説明

熱収縮性フィルム、並びにこの熱収縮性フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル、及びこの成形品を用いた、又はこのラベルを装着した容器

【課題】収縮特性、透明性、耐熱性、耐破断性に優れ、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性フィルムを得る。
【解決手段】シンジオタクチックポリスチレンを含有するポリスチレン系樹脂100質量部に対し、脂肪族エステル系化合物及び/又は芳香族エステル系化合物5〜30質量部を配合してなる層を少なくとも1層有し、80℃温水中に10秒浸漬させた際の少なくとも一方向の熱収縮率が30%以上である熱収縮性フィルムを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性フィルム、並びにこの熱収縮性フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル、及びこの成形品又はこのラベルを装着した容器に関し、より詳しくは、収縮特性、耐熱性に優れた、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性フィルム、並びにこの熱収縮性フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル、及びこの成形品を用いた、又はこのラベルを装着した容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ジュース等の清涼飲料水は、瓶又はペットボトルといった容器に充填された状態で販売されている。その際、他商品との差別化や商品の視認性向上のために、容器の外側に印刷が施された熱収縮性ラベルが装着されている。また、近年、益々需要が増大しつつあり、比較的短時間かつ低温において高度な収縮仕上がり外観が得られること、及び自然収縮(常温よりやや高い温度、例えば夏場においてフィルムが本来の使用前に少し収縮してしまうこと)の小さな熱収縮性ラベルが要求されている。現在、この熱収縮性ラベルの素材としては、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン等が一般的に使用されている。
【0003】
前記素材のうち、ポリ塩化ビニル系熱収縮性フィルムは、耐熱性に劣り、使用後の焼却時に塩化水素等の有害ガスを発生するという問題がある。これに対し、ポリエステル系熱収縮性フィルムは、自然収縮は小さく、フィルムの腰も高く良好であるが、ポリ塩化ビニル系熱収縮性フィルムと比較すると、収縮仕上がり性が悪い(すなわち、フィルムをラベルとして容器に装着する際に、加熱収縮により斑やしわが発生しやすい)ことや、経時的にフィルムの機械的強度が極端に低下する等の問題があった。一方、スチレン−ブタジエン共重合体を主たる材料とするポリスチレン系熱収縮性フィルムは、ポリエステル系熱収縮性フィルムと比べて収縮仕上がり性は良好であるが、耐熱性に劣り、例えば冬場にコンビニエンスストアや自動販売機等でホット飲料用のラベルとして使用した場合、長期的な加熱によりラベル同士が融着する問題があった。
【0004】
前記問題に対して、シンジオタクチックポリスチレン(以下、「sPS」と略称する。)を用いた延伸フィルムが提案されている(特許文献1、特許文献2等)。しかしながら、これらのフィルムは、耐熱性が改良されているものの、低温(80℃程度)での収縮特性が不充分であり、近年加速するボトル装着工程において、完全に収縮せず装着不良を起こす問題があり、またフィルムの耐衝撃性も劣っていた。
【0005】
フィルムの耐衝撃性を改良する手段として、sPSとスチレン−ジエン系共重合体又はスチレン−オレフィン系共重合体からなる樹脂組成物及び延伸フィルムが報告されている(特許文献3)が、該フィルムは耐溶剤性、インキ密着性改良を目的としたものであり、熱収縮ラベルとしては収縮特性、透明性等の諸物性において不充分であった。
【0006】
また、sPSとアタクチックポリスチレン、スチレン−ジエン系共重合体からなる熱収縮フィルムについての記載がある(特許文献4)。しかしながら、本発明者の知見によれば、該フィルムは低温収縮特性、耐熱性の面で未だ不十分なものであった。
【0007】
【特許文献1】特開平05−200858号公報
【特許文献2】特開平07−020785号公報
【特許文献3】特開2002−121355号公報
【特許文献4】特開2005−105048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は収縮特性、耐熱性、透明性、耐破断性に優れ、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性フィルムを得ることにある。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した前記熱収縮性フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル及び前記成形品又は熱収縮性ラベルを装着した容器を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、熱収縮性フィルムを形成する表面層、接着層、中間層等の各組成を鋭意検討した結果、前記従来技術の課題を解決し得るフィルムを得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、シンジオタクチックポリスチレンを含有するポリスチレン系樹脂100質量部に対し、脂肪族エステル系化合物及び/又は芳香族エステル系化合物5〜30質量部を配合してなる層を、少なくとも1層有し、かつ、得られる熱収縮性フィルムの80℃温水中に10秒浸漬させた際の少なくとも一方向における加熱収縮率が30%以上とすることにより、前記課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱収縮性フィルムの少なくとも1層が、所定のシンジオタクチックポリスチレンを含有するポリスチレン系樹脂に所定のエステル系化合物を配合してなる層であるので、得られる熱収縮性フィルムは、収縮特性、耐熱性、透明性、耐破断性に優れたものとなる。
【0012】
さらに本発明によれば、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性フィルムを提供することができ、また、収縮特性、耐熱性、耐破断性に優れた成形品、熱収縮性ラベル及び前記成形品又は熱収縮性ラベルを装着した容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明にかかる熱収縮性フィルム、成形品、熱収縮性ラベル、及び該成形品又は熱収縮性ラベルを装着した容器について詳細に説明する。
【0014】
なお、本明細書において、「主成分とする」とは、各層を構成する樹脂の作用・効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨である。さらに、この用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、各層の構成成分全体の70質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上を占める成分である。
【0015】
[熱収縮性フィルム]
この発明にかかる熱収縮性フィルムは、シンジオタクチックポリスチレン(以下「sPS」という。)を含有するポリスチレン系樹脂に、脂肪族エステル系化合物及び/又は芳香族エステル系化合物を配合してなる層(以下、「sPS含有層」と称する。)を少なくとも1層有するフィルムである。そして、この発明にかかる熱収縮性フィルムは、このsPS含有層からなる1層のみからなるフィルムであってもよく、このsPS含有層を含む複数層の積層フィルムであってもよい。
【0016】
<sPS含有層>
本発明におけるsPSとは、シンジオタクチック構造を有するスチレン系モノマーの単独重合体又は共重合体を指す。ここで、シンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、即ち炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基や置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものであり、そのタクティシティーは同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR法)により定量される。13C−NMR法により測定されるタクティシティーは、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができる。本発明にいうsPSとは、通常はラセミダイアッドで75%以上、好ましくは85%以上、若しくはラセミペンタッドで30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有する以下のスチレン系モノマーの単独重合体又は共重合体をいう。
【0017】
前記スチレン系モノマーとしては、スチレン、アルキルスチレン、ハロゲン化スチレン、ハロゲン化アルキルスチレン、アルコキシスチレン、ビニル安息香酸エステル等があげられる。また、前記スチレン系モノマーの単独重合体としては、ポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、これらの水添物、これらの混合物等があげられる。さらに、前記スチレン系モノマーの共重合体としては、前記スチレン系モノマーを主成分とする共重合体があげられる。
【0018】
ここで、ポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソプロピルスチレン)、ポリ(ターシャリーブチルスチレン)、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルスチレン)などがあげられる。
【0019】
また、ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)などがあげられる。さらに、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)などがあげられる。さらにまた、ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)などがあげられる。
【0020】
前記のうち好ましいsPSとしては、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−ターシャリーブチルスチレン)、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリ(m−クロロスチレン)、ポリ(p−フルオロスチレン)、水素化ポリスチレン及びこれらの構造単位を含む共重合体があげられる。
【0021】
本発明では、sPSは前記共重合体であることがより好ましい。共重合体とすることでシンジオタクチックポリスチレンの融点を低下させることが可能であり、より低温で成形加工ができるため、樹脂の熱劣化を抑制できる。
【0022】
sPSの分子量について特に制限はないが、重量平均分子量が10,000以上、好ましくは50,000以上である。さらに、分子量分布についてもその広狭は制約がなく、様々なものを充当することが可能である。ここで、重量平均分子量が10,000未満のものでは、得られる組成物あるいは成形品の熱的性質、機械的性質が低下し好ましくない。
【0023】
このようなsPSは、例えば不活性炭化水素溶媒中又は溶媒の不存在下に、チタン化合物と水とトリアルキルアルミニウムとの縮合生成物を触媒として、スチレンの単量体を重合することにより製造できる(特開昭62−187708号公報)。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)については特開平1−46912号公報、これらの水素化重合体は特開平1−178505号公報記載の方法などにより得ることができる。
【0024】
前記sPS含有層は、フィルムの耐衝撃性を向上させる目的で、sPS以外に、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体、又はその水素添加物を混合させることができる。なお、この共重合体又はその添加物は、シンジオタクチック構造を有してもよいが、必ずしも有する必要性はない。
【0025】
スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体を構成するスチレン系炭化水素としては、アルキルスチレン、ハロゲン化スチレン、ハロゲン化置換アルキルスチレン、アルコキシスチレン、カルボキシアルキルスチレン、アルキルエーテルスチレン、アルキルシリルスチレン、ビニルベンジルジメトキシホスファイド等があげられる。このスチレン系炭化水素は、これら単独又は2種以上で構成されていてもよい。
【0026】
前記アルキルスチレンの例としては、スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等があげられる。
【0027】
前記ハロゲン化スチレンの例としては、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、o−メチル−p−フルオロスチレン等があげられる。
【0028】
前記ハロゲン化置換アルキルスチレンの例としては、o−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン等があげられる。また、前記アルコキシスチレンの例としては、p−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、o−エトキシスチレン、m−エトキシスチレン、p−エトキシスチレン等があげられる。
【0029】
前記カルボキシアルキルスチレンの例としては、o−カルボキシメチルスチレン、m−カルボキシメチルスチレン、p−カルボキシメチルスチレン)等があげられる。また、前記アルキルエーテルスチレンの例としては、p−ビニルベンジルプロピルエーテル等があげられる。さらにまた、アルキルシリルスチレンの例としては、p−トリメチルシリルスチレン等があげられる。
【0030】
一方、共重合体を構成する共役ジエン系炭化水素としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等があげられる。共役ジエン系炭化水素は、これら単独又は2種以上で構成されていてもよい。
【0031】
本発明で好ましく使用されるスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体の一つは、スチレン系炭化水素がスチレンであり、共役ジエン系炭化水素がブタジエンであるスチレン−ブタジエン系共重合体(SBS)である。SBSのスチレン含有率は55質量%以上、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上である。またスチレン含有率の上限は90質量%、好ましくは85質量%、さらに好ましくは80質量%である。スチレンの含有率が55質量%以上であれば、耐衝撃性の効果が発揮でき、また上限を90質量%とすることにより、室温前後の温度でのフィルムの弾性率が保持され、良好な腰の強さが得られる。スチレン系樹脂としてスチレン−ブタジエン系共重合体を用いる場合の重合形態は特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、及びテーパーブロック構造を有する共重合体のいずれの態様であってもよいが、ブロック共重合体がより好ましい。また、前記スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体は単独で用いてもよいし、スチレン含有率の異なる2種以上の共重合体組成物を混合して用いてもよい。
【0032】
前記SBS樹脂の市販品としては、例えば、「クリアレン」(電気化学工業(株)製)、「アサフレックス」(旭化成ケミカルズ(株)製)、「スタイロフレックス」(BASFジャパン社製)、「Kレジン」(シェブロンフィリップス化学社製)などがあげられる。
【0033】
前記のスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体の水素添加誘導体は、スチレン−共役ジエン系ランダム共重合体の水素添加誘導体を好ましく用いることができる。スチレン−共役ジエン系ランダム共重合体の水素添加誘導体の詳細な内容及びその製造方法については、特開平2−158643号、特開平2−305814号及び特開平3−72512号の各公報に開示されている。
【0034】
前記共重合体の市販品としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体エラストマー(旭化成ケミカルズ(株)商品名「タフプレン」)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加誘導体(旭化成ケミカルズ(株)商品名「タフテックH」、シェルジャパン(株)商品名「クレイトンG」)、スチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素添加誘導体(JSR(株)商品名「ダイナロン」)、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加誘導体((株)クラレ商品名「セプトン」)、スチレン−ビニルイソプレンブロック共重合体エラストマー((株)クラレ商品名「ハイブラー」)等があげられ、これらを各々単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
前記スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体、又はその水素添加物は、いずれも重量(質量)平均分子量(Mw)が100,000以上、好ましくは150,000以上であり、上限が500,000以下、好ましくは400,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。重量(質量)平均分子量(Mw)が100,000以上であれば、フィルムの劣化が生じるような欠点もなく好ましい。さらに、重量(質量)平均分子量が500,000以下であれば、流動特性を調整する必要なく、押出性が低下するなどの欠点もないため好ましい。
【0036】
前記スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体、又はその水素添加物のメルトフローレート(MFR)測定値(測定条件:温度200℃、荷重49N)は、2g/10分以上、好ましくは3g/10分以上であり、上限が15g/10分以下、好ましくは10g/10分以下、さらに好ましくは8g/10分以下である。前記重合体のMFRが2g/10分以上であれば、押出成型時に適度な流動粘度が得られ、生産性を維持又は向上できる。また、前記重合体のMFRが15g/10分以下であれば、適度な樹脂の凝集力が得られるため、良好なフィルム強伸度が得られ、フィルムを脆化し難くすることができる。
【0037】
前記sPSと、前記スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体、又はその水素添加物との混合比(スチレン系炭化水素/共重合体又はその水素添加物)は、質量比で、10〜70/90〜30が好ましく、20〜60/80〜40がより好ましい。sPSの混合量が10質量%未満だと、フィルムの耐熱性が不充分であり、ホット飲料用ラベルとして使用する際に、ラベル同士の融着が起こる場合がある。一方、sPSの混合量が70質量%より多いと、フィルムの耐衝撃性や透明性が低下するなどの問題を生じる場合がある。
【0038】
次に、本発明においては、熱収縮性フィルムとして求められる収縮特性を付与することを最大の目的として、前記sPS層に、脂肪族エステル系化合物、芳香族エステル系化合物、又はその両方を配合することが重要である。
なお、本発明における「脂肪族エステル系化合物」及び「芳香族エステル系化合物」は、共重合されたものであってもよく、されていないものであってもよい。
【0039】
脂肪族エステル系化合物と芳香族エステル系化合物は、添加した際に外観上分離しない程度の相溶性、好ましくは透明ないし半透明である程度の相溶性を有する常温常圧で液状のエステル系化合物であることが望ましい。その中でも収縮開始温度の微調整が可能であり、また前記ポリスチレン系樹脂と相溶性が良くブリードし難く、また添加によりフィルムの透明性を阻害しにくいものとして、ジオクチルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート等の脂肪族エステル系化合物、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等の芳香族エステル系化合物、ポリ(1,4−アジペート)等の脂肪族エステル系化合物、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、三塩化リン等のリン酸エステル系化合物等がより好適に使用される。これらの脂肪族エステル系化合物と芳香族エステル系化合物は単独で、あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0040】
また、前記脂肪族エステル系化合物と芳香族エステル系化合物の各々の数平均分子量は好ましくは500〜6,000、より好ましくは1,000〜5,000、さらに好ましくは2,000〜4,000である。数平均分子量が500以下である場合、フィルムを製膜した際、又は経時的にブリードし易く、フィルム表面がべとつく、巻物がブロッキングするなどの不具合を生じる可能性がある。一方、6,000以上である場合、前記ポリスチレン系樹脂との相溶性が低下するため、ブリード、又はフィルムの透明性を低下させる問題が生じる場合がある。
なお、前記脂肪族エステル系化合物と芳香族エステル系化合物の数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ等の一般的な方法で測定することができる。
【0041】
前記脂肪族エステル系化合物及び/又は芳香族エステル系化合物の添加量は、原料特性や用途に応じ適宜微調整されるが、シンジオタクチックポリスチレンを含有するポリスチレン系樹脂100質量部(固形分)に対し、脂肪族エステル系化合物及び/又は芳香族エステル系化合物は5〜30質量部、好ましくは5〜25質量部、さらに好ましくは5〜20質量部の範囲で決められる。かかる範囲を下回る場合には、収縮特性が十分発現されず、逆に上回る場合には、溶融時の粘度が下がり過ぎ押出・引き落としが困難になったり、得られる熱収縮性フィルムの機械物性が著しく低下したり、得られる熱収縮性フィルムが室温付近でも収縮したりして実用上好ましくない。
【0042】
前記脂肪族ポリエステル系化合物と芳香族ポリエステル系化合物の市販品としては、例えば、「ポリサイザー Wシリーズ」(大日本インキ化学工業(株)製)、「Plasthall Pシリーズ」(The C.P.HAll社製)などがあげられる。
【0043】
<熱収縮性フィルムが複数層からなる積層構造を有する場合>
前記sPS含有層は、前記熱収縮性フィルムを構成する層の少なくとも1層を形成すればよく、この発明にかかる熱収縮性フィルムは、このsPS含有層のみからなる単層構造であってもよく、このsPS含有層を含む複数層からなる積層構造を有してもよい。積層構造を有する場合、前記sPS含有層は、外表面層を形成するのが好ましい。上記sPS含有層を外表面層とすることにより、sPSによって、フィルム表面の耐熱性(融着に対する耐性)を向上させることが可能となる。
【0044】
また、この発明にかかる熱収縮性フィルムが、複数層からなる積層構造を有し、外表面層として前記sPS含有層を用いる場合、外表面に表れない中間層としては、層間の密着性の観点から、スチレン系炭化水素及び共役ジエン系炭化水素の共重合体又はその水素添加物からなる層を用いることが好ましい。この場合におけるスチレン系炭化水素や共役ジエン系炭化水素としては、上記のsPS含有層に用いられるスチレン系炭化水素や共役ジエン系炭化水素と同様のものを例としてあげることができる。
【0045】
上記中間層として、スチレン系炭化水素及び共役ジエン系炭化水素の共重合体又はその水素添加物からなる層を用いる場合、このスチレン系炭化水素の含有率は、中間層全体に対して、50質量%以上がよく、60質量%以上が好ましい。50質量%より少ないと、フィルムの剛性が損なわれ、ボトルへの装着工程でフィルムの腰折れによる装着不良の要因となるため、好ましくない。一方、含有率の上限は、90質量%がよく、80質量%が好ましい。90質量%より多いと、フィルムの耐衝撃性に劣るほか、低温延伸が困難となるため低温収縮特性に劣るフィルムと成り易く、好ましくない。
【0046】
<熱収縮性フィルムの製造>
本発明の熱収縮性フィルムは、公知の方法によって製造することができる。熱収縮性フィルムの形態としては平面状、チューブ状の何れであってもよいが、生産性(原反フィルムの幅方向に製品として数丁取りが可能)や内面に印刷が可能という点から平面状が好ましい。平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、押出機を用いて樹脂を溶融し、Tダイから押出し、チルドロールで冷却固化し、縦方向にロール延伸をし、横方向にテンター延伸をし、アニールし、冷却し、(印刷が施される場合にはその面にコロナ放電処理をして、)巻取機にて巻き取ることによりフィルムを得る方法が例示できる。
また、平面状の積層フィルムの製造方法としては、上記押出工程を、複数の押出機を用いて樹脂を溶融し、Tダイから共押出する方法があげられる。なお、チルドロールでの冷却固化以降の工程は、上記と同様である。
さらに、チューブラー法により製造したフィルムを切り開いて平面状とする方法も適用できる。
【0047】
延伸倍率はオーバーラップ用等、二方向に収縮させる用途では、縦方向が2倍以上10倍以下、横方向が2倍以上10倍以下、好ましくは縦方向が3倍以上6倍以下、横方向が3倍以上6倍以下程度である。一方、熱収縮性ラベル用等、主として一方向に収縮させる用途では、主収縮方向に相当する方向が2倍以上10倍以下、好ましくは4倍以上8倍以下、それと直交する方向が1倍以上2倍以下(1倍とは延伸していな場合を指す)、好ましくは1.1倍以上1.5倍以下の、実質的には一軸延伸の範疇にある倍率比を選定することが望ましい。前記範囲内の延伸倍率で延伸した二軸延伸フィルムは、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が大きくなりすぎることはなく、例えば、収縮ラベルとして用いる場合、容器に装着するとき容器の高さ方向にもフィルムが熱収縮する、いわゆる縦引け現象を抑えることができるため好ましい。
【0048】
延伸温度は、用いる樹脂のガラス転移温度や熱収縮性フィルムに要求される特性によって変える必要があるが、概ね70℃以上、好ましくは80℃以上であり、上限が130℃以下、好ましくは120℃以下の範囲で制御される。また、延伸倍率は、用いる樹脂の特性、延伸手段、延伸温度、目的の製品形態等に応じて、主収縮方向には1.5倍以上10倍以下、好ましくは3倍以上7倍以下、さらに好ましくは3倍以上5倍以下の範囲で1軸又は2軸方向に適宜決定される。また、横方向に1軸延伸の場合でもフィルムの機械物性改良等の目的で縦方向に1.05倍以上1.8倍以下程度の弱延伸を付与することも効果的である。次いで、延伸したフィルムは、必要に応じて、自然収縮率の低減や熱収縮特性の改良等を目的として、70℃以上130℃以下程度の温度で熱処理や弛緩処理を行った後、分子配向が緩和しない時間内に速やかに冷却され、熱収縮性フィルムとなる。
【0049】
また本発明のフィルムは、必要に応じてコロナ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面処理や表面加工、さらには、各種溶剤やヒートシールによる製袋加工やミシン目加工などを施すことができる。
【0050】
本発明の熱収縮性フィルムは、被包装物によってフラット状から円筒状等に加工して包装に供される。ペットボトル等の円筒状の容器で印刷を要するものの場合、まずロールに巻き取られた広幅のフラットフィルムの一面に必要な画像を印刷し、そしてこれを必要な幅にカットしつつ印刷面が内側になるように折り畳んでセンターシール(シール部の形状はいわゆる封筒貼り)して円筒状とすれば良い。センターシール方法としては、有機溶剤による接着方法、ヒートシールによる方法、接着剤による方法、インパルスシーラーによる方法が考えられる。この中でも、生産性、見栄えの観点から有機溶剤による接着方法が好適に使用される。
【0051】
本発明の熱収縮性フィルムの総厚みは、特に限定されるものではないが、透明性、収縮加工性、原料コスト等の観点からは薄い方が好ましい。具体的には延伸後のフィルムの総厚みが80μm以下であり、好ましくは70μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下であり、最も好ましくは40μm以下である。また、本発明のフィルムの総厚みの下限は特に限定されないが、フィルムのハンドリング性を考慮すると、20μmであることが好ましい。
【0052】
<物理的・機械的特性>
本発明の熱収縮性フィルムは、80℃温水中10秒浸漬したときの熱収縮率が少なくとも一方向において30%以上であることが重要である。
【0053】
これは、ペットボトルの収縮ラベル用途等の比較的短時間(数秒〜十数秒程度)での収縮加工工程への適応性を判断する指標となる。例えばペットボトルの収縮ラベル用途に適用される熱収縮性フィルムに要求される必要収縮率はその形状によって様々であるが一般に20%乃至70%程度である。
【0054】
また、現在ペットボトルのラベル装着用途に工業的に最も多く用いられている収縮加工機としては、収縮加工を行う加熱媒体として水蒸気を用いる蒸気シュリンカーと一般に呼ばれているものである。熱収縮性フィルムは、被覆対象物への熱の影響などの点からできるだけ低い温度で十分熱収縮することが必要である。さらに、近年のラベリング工程の高速化に伴い、より低温で素早く収縮する要求が高くなってきた。このような工業生産性も考慮して、前記条件における熱収縮率が30%以上のフィルムであれば、収縮加工時間内に被覆対象物に密着することができるため好ましい。これらのことから、80℃の温水中に10秒浸漬したときの熱収縮率は、少なくとも一方向、通常主収縮方向に30%以上、好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上であり、上限は85%、好ましくは80%、さらに好ましくは75%であることが望ましい。
【0055】
また、本発明の熱収縮性フィルムが熱収縮性ラベルとして用いられる場合、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率は、80℃の温水中で10秒間浸漬したときは10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が10%以下のフィルムであれば、収縮後の主収縮方向と直交する方向の寸法自体が短くなったり、収縮後の印刷柄や文字の歪み等が生じやすかったり、角型ボトルの場合においては縦ひけ等のトラブルが発生し難く、好ましい。
【0056】
本発明の熱収縮性フィルムは、70℃の温水中で10秒間浸漬したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率が5%以上、好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上であり、上限は35%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下である。70℃におけるフィルム主収縮方向の熱収縮率を5%以上とすることにより、蒸気シュリンカーでボトル装着を行う際に、局部的に発生し得る収縮ムラを抑え、結果的にシワ、アバタ等の形成を抑えることができる。また、熱収縮率の上限を35%以下とすることにより、低温における極端な収縮を抑えることができ、例えば、夏場などの高温環境下においても自然収縮を小さく維持することができる。また70℃温水中で10秒間浸漬したときのフィルムの主収縮方向と直交する方向の熱収縮率は10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。
【0057】
本発明の熱収縮性フィルムの透明性は、例えば、厚み50μmのフィルムをJIS K7105に準拠して測定した場合、ヘーズ値は10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。ヘーズ値が10%以下であれば、フィルムの透明性が得られ、ディスプレー効果を奏することができる。
【0058】
本発明の熱収縮性フィルムの耐衝撃性は、引張破断伸度により評価され、−0℃環境下の引張試験において、特にラベル用途ではフィルムの引き取り(流れ)方向(MD)で伸び率が100%以上、好ましくは150%以上、さらに好ましくは200%以上である。0℃環境下での引張破断伸度が100%以上あれば印刷・製袋などの工程時にフィルムが破断するなどの不具合を生じにくくなり、好ましい。また、印刷・製袋などの工程のスピードアップにともなってフィルムに対してかかる張力が増加するような際にも、引張破断伸度が200%以上あれば破断しづらく、さらに好ましい。
【0059】
[成形品、熱収縮性ラベル及び容器]
本発明の熱収縮性フィルムは、フィルムの低温収縮性、収縮仕上がり性、透明性、自然収縮等に優れているため、その用途が特に制限されるものではないが、必要に応じて印刷層、蒸着層その他機能層を形成することにより、熱収縮性ラベルとして用いることができ、また、ボトル(ブローボトル)、トレー、弁当箱、総菜容器、乳製品容器等の様々な成形品として用いることができる。特に本発明の熱収縮性フィルムを食品容器(例えば清涼飲料水用又は食品用のPETボトル、ガラス瓶、好ましくはPETボトル)用熱収縮性ラベルとして用いる場合、複雑な形状(例えば、中心がくびれた円柱、角のある四角柱、五角柱、六角柱など)であっても該形状に密着可能であり、シワやアバタ等のない美麗なラベルが装着された容器が得られる。さらに、前記成形品は、そのまま容器として用いることができる。これらの成形品及び容器は、通常の成形法を用いることにより作製することができる。
【0060】
本発明の熱収縮性フィルムは、優れた低温収縮性、収縮仕上がり性を有するため、高温に加熱すると変形を生じるようなプラスチック成形品の熱収縮性ラベル素材のほか、熱膨張率や吸水性等が本発明の熱収縮性フィルムとは極めて異なる材質、例えば金属、磁器、ガラス、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる少なくとも1種を構成素材として用いた包装体(容器)の熱収縮性ラベル素材として好適に利用できる。
【0061】
本発明のフィルムが利用できるプラスチック包装体を構成する材質としては、前記の樹脂の他、ポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等をあげることができる。これらのプラスチック包装体は2種以上の樹脂類の混合物でも、積層体であってもよい。
【実施例】
【0062】
以下に本発明について実施例を用いて説明する。
なお、実施例に示す測定値及び評価は次のように行った。実施例では、積層フィルムの引き取り(流れ)方向を「縦」方向、その直角方向を「横」方向と記載する。
【0063】
(1)熱収縮率
フィルムを縦100mm、横100mmの大きさに切り取り、70℃、80℃及び90℃の温水バスに10秒間それぞれ浸漬し、収縮量を測定した。熱収縮率は横方向について、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。また、下記基準で評価した結果も併記した。
◎:80℃熱収縮率が、40%以上。
○:80℃熱収縮率が、30%以上40%未満。
×:80℃熱収縮率が、30%未満。
【0064】
(2)ヘーズ
JIS K7105に準拠してフィルム厚み50μmでフィルムのヘーズ値を測定した。また、下記基準で評価した結果も併記した。
◎:ヘーズが、7%未満。
○:ヘーズが、7%以上10%未満。
×:ヘーズが、10%以上。
【0065】
(3)耐熱性
ラベルを装着した350ml角ボトル(伊藤園「お〜いお茶」で使用されているボトル)を、ラベル同士が接触するよう2本横向きに重ねた後、70℃の恒温槽で7日間放置した。ボトル同士を引きはがした際の、状態を下記の基準で評価した。
◎:ラベル同士が融着しない。
○:ラベル同士が融着し、はがした際にラベルに角だちが生じる。
×:ラベル同士が融着し、はがした際に穴があく。
【0066】
(4)ブリード
フィルムを横方向に長さ60mm、延伸方向60mm幅に切り出し、10枚を重ねた後、1枚1kgの金属SUS板2枚にてフィルム束を挟み、30℃の恒温槽中で7日間放置した。フィルム同士をはがした際の状態を下記のように評価した。
◎:フィルム同士は貼り付かず、ラベル表面もべとつかない。
○:フィルム同士は貼り付かないが、ラベル表面がべとつく。
×:フィルム同士が貼り付き、ラベル表面がべとつく。
【0067】
(5)総合評価
評価項目の全てが◎であったフィルムを(◎)、○が含まれるフィルムを(○)、1つでも×があったフィルムを(×)とした。
【0068】
(実施例1)
表1に示すように、共重合シンジオタクチックポリスチレン樹脂(融点235℃)(出光興産(株)製:ZAREC、以下「sPS」と略称する。):30質量%、ビニル芳香族−共役ジエン共重合体(旭化成ケミカルズ(株)製、スチレン/ブタジエン=90/10、ビカット軟化点72℃)(以下「SBS1と略称する」):20質量%、ビニル芳香族−共役ジエン共重合体(旭化成ケミカルズ(株)製、スチレン/ブタジエン=71/29、ビカット軟化点70℃)(以下「SBS2と略称する」):40質量%、アタクチックポリスチレン樹脂(商品名『G9305』(PSジャパン(株)製、ビカット軟化点103℃))(以下「aPS」と略称する):10質量%からなる混合樹脂100質量部に対し、脂肪族エステル系化合物(大日本インキ化学工業(株)製 商品名:ポリサイザーW2310、数平均分子量2,300)(以下「ポリエステル1」と略称する)10質量部を添加した樹脂を表面層として、SBS1:50質量%、SBS2:30質量%、sPS:10質量%の混合樹脂を中間層として、それぞれ別個に三菱重工業(株)製:単軸押出機に投入し設定温度250℃で溶融混合後、各層の厚みが表面層/中間層/表面層=50μm/150μm/50μmとなるよう3種5層ダイスより共押出し、50℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて幅300mm、厚さ250μmの未延伸積層シートを得た。次いで、京都機械(株)製:フィルムテンターにて、予熱温度100℃、延伸温度93℃で横一軸方向に5.0倍延伸した後、冷風で急冷して、厚さ50μmの熱収縮性フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0069】
(実施例2)
表1に示すように、sPS:25質量%、aPS:35質量%、及びSBS2:40質量%の混合樹脂100質量部に対し脂肪族エステル系化合物(大日本インキ化学工業(株)製:ポリサイザーW4010、数平均分子量4,000)15質量部添加した樹脂を単層で押出し、未延伸シートの厚みを250μmとした以外は、実施例1と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0070】
(実施例3)
表1に示すように、表面層の配合をsPS:45質量%、aPS:35質量%、SBS2:20質量%の混合樹脂100質量部に対し、芳香族エステル系化合物(ジェイ・プラス(株)製、D671、数平均分子量650)(以下「ポリエステル3」と略称する)10質量部とし、中間層をSBS1:55質量%、SBS2:45質量%とし、積層未延伸シートの厚み比を表面層/中間層/表面層=35μm/180μm/35μmとした以外は、実施例1と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0071】
(実施例4)
表1に示すように、sPS:50質量%、SBS1:30質量%、とSBS2:20質量%の混合樹脂100質量部に対し脂肪族エステル系化合物(ジェイ・プラス(株)製、D623N、数平均分子量1,800)(以下「ポリエステル4」と略称する)を15質量部添加し、中間層をSBS1:45質量%、SBS2:45質量%、sPS:10質量%とし、積層未延伸シートの厚み比を表面層/中間層/表面層=20μm/210μm/20μmとした以外は、実施例1と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0072】
(比較例1)
表1に示すように、sPS:25質量%、SBS1:50質量%、SBS2:25質量%の混合樹脂100質量部に対しポリエステル1を2質量部添加した以外は、実施例2と同様に熱収縮性フィルムを得ようとしたところ、延伸途中にて破断してしまった。
【0073】
(比較例2)
表1に示すように、sPS:30質量%、aPS:10質量%、SBS1:20質量%、とSBS2:40質量%の混合樹脂100質量部に対し脂肪族エステル系化合物(ジェイ・プラス(株)製、数平均分子量399)(以下「DINA」と略称する。)を15質量部添加した以外は、実施例2と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0074】
(比較例3)
表1に示すように、sPS:25質量%、SBS1:50質量%、とSBS2:25質量%の混合樹脂100質量部に対しポリエステル1を35質量部添加した以外は、実施例2と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0075】
(比較例4)
表1に示すように、実施例1において、表面層を構成するポリスチレン系樹脂をシンジオタクチックポリスチレンを配合しない樹脂に変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0076】
(比較例5)
表1に示すように、sPS:25質量%、SBS1:50質量%、SBS2:25質量%の混合樹脂100質量部に対し、アクリレート系化合物(住友化学(株)製、SumilizerGS)(以下「酸化防止剤」と略称する)を10質量部添加した以外は、実施例2と同様に熱収縮性フィルムを得ようとしたところ、延伸途中にて破断してしまった。
【0077】
【表1】

【0078】
[結果]
表1より、本発明で規定する範囲内の層を有する実施例1乃至4のフィルムは、収縮特性、透明性、耐熱性のいずれかが比較例1〜5よりも優れていた。
これに対し、本発明の範囲内の脂肪族エステル系化合物及び/又は芳香族エステル系化合物を使用しない場合(比較例2)、又は本発明で規定する範囲外で添加した場合(比較例1、比較例3)には相溶性に劣るためフィルム表面にブリードしべとつきを生じたり、延伸性が低下したり、透明性が低下するなどの問題を生じた。また、sPSを配合しない場合(比較例4)、耐熱性に劣る結果となった。また、本発明で規定される脂肪族エステル系化合物又は芳香族エステル系化合物の代わりに酸化防止剤を用いた場合(比較例5)には、延伸性が低下した。
これより、本発明のフィルムは、収縮特性、透明性、耐熱性に優れた、収縮包装、収縮結束包装や熱収縮性ラベル等の用途に適した熱収縮性フィルムであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のフィルムは、収縮特性、耐熱性、透明性、耐破断性に優れたフィルムであるため、各種の収縮包装、収縮結束、収縮ラベル等の各種の用途に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンジオタクチックポリスチレンを含有するポリスチレン系樹脂100質量部に対し、脂肪族エステル系化合物及び/又は芳香族エステル系化合物5〜30質量部を配合してなる層を少なくとも1層有し、80℃温水中に10秒浸漬させた際の少なくとも一方向の熱収縮率が30%以上であることを特徴とする熱収縮性フィルム。
【請求項2】
前記脂肪族エステル系化合物と芳香族エステル系化合物の各々の数平均分子量が500〜6,000の範囲内である請求項1に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項3】
前記シンジオタクチックポリスチレンを含有するポリスチレン系樹脂がシンジオタクチックポリスチレン10〜70質量%と、スチレン系炭化水素及び共役ジエン系炭化水素の共重合体又はその水素添加物30〜90質量%とからなる請求項1又は2に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項4】
スチレン系炭化水素の含有率が50〜90質量%であるスチレン系炭化水素及び共役ジエン系炭化水素の共重合体又はその水素添加物からなる層が積層された請求項1乃至3のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の熱収縮性フィルムを基材として用いた成形品。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の熱収縮性フィルムを基材として用いた熱収縮性ラベル。
【請求項7】
請求項5に記載の成形品を用いた、又は請求項6に記載の熱収縮性ラベルを装着した容器。

【公開番号】特開2007−70545(P2007−70545A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261109(P2005−261109)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】