熱拡散部材の接合構造、発熱体の冷却構造、及び熱拡散部材の接合方法
【課題】炭素系材料からなる熱拡散部材を用いつつ、接合界面の熱応力を抑制することができる熱拡散部材の接合構造、発熱体の冷却構造、及び熱拡散部材の接合方法を提供する。
【解決手段】炭素系材料を用いて板状に形成され、表面に金属薄膜を有し、板状の厚さ方向に熱を伝導させる熱拡散部材としての第1部材は、少なくとも第2部材との対向面に、金属薄膜を有する。そして、第1部材の金属薄膜形成面と第2部材における金属薄膜形成面の対向面との間に、接合部材として金属粒子の焼結体が介在されている。
【解決手段】炭素系材料を用いて板状に形成され、表面に金属薄膜を有し、板状の厚さ方向に熱を伝導させる熱拡散部材としての第1部材は、少なくとも第2部材との対向面に、金属薄膜を有する。そして、第1部材の金属薄膜形成面と第2部材における金属薄膜形成面の対向面との間に、接合部材として金属粒子の焼結体が介在されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の発熱体の熱を効果的に伝導させる熱拡散部材の接合構造、熱拡散部材の接合方法、及びそれを用いた発熱体の冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発熱体を冷却するための熱拡散部材として、銅やアルミニウム等の金属材料に代えて、グラファイトや炭素繊維、炭素−金属複合材、ダイヤモンドなどの炭素系材料からなる熱拡散部材が検討されている。
【0003】
例えば特許文献1では、半導体素子と放熱板の間に炭素繊維−金属複合材からなる熱拡散部材を設けている。この熱拡散部材は、炭素繊維の配向方向を部材の厚さ方向と一致させることで、半導体素子から放熱板へ熱を伝えやすくしている。なお、炭素繊維の配向方向の熱伝導率は1000W/mK程度であり、これにより熱拡散部材は、その配向方向において銅(熱伝導率350〜400W/mK)やアルミニウム(熱伝導率200〜240W/mK)よりも高い熱伝導性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−4666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、熱拡散部材と該熱拡散部材の隣に位置する部材との接合にAg−Cu−In系、又は、Ag−Cu−In−Ti系のろう材を用いている。このため、接合温度が500〜800℃と高く(特許文献1の表1参照)、熱拡散部材(炭素系材料)と熱拡散部材の隣に位置する部材との線膨張係数差に起因する熱応力が大きいという問題がある。このように接合界面の熱応力(残留応力)が大きいと、半導体素子などの発熱体の駆動中に接合界面の破壊が起こりやすく、発熱体の駆動に問題が生じたり、冷却性能が低下して発熱体の信頼性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、炭素系材料からなる熱拡散部材を用いつつ、接合界面の熱応力を抑制することができる熱拡散部材の接合構造、発熱体の冷却構造、及び熱拡散部材の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、第1部材が、炭素系材料を用いて板状に形成され、板状の厚さ方向に熱を伝導させる熱拡散部材となっている。したがって、接合部材を介した2つの部材の並び方向において、第1部材と第2部材との間で効率よく熱を移動させることができる。
【0008】
また、金属粒子の焼結体を接合部材とするため、従来のろう付けに較べて、接合温度を低くすることができる。これにより、熱拡散部材としての第1部材と第2部材との線膨張係数差に起因する熱応力、すなわち接合界面の熱応力を抑制することができる。
【0009】
以上より、本発明によれば、炭素系材料からなる熱拡散部材を用いつつ、接合界面の熱応力を抑制することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、第2部材との対向面に直交する方向の熱伝導率が、対向面に平行な方向のうちの少なくとも一方向における熱伝導率よりも高くなるように、第2部材に対して第1部材が配置されている。換言すれば、炭素系材料が熱伝導の異方性を有しており、炭素系材料の熱伝導性の良い方向が、対向面に直交する方向となるように、第2部材に対して第1部材が配置されている。したがって、炭素系材料の熱伝導性の良い部分を活かし、接合部材を介した2つの部材の並び方向において、第1部材と第2部材との間で効率よく熱を移動させることができる。
【0011】
請求項3に記載のように、金属粒子の平均粒径をナノサイズとすると、平均粒径がミクロンサイズに較べて、接合温度(焼結のための温度)をより低くすることができる。これにより、熱拡散部材としての第1部材と第2部材との線膨張係数差に起因する熱応力、すなわち接合界面の熱応力を効果的に抑制することができる。
【0012】
ところで、接合部材が金属薄膜よりも厚いと、第1部材と第2部材との間の熱伝達経路の熱抵抗に関し、金属薄膜よりも接合部材の影響が大きくなる。これに対し、請求項4に記載のように、金属粒子を単一金属とすると、従来のように多成分の合金を接合部材とする構成に較べて、接合部材の熱伝導率を高くし、ひいては上記熱伝達経路の熱抵抗を小さくすることができる。
【0013】
請求項5に記載のように、接合部材がAg、Au、Cu、Niのいずれかからなることが好ましい。Agの熱伝導率は427W/mK、Auの熱伝導率は315W/mK、Cuの熱伝導率は398W/mK、Niの熱伝導率は90W/mKである。このように、これら金属はいずれも熱伝導率が高いので、接合部材、ひいては第1部材及び第2部材間の熱伝達経路の熱抵抗を、より小さくすることができる。
【0014】
なかでもAgの熱伝導性は特に優れているので、より好ましくは、請求項6に記載のように、接合部材がAgからなると良い。
【0015】
また、請求項7に記載のように、金属薄膜は、第1部材との間に化学結合を形成する下地層と、下地層上に配置され、接合部材との間に金属結合を形成する表面層と、の少なくとも2層を有すると良い。下地層の金属は、第1部材を構成するC(炭素)と共有結合を形成、又は、C表面の官能基(ヒドロキシル基)とイオン結合を形成する。また、表面層を構成する金属は、接合部材を構成する金属と金属結合を形成する。したがって、熱拡散部材としての第1部材と接合部材との接合強度を確保することができる。
【0016】
具体的には、請求項8に記載のように、下地層が、Ti、Al、Cr、Mo、Wのいずれかを含む構成とすると良い。また、請求項9に記載のように、表面層が、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかからなる構成とすると良い。
【0017】
請求項10に記載のように、金属薄膜として、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかであって表面層とは異なる金属からなり、下地層及び表面層の各界面で合金層を形成する中間層を、下地層と表面層の間に有しても良い。これによれば、中間層が下地層、表面層のいずれともその接触界面で合金化するので、金属薄膜の接合強度、ひいては第1部材と接合部材との接合強度を向上することができる。
【0018】
次に、請求項11に記載の発明は、発熱体で生じた熱が、第1部材を介して冷却器に移動され、発熱体が冷却される発熱体の冷却構造において、第1部材と接合部材を介して接合される部材を第2部材とし、該第2部材と第1部材との間に上記した熱拡散部材の接合構造を適用する点を特徴とする。
【0019】
これによれば、上記した請求項の作用効果の通り、熱拡散部材としての第1部材と第2部材との線膨張係数差に起因する熱応力、すなわち接合界面の熱応力を抑制することができる。
【0020】
請求項12に記載のように、第2部材として、炭素系材料を用いて板状に形成され、表面に金属薄膜を有し、板状の厚さ方向に熱を伝導させる熱拡散部材を備え、第2部材としての熱拡散部材は、少なくとも第1部材との対向面に金属薄膜を有する構成としても良い。このように、第1部材と第2部材がともに熱拡散部材である構成、すなわち複数の熱拡散部材を備える構成を採用することもできる。また、第2部材の表面に金属薄膜が形成されているため、上記した第1部材の金属薄膜同様、熱拡散部材としての第2部材と接合部材との接合強度を確保することができる。
【0021】
特に請求項13に記載の発明では、第1部材及び第2部材がともに、板厚方向よりも該板厚方向に垂直な方向(板厚方向に垂直な面内の互いに直交する2方向)の熱伝導率が高い炭素系板材を、板厚方向に複数枚積層してなる。そして、第1部材及び第2部材は、お互いの対向面に直交する方向の熱伝導率が、対向面に平行な方向のうちの板厚方向における熱伝導率よりも高くなるように配置されている。したがって、接合部材を介した2つの部材の並び方向において、第1部材及び第2部材は、ともに高い熱伝導性を有する。
【0022】
また、第1部材及び第2部材は、板厚方向が互いに異なるように配置されている。すなわち、お互いの対向面に沿う方向(平行な方向)において、第1部材における熱伝導性に優れる方向と、第2部材における熱伝導性に優れる方向とが異なっている。このため、接合部材を介して一体化された熱拡散部材は、対向面に直交する方向だけでなく、対向面に沿う方向であって互いに直交する2方向においても、良好な熱伝導性を有している。したがって、3軸方向において効率的に発熱体を冷却することができる。
【0023】
請求項14に記載のように、金属薄膜は、第2部材との間に化学結合を形成する下地層と、下地層上に配置され、接合部材との間に金属結合を形成する表面層と、の少なくとも2層を有すると良い。下地層の金属は、第2部材を構成するC(炭素)と共有結合を形成、又は、C表面の官能基(ヒドロキシル基)とイオン結合を形成する。また、表面層を構成する金属は、接合部材を構成する金属と金属結合を形成する。したがって、熱拡散部材としての第2部材と接合部材との接合強度を確保することができる。
【0024】
具体的には、請求項15に記載のように、下地層が、Ti、Al、Cr、Mo、Wのいずれかを含む構成とすると良い。また、請求項16に記載のように、表面層が、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかからなる構成とすると良い。
【0025】
請求項17に記載のように、金属薄膜として、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかであって表面層とは異なる金属からなり、下地層及び表面層の各界面で合金層を形成する中間層を、下地層と表面層の間に有しても良い。これによれば、中間層が下地層、表面層のいずれともその接触界面で合金化するので、金属薄膜の接合強度、ひいては第1部材と接合部材との接合強度を向上することができる。
【0026】
なお、第2部材としては、請求項18に記載の発熱体を含む構成、請求項19に記載の、発熱体と第1部材の間、又は、第1部材と冷却器の間に配置され、発熱体の電極に電気的に接続された金属部材を含む構成を採用することができる。また、請求項20に記載のように、第1部材が電気伝導性を有し、第1部材と冷却との間に電気絶縁層を備える場合、第2部材として電気絶縁層を含む構成を採用することもできる。この場合、電気絶縁層により、第1部材(炭素系材料からなる熱拡散部材)と冷却器が電気的に接続されるのを抑制することができる。
【0027】
次に、請求項21〜30に記載の発明の作用効果は、請求項1〜10に記載の発明の作用効果と同じであるので、その記載を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態に係る発熱体の冷却構造(発熱体モジュール)を示す断面図である。
【図2】図1に示す冷却構造のうち、熱拡散部材の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図1に示す冷却構造のうち、熱拡散部材の接合構造部分を示す断面図である。
【図4】接合部の熱コンダクタンスと、冷却構造の熱抵抗との関係を示す図である。
【図5】膜厚と熱コンダクタンスとの関係を示す図である。
【図6】変形例を示す断面図である。
【図7】変形例を示す断面図である。
【図8】第2実施形態に係る発熱体モジュールを示す断面図である。
【図9】図8に示す冷却構造のうち、熱拡散部材の概略構成を示す斜視図である。
【図10】第3実施形態に係る発熱体モジュールを示す断面図である。
【図11】変形例を示す断面図である。
【図12】変形例を示す断面図である。
【図13】第4実施形態に係る発熱体モジュールを示す断面図である。
【図14】変形例を示す断面図である。
【図15】変形例を示す断面図である。
【図16】第5実施形態に係る発熱体モジュールを示す断面図である。
【図17】第6実施形態に係る発熱体モジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。
【0030】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る発熱体の冷却構造10(以下、発熱体モジュール10と示す)、発熱体モジュール10に適用された熱拡散部材11の接合構造及び接合方法について、図1〜図3を用いて説明する。
【0031】
図1に示すように、発熱体モジュール10は、表面に金属薄膜31を有する熱拡散部材11、発熱体12、金属部材13、電気絶縁層14、及び冷却器15を備えている。
【0032】
熱拡散部材11の一面上には、接合部材20により発熱体12が接合されている。一方、熱拡散部材11の発熱体12と反対の面には、接合部材21により金属部材13が接合されている。また、金属部材13における熱拡散部材11と反対の面には、接合部材22により電気絶縁層14が接合され、電気絶縁層14における金属部材13と反対の面には、接合部材23により冷却器15が接合されている。
【0033】
なお、本実施形態では、熱拡散部材11が特許請求の範囲に記載の第1部材、発熱体12及び金属部材13が特許請求の範囲に記載の第2部材に相当する。また、接合部材20,21が、特許請求の範囲に記載の、金属薄膜31よりも厚い接合部材に相当する。
【0034】
熱拡散部材11は、少なくとも発熱体12の熱を冷却器15に効率よく伝導させるための機能を果たす板状の部材であり、その厚さ方向に熱を伝導できるようになっている。この熱拡散部材11は、炭素系材料からなり、表面に金属薄膜31を有している。本実施形態では、熱拡散部材11が、発熱体12の電極と金属部材13とを電気的に接続する機能も果たす。このように、熱伝導性、導電性を有する熱拡散部材11の炭素系材料としては、炭素単体、又は、炭素を主成分とし、CuやAlなどの金属、樹脂、セラミックを副成分とする複合材料を採用することができる。また、炭素としては、グラファイト(黒鉛)や炭素繊維を採用することができる。
【0035】
本実施形態では、一例として、グラファイトからなる炭素系板材30を、図2に示すように、その板厚方向に複数枚積層し、一体化してなる熱拡散部材11を採用している。グラファイトは、炭素原子が隣接の炭素原子と平面内で3方向に共有結合を形成し、縮合六員環を形成した構造(層状構造)を有しており、各層間をファンデルワールス力で結び付けた異方性を有している。この層状構造のため、層に対して平行方向と垂直方向で性質が異なっている。具体的には、互いに直交する関係にある3軸方向のうち、2軸方向、すなわち上記平行方向に高熱伝導性(1000W/mK程度)を有し、残りの1軸方向、すなわち上記垂直方向に平行方向よりも低い熱伝導性(5〜200W/mK程度)を有する。すなわち、熱伝導の異方性を有している。
【0036】
炭素系板材30は平面長方形をなしており、その板厚方向が、グラファイトの上記垂直方向と一致し、平面長方向の長手方向及び幅方向がグラファイトの上記平行方向と一致している。なお、図1においては、紙面上下方向及び紙面に垂直な方向が高熱伝導性の方向となっている。このように、第1部材としての熱拡散部材11は、第2部材としての発熱体12及び金属部材13との対向面に直交する方向(図1の紙面上下方向)の熱伝導率が、対向面に平行な方向のうちの一方向(上記した炭素系板材30の板厚方向)における熱伝導率よりも高くなっている。このように、2軸方向に高熱伝導性を有し、残りの1軸方向に低熱伝導性を有する炭素系板材30を用いると、熱拡散部材11の厚さ方向だけでなく、厚さ方向に垂直な面に沿う一方向にも熱を拡散させることができる。このため、放熱性を向上することができる。
【0037】
また、熱拡散部材11は、厚さ方向における寸法が炭素系板材30の幅方向の寸法に等しく、積層方向における寸法が炭素系板材30の幅方向寸法よりも大きくとられ、これにより板状となっている。この熱拡散部材11は、複数の炭素系板材30を積層した後に焼付けすることによって、或いは、ガス状とした材料(グラファイト材料)を平面の上に順次吹き付けていくことで、積層体(熱拡散部材11)として形成される。このような熱拡散部材11については、本出願人による先の出願(特願2010−132076号)に説明されており、詳細については参照されたい。
【0038】
熱拡散部材11は、その表面に、後述する接合部材20,21との接合性を向上させるための金属薄膜31を有している。この金属薄膜31は、スパッタや蒸着などの物理的堆積法やメッキ法により形成されるものであり、少なくとも第2部材としての発熱体12との対向面11a(以下、上面11aと示す)及び金属部材13との対向面11b(以下、下面11bと示す)に形成される。本実施形態では、金属薄膜31が、熱拡散部材11との間に化学結合を形成する下地層32と、下地層32上に配置され、接合部材20,21との間に金属結合を形成する表面層33の2層を有している。
【0039】
下地層32の構成材料としては、熱拡散部材11を構成するC(炭素)と共有結合を形成、又は、C表面の官能基(ヒドロキシル基)とイオン結合を形成する金属材料、例えばTi、Al、Cr、Mo、Wのいずれかを含む材料を採用することができる。すなわち、これら金属単体(例えばTi)、又は、金属を含む合金(Ti合金)を採用することができる。本実施形態では、下地層32の構成材料として、Ti単体を採用する。一方、表面層33の構成材料としては、接合部材20,21を構成する金属と金属結合を形成する材料、例えばAu、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかを採用することができる。本実施形態では、表面層33の構成材料として、Auを採用する。なお、表面層33を構成する金属としては、上記した金属以外の貴金属(例えばRh)を採用することも可能である。
【0040】
本実施形態では、熱拡散部材11の上面11a及び下面11bだけでなく、側面11cにも金属薄膜31が形成されている。すなわち、熱拡散部材11の表面全面に金属薄膜31が形成されている。
【0041】
ここで、図4に示す接合部の熱コンダクタンスと、冷却構造の熱抵抗の関係から、熱コンダクタンスが1×107W/m2K以上で、熱抵抗が0.10K/W程度のほぼ一定となる。一方、熱コンダクタンスが1×107W/m2K未満では、僅かな熱コンダクタンスの変化で熱抵抗が大きく変化し、熱コンダクタンスが小さいほど熱抵抗が大きくなる。したがって、発熱体12から冷却器15に効率よく熱を伝達するには、金属薄膜31の熱コンダクタンスを1×107W/m2K以上とすることが好ましい。なお、図4の縦軸に示す冷却構造の熱抵抗は、冷却構造の熱抵抗(K/W)={(定常状態での発熱体12の温度(K)−冷却水温(K))/発熱体12の発熱量(W)}で定義される。
【0042】
例えば、下地層32としてTi単体を用いた場合、図5から、その膜厚を2μm以下とすると、熱コンダクタンスを1×107W/m2K以上とすることができる。また、表面層33としてAuを用いた場合、図5から、その膜厚を30μm以下とすると、熱コンダクタンスを1×107W/m2K以上とすることができる。このように、Tiからなる下地層32を2μm以下、Auからなる表面層33を30μm以下とすることで、金属薄膜31の熱抵抗を小さくし、熱を伝達しやすくすることができる。本実施形態では、上記したように、スパッタや蒸着などの物理的堆積法やメッキ法により金属薄膜31(下地層32及び表面層33)を形成するので、上記した数値を満足する薄膜を形成することができる。なお、膜厚を薄くしすぎると成膜時にピンホールが発生しやすくなる。このため、下地層32及び表面層33の各膜厚を、0.05μm以上とすることが好ましい。本実施形態では、金属薄膜31の総厚t1が、0.2〜5μm程度となっている。
【0043】
発熱体12は、駆動時(動作時)に発熱するものである。例えばシリコンなどの半導体基板に素子が形成されてなる半導体素子を採用することができる。このような半導体素子としては、半導体基板の両面に電極を有し、半導体基板の厚さ方向に電流が流れるパワー系の縦型素子、具体的には、MOSFET、IGBT、FWD(転流ダイオード)などを採用することができる。本実施形態では、発熱体12として、シリコンからなる半導体基板に構成されたIGBTを採用している。なお、図1及び図3では、発熱体12(半導体素子)を1つのみ図示するが、その個数は特に限定されるものではない。
【0044】
発熱体12は、その表面に、接合部材20との接合性を向上させるための金属薄膜を有している。この金属薄膜も、上記した熱拡散部材11の金属薄膜31同様、スパッタや蒸着などの物理的堆積法やメッキ法により形成されるものであり、少なくとも熱拡散部材11との対向面12a(以下、下面12aと示す)に形成される。また、金属薄膜として表面層34を少なくとも有する。なお、該表面層34と発熱体12との間に、両者34,12と接合性が良い膜を、表面層34とともに金属薄膜として備えても良い。表面層34を構成する金属材料としては、接合部材20を構成する金属と金属結合を形成するもの、例えば、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかを採用することができる。本実施形態では、発熱体12における熱拡散部材11との対向面12a全面に、金属薄膜として表面層34を有している。また、金属薄膜(表面層34)の厚さは、その総厚が接合部材20の厚さt2よりも薄くなっている。本実施形態では、金属薄膜としての表面層34の厚さが、0.1〜1μm程度となっている。
【0045】
接合部材20は、金属粒子を焼結してなるものである。金属粒子は、その平均粒径が小さいほど焼結温度、すなわち接合温度を低くすることができる。例えば平均粒径を数μm程度とすると、焼結温度を300℃以下とすることができ、平均粒径をナノサイズ(1nm以上1000nm未満)とすると、焼結温度をさらに低くすることができる。また、金属粒子としては、単一金属の粒子、複数の金属粒子、複合金属の粒子のいずれも採用することができる。なお、複数の金属粒子としては、例えばAg粒子とCu粒子、Ag粒子とSn粒子、Sn粒子とNi粒子などの組み合わせがある。また、複合金属の粒子としては、AgSn粒子、PbSn粒子などがある。
【0046】
本実施形態では、金属粒子として、単一金属のナノ粒子を採用する。単一金属としては、熱伝導性が高い、Ag、Au、Cu、Niのいずれかを採用することが好ましい。ちなみに、Agの熱伝導率は427W/mK、Auの熱伝導率は315W/mK、Cuの熱伝導率は398W/mK、Niの熱伝導率は90W/mKである。本実施形態では、金属粒子として、特に熱伝導性に優れたAgのナノ粒子を採用する。なお、ナノ粒子とは、周囲を有機保護膜でコーティングされたナノサイズの金属粒子である。
【0047】
また、接合部材20の厚さt2は、図3に示すように、金属薄膜31の厚さt1よりも十分に厚くなっている。ここで、上記した金属薄膜31同様、発熱体12から冷却器15に効率よく熱を伝達するには、接合部材20の熱コンダクタンスを1×107W/m2K以上とすることが好ましい。接合部材20としてAgを用いた場合、図5から、その膜厚を40μm以下とすると、熱コンダクタンスを1×107W/m2K以上とすることができる。このように、接合部材20を40μm以下とすることで、接合部材20の熱抵抗を小さくし、熱を伝達しやすくすることができる。なお、接合部材20は、金属粒子を溶媒中に分散してなる金属ペーストを、スクリーン印刷などによって塗布し、加熱により金属粒子を焼結することで形成される。したがって、金属薄膜31のように薄く形成することができず、その厚さは10μmが限界である。したがって、接合部材20の厚さを10μm以上40μm以下とすることが好ましい。本実施形態では、Agからなる接合部材20の厚さt2が、20μ〜40μmの範囲内で設定されている。
【0048】
金属部材13は、CuやAlなど導電性に優れる金属材料からなるものである。本実施形態では、熱拡散部材11と電気絶縁層14との間に介在され、発熱体12としての半導体素子の一方の電極と、接合部材20,21及び熱拡散部材11を介して電気的に接続されている。すなわち、外部接続用端子(所謂リード)としての機能を果たすようになっている。
【0049】
金属部材13は、その表面に、接合部材21との接合性を向上させるための金属薄膜を有している。この金属薄膜も、上記した熱拡散部材11の金属薄膜31同様、スパッタや蒸着などの物理的堆積法やメッキ法により形成されるものであり、少なくとも熱拡散部材11との対向面に形成される。また、金属薄膜として表面層35を少なくとも有する。なお、該表面層35と金属部材13との間に、両者35,13と接合性が良い膜を、表面層35とともに金属薄膜として備えても良い。表面層35を構成する金属材料としては、接合部材21を構成する金属と金属結合を形成するもの、例えば、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかを採用することができる。本実施形態では、金属部材13の表面全面に、金属薄膜として表面層35を有している。また、金属薄膜(表面層35)の厚さは、その総厚が接合部材21の厚さt3よりも薄くなっている。本実施形態では、金属薄膜としての表面層35の厚さが、0.1〜1μm程度となっている。
【0050】
接合部材21も、接合部材20同様、金属粒子を焼結してなるものである。本実施形態では、接合部材21が接合部材20と同じ構成となっている。すなわち、接合部材21も、ナノサイズのAg粒子を焼結してなる。また、接合部材21の厚さt3も、接合部材20の厚さt2同様、20μ〜40μmの範囲内で設定されている。
【0051】
電気絶縁層14は、導電性を有する熱拡散部材11と冷却器15との間に設けられ、発熱体12から冷却器15への漏電を防止するためのものである。電気絶縁層14としては、セラミックからなる板材、セラミック材料と樹脂材料の混合体からなるフィルム状の材料、などを用いることができる。本実施形態では、電気絶縁層14がセラミック材料からなる。
【0052】
冷却器15は、発熱体12の熱を、内部の通路(図示略)を流通する冷却媒体に移動させて、発熱体12を冷却する熱交換器である。この冷却器15は、板状をなす本体部の内部に多数の通路が設けられて形成されており、各通路には冷却媒体(例えば冷却用空気や、冷却水等)が流通されるようになっている。
【0053】
接合部材22,23としては、熱伝導性が良好であり、さらに接合部材22は、金属部材13と電気絶縁層14を接合でき、接合部材23は、電気絶縁層14と冷却器15を接合できるものを採用することができる。これら接合部材22,23は、金属部材13と冷却器15との間に配置されるため、導電性は特に言及されない。なお、金属部材13と電気絶縁層14との間、電気絶縁層14と冷却器15との間は接合されていなくても良い。例えば、接合部材22,23に代えて、金属部材13と電気絶縁層14との間、及び気絶縁層14と冷却器15との間に薄く濡れ広がって界面熱抵抗を低下させる働きのあるグリス状の材料を用いることもできる。また、電気絶縁層14それ自体に弾力性又は接着性をもつ材料を使用した場合、電気絶縁層14を金属部材13や冷却器15に密着させることで、接合部材22,23を有さない構成とすることもできる。
【0054】
このように構成される発熱体モジュール10では、発熱体12の熱が、接合部材20を介して熱拡散部材11に伝達されると、炭素系板材30の長手方向に沿って外周側に拡がりつつ熱拡散部材11の厚さ方向に伝導される。そして、この熱は、接合部材21を介して金属部材13に伝導され、さらに接合部材22、電気絶縁層14、及び接合部材23を介して冷却器15に至る。冷却器15においては、上記のように伝導された発熱体12の熱が、内部通路を流通する冷却媒体に移動され、これにより発熱体12は冷却される。
【0055】
次に、上記した発熱体モジュール10の特徴部分の効果について説明する。
【0056】
本実施形態では、第1部材としての熱拡散部材11が炭素系材料からなる。また、炭素系板材30の配向性から、熱拡散部材11が、その厚さ方向において高い熱伝導性を有している。したがって、接合部材20を介した発熱体12と熱拡散部材11の並び方向、換言すれば熱拡散部材11の厚み方向において、発熱体12の熱を、効率よく熱拡散部材11へ伝導させることができる。また、接合部材21を介した熱拡散部材11と金属部材13の並び方向、換言すれば熱拡散部材11の厚み方向において、熱拡散部材11から金属部材13に効率よく熱を伝導させることができる。
【0057】
また、熱拡散部材11に接する接合部材20,21は、金属粒子の焼結体である。この焼結体は、以下に示す方法で形成することができる。先ず、金属ペーストを準備する。金属ペーストとは、周囲を有機保護膜でコーティングされた金属粒子を溶媒中に分散させたペースト状のものである。接合部材20に隣接する発熱体12及び熱拡散部材11の少なくとも一方に金属ペーストを塗布(例えばスクリーン印刷)する。そして、加熱して有機保護膜や溶媒を熱分解して揮発させると、金属粒子の表面が露出され、金属粒子同士が互いに金属結合を形成する。このような金属粒子の焼結は、従来のろう付けに較べて低温(例えば300℃以下)で実施することができる。したがって、接合温度を低くし、発熱体12と熱拡散部材11の線膨張係数差に起因する熱応力、すなわち接合界面の熱応力、を抑制することができる。また、熱拡散部材11と金属部材13の線膨張係数差に起因する熱応力、すなわち接合界面の熱応力、を抑制することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、熱拡散部材11の上面11aにおける金属薄膜31上にAgペーストを塗布し、塗布したAgペーストに下面12a上の表面層34が接するように発熱体12を配置する。そしてこの配置状態で加熱し、Ag粒子を焼結することで、接合部材20を得ることができる。また、金属部材13における熱拡散部材11との対向面の表面層35上にAgペーストを塗布し、塗布したAgペーストに下面11b上の金属薄膜31が接するように熱拡散部材11を配置する。そして、この配置状態で加熱し、Ag粒子を焼結することで、接合部材21を得ることができる。
【0059】
以上より、本実施形態によれば、炭素系材料からなる熱拡散部材11を用いた発熱体モジュール10において、熱拡散部材11と該部材11の隣に位置する部材(発熱体12、金属部材13)との接合界面の熱応力を抑制することができる。
【0060】
特に本実施形態では、接合部材20,21を構成する金属粒子として、平均粒径がナノサイズの金属粒子を用いる。金属粒子は、その平均粒径が小さいほうが表面の活性度が高くなり、焼結する際の温度(接合温度)をより低温(例えば最高温度100℃以下)で実施することができる。したがって、本実施形態によれば熱応力を効果的に抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、接合部材20が金属薄膜31よりも厚いため、発熱体12と熱拡散部材11との間の熱伝達経路の熱抵抗に関し、金属薄膜31よりも接合部材20の影響が大きくなっている。同じく、接合部材21が金属薄膜31よりも厚いため、熱拡散部材11と金属部材13との間の熱伝達経路の熱抵抗に関し、金属薄膜31よりも接合部材21の影響が大きくなっている。これに対し、本実施形態では、単一金属の焼結体を接合部材20,21に採用している。このように、単一金属を採用すると、多成分の合金を接合部材とする構成に較べて接合部材20,21の熱伝導率が高くなる。このため、上記熱伝達経路の熱抵抗を小さくし(熱拡散部材11に隣接する接合部材20,21での熱伝達ロスを抑制し)、発熱体12の熱を、接合部材20,21及び熱拡散部材11を介して、冷却器15側に伝導させることができる。特に本実施形態では、接合部材20,21がともにAgからなるため、上記熱伝達経路の熱抵抗をより小さくすることができる。
【0062】
また、本実施形態では、金属薄膜31の総厚t1が、0.2〜5μm程度であり、接合部材20,21の厚さt2,t3(20〜40μm程度)よりも十分に薄いため、熱拡散部材11と発熱体12の間の熱伝達経路、及び、熱拡散部材11と金属部材13の間の熱伝達経路において、金属薄膜31の部分の熱抵抗をほぼ無視することができる。したがって、上記した接合部材20,21による熱伝達経路の熱抵抗低減の効果をより顕著とすることができる。
【0063】
(変形例)
本実施形態では、熱拡散部材11が、下地層32及び表面層33の2層構造の金属薄膜31を有する例を示した。しかしながら、金属薄膜31としては、2層構造に限定されるものではない。例えば図6に示すように、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかであって表面層33とは異なる金属からなり、下地層32及び表面層33の各界面で合金層を形成する中間層36を、下地層32と表面層33の間に有する3層構造の金属薄膜31を採用することもできる。これによれば、中間層36を構成する単一金属膜(例えばNi)が、下地層32(例えばTi)との界面で合金化するとともに、表面層33の金属(例えばAu)との界面で合金化する。したがって、金属薄膜31の接合強度、ひいては熱拡散部材11と接合部材20,21との接合強度を向上することができる。
【0064】
なお、中間層36についても、上記した下地層32、表面層33同様、熱コンダクタンスを1×107W/m2K以上とすることが好ましい。例えば、中間層36としてとしてNi単体を用いた場合、図5から、その膜厚を10μm以下とすると、熱コンダクタンスを1×107W/m2K以上とすることができる。このように、中間層36を10μm以下とすることで、金属薄膜31の熱抵抗を小さくし、熱を伝達しやすくすることができる。本実施形態では、上記したように、スパッタや蒸着などの物理的堆積法やメッキ法により中間層36も形成するので、上記した数値を満足する薄膜を形成することができる。なお、膜厚を薄くしすぎると成膜時にピンホールが発生しやすくなる。このため、中間層36についてもその膜厚を0.05μm以上とすることが好ましい。
【0065】
さらには、熱拡散部材11の表面に形成される金属薄膜31として、図7に示すように単層構造の金属薄膜31を採用することもできる。この場合、金属薄膜31の材料としては、熱拡散部材11の構成材料と化学結合を形成する材料や、接合部材20,21と金属結合を形成する材料を採用することができる。例えば下地層32や表面層33に用いられる金属、Ti、Al、Cr、Mo、W、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかを採用することができる。
【0066】
本実施形態では、2軸方向に高熱伝導性を有し、残りの1軸方向に低熱伝導性を有する炭素系板材30を用いて熱拡散部材11が構成される例を示した。すなわち、熱伝導に異方性を有する熱拡散部材11を用いる例を示した。しかしながら、熱伝導が等方性を示す熱拡散部材11を採用することもできる。このように熱伝導が等方性を示し、且つ、導電性を示す熱拡散部材11は、グラファイトや炭素繊維を無配向性を示すように加工してなる炭素系材料や、電気絶縁性を示すダイヤモンドに金属粒子を混合することで導電性を付与してなるコンポジット材料を用いて形成される。このような熱拡散部材11を採用すると、互いに直交する3軸方向において熱伝導性に優れるため、1つの熱拡散部材11のみで、効率よく発熱体12を冷却することができる。
【0067】
(第2実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した発熱体モジュール10と共通する部分についての説明は割愛する。第1実施形態では、熱拡散部材11が、発熱体12と金属部材13との間に1つのみ配置される例を示した。これに対し、本実施形態では、図8,図9に示すように、発熱体モジュール10が、発熱体12と金属部材13との間に配置される熱拡散部材11として、その厚み方向において積層配置された2つの熱拡散部材16,17を有している。第1熱拡散部材16及び第2熱拡散部材17は、いずれも第1実施形態で説明した熱拡散部材11とほぼ同じ構成を有しつつ、使用形態において、炭素系板材30の板厚方向(積層方向)が互いに異なっている。
【0068】
なお、第1熱拡散部材16が発熱体12側、第2熱拡散部材17が金属部材13側となっている。また、発熱体12と第1熱拡散部材16の間に介在された接合部材20、第2熱拡散部材17と金属部材13の間に介在された接合部材21は、第1実施形態に示した接合部材20,21と同じ構成となっている。
【0069】
これら2つの熱拡散部材16,17は、任意の一方が特許請求の範囲に記載の第1部材、他方が特許請求の範囲に記載の第2部材に相当する。例えば第1熱拡散部材16を第1部材とすると、発熱体12及び第2熱拡散部材17が第2部材に相当する。一方、第2熱拡散部材17を第1部材とすると、第1熱拡散部材16及び金属部材13が第2部材に相当する。
【0070】
第1熱拡散部材16は、炭素系板材30の板厚方向(積層方向)が、図9の紙面奥行き方向となるように配置される。これにより、第1熱拡散部材16においては、図8の紙面上下方向(第1熱拡散部材16の厚み方向)と、紙面左右方向に熱伝導性が優れるものとなっている。
【0071】
一方、第2熱拡散部材17は、炭素系板材30の板厚方向(積層方向)が、図9の紙面左右方向となるように配置される。これにより、第2熱拡散部材11においては、図8の紙面上下方向(第1熱拡散部材16の厚み方向)と、紙面に垂直な方向に熱伝導性が優れるものとなっている。このように、2つの熱拡散部材16,17において、炭素系板材30の板厚方向(積層方向)がなす角度がほぼ90度となっている。
【0072】
そして、第1熱拡散部材16と第2熱拡散部材17は、厚さ方向に積層されるとともに、各熱拡散部材16,17の間に介在される接合部材24によって接合されている。接合部材24は、接合部材20,21同様、金属粒子の焼結体であり、その厚さが、各熱拡散部材16,17の金属薄膜31よりも厚くなっている。具体的には、接合部材24の厚さも、接合部材20,21の厚さt2,t3同様、20μ〜40μmの範囲内に設定されている。このような接合部材24は、第1実施形態に示した接合部材20,21同様、金属粒子を分散してなる金属ペーストを、2つの熱拡散部材16,17の互いに対向する面の少なくとも一方に塗布し、加熱することで得ることができる。
【0073】
このように本実施形態では、2つの熱拡散部材16,17の厚み方向に垂直な方向において、第1熱拡散部材16における熱伝導性に優れる方向と、第2熱拡散部材17における熱伝導性に優れる方向とが、ほぼ直交する位置関係となっている。したがって、2つの熱拡散部材16,17を、互いに積層されてなる1つの熱拡散部材11としてみたときに、厚さ方向に加えて、該厚さ方向に直交する2方向に良好な熱伝導性を有している。すなわち、3軸方向において熱伝導性に優れた熱拡散部材11となっており、このため効率よく発熱体12を冷却することができる。例えば、図8に示す構成では、厚さ方向において、発熱体12から熱拡散部材16,17を通じて冷却器15側に熱を伝導させるとともに、厚さ方向に垂直な方向において熱拡散部材11(2つの熱拡散部材16,17)の側面から外部雰囲気に熱を逃がすことができる。
【0074】
また、接合部材24も、接合部材20,21同様、金属粒子の焼結体である。このため、金属粒子の焼結(接合)を、従来のろう付けよりも低温(例えば最高温度300℃以下)で実施することができる。したがって、線膨張係数の異方性による2つの熱拡散部材16,17の線膨張係数差に起因する熱応力、すなわち接合界面の熱応力、を抑制することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、2つの熱拡散部材16,17のうち、互いの対向面の金属薄膜31上の少なくとも一方にAgペーストを塗布し、2つの熱拡散部材16,17をAgペーストを介して積層する。そしてこの積層状態で加熱し、Ag粒子を焼結することで、接合部材24を得ることができる。
【0076】
以上より、本実施形態によれば、炭素系材料からなる熱拡散部材11を用いた発熱体モジュール10において、第1熱拡散部材16と第2熱拡散部材17との接合界面の熱応力を抑制することができる。また、第1実施形態同様、熱拡散部材11と該部材11の隣に位置する部材(発熱体12、金属部材13)との接合部分についても、接合界面の熱応力を抑制することができる。
【0077】
なお、本実施形態においても、接合部材24を構成する金属粒子として、平均粒径がナノサイズの金属粒子を用いる。したがって、2つの熱拡散部材16,17間に作用する熱応力を効果的に抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態では、2つの熱拡散部材16,17に介在される接合部材24が、金属薄膜31よりも厚いため、第1熱拡散部材16と第2熱拡散部材17との間の熱伝達経路の熱抵抗に関し、金属薄膜31よりも接合部材24の影響が大きくなっている。これに対し、本実施形態では、接合部材20,21同様、単一金属の焼結体を接合部材24に採用している。このように、単一金属を採用すると、多成分の合金を接合部材とする構成に較べて接合部材24の熱伝導率が高くなる。このため、上記熱伝達経路の熱抵抗を小さくし(熱拡散部材16,17に隣接する接合部材24での熱伝達ロスを抑制し)、発熱体12の熱を、効率よく冷却器15側に伝導させることができる。特に本実施形態では、接合部材24がAgからなるため、上記熱伝達経路の熱抵抗をより小さくすることができる。
【0079】
また、本実施形態では、金属薄膜31の総厚t1が、0.2〜5μm程度であり、接合部材20,21,24の厚さ(20〜40μm程度)よりも十分に薄いため、第1熱拡散部材16と発熱体12の間の熱伝達経路、2つの熱拡散部材16,17の間の熱伝達経路、及び第2熱拡散部材17と金属部材13の間の熱伝達経路において、金属薄膜31の部分の熱抵抗をほぼ無視することができる。したがって、上記した接合部材20,21,24による熱伝達経路の熱抵抗低減の効果をより顕著とすることができる。
【0080】
なお、本実施形態では、熱拡散部材11として2つの熱拡散部材16,17の例を示したが、3つ以上の熱拡散部材を積層・一体化して熱拡散部材11としても良い。この場合、厚さ方向で隣り合う熱拡散部材において、炭素系板材30の板厚方向(積層方向)が互いに異なる配置とすれば良い。
【0081】
(第3実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した発熱体モジュール10と共通する部分についての説明は割愛する。上記実施形態では、熱拡散部材11が、発熱体12と金属部材13との間に配置される例を示した。これに対し、本実施形態では、図10に示すように、金属部材13と電気絶縁層14の間に熱拡散部材11が配置される点を特徴とする。
【0082】
図10に示すように、発熱体モジュール10を構成する要素は、第1実施形態と同じであり、金属部材13と電気絶縁層14が、特許請求の範囲に記載の第2部材に相当する。金属部材13と熱拡散部材11との間に介在された接合部材21は、第1実施形態に示した接合部材21と同じである。発熱体12と金属部材13の間に介在された接合部材25としては、熱伝導性及び導電性が良好であり、発熱体12と金属部材13を接合できるもの(半田など)を採用することができる。もちろん、金属粒子の焼結体でも良い。この場合には、接合界面の熱応力低減と、より高い熱伝導性能が期待できる。
【0083】
また、熱拡散部材11と電気絶縁層14の間に介在された接合部材26は、第1実施形態に示した接合部材20,21同様、金属粒子の焼結体である。このため、金属粒子の焼結(接合)を低温(例えば最高温度300度以下)で実施することができる。したがって、熱拡散部材11と電気絶縁層14の線膨張係数差に起因する熱応力、すなわち接合界面の熱応力を抑制することができる。
【0084】
なお、接合部材26は、例えば電気絶縁層14の熱拡散部材11との対向面上に例えばAg粒子を含むペーストを塗布し、Agペースト上に熱拡散部材11を配置する。そしてこの配置状態で加熱し、Ag粒子を焼結することで得ることができる。
【0085】
以上より、本実施形態によれば、炭素系材料からなる熱拡散部材11を用いた発熱体モジュール10において、熱拡散部材11と、該熱拡散部材11の隣に位置する部材(金属部材13及び電気絶縁層14)との接合界面の熱応力を抑制することができる。
【0086】
なお、本実施形態においても、接合部材21,26を構成する金属粒子として、平均粒径がナノサイズの金属粒子を用いる。したがって、熱応力を効果的に抑制することができる。
【0087】
また、本実施形態では、接合部材20,21同様、単一金属の焼結体を接合部材26に採用する。このように、単一金属を採用すると、多成分の合金を接合部材とする構成に較べて接合部材26の熱伝導率が高くなる。このため、接合部材26を介した熱拡散部材16と電気絶縁層14との間の熱伝達経路において、熱抵抗を小さくし、発熱体12の熱を、効率よく冷却器15側に伝導させることができる。特に本実施形態では、接合部材26がAgからなるため、上記熱伝達経路の熱抵抗をより小さくすることができる。
【0088】
また、本実施形態では、発熱体(半導体素子)12と金属部材13とを接合する。したがって、発熱体12と金属部材13の間に、熱拡散部材11が存在しない分、熱拡散部材11による電気抵抗分を減らして、金属部材13を発熱体12の電力取出し部として活用することもできる。
【0089】
なお、本実施形態では、電気絶縁層14の表面については特に言及しなかった。しかしながら、接合部材26との接合強度を向上させるために、電気絶縁層14の表面に、第1実施形態に示した熱拡散部材11の表面層33同様の金属薄膜を形成しても良い。また、表面層の下層として、表面層と電気絶縁層14の両方と接合性が良い膜を、表面層とともに金属薄膜として備えても良い。
【0090】
(変形例)
図11に例示する発熱体モジュール10は、本実施形態に係る構成と、第2実施形態に示した構成とを組み合わせた構成となっている。このように、複数(2つ)の熱拡散部材11を備える発熱体モジュール10において、金属部材13と電気絶縁層14との間に、複数の熱拡散部材11(図11では、第1熱拡散部材16及び第2熱拡散部材17)を配置しても良い。
【0091】
上記例では、外部出力端子としての金属部材13と電気絶縁層14の間、換言すれば金属部材13と冷却器15との間に、導電性を有し、熱伝導に異方性を有する熱拡散部材11が配置される例を示した。しかしながら、第1実施形態の変形例で示したように、熱伝導が等方性を示し、且つ、導電性を示す熱拡散部材11を採用することもできる。このように熱伝導が等方性の熱拡散部材11を採用すると、互いに直交する3軸方向において熱伝導性に優れるため、1つの熱拡散部材11のみで、効率よく発熱体12を冷却することができる。
【0092】
さらには、図12に示すように、電気絶縁性を有する熱拡散部材18を配置することもできる。この場合、熱拡散部材18が電気絶縁性を有するため、電気絶縁層14を不要とすることができる。この熱拡散部材18の構成材料としては、熱伝導が等方性を示すダイヤモンドを採用することができる。なお、ダイヤモンドからなる熱拡散部材18は、例えば周知の気相合成法にて形成することができる。また、熱拡散部材18のうち、金属部材13及び冷却器15との対向面には、接合部材21,27との接続信頼性を向上するための金属薄膜31が形成されている。一方、熱拡散部材18の金属部材13及び冷却器15との対向面を除く面(側面)には、金属部材13と冷却器15との間で電気絶縁性を確保すべく、金属薄膜が形成されていない。なお、接合部材27は、上記した接合部材20,21,26などと同様に、金属粒子、好ましくは単一金属のナノ粒子を焼結してなる。
【0093】
(第4実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した発熱体モジュール10と共通する部分についての説明は割愛する。図13に示す発熱体モジュール10は、第3実施形態に示した発熱体モジュール10とほぼ同じである。異なる点は、外部接続端子としての金属部材13が、熱拡散部材11のみと接合されており、発熱体12、金属部材13、及び電気絶縁層14が、特許請求の範囲に記載の第2部材に相当する点である。
【0094】
これによれば、発熱体12で生じた熱が、金属部材13を介さずに冷却器15まで伝導されるため、金属部材13による熱抵抗分、冷却効率を向上することができる。
【0095】
なお、発熱体12と熱拡散部材11との間に介在された接合部材20と、金属部材13と熱拡散部材11との間に介在された接合部材21は、第1実施形態に示した接合部材20,21と同じである。また、熱拡散部材11と電気絶縁層14との間に介在された接合部材26は、第4実施形態に示した接合部材26と同じである。
【0096】
(変形例)
図14に例示する発熱体モジュール10は、本実施形態に係る構成と、第2実施形態に示した構成とを組み合わせた構成となっている。このように、複数(2つ)の熱拡散部材11を備える発熱体モジュール10において、発熱体12、金属部材13、及び電気絶縁層14が、特許請求の範囲に記載の第2部材に相当するようにしても良い。
【0097】
また、上記例では、導電性を有し、熱伝導に異方性を有する熱拡散部材11を用いる例を示した。しかしながら、第3実施形態の変形例で示したように、熱伝導が等方性を示し、且つ、導電性を示す熱拡散部材11を採用することもできる。このように熱伝導が等方性の熱拡散部材11を採用すると、互いに直交する3軸方向において熱伝導性に優れるため、1つの熱拡散部材11のみで、効率よく発熱体12を冷却することができる。
【0098】
さらには、第3実施形態の変形例(図12参照)で示したように、電気絶縁性を有する熱拡散部材18を配置することもできる。この場合、図15に示すように、熱拡散部材18が電気絶縁性を有するため、図15に示すように、電気絶縁層14を不要とすることができる。この熱拡散部材18の構成材料としては、熱伝導が等方性を示すダイヤモンドを採用することができる。なお、ダイヤモンドからなる熱拡散部材18は、例えば周知の気相合成法にて形成することができる。また、熱拡散部材18のうち、発熱体12及び金属部材13との対向面、冷却器15との対向面に、接合部材21,27との接続信頼性を向上するための金属薄膜31がそれぞれ形成されている。一方、熱拡散部材18の、発熱体12及び金属部材13との対向面及び冷却器15との対向面を除く面(側面)には、発熱体12及び金属部材13と冷却器15との間で電気絶縁性を確保すべく、金属薄膜が形成されていない。なお、接合部材27は、上記した接合部材20,21,26などと同様に、金属粒子、好ましくは単一金属のナノ粒子を焼結してなる。
【0099】
(第5実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した発熱体モジュール10と共通する部分についての説明は割愛する。図16に示す発熱体モジュール10は、第2実施形態に示した発熱体モジュール10とほぼ同じである。異なる点は、外部接続端子としての金属部材13が、第1熱拡散部材16と第2熱拡散部材17の間に介在されて両部材16,17と接合されており、発熱体12、金属部材13、及び電気絶縁層14が、特許請求の範囲に記載の第2部材に相当する点である。換言すれば、発熱体12と金属部材13の間に第1熱拡散部材16が配置され、金属部材13と電気絶縁層14の間に第2熱拡散部材17が配置されている。
【0100】
これによれば、発熱体12と金属部材13の間に、第2熱拡散部材17が存在しない分、熱拡散部材17による電気抵抗分を減らして、金属部材13を発熱体12の電力取出し部として活用することができる。
【0101】
なお、発熱体12と第1熱拡散部材16との間に介在された接合部材20と、金属部材13と各熱拡散部材16,17との間にそれぞれ介在された接合部材21は、第1実施形態に示した接合部材20,21と同じである。また、第2熱拡散部材17と電気絶縁層14との間に介在された接合部材26は、第4実施形態に示した接合部材26と同じである。
【0102】
(第6実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した発熱体モジュール10と共通する部分についての説明は割愛する。図17に示す発熱体モジュール10は、第1実施形態に示した発熱体モジュール10を、発熱体12を共通として、厚さ方向に2つ重ねた構造を有している。すなわち、半導体基板の両面に電極を有する縦型素子を、半導体基板の両面側で冷却するようになっている。
【0103】
図17において、発熱体12よりも紙面下方に位置する部分は、第1実施形態に示す発熱体モジュール10と同じ構成となっている。発熱体12の下面12aと反対の面(以下、上面12bと示す)には、接合部材28により金属部材19が接合されている。この金属部材19は、発熱体12(半導体素子)の上面12b側の電極と、上面12b上に位置する金属部材13(リード)とを電気的に接続するとともに、発熱体12と上面12b上に位置する冷却器15とを熱的に接続するターミナル(中継部材)としての機能を果たすものである。本実施形態では、金属部材19としてCuからなる金属ブロックを採用している。
【0104】
そして、金属部材19における発熱体12と反対側の面には、接合部材29により、金属薄膜31を有する熱拡散部材11が接合されている。熱拡散部材11よりも紙面上方に位置する部分は、第1実施形態(図1参照)に示す発熱体モジュール10の、熱拡散部材11よりも紙面下方の部分と同じ構成となっている。
【0105】
接合部材28としては、熱伝導性及び導電性が良好であり、発熱体12と金属部材19を接合できるもの(半田など)を採用することができる。もちろん、金属粒子の焼結体でも良い。この場合には、接合界面の熱応力低減と、より高い熱伝導性能が期待できる。
【0106】
一方、熱拡散部材11に接する接合部材29は、接合部材20,21同様、金属粒子の焼結体である。このため、金属粒子を焼結させて、熱拡散部材11と金属部材19とを接合する温度を、低温(例えば最高温度300℃以下)とすることができる。したがって、金属部材19と熱拡散部材11の線膨張係数差に起因する熱応力、すなわち接合界面の熱応力、を抑制することができる。
【0107】
なお、本実施形態では、熱拡散部材11及び金属部材19のうち、互いの対向面の少なくとも一方に例えばAg粒子を含むペーストを塗布し、2つの部材11,19をAgペーストを介して積層する。そしてこの積層状態で加熱し、Ag粒子を焼結することで、接合部材29を得ることができる。
【0108】
以上より、本実施形態によれば、接合部材28を介した熱拡散部材11と発熱体12との接合部分において、接合界面の熱応力を抑制することができる。また、接合部材29を介した熱拡散部材11と金属部材19との接合部分において、接合界面の熱応力を抑制することができる。
【0109】
なお、本実施形態においても、接合部材20,21,29を構成する金属粒子として、平均粒径がナノサイズの金属粒子を用いる。したがって、熱応力を効果的に抑制することができる。
【0110】
また、本実施形態では、接合部材20,21同様、単一金属の焼結体を接合部材29に採用する。このように、単一金属を採用すると、多成分の合金を接合部材とする構成に較べて接合部材29の熱伝導率が高くなる。このため、接合部材29及び熱拡散部材11を介した、発熱体12から紙面上方の冷却器15までの熱伝達経路において、熱抵抗を小さくすることができる。すなわち、発熱体12の熱を、効率よく冷却器15側に伝導させることができる。特に本実施形態では、接合部材29がAgからなるため、上記熱伝達経路の熱抵抗をより小さくすることができる。
【0111】
また、本実施形態においても、各熱拡散部材11において、金属薄膜31の総厚t1が、0.2〜5μm程度であり、接合部材20,21,29の厚さ(20〜40μm程度)よりも十分に薄くなっている。このため、紙面下方の熱拡散部材11と発熱体12の間の熱伝達経路、各熱拡散部材11と金属部材13との間の熱伝達経路、及び金属部材19と熱拡散部材11の間の熱伝達経路において、金属薄膜31の部分の熱抵抗をほぼ無視することができる。したがって、上記した接合部材20,21,29による熱伝達経路の熱抵抗低減の効果をより顕著とすることができる。
【0112】
また、本実施形態によれば、発熱体12の下面12a及び上面12bの両側に金属部材13としてのリードがそれぞれ存在するため、各金属部材13を発熱体12の電力取出し部としてそれぞれ活用することができる。
【0113】
また、発熱体12の下面12a及び上面12bの両側に熱拡散部材11及び冷却器15が存在するので、発熱体12の上下両方向において、発熱体12を効率よく冷却することができる。
【0114】
なお、本実施形態では、第1実施形態に示す発熱体モジュール10を基礎とする両面放熱構造の例を示した。しかしながら、その他の実施形態及び変形例に示した構成において、本実施形態に示す両面放熱構造を採用することもできる。
【0115】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0116】
10・・・発熱体モジュール(発熱体の冷却構造)
11・・・熱拡散部材
12・・・発熱体
13・・・金属部材
14・・・電気絶縁層
15・・・冷却器
16・・・第1熱拡散部材
17・・・第2熱拡散部材
20,21,24,26・・・接合部材
30・・・炭素系板材
31・・・金属薄膜
32・・・下地層
33・・・表面層
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の発熱体の熱を効果的に伝導させる熱拡散部材の接合構造、熱拡散部材の接合方法、及びそれを用いた発熱体の冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発熱体を冷却するための熱拡散部材として、銅やアルミニウム等の金属材料に代えて、グラファイトや炭素繊維、炭素−金属複合材、ダイヤモンドなどの炭素系材料からなる熱拡散部材が検討されている。
【0003】
例えば特許文献1では、半導体素子と放熱板の間に炭素繊維−金属複合材からなる熱拡散部材を設けている。この熱拡散部材は、炭素繊維の配向方向を部材の厚さ方向と一致させることで、半導体素子から放熱板へ熱を伝えやすくしている。なお、炭素繊維の配向方向の熱伝導率は1000W/mK程度であり、これにより熱拡散部材は、その配向方向において銅(熱伝導率350〜400W/mK)やアルミニウム(熱伝導率200〜240W/mK)よりも高い熱伝導性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−4666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、熱拡散部材と該熱拡散部材の隣に位置する部材との接合にAg−Cu−In系、又は、Ag−Cu−In−Ti系のろう材を用いている。このため、接合温度が500〜800℃と高く(特許文献1の表1参照)、熱拡散部材(炭素系材料)と熱拡散部材の隣に位置する部材との線膨張係数差に起因する熱応力が大きいという問題がある。このように接合界面の熱応力(残留応力)が大きいと、半導体素子などの発熱体の駆動中に接合界面の破壊が起こりやすく、発熱体の駆動に問題が生じたり、冷却性能が低下して発熱体の信頼性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、炭素系材料からなる熱拡散部材を用いつつ、接合界面の熱応力を抑制することができる熱拡散部材の接合構造、発熱体の冷却構造、及び熱拡散部材の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、第1部材が、炭素系材料を用いて板状に形成され、板状の厚さ方向に熱を伝導させる熱拡散部材となっている。したがって、接合部材を介した2つの部材の並び方向において、第1部材と第2部材との間で効率よく熱を移動させることができる。
【0008】
また、金属粒子の焼結体を接合部材とするため、従来のろう付けに較べて、接合温度を低くすることができる。これにより、熱拡散部材としての第1部材と第2部材との線膨張係数差に起因する熱応力、すなわち接合界面の熱応力を抑制することができる。
【0009】
以上より、本発明によれば、炭素系材料からなる熱拡散部材を用いつつ、接合界面の熱応力を抑制することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、第2部材との対向面に直交する方向の熱伝導率が、対向面に平行な方向のうちの少なくとも一方向における熱伝導率よりも高くなるように、第2部材に対して第1部材が配置されている。換言すれば、炭素系材料が熱伝導の異方性を有しており、炭素系材料の熱伝導性の良い方向が、対向面に直交する方向となるように、第2部材に対して第1部材が配置されている。したがって、炭素系材料の熱伝導性の良い部分を活かし、接合部材を介した2つの部材の並び方向において、第1部材と第2部材との間で効率よく熱を移動させることができる。
【0011】
請求項3に記載のように、金属粒子の平均粒径をナノサイズとすると、平均粒径がミクロンサイズに較べて、接合温度(焼結のための温度)をより低くすることができる。これにより、熱拡散部材としての第1部材と第2部材との線膨張係数差に起因する熱応力、すなわち接合界面の熱応力を効果的に抑制することができる。
【0012】
ところで、接合部材が金属薄膜よりも厚いと、第1部材と第2部材との間の熱伝達経路の熱抵抗に関し、金属薄膜よりも接合部材の影響が大きくなる。これに対し、請求項4に記載のように、金属粒子を単一金属とすると、従来のように多成分の合金を接合部材とする構成に較べて、接合部材の熱伝導率を高くし、ひいては上記熱伝達経路の熱抵抗を小さくすることができる。
【0013】
請求項5に記載のように、接合部材がAg、Au、Cu、Niのいずれかからなることが好ましい。Agの熱伝導率は427W/mK、Auの熱伝導率は315W/mK、Cuの熱伝導率は398W/mK、Niの熱伝導率は90W/mKである。このように、これら金属はいずれも熱伝導率が高いので、接合部材、ひいては第1部材及び第2部材間の熱伝達経路の熱抵抗を、より小さくすることができる。
【0014】
なかでもAgの熱伝導性は特に優れているので、より好ましくは、請求項6に記載のように、接合部材がAgからなると良い。
【0015】
また、請求項7に記載のように、金属薄膜は、第1部材との間に化学結合を形成する下地層と、下地層上に配置され、接合部材との間に金属結合を形成する表面層と、の少なくとも2層を有すると良い。下地層の金属は、第1部材を構成するC(炭素)と共有結合を形成、又は、C表面の官能基(ヒドロキシル基)とイオン結合を形成する。また、表面層を構成する金属は、接合部材を構成する金属と金属結合を形成する。したがって、熱拡散部材としての第1部材と接合部材との接合強度を確保することができる。
【0016】
具体的には、請求項8に記載のように、下地層が、Ti、Al、Cr、Mo、Wのいずれかを含む構成とすると良い。また、請求項9に記載のように、表面層が、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかからなる構成とすると良い。
【0017】
請求項10に記載のように、金属薄膜として、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかであって表面層とは異なる金属からなり、下地層及び表面層の各界面で合金層を形成する中間層を、下地層と表面層の間に有しても良い。これによれば、中間層が下地層、表面層のいずれともその接触界面で合金化するので、金属薄膜の接合強度、ひいては第1部材と接合部材との接合強度を向上することができる。
【0018】
次に、請求項11に記載の発明は、発熱体で生じた熱が、第1部材を介して冷却器に移動され、発熱体が冷却される発熱体の冷却構造において、第1部材と接合部材を介して接合される部材を第2部材とし、該第2部材と第1部材との間に上記した熱拡散部材の接合構造を適用する点を特徴とする。
【0019】
これによれば、上記した請求項の作用効果の通り、熱拡散部材としての第1部材と第2部材との線膨張係数差に起因する熱応力、すなわち接合界面の熱応力を抑制することができる。
【0020】
請求項12に記載のように、第2部材として、炭素系材料を用いて板状に形成され、表面に金属薄膜を有し、板状の厚さ方向に熱を伝導させる熱拡散部材を備え、第2部材としての熱拡散部材は、少なくとも第1部材との対向面に金属薄膜を有する構成としても良い。このように、第1部材と第2部材がともに熱拡散部材である構成、すなわち複数の熱拡散部材を備える構成を採用することもできる。また、第2部材の表面に金属薄膜が形成されているため、上記した第1部材の金属薄膜同様、熱拡散部材としての第2部材と接合部材との接合強度を確保することができる。
【0021】
特に請求項13に記載の発明では、第1部材及び第2部材がともに、板厚方向よりも該板厚方向に垂直な方向(板厚方向に垂直な面内の互いに直交する2方向)の熱伝導率が高い炭素系板材を、板厚方向に複数枚積層してなる。そして、第1部材及び第2部材は、お互いの対向面に直交する方向の熱伝導率が、対向面に平行な方向のうちの板厚方向における熱伝導率よりも高くなるように配置されている。したがって、接合部材を介した2つの部材の並び方向において、第1部材及び第2部材は、ともに高い熱伝導性を有する。
【0022】
また、第1部材及び第2部材は、板厚方向が互いに異なるように配置されている。すなわち、お互いの対向面に沿う方向(平行な方向)において、第1部材における熱伝導性に優れる方向と、第2部材における熱伝導性に優れる方向とが異なっている。このため、接合部材を介して一体化された熱拡散部材は、対向面に直交する方向だけでなく、対向面に沿う方向であって互いに直交する2方向においても、良好な熱伝導性を有している。したがって、3軸方向において効率的に発熱体を冷却することができる。
【0023】
請求項14に記載のように、金属薄膜は、第2部材との間に化学結合を形成する下地層と、下地層上に配置され、接合部材との間に金属結合を形成する表面層と、の少なくとも2層を有すると良い。下地層の金属は、第2部材を構成するC(炭素)と共有結合を形成、又は、C表面の官能基(ヒドロキシル基)とイオン結合を形成する。また、表面層を構成する金属は、接合部材を構成する金属と金属結合を形成する。したがって、熱拡散部材としての第2部材と接合部材との接合強度を確保することができる。
【0024】
具体的には、請求項15に記載のように、下地層が、Ti、Al、Cr、Mo、Wのいずれかを含む構成とすると良い。また、請求項16に記載のように、表面層が、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかからなる構成とすると良い。
【0025】
請求項17に記載のように、金属薄膜として、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかであって表面層とは異なる金属からなり、下地層及び表面層の各界面で合金層を形成する中間層を、下地層と表面層の間に有しても良い。これによれば、中間層が下地層、表面層のいずれともその接触界面で合金化するので、金属薄膜の接合強度、ひいては第1部材と接合部材との接合強度を向上することができる。
【0026】
なお、第2部材としては、請求項18に記載の発熱体を含む構成、請求項19に記載の、発熱体と第1部材の間、又は、第1部材と冷却器の間に配置され、発熱体の電極に電気的に接続された金属部材を含む構成を採用することができる。また、請求項20に記載のように、第1部材が電気伝導性を有し、第1部材と冷却との間に電気絶縁層を備える場合、第2部材として電気絶縁層を含む構成を採用することもできる。この場合、電気絶縁層により、第1部材(炭素系材料からなる熱拡散部材)と冷却器が電気的に接続されるのを抑制することができる。
【0027】
次に、請求項21〜30に記載の発明の作用効果は、請求項1〜10に記載の発明の作用効果と同じであるので、その記載を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態に係る発熱体の冷却構造(発熱体モジュール)を示す断面図である。
【図2】図1に示す冷却構造のうち、熱拡散部材の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図1に示す冷却構造のうち、熱拡散部材の接合構造部分を示す断面図である。
【図4】接合部の熱コンダクタンスと、冷却構造の熱抵抗との関係を示す図である。
【図5】膜厚と熱コンダクタンスとの関係を示す図である。
【図6】変形例を示す断面図である。
【図7】変形例を示す断面図である。
【図8】第2実施形態に係る発熱体モジュールを示す断面図である。
【図9】図8に示す冷却構造のうち、熱拡散部材の概略構成を示す斜視図である。
【図10】第3実施形態に係る発熱体モジュールを示す断面図である。
【図11】変形例を示す断面図である。
【図12】変形例を示す断面図である。
【図13】第4実施形態に係る発熱体モジュールを示す断面図である。
【図14】変形例を示す断面図である。
【図15】変形例を示す断面図である。
【図16】第5実施形態に係る発熱体モジュールを示す断面図である。
【図17】第6実施形態に係る発熱体モジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。
【0030】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る発熱体の冷却構造10(以下、発熱体モジュール10と示す)、発熱体モジュール10に適用された熱拡散部材11の接合構造及び接合方法について、図1〜図3を用いて説明する。
【0031】
図1に示すように、発熱体モジュール10は、表面に金属薄膜31を有する熱拡散部材11、発熱体12、金属部材13、電気絶縁層14、及び冷却器15を備えている。
【0032】
熱拡散部材11の一面上には、接合部材20により発熱体12が接合されている。一方、熱拡散部材11の発熱体12と反対の面には、接合部材21により金属部材13が接合されている。また、金属部材13における熱拡散部材11と反対の面には、接合部材22により電気絶縁層14が接合され、電気絶縁層14における金属部材13と反対の面には、接合部材23により冷却器15が接合されている。
【0033】
なお、本実施形態では、熱拡散部材11が特許請求の範囲に記載の第1部材、発熱体12及び金属部材13が特許請求の範囲に記載の第2部材に相当する。また、接合部材20,21が、特許請求の範囲に記載の、金属薄膜31よりも厚い接合部材に相当する。
【0034】
熱拡散部材11は、少なくとも発熱体12の熱を冷却器15に効率よく伝導させるための機能を果たす板状の部材であり、その厚さ方向に熱を伝導できるようになっている。この熱拡散部材11は、炭素系材料からなり、表面に金属薄膜31を有している。本実施形態では、熱拡散部材11が、発熱体12の電極と金属部材13とを電気的に接続する機能も果たす。このように、熱伝導性、導電性を有する熱拡散部材11の炭素系材料としては、炭素単体、又は、炭素を主成分とし、CuやAlなどの金属、樹脂、セラミックを副成分とする複合材料を採用することができる。また、炭素としては、グラファイト(黒鉛)や炭素繊維を採用することができる。
【0035】
本実施形態では、一例として、グラファイトからなる炭素系板材30を、図2に示すように、その板厚方向に複数枚積層し、一体化してなる熱拡散部材11を採用している。グラファイトは、炭素原子が隣接の炭素原子と平面内で3方向に共有結合を形成し、縮合六員環を形成した構造(層状構造)を有しており、各層間をファンデルワールス力で結び付けた異方性を有している。この層状構造のため、層に対して平行方向と垂直方向で性質が異なっている。具体的には、互いに直交する関係にある3軸方向のうち、2軸方向、すなわち上記平行方向に高熱伝導性(1000W/mK程度)を有し、残りの1軸方向、すなわち上記垂直方向に平行方向よりも低い熱伝導性(5〜200W/mK程度)を有する。すなわち、熱伝導の異方性を有している。
【0036】
炭素系板材30は平面長方形をなしており、その板厚方向が、グラファイトの上記垂直方向と一致し、平面長方向の長手方向及び幅方向がグラファイトの上記平行方向と一致している。なお、図1においては、紙面上下方向及び紙面に垂直な方向が高熱伝導性の方向となっている。このように、第1部材としての熱拡散部材11は、第2部材としての発熱体12及び金属部材13との対向面に直交する方向(図1の紙面上下方向)の熱伝導率が、対向面に平行な方向のうちの一方向(上記した炭素系板材30の板厚方向)における熱伝導率よりも高くなっている。このように、2軸方向に高熱伝導性を有し、残りの1軸方向に低熱伝導性を有する炭素系板材30を用いると、熱拡散部材11の厚さ方向だけでなく、厚さ方向に垂直な面に沿う一方向にも熱を拡散させることができる。このため、放熱性を向上することができる。
【0037】
また、熱拡散部材11は、厚さ方向における寸法が炭素系板材30の幅方向の寸法に等しく、積層方向における寸法が炭素系板材30の幅方向寸法よりも大きくとられ、これにより板状となっている。この熱拡散部材11は、複数の炭素系板材30を積層した後に焼付けすることによって、或いは、ガス状とした材料(グラファイト材料)を平面の上に順次吹き付けていくことで、積層体(熱拡散部材11)として形成される。このような熱拡散部材11については、本出願人による先の出願(特願2010−132076号)に説明されており、詳細については参照されたい。
【0038】
熱拡散部材11は、その表面に、後述する接合部材20,21との接合性を向上させるための金属薄膜31を有している。この金属薄膜31は、スパッタや蒸着などの物理的堆積法やメッキ法により形成されるものであり、少なくとも第2部材としての発熱体12との対向面11a(以下、上面11aと示す)及び金属部材13との対向面11b(以下、下面11bと示す)に形成される。本実施形態では、金属薄膜31が、熱拡散部材11との間に化学結合を形成する下地層32と、下地層32上に配置され、接合部材20,21との間に金属結合を形成する表面層33の2層を有している。
【0039】
下地層32の構成材料としては、熱拡散部材11を構成するC(炭素)と共有結合を形成、又は、C表面の官能基(ヒドロキシル基)とイオン結合を形成する金属材料、例えばTi、Al、Cr、Mo、Wのいずれかを含む材料を採用することができる。すなわち、これら金属単体(例えばTi)、又は、金属を含む合金(Ti合金)を採用することができる。本実施形態では、下地層32の構成材料として、Ti単体を採用する。一方、表面層33の構成材料としては、接合部材20,21を構成する金属と金属結合を形成する材料、例えばAu、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかを採用することができる。本実施形態では、表面層33の構成材料として、Auを採用する。なお、表面層33を構成する金属としては、上記した金属以外の貴金属(例えばRh)を採用することも可能である。
【0040】
本実施形態では、熱拡散部材11の上面11a及び下面11bだけでなく、側面11cにも金属薄膜31が形成されている。すなわち、熱拡散部材11の表面全面に金属薄膜31が形成されている。
【0041】
ここで、図4に示す接合部の熱コンダクタンスと、冷却構造の熱抵抗の関係から、熱コンダクタンスが1×107W/m2K以上で、熱抵抗が0.10K/W程度のほぼ一定となる。一方、熱コンダクタンスが1×107W/m2K未満では、僅かな熱コンダクタンスの変化で熱抵抗が大きく変化し、熱コンダクタンスが小さいほど熱抵抗が大きくなる。したがって、発熱体12から冷却器15に効率よく熱を伝達するには、金属薄膜31の熱コンダクタンスを1×107W/m2K以上とすることが好ましい。なお、図4の縦軸に示す冷却構造の熱抵抗は、冷却構造の熱抵抗(K/W)={(定常状態での発熱体12の温度(K)−冷却水温(K))/発熱体12の発熱量(W)}で定義される。
【0042】
例えば、下地層32としてTi単体を用いた場合、図5から、その膜厚を2μm以下とすると、熱コンダクタンスを1×107W/m2K以上とすることができる。また、表面層33としてAuを用いた場合、図5から、その膜厚を30μm以下とすると、熱コンダクタンスを1×107W/m2K以上とすることができる。このように、Tiからなる下地層32を2μm以下、Auからなる表面層33を30μm以下とすることで、金属薄膜31の熱抵抗を小さくし、熱を伝達しやすくすることができる。本実施形態では、上記したように、スパッタや蒸着などの物理的堆積法やメッキ法により金属薄膜31(下地層32及び表面層33)を形成するので、上記した数値を満足する薄膜を形成することができる。なお、膜厚を薄くしすぎると成膜時にピンホールが発生しやすくなる。このため、下地層32及び表面層33の各膜厚を、0.05μm以上とすることが好ましい。本実施形態では、金属薄膜31の総厚t1が、0.2〜5μm程度となっている。
【0043】
発熱体12は、駆動時(動作時)に発熱するものである。例えばシリコンなどの半導体基板に素子が形成されてなる半導体素子を採用することができる。このような半導体素子としては、半導体基板の両面に電極を有し、半導体基板の厚さ方向に電流が流れるパワー系の縦型素子、具体的には、MOSFET、IGBT、FWD(転流ダイオード)などを採用することができる。本実施形態では、発熱体12として、シリコンからなる半導体基板に構成されたIGBTを採用している。なお、図1及び図3では、発熱体12(半導体素子)を1つのみ図示するが、その個数は特に限定されるものではない。
【0044】
発熱体12は、その表面に、接合部材20との接合性を向上させるための金属薄膜を有している。この金属薄膜も、上記した熱拡散部材11の金属薄膜31同様、スパッタや蒸着などの物理的堆積法やメッキ法により形成されるものであり、少なくとも熱拡散部材11との対向面12a(以下、下面12aと示す)に形成される。また、金属薄膜として表面層34を少なくとも有する。なお、該表面層34と発熱体12との間に、両者34,12と接合性が良い膜を、表面層34とともに金属薄膜として備えても良い。表面層34を構成する金属材料としては、接合部材20を構成する金属と金属結合を形成するもの、例えば、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかを採用することができる。本実施形態では、発熱体12における熱拡散部材11との対向面12a全面に、金属薄膜として表面層34を有している。また、金属薄膜(表面層34)の厚さは、その総厚が接合部材20の厚さt2よりも薄くなっている。本実施形態では、金属薄膜としての表面層34の厚さが、0.1〜1μm程度となっている。
【0045】
接合部材20は、金属粒子を焼結してなるものである。金属粒子は、その平均粒径が小さいほど焼結温度、すなわち接合温度を低くすることができる。例えば平均粒径を数μm程度とすると、焼結温度を300℃以下とすることができ、平均粒径をナノサイズ(1nm以上1000nm未満)とすると、焼結温度をさらに低くすることができる。また、金属粒子としては、単一金属の粒子、複数の金属粒子、複合金属の粒子のいずれも採用することができる。なお、複数の金属粒子としては、例えばAg粒子とCu粒子、Ag粒子とSn粒子、Sn粒子とNi粒子などの組み合わせがある。また、複合金属の粒子としては、AgSn粒子、PbSn粒子などがある。
【0046】
本実施形態では、金属粒子として、単一金属のナノ粒子を採用する。単一金属としては、熱伝導性が高い、Ag、Au、Cu、Niのいずれかを採用することが好ましい。ちなみに、Agの熱伝導率は427W/mK、Auの熱伝導率は315W/mK、Cuの熱伝導率は398W/mK、Niの熱伝導率は90W/mKである。本実施形態では、金属粒子として、特に熱伝導性に優れたAgのナノ粒子を採用する。なお、ナノ粒子とは、周囲を有機保護膜でコーティングされたナノサイズの金属粒子である。
【0047】
また、接合部材20の厚さt2は、図3に示すように、金属薄膜31の厚さt1よりも十分に厚くなっている。ここで、上記した金属薄膜31同様、発熱体12から冷却器15に効率よく熱を伝達するには、接合部材20の熱コンダクタンスを1×107W/m2K以上とすることが好ましい。接合部材20としてAgを用いた場合、図5から、その膜厚を40μm以下とすると、熱コンダクタンスを1×107W/m2K以上とすることができる。このように、接合部材20を40μm以下とすることで、接合部材20の熱抵抗を小さくし、熱を伝達しやすくすることができる。なお、接合部材20は、金属粒子を溶媒中に分散してなる金属ペーストを、スクリーン印刷などによって塗布し、加熱により金属粒子を焼結することで形成される。したがって、金属薄膜31のように薄く形成することができず、その厚さは10μmが限界である。したがって、接合部材20の厚さを10μm以上40μm以下とすることが好ましい。本実施形態では、Agからなる接合部材20の厚さt2が、20μ〜40μmの範囲内で設定されている。
【0048】
金属部材13は、CuやAlなど導電性に優れる金属材料からなるものである。本実施形態では、熱拡散部材11と電気絶縁層14との間に介在され、発熱体12としての半導体素子の一方の電極と、接合部材20,21及び熱拡散部材11を介して電気的に接続されている。すなわち、外部接続用端子(所謂リード)としての機能を果たすようになっている。
【0049】
金属部材13は、その表面に、接合部材21との接合性を向上させるための金属薄膜を有している。この金属薄膜も、上記した熱拡散部材11の金属薄膜31同様、スパッタや蒸着などの物理的堆積法やメッキ法により形成されるものであり、少なくとも熱拡散部材11との対向面に形成される。また、金属薄膜として表面層35を少なくとも有する。なお、該表面層35と金属部材13との間に、両者35,13と接合性が良い膜を、表面層35とともに金属薄膜として備えても良い。表面層35を構成する金属材料としては、接合部材21を構成する金属と金属結合を形成するもの、例えば、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかを採用することができる。本実施形態では、金属部材13の表面全面に、金属薄膜として表面層35を有している。また、金属薄膜(表面層35)の厚さは、その総厚が接合部材21の厚さt3よりも薄くなっている。本実施形態では、金属薄膜としての表面層35の厚さが、0.1〜1μm程度となっている。
【0050】
接合部材21も、接合部材20同様、金属粒子を焼結してなるものである。本実施形態では、接合部材21が接合部材20と同じ構成となっている。すなわち、接合部材21も、ナノサイズのAg粒子を焼結してなる。また、接合部材21の厚さt3も、接合部材20の厚さt2同様、20μ〜40μmの範囲内で設定されている。
【0051】
電気絶縁層14は、導電性を有する熱拡散部材11と冷却器15との間に設けられ、発熱体12から冷却器15への漏電を防止するためのものである。電気絶縁層14としては、セラミックからなる板材、セラミック材料と樹脂材料の混合体からなるフィルム状の材料、などを用いることができる。本実施形態では、電気絶縁層14がセラミック材料からなる。
【0052】
冷却器15は、発熱体12の熱を、内部の通路(図示略)を流通する冷却媒体に移動させて、発熱体12を冷却する熱交換器である。この冷却器15は、板状をなす本体部の内部に多数の通路が設けられて形成されており、各通路には冷却媒体(例えば冷却用空気や、冷却水等)が流通されるようになっている。
【0053】
接合部材22,23としては、熱伝導性が良好であり、さらに接合部材22は、金属部材13と電気絶縁層14を接合でき、接合部材23は、電気絶縁層14と冷却器15を接合できるものを採用することができる。これら接合部材22,23は、金属部材13と冷却器15との間に配置されるため、導電性は特に言及されない。なお、金属部材13と電気絶縁層14との間、電気絶縁層14と冷却器15との間は接合されていなくても良い。例えば、接合部材22,23に代えて、金属部材13と電気絶縁層14との間、及び気絶縁層14と冷却器15との間に薄く濡れ広がって界面熱抵抗を低下させる働きのあるグリス状の材料を用いることもできる。また、電気絶縁層14それ自体に弾力性又は接着性をもつ材料を使用した場合、電気絶縁層14を金属部材13や冷却器15に密着させることで、接合部材22,23を有さない構成とすることもできる。
【0054】
このように構成される発熱体モジュール10では、発熱体12の熱が、接合部材20を介して熱拡散部材11に伝達されると、炭素系板材30の長手方向に沿って外周側に拡がりつつ熱拡散部材11の厚さ方向に伝導される。そして、この熱は、接合部材21を介して金属部材13に伝導され、さらに接合部材22、電気絶縁層14、及び接合部材23を介して冷却器15に至る。冷却器15においては、上記のように伝導された発熱体12の熱が、内部通路を流通する冷却媒体に移動され、これにより発熱体12は冷却される。
【0055】
次に、上記した発熱体モジュール10の特徴部分の効果について説明する。
【0056】
本実施形態では、第1部材としての熱拡散部材11が炭素系材料からなる。また、炭素系板材30の配向性から、熱拡散部材11が、その厚さ方向において高い熱伝導性を有している。したがって、接合部材20を介した発熱体12と熱拡散部材11の並び方向、換言すれば熱拡散部材11の厚み方向において、発熱体12の熱を、効率よく熱拡散部材11へ伝導させることができる。また、接合部材21を介した熱拡散部材11と金属部材13の並び方向、換言すれば熱拡散部材11の厚み方向において、熱拡散部材11から金属部材13に効率よく熱を伝導させることができる。
【0057】
また、熱拡散部材11に接する接合部材20,21は、金属粒子の焼結体である。この焼結体は、以下に示す方法で形成することができる。先ず、金属ペーストを準備する。金属ペーストとは、周囲を有機保護膜でコーティングされた金属粒子を溶媒中に分散させたペースト状のものである。接合部材20に隣接する発熱体12及び熱拡散部材11の少なくとも一方に金属ペーストを塗布(例えばスクリーン印刷)する。そして、加熱して有機保護膜や溶媒を熱分解して揮発させると、金属粒子の表面が露出され、金属粒子同士が互いに金属結合を形成する。このような金属粒子の焼結は、従来のろう付けに較べて低温(例えば300℃以下)で実施することができる。したがって、接合温度を低くし、発熱体12と熱拡散部材11の線膨張係数差に起因する熱応力、すなわち接合界面の熱応力、を抑制することができる。また、熱拡散部材11と金属部材13の線膨張係数差に起因する熱応力、すなわち接合界面の熱応力、を抑制することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、熱拡散部材11の上面11aにおける金属薄膜31上にAgペーストを塗布し、塗布したAgペーストに下面12a上の表面層34が接するように発熱体12を配置する。そしてこの配置状態で加熱し、Ag粒子を焼結することで、接合部材20を得ることができる。また、金属部材13における熱拡散部材11との対向面の表面層35上にAgペーストを塗布し、塗布したAgペーストに下面11b上の金属薄膜31が接するように熱拡散部材11を配置する。そして、この配置状態で加熱し、Ag粒子を焼結することで、接合部材21を得ることができる。
【0059】
以上より、本実施形態によれば、炭素系材料からなる熱拡散部材11を用いた発熱体モジュール10において、熱拡散部材11と該部材11の隣に位置する部材(発熱体12、金属部材13)との接合界面の熱応力を抑制することができる。
【0060】
特に本実施形態では、接合部材20,21を構成する金属粒子として、平均粒径がナノサイズの金属粒子を用いる。金属粒子は、その平均粒径が小さいほうが表面の活性度が高くなり、焼結する際の温度(接合温度)をより低温(例えば最高温度100℃以下)で実施することができる。したがって、本実施形態によれば熱応力を効果的に抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、接合部材20が金属薄膜31よりも厚いため、発熱体12と熱拡散部材11との間の熱伝達経路の熱抵抗に関し、金属薄膜31よりも接合部材20の影響が大きくなっている。同じく、接合部材21が金属薄膜31よりも厚いため、熱拡散部材11と金属部材13との間の熱伝達経路の熱抵抗に関し、金属薄膜31よりも接合部材21の影響が大きくなっている。これに対し、本実施形態では、単一金属の焼結体を接合部材20,21に採用している。このように、単一金属を採用すると、多成分の合金を接合部材とする構成に較べて接合部材20,21の熱伝導率が高くなる。このため、上記熱伝達経路の熱抵抗を小さくし(熱拡散部材11に隣接する接合部材20,21での熱伝達ロスを抑制し)、発熱体12の熱を、接合部材20,21及び熱拡散部材11を介して、冷却器15側に伝導させることができる。特に本実施形態では、接合部材20,21がともにAgからなるため、上記熱伝達経路の熱抵抗をより小さくすることができる。
【0062】
また、本実施形態では、金属薄膜31の総厚t1が、0.2〜5μm程度であり、接合部材20,21の厚さt2,t3(20〜40μm程度)よりも十分に薄いため、熱拡散部材11と発熱体12の間の熱伝達経路、及び、熱拡散部材11と金属部材13の間の熱伝達経路において、金属薄膜31の部分の熱抵抗をほぼ無視することができる。したがって、上記した接合部材20,21による熱伝達経路の熱抵抗低減の効果をより顕著とすることができる。
【0063】
(変形例)
本実施形態では、熱拡散部材11が、下地層32及び表面層33の2層構造の金属薄膜31を有する例を示した。しかしながら、金属薄膜31としては、2層構造に限定されるものではない。例えば図6に示すように、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかであって表面層33とは異なる金属からなり、下地層32及び表面層33の各界面で合金層を形成する中間層36を、下地層32と表面層33の間に有する3層構造の金属薄膜31を採用することもできる。これによれば、中間層36を構成する単一金属膜(例えばNi)が、下地層32(例えばTi)との界面で合金化するとともに、表面層33の金属(例えばAu)との界面で合金化する。したがって、金属薄膜31の接合強度、ひいては熱拡散部材11と接合部材20,21との接合強度を向上することができる。
【0064】
なお、中間層36についても、上記した下地層32、表面層33同様、熱コンダクタンスを1×107W/m2K以上とすることが好ましい。例えば、中間層36としてとしてNi単体を用いた場合、図5から、その膜厚を10μm以下とすると、熱コンダクタンスを1×107W/m2K以上とすることができる。このように、中間層36を10μm以下とすることで、金属薄膜31の熱抵抗を小さくし、熱を伝達しやすくすることができる。本実施形態では、上記したように、スパッタや蒸着などの物理的堆積法やメッキ法により中間層36も形成するので、上記した数値を満足する薄膜を形成することができる。なお、膜厚を薄くしすぎると成膜時にピンホールが発生しやすくなる。このため、中間層36についてもその膜厚を0.05μm以上とすることが好ましい。
【0065】
さらには、熱拡散部材11の表面に形成される金属薄膜31として、図7に示すように単層構造の金属薄膜31を採用することもできる。この場合、金属薄膜31の材料としては、熱拡散部材11の構成材料と化学結合を形成する材料や、接合部材20,21と金属結合を形成する材料を採用することができる。例えば下地層32や表面層33に用いられる金属、Ti、Al、Cr、Mo、W、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかを採用することができる。
【0066】
本実施形態では、2軸方向に高熱伝導性を有し、残りの1軸方向に低熱伝導性を有する炭素系板材30を用いて熱拡散部材11が構成される例を示した。すなわち、熱伝導に異方性を有する熱拡散部材11を用いる例を示した。しかしながら、熱伝導が等方性を示す熱拡散部材11を採用することもできる。このように熱伝導が等方性を示し、且つ、導電性を示す熱拡散部材11は、グラファイトや炭素繊維を無配向性を示すように加工してなる炭素系材料や、電気絶縁性を示すダイヤモンドに金属粒子を混合することで導電性を付与してなるコンポジット材料を用いて形成される。このような熱拡散部材11を採用すると、互いに直交する3軸方向において熱伝導性に優れるため、1つの熱拡散部材11のみで、効率よく発熱体12を冷却することができる。
【0067】
(第2実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した発熱体モジュール10と共通する部分についての説明は割愛する。第1実施形態では、熱拡散部材11が、発熱体12と金属部材13との間に1つのみ配置される例を示した。これに対し、本実施形態では、図8,図9に示すように、発熱体モジュール10が、発熱体12と金属部材13との間に配置される熱拡散部材11として、その厚み方向において積層配置された2つの熱拡散部材16,17を有している。第1熱拡散部材16及び第2熱拡散部材17は、いずれも第1実施形態で説明した熱拡散部材11とほぼ同じ構成を有しつつ、使用形態において、炭素系板材30の板厚方向(積層方向)が互いに異なっている。
【0068】
なお、第1熱拡散部材16が発熱体12側、第2熱拡散部材17が金属部材13側となっている。また、発熱体12と第1熱拡散部材16の間に介在された接合部材20、第2熱拡散部材17と金属部材13の間に介在された接合部材21は、第1実施形態に示した接合部材20,21と同じ構成となっている。
【0069】
これら2つの熱拡散部材16,17は、任意の一方が特許請求の範囲に記載の第1部材、他方が特許請求の範囲に記載の第2部材に相当する。例えば第1熱拡散部材16を第1部材とすると、発熱体12及び第2熱拡散部材17が第2部材に相当する。一方、第2熱拡散部材17を第1部材とすると、第1熱拡散部材16及び金属部材13が第2部材に相当する。
【0070】
第1熱拡散部材16は、炭素系板材30の板厚方向(積層方向)が、図9の紙面奥行き方向となるように配置される。これにより、第1熱拡散部材16においては、図8の紙面上下方向(第1熱拡散部材16の厚み方向)と、紙面左右方向に熱伝導性が優れるものとなっている。
【0071】
一方、第2熱拡散部材17は、炭素系板材30の板厚方向(積層方向)が、図9の紙面左右方向となるように配置される。これにより、第2熱拡散部材11においては、図8の紙面上下方向(第1熱拡散部材16の厚み方向)と、紙面に垂直な方向に熱伝導性が優れるものとなっている。このように、2つの熱拡散部材16,17において、炭素系板材30の板厚方向(積層方向)がなす角度がほぼ90度となっている。
【0072】
そして、第1熱拡散部材16と第2熱拡散部材17は、厚さ方向に積層されるとともに、各熱拡散部材16,17の間に介在される接合部材24によって接合されている。接合部材24は、接合部材20,21同様、金属粒子の焼結体であり、その厚さが、各熱拡散部材16,17の金属薄膜31よりも厚くなっている。具体的には、接合部材24の厚さも、接合部材20,21の厚さt2,t3同様、20μ〜40μmの範囲内に設定されている。このような接合部材24は、第1実施形態に示した接合部材20,21同様、金属粒子を分散してなる金属ペーストを、2つの熱拡散部材16,17の互いに対向する面の少なくとも一方に塗布し、加熱することで得ることができる。
【0073】
このように本実施形態では、2つの熱拡散部材16,17の厚み方向に垂直な方向において、第1熱拡散部材16における熱伝導性に優れる方向と、第2熱拡散部材17における熱伝導性に優れる方向とが、ほぼ直交する位置関係となっている。したがって、2つの熱拡散部材16,17を、互いに積層されてなる1つの熱拡散部材11としてみたときに、厚さ方向に加えて、該厚さ方向に直交する2方向に良好な熱伝導性を有している。すなわち、3軸方向において熱伝導性に優れた熱拡散部材11となっており、このため効率よく発熱体12を冷却することができる。例えば、図8に示す構成では、厚さ方向において、発熱体12から熱拡散部材16,17を通じて冷却器15側に熱を伝導させるとともに、厚さ方向に垂直な方向において熱拡散部材11(2つの熱拡散部材16,17)の側面から外部雰囲気に熱を逃がすことができる。
【0074】
また、接合部材24も、接合部材20,21同様、金属粒子の焼結体である。このため、金属粒子の焼結(接合)を、従来のろう付けよりも低温(例えば最高温度300℃以下)で実施することができる。したがって、線膨張係数の異方性による2つの熱拡散部材16,17の線膨張係数差に起因する熱応力、すなわち接合界面の熱応力、を抑制することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、2つの熱拡散部材16,17のうち、互いの対向面の金属薄膜31上の少なくとも一方にAgペーストを塗布し、2つの熱拡散部材16,17をAgペーストを介して積層する。そしてこの積層状態で加熱し、Ag粒子を焼結することで、接合部材24を得ることができる。
【0076】
以上より、本実施形態によれば、炭素系材料からなる熱拡散部材11を用いた発熱体モジュール10において、第1熱拡散部材16と第2熱拡散部材17との接合界面の熱応力を抑制することができる。また、第1実施形態同様、熱拡散部材11と該部材11の隣に位置する部材(発熱体12、金属部材13)との接合部分についても、接合界面の熱応力を抑制することができる。
【0077】
なお、本実施形態においても、接合部材24を構成する金属粒子として、平均粒径がナノサイズの金属粒子を用いる。したがって、2つの熱拡散部材16,17間に作用する熱応力を効果的に抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態では、2つの熱拡散部材16,17に介在される接合部材24が、金属薄膜31よりも厚いため、第1熱拡散部材16と第2熱拡散部材17との間の熱伝達経路の熱抵抗に関し、金属薄膜31よりも接合部材24の影響が大きくなっている。これに対し、本実施形態では、接合部材20,21同様、単一金属の焼結体を接合部材24に採用している。このように、単一金属を採用すると、多成分の合金を接合部材とする構成に較べて接合部材24の熱伝導率が高くなる。このため、上記熱伝達経路の熱抵抗を小さくし(熱拡散部材16,17に隣接する接合部材24での熱伝達ロスを抑制し)、発熱体12の熱を、効率よく冷却器15側に伝導させることができる。特に本実施形態では、接合部材24がAgからなるため、上記熱伝達経路の熱抵抗をより小さくすることができる。
【0079】
また、本実施形態では、金属薄膜31の総厚t1が、0.2〜5μm程度であり、接合部材20,21,24の厚さ(20〜40μm程度)よりも十分に薄いため、第1熱拡散部材16と発熱体12の間の熱伝達経路、2つの熱拡散部材16,17の間の熱伝達経路、及び第2熱拡散部材17と金属部材13の間の熱伝達経路において、金属薄膜31の部分の熱抵抗をほぼ無視することができる。したがって、上記した接合部材20,21,24による熱伝達経路の熱抵抗低減の効果をより顕著とすることができる。
【0080】
なお、本実施形態では、熱拡散部材11として2つの熱拡散部材16,17の例を示したが、3つ以上の熱拡散部材を積層・一体化して熱拡散部材11としても良い。この場合、厚さ方向で隣り合う熱拡散部材において、炭素系板材30の板厚方向(積層方向)が互いに異なる配置とすれば良い。
【0081】
(第3実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した発熱体モジュール10と共通する部分についての説明は割愛する。上記実施形態では、熱拡散部材11が、発熱体12と金属部材13との間に配置される例を示した。これに対し、本実施形態では、図10に示すように、金属部材13と電気絶縁層14の間に熱拡散部材11が配置される点を特徴とする。
【0082】
図10に示すように、発熱体モジュール10を構成する要素は、第1実施形態と同じであり、金属部材13と電気絶縁層14が、特許請求の範囲に記載の第2部材に相当する。金属部材13と熱拡散部材11との間に介在された接合部材21は、第1実施形態に示した接合部材21と同じである。発熱体12と金属部材13の間に介在された接合部材25としては、熱伝導性及び導電性が良好であり、発熱体12と金属部材13を接合できるもの(半田など)を採用することができる。もちろん、金属粒子の焼結体でも良い。この場合には、接合界面の熱応力低減と、より高い熱伝導性能が期待できる。
【0083】
また、熱拡散部材11と電気絶縁層14の間に介在された接合部材26は、第1実施形態に示した接合部材20,21同様、金属粒子の焼結体である。このため、金属粒子の焼結(接合)を低温(例えば最高温度300度以下)で実施することができる。したがって、熱拡散部材11と電気絶縁層14の線膨張係数差に起因する熱応力、すなわち接合界面の熱応力を抑制することができる。
【0084】
なお、接合部材26は、例えば電気絶縁層14の熱拡散部材11との対向面上に例えばAg粒子を含むペーストを塗布し、Agペースト上に熱拡散部材11を配置する。そしてこの配置状態で加熱し、Ag粒子を焼結することで得ることができる。
【0085】
以上より、本実施形態によれば、炭素系材料からなる熱拡散部材11を用いた発熱体モジュール10において、熱拡散部材11と、該熱拡散部材11の隣に位置する部材(金属部材13及び電気絶縁層14)との接合界面の熱応力を抑制することができる。
【0086】
なお、本実施形態においても、接合部材21,26を構成する金属粒子として、平均粒径がナノサイズの金属粒子を用いる。したがって、熱応力を効果的に抑制することができる。
【0087】
また、本実施形態では、接合部材20,21同様、単一金属の焼結体を接合部材26に採用する。このように、単一金属を採用すると、多成分の合金を接合部材とする構成に較べて接合部材26の熱伝導率が高くなる。このため、接合部材26を介した熱拡散部材16と電気絶縁層14との間の熱伝達経路において、熱抵抗を小さくし、発熱体12の熱を、効率よく冷却器15側に伝導させることができる。特に本実施形態では、接合部材26がAgからなるため、上記熱伝達経路の熱抵抗をより小さくすることができる。
【0088】
また、本実施形態では、発熱体(半導体素子)12と金属部材13とを接合する。したがって、発熱体12と金属部材13の間に、熱拡散部材11が存在しない分、熱拡散部材11による電気抵抗分を減らして、金属部材13を発熱体12の電力取出し部として活用することもできる。
【0089】
なお、本実施形態では、電気絶縁層14の表面については特に言及しなかった。しかしながら、接合部材26との接合強度を向上させるために、電気絶縁層14の表面に、第1実施形態に示した熱拡散部材11の表面層33同様の金属薄膜を形成しても良い。また、表面層の下層として、表面層と電気絶縁層14の両方と接合性が良い膜を、表面層とともに金属薄膜として備えても良い。
【0090】
(変形例)
図11に例示する発熱体モジュール10は、本実施形態に係る構成と、第2実施形態に示した構成とを組み合わせた構成となっている。このように、複数(2つ)の熱拡散部材11を備える発熱体モジュール10において、金属部材13と電気絶縁層14との間に、複数の熱拡散部材11(図11では、第1熱拡散部材16及び第2熱拡散部材17)を配置しても良い。
【0091】
上記例では、外部出力端子としての金属部材13と電気絶縁層14の間、換言すれば金属部材13と冷却器15との間に、導電性を有し、熱伝導に異方性を有する熱拡散部材11が配置される例を示した。しかしながら、第1実施形態の変形例で示したように、熱伝導が等方性を示し、且つ、導電性を示す熱拡散部材11を採用することもできる。このように熱伝導が等方性の熱拡散部材11を採用すると、互いに直交する3軸方向において熱伝導性に優れるため、1つの熱拡散部材11のみで、効率よく発熱体12を冷却することができる。
【0092】
さらには、図12に示すように、電気絶縁性を有する熱拡散部材18を配置することもできる。この場合、熱拡散部材18が電気絶縁性を有するため、電気絶縁層14を不要とすることができる。この熱拡散部材18の構成材料としては、熱伝導が等方性を示すダイヤモンドを採用することができる。なお、ダイヤモンドからなる熱拡散部材18は、例えば周知の気相合成法にて形成することができる。また、熱拡散部材18のうち、金属部材13及び冷却器15との対向面には、接合部材21,27との接続信頼性を向上するための金属薄膜31が形成されている。一方、熱拡散部材18の金属部材13及び冷却器15との対向面を除く面(側面)には、金属部材13と冷却器15との間で電気絶縁性を確保すべく、金属薄膜が形成されていない。なお、接合部材27は、上記した接合部材20,21,26などと同様に、金属粒子、好ましくは単一金属のナノ粒子を焼結してなる。
【0093】
(第4実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した発熱体モジュール10と共通する部分についての説明は割愛する。図13に示す発熱体モジュール10は、第3実施形態に示した発熱体モジュール10とほぼ同じである。異なる点は、外部接続端子としての金属部材13が、熱拡散部材11のみと接合されており、発熱体12、金属部材13、及び電気絶縁層14が、特許請求の範囲に記載の第2部材に相当する点である。
【0094】
これによれば、発熱体12で生じた熱が、金属部材13を介さずに冷却器15まで伝導されるため、金属部材13による熱抵抗分、冷却効率を向上することができる。
【0095】
なお、発熱体12と熱拡散部材11との間に介在された接合部材20と、金属部材13と熱拡散部材11との間に介在された接合部材21は、第1実施形態に示した接合部材20,21と同じである。また、熱拡散部材11と電気絶縁層14との間に介在された接合部材26は、第4実施形態に示した接合部材26と同じである。
【0096】
(変形例)
図14に例示する発熱体モジュール10は、本実施形態に係る構成と、第2実施形態に示した構成とを組み合わせた構成となっている。このように、複数(2つ)の熱拡散部材11を備える発熱体モジュール10において、発熱体12、金属部材13、及び電気絶縁層14が、特許請求の範囲に記載の第2部材に相当するようにしても良い。
【0097】
また、上記例では、導電性を有し、熱伝導に異方性を有する熱拡散部材11を用いる例を示した。しかしながら、第3実施形態の変形例で示したように、熱伝導が等方性を示し、且つ、導電性を示す熱拡散部材11を採用することもできる。このように熱伝導が等方性の熱拡散部材11を採用すると、互いに直交する3軸方向において熱伝導性に優れるため、1つの熱拡散部材11のみで、効率よく発熱体12を冷却することができる。
【0098】
さらには、第3実施形態の変形例(図12参照)で示したように、電気絶縁性を有する熱拡散部材18を配置することもできる。この場合、図15に示すように、熱拡散部材18が電気絶縁性を有するため、図15に示すように、電気絶縁層14を不要とすることができる。この熱拡散部材18の構成材料としては、熱伝導が等方性を示すダイヤモンドを採用することができる。なお、ダイヤモンドからなる熱拡散部材18は、例えば周知の気相合成法にて形成することができる。また、熱拡散部材18のうち、発熱体12及び金属部材13との対向面、冷却器15との対向面に、接合部材21,27との接続信頼性を向上するための金属薄膜31がそれぞれ形成されている。一方、熱拡散部材18の、発熱体12及び金属部材13との対向面及び冷却器15との対向面を除く面(側面)には、発熱体12及び金属部材13と冷却器15との間で電気絶縁性を確保すべく、金属薄膜が形成されていない。なお、接合部材27は、上記した接合部材20,21,26などと同様に、金属粒子、好ましくは単一金属のナノ粒子を焼結してなる。
【0099】
(第5実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した発熱体モジュール10と共通する部分についての説明は割愛する。図16に示す発熱体モジュール10は、第2実施形態に示した発熱体モジュール10とほぼ同じである。異なる点は、外部接続端子としての金属部材13が、第1熱拡散部材16と第2熱拡散部材17の間に介在されて両部材16,17と接合されており、発熱体12、金属部材13、及び電気絶縁層14が、特許請求の範囲に記載の第2部材に相当する点である。換言すれば、発熱体12と金属部材13の間に第1熱拡散部材16が配置され、金属部材13と電気絶縁層14の間に第2熱拡散部材17が配置されている。
【0100】
これによれば、発熱体12と金属部材13の間に、第2熱拡散部材17が存在しない分、熱拡散部材17による電気抵抗分を減らして、金属部材13を発熱体12の電力取出し部として活用することができる。
【0101】
なお、発熱体12と第1熱拡散部材16との間に介在された接合部材20と、金属部材13と各熱拡散部材16,17との間にそれぞれ介在された接合部材21は、第1実施形態に示した接合部材20,21と同じである。また、第2熱拡散部材17と電気絶縁層14との間に介在された接合部材26は、第4実施形態に示した接合部材26と同じである。
【0102】
(第6実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した発熱体モジュール10と共通する部分についての説明は割愛する。図17に示す発熱体モジュール10は、第1実施形態に示した発熱体モジュール10を、発熱体12を共通として、厚さ方向に2つ重ねた構造を有している。すなわち、半導体基板の両面に電極を有する縦型素子を、半導体基板の両面側で冷却するようになっている。
【0103】
図17において、発熱体12よりも紙面下方に位置する部分は、第1実施形態に示す発熱体モジュール10と同じ構成となっている。発熱体12の下面12aと反対の面(以下、上面12bと示す)には、接合部材28により金属部材19が接合されている。この金属部材19は、発熱体12(半導体素子)の上面12b側の電極と、上面12b上に位置する金属部材13(リード)とを電気的に接続するとともに、発熱体12と上面12b上に位置する冷却器15とを熱的に接続するターミナル(中継部材)としての機能を果たすものである。本実施形態では、金属部材19としてCuからなる金属ブロックを採用している。
【0104】
そして、金属部材19における発熱体12と反対側の面には、接合部材29により、金属薄膜31を有する熱拡散部材11が接合されている。熱拡散部材11よりも紙面上方に位置する部分は、第1実施形態(図1参照)に示す発熱体モジュール10の、熱拡散部材11よりも紙面下方の部分と同じ構成となっている。
【0105】
接合部材28としては、熱伝導性及び導電性が良好であり、発熱体12と金属部材19を接合できるもの(半田など)を採用することができる。もちろん、金属粒子の焼結体でも良い。この場合には、接合界面の熱応力低減と、より高い熱伝導性能が期待できる。
【0106】
一方、熱拡散部材11に接する接合部材29は、接合部材20,21同様、金属粒子の焼結体である。このため、金属粒子を焼結させて、熱拡散部材11と金属部材19とを接合する温度を、低温(例えば最高温度300℃以下)とすることができる。したがって、金属部材19と熱拡散部材11の線膨張係数差に起因する熱応力、すなわち接合界面の熱応力、を抑制することができる。
【0107】
なお、本実施形態では、熱拡散部材11及び金属部材19のうち、互いの対向面の少なくとも一方に例えばAg粒子を含むペーストを塗布し、2つの部材11,19をAgペーストを介して積層する。そしてこの積層状態で加熱し、Ag粒子を焼結することで、接合部材29を得ることができる。
【0108】
以上より、本実施形態によれば、接合部材28を介した熱拡散部材11と発熱体12との接合部分において、接合界面の熱応力を抑制することができる。また、接合部材29を介した熱拡散部材11と金属部材19との接合部分において、接合界面の熱応力を抑制することができる。
【0109】
なお、本実施形態においても、接合部材20,21,29を構成する金属粒子として、平均粒径がナノサイズの金属粒子を用いる。したがって、熱応力を効果的に抑制することができる。
【0110】
また、本実施形態では、接合部材20,21同様、単一金属の焼結体を接合部材29に採用する。このように、単一金属を採用すると、多成分の合金を接合部材とする構成に較べて接合部材29の熱伝導率が高くなる。このため、接合部材29及び熱拡散部材11を介した、発熱体12から紙面上方の冷却器15までの熱伝達経路において、熱抵抗を小さくすることができる。すなわち、発熱体12の熱を、効率よく冷却器15側に伝導させることができる。特に本実施形態では、接合部材29がAgからなるため、上記熱伝達経路の熱抵抗をより小さくすることができる。
【0111】
また、本実施形態においても、各熱拡散部材11において、金属薄膜31の総厚t1が、0.2〜5μm程度であり、接合部材20,21,29の厚さ(20〜40μm程度)よりも十分に薄くなっている。このため、紙面下方の熱拡散部材11と発熱体12の間の熱伝達経路、各熱拡散部材11と金属部材13との間の熱伝達経路、及び金属部材19と熱拡散部材11の間の熱伝達経路において、金属薄膜31の部分の熱抵抗をほぼ無視することができる。したがって、上記した接合部材20,21,29による熱伝達経路の熱抵抗低減の効果をより顕著とすることができる。
【0112】
また、本実施形態によれば、発熱体12の下面12a及び上面12bの両側に金属部材13としてのリードがそれぞれ存在するため、各金属部材13を発熱体12の電力取出し部としてそれぞれ活用することができる。
【0113】
また、発熱体12の下面12a及び上面12bの両側に熱拡散部材11及び冷却器15が存在するので、発熱体12の上下両方向において、発熱体12を効率よく冷却することができる。
【0114】
なお、本実施形態では、第1実施形態に示す発熱体モジュール10を基礎とする両面放熱構造の例を示した。しかしながら、その他の実施形態及び変形例に示した構成において、本実施形態に示す両面放熱構造を採用することもできる。
【0115】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0116】
10・・・発熱体モジュール(発熱体の冷却構造)
11・・・熱拡散部材
12・・・発熱体
13・・・金属部材
14・・・電気絶縁層
15・・・冷却器
16・・・第1熱拡散部材
17・・・第2熱拡散部材
20,21,24,26・・・接合部材
30・・・炭素系板材
31・・・金属薄膜
32・・・下地層
33・・・表面層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系材料を用いて板状に形成され、表面に金属薄膜を有し、板状の厚さ方向に熱を伝導させる熱拡散部材としての第1部材と、第2部材とを、接合部材を介して接合してなる熱拡散部材の接合構造であって、
前記第1部材は、少なくとも前記第2部材との対向面に、前記金属薄膜を有し、
前記第1部材の金属薄膜形成面と前記第2部材における前記金属薄膜形成面の対向面との間に、前記接合部材として金属粒子の焼結体が介在されていることを特徴とする熱拡散部材の接合構造。
【請求項2】
前記第1部材は、前記第2部材との対向面に直交する方向の熱伝導率が、前記対向面に平行な方向のうちの少なくとも一方向における熱伝導率よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の熱拡散部材の接合構造。
【請求項3】
前記金属粒子の平均粒径はナノサイズであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱拡散部材の接合構造。
【請求項4】
前記接合部材は、前記金属薄膜よりも厚く、
前記金属粒子は、単一金属からなることを特徴とする請求項3に記載の熱拡散部材の接合構造。
【請求項5】
前記金属粒子は、Ag、Au、Cu、Niのいずれかからなることを特徴とする請求項4に記載の熱拡散部材の接合構造。
【請求項6】
前記金属粒子は、Agからなることを特徴とする請求項5に記載の熱拡散部材の接合構造。
【請求項7】
前記金属薄膜は、前記第1部材との間に化学結合を形成する下地層と、前記下地層上に配置され、前記接合部材との間に金属結合を形成する表面層と、の少なくとも2層を有することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の熱拡散部材の接合構造。
【請求項8】
前記下地層は、Ti、Al、Cr、Mo、Wのいずれかを含むことを特徴とする請求項7に記載の熱拡散部材の接合構造。
【請求項9】
前記表面層は、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかからなることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の熱拡散部材の接合構造。
【請求項10】
前記金属薄膜として、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかであって前記表面層とは異なる金属からなり、前記下地層及び前記表面層の各界面で合金層を形成する中間層を、前記下地層と前記表面層の間に有することを特徴とする請求項7〜9いずれか1項に記載の熱拡散部材の接合構造。
【請求項11】
熱拡散部材としての前記第1部材と、
前記第1部材の一面上に配置された発熱体と、
前記第1部材における一面と反対の面上に配置された冷却器と、を一体的に備え、
前記発熱体で生じた熱が、前記第1部材を介して前記冷却器に移動され、前記発熱体が冷却される発熱体の冷却構造であって、
前記第1部材と接合部材を介して接合される部材を前記第2部材として、該第2部材と前記第1部材との間に請求項1〜10いずれか1項に記載の熱拡散部材の接合構造が適用されていることを特徴とする発熱体の冷却構造。
【請求項12】
前記第2部材として、炭素系材料を用いて板状に形成され、表面に金属薄膜を有し、板状の厚さ方向に熱を伝導させる熱拡散部材を備え、
前記第2部材としての熱拡散部材は、少なくとも前記第1部材との対向面に、金属薄膜を有することを特徴とする請求項11に記載の発熱体の冷却構造。
【請求項13】
前記第1部材及び前記第2部材は、板厚方向よりも該板厚方向に垂直な方向の熱伝導率が高い炭素系板材を、前記板厚方向に複数枚積層してなり、
前記第1部材及び前記第2部材を、お互いの対向面に直交する方向の熱伝導率が、前記対向面に平行な方向のうちの前記板厚方向における熱伝導率よりも高くなり、且つ、前記板厚方向が互いに異なるように配置されていることを特徴とする請求項12に記載の発熱体の冷却構造。
【請求項14】
前記金属薄膜は、前記第2部材との間に化学結合を形成する下地層と、前記下地層上に配置され、前記接合部材との間に金属結合を形成する表面層と、の少なくとも2層を有することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の発熱体の冷却構造。
【請求項15】
前記下地層は、Ti、Al、Cr、Mo、Wのいずれかを含むことを特徴とする請求項14に記載の発熱体の冷却構造。
【請求項16】
前記表面層は、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかからなることを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の発熱体の冷却構造。
【請求項17】
前記金属薄膜として、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかであって前記表面層とは異なる金属からなり、前記下地層及び前記表面層の各界面で合金層を形成する中間層を、前記下地層と前記表面層の間に有することを特徴とする請求項14〜16いずれか1項に記載の発熱体の冷却構造。
【請求項18】
前記第2部材として、前記発熱体を含むことを特徴とする請求項11に記載の発熱体の冷却構造。
【請求項19】
前記第2部材として、前記発熱体と前記第1部材の間、又は、前記第1部材と前記冷却器の間に配置され、前記発熱体の電極に電気的に接続された金属部材を含むことを特徴とする請求項11に記載の発熱体の冷却構造。
【請求項20】
前記第1部材は、電気伝導性を有し、
前記第1部材と前記冷却器との間に、電気絶縁層を備え、
前記第2部材として、前記電気絶縁層を含むことを特徴とする請求項11に記載の発熱体の冷却構造。
【請求項21】
炭素系材料を用いて板状に形成され、板状の厚さ方向に熱を伝導させる熱拡散部材としての第1部材の表面に金属薄膜を形成し、接合部材を介して、前記第1部材を第2部材と接合する熱拡散部材の接合方法であって、
前記第1部材の表面における少なくとも前記第2部材との対向面に、前記金属薄膜を形成し、
前記第1部材の金属薄膜形成面と前記第2部材における前記金属薄膜形成面の対向面との間に、金属粒子を溶媒中に分散してなるペーストを介在させ、加熱により前記金属粒子を焼結して、前記第1部材と前記第2部材とを接合する前記接合部材を形成することを特徴とする熱拡散部材の接合方法。
【請求項22】
前記第1部材を、前記第2部材との対向面に直交する方向の熱伝導率が、前記対向面に平行な方向のうちの少なくとも一方向における熱伝導率よりも高くなるように、前記第2部材に対して配置し、
【請求項23】
前記金属粒子の平均粒径はナノサイズであることを特徴とする請求項21又は請求項22に記載の熱拡散部材の接合方法。
【請求項24】
前記接合部材は、前記金属薄膜よりも厚く、
前記金属粒子は、単一金属からなることを特徴とする請求項23に記載の熱拡散部材の接合方法。
【請求項25】
前記金属粒子は、Ag、Au、Cu、Niのいずれかであることを特徴とする請求項24に記載の熱拡散部材の接合方法。
【請求項26】
前記金属粒子は、Agであることを特徴とする請求項25に記載の熱拡散部材の接合方法。
【請求項27】
前記金属薄膜として、前記第1部材との間に化学結合を形成する下地層と、前記下地層上に配置され、前記接合部材との間に金属結合を形成する表面層と、の少なくとも2層を形成することを特徴とする請求項21〜26いずれか1項に記載の熱拡散部材の接合方法。
【請求項28】
前記下地層は、Ti、Al、Cr、Mo、Wのいずれかを含むことを特徴とする請求項27に記載の熱拡散部材の接合方法。
【請求項29】
前記表面層は、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかからなることを特徴とする請求項27又は請求項28に記載の熱拡散部材の接合方法。
【請求項30】
前記金属薄膜として、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかであって前記表面層とは異なる金属からなり、前記下地層及び前記表面層の各界面で合金層を形成する中間層を、前記下地層と前記表面層の間に形成することを特徴とする請求項27〜29いずれか1項に記載の熱拡散部材の接合方法。
【請求項1】
炭素系材料を用いて板状に形成され、表面に金属薄膜を有し、板状の厚さ方向に熱を伝導させる熱拡散部材としての第1部材と、第2部材とを、接合部材を介して接合してなる熱拡散部材の接合構造であって、
前記第1部材は、少なくとも前記第2部材との対向面に、前記金属薄膜を有し、
前記第1部材の金属薄膜形成面と前記第2部材における前記金属薄膜形成面の対向面との間に、前記接合部材として金属粒子の焼結体が介在されていることを特徴とする熱拡散部材の接合構造。
【請求項2】
前記第1部材は、前記第2部材との対向面に直交する方向の熱伝導率が、前記対向面に平行な方向のうちの少なくとも一方向における熱伝導率よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の熱拡散部材の接合構造。
【請求項3】
前記金属粒子の平均粒径はナノサイズであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱拡散部材の接合構造。
【請求項4】
前記接合部材は、前記金属薄膜よりも厚く、
前記金属粒子は、単一金属からなることを特徴とする請求項3に記載の熱拡散部材の接合構造。
【請求項5】
前記金属粒子は、Ag、Au、Cu、Niのいずれかからなることを特徴とする請求項4に記載の熱拡散部材の接合構造。
【請求項6】
前記金属粒子は、Agからなることを特徴とする請求項5に記載の熱拡散部材の接合構造。
【請求項7】
前記金属薄膜は、前記第1部材との間に化学結合を形成する下地層と、前記下地層上に配置され、前記接合部材との間に金属結合を形成する表面層と、の少なくとも2層を有することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の熱拡散部材の接合構造。
【請求項8】
前記下地層は、Ti、Al、Cr、Mo、Wのいずれかを含むことを特徴とする請求項7に記載の熱拡散部材の接合構造。
【請求項9】
前記表面層は、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかからなることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の熱拡散部材の接合構造。
【請求項10】
前記金属薄膜として、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかであって前記表面層とは異なる金属からなり、前記下地層及び前記表面層の各界面で合金層を形成する中間層を、前記下地層と前記表面層の間に有することを特徴とする請求項7〜9いずれか1項に記載の熱拡散部材の接合構造。
【請求項11】
熱拡散部材としての前記第1部材と、
前記第1部材の一面上に配置された発熱体と、
前記第1部材における一面と反対の面上に配置された冷却器と、を一体的に備え、
前記発熱体で生じた熱が、前記第1部材を介して前記冷却器に移動され、前記発熱体が冷却される発熱体の冷却構造であって、
前記第1部材と接合部材を介して接合される部材を前記第2部材として、該第2部材と前記第1部材との間に請求項1〜10いずれか1項に記載の熱拡散部材の接合構造が適用されていることを特徴とする発熱体の冷却構造。
【請求項12】
前記第2部材として、炭素系材料を用いて板状に形成され、表面に金属薄膜を有し、板状の厚さ方向に熱を伝導させる熱拡散部材を備え、
前記第2部材としての熱拡散部材は、少なくとも前記第1部材との対向面に、金属薄膜を有することを特徴とする請求項11に記載の発熱体の冷却構造。
【請求項13】
前記第1部材及び前記第2部材は、板厚方向よりも該板厚方向に垂直な方向の熱伝導率が高い炭素系板材を、前記板厚方向に複数枚積層してなり、
前記第1部材及び前記第2部材を、お互いの対向面に直交する方向の熱伝導率が、前記対向面に平行な方向のうちの前記板厚方向における熱伝導率よりも高くなり、且つ、前記板厚方向が互いに異なるように配置されていることを特徴とする請求項12に記載の発熱体の冷却構造。
【請求項14】
前記金属薄膜は、前記第2部材との間に化学結合を形成する下地層と、前記下地層上に配置され、前記接合部材との間に金属結合を形成する表面層と、の少なくとも2層を有することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の発熱体の冷却構造。
【請求項15】
前記下地層は、Ti、Al、Cr、Mo、Wのいずれかを含むことを特徴とする請求項14に記載の発熱体の冷却構造。
【請求項16】
前記表面層は、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかからなることを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の発熱体の冷却構造。
【請求項17】
前記金属薄膜として、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかであって前記表面層とは異なる金属からなり、前記下地層及び前記表面層の各界面で合金層を形成する中間層を、前記下地層と前記表面層の間に有することを特徴とする請求項14〜16いずれか1項に記載の発熱体の冷却構造。
【請求項18】
前記第2部材として、前記発熱体を含むことを特徴とする請求項11に記載の発熱体の冷却構造。
【請求項19】
前記第2部材として、前記発熱体と前記第1部材の間、又は、前記第1部材と前記冷却器の間に配置され、前記発熱体の電極に電気的に接続された金属部材を含むことを特徴とする請求項11に記載の発熱体の冷却構造。
【請求項20】
前記第1部材は、電気伝導性を有し、
前記第1部材と前記冷却器との間に、電気絶縁層を備え、
前記第2部材として、前記電気絶縁層を含むことを特徴とする請求項11に記載の発熱体の冷却構造。
【請求項21】
炭素系材料を用いて板状に形成され、板状の厚さ方向に熱を伝導させる熱拡散部材としての第1部材の表面に金属薄膜を形成し、接合部材を介して、前記第1部材を第2部材と接合する熱拡散部材の接合方法であって、
前記第1部材の表面における少なくとも前記第2部材との対向面に、前記金属薄膜を形成し、
前記第1部材の金属薄膜形成面と前記第2部材における前記金属薄膜形成面の対向面との間に、金属粒子を溶媒中に分散してなるペーストを介在させ、加熱により前記金属粒子を焼結して、前記第1部材と前記第2部材とを接合する前記接合部材を形成することを特徴とする熱拡散部材の接合方法。
【請求項22】
前記第1部材を、前記第2部材との対向面に直交する方向の熱伝導率が、前記対向面に平行な方向のうちの少なくとも一方向における熱伝導率よりも高くなるように、前記第2部材に対して配置し、
【請求項23】
前記金属粒子の平均粒径はナノサイズであることを特徴とする請求項21又は請求項22に記載の熱拡散部材の接合方法。
【請求項24】
前記接合部材は、前記金属薄膜よりも厚く、
前記金属粒子は、単一金属からなることを特徴とする請求項23に記載の熱拡散部材の接合方法。
【請求項25】
前記金属粒子は、Ag、Au、Cu、Niのいずれかであることを特徴とする請求項24に記載の熱拡散部材の接合方法。
【請求項26】
前記金属粒子は、Agであることを特徴とする請求項25に記載の熱拡散部材の接合方法。
【請求項27】
前記金属薄膜として、前記第1部材との間に化学結合を形成する下地層と、前記下地層上に配置され、前記接合部材との間に金属結合を形成する表面層と、の少なくとも2層を形成することを特徴とする請求項21〜26いずれか1項に記載の熱拡散部材の接合方法。
【請求項28】
前記下地層は、Ti、Al、Cr、Mo、Wのいずれかを含むことを特徴とする請求項27に記載の熱拡散部材の接合方法。
【請求項29】
前記表面層は、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかからなることを特徴とする請求項27又は請求項28に記載の熱拡散部材の接合方法。
【請求項30】
前記金属薄膜として、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Sn、Fe、Cu、Pbのいずれかであって前記表面層とは異なる金属からなり、前記下地層及び前記表面層の各界面で合金層を形成する中間層を、前記下地層と前記表面層の間に形成することを特徴とする請求項27〜29いずれか1項に記載の熱拡散部材の接合方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−142547(P2012−142547A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153181(P2011−153181)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]