説明

熱媒ボイラ

【課題】 燃焼量に依らず、燃料供給路に吸引して混合する排ガスと、燃料ガスとを常に一定の比率で混合して、NOx濃度を確実に低減することのできる熱媒ボイラを得る。
【解決手段】 気体燃料を燃焼させるボイラから排出される排ガスと送風機7を用いてバーナ1に送る燃焼用空気とを熱交換して燃焼用空気を予熱するレキュペレータ9を備えた熱媒ボイラであって、燃料ガス供給ライン10に、バーナ1に供給される空気量に応じて所定の空気比になるように燃料ガスの流量を調整する流量調整弁11と、流量調整弁11の二次側に燃料ガスを駆動流体とするエゼクタ12とを設け、エゼクタ12により排ガスを吸引して燃料ガスに排ガスを混合し、燃焼させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体燃料を燃焼させるボイラから排出される排ガスと送風機を用いてバーナに送る燃焼用空気とを熱交換して燃焼用空気を予熱するレキュペレータを備えた熱媒ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
熱媒ボイラは、熱媒油を高温(250℃〜300℃)に加熱し、この熱媒油を熱源として間接的に使用するものとして広く使用されている。熱媒油の温度は、利用される温度が高いこともあり、加熱される熱媒油の温度は300℃近傍となるため、熱媒ボイラで加熱したあとの排ガス温度が350℃と高く、持ち去られるエネルギーが大きく、例えば、小型貫流型の蒸気ボイラのボイラ効率が92%程度であるのに対して、熱媒ボイラではボイラ効率が80%程度と熱効率が低い。熱媒ボイラの効率を上げるためには、ボイラ排ガスと燃焼用空気の熱交換による排ガス温度の低減方法が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、この方法では、ボイラ排ガスと燃焼用空気を熱交換することにより、燃焼用空気が予熱されて温度が上昇し燃焼効率は向上するが、燃焼用空気の温度が上昇することによって火炎温度も上昇して排ガス中のNOx(窒素酸化物)濃度も増加してしまうといった課題が生じる。また、燃焼用空気温度の上昇によりバーナの圧力損失が増大し、送風機の軸動力が増大するといった課題が生じる。
【0003】
この課題を解決するものとして、排ガス中のNOxを低減するため、排ガスを燃焼用空気に混入させて燃焼を行う排ガス再循環燃焼方法がある(例えば、特許文献2参照。)が、特許文献2に記載されている排ガス再循環を行う小型ボイラの空気供給量制御方法では、排ガス中のNOxを低減することができるものの、排ガスを燃焼用空気に混入させるため、送風機の軸動力がさらに増大するといった課題が生じてしまう。
【0004】
この課題を解決するものとして、排ガスの一部をバーナへの燃料供給路に混入させ、排ガスと燃料ガスを混合して燃焼させる方法がある。(例えば、特許文献3参照。)。特許文献3に記載されている方法によれば、燃焼温度を低減できるので排ガス中のNOxを下げることができ、しかも排ガスを燃料ガスに混入させるため、送風機の軸動力に余計な負荷を与えないで済む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−243605号公報
【特許文献2】特開平6−288511号公報
【特許文献3】特開2008−151373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
排ガスを燃料中に混合することで排ガス中のNOxを安定して低下させるには、燃焼量に応じた排ガスの混合量にする必要がある。しかしながら、特許文献3に記載の方法では、燃料の圧力と排ガスの圧力の差によって排ガスの混入量が決まるため、NOxを安定して低下させることが難しいという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、燃焼量に依らず、燃料供給路に吸引して混合する排ガスと、燃料ガスとを常に一定の比率で混合して、NOx濃度を確実に低減することのできる熱媒ボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、気体燃料を燃焼させるボイラから排出される排ガスと送風機を用いてバーナに送る燃焼用空気とを熱交換して燃焼用空気を予熱するレキュペレータを備えた熱媒ボイラであって、燃料ガス供給ラインに、バーナに供給される空気量に応じて所定の空気比になるように燃料ガスの流量を調整する流量調整弁と、流量調整弁の二次側に燃料ガスを駆動流体とするエゼクタとを設け、前記エゼクタにより前記排ガスを吸引して燃料ガスに排ガスを混合し、燃焼させることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、燃料ガス供給ラインに、バーナに供給される空気量に応じて所定の空気比になるように燃料ガスの流量を調整する流量調整弁と、流量調整弁の二次側に燃料ガスを駆動流体とするエゼクタとを設け、前記エゼクタにより前記排ガスを吸引して燃料ガスに排ガスを混合するようにしたので、燃焼量に応じてバーナに供給される空気量が変化したとき、この空気量に応じて流量調整弁が燃焼ガス量を調整し、調整された燃焼ガス量の変化に応じてエゼクタの供給圧、即ち吸引力が比例変化することから、エゼクタで吸引される排ガスの量も比例変化することになり、排ガスと燃料ガスが常に一定の比率で混合することができる。このため、熱媒ボイラの燃焼量が変化しても、排出されるNOx濃度を確実に低減することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記流量調整弁が、ウインドボックスの入口に設けた燃焼用空気流量調整ダンパの動作に基づき、所定の空気比になるように調整動作が行われることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、前記流量調整弁が、ウインドボックスの入口に設けた燃焼用空気流量調整ダンパの動作に基づき、所定の空気比になるように調整動作が行われるようにしたので、前記燃焼用空気流量調整ダンパにより調整された空気量に応じて、前記流量調整弁により所定の空気比に調整された燃料ガスが確実にバーナに供給され、空気量に応じて調整された燃焼ガス量の変化に応じてエゼクタで吸引される排ガスの量も比例変化することになり、排ガスと燃料ガスが常に一定の比率で混合することができる。このため、熱媒ボイラの燃焼量が変化しても、排出されるNOx濃度を確実に低減することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の、前記流量調整弁は、前記レキュペレータの上流と下流との間の圧力差を測定する圧力センサを設け、差圧を測定することで空気流量を算出し、算出された空気流量に応じた燃料流量となるように開閉制御されるガスバルブであることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、前記レキュペレータの上流と下流との間の圧力差を測定する圧力センサを設け、差圧を測定することで空気流量を算出するので、排ガス温度の影響を受けることなく正確な空気量が算出され、排ガスの燃料中への混入による空気比の変化を抑制して安定した燃焼を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、燃焼量に応じて燃料流量を流量調整弁で調整し、この燃料流量に応じて燃焼用空気流量調整ダンパの制御を行って空気量を変化させるため、調整された燃料流量に応じてエゼクタの一次側の燃料流量即ち吸引力が比例変化することから、エゼクタで吸引される排ガスの量も比例変化することになり、燃焼量に応じて排ガスと燃料ガスを常に一定の比率で混合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る熱媒ボイラの実施の形態の第1例を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る熱媒ボイラの実施の形態の第2例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る熱媒ボイラを実施するための形態を、図面に示す実施例を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る熱媒ボイラの実施の形態の第1例を示す概略構成図である。
【0017】
本例の熱媒ボイラは、上部にバーナ1が配置され、熱媒油加熱管2をコイル状に形成した缶体3の内側に燃焼室4を形成している。バーナ1は缶体3の上部に設けられたウインドボックス5に取り付けられており、ウインドボックス5に燃焼用空気供給ダクト6を介して燃焼用空気を送り込む送風機7を備えている。燃焼室4で燃焼した燃焼ガスは、コイル状の熱媒油加熱管2の隙間を通過して排ガスダクト8に集合するように流れ、大気へ放出される。
【0018】
また、排ガスダクト8と燃焼用空気供給ダクト6とに接続するレキュペレータ9を備えており、排ガスダクト8を流通する排ガスと燃焼用空気供給ダクト6を流通する燃焼用空気とを熱交換して燃焼用空気を予熱する。
バーナ1には、燃料ガスを供給する燃料ガス供給ライン10が接続されている。燃料ガス供給ライン10には、遮断弁16、均圧弁17、およびバーナ1に供給される空気量に応じて所定の空気比になるように燃料ガスの流量を調整する流量調整弁11と、流量調整弁11の二次側に燃料ガスを駆動流体として排ガスを引き込むエゼクタ12を、上流側からこの順で設けている。
【0019】
本例では、流量調整弁11は、ウインドボックス5の入口に設けた燃焼用空気流量調整ダンパ13の動作に基づき、所定の空気比になるように調整動作する構成となっている。本例では、流量調整弁11と燃焼用空気流量調整ダンパ13は、1つのコントロールモータ18でリンクして作動するように構成されている。
【0020】
排ガスダクト8には排ガス戻し路14の一端が接続され、他端がエゼクタ12の吸引口に接続されており、燃料ガス供給ライン10を流通する燃料ガスを駆動流体としてエゼクタ12により排ガスを吸引し、燃料ガスに排ガスを混合する。燃料ガスと排ガスの混合比は、本例では燃料ガス:排ガス=1:1としている。
【0021】
また、本例の熱媒ボイラは、熱媒油は負荷機器(図示省略)と缶体3との間で循環しており、負荷機器で温度が低下した熱媒油が缶体3に戻り、缶体3で加熱されて、再び負荷機器に送られるようになっている。また、缶体3の熱媒油加熱管2の出口に温度センサ19が設けられおり、この温度センサ19で検出した温度データから必要燃焼量を演算し、コントロールモータ18に燃料ガスの流量と燃焼用空気の流量を所定流量の調整するために、流量調整弁11および燃焼用空気流量調整ダンパ13へ開閉信号を送り、熱媒油の缶体3出口温度の検出信号から熱媒油の温度が負荷機器で要求される温度に対して低い場合は燃焼量を増加させ、高い場合は燃焼量を低下させる制御部20を備えている。
【0022】
このように構成した本例の熱媒ボイラによれば、燃焼中は熱媒油は負荷機器と缶体3との間で循環し、また、遮断弁16は常に開となっており、熱媒油の缶体3出口温度を温度センサ19で検出すると、検出した温度データから制御部20は、必要燃焼量を演算し、コントロールモータ18に燃料ガスの流量と燃焼用空気の流量を所定流量調整するために、流量調整弁11および燃焼用空気流量調整ダンパ13へ開閉信号を送り、これにより、所定流量の燃焼用空気がウインドボックス5からバーナー1の部位へ、そして所定流量の燃料ガスがバーナ1に送られ、バーナ1の部位で燃焼用空気と燃料ガスが混合して燃焼する。
【0023】
このように、燃焼量は熱媒油の出口温度に応じて調整、即ち燃料ガスの流量調整が行われるので、流量調整弁11の下流側に設けられているエゼクタ12の吸引力は燃焼量に応じて変化することになる。燃焼量が多くなると燃料ガスの流量が増すので、エゼクタ12で吸引される排ガスの量は多くなり、燃焼量が低くなると吸引される排ガス量は低下する。このように、燃焼ガスの流量の変化に応じて排ガスの吸引量は比例変化することになり、排ガスと燃料ガスが常に一定の比率で混合する。このため、燃焼量が変化しても燃焼量が悪化することなく、安定した低NOx性が得られる。
【0024】
図2は本発明に係る熱媒ボイラの実施の形態の第2例を示す概略構成図である。
本例の熱媒ボイラについて、前記第1例と同一の構成については同一の符号を付しその説明を省略し、第1例と異なる構成についてのみ説明する。
本例の熱媒ボイラは、レキュペレータ9の入口側と出口側との間の圧力差を測定する圧力センサ15を設けている。
また、バーナ1に燃料ガスを供給する燃料ガス供給ライン10に、遮断弁16、均圧弁17、およびバーナ1に供給される空気量に応じて所定の空気比になるように燃料ガスの流量を調整する流量調整弁22と、流量調整弁22の二次側に燃料ガスを駆動流体として排ガスを引き込むエゼクタ12を、上流側からこの順で設けている。流量調整弁22は、圧力センサ15で測定したレキュペレータ9の入口側と出口側との間の圧力差に応じて開度が制御される構成となっている。
【0025】
また、本例の熱媒ボイラは、缶体3の熱媒油加熱管2の出口に温度センサ19が設けられている。制御部21は、この温度センサ19で検出した温度データから必要燃焼量を演算し、算出した必要燃焼量に応じた燃料ガスの流量と燃焼用空気の流量を所定流量に調整するために、ダンパモータ23に開閉信号を送りウインドボックス5の入口に設けた燃焼用空気流量調整ダンパ24を設定位置に切り換えさせ、燃焼用空気の流量を所定流量に調整する。そして、圧力センサ15で測定したレキュペレータ9の入口側と出口側との間の差圧で燃焼用空気供給ダクト6を流通する燃焼用空気の流量を算出し、同じ燃焼量下でレキュペレータ9での熱交換で燃焼用空気の温度が変化して流量が変動した場合は、流量調整弁22の開度を制御して、ほぼ一定の空気比で燃焼するように燃料ガスの流量の調整を行う。熱媒油の缶体3出口温度の検出信号から熱媒油の温度が負荷機器で要求される温度に対して低い場合は燃焼量を増加させ、高い場合は燃焼量を低下させ、その燃焼量にあわせて燃焼用空気流量調整ダンパ24の位置をダンパモータ23によって切り換える。
その他の構成は前記第1例と同様なので、第1例の説明を援用し、その説明を省略する。
【0026】
このように構成した本例の熱媒ボイラによれば、燃焼中は熱媒油は負荷機器と缶体3との間で循環し、また、遮断弁16は常に開となっており、熱媒油の缶体3出口温度を温度センサ19で検出すると、検出した温度データから制御部21は、必要燃焼量を演算し、燃料ガスの流量と燃焼用空気の流量を所定流量の調整するために、燃焼用空気の流量が所定流量となるようにダンパモータ23に開閉信号を送り燃焼用空気流量調整ダンパ24を設定位置に切り換えさせ、また、燃料ガスの流量が所定流量となるように圧力センサ15で測定したレキュペレータ9の入口側と出口側との間の差圧で燃焼用空気供給ダクト6を流通する燃焼用空気の流量を算出するとともに、圧力センサ15で測定した差圧に応じて流量調整弁22の開度を制御し、これにより、所定流量の燃焼用空気がウインドボックス5からバーナー1の部位へ、そして所定流量の燃料ガスがバーナ1に送られ、バーナ1の部位で燃焼用空気と燃料ガスが混合して燃焼する。
【0027】
燃焼量は熱媒油の出口温度に応じて調整、即ち燃料ガスの流量調整が行われるので、流量調整弁11の下流側に設けられているエゼクタ12の吸引力は燃焼量に応じて変化することになる。燃焼量が多くなると燃料ガスの流量が増すので、エゼクタ12で吸引される排ガスの量は多くなり、燃焼量が低くなると吸引される排ガス量は低下する。このように、燃焼ガスの流量の変化に応じて排ガスの吸引量は比例変化することになり、排ガスと燃料ガスが常に一定の比率で混合する。このため、燃焼量が変化しても燃焼量が悪化することなく、安定した低NOx性が得られる。
【符号の説明】
【0028】
1 バーナ
2 熱媒油加熱管
3 缶体
4 燃焼室
5 ウインドボックス
6 燃焼用空気供給ダクト
7 送風機
8 排ガスダクト
9 レキュペレータ
10 燃料ガス供給ライン
11 流量調整弁
12 エゼクタ
13 燃焼用空気流量調整ダンパ
14 排ガス戻し路
15 差圧センサ
16 遮断弁
17 均圧弁
18 コントロールモータ
19 温度センサ
20,21 制御部
22 流量調整弁
23 ダンパモータ
24 燃焼用空気流量調整ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体燃料を燃焼させるボイラから排出される排ガスと送風機を用いてバーナに送る燃焼用空気とを熱交換して燃焼用空気を予熱するレキュペレータを備えた熱媒ボイラであって、
燃料ガス供給ラインに、バーナに供給される空気量に応じて所定の空気比になるように燃料ガスの流量を調整する流量調整弁と、流量調整弁の二次側に燃料ガスを駆動流体とするエゼクタとを設け、前記エゼクタにより前記排ガスを吸引して燃料ガスに排ガスを混合し、燃焼させることを特徴とする熱媒ボイラ。
【請求項2】
前記流量調整弁が、ウインドボックスの入口に設けた燃焼用空気流量調整ダンパの動作に基づき、所定の空気比になるように調整動作が行われることを特徴とする請求項1に記載の熱媒ボイラ。
【請求項3】
前記流量調整弁は、前記レキュペレータの上流と下流との間の圧力差を測定する圧力センサを設け、差圧を測定することで空気流量を算出し、算出された空気流量に応じた燃料流量となるように開閉制御されるガスバルブであることを特徴とする請求項1に記載の熱媒ボイラ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−76497(P2013−76497A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216031(P2011−216031)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】