説明

熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、光学部材ならびに光半導体、およびそれらの製造方法

【課題】耐光性に優れた硬化物を得ることができる、光学部材に適した熱硬化性樹脂組成物;耐光性に優れた硬化物ならびに光学部材;および、光取り出し効率が低下しにくい光半導体を提供する。
【解決手段】メタクリル系重合体(A)20〜50質量%、シクロヘキシルメタクリレート(B)45〜75質量%、及び1分子中に2個以上の二重結合を有する(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)5〜15質量%を含む樹脂成分100質量部に対し、10時間半減期温度が110℃以下であり、かつ25℃にて液状である熱重合開始剤(D)0.5〜10質量部を含む熱硬化性樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材に適した熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、硬化物からなる光学部材ならびに硬化物で封止された光半導体、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)等の光半導体は、長寿命で省エネルギーである、小型化、軽量化が可能である、という特徴を有するため、様々な光源として実用化されている。今後、蛍光灯等の照明の代替品として、さらなる需要が期待されている。
LEDは、発光素子をほこり、ごみ、衝撃等から保護する目的で、発光素子を透明封止材によって封止した構造を有する。この透明封止材は、発光素子と空気との間の屈折率を緩和し、光取り出し効率を上昇させる役割も担うため、透明封止材の屈折率、透過率等の物性がLEDの外部量子効率に大きく影響する。また、発光素子からは、高エネルギーの光が発せられるため、これらの影響を大きく受ける透明封止材の寿命が、LED自体の寿命になることがある。そのため、透明封止材には光によって変色しないこと、すなわち高い耐光性が要求される。
【0003】
透明封止材としては、エポキシ系封止材、シリコーン系封止材、メタクリル系封止材等が知られている。
エポキシ系封止材は、耐熱性はよいものの、短波長領域の光によって、着色しやすい。その結果、LEDの光取り出し効率が低下する。
シリコーン系封止材のうちジメチルシリコーン系封止材は、耐熱性、耐光性はよいものの、屈折率が低いため、光取り出し効率が低い。最近では、高屈折率タイプのシリコーン系封止材が開発されているが、ジメチルシリコーン系封止材に比べ、耐熱性、耐光性は低下する。また、シリコーン系封止材は、タック性を有するため、表面にほこり等が付着しやすい。さらに、シリコーン系封止材は、他素材との接着性が悪い。
【0004】
透明封止材等の光学部材に用いられるメタクリル系熱硬化性樹脂組成物としては、例えば、メタクリル系重合体と多官能メタクリレート(ネオペンチルグリコールジメタクリレート等)と熱重合開始剤(パーオキシジカーボネートおよびパーオキシエステル)とを含む組成物が提案されている(特許文献1)。しかし、この組成物の硬化物は、短波長領域の光によって黄変しやすい。その結果、LEDの光取り出し効率が低下する。
【特許文献1】特許第4087782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐光性に優れた硬化物を得ることができる、光学部材に適した熱硬化性樹脂組成物;耐光性に優れた硬化物ならびに光学部材;および、光取り出し効率が低下しにくい光半導体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、メタクリル系重合体(A)20〜50質量%、シクロヘキシルメタクリレート(B)45〜75質量%、及び下記式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)5〜15質量%を含む樹脂成分100質量部に対し、10時間半減期温度が110℃以下であり、かつ25℃にて液状である熱重合開始剤(D)0.5〜10質量部を含むことを特徴とする。
CH=C(R)COO((CHO)COC(R)=CH (1)
(式中、RはHまたはCHを、mは1〜4の整数を、nは1〜9の整数を示す。)
【0007】
本発明の硬化物は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする。
本発明の光学部材は、本発明の硬化物からなるものであることを特徴とする。
本発明の光半導体は、本発明の硬化物で発光素子が封止されたものであることを特徴とする。
本発明の硬化物、光学部材および光半導体封止材の製造方法は、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、50℃以上120℃未満で0.5〜3時間加熱し、さらに120℃以上150℃未満0.5〜3時間加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱硬化性樹脂組成物によれば、耐光性に優れた硬化物を得ることができ、該熱硬化性樹脂組成物は、光学部材に適している。
本発明の硬化物および光学部材は、耐光性に優れる。
本発明の光半導体は、光取り出し効率が低下しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<熱硬化性樹脂組成物>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、メタクリル系重合体(A)とシクロヘキシルメタクリレート(B)と式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)とを含む樹脂成分に対し、熱重合開始剤(D)を配合したものである。
【0010】
(メタクリル系重合体(A))
メタクリル系重合体(A)は、メタクリル酸エステルを50質量%以上含むモノマー成分を重合して得られる重合体である。
メタクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられ、硬化物の耐光性の点から、シクロヘキシルメタクリレートが特に好ましい。メタクリル酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
モノマー成分は、メタクリル酸エステル以外の他のモノマーを含んでいてもよい。他のモノマーとしては、アクリル酸エステル(メチルアクリレート、エチルアクリレート等。)、アクリル系モノマー(アクリル酸、アクリロイルモルフォリン等。)、メタクリル系モノマー(メタクリル酸、メタクリロイルモルフォリン等。)、ビニル系モノマー(スチレン等。)等が挙げられる。
【0011】
メタクリル系重合体(A)の具体例としては、ポリシクロヘキシルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合体、シクロヘキシルメタクリレートとエチルメタクリレートとの共重合体、シクロヘキシルメタクリレートとブチルメタクリレートとの共重合体、メチルメタクリレートとエチルメタクリレートとの共重合体、メチルメタクリレートとブチルメタクリレートとの共重合体等が挙げられ、硬化物の耐光性の点から、ポリシクロヘキシルメタクリレートが特に好ましい。メタクリル系重合体(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
メタクリル系重合体(A)の質量平均分子量は1,000〜200,000であることが好ましく、20,000〜120,000であることがより好ましい。質量平均分子量が1,000以上であることによって樹脂組成物の硬化性、強度が向上する。質量平均分子量が200,000以下であることによって作業性が良好となる。
【0012】
メタクリル系重合体(A)の割合は、樹脂成分100質量%のうち、20〜50質量%であり、30〜40質量%が好ましい。メタクリル系重合体(A)の割合が20質量%以上であれば、組成物の硬化時の収縮や硬化物中の気泡の発生が抑制される。メタクリル系重合体(A)の割合が50質量%以下であれば、組成物の粘度が低く抑えられる。
【0013】
(シクロヘキシルメタクリレート(B))
シクロヘキシルメタクリレート(B)は、組成物の粘度を低く抑える成分であり、また硬化物の耐光性の向上に寄与する成分である。シクロヘキシルメタクリレート(B)の代わりに他の単官能(メタ)アクリレートを用いた場合、本発明の効果が十分に得られない。
【0014】
シクロヘキシルメタクリレート(B)の割合は、樹脂成分100質量%のうち、45〜75質量%であり、50〜60質量%が好ましい。シクロヘキシルメタクリレート(B)の割合が45質量%以上であれば、組成物の粘度が低く抑えられる。シクロヘキシルメタクリレート(B)の割合が75質量%以下であれば、組成物の硬化時の収縮が抑えられ、また硬化物中の気泡の発生を抑制できる。
【0015】
(式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C))
式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらは、一種を単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
式(1)におけるmが1〜4の整数であることによって、得られた硬化物の耐熱性が良好となる。また、式(1)におけるnが1〜9の整数であることによって、得られた硬化物の硬度が良好となる。
これらのうち、硬化物の強度の点から、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレートが好ましく、ポリブチレングリコールジメタクリレートが最も好ましい。
式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)は、組成物の粘度を低く抑えつつ、組成物の硬化性を向上させる成分であり、また硬化物中の気泡の発生を抑制し、耐熱性を向上させる。
【0016】
式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)の割合は、樹脂成分100質量%のうち、5〜15質量%であり、8〜12質量%が好ましい。式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)の割合が5質量%以上であれば、組成物の硬化性、強度が良好となり、また硬化物中の気泡の発生を抑制できる。式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)の割合が15質量%以下であれば、硬化物の透明性が良好となる。
【0017】
(他の成分)
樹脂成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、メタクリル系重合体(A)以外の他の樹脂、シクロヘキシルメタクリレート(B)以外の他の単官能モノマー、式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)以外の他の多官能モノマーを含んでいてもよい。
他の樹脂としては、アクリル系重合体等が挙げられる。他の単官能モノマーとしては、シクロヘキシルメタクリレート以外のメタクリル酸エステル(メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等。)、アクリル酸エステル(メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等。)、ビニル系モノマー(スチレン等。)等が挙げられる。他の多官能モノマーとしては、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0018】
(熱重合開始剤(D))
熱重合開始剤(D)は、熱重合開始剤(ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド等。)のうち、10時間半減期温度が110℃以下であり、かつ25℃にて液状のものである。
熱重合開始剤が液状であるとは、有機溶剤等で希釈されていない状態(すなわち純品)で、室温(25℃)にて液体であることを意味する。液状の熱重合開始剤(D)の代わりに、固体状の熱重合開始剤を用いた場合、シクロヘキシルメタクリレートへの相溶性が悪いため、硬化物中に残存モノマーが多くなって、黄変しやすくなる。また、固形状の熱重合開始剤を有機溶剤等の不純成分で希釈したものを用いると、不純成分が短波長領域の光によって劣化するため、硬化物が黄変しやすくなる。
【0019】
熱重合開始剤(D)の10時間半減期温度は、110℃以下であり、80℃以下が好ましい。10時間半減期温度が110℃以下であれば、比較的低温(50℃以上120℃未満)で行われる第1段階目の硬化時に十分に硬化が進み、残存モノマーが少なくなるため、比較的高温(120℃以上150℃未満)で行われる第2段階目の硬化時に気泡が発生しにくく、硬化物内に気泡が残りにくい。10時間半減期温度は、安定性の観点から30℃以上であることが好ましい。
【0020】
熱重合開始剤(D)としては、下記のものが挙げられる。
t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、パーブチルO、10時間半減期温度:72.1℃(カタログ値)、透明液体)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサエノート(日油社製、パーオクタO、10時間半減期温度:65.3℃(カタログ値)、透明液体)、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサエノート(日油社製、パーヘキシルO、10時間半減期温度:69.9℃(カタログ値)、透明液体)等。
【0021】
熱重合開始剤(D)の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、0.5〜10質量部であり、0.5〜5質量部が好ましい。熱重合開始剤(D)の配合量が0.5質量部以上であれば、組成物の硬化性が良好となり、硬化物の耐光性が良好となる。熱重合開始剤(D)の配合量が10質量部以下であれば、硬化物の耐光性が良好となる。
【0022】
(他の成分)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱重合開始剤、公知の添加剤(可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、無機充填材、消泡剤、増粘剤、揺変化剤、レベリング剤等。)等を含んでいてもよい。
【0023】
以上説明した、本発明の熱硬化性樹脂組成物にあっては、メタクリル系重合体(A)の20〜50質量%と、シクロヘキシルメタクリレート(B)の45〜75質量%と、式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)の5〜15質量%とを含む樹脂成分100質量部に対し、10時間半減期温度が110℃以下であり、かつ液状である熱重合開始剤(D)の0.5〜10質量部を含むため、耐光性に優れた硬化物を得ることができる。
【0024】
<硬化物>
本発明の硬化物は、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、50℃以上120℃未満で0.5〜3時間加熱し(以下、第1段階目の硬化と記す。)、さらに120℃以上150℃未満で0.5〜3時間加熱する(以下、第2段階目の硬化と記す。)製造方法によって得られることが好ましい。
【0025】
第1段階目の硬化時の温度が50℃以上であれば、十分に硬化が進み、残存モノマーが少なくなるため、第2段階目の硬化時に気泡が発生しにくく、硬化物内に気泡が残りにくい。第1段階目の硬化時の温度が120℃未満であれば、第1段階目の硬化時に気泡が発生しにくく、硬化物内に気泡が残りにくい。
【0026】
第1段階目の硬化時間が0.5時間以上であれば、十分に硬化が進み、残存モノマーが少なくなるため、第2段階目の硬化時に気泡が発生しにくく、硬化物内に気泡が残りにくい。第1段階目の硬化時間が3時間以内であれば、全体の硬化時間を短縮できる。
【0027】
第2段階目の硬化時の温度が120℃以上であれば、残存モノマー、残存硬化剤がほとんど反応し、硬化物に残存しないため、硬化物の耐光性が良好になる。第2段階目の硬化時の温度が150℃未満であれば、熱による硬化物の大きな劣化が起こらない。
【0028】
第2段階目の硬化時間が0.5時間以上であれば、残存モノマーがほとんど反応し、硬化物に残存しないため、硬化物の耐光性が良好になる。第2段階目の硬化時間が3時間以内であれば、全体の硬化時間を短縮できる。
【0029】
以上説明した、本発明の硬化物にあっては、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、50℃以上120℃未満で0.5〜3時間加熱し、さらに120℃以上150℃未満で0.5〜3時間加熱して得られるものであるため、耐光性に優れる。
【0030】
<光学部材>
本発明の光学部材は、本発明の硬化物からなるものである。
本発明の光学部材としては、光半導体の透明封止材、光導波路、レンズ、プリズム、光ディスク基板、液晶表示装置用透明基板、バックライト用導光板等が挙げられる。
【0031】
<光半導体>
本発明の光半導体は、本発明の硬化物(透明封止材)で発光素子が封止されたものである。
光半導体としては、発光ダイオード(LED)、フォトダイオード等が挙げられる。
発光素子としては、発光ダイオード素子、フォトダイオード素子等が挙げられる。
本発明の硬化物(透明封止材)は、高い耐光性、耐熱性が要求される白色LED、青色LEDに特に有用である
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例中、「部」は質量部を意味する。
【0033】
(相溶性)
樹脂成分中におけるメタクリル系重合体の相溶性を下記基準で評価した。
○:メタクリル系重合体の溶け残りがない。
×:メタクリル系重合体の溶け残りがある。
【0034】
(強度)
硬化物の強度を下記基準で評価した。
○:硬化物に亀裂および割れがともにない。
×:硬化物に亀裂または割れがある。
【0035】
(透明性)
硬化物の透明性をヘイズにより評価した。
ヘイズは、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、HM−65W型)を用い、JIS−K7136に準じて測定した。下記基準で評価した。
○:ヘイズが3%未満。
×:ヘイズが3%以上。
【0036】
(耐光性)
デューパネルウェザーメーター(スガ試験機社製、DPWL−5R)を用いて硬化物の耐光性試験を行った。系内温度は50℃とし、試験は150時間行った。試験前後の硬化物のYIを、色差計(日本電色工業社製、SE2000)を用いて測定し、その差(ΔYI)で耐光性を表した。YIの測定は、透過モードで行った。
【0037】
〔合成例1〕
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水の145部、ポリビニルアルコール(ケン化度:80%、重合度:1,700)の0.5部を加えて撹拌し、ポリビニルアルコールを完全に溶解した。撹拌を停止し、シクロヘキシルメタクリレート(以下CHMAと記す。)の100部、ジラウロイルパーオキサイド(日油社製、パーロイルL)の1部、n−ドデシルメルカプタンの1部、硫酸ナトリウムの0.3部を加えて再度撹拌した。撹拌を行いながら、75℃に昇温して1時間反応を行い、98℃に昇温して、さらに0.5時間反応を行った後、40℃に冷却した。得られた水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄した。脱水後、40℃で16時間乾燥して、粒状のポリシクロヘキシルメタクリレート(以下、PCHMAと記す。)を得た。得られたPCHMAのTgは83℃、質量平均分子量は40,000であった。
なお、重合体の質量平均分子量は、樹脂を溶剤(テトラヒドロフラン)に溶解し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィを用いて測定した分子量をポリスチレン換算して求めた。単独重合体のTgは、「ポリマーハンドブック第4版(POLYMER HANDBOOK、FOURTH EDITION)」に記載されている値を用いた。共重合体の場合は、その値とFOXの式とから求める。
【0038】
〔調製例1〕
樹脂成分S−1の調製:
冷却器を備えた容器にCHMAの55部、三菱レイヨン(株)製ポリブチレングリコールジメタクリレート(n=8または9、以下、PBOMと記す。)の9部、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(以下、BHTと記す。)の0.01部入れ、撹拌しながら、PCHMAの36部を少量ずつ加えた。PCHMAを全て加えた後、容器内を60℃に昇温し、温度を維持したまま2時間撹拌した。2時間後、溶液を冷却し、樹脂成分S−1を得た。樹脂成分S−1の相溶性を評価した。結果を表2に示す。
【0039】
〔調製例2〜9〕
樹脂成分S−2〜9の調製:
表1に示す配合量に変更した以外は、調製例1と同様にして樹脂成分S−2〜9を得た。樹脂成分S−2〜9の相溶性を評価した。結果を表2に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
〔実施例1〕
樹脂成分S−1の100部に、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、パーブチルO、10時間半減期温度:72.1℃(カタログ値)、透明液体)の1部を加え、熱硬化性樹脂組成物を得た。これを脱泡したものを3mmの隙間を設けたガラスセルに流し込み、セルを密閉した。その後、100℃で2時間加熱し、さらに120℃で2時間加熱して硬化させ、厚さ約3mmの硬化物を得た。硬化物について、各評価、耐光試験を行った。結果を表2および表3に示す。
【0042】
〔実施例2〕
樹脂成分を表2に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物およびその硬化物を得た。硬化物について、各評価、耐光試験を行った。結果を表2および表3に示す。
【0043】
〔実施例3〜5〕
樹脂成分を表2に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物およびその硬化物を得た。硬化物について、各評価行った。結果を表2に示す。
【0044】
〔比較例1〕
樹脂成分S−1の100部に、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(日油社製、パーロイルTCP、10時間半減期温度:40.8℃(カタログ値)、白色顆粒状)の1部を加え、熱硬化性樹脂組成物を得た。以下、実施例1と同様にして、その硬化物を得た。硬化物について、各評価、耐光試験を行った。結果を表2および表3に示す。
【0045】
〔比較例2〕
比較例2では、メタクリル系重合体の溶け残りがあったため、硬化物の評価を行わなかった。
【0046】
〔比較例3〜5〕
樹脂成分を表2に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物およびその硬化物を得た。硬化物について、各評価を行った。結果を表2に示す。比較例3、4は、硬化物の強度が劣り、比較例5は、硬化物の透明性が劣るため、耐光試験は行わなかった。
【0047】
〔比較例6〕
水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、YX−8000)の100部、テトラヒドロメチル無水フタル酸(ADEKA社製、アデカハードナーEH−3326)の80部、第4級ホスホニウム塩(日本化学工業社製、ヒシコーリンPX−4ET)の1部を混合し、撹拌して熱硬化性樹脂組成物を得た。これを脱泡したものを3mmの隙間を設けたガラスセルに流し込み、セルを密閉した。その後、100℃で3時間加熱し、さらに140℃で3時間加熱して硬化させ、厚さ約3mmの硬化物を得た。硬化物について、耐光試験を行った。結果を表3に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表中の略語は下記の通りである。
PBO:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、パーブチルO)、
TCP:ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(日油社製、パーロイルTCP)。
【0050】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の光学部材に適した熱硬化性樹脂組成物からなる硬化物は、光半導体の透明封止材、光導波路、レンズ、プリズム、光ディスク基板、液晶表示装置用透明基板、バックライト用導光板等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル系重合体(A)20〜50質量%、
シクロヘキシルメタクリレート(B)45〜75質量%、
及び下記式(1)で示される(メタ)アクリル系ラジカル重合性単量体(C)5〜15質量%
を含む樹脂成分100質量部に対し、
10時間半減期温度が110℃以下であり、かつ25℃にて液状である熱重合開始剤(D)0.5〜10質量部を含む熱硬化性樹脂組成物。
CH=C(R)COO((CHO)COC(R)=CH (1)
(式中、RはHまたはCHを、mは1〜4の整数を、nは1〜9の整数を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項3】
請求項2に記載の硬化物からなる光学部材。
【請求項4】
請求項2に記載の硬化物で発光素子が封止された光半導体。
【請求項5】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物を、50℃以上120℃未満で0.5〜3時間加熱し、さらに120℃以上150℃未満で0.5〜3時間加熱する硬化物の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物を、50℃以上120℃未満で0.5〜3時間加熱し、さらに120℃以上150℃未満で0.5〜3時間加熱する光学部材の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物を、50℃以上120℃未満で0.5〜3時間加熱し、さらに120℃以上150℃未満で0.5〜3時間加熱する光半導体封止材の製造方法。

【公開番号】特開2010−132801(P2010−132801A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310996(P2008−310996)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】