説明

熱可塑性粒子のブレンドを含む複合材料

硬化して、高度な損傷許容性を有する複合部品を形成することができる予備含浸複合材料(プレプレグ)を提供する。マトリックス樹脂は、硬化温度を超える融点を有する粒子と、硬化温度以下の融点を有する粒子とのブレンドである熱可塑性粒子成分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、高性能複合部品を製造するのに使用される予備含浸複合材料(プレプレグ)に関する。より詳細には、本発明は、高度な強度、損傷許容性及び層間破壊靱性を有する複合部品を形成するために硬化/成形され得るプレプレグを提供することを対象とする。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、典型的には、2つの主な構成成分として、連続樹脂マトリックス及び強化用繊維で構成される。複合材料は、複合部品の物理的限界及び特徴が非常に重要である航空宇宙の分野などの厳しい環境で機能することがしばしば要求される。
【0003】
予備含浸複合材料(プレプレグ)は、複合部品の製造に広く使用されている。プレプレグは、最終的な複合部品にそのまま成形又は硬化できる形の未硬化樹脂マトリックスと繊維強化材の組合せである。製造者は、繊維強化材に樹脂を予備含浸することによって、繊維網に含浸される樹脂の量及び場所を慎重に制御し、樹脂を繊維網に所望通りに分布させることができる。複合部品における繊維と樹脂の相対量及び繊維網内の樹脂の分布は部品の構造特性に大きな影響を与えることが良く知られている。プレプレグは、耐荷構造部品、特に、翼、胴体、隔壁及び操縦面などの航空宇宙複合部品の製造に使用するのに好適な材料である。これらの部品は、十分な強度、損傷許容性、及び当該部品に対して慣行的に設定された他の必要特性を有することが重要である。
【0004】
航空宇宙用プレプレグに広く使用される繊維強化材は、多方向織物、又は互いに平行に伸びる繊維を含む一方向テープである。繊維は、典型的には、「トウ」と称する多数の個別の繊維又はフィラメントの束の形である。繊維又はトウを細断し、樹脂中にランダムに配向させて、不織布マットを形成することもできる。これらの様々な繊維強化材構造に、慎重に制御された量の未硬化樹脂が含浸される。得られたプレプレグは、典型的には、保護層の間に配置され、保管、又は製造施設への輸送に向けてロール状に巻かれる。
【0005】
プレプレグは、細断一方向テープの不織布マットを形成するようにランダムに配向される細断一方向テープの短いセグメントの形であってもよい。この種のプレプレグは、「準等方性細断」プレプレグと称する。準等方性細断プレプレグは、細断一方向テープ(チップ)の短長部が、細断繊維でなくマットにランダムに配向されている点を除いて、より従来的な不織布繊維マットプレプレグと同様である。
【0006】
硬化複合材料の引張強度は、主として、強化繊維及びマトリックス樹脂の個々の特性、並びにこれら2つの成分の相互作用によって規定される。また、繊維と樹脂の容量比も重要な要因である。張力を受けた硬化複合体は、強化トウ内に位置する個々の繊維フィラメントの多数の引張破断に起因する蓄積損傷のメカニズムを介して破壊する傾向がある。破断したフィラメント端部に隣接する樹脂の応力レベルが高くなりすぎると、複合体全体が破壊し得る。したがって、繊維強度、マトリックスの強度、及び破断したフィラメント端部の近傍の応力消散の効率が、硬化複合材料の引張強度に寄与することになる。
【0007】
多くの用途において、強化複合材料の引張強度特性を最大にすることが望ましい。しかし、引張強度を最大にする試みは、複合構造体の圧縮性能及び損傷許容性などの他の望ましい特性に悪影響を与え得る。また、引張強度を最大にする試みは、プレプレグのタック及びアウトライフに予想外の影響を与え得る。未硬化プレプレグの他着性又は粘着性は、共通に「タック」と称する。未硬化プレプレグのタックは、レイアップ及び成形処理時の重要な考慮事項であるタックがほとんど又は全くないプレプレグは、構造的に強い複合部品を形成するために成形できる積層体に成形するのが困難である。逆に、タックが大きすぎるプレプレグは、ハンドリングするのが困難であるとともに、金型に仕込むのも困難であり得る。プレプレグは、容易なハンドリング及び良好な積層/成形特性を確保するための適切な量のタックを有することが望ましい。所定の硬化複合材料の強度及び/又は損傷許容性を向上させる試みにおいて、未硬化プレプレグのタックは、好適なプレプレグハンドリング及び成形を確保するための許容範囲内にあることが重要である。
【0008】
プレプレグの「アウトライフ」は、プレプレグを、許容不可能な程度の硬化を受ける前に雰囲気条件に曝すことができる時間の長さである。プレプレグのアウトライフは、様々な要因に応じて大きく変動し得るが、基本的には、使用される樹脂配合物によって制御される。プレプレグアウトライフは、プレプレグが許容不可能な程度の硬化を受けずに通常のハンドリング、レイアップ及び成形処理を実施できるように十分に長くなくてはならない。所定の硬化複合材料の強度及び/又は損傷許容性を向上させる試みにおいて、未硬化プレプレグのアウトライフは、硬化前にプレプレグを加工、ハンドリング及びレイアップする十分な時間を確保できるように可能な限り長いことが重要である。
【0009】
複合体の引張性能を向上させる最も一般的な方法は、マトリックスと繊維の接着強度を弱めるために、繊維の表面を変化させることである。これは、黒鉛化の後の繊維の電解酸化表面処理の量を減少させることによって達成し得る。マトリックス繊維接着強度を低下させると、界面剥離によって、露出したフィラメント端部に応力消散のためのメカニズムが導入される。この界面剥離は、複合部品が張力で破壊する前に耐えることができる引張損傷の量を増加させる。
【0010】
或いは、コーティング又は「下塗剤」を繊維に塗布すると、樹脂−繊維接着強度を低下させることができる。この手法は、ガラス繊維複合体において良く知られているが、炭素繊維で強化された複合体にも適用され得る。これらの手法を用いて、引張強度の有意な向上を達成することが可能である。しかし、それらの改善には、樹脂マトリックスと繊維の間の高度な接着強度を必要とする衝撃後圧縮(CAI)強度などの特性の低下を伴う。
【0011】
別の代替的な手法は、より低弾性率のマトリックスを使用することである。低弾性率の樹脂を有すると、破断したフィラメントの直近に蓄積される応力のレベルが小さくなる。これは、通常、本質的により低弾性率を有する樹脂(例えばシアン酸エステル)を選択することによっても、エラストマー(カルボキシ末端ブタジエン−アクリロニトリル[CTBN]及びアミン末端ブタジエン−アクリロニトリル[ATBN]等)などの成分を組み込むことによっても達成される。これらの様々な手法の組合せも良く知られている。
【0012】
より低弾性率の樹脂を選択することは、複合体の引張強度を向上させる上で有効であり得る。しかし、これは、典型的には、衝撃後圧縮(CAI)強度及び開口圧縮(OHC)強度などの圧縮特性の低下によって測定される損傷許容性への傾向をもたらし得る。したがって、引張強度及び損傷許容性の両方を同時に向上させることは、非常に困難である。
【0013】
多層のプレプレグは、積層構造を有する複合部品を形成するのに広く使用される。当該複合部品の剥離は、重要な破壊形態である。2つの層の接着が互いに剥脱したときに剥離が生じる。重要な設計制限要因は、剥離を開始するために必要なエネルギー及びそれを伝搬させるのに必要なエネルギーの両方を含む。剥離の開始及び進行は、モードI及びモードII破壊靱性を調べることによってしばしば測定される。破壊靱性は、通常、一方向の繊維配向を有する複合材料を使用することによって測定される。複合材料の層間破壊靱性は、G1c(二重片持梁)及びG2c(端切欠屈曲)試験を用いて定量される。モードIでは亀裂前積層体破壊が剥離力によって制御され、モードIIでは亀裂が剪断力によって伝搬される。G2c層間破壊靱性は、CAIに関連する。高度な損傷許容性を示すプレプレグ材料は、高いCAI及びG2c値をも有する。
【0014】
層間破壊靱性を向上させるための簡単な方法は、プレプレグの層間のインターリーブとして熱可塑性シートを導入することによってマトリックス樹脂の延性を向上させることであった。しかし、この手法は、使用するのが困難である硬い不粘着性材料をもたらす傾向がある。別の手法は、繊維層の間に約25から30ミクロンの厚さの強靱な樹脂中間層を含めることであった。プレプレグ製造物は、強靱な熱可塑性微粒子を含む樹脂リッチ面を含む。中間層で強化された材料では、モードII破壊靱性の初期値が、中間層のない炭素繊維プレプレグの当該値の約4倍であっても、破壊靱性値は、亀裂が伝搬するにつれて低下し、非インターリーブ系の値とほぼ同じである低い値で収束する。究極的には、G2c平均値は、亀裂が複合体の非常に強靱な層間(樹脂リッチ)領域からより靱性の低い層間(繊維)領域に移動するのに伴って極大値になる。
【0015】
既存のプレプレグは、強度が高く、損傷許容性を有する複合部品を提供する上でのそれらの意図する使用に十分に適するが、さらに高度な強度(例えば、引張強度及び圧縮強度)、損傷許容性(CAI)及び層間破壊靱性(G1c及びC2c)を有する複合部品を製造するのに使用できるプレプレグを提供する継続的な必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、高度な強度、損傷許容性及び層間破壊靱性を有する複合部品を形成するために成形できる予備含浸複合材料(プレプレグ)が提供される。これは、未硬化又は硬化複合部品の物理又は化学特性に実質的な悪影響をもたらすことなく達成される。
【0017】
本発明の予備含浸複合材料は、強化繊維及びマトリックスで構成される。マトリックスは、二官能性エポキシ樹脂と多官能性芳香族エポキシ樹脂の組合せで構成された樹脂成分を含む。マトリックスは、熱可塑性粒子成分、熱可塑性強化剤及び硬化剤をさらに含む。本発明の特徴として、熱可塑性成分は、高融点熱可塑性粒子及び低融点熱可塑性粒子で構成される。低融点粒子は、硬化プロセス中に溶融して、高又は低融点熱可塑性粒子が単独で使用される場合に達成できない損傷許容性及び層間靱性の向上をもたらす。
【0018】
本発明は、プレプレグを製造するための方法、及びプレプレグを広範な種類の複合部品に成形するための方法をも包含する。本発明は、改善されたプレプレグを使用して製造される複合材料をも包括する。
【0019】
本発明による高融点熱可塑性粒子と低融点熱可塑性粒子の両方のブレンドを使用すると、従来の系と比較して損傷許容性及び層間靱性が向上した複合部品を形成するために成形することができるプレプレグが形成されることが見いだされた。
【0020】
また、驚いたことには、プレプレグの他の望ましい物理特性(例えば、タック及びアウトライフ)又は得られる硬化複合材料の当該特性(例えば、マトリックス−繊維接着、強度、応力消散及び圧縮性能等)に実質的に影響を与えることなく、損傷許容性及び層間靱性が向上するという利点を得ることができることが見いだされた。
【0021】
本発明の上記及び多くの他の特徴及び付随する利点は、以下の詳細な説明を参照することによってより十分に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の予備含浸複合材料(プレプレグ)を、航空宇宙工業、並びに高度な構造強度及び損傷許容性が必要とされる他の用途における複合部品を形成するのに使用されている既存のプレプレグの代用として使用することができる。本発明は、プレプレグを製造するために使用されている既存の樹脂の代わりに本発明の樹脂配合物を使用することを含む。したがって、本発明の樹脂配合物は、従来のプレプレグ製造法及び硬化法のいずれにも好適に使用される。
【0023】
本発明の予備含浸複合材料は、強化繊維及び未硬化マトリックスで構成される。強化繊維は、プレプレグ工業で使用される従来の繊維構成のいずれかであり得る。しかし、マトリックスは、従来のプレプレグ工業の慣例から逸脱したものである。マトリックスは、二官能性エポキシ樹脂と、2を超える官能価を有する少なくとも1つの多官能性芳香族エポキシ樹脂との組合せで構成される従来の樹脂成分を含む。マトリックスは、熱可塑性粒子成分、熱可塑性強化剤及び硬化剤をさらに含む。以下に詳細に説明するように、本発明の特徴は、熱可塑性粒子成分が、硬化温度を超える融点を有する高融点熱可塑性粒子、及び硬化温度以下の融点を有する低融点熱可塑性粒子の両方を含むことである。
【0024】
高融点熱可塑性粒子と低融点熱可塑性粒子のブレンドを使用すると、より高度な損傷許容性(CAI)及び層間靱性が複合材料に付与されることが発見された。これは、衝撃後圧縮(CAI)性能及び層間靱性(G1c及びG2c)の向上をもたらす。本発明のマトリックス樹脂は、また、非常に高度な引張強度(例えば開口引張強度−OHT)を複合材料に付与する。
【0025】
マトリックスの樹脂成分を形成するのに使用される二官能性エポキシ樹脂は、任意の好適な二官能性エポキシ樹脂であってよい。これは、2つのエポキシ官能基を有する任意の好適なエポキシ樹脂を含むことが理解されるであろう。二官能性エポキシ樹脂は、飽和、不飽和、脂環式(cylcoaliphatic)、脂環式(alicyclic)又は複素環式であってよい。樹脂成分は、マトリックスの40から65重量パーセントを構成すべきである。
【0026】
二官能性エポキシ樹脂としては、例として、ビスフェノールF、ビスフェノールA(場合によって臭素化されている)のジグリシジルエーテル、フェノール−アルデヒド付加物のグリシジルエーテル、脂環式ジオールのグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、エピコート、エポン、芳香族エポキシ樹脂、エポキシ化オレフィン、臭素化樹脂、芳香族グリシジルアミン、複素環式グリシジルイミド及びアミド、グリシジルエーテル、フッ化エポキシ樹脂、又はそれらの任意の組合せに基づくものが挙げられる。二官能性エポキシ樹脂は、好ましくは、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ジグリシジルジヒドロキシナフタレン、又はそれらの任意の組合せから選択される。ビスフェノールFのジグリシジルエーテルが最も好適である。ビスフェノールFのジグリシジルエーテルは、商品名Araldite GY281及びGY285でHuntsman Advanced Materials社(ニューヨーク州Brewster)から市販されている。二官能性エポキシ樹脂を単独で、又は他の二官能性エポキシとの任意の好適な組合せで使用することができる。
【0027】
二官能性エポキシ樹脂は、マトリックス樹脂の10重量%から40重量%の範囲で存在する。好ましくは、二官能性エポキシ樹脂は、15重量%から25重量%の範囲で存在する。より好ましくは、二官能性エポキシ樹脂は、15重量%から20重量%の範囲で存在する。
【0028】
マトリックスの第2の成分は、2を超える官能価を有する1つ又は複数のエポキシ樹脂である。多官能性エポキシの少なくとも1つがその骨格に少なくとも1つのメタ置換フェニル環を有するのが好適である。好適な多官能性エポキシ樹脂は、三官能性又は四官能性のエポキシ樹脂である。最も好ましくは、多官能性エポキシ樹脂は、三官能性エポキシと多官能性エポキシの組合せになる。多官能性エポキシ樹脂は、飽和、不飽和、脂環式(cylcoaliphatic)、脂環式(alicyclic)又は複素環式であってよい。
【0029】
好適な多官能性エポキシ樹脂としては、例として、フェノール及びクレゾールエポキシノボラック、フェノール−アルデヒド付加物のグリシジルエーテル;二脂肪族ジオールのグリシジルエーテル;ジグリシジルエーテル;ジエチレングリコールジグリシジルエーテル;芳香族エポキシ樹脂;二脂肪族トリグリシジルエーテル、脂肪族ポリグリシジルエーテル;エポキシ化オレフィン;臭素化樹脂;芳香族グリシジルアミン;複素環式グリシジルイミジン及びアミド;グリシジルエーテル;フッ化エポキシ樹脂又はそれらの任意の組合せに基づくものが挙げられる。
【0030】
三官能性エポキシ樹脂は、化合物の骨格内のフェニル環上のパラ又はメタ位に直接又は間接的に置換された3つのエポキシ基を有するものとして理解される。既に述べたように、メタ位が好適である。四官能性エポキシ樹脂は、化合物の骨格内のフェニル環上のメタ又はパラ位に直接又は間接的に置換された4つのエポキシ基を有するものとして理解される。
【0031】
フェニル環は、他の好適な非エポキシ置換基でさらに置換され得ることも考えられる。好適な置換基としては、例として、水素、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシル、アリール、アリールオキシル、アラルキルオキシル、アラルキル、ハロ、ニトロ又はシアノラジカルが挙げられる。好適な非エポキシ置換基は、フェニル環にパラ又はオルト位で結合されていてもよく、又はエポキシ基に占領されていないメタ位で結合されていてもよい。好適な四官能性エポキシ樹脂としては、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(三菱ガス化学株式会社(東京都千代田区、日本)から商品名Tetrad−Xで市販されている)及びErisys GA−240(CVC Chemicals社(ニュージャージ州Morrestown))が挙げられる。好適な三官能性エポキシ樹脂としては、例として、フェノール及びクレゾールエポキシノボラック;フェノール−アルデヒド付加物のグリシジルエーテル;芳香族エポキシ樹脂;二脂肪族トリグリシジルエーテル;脂肪族ポリグリシジルエーテル;エポキシド化オレフィン;臭素化樹脂、芳香族グリシジルアミン及びグリシジルエーテル;複素環式グリシジルイミド及びアミド;グリシジルエーテル;フッ化エポキシ樹脂又はそれらの組合せに基づくものが挙げられる。
【0032】
好適な三官能性エポキシ樹脂は、トリグリシジルメタ−アミノフェノールである。トリグリシジルメタ−アミノフェノールは、商品名Araldite MY0600でHuntsman Advanced Materials社(Monthey、スイス)から、そして商品名ELM−120で住友化学株式会社(大阪、日本)から市販されている。
【0033】
好適な多官能性エポキシ樹脂のさらなる例としては、例として、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(Araldite MY720及びMY721としてHuntsman Advanced Materials社(Monthey、スイス)から市販されているTGDDM、又は住友化学株式会社のELM434)、パラアミノフェノールのトリグリシジルエーテル(Araldite MY0500又はMY0510としてHuntsman Advanced Materials社から市販されている)、Tactix556などのエポキシ樹脂に基づくジシクロペンタジエン(Huntsman Advanced Materials社から市販されている)、トリス−(ヒドロキシフェニル)、及びTactix742(Huntsman Advanced Materials社から市販されている)などのメタン系エポキシ樹脂が挙げられる。他の好適な多官能性エポキシ樹脂としては、DEN438(Dow Chemicals社(ミシガン州Midland))、DEN439(Dow Chemicals社)、Araldite ECN1273(Huntsman Advanced Materials社)及びAraldite ECN1299(Huntsman Advanced Materials社)が挙げられる。
【0034】
2を超える官能価を有するエポキシ樹脂は、樹脂マトリックスの25重量%から45重量%の範囲で存在する。好ましくは、20から30重量%の三官能性エポキシ樹脂及び5から15重量%の四官能性エポキシを含む混合物が提供される。
【0035】
本発明によるプレプレグマトリックスは、意図する硬化温度を超える融点を有する熱可塑性粒子及び意図する硬化温度以下の融点を有する熱可塑性粒子で構成される熱可塑性粒子成分をも含む。本発明によるエポキシ樹脂の硬化温度は、典型的には、140℃から200℃である。好適な硬化温度は、160℃から190℃の範囲であり、約175℃から185℃の硬化温度が特に好適である。高融点(即ち硬化温度を超える融点)を有する粒子は、本明細書では、「高融点」熱可塑性粒子と称する。低融点(即ち硬化温度以下の融点)を有する粒子は、本明細書では、「低融点」熱可塑性粒子と称する。高融点粒子は、硬化温度より少なくとも10℃高い融点を有することが好適である。低融点粒子は、硬化温度より低く、より好ましくは硬化温度より少なくとも10℃低い融点を有することが好適である。
【0036】
熱可塑性成分は、20から80重量%の高融点熱可塑性粒子及び20から80重量%の低融点熱可塑性粒子を含むべきである。好ましくは、熱可塑性成分は、40から60重量%の高融点熱可塑性粒子及び40から60重量%の低融点熱可塑性粒子を含むことになる。より好ましくは、高及び低融点熱可塑性粒子は、等量で存在する。
【0037】
熱可塑性粒子は、ホモポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー又はターポリマーの形であり得る。熱可塑性粒子は、炭素−炭素結合、炭素−酸素結合、炭素−窒素結合、珪素−酸素結合及び炭素−硫黄結合から選択される一重又は多重結合を有する熱可塑性樹脂であってよい。以下の部分を主ポリマー骨格又は主ポリマー骨格の側鎖ペンダントに組み込む1つ又は複数の反復単位がポリマーに存在していてもよい:アミド部分、イミド部分、エステル部分、エーテル部分、カーボネート部分、ウレタン部分、チオエーテル部分、スルホン部分及びカルボニル部分。熱可塑性粒子は、部分的に架橋された構造を有することもできる。粒子は、結晶質又は非晶質又は部分的に結晶質であってよい。
【0038】
熱可塑性粒子の好適な例としては、例として、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリーレート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン及びポリエーテルケトンが挙げられる。ポリアミドは、好適なタイプの熱可塑性粒子である。しかし、高融点の形及び低融点の形の両方で提供できれば、他の粒子を使用することができる。
【0039】
ポリアミド粒子をポリアミド6(カプロラクタム−PA6)、ポリアミド12(ラウロラクタム−PA12)、ポリアミド11、ポリウレタン、ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリメタクリル酸メチル、高密度ポリエチレンスルホン、又はそれらの任意の組合せから製造することができる。好適な熱可塑性粒子は、約140℃から240℃の融点を有するポリアミド粒子である。粒子は、100ミクロン未満の粒径を有するべきである。粒子は、粒径が5から60ミクロン、より好ましくは10から30ミクロンの範囲であることが好適である。平均粒径は20ミクロン付近であることが好適である。粒子は、実質的に球形であるべきである。粒子を、PCT出願WO2006/051222に記載のアニオン重合、共押出、沈殿重合、エマルジョン重合又は極低温粉砕によって製造することができる。粒子は、粉砕又は沈殿でなく、直接重合によって製造されるのが好適である。本発明による高又は低融点粒子として使用できる好適なポリアミド粒子は、Arkema of France社から商品名Orgasolで市販されている。
【0040】
熱可塑性粒子成分は、マトリックスの6重量%から20重量%の範囲で存在する。好ましくは、3から10重量%の高融点熱可塑性粒子及び3から10重量%の低融点熱可塑性粒子が存在することになる。等量の高及び低融点粒子で構成され、マトリックスの9から14重量%を構成する熱可塑性成分がより好適である。熱可塑性粒子成分における低融点粒子の量は、10から90重量パーセントの範囲で変動し、高融点粒子は、それに応じて熱可塑性粒子成分の90から10重量パーセントの範囲で変動し得る。より好適な範囲は、低融点粒子が25から75重量パーセントであり、対応する高融点粒子の変動範囲が75から25重量パーセントである。
【0041】
ポリアミド粒子は、具体的なポリアミド、共重合度及び結晶度に応じて異なる溶融温度を有する様々なグレードで得られる。主にポリアミド6(PA6)を含む粒子は、典型的には、典型的なエポキシプレプレグ硬化温度を十分に上回る190℃を超える融点を有する。したがって、PA粒子が硬化中に溶解するとしても極めてわずかである。Orgasol1002D NAT1(51%に等しい結晶度、26℃のガラス転移温度(Tg)、1.15g/cmの密度(ISO1183)、60200(g/モル)nの分子量、0.93の溶液粘度及び217℃の融点、並びに20ミクロンの平均粒径を有する100%PA6粒子)は、高融点ポリアミド粒子の例である。高融点ポリアミド粒子の別の例は、43%に等しい結晶度、29℃のTg、1.09g/cmの密度(ISO1183)、60800(g/モル)nの分子量及び1.01の溶液粘度を有するPA6/PA12コポリマー粒子(80%のPA6及び20%のPA12)を含むOrgasol3202 D Nat1である。Orgasol3202 D Nat1におけるポリアミドコポリマー粒子は、20ミクロンの平均粒子及び194℃の融点を有する。粒子の融点がマトリックスの硬化温度より低くならず、好ましくは硬化温度より少なくとも10℃高ければ、要望に応じて、コポリマーにおけるPA12の量を20%より多くすることができる。
【0042】
ポリアミド12(PA12)粒子、及び約70%未満のPA6を有するPA6とPA12のコポリマーは、エポキシプレプレグの典型的な硬化温度未満の溶融温度を有する。これらの種類の低融点粒子は、硬化温度で実質的に溶融し、硬化複合体が冷却されると再び粒子に成形される。好適な低融点ポリアミド粒子は、PA6とPA12のコポリマーである。例えば、Orgasol3502D Nat1は、融点が142℃であり、粒径の平均が約20ミクロンである50%のPA12と50%のPA6とのコポリマー(結晶度−26%、Tg−26℃、密度−1.07g/cm(ISO1183)、分子量−68200(g/モル)n、溶液粘度1.00)である。好適な低融点ポリアミド粒子のさらなる例としては、1)融点が160℃であり、平均粒径が17から24ミクロンであり、5%未満の粒子が10ミクロン未満の直径を有し、10%未満の粒子が30ミクロンを超える直径を有する80%のPA12と20%のPA6とのコポリマー(分子量−約54000(g/モル)n、溶液粘度1.0)であるOrgasol3803 DNAT1;及び2)コポリマーの分子量がより小さく、溶液粘度が0.71である点を除いてはOrgasol3803 DNAT1と同じである開発グレードOrgasol CG199が挙げられる。粒子の融点がマトリックスの硬化温度以下であり、好ましくは硬化温度より少なくとも10℃低いのであれば、低融点ポリアミドコポリマー粒子におけるPA12及びPA6の割合は、Orgasol3502D Nat1及びOrgasol3803D Nat1について示されている割合より大きくなっても小さくなってもよい。いくつかのポリアミド粒子は、プレプレグについて選択される硬化温度に応じて低又は高融点粒子として機能することができる。例えば、選択された硬化温度が160℃未満である場合は、Orgasol3803D Nat1粒子は高融点粒子であると考えられる。しかし、選択された硬化温度が160℃以上である場合は、Orgasol3803D Nat1粒子は、低融点であると考えられる。
【0043】
プレプレグマトリックス樹脂は、少なくとも1つの硬化剤を含む。好適な硬化剤は、本発明のエポキシ官能化合物の硬化を容易にし、特に、当該エポキシ化合物の開環重合を容易にする硬化剤である。特に好適な実施形態において、当該硬化剤は、その開環重合において1つ又は複数のエポキシ官能化合物と重合する化合物を含む。2種以上の当該硬化剤を併用することができる。
【0044】
好適な硬化剤としては、無水物、特に、ナジ酸無水物(NA)、メチルナジ酸無水物(MNA−Aldrich社から入手可能)、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物(HHPA−Anhydrides and Chemicals Inc.(ニュージャージ州Newark)から入手可能)、メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA−Anhydrides and Chemicals Inc.から入手可能)、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(MHHPA−Anhydrides and Chemicals Inc.から入手可能)、)エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサクロロエンドメチレン−テトラヒドロフタル酸無水物(Chlorentic Anhydride−Velsicol Chemical Corporation社(イリノイ州Rosemont)から入手可能)、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、マレイン酸無水物(MA−Aldrich社から入手可能)、コハク酸無水物(SA)、ノネニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物(DDSA−Anhydrides and Chemicals Inc.から入手可能)、ポリセバシン酸ポリ無水物及びポリアゼライン酸ポリ無水物などのポリカルボン酸無水物が挙げられる。
【0045】
さらなる好適な硬化剤は、芳香族アミン、例えば、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、並びに4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4’−DDS−Hunstman社から入手可能)、4−アミノフェニルスルホン及び3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS)などのポリアミノスルホンを含むアミンである。
【0046】
また、好適な硬化剤としては、エチレングリコール(EG−Aldrich社から入手可能)、ポリ(プロピレングリコール)及びポリ(ビニルアルコール)などのポリオール;並びに約550〜650の平均分子量を有するフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、約600〜700の平均分子量を有するp−t−ブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、及び約1200〜1400の平均分子量を有するp−n−オクチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂(それぞれHRJ2210、HRJ−2255及びSP−1068としてSchenectady Chemicals,Inc。(ニューヨーク州Schenectady)から入手可能)などのフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を挙げることができる。さらに、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂として、CTUグアナミンと、Ajinomoto USA Inc.(ニュージャージ州Teaneck)からCG−125として市販されている、398の分子量を有するフェノール−ホルムアルデヒド樹脂との組合せも好適である。
【0047】
異なる市販の組成物を硬化剤として本発明に使用することができる。1つの当該組成物は、Ajinomoto USA Inc.から入手可能なジシアンジアミド系配合物であるAH−154である。好適な他の組成物としては、ポリアミドとジエチルトリアミンとトリエチレンテトラアミンとの混合物であるAncamide400、アミドアミンとイミダゾリンとテトラエチレンペンタアミンとの混合物であるAncamide506、及び4,4’−メチレンジアニリンと1,3−ベンゼンジアミンとの混合物であるAncamide1284が挙げられる。これらの配合物は、Pacific Anchor Chemical,Performance Chemical Division,Air Products and Chemicals,Inc.(ペンシルベニア州Allentown)から入手可能である。
【0048】
さらなる好適な硬化剤としては、Sigma Aldrich社(ミズーリ州St.Louis)から入手可能なイミダゾール(1,3−ジアザ−2,4−シクロペンタジエン)、Sigma Aldrich社から入手可能な2−エチル−4−メチルイミダゾール、及びAir Products&Chemicals,Incから入手可能なAnchor1170などの三フッ化ホウ素アミン錯体が挙げられる。
【0049】
さらなる好適な硬化剤としては、Ajinomoto USA Inc.からATUとして市販されている3,9−ビス(3−アミノプロピル−2,4,8,10−テトロキサスピロ[5.5]ウンデカン、並びにやはりAjinomoto USA Inc.からAjicure UDHとして市販されている脂肪族ジヒドラジド、及びMorton International,Inc.(イリノイ州Chicago)からLP540として市販されているメルカプト末端ポリスルフィドが挙げられる。
【0050】
硬化剤は、好適な温度で複合材料の樹脂成分と混合すると該樹脂成分を硬化させるようなものが選択される。樹脂成分を十分に硬化させるのに必要とされる硬化剤の量は、硬化される樹脂の種類、所望の硬化温度及び硬化時間を含むいくつかの要因に応じて異なることになる。硬化剤は、典型的には、シアノグアニジン、芳香族及び脂肪族アミン、酸無水物、ルイス酸、置換尿素、イミダゾール並びにヒドラジンを含む。それぞれの具体的な状況に対して必要とされる硬化剤の具体的な量を十分に確立された慣例の実験によって決定することができる。
【0051】
例示的な好適な硬化剤としては、いずれもHuntsman社から市販されている4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4’−DDS)及び3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS)が挙げられる。硬化剤は、未硬化マトリックスの5重量%から45重量%の範囲の量で存在する。好ましくは、硬化剤は、10重量%から30重量%の範囲の量で存在する。より好ましくは、硬化剤は、未硬化マトリックスの15重量%から25重量%の範囲で存在する。16重量%から22重量%の硬化剤を含むマトリックス樹脂が最も好適である。
【0052】
4,4’−DDSは、好適な硬化剤である。それは、好ましくは、15重量%から25重量%の範囲の量で単独の硬化剤として使用される。実質的な量の3,3’−DDSを硬化剤として使用することは、好適でない。より反応性の高い3,3’−DDSは、ニート硬化樹脂の強度を向上させるが、得られたプレプレグは、タック性がより反応性の低い4,4’−DDSを使用したものより劣ることが予想される。したがって、硬化複合部品のプレプレグアウトライフ、タック及び機械性能の最適なバランスを達成するために、4,4’−DDS等のより反応性の低い硬化剤を約70から80パーセントのアミン対エポキシ化学量論比で使用するのが好適である。
【0053】
また、本発明のマトリックスは、好ましくは、熱可塑性強化剤を含む。あらゆる好適な熱可塑性ポリマーを強化剤として使用することができる。典型的には、熱可塑性ポリマーは、硬化剤を添加する前に、加熱によって樹脂混合物に溶解する粒子として樹脂混合物に添加される。熱可塑性強化剤が高温のマトリックス樹脂前駆体(即ちエポキシ樹脂のブレンド)に実質的に溶解すると、前駆体が冷却され、残留成分(硬化剤及び不溶性熱可塑性粒子)が添加される。
【0054】
例示的な熱可塑性強化剤/粒子は、ポリアミド、コポリアミド、ポリイミド、アラミド、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、高性能炭化水素ポリマー、液晶ポリマー、PTFE、エラストマー及びセグメント化エラストマーの熱可塑性樹脂の単独物又は組合せのいずれも含まれる。
【0055】
強化剤は、未硬化樹脂マトリックスの45重量%から5重量%の範囲で存在する。好ましくは、強化剤は、25重量%から5重量%の範囲で存在する。より好ましくは、強化剤は、20重量%から10重量%の範囲で存在する。最も好ましくは、強化剤は、マトリックス樹脂の13重量%から17重量%の範囲で存在する。好適な強化剤は、例として、住友化学株式会社から市販されている、商品名Sumikaexcel5003Pで販売されているPES粒子である。5003Pの代用品は、Solvayポリエーテルスルホン105RP、又はSolvay1054Pなどの非ヒドロキシル末端グレードである。
【0056】
マトリックス樹脂は、プレプレグのタック及びアウトライフ又は硬化複合部品の強度及び損傷許容性に悪影響を与えなければ、性能向上又は改質剤及びさらなる熱可塑性ポリマーなどのさらなる成分を含むこともできる。性能向上又は改質剤を、例えば、柔軟剤、強化剤/粒子、促進剤、コアシェルゴム、難燃剤、湿潤剤、顔料/染料、UV吸収剤、抗真菌化合物、充填剤、導電性粒子及び粘度調整剤から選択することができる。さらなる強化剤としての使用に好適なさらなる熱可塑性ポリマーとしては、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、アラミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルフィド、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド(PPO)及び改質PPOの単独物又は組合せのいずれも含まれる。
【0057】
好適な促進剤は、広く使用されてきたウロン化合物のいずれかである。単独で、又は組み合わせて使用することができる促進剤の具体的な例としては、N,N−ジメチル、N’−3,4−ジクロロフェニル尿素(ジウロン)、N’−3−クロロフェニル尿素(モヌロン)、及び好ましくはN,N−(4−メチル−m−フェニレンビス[N’,N’−ジメチル尿素](例えば、Degussaから入手可能なDyhard UR500)が挙げられる。
【0058】
好適な充填剤としては、例として、シリカ、アルミナ、チタニア、ガラス、炭酸カルシウム及び酸化カルシウムの単独物又は組合せのいずれも含まれる。
【0059】
好適な導電性粒子としては、例として、銀、金、銅、アルミニウム、ニッケル、導電グレードの炭素、バックミンスターフラーレン、炭素ナノチューブ及び炭素ナノ繊維の単独物又は組合せのいずれも含まれる。例えば、ニッケル被覆炭素粒子及び銀被覆銅粒子などの金属被覆充填剤を使用することもできる。
【0060】
マトリックス樹脂は、要望に応じて、さらなる非エポキシ熱硬化性ポリマー樹脂を含むことができる。熱硬化性樹脂は、硬化されると、溶融及び再成形に適さなくなる。本発明に好適な非エポキシ熱硬化性樹脂材料としては、フェノールホルマルデヒドの樹脂、尿素−ホルムアルデヒド、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン(メラミン)、ビスマレイミド、ビニルエステル樹脂、ベンゾキサジン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、シアン酸エステル樹脂、エポキシドポリマー又はそれらの任意の組合せが挙げられるが、それらに限定されない。熱硬化性樹脂は、好ましくは、エポキシド樹脂、シアン酸エステル樹脂、ビスマレイミド、ビニルエステル、ベンゾキサジン及びフェノール樹脂から選択される。要望に応じて、マトリックスは、レソルシノール系樹脂などのフェノール基を含むさらなる好適な樹脂、及びDCPD−フェノールコポリマーなどのカチオン重合によって形成された樹脂を含むことができる。さらなる好適な樹脂は、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂及び尿素−ホルムアルデヒド樹脂である。
【0061】
樹脂マトリックスは、標準的なプレプレグマトリックス処理に従って製造される。概して、様々なエポキシ樹脂が室温で混合されて、樹脂混合物が形成され、それに対して熱可塑性強化剤が添加される。次いで、この混合物は、強化剤を十分に溶融させるのに十分な時間にわたって、熱可塑性強化剤の融点より高い温度まで加熱される。次いで、混合物は、室温以下の温度まで冷却され、成分(不溶性の熱可塑性粒子、硬化剤及び存在すれば他の添加剤)の残りは、樹脂に混入されて、繊維強化材に含浸される最終的なマトリックス樹脂が形成される。
【0062】
マトリックス樹脂は、既知のプレプレグ製造技術のいずれかに従って繊維強化材に塗布される。繊維強化材に全体的又は部分的にマトリックス樹脂を含浸することができる。代替的な実施形態において、繊維強化材に隣接して接触するが、繊維強化材を実質的に含浸しない個別の層としてマトリックス樹脂を繊維強化材に塗布することができる。プレプレグは、典型的には、両側が保護膜で被覆され、早発的な硬化を回避するために典型的には室温よりはるかに低く保たれた温度で、保管及び出荷に向けてロール状に巻かれる。要望に応じて、他のプレプレグ製造法及び保管/出荷システムのいずれかを用いることができる。
【0063】
プレプレグの繊維強化材を、合成若しくは天然繊維又はそれらの組合せを含むハイブリッド又は混合繊維系から選択することができる。繊維強化材を、好ましくは、繊維ガラス、炭素又はアラミド(芳香族ポリアミド)繊維などの任意の好適な材料から選択することができる。繊維強化材は、好ましくは、炭素繊維である。
【0064】
繊維強化材は、亀裂(即ち延伸破断)繊維若しくは選択的に不連続の繊維、又は連続的な繊維を含むことができる。亀裂繊維又は選択的に不連続の繊維を使用すると、完全に硬化する前の複合材料のレイアップを容易にし、その成形能力を向上させることができることが考えられる。繊維強化材は、織物、非けん縮、不織布、一方向、又は準等方性細断プレプレグなどの多軸繊維構造の形であってよい。織物の形を無地、朱子織又は綾織スタイルから選択することができる。非けん縮及び多軸形は、いくつかの層及び繊維方向を有することができる。当該スタイル及び形は、複合強化材の分野で良く知られており、Hexcel Reinforcements(Villeurbanne、フランス)を含むいくつかの企業から市販されている。
【0065】
プレプレグは、連続テープ、トウプレグ、ウェブ又は細断長(細断及び切断を含浸後の任意の時点で実施することができる)の形であってよい。プレプレグは、接着膜又は表面膜であってよく、織物、編物及び不織布の様々な形の埋込み支持体をさらに有することができる。例えば、硬化時の空気の除去を容易にするために、プレプレグを完全又は部分的に含浸することができる。
【0066】
例示的な好適なマトリックス樹脂は、15重量%から20重量%のビスフェノール−Fジグリシジルエーテル;20重量%から30重量%のトリグリシジル−m−アミノフェノール(三官能性エポキシ樹脂);5から15重量%の四官能性パラグリシジルアミン;15重量%から25重量%のジアミノジフェニルスルホン(主に硬化剤としての4,4−DDS);3重量%から10重量%の高融点ポリアミド粒子(Orgasol1002D Nat1);3重量%から10重量%の低融点ポリアミド粒子(Orgasol3803D Nat1)及び強化剤としての10重量%から20重量%のポリ(エーテルスルホン)を含む。
【0067】
複合部品を形成するのに用いられる標準的な技術のいずれかを用いてプレプレグを成形することができる。典型的には、1つ又は複数の層のプレプレグが好適な金型に仕込まれ、硬化されて、最終的な複合部品が形成される。当該技術分野で知られている任意の好適な温度、圧力及び時間条件を用いて、本発明のプレプレグを完全又は部分的に硬化させることができる。典型的には、プレプレグは、160℃から190℃の温度のオートクレーブ内で硬化されることになる。より好ましくは、UV可視光放射、マイクロ波放射、電子ビーム、ガンマ放射、又は他の好適な熱若しくは非熱放射から選択される方法を用いて、複合材料を硬化させることができる。
【0068】
本発明の改善されたプレプレグから製造された複合部品は、多くの一次的及び二次的な航空宇宙構造物(翼、胴体及び隔壁等)などの製品の製造に用途を見いだすだけでなく、高度な引張強度、圧縮強度、層間破壊靱性及び耐衝撃損傷性が必要とされる自動車、鉄道及び海運用途を含む他の高性能複合体の用途にも有用である。
【0069】
次に、本発明をより容易に理解できるように、本発明の以下の背景情報及び実施例が参照される。
【0070】
(実施例1)
本発明による好適な例示的な樹脂配合物を、表1に示す。エポキシ成分を室温でポリエーテルスルホンと混合して樹脂ブレンドを形成し、それを60分間にわたって130℃まで加熱して、ポリエーテルスルホンに完全に溶解させることによってマトリックス樹脂を調製した。混合物を80℃まで冷却し、成分の残りを添加し、完全に混入させた。
表1
【表1】

【0071】
一方向炭素繊維の1つ又は複数の層に表1の樹脂配合物を含浸することによって、例示的なプレプレグを調製した。一方向炭素繊維を使用して、マトリックス樹脂の量が全未硬化プレプレグ重量の35重量パーセントであり、繊維の面積重量が190グラム毎平方メートル(gsm)であるプレプレグを製造した。標準的なプレプレグ作製手順を用いて様々なプレプレグレイアップを調製した。プレプレグを180℃のオートクレーブで約2時間にわたって硬化させた。次いで、硬化したプレプレグに対して標準的な試験を行って、以下に記載のようにそれらの引張強度、損傷許容性、層間破壊靱性を測定した。
【0072】
(45、−45、−45、45)構成の4層積層体を使用して、室温で面内剪断弾性率(IPM)を測定した。積層体をオートクレーブにて180℃で2時間にわたって硬化させ、0.75mmの公称厚さを得た。圧密化をC走査によって確認した。試験片を切り出し、ボーイングBMS8−276及び引用されているボーイング法に従って試験した。引用されている結果は、正規化されていない。
【0073】
24層準等方性積層体を使用して、270インチポンド衝撃後の衝撃後圧縮(CAI)強度を測定した。積層体をオートクレーブにて180℃で2時間にわたって硬化させた。最終的な積層体の厚さは、約4.5mmであった。圧密化をC走査によって確認した。試験片を機械切削し、衝撃を加え、BMS8−276によるボーイング試験法BSS7260に従って試験した。値を0.18インチの公称硬化積層体厚さに正規化した。
【0074】
16層の準等方性積層体を使用して、室温で開口圧縮(OHC)強度を測定した。積層体をオートクレーブにて180℃で2時間にわたって硬化させ、3mmの公称厚さを得た。圧密化をC走査によって確認した。試験片を機械切削し、BMS8−276によるボーイング試験法BMS BSS7260に従って試験した。値を0.12インチの公称硬化積層体厚さに正規化した。
【0075】
16層の準等方性積層体を使用して、室温で開口引張(OHT)強度を測定した。積層体をオートクレーブにて180℃で2時間にわたって硬化させ、1.5mmの公称厚さを得た。圧密化をC走査によって確認した。試験片を機械切削し、BMS8−276によるボーイング試験法BSS7260に従って試験した。値を0.06インチの公称硬化積層体厚さに正規化した。
【0076】
G1c及びG2cは、硬化積層体の層間破壊靱性の測定値を与える標準的な試験である。G1c及びG2cを以下のように測定した。3インチのフルオロエチレンポリマー(FEP)フィルムをクラックスタータとして作用するように、一端に沿って、繊維方向に垂直な層の中間面に挿入した20層の一方向積層体を硬化させた。積層体をオートクレーブにて180℃で2時間硬化させ、3.8mmの公称厚さを得た。圧密化をC走査によって確認した。G1c及びG2cの両方を同じ硬化積層体から機械切削した。G1cをボーイング試験法BSS7273に従ってG1cを試験し、G2cをBMS8−276に従って試験した。G1c及びG2cの値を正規化しなかった。
【0077】
硬化プレプレグは、約0.7msiのIPMを有していた。OHTは、72.2ksiであり、OHC及びCAIは、それぞれ45.0ksi及び55.7ksiであった。G1cは、2.4インチポンド/平方インチであり、G2cは、12.9インチポンド/平方インチであった。
【0078】
熱可塑性粒子成分に75重量%のOrgasol1002が存在し、25重量%のOrgasol3803が存在するように、Orgasol1002及びOrgasol3803に変更を加えた点を除いては、上記と同様にして第2の例示的なプレプレグを製造し、硬化させ、試験した。この実施例のプレプレグは、43.5ksiのOHC及び53.3ksiのCAIを有していた。G1cは、2.2インチポンド/平方インチであり、G2cは、11.6インチポンド/平方インチであった。
【0079】
比較プレプレグ(1C1及び1C2)を上記の好ましい例示的なプレプレグと同様にして製造し、試験した。高融点ポリアミド粒子と低融点ポリアミド粒子のブレンドの代わりに、13.5(1C1)及び9.5(1C2)重量パーセントの高融点Orgasol1002DNAT1ポリアミド6粒子を使用した点を除いては、1C1及び1C2は、例示的なプレプレグと同一であった。1C1についての得られた硬化プレプレグは、約0.70msiのIPS弾性率を有していた。OHTは、74.8ksiであり、OHC及びCAIは、それぞれ44.4ksi及び47.4ksiであった。G1cは、2.1インチポンド/平方インチであり、G2cは、6.7インチポンド/平方インチであった。1C2では、OHCは44.2ksiであり、CAIは52.8ksiであった。G1cは、1.9インチポンド/平方インチであり、G2cは、10.9インチポンド/平方インチであった。
【0080】
上記実施例は、高融点ポリアミド粒子と低融点ポリアミド粒子のブレンドを高融点ポリアミド粒子の代わりに使用すると、損傷許容性及び層間破壊靱性が予想外に大幅に向上することを実証している。また、この層間破壊靱性及び損傷許容性の向上は、プレプレグのアウトライフ及びタック、又は硬化部品の他の物理/化学特性に悪影響を与えることなく達成された。
【0081】
(実施例2)
実施例1と同様にしてさらなる例示的なプレプレグ(2a〜2c)を調製し、硬化させた。これらのプレプレグは、高融点ポリアミド粒子と低融点ポリアミド粒子のブレンドの種類及び/又は量を変えた異なるエポキシ樹脂配合物を使用していた。異なる炭素繊維を使用してプレプレグを調製した。プレプレグは、35重量%の樹脂を含み、268gsmの繊維面積重量を有していた。これらの例示的なプレプレグに使用される配合物を表2に示す。
表2
【表2】

【0082】
硬化プレプレグをエアバスAITM法に従って試験した。結果を表3に示す。
表3
【表3】

【0083】
表3に示される表2の組成物の機械特性を以下のように測定した。
【0084】
(45、−45、45、−45)構成の8層積層体を使用して、室温で面内剪断弾性率(IPM)及び弾性率(IPM)を測定した。積層体をオートクレーブにて180℃で2時間にわたって硬化させ、2mmの公称厚さを得た。圧密化をC走査によって確認した。試験片を切り出し、エアバス試験法AITM1.0002に従って試験した。引用されている結果は、正規化されていない。
【0085】
16層の準等方性積層体を使用して、270インチポンド衝撃後の衝撃後圧縮(CAI)を測定した。積層体をオートクレーブにて180℃で2時間にわたって硬化させた。最終的な積層体の厚さは、約4mmであった。圧密化をC走査によって確認した。試験片を切り出し、1994年6月2日発行のエアバス試験法AITM1.0010に従って試験した。結果を、EN3784法Bにより、公称硬化層厚さに対して60容量%の比率で正規化した。
【0086】
40/40/20のレイアップの20層積層体を使用して、開口圧縮(OHC)強度を室温で測定した。積層体をオートクレーブにて180℃で2時間にわたって硬化させ、5mmの公称厚さを得た。圧密化をC走査によって確認した。試験片を切り出し、エアバス試験法AITM1.0008に従って試験した。結果は、EN3784法Bにより、実施された計算による公称硬化層厚さに対して60容量%の比率で正規化された値である。
【0087】
40/40/20のレイアップの20層積層体を使用して、開口引張(OHT)強度を室温で測定した。積層体をオートクレーブにて180℃で2時間にわたって硬化させ、5mmの公称厚さを得た。圧密化をC走査によって確認した。試験片を切り出し、エアバス試験法AITM1.0008に従って試験した。結果は、EN3784法Bにより実施された計算による公称硬化層厚さに対して60容量%の比率で正規化された値である。
【0088】
本実施例におけるデータの生成に用いられたエアバス試験法(AITM)の多くを引用したエアバス標準AIMS05−01−002は、一次構造の複合材料に対するボーイング試験法を示すBMS8−276と似ている。しかし、エアバス試験法は、異なっており、異なるレイアップ及びサンプル寸法を利用している。
【0089】
高融点ポリアミド粒子と低融点ポリアミド粒子のブレンドを使用しなかった点を除いては、例示的なプレプレグと同様にして比較例2C1〜2C3を調製した。これらの比較例の配合物を表4に示す。
表4
【表4】

【0090】
硬化した比較プレプレグに実施例2a〜2cと同じ試験手順を適用した。結果を表5に示す。
表5
【表5】

【0091】
本実施例は、高融点ポリアミド粒子と低融点ポリアミド粒子のブレンドを使用すると、CAIが予想外に向上することを実証している。この向上は、未硬化及び硬化プレプレグの他の特性に悪影響を与えることなく達成される。表5に示されるように、Orgasol1002、3502及びCG199粒子(2C1〜2C3)の非ブレンド配合物のCAIは、それぞれ41.5〜42.5及び35.2ksiである。実施例2a〜2cのように、粒子をブレンドすると、得られるCAIは、予想外に、47.3〜49.3ksiまで向上する。これは、高又は低融点粒子を単独で使用した場合に達成できない予想外の利点である。
【0092】
(実施例3)
さらなる例示的なプレプレグ(3)及び比較プレプレグ(3C1及び3C2)を実施例1と同様にして製造した。実施例1の場合と同じ種類の炭素繊維を使用した。ただし、プレプレグの繊維面積重量を268gsmに増やし、四官能性パラ−グリシジルアミンを樹脂配合物から除外した。本実施例に使用した樹脂の配合物を表6に示す。
表6
【表6】

【0093】
硬化プレプレグに実施例2a〜2cと同じ試験手順を適用した。結果を表7に示す。
表7
【表7】

【0094】
本実施例は、高融点ポリアミド粒子と低融点ポリアミド粒子のブレンドを使用すると、CAIが予想外に向上することを実証している。この向上は、未硬化及び硬化プレプレグの他の特性に悪影響を与えることなく達成される。例示的なプレプレグ(3)の損傷許容性(CAI、OHT及びOHC)は、マトリックス樹脂に存在するポリアミド粒子が4重量%少ないが、比較プレプレグ3C1の損傷許容性を上回っていたことに留意されたい。
【0095】
(実施例4)
比較プレプレグ(C4)を実施例1と同様にして製造した。同じ種類の炭素繊維を使用した。ただし、プレプレグの繊維面積重量を268gsmに増やし、三官能性メタ−グリシジルアミンの代わりに三官能性パラ−グリシジルアミンを使用した。これらの比較プレプレグの樹脂配合物を表8に示す。
表8
【表8】

【0096】
硬化した比較プレプレグ(C4)に対して実施例2a〜2cと同じ試験を行った。硬化プレプレグ(C4)は、約15.2ksiのIPS及び約0.75msiのIPMを有していた。OHTは、86.2ksiであり、OHC及びCAIは、それぞれ51.8ksi及び45.5ksiであった。
【0097】
C4樹脂配合物の熱可塑性樹脂構粒子成要素における高及び低融点ポリアミド粒子の種類及び量を変更することによって本発明による例示的なプレプレグを製造する。例示的な組合せとしては、4a)6.75重量%のOragsol1002D Nat1と6.75重量%のOragsol3803D Nat1;4b)6.75重量%のOragsol1002D Nat1と6.75重量%のOragsol3502D Nat1;4c)6.75重量%のOragsol3202D Nat1と6.75重量%のOragsol3803D Nat1;及び4d)6.75重量%のOragsol3202D Nat1と6.75重量%のOragsol3502D Nat1が挙げられる。
【0098】
上記例示的なプレプレグ4a〜4dは、いずれも、実施例2a〜2cと同じ試験が実施された場合に、比較例(C4)に示される上記結果と比較して、損傷許容性(CAI)の向上を示すことになる。これらの向上は、未硬化及び硬化プレプレグの他の物理及び化学特性に悪影響を与えることなく達成される。
【0099】
この詳細な説明に既に記載した範囲が遵守されるのであれば、4a〜4bに示されるポリアミド粒子の相対量を変更し、樹脂におけるポリアミド粒子の全量を変更することによって他の例示的なプレプレグを製造することができる。
【0100】
これまでに記載した本発明の例示的な実施形態を読むと、その中の開示内容は例示にすぎず、本発明の範囲内で様々な他の変更、改造及び修正を加えることができることを当業者は認識するはずである。したがって、本発明は、上記実施形態によって制限されず、以下の請求項によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化温度で硬化する予備含浸複合材料であって、
A)強化繊維と、
B)a)二官能性エポキシ樹脂、及び2を超える官能価を有する少なくとも1つの多官能性芳香族エポキシ樹脂を含む樹脂成分、
b)前記硬化温度を超える融点を有する高融点熱可塑性粒子、及び前記硬化温度と同じかそれ未満の融点を有する低融点熱可塑性粒子を含む熱可塑性粒子成分、
d)熱可塑性強化剤、及び
e)硬化剤
を含むマトリックスとを含む予備含浸複合材料。
【請求項2】
前記硬化温度が、140℃から200℃である、請求項1に記載の予備含浸複合材料。
【請求項3】
前記高融点熱可塑性粒子が、ポリアミド6からなる群から選択され、前記低融点熱可塑性粒子が、ポリアミド6とポリアミド12のコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の予備含浸複合材料。
【請求項4】
前記強化繊維が、ガラス、炭素及びアラミドからなる群から選択される、請求項1に記載の予備含浸複合材料。
【請求項5】
前記二官能性エポキシ樹脂が、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ジグリシジルジヒドロキシナフタレン及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の予備含浸複合材料。
【請求項6】
前記樹脂成分が、三官能性メタ−グリシジルアミン及び四官能性パラ−グリシジルアミンを含む、請求項1に記載の予備含浸複合材料。
【請求項7】
前記熱可塑性成分における前記高融点熱可塑性粒子の量が、前記熱可塑性成分における前記低融点熱可塑性粒子の量とほぼ等しい、請求項1に記載の予備含浸複合材料。
【請求項8】
前記強化剤が、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、アラミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルフィド、ポリカーボネート及びポリフェニレンオキシドからなる群から選択される、請求項1に記載の予備含浸複合材料。
【請求項9】
前記硬化剤が、芳香族アミンである、請求項1に記載の予備含浸複合材料。
【請求項10】
前記マトリックスが、
40から65重量パーセントの前記樹脂成分、
3から10重量パーセントの前記高融点熱可塑性粒子、
3から10重量パーセントの前記低融点熱可塑性粒子、
10から20重量パーセントの前記熱可塑性強化剤、及び
15から25重量パーセントの前記硬化剤
を含む、請求項1に記載の予備含浸複合材料。
【請求項11】
前記樹脂成分が、三官能性メタ−グリシジルアミン及び四官能性パラ−グリシジルアミンを含む、請求項10に記載の予備含浸複合材料。
【請求項12】
前記二官能性エポキシ樹脂が、ビスフェノールFのジグリシジルエーテルである、請求項11に記載の予備含浸複合材料。
【請求項13】
前記高融点熱可塑性粒子が、ポリアミド6からなる群から選択され、前記低融点熱可塑性粒子が、ポリアミド6とポリアミド12のコポリマーからなる群から選択される、請求項12に記載の予備含浸複合材料。
【請求項14】
前記熱可塑性強化剤が、ポリエーテルスルホンである、請求項13に記載の予備含浸複合材料。
【請求項15】
前記硬化剤が、4,4−ジアミノジフェニルスルホンである、請求項14に記載の予備含浸複合材料。
【請求項16】
前記熱可塑性成分における前記高融点熱可塑性粒子の量が、前記熱可塑性成分における前記低融点熱可塑性粒子の量とほぼ等しい、請求項13に記載の予備含浸複合材料。
【請求項17】
前記マトリックスが、
15から20重量パーセントのビスフェノールFのジグリシジルエーテル、
20から30重量パーセントの三官能性メタ−グリシジルアミン、
5から15重量パーセントの四官能性パラ−グリシジルアミン、
3から10重量パーセントのポリアミド6粒子、
3から10重量パーセントのポリアミド6/12コポリマー粒子、
10から20重量パーセントのポリエーテルスルホン、及び
15から25重量パーセントの4,4−ジアミノジフェニルスルホン
を含む、請求項15に記載の予備含浸複合材料。
【請求項18】
前記マトリックスが前記硬化温度で硬化された、請求項1に記載の予備含浸複合材料を含む複合部品。
【請求項19】
硬化温度で硬化する予備含浸複合材料を製造するための方法であって、
A)強化繊維を提供する工程と、
B)前記強化繊維にマトリックスを含浸する工程であって、前記マトリックスは、
a)二官能性エポキシ樹脂、及び2を超える官能価を有する少なくとも1つの多官能性芳香族エポキシ樹脂を含む樹脂成分、
b)前記硬化温度を超える融点を有する高融点熱可塑性粒子、及び前記硬化温度と同じかそれ未満の融点を有する低融点熱可塑性粒子を含む熱可塑性粒子成分、
d)熱可塑性強化剤、及び
e)硬化剤
を含む工程とを含む方法。
【請求項20】
複合部品を製造するための方法であって、請求項1に記載の予備含浸複合材料を前記硬化温度で硬化させる工程を含む方法。

【公表番号】特表2010−525101(P2010−525101A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504043(P2010−504043)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/004281
【国際公開番号】WO2008/130484
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(503308494)ヘクセル コーポレイション (15)
【Fターム(参考)】