説明

熱線吸収調光性シート

【課題】環境温度変化により、可逆的に透明性が変化する調光性シートであって、特に熱線吸収性能を有することにより、温度の上昇が高くなることで可逆的な透明性変化が良好となる熱線吸収調光性シートを提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂100重量部に対して、平均粒径0.1μm〜50μm以下の粒子0.01重量部〜200重量と、熱線吸収剤0.1〜20重量部とを含有する樹脂組成物を成型してなる日射透過率が80%以下である熱線吸収調光性シート

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境温度変化により透明性の変化する調光性シートに関する。より詳細には、熱可塑性樹脂に特定の平均粒径を有する粒子及び熱線吸収剤を配合してなる可逆的な透明性変化が良好で、熱線吸収性能を有する熱線吸収調光性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境の温度変化に伴って光線透過率が可逆的に変化する樹脂組成物が知られている。例えば、特許文献1には、炭素数14以上の直鎖α−オレフィン重合体と、他のα−オレフィン重合体又はメタクリル酸エステル重合体とから構成され、環境の温度変化に伴って光線透過率が可逆的に変化する樹脂組成物が開示されている。
【0003】
さらに、特許文献2には、樹脂と粒子を配合することにより、環境の温度変化に伴って光線拡散率が可逆的に変化する樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2706701号
【特許文献2】特開2001−226604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の発明では、光線透過率の低下は、光の有効利用という観点からは効率的でない場合などの問題があった。
【0006】
また特許文献2記載の発明では、比較的低温領域(40〜50℃)における、光線拡散率が十分に大きいものではなく、実用温度領域(25〜50℃)において、調光性が十分ではないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、環境温度変化により、可逆的に透明性が変化する調光性シートであって、特に熱線吸収性能を有することにより、例えば、屋外使用時に太陽光の熱線を吸収し温度の上昇が高くなることで可逆的な透明性変化が良好となる熱線吸収調光性シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、これらの課題を解決するために鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂100重量部に対して、平均粒径0.1μm〜50μm以下の粒子0.1重量部〜200重量と、熱線吸収剤0.01〜20重量部とを含有する樹脂組成物を成型してなる日射透過率が80%以下である熱線吸収調光性シートにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
第1の本発明は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、平均粒径0.1μm〜50μm以下の粒子0.1重量部〜200重量と、熱線吸収剤0.01〜20重量部とを含有する樹脂組成物を成型してなる日射透過率が80%以下である熱線吸収調光性シートである。
【0010】
第1の本発明の熱線吸収調光性シートは、実使用時において、温度変化による透明性の変化幅(透明から白濁)が大きく、可逆的な透明性変化を良好なものとすることができる。
【0011】
従来、例えば、上記特許文献2に記載のような調光シートは、日射透過率が高いため、実用上は調光シートの温度が上がりにくく、透明性の変化が小さいため実用的ではなかった。しかしながら、本発明者は、熱線吸収剤を加えることにより、例えば屋外での使用時に太陽光の熱線を吸収し、シート温度をより上昇させることができ、ヘーズ値を顕著に増加させることが可能であるとの結論に至ったのである。
【0012】
第1の本発明において、熱線吸収調光性シートは、熱可塑性樹脂100重量部に対して、平均粒径0.1μm〜50μm以下の粒子0.1重量部〜200重量と、熱線吸収剤0.01〜20重量部とを含有する樹脂組成物を成型してなり、所定の日射透過率を有することを必要とし、前記粒子の含有量が、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1重量部以下では白濁時の遮蔽性が不十分であり、200重量部以上では樹脂組成物の成形が困難になる。
【0013】
また、前記粒子の平均粒径が0.1μmより小さいと、白濁時に十分な遮蔽性が得られず、平均粒径が50μmより大きいと樹脂組成物の成形が困難となる。
【0014】
さらに、第1の本発明において、熱線吸収剤の含有量が、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01未満であると十分な熱線吸収効果が得られず、20重量部を超えると、透明性の低下やブリードアウト、成形性の低下等が問題になる。
【0015】
第1の本発明において、熱線吸収調光性シートは、日射透過率が80%以下であることを要する。このような範囲に日射透過率が調整されていると、シートの温度が上昇しやすくなり、温度上昇前の透明性と温度上昇後の白濁性に優れ、透明性変化を良好なものとすることができる。
【0016】
第1の本発明において、熱線吸収調光性シートを構成する熱可塑性樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体であることが好ましく、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル成分が10〜50重量%であることが好ましい。
【0017】
第1の本発明において、熱線吸収調光性シートを構成する熱可塑性樹脂に含有される粒子は、架橋アクリル粒子であることが好ましい。
【0018】
第1の本発明において、上記熱線吸収剤は、イオウ0.004 〜 4重量部と、下記一般式(A)の銅化合物0.01重量〜50重量部とを含有することが好ましく、この一般式(A)で表される銅化合物の中でも、ステアリン酸銅を用いることが好ましい。このような熱線吸収剤を用いることで、耐熱、耐候性等の有利な効果を奏し、また成形性の面などからも好ましい。
一般式(A)XqCu
(ただし、式中、Xは、硫黄、フッ素、塩素、−CN 、フタロシアニル基、クロロフィリンナトリウム、ビスアセチルアセトナート、R−Y のいずれかを示す。ここで、R は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環残基(各基は1個以上の置換基を有してもよい。) から選ばれる一価基を示し、Yは、−COO 、−SO 、−SO 、−PO 、−Oのいずれかを示す。qは、1又は2である。)
【0019】
第2の本発明は、第1の本発明の熱線吸収調光性シートを少なくとも1層積層させてなる積層体である。
【0020】
第2の本発明の積層体は、第1の本発明の熱線吸収調光シートが少なくとも1層積層されていることにより、機械的強度が向上する等の効果を奏することができる。
【0021】
第2の本発明において、積層体はポリカーボネートを主成分とするシートをさらに少なくとも1層備えることが好ましい。このような構成とすることによって、機械的強度が向上し、安定な形状を保持することができる等の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、熱線を吸収してシート温度が上昇しやすくなることで、実使用条件において可逆的に透明性が変化する熱線吸収調光性シートを提供することができ、この調光性シートは、カーポートや複層窓などの各種窓材として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、ランプ照射におけるシートの温度評価の試験ボックスを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明の実施形態について説明する。なお、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明において、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。また、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含するものである。特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、通常、その成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)が組成物中で50質量%以上、特に70質量%以上、中でも90質量%以上(100%含む)を占めるものである。
【0025】
<熱線吸収調光性シート>
第1の本発明の熱線吸収調光性シートは、熱可塑性樹脂100重量部に対して、平均粒径0.1μm〜50μm以下の粒子0.1重量部〜200重量と、熱線吸収剤0.1〜20重量部とを含有する樹脂組成物を成形してなるものである。
【0026】
第1の本発明において、熱線吸収調光性シートの厚みは、上記のとおり、1μm〜5mmであることが好ましが、中でも10μm〜2mmであることがより好ましく、10〜100μmであることがさらに好ましい。厚みを上記範囲に調整すれば、可逆的な透明性変化を良好なものとすることができる。
【0027】
(樹脂組成物)
第1の本発明において、熱線吸収調光性シートを構成する樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂と粒子と熱線吸収剤とを配合してなり、前記熱可塑性樹脂に対する前記粒子及び熱線吸収剤の配合量や、粒子の平均粒径が所定の範囲であれば、制限されるものではなく、以下に例示した熱可塑性樹脂、粒子、及び熱線吸収剤をそれぞれ適宜組み合わせれば良い。
【0028】
(熱可塑性樹脂)
前記熱可塑性樹脂としては、特に制限されるものではなく、例えば、特許文献1に記載の炭素数14以上の直鎖αオレフィン重合体と、他のα−オレフィン重合体又はメタアクリル酸エステル重合体や、特開昭64−9267号公報記載のα−オレフィン系重合体とメタクリル酸系重合体等が挙げられる。その他にも、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンのようなポリエステル系樹脂、ノルボルネンの重合体のような環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイドのようなポリアルキレンオキサイドなどの合成高分子が挙げられる。合成高分子は、二種以上のモノマーから得られる共重合体であってもよく、具体的にはエチレン−酢酸ビニル共重合体を挙げることができる。また、二酢酸セルロースや三酢酸セルロースのようなセルロース系樹脂などの天然高分子を挙げることができ、これらを単独又は2種以上組み合わせて使用することができるが、中でもエチレン−酢酸ビニル共重合体を使用することが、透明性などの点から好ましく、酢酸ビニル成分が10〜50重量%であることが、屈折率の温度依存性などの点からより好ましい。
【0029】
上記熱可塑性樹脂の中でも、20〜70℃の範囲において、屈折率差の絶対値が少なくとも0.01以上である熱可塑性樹脂が好ましく、屈折率差の絶対値が0.03以上である熱可塑性樹脂がより好ましい。このような範囲の熱可塑性樹脂を用いれば、温度変化による透明性の変化幅(透明から白濁)が大きく、可逆的な透明性変化を良好なものとすることができる。
【0030】
(樹脂組成物に含有される粒子)
前記粒子としては、平均粒径0.1μm以上50μm以下の粒子であることを要するが、中でも、白濁時の遮蔽性とシート成形性のバランスの理由から、平均粒径が1〜30μmであることが好ましく、3〜20μmであることがより好ましい。なお、粒子を顕微鏡で観察し、該粒子に外接する円の直径と、その円の中心から粒子の端までの長さの最も短い長さの平均をとり、それぞれ場所を変えて100個を観察したその平均値をもって平均粒径とした。また、上述したとおり、本発明の調光性シートは、上記平均粒径の粒子を熱可塑性樹脂に特定量添加させることにより、種々の入射角における拡散角度分布を増やし、光
線拡散率を高くすることができるが、種々の入射光における反射光分布の増加は、さらに粒子の粒径分布にも起因する。すなわち、粒子径の揃った粒子を用いるのではなく、粒径に分布をもたせた粒子を用いることが好ましく、粒径分布をもつ粒子としては、例えば、綜研化学社製のMR−7G(平均粒径5μm)、MR−10G(平均粒径10μm)、MR−20G(平均粒径20μm)、MR−30G(平均粒径30μm)が挙げられる。
【0031】
また、前記粒子の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜200重量部以下であることを必要とするが、中でも、白濁時の遮蔽性とシート成形性のバランスの理由から、1〜150重量部とすることが好ましく、10〜130重量部とすることがより好ましい。
【0032】
さらに、前記粒子の材質としては、例えば、有機粒子として、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート系樹脂などの高分子粒子及び架橋高分子や、エチレン、プロピレン、スチレン、メタクリル酸メチル、ベンゾグアナミン、ホルムアルデヒド、メラミン、ブタジエンなどから選ばれる二種以上のモノマーから得られる共重合体等を挙げることができ、無機粒子としては、ガラスビーズや、シリカ、シリコーン、酸化チタン、ゼオライト、マイカ、タルクなどの粒子を挙げることができる。これらの中でも、分散性の理由から架橋アクリル粒子を使用することが好ましい。
【0033】
(熱線吸収剤)
上記熱線吸収剤としては、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、無水酸化アンチモン酸亜鉛、アミニウム系、アンモニウム系、尿素系、イモニウム系、シアニン系、ポリメチン系、アントラキノン系、ジチオール系、銅イオン系、フェニレンジアミン系、フタロシアニン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シュウ酸アニリド系、シアノアクリレート系、ベンゾトリアゾール系、ジチオール金属錯体系化合物、スクアリリウム系化合物、ナフタロシアニン系化合物、有機金属錯体系化合物、アゾ化合物、キノン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、メルカプトナフトール系化合物などの熱線吸収性能を有する化合物を挙げることができ、これらを用いることができるが、特に、イオウ0.004 〜 4重量部と、下記一般式(A)の銅化合物0.01重量〜50重量部とを含有する熱線吸収化合物を用いることが好ましい。
一般式(A)XqCu
(ただし、式中、Xは、硫黄、フッ素、塩素、−CN 、フタロシアニル基、クロロフィリンナトリウム、ビスアセチルアセトナート、R−Y のいずれかを示す。ここで、R は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環残基(各基は1個以上の置換基を有してもよい。) から選ばれる一価基を示し、Yは、−COO 、−SO 、−SO 、−PO 、−Oのいずれかを示す。qは、1又は2である。)
【0034】
上記イオウとしては、特に限定されるものではなく、市販のイオウ粉末を使用することができ、例えば、鶴見化学株式会社製の硫黄粉末(JIS2級相当品)を用いることができる。
【0035】
上記銅化合物としては、上記の通り、上記一般式(A)で表されるものであれば制限されず、例えば、ステアリン酸銅、硫化銅、フタロシアニル銅、銅アセチルアセトナート等を挙げることができ、中でもステアリン酸銅を用いるのが好ましい。
【0036】
<熱線吸収調光性シートの製造方法>
本発明における熱線吸収調光性シートの製造方法としては、特に制限されず、例えば、上述した熱可塑性樹脂と粒子と熱線吸収剤とを一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用いて溶融混練した後、Tダイを用いてシート形状に成形する方法が挙げられる。また、熱可塑性樹脂と粒子を溶剤に溶解、分散させた後、溶剤を除いてシート形状に成形する方法が挙げられる。
【0037】
<熱線吸収調光性シートの用途>
本発明の熱線吸収調光性シートは、温度によって、透明から白濁へと変化する性質を有することから、その用途としては、室内温度が上昇すると防眩効果や室内温度上昇抑制効果を備えた分野、例えば、カーポートや、複層窓などの各種窓材や、プライバシー保護のための間仕切り、ドア材などを挙げることができ、また示温材料や映像投影用のスクリーンなどへの応用も可能である。
【0038】
<積層体>
第2の本発明の積層体は、少なくとも1層が上記第1の本発明の熱線調光性シートであることを必要とし、さらにポリカーボネートを主成分とするシートを少なくとも1層備えることが好ましい。ポリカーボネートを主成分とするシートとしては、特に制限されるものではなく、公知のシートを用いることができ、例えば、三菱樹脂社製の「ステラ」を挙げることができる。
【0039】
前記ポリカーボネートを主成分とするシートの厚みとしては、機械的強度等の理由から、0.1〜20mmとすることが好ましく、1〜10mmとすることがより好ましい。
【0040】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、ポリカーボネートを主成分とするシートを基材として、本発明の調光性シートを熱圧着する方法や、熱可塑性樹脂と粒子を溶剤に溶解、分散させた後、基材シートに塗布、乾燥して溶剤を除き積層体とする方法などを挙げることができる。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
エチレン酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンポリケミカル製、「エバフレックスV421」)100重量部に対して、平均粒径5μmの架橋アクリル粒子100重量部(総研化学社製、「MX−500」)と、イオウ粉末(鶴見化学(株)製JIS2級相当品)0.15重量部、及びステアリン酸銅(寺田薬泉工業(株)製)2重量部を、ラボプラストミルを用いて、温度180℃、回転数50rpmの条件で5分間混練した。この混錬物を、PETフィルムに挟み熱プレスにより100μm厚みのシートに成形した。なお、上記エチレン酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル成分は28重量%であった。
【0042】
(実施例2)
イオウ粉末とステアリン酸銅の配合量をそれぞれイオウ粉末0.05重量部及びステアリン酸銅0.67重量部とした以外は、実施例1と同様にして、シート及び積層体を得た。
【0043】
(比較例1)
エチレン酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンポリケミカル製、「エバフレックスV421」)100μm厚のシートとした。
【0044】
(比較例2)
イオウ粉末とステアリン酸銅を除いた以外は、実施例1と同様にして、シート及び積層体を得た。
【0045】
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られたシート及び積層体を用いて、以下の試験を行った。
【0046】
(ヘーズ)
実施例1〜2及び比較例1〜2の積層体につき、JIS K 7136に準拠し、ヘーズメーター(株式会社村上色彩技術研究所製HM−150)を用いてヘーズ値(%)を測定した。結果を表1に示した。
【0047】
<日射透過率の測定方法>
実施例及び比較例で得られたフィルムサンプルについて、分光光度計(島津製作所製UV3150型)を用いて波長300nm〜2100nmの領域の光線透過率(τλ)を測定した。なお、熱線遮蔽板の日射透過率(τe、300nm〜2100nm)の値をJISR−3106に準じて求めた。
【0048】
(ランプ照射におけるシートの温度評価)
実施例1〜3及び比較例1〜3の積層体について、試験片を図1のような試験ボックスに設置し、ハロゲンランプで光を照射した。光照射開始後、50分後のフィルムの温度を測定した。
【表1】

【0049】
表1より、本発明の調光性シート(実施例1〜2)は、ランプ照射によるシート温度の上昇が大きく、該温度でのヘーズが高かった。一方、比較例1〜2のシートでは、温度の上昇が小さく、透明性変化が不十分であった。
【0050】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂100重量部に対して、平均粒径0.1μm〜50μm以下の粒子0.1重量部〜200重量と、熱線吸収剤0.01〜20重量部とを含有する樹脂組成物を成型してなる日射透過率が80%以下である熱線吸収調光性シート。
【請求項2】
前記粒子が、架橋アクリル粒子であることを特徴とする請求項1に記載の熱線吸収調光性シート。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱線吸収調光性シート。
【請求項4】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル成分が10〜50重量%であることを特徴とする請求項3に記載の熱線吸収調光性シート。
【請求項5】
上記熱線吸収剤が、イオウ0.004 〜 4重量部と、下記一般式(A)の銅化合物0.01重量〜50重量部とを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱線吸収調光性シート。
一般式(A)XqCu
(ただし、式中、Xは、硫黄、フッ素、塩素、−CN 、フタロシアニル基、クロロフィリンナトリウム、ビスアセチルアセトナート、R−Y のいずれかを示す。ここで、R は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環残基(各基は1個以上の置換基を有してもよい。) から選ばれる一価基を示し、Yは、−COO 、−SO 、−SO 、−PO 、−Oのいずれかを示す。qは、1又は2である。)
【請求項6】
一般式(A)の銅化合物が、ステアリン酸銅であることを特徴とする請求項5に記載の熱線吸収調光性シート。
【請求項7】
少なくとも1層が請求項1〜6のいずれかに記載の熱線吸収調光性シートからなる積層体。
【請求項8】
ポリカーボネートを主成分とするシートを少なくとも1層備えることを特徴とする請求項7に記載の積層体。

【図1】
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【公開番号】特開2010−241857(P2010−241857A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88832(P2009−88832)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】