説明

熱的外科手術安全装置および熱的外科手術方法

【課題】エネルギが標的組織に向けられる医療環境で使用される1つ以上のセンサを提供することによって、安全性と使い易さが向上した熱的外科手術用装置を提供する。
【解決課題】中空のカニューレ130を有するハンドピース115であって、このカニューレ130は、ハンドピース115から遠位端135に延び、その外表面には凹部が形成されている、ハンドピース115と、カニューレ130に沿って遠位端135まで少なくとも部分的に延びた光ファイバ110であって、カニューレ130の遠位端135の近位に位置する処置領域に治療光放射源105から治療光を伝送する、光ファイバと110、凹部内に少なくとも部分的に位置づけられた温度センサとを備える。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2009年3月5日付で出願された米国特許仮出願番号第61/157862号の優先権を主張し、その全内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本出願は、2007年11月13日に出願された米国仮出願番号第60/987,596号、2007年11月13日に出願された米国仮出願番号第60/987,617号、2007年11月14日に出願された米国仮出願番号第60/987,819号、2007年11月14日に出願された米国仮出願番号第60/987,821号、2008年1月3日に出願された米国仮出願番号第61/018,727号、2008年1月3日に出願された米国仮出願番号第61/018,729号、および2007年6月8日に出願された米国仮出願番号第60/933,736号の優先権を主張し、これらの全内容を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
健康を増進するためまたは体形を良くするために、患者は、自分の身体の領域から、望ましくない組織を取り除く外科手術方法に頼ってきた。例えば、脂肪組織を除去するために、患者の中には脂肪吸引を好む人がいた。この脂肪吸引は、患者のうちの何人かは、精力的にダイエットや運動を行ったにもかかわらず特にある領域では脂肪をなくすことができないため、脂肪を吸収機構によって除去するという処置である。あるいは、レーザなどの光源が、加熱、除去、破壊(例えば殺すこと)、光凝固術、または根絶などの方法で組織を処置する(以下、これらをまとめて「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」という)ために適用されてきた。
【0004】
処置の機構は、患者の皮膚の下において実施されるため、臨床医は、例えば視覚のようなものによって、処置の程度や処置領域の処置された部分の状態を評価することができない。そのため、臨床医は、処置の程度を判断したり処置領域の未処置の部分に器具を案内したりするのに、感覚に頼るしかない。また、処置中に望ましくない組織が不均一に除去されることは珍しくなく、これは患者の皮膚に審美的に美しくない模様を残してしまうことがある。
【0005】
さらに、典型的な適用例では、レーザ脂肪分解等の処置の間に、レーザ伝送ファイバの前にある組織のタイプ(型)を確認する直接的な方法は存在しない。不要な脂肪層にファイバ先端を位置づけるために、医者は解剖学とヒト生理学の自分の知識に頼る。伝送ファイバを通る単一または複数の波長の可視照準ビームが、医者の手助けとなる。熟練した医者であれば、照準ビームの視認を皮膚の下のファイバ先端位置や深さと関連づけることができる。しかし、熟練した医者でさえも、ファイバ先端の前の組織のタイプを判断することは極めて困難(ほとんど不可能)である。
【0006】
さらに、その組織は、エネルギ源を組織内に吸収させることによりレーザや光エネルギ源を用いて処置することができるものの、手術器具には、処置領域の処置された部分に吸収されたパワーの量を示す機構がない。そのため、臨床医の行う処置が不足したり過剰になったりすることがあり、その結果、組織の除去が不完全であったり、過剰暴露によって組織が焦げてしまうことになる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、エネルギが標的組織に向けられる医療環境(例えばレーザ外科処置)で使用される1つ以上のセンサを提供することによって、安全性と使い易さが向上できることが分かった。異なる型のセンサ入力を組み合わせることによって、豊富な情報を提供することができ、進行中の医療処置を特徴づけることができる。
【0008】
例えば、発明者らは、不要な組織または身体の部分を除去する処置の間に使用される、外科用装置の動作を検出する機構を含む、方法および装置を本明細書に説明する。
【0009】
組織の中にパワーを印加すると、構成組織の吸収度に応じた局所的な温度上昇が生じる。伝播距離は、例えば波長/組織タイプに依存する。さらに、各組織タイプ(組織型)は、それに応じた時定数および熱伝導率を有する。したがって、原則として、体内の組織温度上昇は、処置領域に挿入される装置のエネルギ送達部品の位置が既知である限り、構成組織ならびに構成組織に向けられた波長およびパワーについての知識から求められることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一構成によれば、エネルギ送達部品の位置は、速度フィードバックを提供するために積分される、装置の加速度を処理することによって求められることができる。速度フィードバックを求めることで、装置は、速度フィードバックの値に関連して処置領域に向けられたパワーの量を制御することができる。例えば、装置が動いていないか、または所定値未満の速度で動いている場合、装置は、処置領域に向けられたエネルギを放射することを停止して、生体への過度の熱的影響を防ぐことができる。速度フィードバックはまた、エネルギの印加された線量を制御するために(例えば、組織に堆積された単位移動当たりの一定エネルギ量を維持するために)、使用されてもよい。
【0011】
本発明の別の構成によれば、エネルギ送達部品の位置を、速度に関して一階積分(または加速度に関して二階積分)を行うことにより求めて、処置領域内のエネルギ送達部品の位置フィードバックを提供することができる。位置フィードバックの適用のためのパワー制御は、位置の差に対するパワーのアルゴリズムと共に行われる。例えば、処置領域内の組織へのエネルギ放出/照射にはそれぞれ、8象限のうちの1つの3Dデカルト座標の点が割り当てられる。デカルト基準場(reference place)上の点はそれぞれ「熱コンテナ(heat container)」を表わす。熱コンテナは、伝播距離、ベースライン温度、ならびに組織タイプに応じた時定数および伝導性に対する、印加されたエネルギすなわちエネルギイン(Ein)、吸収度に従って、ブリードオフカウント(bleed off count)を蓄積する。組織型測定および/または直接もしくは間接の温度測定等の追加センサ入力を、空間エネルギ分布情報を補強または確認するために、位置情報と共に使用することができる。
【0012】
一構成では、放射源から処置塊にレーザエネルギを伝送する光学送達部品と、ハンドピースの位置を示す情報を提供するように構成された加速度計とを含むハンドピースを備えたレーザ外科手術用装置が開示される。この装置は、プロセッサであって、加速度計と放射源とに連結され、処置塊(処置部(treatment volume))に伝送されるレーザエネルギを制御するプロセッサと、ディスプレイとを含む。プロセッサは、ハンドピースの位置を示す情報に基づき、処置塊内の複数の位置のそれぞれにおける送達されたエネルギ量を示す情報を求めるように構成される。ディスプレイは、処置塊内の複数の位置のそれぞれにおける送達されたエネルギ量を示すグラフィック描写を表示するように構成される。
【0013】
いくつかの実施形態では、プロセッサは加速度計からのフィードバックに基づき、処置塊に送達されたエネルギ量を制御するように構成される。
【0014】
いくつかの実施形態では、加速度計は、3軸に沿った加速度を測定する。
いくつかの実施形態では、加速度計は、ジャイロ補正された加速度計である。
【0015】
いくつかの実施形態では、グラフィック描写は、マップ上の複数の点が処置塊内の複数の位置に対応しかつ各点のグラフィックの質は処置塊内の位置における送達されたエネルギ量に依存する、処置塊のマップを含む。
いくつかの実施形態では、グラフィック描写は、3次元で表現される。
【0016】
いくつかの実施形態では、ハンドピースは、処置塊内の各位置の組織の温度を示す情報を提供するように構成された、温度センサをさらに含む。プロセッサは温度センサに連結され、ハンドピースの位置を示す情報と、処置塊内の各位置での組織の温度を示す情報とに基づいて、処置塊内の複数の位置のそれぞれの温度を示す情報を求めるように構成される。ディスプレイは、処置塊内の複数の位置のそれぞれにおける送達されたエネルギ量を示すグラフィック描写を表示するように構成される。
【0017】
一構成では、放射源から処置塊にレーザエネルギを伝送する光学送達部品と、ハンドピースの位置を示す情報を提供するように構成された加速度計とを含むハンドピースを含む、レーザ手術装置を提供することを含む、レーザ外科手術方法が、開示される。この方法は、ハンドピースを使用して放射源から処置塊内の複数の位置にレーザエネルギを伝送することと、加速度計を使用してハンドピースの位置を示す情報を提供することと、ハンドピースの位置を示す情報に基づいて、処置塊内の複数の位置のそれぞれにおける送達されたエネルギ量を示す情報を求めることと、処置塊内の複数の位置のそれぞれにおける送達されたエネルギ量を示すグラフィック描写を表示することとを含む。
【0018】
いくつかの実施形態は、加速度計からのフィードバックに基づいて、処置塊内の複数の位置に送達されたエネルギ量を制御することを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、加速度計は、3軸に沿った加速度を測定する。
いくつかの実施形態では、加速度計はジャイロ補正された加速度計である。
【0020】
いくつかの実施形態では、グラフィック描写は、マップ上の複数の点が処置塊内の複数の位置に対応しかつ各点のグラフの質は処置塊内の位置における送達されたエネルギ量に依存する、処置塊のマップを含む。
いくつかの実施形態では、グラフィック描写は3次元で表現される。
【0021】
いくつかの実施形態では、ハンドピースは、処置塊内の各位置の組織の温度を示す情報を提供するように構成された、温度センサをさらに含み、プロセッサは温度センサに連結される。このような実施形態は、温度センサを使用して、ハンドピースの位置を示す情報と処置塊内の各位置での組織の温度を示す情報とに基づいて、処置塊内の複数の位置のそれぞれの温度を示す情報を求めることと、処置塊内の複数の位置のそれぞれにおける送達されたエネルギ量を示すグラフィック描写を表示することと、を含む。
【0022】
別の構成では、放射源から処置塊にレーザエネルギを伝送する光学送達部品と、3軸に沿ったハンドピースの加速度を示す情報を提供するように構成された加速度計とを含むハンドピースを含む、レーザ外科手術用装置が開示される。この装置は、加速度計と放射源とに連結され、加速度計からのフィードバックに基づいて処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御するプロセッサを含む。
【0023】
いくつかの実施形態は、ハンドピースの空間における向きを示す情報を提供するように構成されたジャイロスコープを含み、プロセッサは、ジャイロスコープに連結され、加速度計およびジャイロスコープからのフィードバックに基づいて処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御するように構成される。
【0024】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、3軸に沿ったハンドピースの加速度を示す情報に基づいてハンドピースの絶対位置を示す情報と、ハンドピースの空間における向きを示す情報とを求めるように構成される。
【0025】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、3軸に沿ったハンドピースの加速度を示す情報に基づいてハンドピースの速度を示す情報を求め、ハンドピースの速度を示す情報を使用してフィードバックに基づき処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御するように構成される。
【0026】
いくつかの実施形態では、3軸に沿ったハンドピースの加速度を示す情報は、少なくとも1軸に関し、その軸に沿ったハンドピースの加速度に依存する振幅を有する信号を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、それぞれの軸に沿ったハンドピースの速度を示す情報を求めるために信号を積分する前に、信号の低周波数成分を選択的に遮断するように構成される。
いくつかの実施形態では、プロセッサは、3軸に沿ったハンドピースの加速度を示す1つの情報に基づき、3軸のそれぞれに沿ったハンドピースの速度を求め、3軸のそれぞれに沿ったハンドピースの速度の加重平均を算出することによりハンドピースの加重平均速度を求め、ハンドピースの加重平均速度を使用して、フィードバックに基づき、処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御するように、構成される。
【0028】
いくつかの実施形態では、ハンドピースは、処置塊へ挿入するためのプローブ部材軸に沿って延びるプローブ部材を含み、加速度計は、3軸のうちの1つがプローブ部材軸と実質的に平行である、3軸のそれぞれに沿った加速度を示す情報を提供するように構成され、プロセッサは、3軸のそれぞれに沿ったハンドピースの速度の加重平均を算出することによりハンドピースの加重平均速度を求めるように構成され、プローブ部材軸と実質的に平行な軸は他の2軸より大きく重みづけられる。
【0029】
別の構成では、放射源から処置塊にレーザエネルギを伝送する光学送達部品と、3軸に沿ったハンドピースの加速度を示す情報を提供するように構成された加速度計とを含むハンドピースを提供することと、ハンドピースを使用して放射源から処置塊にレーザエネルギを伝送することと、加速度計を使用して3軸に沿ったハンドピースの加速度を示す情報を提供すること、加速度計からのフィードバックに基づいて、処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御することとを含むレーザ外科手術方法が開示される。
【0030】
いくつかの実施形態では、ハンドピースはさらにジャイロスコープを含み、この方法は、ジャイロスコープを使用してハンドピースの空間における向きを示す情報を提供することを含み、さらに、加速度計およびジャイロスコープからのフィードバックに基づき、処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御することを含む。
【0031】
いくつかの実施形態は、3軸に沿ったハンドピースの加速度を示す情報とハンドピースの空間における向きを示す情報とに基づいてハンドピースの絶対位置を示す情報を求めることを含む。
いくつかの実施形態は、3軸に沿ったハンドピースの加速度を示す情報に基づいてハンドピースの速度を示す情報を求めることと、ハンドピースの速度を示す情報を使用してフィードバックに基づき処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御することとを含む。
【0032】
いくつかの実施形態は、3軸に沿ったハンドピースの加速度を示す1つの情報に基づき、3軸のそれぞれに沿ったハンドピースの速度を求めることと、3軸のそれぞれに沿ったハンドピースの速度の加重平均を算出することによりハンドピースの加重平均速度を求めることと、ハンドピースの加重平均速度を使用して、フィードバックに基づき、処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御することとを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、ハンドピースは、プローブ部材軸に沿って延びるプローブ部材を含む。この方法は、処置塊にプローブ部材を挿入することと、処置塊内のプローブ部材を反復して進めたり引いたりすることと、加速度計を使用して、3軸のうちの1つがプローブ部材軸と実質的に平行である、3軸のそれぞれに沿った加速度を示す情報を提供することと、3軸のそれぞれに沿ったハンドピースの速度の加重平均を算出することによりハンドピースの加重平均速度を求めることとをさらに含み、プローブ部材軸と実質的に平行な軸は、他の2軸より大きく重みづけられる。
【0034】
別の構成では、放射源から処置塊にレーザエネルギを伝送する光学送達部品を含むプローブ部材であって、患者の切開部を通じて処置塊へ挿入するようになっているプローブ部材と、切開部に対するハンドピースの位置を示す情報を提供するように構成された加速度計とを含むハンドピースと、加速度計および放射源に連結され、切開部に対するハンドピースの位置を示す情報に基づき、処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御するプロセッサと、を含むレーザ外科手術用装置が開示される。
【0035】
いくつかの実施形態では、加速度計はハンドピースの速度を示す情報を提供するように構成され、プロセッサは、ハンドピースの速度を示す情報に基づき、処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御するように構成される。
【0036】
別の構成では、放射源から処置塊にレーザエネルギを伝送する光学送達部品を含むプローブ部材であって、患者の切開部を通じて処置塊へ挿入するようになっているプローブ部材と、切開部に対するハンドピースの位置を示す情報を提供するように構成された加速度計とを含むハンドピースを提供することを含む、方法が開示される。この方法は、切開部を通じて処置塊にプローブ部材を挿入することと、処置塊内のプローブ部材を反復して進めたり引いたりすることと、処置塊にレーザエネルギを伝送することと、加速度計を使用して切開部に対するハンドピースの位置を示す情報を提供することと、切開部に対するハンドピースの位置を示す情報に基づき、処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御することとを含む。
【0037】
いくつかの実施形態は、加速度計を使用してハンドピースの速度を示す情報を提供することと、ハンドピースの速度を示す情報に基づき、処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御することとを含む。
【0038】
別の構成では、放射源から処置塊にレーザエネルギを伝送する光学送達部品と、ハンドピースの加速度を示す加速度情報を提供するように構成された加速度計と、処置塊内の組織の温度を示す温度情報を提供するように構成された温度センサとを含むハンドピースを含む、レーザ外科手術用装置が開示される。この装置は、プロセッサであって、加速度計と温度センサと放射源とに連結され、加速度情報および温度情報に基づき、処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御するように構成された、プロセッサを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、ハンドピースは、患者の切開部を通じて処置塊へ挿入されるようになっており、かつ光学送達部品の少なくとも一部分を含む、プローブ部材を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、加速度情報に基づき、ハンドピースの速度を示す速度情報を求め、速度情報および温度情報に基づき、処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御するように構成される。
【0041】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、加速度情報に基づき、ハンドピースの位置を示す位置情報を求め、位置情報および温度情報に基づき、処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御するように構成される。
【0042】
いくつかの実施形態では、温度センサは、熱電対およびサーミスタからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
いくつかの実施形態では、温度センサは赤外線センサを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、ハンドピースは、処置塊から赤外線センサに赤外光を伝送するように構成された光学感知素子を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、ハンドピースの速度をしきい値と比較し、該速度がしきい値未満である場合に処置塊へのレーザエネルギの伝達を禁止するように構成される。
【0045】
いくつかの実施形態では、温度センサは、プロセッサが処置塊へのレーザエネルギの伝達を禁止する場合、または、プロセッサがハンドピースの速度が測定しきい値速度未満であると判断した場合、組織の温度を測定するように構成される。
【0046】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、上記組織の温度をしきい値と比較し、上記温度がしきい値よりも上である場合に処置塊へのレーザエネルギの伝達を禁止するように構成される。
【0047】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、第1の繰返し数(繰返し周波数)の時のハンドピースの速度を速度しきい値と反復して比較し、該速度が速度しきい値未満である場合に処置塊へのレーザエネルギの伝達を禁止し、第2の繰返し数の時の組織の温度を温度しきい値と反復して比較し、該温度が温度しきい値より上である場合に処置塊へのレーザエネルギの伝達を抑止するように構成される。
いくつかの実施形態では、第1の繰返し数は第2の繰返し数より大きい。
【0048】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、処置塊内の複数の位置のそれぞれにおける組織の温度を示す情報を求めるように構成される。
【0049】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、処置塊内の複数の位置のそれぞれにおける組織の温度を示す情報に基づいて、処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御するように構成される。
【0050】
いくつかの実施形態は、処置塊内の複数の位置のそれぞれにおける組織の温度を示すグラフィック描写を示すように構成された、ディスプレイを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、処置塊内の複数の位置のそれぞれにおける組織の温度を示す情報は、各位置について、複数の時刻に測定された一連の温度を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、各位置について、一連の温度の移動平均を算出するように構成される。
【0053】
いくつかの実施形態では、ディスプレイは、各位置における移動平均のグラフィック描写をリアルタイムで表示するように構成される。
【0054】
いくつかの実施形態では、加速度計は、MEM装置を含む。
いくつかの実施形態では、加速度計は、3軸に沿った加速度を測定する。
いくつかの実施形態では、加速度計は、ジャイロ補正された加速度計である。
【0055】
いくつかの実施形態では、レーザエネルギの制御は、波長、パルス数、パルスデューティサイクル、強度およびフルエンスからなる群から選択される少なくとも1つを制御することを含む。
【0056】
別の構成では、放射源から処置塊にレーザエネルギを伝送する光学送達部品と、ハンドピースの加速度を示す加速度情報を提供するように構成された加速度計と、処置塊内の組織の温度を示す温度情報を提供するように構成された温度センサとを含むハンドピースを提供することを含む、レーザ外科手術方法が開示される。この方法は、処置塊にレーザエネルギを伝送することと、加速度計を使用してハンドピースの加速度を示す加速度情報を提供することと、温度センサを使用して処置塊内の組織の温度を示す温度情報を提供することと、加速度情報および温度情報に基づき、処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御することとを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、ハンドピースはプローブ部材を含み、この方法は、患者の切開部を通じて処置塊へプローブ部材を挿入することと、プローブ部材から処置領域にレーザエネルギを送達することとを含む。
【0058】
いくつかの実施形態は、加速度情報に基づきハンドピースの速度を示す速度情報を求めることと、速度情報および温度情報に基づき処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御することとを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、加速度情報に基づきハンドピースの位置を示す位置情報を求め、位置情報および温度情報に基づき処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御するように構成される。
【0060】
いくつかの実施形態は、ハンドピースの速度をしきい値と比較することと、該速度がしきい値未満である場合に処置塊へのレーザエネルギの伝送を禁止することと含む。
【0061】
いくつかの実施形態は、プロセッサが処置塊へのレーザエネルギの伝達を禁止する場合、または、プロセッサがハンドピースの速度が測定しきい値速度未満であると判断した場合に、温度センサを使用して組織の温度を測定することを含む。
【0062】
いくつかの実施形態は、上記組織の温度をしきい値と比較することと、上記温度がしきい値より上である場合に処置塊へのレーザエネルギの伝送を禁止することとを含む。
【0063】
いくつかの実施形態は、処置塊内の複数の位置のそれぞれにおける組織の温度を示す情報を求めることと、処置塊内の複数の位置のそれぞれにおける組織の温度を示す情報に基づいて、処置塊に伝送されるレーザエネルギを制御することとを含む。
【0064】
いくつかの実施形態は、処置塊内の複数の位置のそれぞれにおける組織の温度を示すグラフィック描写を表示することを含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、処置塊内の複数の位置のそれぞれにおける組織の温度を示す情報は、各位置について、複数の時刻に測定された一連の温度を含む。この方法は、各位置について、一連の温度の移動平均を算出することと、各位置における移動平均のグラフィック描写をリアルタイムで表示することとを含む。
【0066】
一構成では、患者内のセルライトを処置する方法が開示される。この方法は、上記患者の真皮と皮下組織との間の境界下に光学装置の光放射部分が位置するように上記患者に該光学送達装置を挿入することと、上記送達装置の上記光放射部分から治療光を送達して、上記境界の近位に位置する標的部位を加熱して、該標的部位より上に位置する真皮および表皮組織に実質的な熱的損傷を引き起こさずに、該標的部位内に熱的損傷を引き起こすこととを含む。一実施形態では、上記送達装置の上記光放射部分から治療光を送達して、上記境界の近位に位置する標的部位を加熱する上記ステップが、上記真皮の上記加熱を上記境界より上の所望の距離内に実質的に局所化することを含み、いくつかの実施形態では、所望の距離は、約0.5mm、約1.0mmまたはそれ以下である。一実施形態では、上記方法は、上記標的部位よりも上に位置する上記上部の真皮および表皮組織を約42℃以下の温度に維持しつつ、上記境界の近位の上記標的部位を約50℃以上の温度に加熱することを含む。
【0067】
別の実施形態では、上記標的部位は、上記境界を通って上記真皮へと延びる少なくとも1つの脂肪細胞を含み、上記熱的損傷は、上記脂肪細胞の熱変性を含む。さらに別の実施形態では、上記標的部位は、下にある皮下組織に上記真皮を結合する結合組織を含み、上記熱的損傷は、該結合組織に対する損傷を含む。一実施形態では、上記方法は、上記標的部位にカニューレの先端を挿入することと、上記標的部位内で上記カニューレの上記先端を動かして、上記部位内の組織に機械的損傷をもたらすこととをさらに含む。別の実施形態では、上記標的部位は、下にある皮下組織に上記真皮を結合する結合組織を含み、上記機械的損傷は、該結合組織に対する損傷を含む。
【0068】
一実施形態では、上記光学送達装置は、上記カニューレ内に少なくとも一部分を収容した光ファイバを含む。別の実施形態では、上記光学送達装置は、縦軸に沿って第1の端部から第2の端部まで延びる側面発光光ファイバを含み、上記送達装置の上記光放射部分から治療光を送達する上記ステップは、上記ファイバの上記第1の端部で治療光を受光することと、上記ファイバの上記第2の端部に上記治療光を伝送することと、上記ファイバの上記縦軸を横切る方向に沿って上記ファイバの上記第2の端部から上記治療光の第1の部分を放射することとを含む。
【0069】
一実施形態では、上記送達装置の上記光放射部分から治療光を送達する上記ステップは、上記ファイバの上記縦軸に実質的に平行な方向に沿って上記ファイバの上記第2の端部から該治療光の第2の部分を放射することをさらに含む。一実施形態では、上記方法は、治療光の上記第1の部分を上記境界に向けることと、上記皮下組織に光の上記第2の部分を向けることとをさらに含む。別の実施形態では、上記治療光はレーザ光を含む。さらに別の実施形態では、上記治療光は可視または近赤外線の波長を有する光を含む。一実施形態では、上記処置光は約1440nmの波長を有する。別の実施形態では、上記送達された治療光は、4W〜20Wの範囲の総パワーを有する。さらに別の実施形態では、上記送達された治療光は、約8Wの総パワーを有する。さらに別の実施形態では、上記送達された治療光は、上記標的部位において約200W/cm〜約20,000W/cmの範囲のパワー密度を有する。
【0070】
一実施形態では、上記送達装置の上記光放射部分から治療光を送達する上記ステップは、一連の光パルスを送達することを含む。いくつかの実施形態では、上記一連のパルスは、持続時間が約0.5ミリ秒、または約0.1ミリ秒〜約1.0ミリ秒の範囲であるパルスを含む。いくつかの実施形態では、上記一連のパルスは、約40Hz、または約10〜約100Hzの範囲の繰返し数を有する。一実施形態では、上記光学送達装置は少なくとも1つのセンサを含み、上記少なくとも1つのセンサを使用して、上記送達装置または上記標的部位のうちの少なくとも1つの特性を示す信号を生成することと、上記センサ信号に基づいて治療光の上記送達を制御することとをさらに含む。別の実施形態では、上記送達装置または上記標的部位の上記特性は、上記光学送達装置の位置、上記光学送達装置の動き、上記光学送達装置の温度、上記光学送達装置付近の組織型、上記光学送達装置によって送達されるエネルギ量、および上記標的部位内の組織の温度、から成るリストから選択される少なくとも1つを含む。さらに別の実施形態では、上記センサは、サーミスタ、加速度計およびカラーセンサから成るリストから選択される少なくとも1つを含む。一実施形態では、上記方法は、上記送達装置または上記標的部位の少なくとも1つの特性を示す信号に基づきディスプレイを生成することをさらに含む。別の実施形態では、上記ディスプレイは、処置を受けている上記患者の部位の温度マップを含む。
【0071】
別の構成では、患者内のセルライトを処置するための装置が開示される。該装置は、光放射部分を有する光学送達装置であって、該装置の該光放射部分が上記患者の真皮と皮下組織との間の境界の下に位置するように、上記患者に挿入されるように構成された、光学送達装置と、上記送達装置の上記光放射部分からの治療光の上記送達を制御して、上記境界の近位に位置する標的部位を加熱して、該標的部位より上に位置する真皮および表皮組織に実質的な熱的損傷を引き起こさずに、該標的部位内に熱的損傷を引き起こす、コントローラとを含む。
【0072】
別の構成では、患者の顔または首上に、または顔または首の近くに位置する皮膚の領域を処置する方法が開示される。該方法は、光学送達装置の光放射部分が、上記患者の上記皮膚の真皮と下にある筋膜との間の境界の近位にくるように上記患者に該光学送達装置を挿入することと;上記送達装置の上記光放射部分から治療光を送達して、上記境界の近位に位置する標的部位を加熱して、該標的部位より上に位置する真皮および表皮組織に実質的な熱的損傷を引き起こさずに、該標的部位内に熱的損傷を引き起こすこととを含む。一実施形態では、上記送達装置の上記光放射部分から治療光を送達して、上記境界の近位に位置する標的部位を加熱する上記ステップが、上記真皮の上記加熱を上記境界より上の所望の距離内に実質的に局所化することを含む。別の実施形態では、上記所望の距離が約0.5mm、約1.0mmまたはそれ以下である。
【0073】
一実施形態では、上記方法は、上記標的部位より上に位置する上記上部の真皮および表皮組織を約42℃以下の温度に維持しつつ、上記境界の近位の上記標的部位を約50℃以上の温度に加熱することを含む。別の実施形態では、標的部位を加熱するために、上記標的部位が上記境界に沿って延び、上記送達装置の上記光放射部分から治療光を送達してことが、該治療光を送達しつつ上記境界に沿って上記光学送達装置の上記光放射部分を動かすことを含む。一実施形態では、上記方法は、上記境界に沿って上記光学送達装置の上記光放射部分を動かしつつ治療光の上記送達を調整して、上記標的部位内に熱的損傷の局所的なサブ領域を形成することをさらに含む。別の実施形態では、上記方法は、上記標的部位にカニューレの先端を挿入することと、上記標的部位内で上記カニューレの上記先端を動かして、上記部位内の組織に機械的損傷をもたらすこととをさらに含む。一実施形態では、上記標的部位は、下にある筋膜に上記真皮を結合する結合組織を含み、上記機械的損傷は、該結合組織に対する損傷を含む。
【0074】
別の実施形態では、上記光学送達装置は、上記カニューレ内に少なくとも一部分を収容した光ファイバを含む。さらに別の実施形態では、上記光学送達装置は、縦軸に沿って第1の端部から第2の端部まで延びる側面発光光ファイバを含み、上記送達装置の上記光放射部分から治療光を送達する上記ステップは、上記ファイバの上記第1の端部で治療光を受光することと、上記ファイバの上記第2の端部に上記治療光を伝送することと、上記ファイバの上記縦軸を横切る方向に沿って上記ファイバの上記第2の端部から上記治療光の第1の部分を放射することとを含む。さらに別の実施形態では、上記送達装置の上記光放射部分から治療光を送達する上記ステップは、上記ファイバの上記縦軸に実質的に平行な方向に沿って上記ファイバの上記第2の端部から該治療光の第2の部分を放射することをさらに含む。一実施形態では、上記方法は、治療光の上記第1の部分を上記境界に向けることと、上記下にある筋膜に光の上記第2の部分を向けることとをさらに含む。別の実施形態では、上記治療光はレーザ光を含む。さらに別の実施形態では、上記治療光は可視または近赤外線の波長を有する光を含む。
【0075】
一実施形態では、上記処置光は約1440nmの波長を有する。別の実施形態では、上記送達された治療光は、4W〜20Wの範囲の総パワーを有する。さらに別の実施形態では、上記送達された治療光は、約8Wの総パワーを有する。一実施形態では、上記送達された治療光は、上記標的部位において200W/cm〜20,000W/cmの範囲のパワー密度を有する。別の実施形態では、上記送達装置の上記光放射部分から治療光を送達する上記ステップは、一連の光パルスを送達することを含む。いくつかの実施形態では、上記一連のパルスは、持続時間が約0.5ミリ秒、または約0.1ミリ秒〜約1.0ミリ秒の範囲であるパルスを含む。いくつかの他の実施形態では、上記一連のパルスは、約40Hz、または約10〜約100Hzの範囲の繰返し数を有する。
【0076】
いくつかの実施形態では、上記光学送達装置は少なくとも1つのセンサを含み、上記少なくとも1つのセンサを使用して上記送達装置または上記標的部位の少なくとも1つの特性を示す信号を生成することと、上記センサ信号に基づいて治療光の上記送達を制御することとをさらに含む。一実施形態では、上記送達装置または上記標的部位の上記特性は、上記光学送達装置の位置、上記光学送達装置の動き、上記光学送達装置の温度、上記光学送達装置付近の組織型、上記光学送達装置によって送達されるエネルギ量、および上記標的部位内の組織の温度、から成るリストから選択される少なくとも1つを含む。別の実施形態では、上記センサは、サーミスタ、加速度計およびカラーセンサから成るリストから選択される少なくとも1つを含む。一実施形態では、上記方法は、上記送達装置または上記標的部位の少なくとも1つの特性を示す信号に基づきディスプレイを生成することをさらに含む。別の実施形態では、上記ディスプレイは、処置を受けている上記患者の部位の温度マップを含む。
【0077】
別の構成では、患者の顔または首上に、または顔または首の近くに位置する皮膚の領域を処置する装置が開示される。上記装置は、光放射部分を有する光学送達装置であって、該装置の光放射部分が、上記患者の上記皮膚の真皮と下にある筋膜との間の境界の近位にくるように、上記患者に挿入されるように構成された、光学送達装置と、上記送達装置の上記光放射部分からの治療光の上記送達を制御して、上記境界の近位に位置する標的部位を加熱して、該標的部位より上に位置する真皮および表皮組織に実質的な熱的損傷を引き起こさずに、該標的部位内に熱的損傷を引き起こす、コントローラとを含む。一実施形態では、上記装置は、温度マップディスプレイをさらに含む。
【0078】
別の構成では、熱的外科手術用装置が開示される。該装置は、ハンドピースから遠位端へ延びる中空のカニューレを含むハンドピースであって、該カニューレの該遠位端は凹部を含む外表面を有する、ハンドピースと、上記中空のカニューレに沿って上記遠位端まで少なくとも部分的に延び、かつ上記カニューレの上記遠位端の近位に位置する処置領域へ治療光放射源から治療光を送達するように構成された、光ファイバと、上記凹部内に少なくとも部分的に位置する温度センサとを含む。一実施形態では、上記装置は、上記サーミスタと上記カニューレの外表面との間に配置された非熱伝導性の内側材料層をさらに含む。別の実施形態では、上記非熱伝導性の材料層は、上記カニューレの上記外表面から上記温度センサを実質的に断熱する。さらに別の実施形態では、上記断熱材は、プラスチック、ポリマ、ポリスチレンおよび接着剤から成るリストから選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0079】
一実施形態では、上記装置は、上記凹部内に上記温度センサを固定するために上記カニューレの上記外表面上に配置された外側材料層をさらに含む。別の実施形態では、上記外側材料層は、上記凹部内に上記温度センサを固定するために上記カニューレの上記外側層の少なくとも一部分の周りに配置されたスリーブを含む。さらに別の実施形態では、上記外側材料層は熱伝導性材料を含む。さらに別の実施形態では、上記熱伝導性材料は、金属、金属箔、熱伝導性ポリマ、熱伝導性プラスチックおよび熱伝導性シリコンから成るリストから選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0080】
一実施形態では、上記外側材料層は、上記サーミスタと上記カニューレの上記外表面との間に配置された内側材料層よりも高い熱伝導率を有する。別の実施形態では、上記温度センサはサーミスタである。さらに別の実施形態では、上記サーミスタは、約1mm以下の特徴サイズを有する。さらに別の実施形態では、上記サーミスタは、約250ミリ秒以下の応答時間を特徴とする。一実施形態では、上記装置は、上記温度センサと通信状態にあるプロセッサであって、上記処置領域の温度を示す上記センサからの信号を受信し、上記治療光放射源から上記光ファイバを通して治療光の上記送達を制御する、プロセッサをさらに含む。別の実施形態では、上記ハンドピースは、上記プロセッサと通信状態にあるように構成された少なくとも1つの追加センサを含み、上記追加センサは、上記ハンドピースまたは上記処置領域の少なくとも1つの特性を示す信号を生成するように構成され、上記プロセッサは、上記センサ信号に基づいて上記処置領域への治療光の上記送達を制御するように構成される。
【0081】
一実施形態では、上記ハンドピースまたは上記標的部位の上記特性は、上記ハンドピースの位置、上記ハンドピースの動き、上記ハンドピースの温度、上記カニューレの上記遠位端付近の組織型、上記標的部位に送達されたエネルギ量、および上記標的部位内の組織の温度から成るリストから選択される少なくとも1つを含む。別の実施形態では、上記センサは、サーミスタ、慣性センサ、加速度計、ジャイロスコープおよびカラーセンサから成るリストから選択される少なくとも1つを含む。さらに別の実施形態では、上記カニューレの上記遠位端は少なくとも1つの吸引ポートを含む。さらに別の実施形態では、上記凹部は上記カニューレ内のスロットを含む。さらに別の実施形態では、上記温度センサ全体は実質的に上記凹部内に収容される。一実施形態では、上記光ファイバの少なくとも一部分は、上記中空のカニューレ内に位置する。別の実施形態では、上記中空のカニューレは吸引用カニューレを含み、上記光ファイバの少なくとも一部分を収容する処置カニューレさらに含む。
【0082】
前述の記載は、添付図面において示すように、本発明の例としての実施形態の以下のさらなる具体的な説明から明白となるであろう。添付図面においては、同様の参照符号は、異なる図面の全体を通して同一の部品を示す。図面は必ずしも寸法が比例しているわけではなく、代わりに、本発明の実施形態を説明することに重きが置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】レーザ外科システムの概略図である。
【図1A】本発明の装置における加速度計の実施形態の分解図である。
【図2】処置中に処置領域に適用される本発明の装置を示す図である。
【図3A】一実施形態における、加速度を1軸、2軸または3軸に並進させる装置の構成を示す図である。
【図3B】本発明の装置に搭載された加速度計の実施形態を示す図である。
【図4】本発明におけるトランスレータ処理回路の実施形態におけるフィルタおよび入力増幅器の概略図である。
【図5】速度対パワーアプリケーションでの合計速度推定のための概略図である。
【図6A】処置領域の一部分に対する熱衝撃を低減するための、および処置領域全体にわたってより均一なエネルギ堆積を提供するための、パワー出力のモードを示す図である。
【図6B】処置領域の一部分に対する熱衝撃を低減するための、および処置領域全体にわたってより均一なエネルギ堆積を提供するための、パワー出力のモードを示す図である。
【図7】最小速度対パワー曲線を示すグラフである。
【図8】装置によるパワー出力およびパルスの繰返し数に関して、装置の速度を示すグラフである。
【図9】オフセット速度対パワー曲線を示すグラフである。
【図10】パワー対位置の差アプリケーションにおける、3次元デカルト平面内の3軸の位置をプロットするモードを示す図である。
【図11】処置済みおよび未処置の部分を表わす、処置領域の2次元のマップを示す図である。
【図12A】重複パルス、および処置領域のマップのためのそのような重複パルスを説明するモードを示す図である。
【図12B】重複パルス、および処置領域のマップのためのそのような重複パルスを説明するモードを示す図である。
【図12C】重複パルス、および処置領域のマップのためのそのような重複パルスを説明するモードを示す図である。
【図12D】重複パルス、および処置領域のマップのためのそのような重複パルスを説明するモードを示す図である。
【図13A】1064nmの放射源による、処置領域の断熱温度上昇を示すグラフである。
【図13B】1320nmの放射源による、処置領域の断熱温度上昇を示すグラフである。
【図13C】1400nmの放射源による、処置領域の断熱温度上昇を示すグラフである。
【図14】組織内標的内の物理的ノード、およびEin対伝播距離のプロットを含む3次元座標を示す図である。
【図15】装置および光検出器センサパッドの実施形態を含む外科システムの実施形態を示す図である。
【図16】ドーピングビームに使用される複数の波長を示すグラフである。
【図17】光検出器センサパッドと通信状態にあるユーザインターフェースディスプレイの実施形態を示す図である。
【図18】(a)〜(e)は、熱センサを特徴とする外科用装置を示す図である。
【図19】熱センサを特徴とする外科用装置を示す図である。
【図20】熱センサを特徴とする外科用装置の実施形態を示す図である。
【図21】外科用装置を制御するためのフィードバックループを示す図である。
【図22】外科用装置を制御するためのフィードバックループを示す図である。
【図23】外科用装置ための温度−位置マッピングを示す概略図である。
【図24】IR熱センサを特徴とする外科用装置を示す図である。
【図25】IR熱センサを特徴とする外科用装置を示す図である。
【図26】反射防止コートを施したZnSeの伝送特性のグラフである。
【図27】組織タイプ用センサを示す図である。
【図28】組織タイプ用センサを示す図である。
【図29】感知導波管を特徴とする組織タイプ用センサを示す図である。
【図30】2重組織タイプ用センサを示す図である。
【図31】組織タイプ用センサに使用される電子回路を示す図である。
【図32】組織タイプ用センサに使用される電子回路を示す図である。
【図33】色光検出器のための応答曲線を示す図である。
【図34】真皮と皮下組織の境界下に位置づけられた光学エネルギ送達装置を示す図である。
【図35】側面発光ビームを真皮と皮下組織の境界下に位置づけた、光学エネルギ送達装置を示す図である。
【図36】側面発光ビームを真皮と皮下組織の境界下に位置づけ、該境界において標的部位にエネルギを送達する、光学エネルギ送達装置を示す図である。
【図37】関節接合の場合の、より広い標的部位にエネルギを送達する、同一の装置を示す図である。
【図38】上記境界において熱エネルギの離散した標的部位を生成しながらパルスエネルギを放射する装置を示す図である。
【図39】温度制御センサを含む装置を示す図である。
【図40】脂肪ヘルニアの処置前および1カ月後の患者の超音波画像を示す図である。
【図41】装置に組み入れられた温度感知および制御手段の効果、ならびに処置部位における温度の急上昇を低減することに対するそれらの効果を示す図である。
【図42】装置に組み入れられた温度感知および制御手段の効果、ならびに処置部位における温度の急上昇を低減することに対するそれらの効果を示す図である。
【図43】装置に組み入れられた温度感知および制御手段の効果、ならびに処置部位における温度の急上昇を低減することに対するそれらの効果を示す図である。
【図44】装置に組み入れられた温度感知および制御手段の効果、ならびに処置部位における温度の急上昇を低減することに対するそれらの効果を示す図である。
【図45】装置に組み入れられた温度感知および制御手段の効果、ならびに処置部位における温度の急上昇を低減することに対するそれらの効果を示す図である。
【図46】装置に組み入れられた温度感知および制御手段の効果、ならびに処置部位における温度の急上昇を低減することに対するそれらの効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
発明の例としての実施形態を以下に説明する。
図1は、本明細書に説明する型のいくつかの安全および制御機能を特色とするレーザ外科システム10を示す。システムは、臨床医のような操作者が手で持つのに適し、レーザ源14から治療用レーザエネルギを処置領域に(例えば光ファイバによって)送達するのに適した、ハンドピース12を有する。コントローラ15は、例えば、放射源14から処置領域に光の伝送を許可もしくは禁止することによって、または強度、波長、パルス数(パルス繰返し数)などの1つ以上のレーザパラメータを制御することによって、治療用レーザエネルギの送達(伝送)を制御するように作動する。ハンドピース12は、異なる種類の複数のセンサ16a、16bおよび16cを有する。例えば、例示の本実施形態では、センサ16aは加速度計であり、センサ16bは温度センサであり、センサ16cは組織タイプ用センサである。
【0085】
センサ16a〜16cはコントローラ15に連結されており、このコントローラ15は、信号の出力を処理して進行中の処置に関する情報を判定する。コントローラ15は、センサ16a〜16cによって測定された情報を処理し、処理された情報に基づき制御レーザ15を制御する。各センサ16a〜16cからの情報は、別々に用いられても、または組み合わせて用いられてもよく、処置を受けている領域に関する豊富なリアルタイムの情報を提供する。この情報は、臨床医に対して表示されてもよく、または自動的にレーザ15を制御するために使用されてもよく、例えば、処置領域の所望の線量プロファイルを提供したり、危険状態(例えば、処置領域の一部分の過熱)が検出された場合にレーザ15を禁止したりする。いくつかの実施形態では、センサ16a〜16cからの情報は互いを確認するために使用されてもよく、それにより、信頼性や安全性が向上する。
【0086】
いくつかの実施形態では、ハンドピース12の外側に配置された追加センサ(さらなるセンサ)17もまた、処置を受けている組織の領域に関する情報を提供する。例えば、センサ17は、処置を受けている組織や、その組織に隣接する組織/関連する組織(例えば処置を受けている組織を覆う皮膚の外表面)の温度を測定する、赤外線カメラのようなIRセンサであってもよい。
【0087】
図1Aは、生体の外科用途のための装置100を示す。装置100は、器具115を有する。器具115は、臨床医(例えば外科医)が手で持つのに適しており、エネルギ源105を有する。エネルギ送達部品(エネルギ伝送部品)110が、エネルギ源105および器具115に連結されて、処置領域(図示せず)にエネルギを送達する。用語「処置領域」は、患者の体のいかなる部分をも含んでよい。処置領域の例には、患者の体内にある組織内標的や皮膚表面の部分が含まる。一実施形態では、エネルギ送達部品110は光ファイバである。エネルギ送達部品110は、器具115およびスリーブ130に通され、先端135に達する。処置中、スリーブ130によって覆われたエネルギ送達部品110の部分が、処置領域にあてがわれる(処置領域に接触されるか近づけられる)。装置100は、器具115に連結されて慣性加速度を測定する加速度計120をさらに有する。一実施形態では、エネルギ送達部品110は、光ファイバである。
【0088】
エネルギ源105は、吸引エネルギ、光エネルギ、高周波エネルギ、音波(例えば超音波)エネルギおよび電磁放射線の少なくとも1つを提供する。一実施形態では、エネルギ源は、レーザ光の光源である。レーザ光は、レーザ光線放射である。さらに別の実施形態では、レーザ光線放射は、レーザパルス(例えばNd:YAGレーザ)である。本実施形態では、エネルギ源は、レーザである。一実施形態では、高周波エネルギは、高周波(RF)パルスである。さらに別の実施形態では、電磁放射線は、紫外線(UV)光である。
【0089】
パルスが処置領域に送達されると、パルスの波長も、標的に印加されたパワー量に対する一要素の役目を果たす。例えば、1440nm波長パルスは、例えば等価パワーの1320nm波長パルスよりも、より高度に脂肪組織に吸収される。
【0090】
ある実施形態では、装置100は、エネルギ送達部品110に固定された加速度計120を有する。加速度計120は、エネルギ送達部品110に固定されて、器具115上または器具115内に搭載される。加速度計120は、少なくとも1つの方向から互いに直交する3方向における、エネルギ送達部品110の動作を示す電気信号を生成する。加速度計120からの電気信号は、エネルギ源105を制御するプロセッサ125に送信される。そのため、器具115が動くことで、エネルギ源105の動作の少なくとも一部が制御される。
【0091】
ある実施形態では、プロセッサ125は、器具115(したがってエネルギ送達部品110)が動いている場合のみ、エネルギ送達部品110が作動するように、プログラムされている。器具115およびエネルギ送達部品110が静止していることを加速度計120が示すと、エネルギ源105の出力は停止する。これにより、安全機能が提供される。なぜならば、これにより、エネルギ送達部品110が処置領域の同一の部分に適量を越えるエネルギ送達を続けることが防止され、それによって、望ましくない熱損傷を防ぐことができるからである。さらに一実施形態においては、装置100の安全機能は、器具115が限界最低速度(臨界最小速度)未満で動いている場合に警告フィードバックを提供する制御を少なくとも有する。この代わりに、またはこの安全機能と組み合わせて、装置100は、エネルギ送達部品110が限界最低速度未満で動いている場合にエネルギ源105の機能を止める制御を有してもよい。
【0092】
ある実施形態では、エネルギ源は、パルス化可能なビームを放射する。例えば、エネルギ源がレーザ光を送達する場合、エネルギ源はレーザパルスの速度を制御する。エネルギ源は、処置領域に向けられた総エネルギの量を制御するために、1つ以上のパラメータを操作する。一実施形態では、エネルギ源は、1パルス当たりのパワー、パルス持続時間、パルス繰返し数またはこれらの組み合わせを制御する。エネルギ源は、処置領域に向けられた総パワーをある期間内において一定にしつつ、1パルス当たりのパワー、パルス持続時間、パルス数またはそれらの組み合わせを増大または減少させる。ある実施形態では、エネルギ源はさらに制御系を有し、この制御系は、加速度計によって提供されるフィードバックに応じて、エネルギ源が各エネルギパルスのパルスを生成する速さを制御する。したがって、低速で動く装置(つまり、低速で動くエネルギ送達部品)ならば、処置領域に向けて、より少ないエネルギを送達する。反対に、高速で動く装置ならば、より多くのパワーを送達する。一実施形態では、制御系は、装置が動いている場合に限り、かつ3軸全てにおける装置の動きに従って調整されたパワーで、エネルギパルスを放射する。別の実施形態では、エネルギ源は、パルスの波長、エネルギ送達部品の速度、処置領域の組織、フルエンス設定、伝播距離、またはこれらの組み合わせに関連して、エネルギパルスの速さを制御する。ここでいう「フルエンス設定」は、100%のパワーが印加されるか否かを決定する。ここでいう用語「フルエンス」とは、ジュール/cmを意味するレーザ用語である。
【0093】
ある実施形態では、装置は、エネルギ送達部品に連結され、処置に対する処置領域による反応を検出する検出器を有する。一実施形態では、処置領域に向けられたエネルギに応じた処置領域の物理的変化を測定するために、センサがエネルギ送達部品に連結される。別の実施形態では、検出器がエネルギ送達部品に連結されて、処置領域からエネルギ送達部品に返送される放射を検出する。例えば、検出器は、エネルギパルスとは逆方向に処置領域からエネルギ送達部品を下って伝わる近赤外放射を検出する。検出された近赤外放射は、処置領域内の組織の温度をモニタするため、およびエネルギ源の動作を調節するために使用される。さらに別の実施形態では、装置は、組織の温度が所定の温度を超えたことを検出された放射が示す場合に、警告を発するように、プログラムされる。装置は、組織の温度が所定の温度を超えたことを上記検出された放射が示す場合に、エネルギ源の動作を禁止するように、さらにプログラムされる。例えば、エネルギ源はパルスモードで作動し、処置領域からの近赤外放射は、連続する処置パルス間の遅延期間の間に検出される。連続波放射源の場合でさえ、連続波処置用ビームのデューティサイクルがほぼ均一となるように、処置用ビームおよび診断用ビームが調整される。
【0094】
図2は、本発明の装置の適用方法を示す。装置200は、患者の皮膚に施された切開部210を通して処置領域205(例えば脂肪組織)に挿入される。エネルギ送達部品215が処置領域205に挿入されてさらに動かされるのに従って、エネルギ送達部品215は、所定の速さの1つ以上の連続するパルスを処置領域205に向ける(導く)。処置中、多くの吸収および加熱が、エネルギ送達部品215の先端220に直近の組織内で生じる。臨床医が処置領域205内で装置200(つまりエネルギ送達部品装置215)を前後に動かす間、エネルギ源(図示せず)は、1つ以上の連続するパルスを放射することによってエネルギを提供し、組織細胞(例えば脂肪細胞)を分散および破壊する。
【0095】
ある実施形態では、エネルギ源は、エネルギ送達部品215の位置に関連して、処置領域205に向けられたエネルギの量を調整する。別の実施形態では、エネルギ源は、処置領域205内の物理的な位置に送達されたエネルギの量について、加速度計230によって提供されるフィードバックに関連して、処置領域205に向けられたエネルギの量を調整するように構成される。
【0096】
一実施形態においては、図3Aおよび3Bに示すように、装置300は、レーザ/外科用ハンドピース310内に配置された3軸加速度計305、およびトランスレータ処理回路315を有する。このトランスレータ処理回路315は、加速度をオペレータへの速度および/または位置のフィードバックに変換し、処置領域に向けられるパワーまたはエネルギ出力量を操作するためのアルゴリズムを具備する。処理回路315は加速度計305に連結され、処置領域(図示せず)に向けられたエネルギの線量測定を行う。用語「線量測定」は、エネルギへの暴露に起因する、物質または組織のエネルギ照射線量を算出することを意味する。そのため、速度および/または位置フィードバックに関連して、装置300は、パワーと、処置領域に向けられるエネルギの量とを制御する。
【0097】
ある実施形態では、本発明の装置は加速度計に連結されたプロセッサを有し、このプロセッサは、加速度計からのフィードバックを処理し、処置領域に向けられたエネルギ量を制御する。一実施形態では、装置は、速度に対するパワーの適用を含む。このアプリケーションでは、処置領域に向けられるパワーは、速度フィードバックに関連して制御される。加速度計は出力値を出し、この出力値はフィルタリングされ、倍率変更(拡大縮小)され、積分されて、1軸、2軸または3軸の速度フィードバックを求める。速度フィードバックが2軸または3軸に関して提供される場合、加速度計305の出力の直流(DC)成分は、エネルギ送達部品によるドリフトを補正するために遮断される。このように加速度計305のDC成分が遮断されると、処理回路315は動的加速度を蓄積して、プラス(+)またはマイナス(−)の大きさを含む、速度についての総合的な値を提供する。
【0098】
トランスレータ処理回路315は、アナログ要素およびデジタル要素の両方を含む。加速度計305による速度フィードバックの3つのチャネルは、図4に示すように、DC遮断パスフィルタ(例えば〜5Hzカットオフ)のようなフィルタ、続いて調節可能なゲイン入力増幅器を介して、トランスレータ処理回路315に設けられる。入力増幅器はまた、加速度信号をオフセットして双方向加速度を可能にする。これらの手段によって、重力による一定または静的DC加速度は遮断され、動的または変化する加速度が加速度計に渡され、倍率変更され、積分されて、速度フィードバックを生成する。さらに、図3に300として示さるような装置の向きの変化や様々な角度により、静的重力加速度ベクトルが3軸に再分配され、すなわち3つの加速度信号に分配される。なぜなら、これらの信号は、重力に対する3軸の基準系の角度に依存するからである。
【0099】
速度に対するパワーを適用するある実施形態では、加速度計は、結合された(組み合わされた)3軸の合成速度フィードバックを提供する。その後、この結合された速度フィードバックに基づいて、処置領域に向けられたパワー出力は絞られるか、または調節される。各速度信号はそれぞれ異なる軸に沿った速度を表わすので、3軸からの速度値を単純に合計することはできない。例えば、X軸方向における負の速度値は、Y軸、またはZ軸の正の速度値から引かれることになるであろう。したがって、本発明の加速度計は、図5に示すように、各軸独立して絶対速度値をとり、その後、全ての軸からの絶対値を合計することによって、疑似速度(quasi speed)合計値を提供する。図5は、本発明の装置が、結合された3軸合成速度フィードバックをいかに提供するかの一例を示す。ステップ505x、y、zにおいて、各軸からの加速度信号を測定する。ステップ510x、y、zおよび515x、y、zにおいて、加速度信号が入力増幅されてオフセットされ、続いて積分され、速度値を生成する。次に、各軸からの速度値がステップ520x、y、zにおいて絶対値に変換される。その後、ステップ525x、y、zにおいて、速度についての各絶対値が重みづけされ、合計され、結合された3軸合成速度フィードバックが提供される。例えば、X軸の速度絶対値は、最大に重みづけされ、結合された3軸の合成速度フィードバックの85%を占め、一方では、YとZの軸の値は、15%および5%と、それぞれ重みづけされる。各軸は、所定の手順で装置の動きの主軸にバイアスをかけるまたはこれを強調するように、それぞれ異なって増幅されてもよい。
【0100】
したがって一実施形態においては、X軸は、脂肪分解のような処置の主ストロークを追跡し、一方では、加速度計によるY軸センサおよびZ軸センサからの横方向および深さ方向の加速度は、結合された3軸合成速度フィードバックにおいては、より小さい割合を占める。脂肪分解については、X軸における速度は、結合された3軸合成速度フィードバックの80%を、Y軸では15%まで、Z軸では5%までを占める。選択されたフルエンス(パワー出力)の100%を達成するためには、3軸すべてにおける速度の絶対値が合計され、この合計値が、100%のフルエンス対速度しきい値を越えなければならない。結合された3軸合成速度フィードバックが100%しきい値未満である場合、パワー出力は速度に関連して線形に低減される。
【0101】
ある実施形態では、速度に対するパワーの適用はプロセッサを含み、このプロセッサは、方向に基づくパワー出力ルーチンで、処置領域にエネルギを送達するようにエネルギ源(例えば図2の符号215)を制御する。方向に基づくパワー出力ルーチンを実施しながら、エネルギ源は、本発明の装置が動く方向に関連して様々な量のエネルギを放射する。このようなプロセッサが適用されて、処置領域の各部分にエネルギが均一に送達される。例えば、図6Aに示すように、前方ストローク605の間、全ストロークエネルギの67%が堆積する。図6Bでは、リターンストローク(後方ストローク)610は、総パワーの残りの33%を堆積する。これは、いくらかの冷却/熱分散時間が、後続の照射の前に与えられるという考えに基づくものである。その結果、処置領域の部分全体にわたってより均一なエネルギ堆積を提供しながら、処置領域615に対する熱衝撃(高速ΔT)が低減される。さらに、方向に基づくパワー出力ルーチンは、横方向のストロークに適用されてもよい。
【0102】
速度に対するパワーの適用では、臨床医は、エネルギ送達部品が動いているか否か、およびいかに速く動いているかを知ることができるが、エネルギ送達部品がどこを動いているのかを正確に知ることができない。例えば、臨床医は、処置領域の処置済みの部分に繰返し(例えば、Y軸およびZ軸の速度はなしでX軸に沿って前後に動いて)戻る可能性がある。このような場合、X軸速度が最低速度対100%フルエンス限界を超えている限り、速度フィードバックは最大パワー出力を許可する。プロセッサまたはトランスレータ処理回路の一実施形態においては、プロセッサまたはトランスレータ処理は、エネルギ送達部品の速度に関連して処置領域に向けられたパワーを制限するアルゴリズムを有する。このようなアルゴリズムにより、安全性が大幅に向上する。過度の滞留時間による損傷が容易に防止され、また、速度に対するパワー(パワー対速度)の適用を備えた本発明の装置によって、オペレータは最適なテンポをさらに容易に学習することができる。安全措置に関する別の実施形態では、本発明の装置は、装置および/または処置領域の様々な状態を示す音声フィードバックを備えてもよい。音声フィードバックは、例えば、パワー切れ、処置領域の一部分の過剰な温度上昇、非対象組織の近接検出(例えば、プローブ/ドーピングビームの再放射(remittance)および/または反射光検出器によって判定される)、および有害な状態(例えば出血、黒焦げ)を示す。
【0103】
ある実施形態では、パワー対速度の適用はさらにプロセッサを含み、このプロセッサは、パワー制限アルゴリズムを実施する。処置領域のエネルギ/単位面積が安全な熱的限界値を超過しないように、アルゴリズムはパワーを制限するか絞る。いかなる量のパワーが安全であるかを決定するための変数は、波長、フルエンス設定、組織のタイプ(例えば組織による吸収度)、伝播距離および繰返し数の少なくとも1つに関連する。例えば、図7に説明するように、基本曲線は、2Hzの設定では1Hzの設定に比較して2倍の最低速度が必要となるであろう。なぜなら、パワー出力が2Hzの設定では2倍であるからである。異なる繰返し数に対する各傾きを図8に示す。図8は、処置領域に向けられたパワーおよび/またはパルスの繰返し数が装置の速度に関連して調節されることを示す。最低速度カーブは、印加エネルギ、組織吸収度、冷却時間およびハンドピース移動速度の少なくとも1つの推定値に基づいて過度の組織温度上昇を防止するためのものである。さらに、傾き補正係数が各波長および/または各組織型から導き出される。
【0104】
パワー制限アルゴリズムの一実施形態においては、装置はエネルギ源を有し、このエネルギ源は、エネルギ送達部品が処置領域への入り口ポイントから所定の距離内にあるときに、放射されるエネルギの量を調整する。図2に戻って、先端220が既に処置済みの物理的位置に再度位置づけられた場合、エネルギ源(図示せず)は、既に処置済みの部分は焼かれないが適切な量のエネルギで最適に処置されるように、処置領域のその部分に送達されるエネルギの量を調整する。例えば、先端220は、切開部210付近の物理的位置235の各部分には、切開部210から比較的遠い物理的位置240内の各部分に対するよりも頻繁に接触する。したがって、先端220が接触する度に、物理的位置235の各部分に同一量のエネルギのパルスを与えられると、これらの部分はそのうちに焼け焦げてしまうであろう。切開部210付近の部分へのエネルギのこの種の望まれない過剰暴露を防止するために、エネルギ源は、切開部210からの所定の距離内の部分に送達されるエネルギの量を調整し、そこに向けられるエネルギの量に制限を設ける。
【0105】
パワー対速度の適用のある実施形態では、本発明の装置は、図7で示すように、さらにオフセット機構を含む。一実施形態では、装置はレーザ光を含み、レーザ光は、装置の移動の速度によって直接絞される。オフセット機構により、図9に示すような、速度対パワーのグラフからのいくらかの偏差(ずれ)が許容される。例えば、これにより、臨床医は、エネルギ対速度の傾きを、ハードコードされた安全限界値内で特定の処置に適するように微調整することができる。例えば、装置は、1Hz繰返し数設定については、パワー対速度の適用において、パワーを増加するために、線905によって示されるような負のオフセットを適用できる。反対に、正のオフセットが適用される場合には、装置は線910によって示されるように、より少ないパワーを放射する。その後も、選択されたフルエンスの許容されるべきパーセンテージを移動速度が決定するように、レーザは速度に関連してパワーを低減する。装置の移動速度にかかわらず、選択されたフルエンスが超過することがないのは明らかである。
【0106】
パワー対速度のパワー制限アルゴリズムに代わるものとしては、パワー対「位置の差」(Δ位置)の適応がある。この場合、並進ベクトルが3軸すべてにおける位置の差から算出される。これらの並進ベクトルは、3次元空間から距離と絶対速度を決定する。
【0107】
このパワー対位置の差(位置の差に対するパワー)のパワー適用により、より精密な制御および正確なエネルギ/単位面積の温度上昇制限が可能となる。具体的には、装置の絶対位置と波長およびパワー出力(例えば脂肪組織吸収度)とを同時に追跡することによって、局所的な温度上昇を極めて良好に推定することができる。
【0108】
3つの個別の位置軌跡をプロットすることによって、加速度計を使用して3軸すべてにおいて独立して測定された加速度が2度積分され、図10に示すように、組織内標的の3次元空間内の精密な位置が求められる。3軸における各位置の軌跡は、3次元デカルト平面1000上にプロットされ位置付けられる。3軸は1点に収束し、3軸の収束をプロットすることにより、標的エリア内における本発明の装置のエネルギ送達部品の実際の位置1005が分かる。
【0109】
絶対位置を有する各照射の位置は、処置領域のマップを生成することにより、処置の全体にわたって記録される。ピクセルを単に暗くしてオペレータに表示することで、オペレータは照射し損なった領域や未処置領域を迅速に識別できる。このフィードバックによって、より均一に分散されたエネルギ処置が可能になる。
【0110】
パワー対位置の差の適用の、ある実施形態では、処置領域は、患者の皮膚(例えば顔)の表面の部分である。図10に示される組織内標的の3次元マップと同様に、3次元トポグラフィカルマップが、皮膚表面部分のピークや谷を示す。処置に先立って、3次元トポグラフィカルマップは、皮膚表面部分の写真に基づき二次元から三次元へのアルゴリズムを使用して作成される。トポグラフィカルマップ上の各ポイントは、印加エネルギすなわちEin、吸収度対伝播距離ならびに組織のタイプに伴う時定数および連続性のうちの少なくとも1つを示す蓄積を表わす。処置中、3次元のトポグラフィカルマップが、エネルギ送達部品の位置、その部分に向けられたエネルギの量、および/またはその部分に吸収されたエネルギの量を示す。
【0111】
パワー対位置の差の適用の、ある実施形態では、処置領域に向けられたパワーは、位置フィードバックに関連して制御される。ここで、並進は3軸すべてにおける位置の差から算出される。この並進ベクトルは、3次元空間における距離と絶対速度を決定する。位置の差フィードバックの適用のために加速度計に連結されたトランスレータ処理回路は、もはや重力を無視することができないという点で、速度フィードバックと異なる。むしろ、重力ベクトルの方向は、数学的に、または装置内の加速度計に連結されたジャイロ(例えば図3の符号320)の使用によって、判定されなければならない。ジャイロの利点は、処置の最初に一旦向きを揃えられると、ジャイロは正確な傾斜フィードバックを提供することができ、これにより、トランスレータが、重力を減算しかつ各軸からの加速度を独立して計算し、速度や位置を導き出すことができる、という点である。ジャイロはまた、他の加速度計ドリフトやオフセット補償を可能にする。
【0112】
パワー対位置の差の適用の一実施形態においては、これらの位置フィードバック値は3次元座標平面上で図示され、3軸座標内のエネルギ送達部品の位置の変化も図示される。位置をこのように求めることにより、並進ベクトルの算出が可能になる。この並進ベクトルは、3次元座標平面内の各点の間の距離、各点間の移動時間または他の関連する位置データを決定して、絶対位置ならびに実際の3次元速度合計を提供する。3次元座標平面の別の利点は、位置データの任意の軸周りのオフセットベクトルおよび距離、回転、または鏡像管理などを可能にするような、複雑な動作を単純化できることである。鏡像変換を必要とする例は、図1Aの装置105のような部品である。この部品は、身体内にあるエネルギ送達部品110のような部品に対して鏡像座標平面内で動く。
【0113】
パワー対位置の差の適用を備えたアルゴリズムは、既に処置済みのスポット/位置内への過度のエネルギの放出を制限または防止することもできる。したがって、レーザがパルス毎ベースまたはミリ秒ベースでパワーを絞って過度の熱の上昇を防止している間に、臨床医は同一の組織セクターを複数回通過することができる。臨床医が許可する、それよりも前に処置した領域の冷却の時間が短いほど、それに対応するエネルギはより少ない。この実施形態を、図11に示す。本発明は2次元または3次元的に作動することができるが、説明のために、図11は、処置領域1100を示す2次元の区分マップのみを示す。臨床医が処置領域1100内において操作を行う間、マップは、装置1140で処置された部分をすべて記録し、図11に示すような処置領域の図を臨床医に提供する。処置領域1100が図示され、内部の体腔または処置領域を表す、異なる区分(部分)1110、1115、1120、1125および1130に分割されている。スポット/位置1105、1106、1107は、例えばレーザパルスで既に処置されているものである。また、部分1135、1136、1137はまだ処置されていない。処置の進行と同時に、パワー対Δ位置(位置の差)の適用に基づく位置から観察している臨床医は、処置領域1100の処置済み部分1105、1106、1107を未処置部分1135、1136、1137から容易に区別することができる。したがって、次に臨床医は装置1140を操作して、処置領域1100の未処置部分1135、1136、1137を処置するために装置を動かすであろう。処置済み部分1105、1106および1107の位置に加えて、処置領域1100のマップは、そこに向けられたエネルギ/領域の量および/または吸収されたエネルギの量も示す。例えば、区分1130が例えば他の区分よりも多くのレーザパルスで処置されている場合、マップは、区分1130が他の区分よりも多くのパワー/領域で処置されており、かつ特定の部分は既に最適に処置されていることを示す、フィードバックを行なうであろう。一実施形態では、処置領域のマップはカラーコード化を含む。カラーコード化は、処置領域の部分による吸収度の大きさのような、処置の効果を示す。カラーコード化は、放射されたパルスの強度も示すことができ、例えば、ある波長でのパルスが多く照射された場合には塗りつぶした赤いドットを示し、別の波長でのパルスがわずかしか照射されない場合には薄い赤いドットを示す。
【0114】
ある実施形態では、本明細書で議論するパワー対位置の差の適用で構成された装置は、先に議論した速度対パワーの適用で構成された装置と同様の安全機構を含む。
【0115】
ある実施形態では、本明細書で議論するパワー対位置の差の適用で構成された装置はパワー対速度の適用に関して議論した、プロセッサおよび/またはパワー制限アルゴリズムの1つ以上を含み、これには、先に議論したような速度フィードバックの適用と類似した、処置領域内のエネルギを均一に配分(分散)するものが含まれる。
【0116】
ある実施形態では、本発明の装置は、重複パルスを計算するプロセッサをさらに有する。パルスは、パルスの波長に依存して、異なる距離および異なる吸収度で伝播する。一連のパルスが放射される場合、図12A〜12Dに示すように、波長吸収度と伝播距離は重なる可能性がある。図12Aは、処置領域1205の下に挿入されて、エネルギ(例えばレーザパルス)1210を送達するエネルギ送達部品1201を示す。図12Bは、送達されたエネルギ1210からの放射状の温度上昇を示し、エネルギ1210の原点に最も近い円が最も熱く、ほぼ70℃であり、最も遠い円で、ほぼ50℃である。図12Cは、一連の重複パルス1225、1226、1227から生じたホットスポット1220および1221を示す。ホットスポットに送達されたパワー量を計算するために、ホットスポット1220で吸収された、結果として生じた熱エネルギは、単純に合計することができる。一連のパルスが異なる波長で放射される場合、パルスの全構成波長の距離に対する吸収された総エネルギにより、組織温度上昇の正確な予測が可能になる。図12Dは、近接して位置するか、または重なった、連続した2つの照射(レーザパルス)を、対応する距離に対する温度上昇により描写したものである。個々の照射についての温度の変化すなわちΔTは、断熱計算によって推定され、波長、パワー、標的組織吸収度および散乱効果によって、標的組織内の距離および方向に関してΔTを算出することができる。結果として生じる組織ΔTゾーンが重なり合っている、近接して位置する照射部分では、近接して送達された照射から予め加熱されているために温度がさらに蓄積する。さらに、距離に対する、最大ΔTと最小ΔTとの比率は、「差異ΔTmax」として定義される。例えば、エネルギを堆積して極めて均一な組織加熱を行うためには、「差異ΔTmax」は、より一貫した組織加熱を提供するために最小限にされるべきである。
【0117】
図13A〜13Cに示すように、処置領域の一部分が、100mJを送達する1064nm、1320nmおよび1400nmの波長のエネルギ送達部品(例えば600μmファイバ)にさらされた時の断熱温度上昇は、300μm動径座標で、それぞれ0.2℃、0.81℃および20℃である。
【0118】
パワー対位置の差の適用の、ある実施形態では、処置領域は組織内標的(細胞組織の間の標的)である。本発明の装置に連結した加速度計を使用すると、身体内部の領域をマッピングすることができ、これによって装置を組織内標的にナビゲートすることができる。3次元マップの一実施形態では、図14に示すように、エネルギが放射されるポイントは、原点(0、0、0)1405である。3次元マップの各物理的ポイントは、アキュムレータを含む。このアキュムレータは、例えばレーザパルスであるエネルギイン(Ein)が物理的ノード1410に向けられたときにアキュムレータによって表わされる、物理的ノードの範囲内の吸収エネルギの複合効果を測定値とする。矢印1415、1416、1417、1418、1419および1420は、Einの組織内標的までの伝播距離を示す(Ein伝播ベクトルは、数学および並進を単純化するために3軸で示す)。3次元マップ上の各ポイントは、印加エネルギすなわちEin、伝播距離に対する吸収度ならびに組織のタイプに伴う時定数および連続性の少なくとも1つを示す蓄積を表わす。各矢印を影で表したグラフは、距離に対する大きさエネルギのプロット1425である。数+1、+2、+3、−1、−2および−3は、物理的ノード1410からの任意距離を示し、+1および−1が最も近い。そのため、物理的ノード1410に近い+1および−1の下の領域は、最も多いエネルギを提供されているか、または吸収しており、最も高いピーク温度上昇1430によって示される。逆に、物理的ノード1410からより離れた領域、例えば+3や−3は、最低のピーク温度上昇1435を示す。
【0119】
ある実施形態では、より詳細に以下に議論するように、組織のタイプを判定するためにドーピングビームなどの技術を使用する。例えば、2つの異なる波長の(酸素測定装置におけるような)低パワー発光ダイオードを使用することにより、色特有の反射率または再放射を識別できる。主な処置波長は、エネルギ送達部品内に多重送達されるドーピングビームまたはプローブビームのうちの1つである。組織はそのタイプに基づいて異なる波長を反射するため、物理的ノード1410を構成する組織のタイプは、処置中、ドーピングビームによって確認されることができる。本発明の装置が組織内標的内に入っていくにつれ、エネルギ源は、組織のタイプに従って自動的に調節され、最適な処置に適するエネルギの所定量が提供される。さらに、別の実施形態では、アキュムレータは、エネルギの1以上の照射後に、物理的ノード1410における冷却の速さも追跡する。そのため、装置が物理的ノード1410に戻ってくると、エネルギ源は冷却の速さに基づいて調節されて、さらなる処置が必要であるか、またどのくらいの処置が必要であるかが判定される。
【0120】
組織識別体またはドーピングビームも、皮膚に対する装置の位置を確認できる。ファイバが皮膚(の下から)に接近しすぎる場合には、「色に対する反射率」で適切な変化が観察され、それによって、アルゴリズムが、やけどを引き起こす前にレーザをシャットダウンしたりオペレータに警告を発したりすることができる。一実施形態では、ドーピングビームはエネルギ送達部品の先端に位置し、ビームを放射し、その後、このビームが組織によって反射され、センサによって検出される。
【0121】
ここで説明した装置の実施形態は、レーザまたは光エネルギのエネルギ源を備える。しかし、これらのエネルギ源は、脂肪分解に一般に使用されるような、吸引エネルギと置き換えられてもよい。吸引エネルギを備える実施形態では、加速度計は吸引エネルギ源との通信状態にあり、したがって、吸引エネルギ源は、処置領域に向けられた吸引エネルギの量を調整する。器具(図1の符号115)およびカニューレ(図1の符号130)を通るエネルギ送達部品(図1の符号110)を有する代わりに、カニューレ自体が、組織または望まれない肉体の部分を処置領域から取り除くために適用されることになる。
【0122】
本発明のある実施形態においては、外科システム1500は、100、200、300、として示された装置に類似した装置1510、または吸引エネルギを備えた装置、および装置との通信状態にある視覚ディスプレイを有する。一実施形態では、視覚ディスプレイは、図3Bに符号315で示したようなエネルギ送達部品と類似した部品の位置、および/または処置領域の物理的ポイントに吸収されたエネルギ量を示す。視覚ディスプレイの一例は、図15で示すような光検出器センサパッド1505である。光検出器センサパッド1505は、患者の処置領域の上に置かれる光検出器要素のマトリックスを含む薄板である。一実施形態では、センサパッド1505は、従来のシルクスクリーン印刷プロセスのような任意の既知の手段を使用して作製される、染料太陽電池1520(DBSC)のマトリックスを含む。別の実施形態では、センサパッド1505は、複数のDBSC(例えば〜100個の1cm×1cmマトリックス)のマトリックスから構成される。DBSCは、プラスチック材料上に金属化した電極を印刷し可撓性プラスチック材料上に作製されて、検出回路1525に信号を運ぶ。図15に示すように、センサパッド1505は、患者の処置領域上に置かれ、先端1530の物理的ポイント1535と1ショットベースで照射されるレーザ照射とを検出する。センサパッド1505は、USBコネクタ等のデータコネクタ1540を介して各照射がレーザに返される、先端1530の物理的ポイント1535と通信する。そして、この情報は、タッチスクリーンディスプレイ上に表示されて、処置の間、医者を補助することができ、また、あまりにも多くの照射が1箇所に照射されている場合にはレーザを無効にするように、レーザ制御系によって使用される。
【0123】
図15に示すように、レーザが照射されると、レーザが照射された位置が1つの光検出器1535または少数の光検出器1535からなる群によって検出され、x、y座標がディスプレイ用のレーザ制御系に送り返される。レーザ光線も、発光ダイオードなどの1つまたは複数の低パワーの一定光源でドープされることができ、処置中に先端の適切な位置を知らせるために、臨床医に先端位置が伝えられてもよい。図16に示すように、ドープする波長は、例えば550nmまたは660nmであってよく、両方を組み合わせてもよい。複数の波長がドーピングビームに使用される場合、振幅の変化(例えば、ドーピングビームの2つの波長の散乱の仕方が異なることによる)を検出することにより、レーザハンドピース先端の深さを求めることができる。
【0124】
センサパッド1505は、使用後に位置並進回路1525から取り外され廃棄される、使い捨て部品であってよい。その後、並進回路1525は、後の脂肪分解処置で使用するために、新しいセンサパッド(図示せず)に取り付けることができる。
【0125】
レーザ脂肪分解システムは、図17に示すようなユーザインターフェースディスプレイ1700を有する。このディスプレイ1700は、パルス幅制御部1710、フルエンスディスプレイ1715、および制御部などの、基本的レーザインターフェース制御部1705を含む。さらに、レーザ照射位置ディスプレイ1700は、先端(例えば図15の部品1530)の現在位置、ならびにセンサパッド(例えば図15の部品1505)上のどこに照射が記録されたかを、表示する。照射位置ディスプレイは、グリッドのカラーコード化などにより、グリッドの全体にわたって生じた処置のレベルも示すことが好ましい。このディスプレイは、医者が次の照射のために装置を位置づけるのを補助するため、および処置領域のある1箇所の過剰処置を防止するために使用することができる。
【0126】
<熱感知>
単独でまたは他のセンサ情報と共に使用される、上述したタイプの熱感知技術を以下に、より詳細に説明する。
温度センサは、任意の適切な方法で外科用装置に搭載される。例えば、図18は、ファイバカニューレ1820内に光ファイバ1810を含む、レーザ脂肪吸引のための外科用プローブ1800を示す。光ファイバ1810は、組織(例えば脂肪組織)に処置光を送達する。このプローブは、処置副産物の除去のための吸引カニューレ1830も含む。このプローブの特徴は、吸引カニューレと一体の温度センサ1840である。温度センサ1840は、レーザファイバ先端から控えた位置に設けられる。典型的な実施形態では、この配置により、組織温度の誤った読みとりにつながる、ファイバ1810およびカニューレ1820の先端の局部的加熱が回避される。
【0127】
外科処置中に、組織温度は、レーザ光線を当てるフィールド内にプローブを静止させながら(短時間の時停止)、読み取ることができる。この読み取りに基づいて、所望の内部組織温度に到達させるために、より多くのレーザエネルギを印加したり冷却を行ったりすることができる。典型的な用途では、温度読み取り値は変動する(例えばプローブが組織の内外へ、高速で往復運動している場合)。そのような場合、温度読み取り値は有意味の温度を示すように、平均化される。
【0128】
様々な実施形態では、適切な温度センサが、様々な外科用プローブのうちの任意のタイプに設けられる。例えば、図19はレーザ脂肪吸引のための外科用プローブを示し、このプローブは、温度センサ1920のための分離したステンレス鋼カニューレ1910を特徴とする。温度センサ1920は、カニューレ1910の先端にあり、1本以上のワイヤ1930が、カニューレ1910を通ってハンドピース1940内に入っている。ワイヤ1930は、ハンドピース1940の端から延び、モニタまたは処理装置に接続される。
【0129】
図20は、レーザ外科用プローブ2000の実施形態を示す。直前に述べた各実施形態とは異なり、このレーザ外科用プローブ2000は、吸引用カニューレを含まない。プローブ2000は、内側カニューレ2020(例えば標準600μmカニューレ)内に置かれた処置光送達のための光ファイバ2010を含む。より大きな外側カニューレ2030が、内側カニューレ2020を取り囲む。温度センサ2040(例えば熱電対接合)が、外側カニューレ2030の先端の近くに位置する。センサ2040およびそこから延ひる接続線は、内側カニューレ2020から熱的かつ電気的に絶縁されている。例えば、図の下部に示すように、センサ2040およびワイヤは、熱的および電気的絶縁材ジャケット2050によって包囲されている。いくつかの実施形態では、センサ先端、ワイヤおよび絶縁ジャケットはオートクレーブ滅菌可能である。一実施形態では、サーミスタは、(オートクレーブ滅菌可能で、生物学的適合な)ヒートシュリンクで覆われることにより、カニューレの外表面に接合されて収容される。
【0130】
様々な実施形態では、カニューレ先端の内側またはカニューレ先端に隣接して配置したサーミスタまたは熱電対を使用することにより、レーザに組織温度フィードバックが提供される。組織温度フィードバックにより、閉ループ組織温度制御が可能になり、レーザ出力(パワー、パルス数、波長など)が制御され(例えば、変調され)、所定の処置のための所望の組織温度プロファイルを達成することができる。例えば、深部で行われる「脂肪を破裂させる」処置では、IRカメラのような表面温度フィードバック技術の範囲から外れたところにカニューレ先端を配置することが典型的である。故意ではなく、深部の組織層を(例えば最適かつ安全な脂肪破壊に必要な温度を越えて)過熱することは容易に生じうる。過度の深層部の加熱は、血管の壊死やさらには隣接する組織層(筋肉、筋膜など)への熱的損傷のような、様々な有害な副作用を伴う。閉ループ温度管理システムを使用することによって、最適組織温度を維持することができ、臨床医の作業を単純化し、高い安全性とともに改善された有効性を提供することができる。
【0131】
閉ループ温度管理のもたらす利益の別の例は、カニューレ先端が皮下の層の近位に置かれる場合に、皮膚引き締めることである。本質的には、レーザは、これらのより深部の皮膚の領域に隣接している脂肪を加熱し、この熱が真皮全体に作用して、いわゆるコラーゲンリモデリング(皮膚引き締め)に影響を及ぼす。いくつかの適用例では、(皮膚引き締めをもたらすために)真皮層を通る熱伝導が皮膚のタイプと厚さによって大幅に異なるという点が、困難な点である。深部の真皮から表皮層までの温度勾配は、著しく変化する場合がある。したがって、最適な表面温度を達成しながらも、より深部の皮下の領域を過熱してしまう可能性がある。これは血管損傷や他の副作用を引き起こすことがあり得る。より深部の、すなわち皮下の層を閉ループ熱制御することにより、最適表皮温度と皮下温度との妥協が図られる。
【0132】
様々な適用例では、任意の組織接触温度計測装置の最適の時定数(応答速度)が、変化する。より速い応答時間は、外科医の処置ストロークの全体にわたって積極的に組織温度を測定するという長所を有する。これを達成するためには、サーミスタまたは熱電対の熱質量は、低減または最小化されるべきである。別の可能性としては、処置ストローク長を測定(例えば、加速度計を使用してプローブの速度の信号変化を測定する)し、処置ストロークを、近接範囲、中間範囲、遠隔範囲に分割し、その後、それぞれの範囲にカニューレ先端が存在する期間についての平均温度をサンプリングすることが挙げられる。これにより、より遅い応答時間を有する熱電対が、近接領域、中間領域および遠隔領域のそれぞれについての比較的正確な平均温度フィードバック信号を生成することが可能になる。その後、上記フィードバックをレーザが使用することにより、カニューレストロークの各「範囲」を通して温度蓄積を調節または均一にする。このアプローチにより、臨床医の未熟な技術が補われる。
【0133】
図21に示すように、いくつかの実施形態では、閉ループ制御2100が温度制御ループから構成され、この構成においては、温度誤差信号が合計ブロック/差異増幅器によって導き出され、レーザ平均パワー(または同等なものとして、パルスレーザの場合は、可変繰返し数)が限界値として働く。所望の最終組織温度が、「温度コマンド」として選択される。カニューレサーミスタからの温度フィードバックが加算されると、温度誤差項が出力される。次に、この誤差はゲインされ(増幅され)補償される。その結果が、レーザパワー/繰返し数設定値リミッタによって制約される。その結果生じる出力が、レーザパワー、またはレーザの繰返し数コマンドとして働く。動作において、一旦組織温度が温度コマンドに達すればレーザ出力が禁止される。温度にかかわらず、レーザは、レーザパワー/繰返し数限界値を過えることはない。
【0134】
いくつかの実施形態では、図22に示すように、制御ループ2200は、スピード(すなわち速度)に対する内側レーザパワーのレーザ制御ループと合わせた外側組織温度ループを含む。上述した技術を使用することにより、速度フィードバックが、例えば、カニューレハンドピースに搭載されているか、または外科用プローブに一体化された、加速度計によって提供される。スピードに対する内側パワーループは、ハンドピースが一時停止(動作停止)している間にレーザパワーを制限するように作用する。これにより、ハンドピースが動きを止めたときにレーザを抑止する便利な方法が提供され、その結果、より正確な組織温度測定がカニューレサーミスタによって行われる。さらに、スピードに対するパワーまたは内側制御ループにより、一時停止時間内に生じ得る、ファイバ先端の近位部において組織温度が局所的に極めて急激に蓄積されることが防止される。
【0135】
いくつかの実施形態では、この技術は、サーミスタの配置(先端に対して、かつ加熱された組織までの距離に関して)に柔軟性を与え、さらに、小時定数(fast time constant)サーミスタ要求事項を低減する。本質的には、速度に対するパワーのループは、(例えばプローブ一時停止による)極めて急激な組織温度増加を制御し、その一方で、サーミスタは、処置過程中に生じる平均組織温度増加をより正確に制御する。いくつかの実施形態では、正確な測定のために許容すべきサーミスタ/熱電対の時定数と比較して十分に遅い速度でハンドピースが動作していることを、加速度計データが示す場合に、サーミスタ/熱電対がトリガされて温度測定を行う。
【0136】
調整可能な温度コマンドは、行なわれている処置のタイプ(皮膚引き締めや深部脂肪破壊)に基づいて選択されてもよく、処置されている身体位置(首/顔や腹)に基づいて選択される。
【0137】
いくつかの実施形態では、加速度計出力から導き出されたハンドピース位置情報は、提供するべき温度センサからの温度情報、例えば処置領域の温度マップ(例えば2Dまたは3Dのマップ)、と組み合わせる。例えば、図23を参照して、一時的な2D温度マップが、加速度計のデータと、与えられた外科手術の軌跡に沿ったカニューレの往復ストロークパスに沿った組織内の温度との組合せから生成される。これは、ハンドピースの往復の軸は、数秒間または数ストロークの間、空間内で固定されるという事実に基づく。例えば、図示の実施形態においては、新たな外科手術の軌跡が描かれる前の典型的なサイクルである1秒/ストロークが選択される。毎秒、温度は10回よりも多くサンプリングされ、プロット2301に示すように、プローブ位置の情報と温度がリンクづけられる(下側のt=0s〜3s)。典型的な適用例では、この情報は一時的すぎ、またおそらく煩わしいもので、臨床医にとって有用になりえない。しかし、少なくとも3ストロークサイクルの移動平均をとれば、現在の外科手術の軌跡における温度プロフィールの粗い時間/温度マップ2302が生成される。図示の例では、臨床医が一見しただけで、外科手術の軌跡の右の切開部側付近に、より多くの累積エネルギ/温度2303があることが分かるであろう。
【0138】
速度が0になってから、ハンドピースの方向の変化がサンプリングされる。この考え方は、ストローク中ではなく、ストロークがいずれかの端で止まる場合にのみ有効である。
【0139】
いくつかの実施形態では、サーミスタまたは熱電対は別のタイプの温度センサに置換されてもよい。例えば、図24は、処置導波管/ファイバ先端2410に隣接した組織のIR温度感知を組込んだ、外科手術用レーザ導波管2400の実施形態を示す。IR導波管2420(例えばZnSeIRファイバ)はオーバージャケット2440内に外科手術用導波管2430とともに束ねられる。図示の例において、2つのセンサを有するIR光検出器アセンブリ2450は、処置用ビームフォーカスアセンブリ2470に隣接してハンドピース2460内に位置する。2つの別個の波長のIR導波管からの光部分が分離され、例えばダイクロイックビームスプリッタ2480を使用して、2つのIRセンサにそれぞれ向けられる。各検出器からの信号は、感度を向上させ、「感知導波管」の伝送変数または伝送特性による誤差を排除するために、差動的に比較される。
【0140】
各IRセンサからの信号は、処置中の組織に関する温度情報を得るために処理される。IR温度を監視することにより、レーザに組織温度フィードバックが提供される。このフィードバックは、観察された組織温度に基づきエネルギ堆積を調節する。様々な実施形態では、これには単純な最高温度安全性限界が含まれてよく、あるいは、フィードバックにより、組織の閉ループ温度制御が行われてもよい。いずれの場合も、レーザは、IRセンサからフィードバックを受け、次に、レーザ出力パワー(閉ループ)を調節して、選択された組織温度を達成する。
【0141】
いくつかの実施形態では、外科手術用導波管自体が、処置中に処置領域からIR光を集めて、IR組織温度感知を行う。しかし、いくつかの適用例では、そのような導波管またはファイバが、532〜1550のnm波長(処置波長)の高エネルギレーザや、3〜14μm、例えば3〜5μmまたは8〜12μm(温度感知およびフィードバック用)のIR波長を通すことが要求されるであろう。いくつかの実施形態では、これは望ましくない要求事項である。図25は、2重ファイバ手法を採用することでこの要求を回避している、装置2500の例を示す。上述した各システムと同様に、処置波長の光は、カニューレを使用しない外科手術使用に適する導波管2510(例えば強化ファイバ)を介して送達される。処置導波管2510は、IR導波管2520に包囲され(取り囲まれ)、かつIR導波管2520(例えばZnSeシリンダまたはチューブ)と同軸である。上述したように、処置導波管2510は、処置ソース(光源)から光を送達する処置ファイバ2530に連結される。連結は、ハンドピースの後部に接続されたコネクタ2550内のフォーカスアセンブリ(合焦アセンブリ)2540を使用して行なわれる。図示のように、コネクタはまた、IR導波管チューブ2520と一直線にそろえられた、IRパスフィルタリング2560(それた処置光を除去するため)とIR検出器リング2570(例えばIR光検出器の環状アレイ)とを含む。IRセンサリングは、入射するIR光に応じた電気信号を生成する。これらの信号はプロセッサに渡され、このプロセッサは、上述したように、組織温度情報を求めて、処置レーザにフィードバックを提供するように作動する。
【0142】
上述したように、様々な実施形態では、処置領域からのIR光は、生体の温度モニタリングに適した光学素子を介してIR検出器アセンブリに伝播される。これらの光学素子は、例えば、コーティングを施したZnSeもしくはゲルマニウムの棒もしくはチューブ、またはIR伝送可能プラスチックであり、あるいは、フォトニック導波管でさえもある(ARコーティングを施したZnSeのIR伝送特性を図26に示す)。IR光学素子のいくつかの例を示したが、他の適切な材料、形状および構造が使用されてもよいことは言うまでもない。
【0143】
上述したIR感知技術を使用して得られた温度情報は、上述した各技術におけるサーミスタ/熱電対で得られた情報の代わりに、使用してもよい。
【0144】
いくつかの実施形態では、カニューレ先端に取り付けられた温度センサを有する外科用プローブが開示される。この温度センサは、カニューレ温度を測定し、万一カニューレが過熱されることがあった場合にレーザをシャットダウンするためのものである。様々な実施形態では、温度センサは、負温度係数NTCもしくは正温度係数PTCサーミスタ、またはIR光検出器さえも含んでもよい。
【0145】
いくつかの実施形態は、温度センサからの温度フィードバック信号を使用して、誤差増幅器および補償回路によってレーザ出力パワーを調節する、制御方法またはアルゴリズムを使用する。
【0146】
いくつかの実施形態は、組み合わせた組織およびカニューレ先端温度上昇に基づいてレーザ出力を制限するために、カニューレ先端で測定された温度を制限する、方法または制御アルゴリズムを使用する。
【0147】
いくつかの実施形態は、レーザ外科用プローブのカニューレ先端で測定された温度に基づいて、組み合わせた組織およびカニューレ先端温度上昇に基づきレーザ出力を制限する、方法または制御アルゴリズムを使用する。
【0148】
いくつかの実施形態は、多重レーザ処置用パルスの独立した各波長の相対的なパワーを調節して組織温度上昇または処置領域に変化をもたらし、エネルギや温度上昇の均一な堆積を向上させる、方法または制御アルゴリズムを使用する。侵入深さはレーザ波長に応じて異なるため、単に合成波長の比率を調節するだけで、処置スペースまたは処置領域の寸法が調節される。
【0149】
<組織タイプの区別>
反射率および再放射カラーセンサを備えた例としてのプローブビーム入射装置2700を、図27および28に示す。組織処置用ビーム(この例では、1064nmの波長を有する)が、処置用ビーム共振器キャビティの出力カプラ(OC)から偏光ビームスプリッタ2730を介してフォーカスアセンブリ2720に伝播される。偏光器/ビームスプリッタは、1064nmの処置用ビームに対して透過性であるが、1つ以上のプローブ/ドーピングビームに対して偏光器として作用する。したがって、1つ以上の波長のプローブビーム放射源が、処置用ビームの経路内に連結され、フォーカスアセンブリ2720に向けられ、ファイバ2740すなわち導波管を下って伝播され出力先端2750に至り、対象の組織に向けられる。同様に、組織から反射/放射(戻された)プローブ光は集められ、出力先端2750からファイバ2740すなわち導波管に沿って遡って伝播し、フォーカスアセンブリ2720を通り、処置用ビームの経路から分岐され、1つ以上の色光検出器2760に向けられる。光検出器は、それた処置光(処置光のうちの迷光)を除去するために、および/または複数のプローブ光波長(すなわち色)を識別するために、フィルタを有してもよい。光検出器(例えば色と強度)からの信号は、例えば以下に詳述するように処理されて、組織を特徴づけ、処置(例えば処置用ビーム強度、パルス持続時間など)を決定する。例えば、レーザ脂肪分解適用例では、隠れた血管組織、または処置には不適当な他の組織が特定された場合、処置レーザは照射しないように指示される。
【0150】
図29および30は、2重の導波管を特徴とする組織タイプの決定手段を備えたレーザシステムの例を示す。上述したシステムにおけるように、複数の波長/色(図示のように、532nmの緑色光および635nmの赤色光)のドーピング/プローブ光が、処置用ビームの経路内に連結され(例えば、ミラーおよび/またはビーム・コンバイナ(結合器)/スプリッタ(分配器)のようなダイクロイック要素2710を使用して)、処置導波管またはファイバ2720を下って処置領域2730に伝播される。しかし、上記のシステムと異なり、第2の「感知」導波管すなわちファイバ2740が、処置ファイバに(例えば、患者に挿入されたカニューレ2750またはカテーテルに)付属している。感知ファイバ2740は対象の組織から反射/放射光を集め、それをフォーカスアセンブリ2760および色光検出器2770(例えばRGB光検出器)に伝播する。上記のシステムにおけるように、光検出器からの信号は、組織を決定するために、処理エレクトロニクス2780(例えば差動増幅器、アナログ−デジタル変換器、マイクロプロセッサなど、以下参照)を使用して処理される。組織決定の結果は、処置レーザ源2780(またはレーザ源コントローラ2790)にフィードバックされて、決定された組織のタイプに基づいて処置を制御する(例えば、提供または停止する)。いくつかの実施形態では、図示のように、感知ファイバ先端2795は、処置ファイバ先端2796からずれている。
【0151】
様々な実施形態では、可視または不可視光線の波長が組織タイプの識別に使用される(既に言及したように、いくつかの実施形態では、診断および処置用ビームは単一ビームである。)。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの診断波長が使用される。ただし、波長の数が多い方ほど精度と解像度が向上する。例えば、照準ビームスタイルの低パワー可視レーザ(例えば約1〜50mWの範囲内のパワー出力を備えたレーザ)は、容易に利用可能であり、低価格であり、かつレーザ脂肪分解に共通する、対象とされる主要組織の識別に適している。例えば、ヒトの脂肪は黄色であり、筋膜は白く、皮膚は、赤などを含む大量のより暗い色素を含む。いくつかの実施形態では、診断用「ドーピング」またはプローブビームは連続波(CW)である。いくつかの実施形態では、異なる波長を時分割多重化またはパルス化した組み合わせが使用される。
【0152】
いくつかの実施形態では、単一波長診断用ビームに基づいて組織タイプ決定システムを構築することが可能である。単一波長は、標的とされた脂質の吸収係数と標的とされないその他のすべての組織の吸収係数とに大きな違いがでるように、選ばれる。しかし、このようなシステムは、所定の後方散乱カップリング効率への依存度が大きい。後方散乱カップリング効率とは、ファイバ先端の前にある組織に診断用ビームを送達し、後方散乱信号を集め、レーザシステム内のセンサに後方散乱信号を送達する、全効率である。ファイバ送達システムにおけるいかなる変化(例えば、ファイバ先端の汚染)も、後方散乱カップリング効率を変化させ、単一波長診断システムの信頼性を低下させるであろう。
【0153】
組織タイプ診断の信頼性は、多重の波長診断用ビームの使用により大幅に改善することができる。波長の数を増やすと、診断システムの精度が向上し、例えば、多数の発色団を識別することができる。
【0154】
例として、2波長診断システムを検討する。この例において、このシステムは、脂肪(リポソーム)と水を識別すると仮定する。脂肪以外の体内のほとんどの組織は、80%超の水を含む。したがって、脂肪と水を識別する診断システムは、ファイバ先端が脂肪を指しているときにはエネルギを送達するように、また、先端が他の組織を指しているときにはエネルギを送達しないように、使用することができる。
【0155】
理論に縛られるつもりはないが、以下の例は、水環境内の脂肪含有量を決定するように設計された、2波長診断システムの動作を示す。各波長について、信号は、放射源から検出器まで伝播する。波長1について、放射源強度はSである。全光学系およびファイバの伝送はTである。ファイバの端部に送達される信号はSTである。この信号の一部は、効率Bでファイバに後方散乱され、その一方で、その一部が効率Aで吸収される。ファイバ端部に戻る信号はSTB(1−A)である。後方散乱信号は、ファイバに結合され、効率Cで検出器に送信され、検出器は効率Dを有する。検出器に到着する信号はSTB(1−A)CDである。2つの診断波長が十分に接近している(IRの場合300nm)場合、後方散乱効率Bは、波長にも脂肪含有量fにも依存しないと仮定される。そのため、唯一の脂肪含有量依存のパラメータは、吸収効率Aとなる。診断された組織が未知の脂肪含有量fである場合、2つの波長についての2つの検出器VおよびVにおいて検知される信号は、以下のように書くことができる。
【0156】
【数1】

【0157】
ここで、添え字1および2は波長を示し、上付添字FおよびWは脂肪および水を示す。この2つの式は次のように書き直すことができる:
【0158】
【数2】

【0159】
組織吸収と無関係であるパラメータは、システム較正によって除去される。すなわち、脂肪含有量を有さない(f=0)既知のサンプルから診断信号V1cおよびV2cを測定することによって除去される。較正測定値を求める式は以下のとおりである。
【0160】
【数3】

【0161】
2つの較正測定値の比率Rは、次のように定義される。
【0162】
【数4】

【0163】
較正比率は、レーザ脂肪分解処置が始まる前に較正組織ファントムから得られ、診断システムコンピューターに保存されてリアルタイムの組織決定において使用される。レーザ処置中、オペレータが処置先端部を動かしている間に、診断システムは、処置パルスの間に組み入れて(またはCW処置用ビームと並行して)組織決定処置を実行する。リアルタイム診断信号V1dおよびV2dは(1)から次のように表わされる。
【0164】
【数5】

【0165】
較正測定に基づいて、直前の式は以下のように書き直すことができる。
【0166】
【数6】

【0167】
積STBCDは、第1の式を用いて表わされ、これを第2の式に代入することができる。
【0168】
【数7】

【0169】
2つの診断測定値の比率Rは、以下のように定義される。
【0170】
【数8】

【0171】
直前の式は、未知の脂肪含有量割合を表わすために使用することができる。
【0172】
【数9】

【0173】
算出された組織脂肪含有量fは、レーザを照射すべきか否かを判断するために、しきい値(例えば、f>80%の場合)に基づいて組織決定システムによって使用される。
【0174】
組織脂肪含有量を求める式(2)は、脂肪と水に吸収率の大きな違いがあるように、かつ分母内の異なる項の少なくとも1つが大きくなるように、少なくとも1つの波長を選ぶことの重要性を強調している。そのような波長領域の1つは、1300〜1500nmである。吸収の差が大きくなる波長として選択可能な波長は、1440nmである。脂肪と水における吸収率がほとんど同じであるようにもう一方の波長が選択される場合には、式(2)の形は単純化される。そのような波長は、例えば約1190、1230、1690および1730nmである。脂肪と水における吸収率がほとんど同じであるように波長のうちの1つ(波長1)が選択される場合、脂肪含有量fの式(2)は、2つの診断測定値の比率Rの一次関数になる。
【0175】
【数10】

【0176】
水のはるかに大きい吸収率と比較して脂肪の吸収率が無視される場合には、式(3)はさらに単純化される。
【0177】
【数11】

【0178】
式(4)は、脂肪含有量fの関数として診断比率および較正比率(RおよびR)の予測される比率を表わすように変形される。
【0179】
【数12】

【0180】
ここで、rは組織タイプの比率として解釈される。式(5)から、極めて低い脂肪含有量f≒0については、診断比率は較正比率と等しく、組織タイプ比率r≒1であることが、明らかである。脂肪含有量が増加するにつれ(波長2に関しては、脂肪は水よりはるかに低い吸収率を有する)、組織タイプ比率は増加する。
【0181】
いくつかの実施形態では、診断システムにおいて、組織タイプ比率がしきい値を越えれば伝送ファイバの先端の前にあるサンプリングされた組織が脂肪であるとみなされるように、しきい値組織タイプ比率が予め定められてもよい。しきい値組織タイプ比率は、例えば、式(5)と波長2における水の吸収率とを使用して、算出される。いくつかの実施形態では、しきい値組織タイプ比率は、脂肪縮小手術によって切除された組織脂肪における実験測定値によって、確立される。
【0182】
いくつかの実施形態では、組織タイプ決定の演算は、診断波長を特別に選択することによって精度をある程度失うことで大幅に単純化される。そのような1つの選択肢は、水と脂肪が同一の吸収を有する(例えば約1230nm)ように、波長1が選択される場合である。次いで、水はこれらとほとんど同一の吸収を有し、脂肪ははるかに低い吸収を有するように、波長2が選択される。
【0183】
【数13】

【0184】
例えば、波長2は、1290nm付近から選択される。波長1および2の他の可能な組み合わせは、930nmと1070nm、1730nmと1630nm、2320nmと2100nmである。これらの波長選択肢に関し、2つの波長の診断信号の式(1)は、以下のように単純化される。
【0185】
【数14】

【0186】
放射源強度はSおよびSであり、検出器は、同一になるように(例えば、エレクトロニクスを使用して)調節できる効率DおよびDを有する。そのため、2つの信号の診断比率は以下のようになる。
【0187】
【数15】

【0188】
極めて低い脂肪含有量については、診断比率は約1であり、これは、脂肪含有量が増加するにつれ増大する。しきい値組織タイプ比率は、計算によって、または脂肪縮小手術で切除された組織脂肪における実験測定値のいずれかによって、確立される。
【0189】
図31は、色光検出器によって検知された信号の処理で使用される例としての回路3100を示す。図示のように、MTCSiCO Integral True Color Sensor type TO39を色光検出器として使用する。TO39は、それぞれ異なる周波数の光に応じて光電流を生成する(それぞれのフォトダイオードのスペクトル反応特性を図33に示す)、3つのフォトダイオードを含む。増幅回路は、TO39からのそれぞれの光電流を電圧に変換するように構成された、3つのOPアンプパッケージOPA491を特徴とする。可変抵抗器が、3つの光電流「チャネル」のそれぞれに対する増幅回路の反応を選択的に調節するために設けられる。上述したように、検出器反応効率のこのような制御は、組織決定を単純化するために用いられる。
【0190】
図32もまた、上述した技術を使用した組織タイプ決定で使用するための、差動増幅器3200の一例を示す。差動増幅器は、その出力両端子の間に電圧差を生成する。この電圧差は、異なる検知された波長に対応する、2つのフォトダイオードのそれぞれによって測定された光電流の差を表す。
【0191】
組織タイプ分析のために集められる光には、例えば、反射プローブ/ドーピング光、散乱または屈折プローブ/ドーピング光、放射光(戻される光、remitted light)、誘導された蛍光もしくはリン光などの組織タイプを示すいかなる光も含まれ得ることは、言うまでもない。
【0192】
本明細書で説明した本発明の各実施形態は、外科処置に使用できる装置および方法に向けられたものである。外科処置の一例は脂肪分解である。
【0193】
本発明を、その例としての実施形態を参照しながら具体的に説明してきたが、当業者によって、添付の請求項に包含された発明の範囲から逸脱することなく形式および詳細の様々な変更がなされ得ることは、言うまでもない。
【0194】
上述した組織決定技術の1つ以上またはそのいかなる部分も、コンピューターハードウェアまたはソフトウェア、またはその両方の組み合わせにおいて実施することができる。本方法は、本明細書に説明した方法および図に従い標準的なプログラミング技術を使用して、コンピュータプログラムにおいて実現することができる。本明細書に説明した関数を実行し、かつ出力情報を生成するために、プログラムコードが入力データに適用される。出力情報は、表示モニタなどの1つ以上の出力装置に適用される。プログラムはそれぞれ、コンピュータシステムと通信するために、ハイレベルプロシージャまたはオブジェクト指向プログラミング言語で実施されてもよい。しかし、所望する場合には、プログラムはアセンブリまたは機械語で実施することができる。いずれにせよ、言語は、コンパイル型言語またはインタープリタ型言語であってよい。さらに、プログラムは、その目的のために前もってプログラムされた専用集積回路上で作動することができる。
【0195】
そのようなコンピュータプログラムはそれぞれ、汎用または専用のプログラム可能コンピュータによって読取り可能な、記憶媒体または装置(例えばROMまたは磁気ディスケット)に好ましくは保存され、それによってコンピュータを構成し、記憶媒体または装置がコンピュータによって読まれて本明細書で説明した手順を実行する際にコンピュータを動作させる。コンピュータプログラムはまた、プログラム実行の間、キャッシュまたはメインメモリ内にあってもよい。本分析方法もまた、コンピュータプログラムで構成されたコンピュータ読取り可能な記憶媒体として実現することができ、そのように構成された記憶媒体は、特定かつ予め定めたやり方でコンピュータを動作させ、本明細書で説明した機能を実行させる。
【0196】
<例1 セルライトの侵襲性処置>
様々な研究によれば、セルライトは、思春期後の女性の85〜98%に存在する。用語「セルライト」とは、皮下脂肪のある領域に見られる「オレンジピール」症候群またはキルティングのような外観のことをいう。この状態は、腿、腕および腹の上で最もよく観察される。メソセラピー、エネルギ源(レーザまたは高周波の装置等)を用いた処置、またはこれら両方の組み合わせ、および皮下の層における真皮切開術(subcision)等、非侵襲性および侵襲性の多数の処置が示唆されてきた。しかし、それらのいずれもが、セルライトのための処置法として証明されていない。
【0197】
セルライトの独特な構造的特徴は、真皮網状層および真皮乳頭層への皮下脂肪ヘルニア形成が存在することである。ほとんどの非侵襲性処置における共通の目標は、真皮内に侵入した脂肪を除去し、真皮と皮下組織の境界で脂肪のヘルニア形成を生成する結合組織を変化させることである。いくつかの研究は、メソセラピーが一時的に真皮内の脂肪ヘルニア形成を低減し、真皮と皮下組織の境界を平らにすることができることを示している。しかしな、脂肪細胞は、真皮の領域内に再度成長し、セルライトの改善は2、3か月しかもたない。
【0198】
真皮切開術は、セルライトのための侵襲性処置である。真皮切開術は、3面取り皮下注射針を皮膚表面の穿刺孔を通して挿入し、行なわれる。針の鋭い角が反復して前後に動かされ、セルライト皮膚下で操作される。これは、脂肪ヘルニア化した皮膚を下にある組織に固定している結合組織を壊すためである。これにより、下にある組織から皮膚表面が解放され、皮膚を均一で滑らかに見せる。しかし、この処置は、真皮内に侵入した脂肪ポケットを変えるものではなく、破壊された結合組織は、結局、同じように再結合するであろう。したがって、セルライトの外観はあまり改善されない。これより、この分野では、セルライトのための長期にわたる改善を結果的にもたらすセルライト処置方法が依然として求められている。
【0199】
セルライト処置への好ましい侵襲性アプローチは、真皮と皮下組織との境界にエネルギを直接送達することである。エネルギが皮膚の上層を横断しないので、以下のことが可能な積極的処置を行える可能性がある。1)真皮切開術と同様のやり方で結合組織を破壊して皮膚表面を解放する。2)真皮内の侵入脂肪細胞を熱によって変性する。3)顕著なコラーゲン成長を誘発し、皮膚を引き締めるために真皮と皮下組織の接合部における皮下瘢痕形成を均一化する。このアプローチは、現在行われている各治療と比較してセルライトの可能かつ顕著な改善をもたらす。
【0200】
上記の処置を実行する好ましい装置は、レーザのようなエネルギ源と、その片側に光エネルギを向けることができる「側方照射」光ファイバのような送達システムと、カニューレのような真皮と皮下組織との境界の下にファイバを配置し位置づける手段と、温度センサや位置センサなどの処置過程をモニタするセンサとを含む複数の部品から構成される。レーザ源および「側方照射」光ファイバ送達システムの場合には、波長とレーザ強度が、ファイバ付近への露出の程度を制御するように選択される。これにより、施術者は、深部真皮および皮下組織内に熱的損傷の領域を作ることができる。
【0201】
上記の処置を可能にする一実施形態は、レーザ源と、「側方照射」光ファイバと、真皮と皮下組織の接合部の下にファイバを向けるためのカニューレとを含む。図34は、患者の、ある領域が処置される、本発明の一実施形態を示す。光学送達装置は、装置の光放射部分が、患者の皮膚の真皮と、その下にある、図34に皮下組織として示す筋膜との境界の近位にくるように、患者の体内に挿入される。皮下組織(hypodermis)(皮下組織(hypoderm)、皮下組織(subcutaneous tissue)または浅筋膜ともいう)は、皮膚の最下層である。皮下組織で認められる細胞のタイプは、線維芽細胞、脂肪細胞およびマクロファージである。治療光は、送達装置の光放射部分から送達されて、境界の近位に位置する標的部位を加熱し、標的部位の上に位置する真皮および表皮の組織に実質的な熱的損傷を引き起こすことなく標的部位に熱的損傷を引き起こす。図34に示すように、光学送達装置は、2つの直交する方向に光を放射し、皮下脂肪ヘルニア内で標的脂肪細胞を分裂させるとともに、コラーゲンを再形成させ血管を焼灼する。
【0202】
図35は、図34と同様の装置を示す。本実施形態においては、光学送達装置は、第1の端部から第2の端部まで長手方向軸に沿って延び、かつ送達装置の光放射側面部から治療光を送達する、側方照射光ファイバを有する。この装置は、患者の組織の中を通る装置の動きを容易にする、鋭い先端を有するカニューレを有する。
【0203】
レーザは、その放射が血液または組織のいずれかに強く吸収される多くの利用可能な放射源のうちのいずれの1つであってもよい。この要求事項を満たすレーザの動作の波長は、電磁スペクトルの可視または赤外領域内であってもよい。好ましい1つのレーザ源は近赤外線レーザであり、より好ましくは1440nm付近の波長で動作するレーザ源である。この波長は、動物研究および腹部形成研究の両方において、エネルギ堆積の方向に沿って高温度勾配をもたらすことが示されている。これにより、上部の真皮および表皮温度を42℃未満に維持しながら、真皮と皮下組織の境界の50℃超の加熱が可能になり、処置部位近位の組織損傷を回避することができる。図36は、治療光が送達装置の光放射部分から送達されて、真皮と筋膜の境界の近位に位置する標的部位を加熱する、本発明の一実施形態を示す。標的部位の加熱は、これらの組織の境界の上下の所望の距離内に実質的に局所化される。境界近位の標的部位を加熱すると、標的部位よりも上に位置する上部の真皮および表皮の組織は約42℃以下の温度に維持されながら、この標的部位が約50℃以上の温度になり、標的部位内の皮下脂肪ヘルニア内の脂肪細胞を分裂させるとともに、標的部位の外側の組織に実質的な熱傷をもたらすことなくコラーゲンを再形成し血管を焼灼する。
【0204】
図37は、図36と同様の実施形態を示すが、さらに、光学送達装置の光放射部分が、拡大した標的部位にわたって治療光を送達しながら真皮境界に沿って動くように、装置が操作される様子を示している。
【0205】
レーザ強度は、その通常温度を好ましくは10度以上超えて、真皮と皮下組織の接合部を加熱するのに十分であるべきである。これは組織を生育不能にし、その結果、その組織は、次の数週間をかけて新しいコラーゲンに置換されることになるであろう。波長1440nm、直径0.6mmの「側方照射」ファイバでは、4〜20ワットの範囲の強度が好ましく、より好ましくは約8ワットである。レーザパルス持続時間および繰返し数は、連続波から短い高強度パルスまで、極めて広範囲にわたることができる。動作波長1440nmでは、パルスレーザが好ましい。なぜなら、これらは、よりよい止血をもたらすことが示されているからであり、より好ましい実施形態では、0.5ミリ秒程度のパルス持続時間と40hz程度の繰返し数が好ましい。図38は、送達装置の光放射部分からの治療光が一連の光パルスとして生成される、一実施形態を示す。約0.1ミリ秒〜約1.0ミリ秒、より好ましくは約0.5ミリ秒の例としてのパルス持続時間が、使用される。約10〜約100Hz、好ましくは約40Hzの繰返し数が、使用される。
【0206】
さらに、装置には、ファイバの遠位端の近くにサーミスタのような熱センサが取り付けられている。上記の実施形態に付加する有益なものとしては、加速度計のような運動センサがある。このような付加物により、レーザの強度を制御することができ、処置領域をより均一にすることができる。熱センサや位置センサを付加することにより、処置環境のよりよい制御が可能になり、処置の安全性が向上する。図39は、送達装置が熱センサ手段を含む、本発明の一実施形態を示す。サーミスタは、送達装置に組み入れられ、装置の近位端からずらした位置に置かれる。サーミスタは、カニューレの外部の熱伝導層と熱的連通状態にあり、これにより、標的部位の温度を感知することができる。サーミスタは、光ファイバおよび装置の近位の先端から熱的に絶縁されている。この絶縁により、ビームからのサーミスタの加熱が防止され、さらに、装置先端の加熱された細胞破片や外科手術用部位から吸引された物質からの熱作用が制限される。
【0207】
レーザ処置後の高周波超音波診断(high-frequency ultrasound imaging)により、真皮と皮下組織の境界は平らになり、著しい量の新しいコラーゲンが真皮と皮下組織の接合部の下に堆積され、真皮の領域の脂肪ポケットは線維性組織に徐々に置換されたことが、示された。図40は、皮膚の高周波超音波画像を示す。右パネルは、セルライト患者の腿の上のベースライン画像を示す。左パネルは、側方照射ファイバを備えた1440nm波長パルスレーザを使用したレーザ処置の1か月後の、同一の患者の処置部位を示す。「側方照射」光ファイバは、レーザエネルギをその軸から遠ざける方向に向ける、利用可能なファイバのうちのいずれであってもよい。1つの好ましい側方照射設計は、その側方へレーザエネルギの一部を向けさせ、残りのエネルギはその軸に沿って前方に進ませるものである。そのような側方照射構成は、皮膚の下の中隔隔壁(septa)を熱的に変化させ、その一方で、方向を変えられたエネルギは熱的に真皮と皮下組織の接合部を変性させ、真皮およびヘルニア化脂肪ポケット内のコラーゲン成長を促進する。
【0208】
上記の装置は、さらに皮膚表面を滑らかにしたり治癒中に新しいコラーゲン成長を導く一助としたりするために、メソセラピーのような現在のセルライト処置、またはマッサージ、レーザ、およびRFの組み合わせと共に使用することができる。
【0209】
<例2 最小侵襲フェイスリフトシステム>
レーザなどのエネルギ源を使用する老化防止(アンチエイジング)処置は、低強度LED処置などの極めて穏やかな処置から、より積極的な、切除を行って肌をきれいにする方法まである。これらの処置すべては、結果的にある程度の皮膚改善をもたらし、また驚くことではないが、より積極的な処置はより効果的である。たるみが多く、より大きな改善を望む患者にとっては、フェイスリフティング処置のような外科的介入が次のステップである。これらの処置は、形成外科医によって一般に施術され、広範囲な手術と長期間の回復が必要である。これらの処置は本質的に高価であり、回復期間中に合併症を起こすことが多い。現在、エネルギを制御して皮下に送達することのできる、一般のレーザ処置よりも積極的かつより侵襲性であるがフルフェイスリフトまではいかない、中間の処置が必要とされている。
【0210】
本明細書では、エネルギを制御して皮下に送達する老化防止処置装置および処置を示す。ほとんどのレーザ処置における共通の目標は、新しいコラーゲン成長を刺激することである。ほとんどの場合、これは、レーザ光線放射に皮膚の領域を暴露することにより達成される。適切に選択されれば、放射は真皮に浸透し、下にある組織を優しく加熱し、新しいコラーゲン成長をもたらすであろう反応を起こす。その結果、新しいコラーゲンの量に応じて、皮膚外観に著しい進歩を認めることができる。これらの技術は、レーザエネルギが表面に当てられることによってしばしば損傷しうる皮膚の上層を横切る必要があるため、制限されている。
【0211】
標準の外科手術フェイスリフトの場合には、上にある皮膚が最初に引き離される。下にある筋膜が外科的に変化され、皮膚が再び付着される。ここで再度、筋膜上に皮膚を繋ぎ止め、皮膚外観を良好にするために、人間は、新しいコラーゲンの成長に頼る。レーザエネルギを表面に当てることと外科手術によって顔の皮膚を剥離し結紮することとの中間アプローチは、皮膚と筋膜との間の境界にエネルギを直接送達することである。処置が上層を横切るものではないため、顕著なコラーゲン成長の誘発し皮下の瘢痕形成を均一にできる積極的処置の可能性がある。この処置が顔の注意深く選ばれた部位の上に行なわれる場合、経皮的な方法に対して、著しい改善をもたらすことができる。さらに、治癒プロセスの間に皮膚を配置し直す場合、結果は穏やかなリフティングを施したのと等価になりえる。本発明の装置によって、施術者はこの中間的な処置を行なうことができる。
【0212】
本装置は、レーザのようなエネルギ源と、光ファイバのような送達システムと、カニューレのような真皮と筋膜との境界にファイバを位置させる手段と、好ましくは、送達装置の温度や位置/速度のような処置過程をモニタするセンサと、を含む複数の部品から構成される。レーザ源および光ファイバ送達システムの場合には、波長とレーザ強度は、標的部位に送達されるエネルギの程度を制御するように選択される。これにより、施術者が、広範囲な新しいコラーゲン成長の領域を作成し、皮膚の外観を良くするように配置され方向づけられ瘢痕の領域を均一にすることが可能になる。以下において、提案した装置を、好ましい実施形態としてレーザおよび光ファイバ送達システムを使用して、さらに詳細に説明する。
【0213】
好ましい実施形態においては、本処置は、レーザ源と、光ファイバと、真皮の下で真皮筋膜境界に沿ってファイバをさし向けるためのカニューレとを利用する。さらに、装置には、ファイバの遠位端の近くに位置するサーミスタのような熱センサと、加速度計のような位置センサおよび運動センサとが取り付けられる。レーザは、その放射が血液または組織のいずれかで強く吸収される、多くの利用可能な放射源のうちのいずれの1つであってもよい。この要求事項を満たすレーザの動作の波長は、電磁スペクトルの可視または赤外領域である。好ましい1つのレーザ源は近赤外線レーザであり、より好ましくは1440nm付近の波長で動作するレーザ源である。この波長は、動物研究および腹部形成研究の両方において、極めて局所化した標的領域の損傷を(数ファイバ直径)もたらすことが示されている。組織学的検査において、真皮と筋膜との間にある脂肪組織をファイバが通過すると、損傷を受けた組織の通路になることが確認された。この通路内の脂肪細胞はその後取り除かれ、線維性組織と置換された。真皮境界の近くの暴露は、結果として、さらに激しいコラーゲン反応を引き起こした。レーザ強度は、組織の通常温度の6度を超えて、好ましくは約10度を超えて、組織を加熱するのに十分である。これは組織を生育不能にし、その組織はその後数週間で壊死するであろう。1440nm、直径0.6mmの伝送ファイバでは、4〜20ワットの範囲の強度が好ましく、より好ましくは約12ワットである。レーザパルス持続時間および繰返し数は、連続波から短い高強度パルスまで、極めて広範囲にわたることができる。動作波長1440nmでは、パルスレーザが好ましい。なぜなら、これらは、よりよい止血をもたらすことが示されているからであり、より好ましい実施形態では、0.5ミリ秒程度のパルス持続時間と40hz程度の繰返し数が好ましい。上述の実施形態に付加する有益なものとしては、加速度計のような運動センサがある。このような付加物により、レーザの強度を制御することができ、処置領域をより均一にすることができる。熱センサを付加することにより、処置環境の制御が可能になり、処置の安全性が向上する。
【0214】
別の実施形態では、上記装置は、リフティング糸または包帯などの皮膚再配置方法と共に使用して、フェイスリフト処置と同様の効果を達成することができる。新しい線維性組織が皮膚の下で発達している間に、皮膚は所望の位置に維持される。十分に新しい成長と軽度の瘢痕が起こると、組織は、この新しい線維の成長に取って代わられるであろう。さらに別の実施形態では、ハンドピース(ファイバとカニューレ)が皮膚の下でゆっくり引かれたり押されたりして、皮下の瘢痕ラインを形成する。速度が分かっており(加速度計)、レーザパワーが直接制御下にあるため、通過するリニアセンチメートル当たりの正確なワットの線量を送達することができる。このようにして、所望のエンドポイント温度に合わせた均一な瘢痕を生成することができる。この考えをさらに発展させたものが、瘢痕ラインに沿ってパワーを調整して、「逆とげ(barbs)」、すなわち、組織損傷および後のコラーゲンリモデリングにより直径が大きくなっている領域、を形成するということである。これらの逆とげは支えとして作用し、瘢痕ラインをしっかり固定し、より効果的に組織を適所に保持する。可変性損傷の領域も、異なる浸透深さの異なる波長で生成することができる。
【0215】
<例3 最小侵襲等温皮膚療法>
レーザに基づく美容整形処置では、組織引き締めを最適化し、コラーゲンリモデリングを開始し、安全に、最高温度を超過しないようにするために、エンドポイント(端点)温度が極めて重要である。いかなる放射源(レーザ、RF、超音波、マイクロ波)についても、エンドポイント温度は極めて重要である。いくつかの臨床研究により、数分間の程度で温度がおよそ47℃を越えると、皮膚は壊死するであろうことが、実証されている。また、大量の皮下組織が限界温度を超えて加熱された場合には、固い瘢痕組織が生成され得る。送達装置またはカニューレに温度監視装置を加えることを上述したが、以下では、診療に用いられた装置の結果を詳述する。
【0216】
この考え方は、レーザに基づく処置のために、レーザパワーを伝送する光ファイバを、真皮の下の最低限1または複数の切開部位を通して脂肪層面を貫通させるというものである。レーザパワーは、脂肪細胞を分解させる十分なパワーを送達するように設計されており、ほとんどのエネルギは最終的には熱に変換される。まず、この熱はファイバ先端の直近に局所化されるが、カニューレが組織を通して往復運動するにつれ、熱は広面積(〜20〜200cm)にわたって分配される。時間がたつにつれ、高温の領域はより冷たい領域に熱を伝え、温度分布はより均一になる。これは皮膚の表面に焦点を置いたサーマルカメラで確認されている。サーマルカメラは、下に局在する温度が30℃の差分(delta)を有し得るときにも、比較的均一な表面温度(±5℃)を捉える。温度監視手段として装置自体に組込んだサーミスタを使用して、設定処置温度よりも低い温度のもと、処置中のそれらの領域へのレーザエネルギの堆積を調節することができる。エンドポイント、すなわち皮下の温度、が一定に保たれるので、技術(速度、オーバーラップ)、レーザパワーおよび波長などの変数は制御される。そうすることによって、表面温度と深部組織温度との差が維持され、組織を損傷する最高温度はすべて回避される。
【0217】
サーミスタを介してレーザを制御する方法は簡単である。感知温度が、ユーザが調整可能な設定点よりも上にある場合には、レーザは停止し、これにより組織が保護されて結果が最適化される。熱応答時間が1ミリ秒に近い理想的なプローブについて、組織が設定値未満である場合には、レーザはエネルギを単に堆積し、すぐに、レーザパワー、波長や技術とはほとんど無関係に均一な温度分布が得られるであろう。実際に、カニューレの速度はおよそ10cm/sであり、応答時間は250ミリ秒である。したがって、カニューレが読み取り値を送達する前に、カニューレは2.5cm進んでいるであろう。これは明らかに位相がずれている。全てのIDを最小に維持し、かつ熱応答時間を短くしておくために、温度監視装置は小さいものである必要がある。サーミスタを、その生物学的適合部品、良好な精度と安定性、良好な動作範囲、信号処理の容易さおよび寸法が小さいことから、選択した。最適化された設計では、サーミスタはカニューレから絶縁され、周囲に対しては好適な熱接触を有する。しかし、カニューレのIDを最小限にするために、サーミスタを、機械加工したスロット内のカニューレの壁に挿入した。カニューレとサーミスタの組み合わせを、線維組織内をめぐる外科手術による摩滅からサーミスタを保護するために、ヒートシュリンク被覆で保護した。これらの2つの構成要素は、サーミスタの応答を遅くする(タウ(τ)=250ミリ秒)。カニューレとサーミスタおよび伝導性の保護層との間に絶縁層を使用する設計が好ましい。カニューレにサーミスタを搭載することの別の利点は、カニューレ内に滑り込んだファイバ先端を検知できることである。サーミスタがなければ、カニューレは過熱し、ファイバを破壊し、組織に対する有害な影響を引き起こすであろう。
【0218】
サーミスタはその問題を検出し、自動的に、レーザをシャットオフすることができる。ファイバが、先端の近くの温度感知素子の位置をはるかに過ぎてカニューレ内に著しく引っ込んでいる場合、レーザはすぐにカニューレを過熱し、サーミスタへの接続回路を断線し、また、故障を引き起こすであろう。しかし、これらの設計上の欠点にもかかわらず、応答が最新の数回の読み取り値に関して平均化され、カニューレ動作が活発なまま、外科手術フィールドにわたって〜10cm/sで前後に移動している場合には、むしろ組織塊温度を平均したものとなる。これは、データロッガーを使用して組織塊温度を記録し、同時にサーマルカメラで表面をモニタすることにより、臨床設定において実証された。センサ応答時間とカニューレの速度のミスマッチにもかかわらず、温度プロフィールは驚くほど均一であり、全処置領域にわたって等温の領域を作り出す。この効果は、一部には熱拡散によるものであるが、また、長期にわたって熱を保持する脂肪細胞の能力、すなわち熱容量によるものでもある。
【0219】
現在のレーザソフトウェアによって、ユーザは、その上の温度ではレーザが照射しない、処置温度限界しきい値を選択することができる。サーミスタ温度フィードバックは、設定値以上の値を読み取っている間はレーザ出力を禁止する。温度制御回路が「バングーバング(bang-bang)」制御(ヒストリシス制御)で基本的に作用するのに対して、フィードバック信号は、調整可能な移動平均をこれに適用し、フィードバック信号応答時間が約0.1〜10秒まで変化できるようにする。このフィルタ設定により、温度コントローラは温度変化に対して素早く(0.1秒)、または10秒かけてゆっくりと、応答できるようになる。平均1秒が、最良の制御をもたらすようである。ある領域に対する照射が適切な照射線量に近づいてくると、レーザは周期的に照射を止め、その領域にはより少ないエネルギを堆積し、暴露不足になった(より低い温度の)領域にはより多くのエネルギを堆積する。平均パワーは、レーザパワー設定値未満になるだけであろう。規制上のハードルを克服することができる場合には、自動モードで最初にレーザをフルパワー(スタートと設定点の間の最大の温度差)で動作させ、設定点に近づくにつれてパワーを絞り、最終的にレーザを全て遮断することができる。
【0220】
加速度計は、依然として、この等温技術を使用する任意のシステムにおいて役割を果たす。例えば、カニューレが止まり、レーザが依然として高パワーを出している場合、ファイバの先端の組織温度は急速に上昇するであろう。ファイバ先端に隣接しているが先端とは一致していないサーミスタによって温度上昇が検知されるまでは、受け入れがたいほどの長い時間かかるであろう。したがって、このシステムがうまく働くためには、ファイバが動いていることが重要である。また、ストロークの方向をモニタして保持することも可能である。ファイバ先端に対してサーミスタをこのように配置することにより、わずかな熱のオフセットが生じるであろう。加熱された組織にファイバ先端が通るとき(ファイバが組織内に押して入っている)に、最も高いオフセット温度が読み取られ、サーミスタが組織から引かれるときにより低いオフセット温度が読み取られる。カニューレ動きの方向と振幅をモニタすることにより(両方とも加速度計の性能内において行われる)、さらなるレベルの調整を行うことができるであろう。
【0221】
加速度計フィードバックが、温度フィードバックフィルタの時定数(タウ(τ))を動的に設定するために使用される、一実施形態を示す。理想的な時定数は、カニューレ移動速度に正比例する。このアプローチの利点は、温度コントローラが一定のフィルタタウ対ストローク速度(ストローク速度に対する一定のフィルタ時定数)を有するように、通常の外科処置のストローク速度変化を積極的に補正することができることである。言いかえれば、我々は、サーミスタ位相遅れをカニューレ移動速度の関数として一定に保つ。これは、実際にレーザによる温度堆積の均一性を悪化させ得る、極端な位相ずれの挙動を防ぐ(例えば、低温の領域にある間に、180度の位相ずれが実際にレーザを禁止し、高温の領域では可能にする)。さらに、加速度計速度フィードバックがバイポーラであるため、温度オフセットに対するカニューレ方向を管理することができる。
【0222】
サーミスタ制御は、過熱による組織壊死の回避を単に支援するだけでなく、レーザエネルギの送達を均一になるように調節して一貫した処置の有効性をも達成する。図41の左側のパネルは、組織内のサーミスタ読み取り値と皮膚表面温度との相関を示す。皮膚表面温度はそれほど上昇せずに、設定処置温度(この場合は40℃)には素早く到達した。表面温度エンドポイントに到達するまで、レーザエネルギの送達はサーミスタを調節しながら継続された。図41の右側パネルは、処置中の各温度の頻度をカウントしたものである。この図は、処置時間の80%において組織が39〜40℃の設定温度に加熱されたことを示した。皮下がこのように均一に加熱されることにより、医者は全処置領域に対して一貫した有効性を達成することができる。
【0223】
次の各図は、このようなシステムの能力を実証する。図42の2つのケースは、温度フィードバックがある場合とない場合において、同一のレーザパワーで行われた同一の処置を示す。上側のパネルでは、サーミスタフィードバックは、組織内の45℃(この設定点はユーザによって調整可能である)を超えるいかなる温度上昇も防止する。対照として、下側のパネルは、そのような制御のない(68℃という高い設定点が選択された)同一の処置を示す。
【0224】
高いパワーが使用される(39〜46W=高速処置)場合、過度に高温(>70℃)となる可能性がある(図43)。身体は小さい領域であれば過剰熱に耐えられるかもしれないが、医者はそれが望ましいとは考えない。しかし、望ましくない効果をもたらし得るこれらの高パワー源でさえも、サーミスタは、組織温度を達成する放射源を驚くほど正確に管理し、安全性を保証して、臨床結果を最適化することができる。最適化されたシステムは、設定点を素早く達成し、設定点をできるだけ効率的に維持するために、高パワーを使用する。
【0225】
図44は、高パワーでは制御せず低パワーで制御を行う、2つのケースを示す。一方では、局所的な第2度熱傷が生じ、レーザエネルギは皮下へはうまく分布しなかった。他方は、やけどの虞のない良好な均一な分布を示した。これでは、完全に異なる技術を持った異なる医者ということになる。局在性のやけどはサーミスタフィードバックで防ぐことができたかもしれない。
【0226】
この考えをさらに深めると、最も高いパワーシステムさえもその安全性をチェック下に置いてより一貫した結果が得られるというだけでなく、処置の目標に合わせた等温の設定点に到達するように処置を設計することもできるということになる。例えば、図45において、赤外線画像は、上腕への処置の表面温度を示しており、黄緑色で示す3つのゾーンは、極めて均一な温度プロフィールを有する。レーザカニューレが、画像の上部、FLIRのRの右に入っていることが分かる。この画像は、45℃の設定点が選択された上記第2のグラフに一致させることができる。3つのゾーンは、すべて設定点45℃で処置された。しかし、ここで説明した本システムの性能により、外科手術ゾーンのそれぞれを異なる温度で処置することができる。
【0227】
図46に描かれた仮の顔および/または首の処置の場合には、外科手術用マーカーで等温ゾーンを指定し、外科手術計画の一部としてマップを生成することができる。組織が解剖学的/生理学的/経験的に最高に反応する場合、引き締め効果が調整され、適用される。未処置組織との境界付近ではより低い温度で、処置領域の核心部分ではより高温度で、いくつかの領域を処置することにより、この引き締め効果は恐らく特徴づけられる。組織収縮に最適化された均一な温度を適用することによって、意図した軸上で組織を引っぱるように、張筋路(tensor path)が構築され、単なるランダムな加熱ではなく、一方に片寄らせた収縮により、結果を新しいレベルに制御することができる。
【0228】
引き締めと脂肪除去が外科手術の目標である皮膚療法の開発は、組織を臨床上の設定点に正確に加熱することができるシステムから大いに利益を得るであろう。外科処置の開始にあたって等温の外科手術ゾーンを組み入れることにより、外科医は、今日利用可能なものを越えて結果を最適化できるようになる。
【0229】
カニューレが加熱された組織を通る際にレーザを禁止することにより、処置の速度が必然的に遅くなると、しばしば考えられている。これは、レーザピークの禁止されていないパワーが一定である場合にのみ、当てはまる。本明細書に説明した温度制御システムを使用することによって、より高いパワーのレーザを使用してエネルギを印加することは可能であり、またそれは安全である。温度制御システムと共に、より高いパワーのレーザを安全に使用することができるので、処置回数が必然的に減少するであろう。この効果は、カニューレが既に加熱された組織を通る際にレーザが禁止(温度調節)されることのみによって、制限される。結局、温度調節によって処置はわずかに遅くなるものの、レーザパワーが増すために処置がより高速になり、より高いパワーのレーザが使用できる。この最終結果として得られるものが、より高速かつより均一に処置を行うレーザシステムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のセルライトを処置する方法であって、
前記患者の真皮と皮下組織の境界の下側に光伝送装置の光放射部が位置するように、前記患者に前記光伝送装置を挿入する工程と、
前記境界の近位に位置する標的部位を加熱して、当該標的部位よりも上側に位置する真皮および表皮の組織には実質的な熱的損傷を引き起こさずに、当該標的部位内に熱的損傷を引き起こすように、前記光伝送装置の前記光放射部から治療光を伝送する工程とを備えた、セルライト処置方法。
【請求項2】
請求項1において、前記境界の近位に位置する標的部位を加熱するように、前記光伝送装置の前記光放射部から治療光を伝送する前記工程が、前記真皮の前記加熱を前記境界よりも上側の所望の距離内に実質的に局所化する工程を有する、セルライト処置方法。
【請求項3】
請求項2において、前記所望の距離が約0.5mm以下である、セルライト処置方法。
【請求項4】
請求項3において、前記所望の距離が約1.0mm以下である、セルライト処置方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、
前記標的部位よりも上側に位置する前記上側の真皮および表皮の組織の温度を約42℃以下に維持しながら、前記境界の近位の前記標的部位を約50℃以上の温度に加熱する工程を備えた、セルライト処置方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項において、前記標的部位は前記境界を通って前記真皮まで延びる少なくとも1つの脂肪細胞を含み、前記熱的損傷は前記脂肪細胞の熱変性を含む、セルライト処置方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項において、前記標的部位は下層の皮下組織に前記真皮を結合する結合組織を含み、前記熱的損傷は該結合組織に対する損傷を含む、セルライト処置方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項において、さらに、
前記標的部位にカニューレの先端を挿入する工程と、
前記標的部位内の組織に機械的損傷を引き起こすように、前記標的部位内で前記カニューレの前記先端を移動させる工程とを備えた、セルライト処置方法。
【請求項9】
請求項8において、前記標的部位は、下層の皮下組織に前記真皮を結合する結合組織を含み、前記機械的損傷は、当該結合組織に対する損傷を含む、セルライト処置方法。
【請求項10】
請求項8または9において、前記光伝送装置は光ファイバであり、この光ファイバは、少なくともその一部が前記カニューレ内に収容されている、セルライト処置方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項において、前記光伝送装置は側方照射光ファイバであり、この側方照射光ファイバは、長手方向軸に沿って第1の端部から第2の端部まで延びており、前記光伝送装置の前記光放射部から治療光を伝送する前記工程は、
前記光ファイバの前記第1の端部で治療光を受光する工程と、
前記光ファイバの前記第2の端部に前記治療光を伝送する工程と、
前記光ファイバの前記長手方向軸を横切る方向に沿って前記光ファイバの前記第2の端部から前記治療光の第1の部分を放射する工程とを備えた、セルライト処置方法。
【請求項12】
請求項11において、前記光伝送装置の前記光放射部から治療光を伝送する前記工程が、さらに、
前記光ファイバの前記長手方向軸に実質的に平行な方向に沿って前記光ファイバの前記第2の端部から前記治療光の第2の部分を放射する工程を備えた、セルライト処置方法。
【請求項13】
請求項12において、さらに、
前記治療光の前記第1の部分を前記境界に向ける工程と、
前記治療光の前記第2の部分を前記皮下組織に向ける工程とを備えた、セルライト処置方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項において、前記治療光はレーザ光である、セルライト処置方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項において、前記治療光は、可視または近赤外の波長を有する光である、セルライト処置方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項において、前記処置光は約1440nmの波長を有する、セルライト処置方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項において、前記伝送される治療光は、4W〜20Wの範囲の総パワーを有する、セルライト処置方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項において、前記伝送される治療光は、約8Wの総パワーを有する、セルライト処置方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項において、前記伝送される治療光は、前記標的部位において200W/cm〜20,000W/cmの範囲のパワー密度を有する、セルライト処置方法。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項において、前記光伝送装置の前記光放射部から治療光を伝送する前記工程は、
一連の光パルスを伝送する工程を備えた、セルライト処置方法。
【請求項21】
請求項に21おいて、前記一連のパルスは、持続時間が約0.5msであるパルスを含む、セルライト処置方法。
【請求項22】
請求項20または21において、前記一連のパルスは、持続時間が約0.1ms〜約1.0msの範囲であるパルスを含む、セルライト処置方法。
【請求項23】
請求項20、21または22において、前記一連のパルスは、約40Hzの繰返し数を有する、セルライト処置方法。
【請求項24】
請求項20、21、22または23において、前記一連のパルスは、約10〜約100Hzの範囲の繰返し数を有する、セルライト処置方法。
【請求項25】
請求項1から25のいずれか一項において、前記光伝送装置は少なくとも1つのセンサを有し、さらに、
前記少なくとも1つのセンサを用いて、前記光伝送装置または前記標的部位の少なくとも1つの特性を示す信号を生成する工程と、
前記センサ信号に基づいて治療光の前記伝送を制御する工程とを備えた、セルライト処置方法。
【請求項26】
請求項25において、前記光伝送装置または前記標的部位の前記特性は、前記光伝送装置の位置、前記光伝送装置の動き、前記光伝送装置の温度、前記光伝送装置付近の組織のタイプ、前記光伝送装置によって伝送されるエネルギ量、および前記標的部位内の組織の温度から成るリストから選択される少なくとも1つを含む、セルライト処置方法。
【請求項27】
請求項25または26において、前記センサは、サーミスタ、加速度計およびカラーセンサから成るリストから選択される少なくとも1つを含む、セルライト処置方法。
【請求項28】
請求項25、26、または27において、さらに、
前記光伝送装置または前記標的部位の少なくとも1つの特性を示す信号に基づき表示を生成する工程を備えた、セルライト処置方法。
【請求項29】
請求項28において、前記表示は、処置を受けている前記患者の部位の温度マップを含む、セルライト処置方法。
【請求項30】
患者のセルライトを処置する装置であって、
光放射部を有する光伝送装置であって、前記患者の真皮と皮下組織の境界の下側に当該光伝送装置の前記光放射部が位置するように、前記光放射部は前記患者に挿入されるものである、光伝送装置と、
前記境界の近位に位置する標的部位を加熱して、当該標的部位よりも上側に位置する真皮および表皮の組織に実質的な熱的損傷を引き起こさずに、当該標的部位内に熱的損傷を引き起こすように、前記光伝送装置の前記光放射部からの治療光の伝送を制御するコントローラとを備えた、セルライト処置装置。
【請求項31】
患者の顔または首の上または近くに位置する皮膚の領域を処置する方法であって、
前記患者の前記皮膚の真皮と下層の筋膜の境界の近くに光伝送装置の光放射部が位置するように、前記患者に前記光伝送装置を挿入する工程と、
前記境界の近位に位置する標的部位を加熱して、当該標的部位よりも上側に位置する真皮および表皮の組織には実質的な熱的損傷を引き起こさずに、当該標的部位内に熱的損傷を引き起こすように、前記光伝送装置の前記光放射部から治療光を伝送する工程とを備えた、皮膚領域の処置方法。
【請求項32】
請求項31において、前記境界の近位に位置する標的部位を加熱するように、前記光伝送装置の前記光放射部から治療光を伝送する前記工程が、前記真皮の前記加熱を前記境界よりも上側の所望の距離内に実質的に局所化する工程を有する、皮膚領域の処置方法。
【請求項33】
請求項32において、前記所望の距離が約0.5mm以下である、皮膚領域の処置方法。
【請求項34】
請求項3において、前記所望の距離が約1.0mm以下である、皮膚領域の処置方法。
【請求項35】
請求項1から34のいずれか一項において、
前記標的部位よりも上側に位置する前記上側の真皮および表皮の組織の温度を約42℃以下に維持しながら、前記境界の近位の前記標的部位を約50℃以上の温度に加熱する工程を備えた、皮膚領域の処置方法。
【請求項36】
請求項1から35のいずれか一項において、前記標的部位は前記境界に沿って延び、前記標的部位を加熱するように、前記光伝送装置の前記光放射部から治療光を伝送する前記工程が、前記治療光を伝送しながら、前記境界に沿って前記光伝送装置の前記光放射部を移動させる工程を有する、皮膚領域の処置方法。
【請求項37】
請求項36において、さらに、
前記標的部位内に熱的損傷の局所的なサブ領域を形成するように、前記境界に沿って前記光伝送装置の前記光放射部を移動させながら、前記治療光の前記伝送を調整する工程を備えた、皮膚領域の処置方法。
【請求項38】
請求項1から37のいずれか一項において、さらに、
前記標的部位にカニューレの先端を挿入する工程と、
前記標的部位内の組織に機械的損傷を引き起こすように、前記標的部位内で前記カニューレの前記先端を移動させる工程とを備えた、皮膚領域の処置方法。
【請求項39】
請求項38において、前記標的部位は、下層の筋膜に前記真皮を結合する結合組織を含み、前記機械的損傷は、当該結合組織に対する損傷を含む、皮膚領域の処置方法。
【請求項40】
請求項38または39において、前記光伝送装置は光ファイバであり、この光ファイバは、少なくともその一部が前記カニューレ内に収容されている、皮膚領域の処置方法。
【請求項41】
請求項1から40のいずれか一項において、前記光伝送装置は側方照射光ファイバであり、この側方照射光ファイバは、長手方向軸に沿って第1の端部から第2の端部まで延びており、前記光伝送装置の前記光放射部から治療光を伝送する前記工程は、
前記光ファイバの前記第1の端部で治療光を受光する工程と、
前記光ファイバの前記第2の端部に前記治療光を伝送する工程と、
前記光ファイバの前記長手方向軸を横切る方向に沿って前記光ファイバの前記第2の端部から前記治療光の第1の部分を放射する工程とを備えた、皮膚領域の処置方法。
【請求項42】
請求項41において、前記光伝送装置の前記光放射部分から治療光を伝送する前記工程が、さらに、
前記光ファイバの前記長手方向軸に実質的に平行な方向に沿って前記光ファイバの前記第2の端部から前記治療光の第2の部分を放射する工程を備えた、皮膚領域の処置方法。
【請求項43】
請求項12において、さらに、
前記治療光の前記第1の部分を前記境界に向ける工程と、
前記治療光の前記第2の部分を前記下層の筋膜に向ける工程とを備えた、皮膚領域の処置方法。
【請求項44】
請求項1から43のいずれか一項において、前記治療光はレーザ光である、皮膚領域の処置方法。
【請求項45】
請求項1から44のいずれか一項において、前記治療光は、可視または近赤外の波長を有する光である、皮膚領域の処置方法。
【請求項46】
請求項1から45のいずれか一項において、前記処置光は約1440nmの波長を有する、皮膚領域の処置方法。
【請求項47】
請求項1から46のいずれか一項において、前記伝送される治療光は、4W〜20Wの範囲の総パワーを有する、皮膚領域の処置方法。
【請求項48】
請求項1から47のいずれか一項において、前記伝送される治療光は、約8Wの総パワーを有する、皮膚領域の処置方法。
【請求項49】
請求項1から48のいずれか一項において、前記伝送される治療光は、前記標的部位において200W/cm〜20,000W/cmの範囲のパワー密度を有する、皮膚領域の処置方法。
【請求項50】
請求項1から49のいずれか一項において、前記光伝送装置の前記光放射部から治療光を伝送する前記工程は、
一連の光パルスを伝送する工程を備えた、皮膚領域の処置方法。
【請求項51】
請求項51において、前記一連のパルスは、持続時間が約0.5msであるパルスを含む、皮膚領域の処置方法。
【請求項52】
請求項50または51において、前記一連のパルスは、持続時間が約0.1ms〜約1.0msの範囲であるパルスを含む、皮膚領域の処置方法。
【請求項53】
請求項50、51または52において、前記一連のパルスは、約40Hzの繰返し数を有する、皮膚領域の処置方法。
【請求項54】
請求項50、51、52または53において、前記一連のパルスは、約10〜約100Hzの範囲の繰返し数を有する、皮膚領域の処置方法。
【請求項55】
請求項1から54のいずれか一項において、前記光伝送装置は少なくとも1つのセンサを含み、
前記少なくとも1つのセンサを用いて、前記光伝送装置または前記標的部位の少なくとも1つの特性を示す信号を生成する工程と、
前記センサ信号に基づいて治療光の前記伝送を制御する工程とを備えた、皮膚領域の処置方法。
【請求項56】
請求項55において、前記光伝送装置または前記標的部位の前記特性は、前記光伝送装置の位置、前記光伝送装置の動き、前記光伝送装置の温度、前記光伝送装置付近の組織のタイプ、前記光伝送装置によって伝送されるエネルギ量、および前記標的部位内の組織の温度、から成るリストから選択される少なくとも1つを含む、皮膚領域の処置方法。
【請求項57】
請求項55または56において、前記センサは、サーミスタ、加速度計およびカラーセンサから成るリストから選択される少なくとも1つを含む、皮膚領域の処置方法。
【請求項58】
請求項55、56、または57において、さらに、
前記光伝送装置または前記標的部位の少なくとも1つの特性を示す信号に基づき表示を生成する工程を備えた、皮膚領域の処置方法。
【請求項59】
請求項58において、前記表示は、処置を受けている前記患者の部位の温度マップを含む、皮膚領域の処置方法。
【請求項60】
患者の顔または首の上または近くに位置する皮膚の領域を処置する装置であって、
光放射部を有する光伝送装置であって、前記患者の前記皮膚の真皮と下層の筋膜の境界の近くに当該光伝送装置の前記光放射部が位置するように、前記光放射部は前記患者に挿入されるものである、光伝送装置と、
前記境界の近位に位置する標的部位を加熱して、当該標的部位よりも上側に位置する真皮および表皮の組織に実質的な熱的損傷を引き起こさずに、当該標的部位内に熱的損傷を引き起こすように、前記光伝送装置の前記光放射部からの治療光の伝送を制御するコントローラとを備えた、皮膚領域の処置装置。
【請求項61】
請求項60において、さらに、
温度マップのディスプレイを備えた、皮膚領域の処置装置。
【請求項62】
中空のカニューレを有するハンドピースであって、このカニューレは、当該ハンドピースから遠位端に延び、その外表面には凹部が形成されている、ハンドピースと、
前記カニューレに沿って前記遠位端まで少なくとも部分的に延びた光ファイバであって、前記カニューレの前記遠位端の近位に位置する処置領域に治療光放射源から治療光を伝送する、光ファイバと、
前記凹部内に少なくとも部分的に位置づけられた温度センサとを備えた、熱的外科手術用装置。
【請求項63】
請求項62において、さらに、
前記サーミスタと前記カニューレの前記外表面の間に配置された、非熱伝導性の内側材料層を備えた、熱的外科手術用装置。
【請求項64】
請求項63において、前記非熱伝導性の材料層は、前記カニューレの前記外表面から前記温度センサを実質的に断熱する、熱的外科手術用装置。
【請求項65】
請求項64において、前記断熱材は、プラスチック、ポリマ、ポリスチレンおよび接着剤から成るリストから選択される少なくとも1つの材料である、熱的外科手術用装置。
【請求項66】
請求項1から65のいずれか一項において、さらに、
前記凹部内に前記温度センサを固定するように、前記カニューレの前記外表面上に配置された外側材料層を備えた、熱的外科手術用装置。
【請求項67】
請求項66において、前記外側材料層は、前記凹部内に前記温度センサを固定するように前記カニューレの前記外表面の少なくとも一部の周囲に配置されたスリーブである、熱的外科手術用装置。
【請求項68】
請求項66または67において、前記外側材料層は熱伝導性材料である、外科手術用装置。
【請求項69】
請求項67において、前記熱伝導性材料は、金属、金属箔、熱伝導性ポリマ、熱伝導性プラスチックおよび熱伝導性シリコンから成るリストから選択される少なくとも1つの材料である、熱的外科手術用装置。
【請求項70】
請求項66から69のいずれか一項において、前記外側材料層は、前記サーミスタと前記カニューレの前記外表面の間に配置された内側材料層よりも高い熱伝導率を有する、熱的外科手術用装置。
【請求項71】
請求項1から70のいずれか一項において、前記温度センサはサーミスタである、熱的外科手術用装置。
【請求項72】
請求項71において、前記サーミスタは、約1mm以下の特徴的な寸法を有する、熱的外科手術用装置。
【請求項73】
請求項71または72において、前記サーミスタは、約250ms以下の応答時間を有する、熱的外科手術用装置。
【請求項74】
請求項1から73のいずれか一項において、さらに、
前記温度センサと通信するプロセッサであって、前記処置領域の温度を示す前記センサからの信号を受信し、前記治療光放射源からの前記光ファイバを通る治療光の前記伝送を制御する、プロセッサを備えた、熱的外科手術用装置。
【請求項75】
請求項74において、前記ハンドピースは、前記プロセッサと通信する少なくとも1つの追加センサを有し、
前記追加センサは、前記ハンドピースまたは前記処置領域の少なくとも1つの特性を示す信号を生成するものであり、
前記プロセッサは、前記センサ信号に基づいて前記処置領域への治療光の前記伝送を制御するものである、熱的外科手術用装置。
【請求項76】
請求項75において、前記ハンドピースまたは前記標的部位の前記特性は、前記ハンドピースの位置、前記ハンドピースの動き、前記ハンドピースの温度、前記カニューレの前記遠位端付近の組織のタイプ、前記標的部位に伝送されるエネルギ量、および前記標的部位内の組織の温度から成るリストから選択される少なくとも1つを含む、熱的外科手術用装置。
【請求項77】
請求項75または76において、前記センサは、サーミスタ、慣性センサ、加速度計、ジャイロスコープおよびカラーセンサから成るリストから選択される少なくとも1つを含む、熱的外科手術用装置。
【請求項78】
請求項1から77のいずれか一項において、前記カニューレの前記遠位端は少なくとも1つの吸引ポートを含む、熱的外科手術用装置。
【請求項79】
請求項1から78のいずれか一項において、前記凹部は前記カニューレ内のスロットである、熱的外科手術用装置。
【請求項80】
請求項1から79のいずれか一項において、前記温度センサの実質的に全体が、前記凹部内に収容される、熱的外科手術用装置。
【請求項81】
請求項1から80のいずれか一項において、前記光ファイバの少なくとも一部は、前記中空のカニューレ内に位置する、熱的外科手術用装置。
【請求項82】
請求項1から81のいずれか一項において、前記中空のカニューレは吸引用カニューレであり、さらに、
前記光ファイバの少なくとも一部を収容する処置カニューレを備えた、熱的外科手術用装置。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【公表番号】特表2012−519554(P2012−519554A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553147(P2011−553147)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/026415
【国際公開番号】WO2010/102246
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(501033084)サイノシュア・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】