極めて効果的なシステムである。
【0040】
本発明による様々な実施形態を例示して、充分に詳細であると考えられる程度に開示したけれども、特許請求の範囲をそうした詳細に限定することをなんら意図したものではない。追加的な利点や変形例は当業者にとって明らかである。本発明の様々な特徴は、ユーザのニーズや好みに応じて、単独で、または、様々に組み合わせて、用いることができる。
この明細書の一部を構成するものとして組み入れられた添付図面は、本発明の実施形態を例示しているものであって、前述した発明の概要、並びに詳細な説明と併せて、好ましい実施形態についての詳細を説明する上で役に立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による例示的な実施形態であって、塗布装置は吐出バルブの形態になっている図である。
【図2】本発明による例示的な実施形態であって、塗布装置が吐出シリンジの形態になっている図である。
【図3】本発明の例示的な実施形態による熱制御装置を示している図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱制御条件下において基板上に材料を塗布する装置であって、この装置が、
内部空間を画定し、開口部を有する囲み部材と、
オリフィスを有し、該基板上に材料を塗布可能な塗布装置であって、該内部空間の中に配置され、該開口部は前記オリフィスを該囲み部材の外部環境に連通させるようになっている塗布装置と、
該囲み部材に動作可能に結合され、該内部空間を加熱しまたは冷却するような熱制御ユニットであって、加圧ガス源から低温のガス流れまたは高温のガス流れを発生させるような渦巻管を備え、該渦巻管は加圧ガス源に結合されるようになっている入口と、該内部空間に連通して該内部空間に低温ガスを送り届けるようになっている低温ガス出口と、前記内部空間に連通して該内部空間に高温ガスを送り届けるようになっている高温ガス出口とを備え、前記渦巻管からの低温ガスまたは高温ガスは、前記塗布装置の温度を制御するようになっている熱制御装置とを備えていることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、さらに、前記塗布装置は液体を放出するように動作かのうな吐出装置を備えていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、さらに、前記吐出装置は、吐出バルブと吐出シリンジとからなるグループから選択されていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、さらに、
前記低温ガス出口と高温ガス出口との少なくともひとつに結合される出口バルブを備え、該出口バルブは、前記低温ガス出口と高温ガス出口との少なくともひとつを通って前記内部空間へ送り届けられるガスの流れを変化させるように操作可能であることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって、さらに、
前記低温ガス出口に結合され、前記内部空間へ送り届けられる低温ガスの流れを変化させるように操作可能な第1の出口バルブと、
前記高温ガス出口に結合され、前記内部空間へ送り届けられる高温ガスの流れを変化させるように操作可能な第2の出口バルブと、
を備えていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置であって、前記第1及び第2の出口バルブはそれぞれ、ガス供給位置と排出位置とを有するソレノイドバルブであって、
前記第1の出口バルブが前記ガス供給位置にあるときには前記低温ガス出口は前記内部空間に連通し、前記第1の出口バルブが前記排出位置にあるときには前記低温ガス出口は前記囲み部材の外部環境に連通し、
前記第2の出口バルブが前記ガス供給位置にあるときには前記高温ガス出口は前記内部空間に連通し、前記第2の出口バルブが前記排出位置にあるときには前記高温ガス出口は前記囲み部材の外部環境に連通することを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、さらに、
前記低温ガス出口または高温ガス出口のうちの前記少なくともひとつを通って前記内部空間へのガスの流れを制御するために、前記出口バルブを動作させるために該出口バルブと操作可能に結合されている制御装置を備えていることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置であって、
該入口に結合され、前記渦巻管へ送り届けられるガス流を変化させるように操作可能な入口バルブを備え、
前記制御装置は、前記渦巻管へのガスの流れを制御するために、前記入口バルブを動作させるために該入口バルブに操作可能に結合されていることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項7に記載の装置であって、さらに、
前記制御装置と操作可能に結合され、前記塗布装置に関連付けられた温度を前記制御装置へと伝達する温度検出装置を備えることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置であって、
該温度検出装置は、熱電対、サーミスタ、温度抵抗素子、及び赤外線パイロメータからなるグループから選択されることを特徴とする装置。
【請求項11】
オリフィスを有し、基板上に材料を塗布する塗布装置のための熱制御システムであって、
塗布装置を収容するための内部空間を画定し、オリフィスを該囲み部材の外部環境に連通させるようになっている開口部を備える囲み部材と、
該囲み部材と操作可能に結合され、前記内部空間を加熱しまたは冷却するための熱制御ユニットとを備え、
前記熱制御ユニットは、加圧ガス源から低温のガスの流れまたは高温のガス流れを発生させるようになっている渦巻管を具備し、
前記渦巻管は加圧ガス源に結合されるようになっている入口と、前記内部空間と流体的に連通して該内部空間に低温ガスを送り届けるようになっている低温ガス出口と、前記内部空間に連通して該内部空間に高温ガスを送り届けるようになっている高温ガス出口とを備え、前記渦巻管からの低温ガス及び高温ガスは、前記塗布装置の温度を制御するようになっていることを特徴とする熱制御システム。
【請求項12】
請求項11に記載の熱制御システムであって、さらに、
前記低温ガス出口及び高温ガス出口のうちの少なくともひとつに結合される出口バルブを備え、
前記出口バルブは、前記低温ガス出口及び高温ガス出口のうちの少なくともひとつを通って前記内部空間へ送り届けられるガスの流れを変化させるように操作可能であることを特徴とする熱制御システム。
【請求項13】
請求項11に記載の熱制御システム、さらに、
前記低温ガス出口に結合され、前記内部空間へ送り届けられる低温ガスの流れを変化させるように操作可能な第1の出口バルブと、
前記高温ガス出口に結合され、前記内部空間へ送り届けられる高温ガスの流れを変化させるように操作可能な第2の出口バルブと、
を備えていることを特徴とする熱制御システム。
【請求項14】
請求項13に記載の熱制御システムであって、
前記熱制御システムにおいて、前記第1及び第2の出口バルブはそれぞれ、ガス供給位置と排出位置とを有するソレノイドバルブであって、
前記第1の出口バルブが前記ガス供給位置にあるときに前記低温ガス出口は前記内部空間に連通し、前記第1の出口バルブが前記排出位置にあるときに前記低温ガス出口は前記囲み部材の外部環境に連通し、
前記第2の出口バルブが前記ガス供給位置にあるときに前記高温ガス出口は前記内部空間に連通し、前記第2の出口バルブが前記排出位置にあるときに前記高温ガス出口は前記囲み部材の外部環境に連通する
ことを特徴とする熱制御システム。
【請求項15】
請求項12に記載の熱制御システムであって、さらに、
該低温ガス出口と該高温ガス出口の少なくともひとつを通って前記内部空間へのガスの流れを制御するために、該出口バルブを動作させるように該出口バルブに操作可能に結合される制御装置を備えていることを特徴とする熱制御システム。
【請求項16】
請求項12に記載の熱制御システムであって、さらに、
前記入口に結合され、該渦巻管へ送り届けられるガス流を変化させように操作可能な入口バルブを備え、
前記制御装置は、前記渦巻管へのガスの流れを制御するために、前記入口バルブを動作させるように操作可能に結合されていることを特徴とする熱制御システム。
【請求項17】
請求項15に記載の熱制御システムであって、
前記制御装置に操作可能に結合され、前記塗布装置に関連付けられた温度を前記制御装置へと伝達するようになっている温度検出装置を備えることを特徴とする熱制御システム。
【請求項18】
請求項17に記載の熱制御システムであって、
前記温度検出装置は、熱電対、サーミスタ、温度抵抗素子、及び赤外線パイロメータからなるグループから選択されることを特徴とする熱制御システム。
【請求項19】
塗布装置を収容している囲み部材に対して加熱及び冷却を行うような熱制御ユニットであって、この熱制御ユニットは、
加圧ガス源から低温及び高温のガス流れを発生させるようになっている渦巻管であって、加圧ガス源に結合されるようになっている入口と、囲み部材内に連通して該囲み部材の中に低温ガスを送り届けるようになっている低温ガス出口と、前記囲み部材内に連通して該囲み部材の中に高温ガスを送り届けるようになっている高温ガス出口とを備え、前記渦巻管からの低温ガス及び高温ガスは該塗布装置の温度を制御するようになっている渦巻管と、
前記低温ガス出口または高温ガス出口のうちの少なくともひとつに結合されるようになっている出口バルブであって、前記低温ガス出口及び高温ガス出口のうちの少なくともひとつを通って前記囲み部材の中へ送り届けられるガスの流れを変化させるように操作可能な出口バルブと、
該出口バルブと結合され、前記低温ガス出口と高温ガス出口のうちの少なくともひとつを通って前記囲み部材へのガスの流れを制御するために、前記出口バルブを動作させるようになっている制御装置であって、
前記制御装置に操作可能に結合され、前記塗布装置に関連付けられた温度を前記制御装置へと伝達するようになっている温度検出装置と、
を備えていることを特徴とする熱制御ユニット。
【請求項20】
渦巻管を用いて材料塗布工程における熱的に制御する方法であって、該材料塗布工程では、内部空間を画定する囲み部材と、該内部空間の中に配置され基板上に材料を塗布できる配置される塗布装置を利用する方法であって、
塗布装置に関連した温度を測定する工程と、
測定された温度に基づき、該渦巻管から該内部空間へ、低温ガスと高温ガスの少なくともひとつを送り届ける工程と、
塗布装置から基板上に材料を塗布する工程と、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、さらに、
該塗布装置に対する所望の温度を制御装置に記憶させる工程と、
該渦巻管から該内部空間へ低温ガスと高温ガスの少なくともひとつを送り届け、該塗布装置を実質的に所望の運転温度に維持する工程と、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、
該内部空間へ低温ガスと高温ガスの少なくとも一方のガスを送り届ける工程と、
該塗布装置に関連して測定された温度が、所望の運転温度と実質的に等しくない場合にのみ内部空間へ低温ガスと高温ガスとのうちの他方のガスを送り届ける工程と、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、
低温ガスと高温ガスのうちの一方が該内部空間へ送り届けられるときには、内部空間への低温ガスと高温ガスのうちの他方の流れを遮断する工程を備えていることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項21に記載の方法であって、
低温ガスを該内部空間に送り届ける工程と、
該塗布装置に関連して測定された温度が所望の運転温度を下回ったとき、内部空間への低温ガスの流れを遮断する工程と、
該内部空間へ高温ガスの流れを流す工程と、
該塗布装置に関連して測定された温度が所望の運転温度を上回ったとき、該内部空間への高温ガスの流れを遮断する工程と、
を備えていることを特徴とする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−263714(P2006−263714A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−40405(P2006−40405)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(391019120)ノードソン コーポレーション (150)
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
【Fターム(参考)】