説明

熱電気水素供給システム

【課題】LNGを用いたコジェネレーションシステム(CGS)と水素分離型水蒸気改質器による熱電気水素供給システムを得る。
【解決手段】LNGを気化した天然ガスを燃料とするCGSと、天然ガスの水蒸気改質による水素分離型水蒸気改質器と、水蒸気改質用加熱源である燃焼器とを有する熱、電気および水素を供給するシステムであって、(a)CGSからの排ガスと水素分離型水蒸気改質器からのオフガスを合流させ、(b)排ガス及びオフガスをその流れ方向でみて、順次、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽を含む二酸化炭素回収装置を備えてなり、(c)冷却熱交換器の冷熱としてLNGを使用し、(d)CGS及び水蒸気改質用加熱源である燃焼器には酸素富化空気を使用し、(e)CGSにて生成した水蒸気を水蒸気改質器で使用するようにしてなる、ことを特徴とする熱電気水素供給システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電気水素供給システムに関し、より詳しくは、液化天然ガス(LNG)を利用したコジェネレーションシステム及び水素分離型水蒸気改質器を含み、熱、電気及び水素を供給するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃焼器を備える、メンブレンリアクターなどの水素分離型水素製造装置において、水素が分離された高圧のオフガスを燃焼器へ戻すオフガス流路と、当該オフガス流路にオフガスが保有するエネルギーを回収する回収手段、例えば発電機を設けた水素製造装置が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の水素分離型水素製造システムにおいて、水素分離型水蒸気改質器のオフガスについては、特許文献1のように、そのオフガスを全て燃焼器に送ることで可燃ガス分を再利用することにより、水素製造効率を高めているが、燃焼排ガスはそのまま外気に放出しているのが現状である。しかし、燃焼排ガスの主成分は、地球温暖化ガスである二酸化炭素であることから、外気への放出は回避する必要がある。
【0004】
そのような観点から、例えば、特許文献2には、液化天然ガスを気化したガス(=天然ガス)を水蒸気改質器に供給して水素を製造し、分離したオフガス中に含まれる二酸化炭素を回収するようにした水素製造装置及び水素製造方法が提案されている。特許文献3には、改質器において、含酸素炭化水素または炭化水素と酸素及び水蒸気により生成した改質ガスから水素を分離し、併せて二酸化炭素を高純度で含むガスを分離し、残りのガスの一部をパージするとともに、残部を改質器に高温の状態で再循環させるラインを備える水素製造システムが提案されている。
【0005】
ここで、特許文献4には、液化CO2回収を伴う水素製造方法として、天然ガスを水蒸気改質して改質ガスを生成すること、生成改質ガスをCOシフト反応器を経てPSA装置に供給して水素を分離精製すること、精製工程で分離された可燃物を含むオフガスを高濃度酸素または純酸素を酸化剤として燃焼すること、燃焼により発生する燃焼排ガス中の二酸化炭素を深冷蒸留・分離により高濃度にすること、高濃度二酸化炭素を液化炭酸あるいは固体炭酸として回収を行うことが開示されている。
【0006】
しかし、特許文献4の技術は、後述する本発明とは水蒸気改質器で製造した改質ガスから水素を分離したオフガスの燃焼に高濃度酸素を利用する点では共通するが、本発明の水素分離型改質システムのように、水素分離型改質システムで生じる二酸化炭素の全量もしくは大部分を回収するものではなく、水素分離型改質システムで生じる水分の全量もしくは大部分を回収するものではない。また、この技術は、本発明のように、その前提として、水素分離型水蒸気改質器を用いることを必須とするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−183006号公報
【特許文献2】特開2000−247604号公報
【特許文献3】特開2005−145760号公報
【特許文献4】特開2003−081605号公報
【0008】
また、メンブレンリアクターなどの水素分離型水素製造装置は、従来型の水蒸気改質装置と比較して高効率かつシンプル、コンパクトであることが知られている。水素自動車用等の水素ステーションの所在地において、メンブレンリアクターなどの水素分離型水素製造装置を使用し、天然ガスや都市ガスなどの炭化水素系燃料の改質による水素製造から貯蔵、供給まで行う、いわゆる炭化水素系燃料改質オンサイト方式の水素ステーションでの実用化を目指して開発が進められている。
【0009】
そのような、オンサイト方式の水素ステーションにおいても、水素製造装置からのオフガスについてはもちろん、二酸化炭素が主成分である燃焼排ガスについても、地球温暖化ガスである二酸化炭素であることから、外気への放出を回避する必要がある。
【0010】
そのほか、都市ガスを利用するコジェネレーションシステム(CGS)を用いた、熱(温水・蒸気)と電気の供給は産業用及びホテル、病院などの大型施設向けに普及しており、広く一般に行われている。
【0011】
それらの各分野における地球温暖化ガス排出量の削減への取り組みが進む中、化石燃料の利用そのものへの厳しさが増大してくることから、これまで、クリーンと言われてきた天然ガスを利用するCGSにおいても高効率化に加え、排出されるCO2の積極的な回収、固定化、またその有効利用が必要になってくると考えられる。
【0012】
本発明は、液化天然ガスを原料とする水素分離型水素製造装置において、天然ガスから高効率に水素製造を行うとともに、効率的な二酸化炭素回収によって天然ガス由来の二酸化炭素の全量もしくは大部分を回収し、且つ、水分の全量もしくは大部分を回収するようにしてなる、LNGを用いたコジェネレーションシステムと水素分離型水蒸気改質器による熱電気水素供給システムを提供することを目的とするものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明(1)は、LNGを気化した天然ガスを燃料とするコジェネレーションシステムと、前記天然ガスの水蒸気改質による水素分離型水蒸気改質器と、前記水蒸気改質用加熱源である燃焼器とを有する熱、電気および水素を供給するシステムであって、
(a)前記コジェネレーションシステムからの排ガスと前記水素分離型水蒸気改質器からのオフガスを合流させ、
(b)前記排ガス及びオフガスをその流れ方向でみて、順次、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽を含む二酸化炭素回収装置を備えてなり、
(c)前記冷却熱交換器の冷熱として前記LNGを使用し、
(d)前記コジェネレーションシステム及び前記水蒸気改質用加熱源である燃焼器には酸素富化空気を使用するようにしてなる、ことを特徴とする熱電気水素供給システムである。
【0014】
本発明(1)においては、上記(a)〜(b)のとおり、コジェネレーションシステムからの排ガスと水素分離型水蒸気改質器からのオフガスを合流させ、それら排ガス及びオフガスについて、その流れ方向に順次配置された圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽を含む二酸化炭素回収装置を備えることにより、二酸化炭素を液化炭酸として高効率に回収するものである。また、前記コジェネレーションシステムにおいて生成した水蒸気を前記水素分離型水蒸気改質器の水蒸気改質器での天然ガスの水蒸気改質用に使用するようにすることができる。
【0015】
本発明(2)は、LNGを気化した天然ガスを燃料とするコジェネレーションシステムと、前記天然ガスの水蒸気改質による水素分離型水蒸気改質器と、前記水蒸気改質用加熱源であるヒーターとを有する熱、電気および水素を供給するシステムであって、
(a)前記コジェネレーションシステムからの排ガスを前記ヒーターの熱源として使用した後、
(b)前記排ガスと前記水素分離型水蒸気改質器からのオフガスを合流させ、
(c)前記排ガス及びオフガスをその流れ方向でみて、順次、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽を含む二酸化炭素回収装置を備えてなり、
(d)前記冷却熱交換器の冷熱として前記LNGを使用し、
(e)前記コジェネレーションシステムには酸素富化空気を使用し、
(f)前記コジェネレーションシステムにて生成した水蒸気を前記水蒸気改質器で使用するようにしてなる、ことを特徴とする熱電気水素供給システムである。
【0016】
本発明(2)においては、上記(a)〜(c)のとおり、コジェネレーションシステムからの排ガスをヒーターの熱源として使用した後、排ガスと水素分離型水蒸気改質器からのオフガスを合流させ、排ガス及びオフガスをその流れ方向でみて、順次、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽を含む二酸化炭素回収装置を備えてなることにより、二酸化炭素を液化炭酸として高効率に回収するものである。また、前記コジェネレーションシステムにおいて生成した水蒸気を前記水素分離型水蒸気改質器の水蒸気改質器での天然ガスの水蒸気改質用に使用するようにすることができる。
【0017】
本発明(1)〜(2)の熱電気水素供給システムは、水素ステーションの所在地で水素製造から貯蔵・供給まで行うオンサイト方式の水素ステーションにおけるLNGを用いたコジェネレーションシステムと水素分離型水蒸気改質器よる熱電気水素供給システムとして利用することができる。この熱電気水素供給システムによると、熱と電気と水素を同時に供給し、二酸化炭素も回収して有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の熱電水素供給システムによれば(1)〜(4)の効果を得られる。
(1)LNGターミナル、LNGサテライトにおいて、熱(温水、水蒸気)、電気、水素、二酸化炭素を高効率に供給することができる。
(2)LNGターミナル、LNGサテライトにおけるコジェネレーションシステムからの天然ガス由来の二酸化炭素の全量もしくは大部分を回収することができる。
(3)LNGの冷熱と水素分離型水蒸気改質器のオフガスとの効率的な熱交換によってLNG気化プロセスとCO2圧縮液化回収プロセスの効率向上を図ることができる。
(4)コジェネレーションシステムにおいてLNG気化器が省略でき、また水素分離型水蒸気改質器を用いた水素製造装置における脱硫器、都市ガス圧縮機、ボイラーを省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の前提となる従来技術を説明する図である。
【図2】図2は本発明の前提となる従来技術を説明する図である。
【図3】図3は本発明(1)を説明する図である。
【図4】図4は本発明(2)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
コジェネレーションシステムは、石炭、石油、天然ガスなどの一次エネルギーから電力と熱を同時に発生し、エネルギーの有効利用を図るシステムであり、熱電併給システムとも称される。本発明は、LNGを出発原料とし、電力と熱に加えて、水素を同時に発生させて、さらにエネルギーの有効利用を図る熱電気水素供給システムである。また、本発明は、それら構成に加えて、副生二酸化炭素の全量もしくは大部分を回収するようにしてなる熱電気水素供給システムである。
【0021】
以下、本発明について、従来技術との関連を含めて順次説明する。
【0022】
〈従来技術について〉
図1〜2は従来技術を説明する図である。図1はLNGサテライトシステムを説明する図であり、図2は「水素分離型水蒸気改質器を用いた水素製造装置+二酸化炭素(CO2)回収装置」、すなわち水素分離型水蒸気改質器を用いた水素製造装置に二酸化炭素(CO2)回収装置を組み合わせたシステムを説明する図である。
【0023】
図1のとおり、従来のLNGサテライトシステムにおいては、LNGタンク1中のLNGは導管2を介して熱交換器3に供給される。LNGは熱交換器3で加熱されて気化し、コジェネレーションシステム(CGS)4に天然ガスとして供給される。コジェネレーションシステム(CGS)4には電力発生装置であるタービン発電機や燃料電池などが配置されており、天然ガスはタービン発電機あるいは燃料電池に供給されて電気と熱(排熱)を発生する。電気は需要者に供給され、排熱は給湯、冷暖房等の用途に供される。また、LNGタンク1からのボイルガスは排出導管5を介してパイプライン6によりサテライトステーション周辺の需要に供される。
【0024】
また、従来の水素分離型水蒸気改質器を用いた水素製造装置+二酸化炭素(CO2)回収装置については、燃料が都市ガスである場合を例にすると、以下のとおりである。図2のとおり、水素分離型改質器での水素製造用の燃料とする方の都市ガスは、導管11を介して脱硫器13に通して硫黄化合物を除去した後、水蒸気(スチーム)を添加、混合して水素分離型水蒸気改質器17に供給する。水素分離型水蒸気改質器において、脱硫済み都市ガスは水蒸気による改質により改質ガスとなり、改質ガス中の水素が水素分離膜つまり例えばPd系合金膜等の水素透過膜を選択的に透過して分離されて取り出される。
【0025】
ボイラー15で燃焼して水蒸気発生用の燃料とする方の都市ガスは、導管11の分岐管12を介してボイラー15へ供給される。ボイラー15へ供給された都市ガスは、空気供給管14からボイラー15に供給される空気により燃焼し、水を加熱して水蒸気を発生させる。符号16はボイラー15への水供給管である。ボイラー15で発生した水蒸気は、脱硫器13で脱硫され圧縮機P1を経た都市ガスに混合され、水素分離型水蒸気改質器17に供給される。
【0026】
水素分離型水蒸気改質器17からのオフガスは圧縮機P2により圧縮した後、熱交換器19で冷却することによりオフガス中に含まれる二酸化炭素(CO2)を液化炭酸とする。液化炭酸は気液分離器21により分離し、導出管23により取り出され回収される。液化炭酸を分離したオフガス中にはCO、H2、CH4、CO2が含まれているので、水素分離型水蒸気改質器17の燃焼器18に供給してその可燃分を燃焼し、水蒸気改質器での水蒸気改質用の熱に利用される。
【0027】
〈本発明(1)の態様〉
図3は本発明(1)を説明する図である。
【0028】
図3のとおり、本発明(1)の熱電気水素供給システムにおいては、LNGを気化して天然ガスとして燃料とするコジェネレーションシステム(CGS)38を備える。LNGタンク31中のLNGは導管32を介して熱交換器33に供給される。LNGは熱交換器33で加熱されて気化し、天然ガスとしてコジェネレーションシステム(CGS)38に供給される。その天然ガスの一部は、導管34を介してパイプライン35によりサテライトステーション周辺の需要に供される。
【0029】
コジェネレーションシステム(CGS)38には電力発生装置であるタービン発電機などが配置されている。天然ガスはガスタービン発電機に供給され、空気供給管39から供給され、酸素富化器40で酸素富化された空気で燃焼して電気と熱(排熱)を発生する。電気は需要者に供給され、排熱は給湯、冷暖房等の用途に供される。その排熱の一部は水素分離型水蒸気改質器45における天然ガスの水蒸気改質反応に供する水蒸気発生用に利用する。符号44は水素分離型水蒸気改質器45への水蒸気供給管である。
【0030】
本発明(1)の熱電水素供給システムにおいては、コジェネレーションシステム(CGS)38及び、水素分離型水蒸気改質器45における水蒸気改質用の加熱源である燃焼器での燃焼用には酸素富化空気を使用する。供給管39を介して供給される空気は、酸素富化器40で酸素が富化される。供給管39中を流れる酸素富化空気は分岐管41を介してコジェネレーションシステム(CGS)38に供給され、電力発生装置であるガスタービン発電機に供給される天然ガスの燃焼用に使用される。
【0031】
酸素富化空気のうち分岐管41で分岐されない分は、供給管39を介して水素分離型水蒸気改質器45における天然ガスの水蒸気改質反応用加熱源である燃焼器46に供給される。コジェネレーションシステム(CGS)38で発生した排熱により水蒸気を生成し、水素分離型水蒸気改質器45での改質反応用に利用する。符号44は、水素分離型水蒸気改質器45への改質反応用水蒸気の供給管である。
【0032】
水素分離型水蒸気改質器45からのオフガスは導出管48を介して導出され、圧縮機P1により圧縮した後、熱交換器33で冷却することによりオフガス中に含まれる二酸化炭素(CO2)を液化炭酸とする。液化炭酸は気液分離器49により分離し、導出管50により取り出され回収される。回収液化炭酸は溶接用、冷却用、食品用、製鋼用、化学用などの用途に利用される。
【0033】
コジェネレーションシステム(CGS)38で発生した燃焼排ガスと、水素分離型水蒸気改質器45における天然ガスの水蒸気改質反応用加熱源である燃焼器46からの燃焼排ガスと、水素分離型水蒸気改質器45からのオフガスの全部と、を一つに合流させた後、熱交換器33で冷却し、気液分離器49に導入する。
【0034】
このように、熱交換器33において、その冷却源はLNGタンク31から導管32を介して供給されるLNGであり、LNGの冷熱を二酸化炭素の液化回収に利用するとともに、コジェネレーションシステム(CGS)38、水素分離型水蒸気改質器45からの排熱をLNGの気化に利用するものである。
【0035】
気液分離器49において、熱交換器33を経た合流ガス中の二酸化炭素は液化炭酸として分離する。液化炭酸は導出管50により取り出し回収され、溶接用、冷却用、食品用、製鋼用、化学用などの用途に利用される。また、気液分離槽49で分離されたガス(気相分)にはCO、H2、CH4、CO2などが含まれている。そのうちCO、H2、CH4は燃料となるので、気相分は導管51、52を介して導出され、燃焼器46での燃焼用燃料に利用する。また、気相分にはCO、H2が含まれているので、気相分の一部を導管53により導出し、浸炭などに利用する。
【0036】
このように、本発明(1)においては、酸素富化空気を用い、LNGの冷熱を利用することにより、熱、電気を生成し、水素を製造するとともに、天然ガス由来の二酸化炭素の全量もしくは大部分を分離回収し、有効利用することができる。これにより、熱と電気だけでなく、水素や二酸化炭素を必要とする産業用施設、水素ステーションを併設する大型施設への適用が可能であり、エネルギーの効率的な利用と、二酸化炭素排出量の大幅削減が可能である。
【0037】
また、従来技術においては、図2のとおり、ボイラーが必須であるが、本発明(1)においては、コジェネレーションシステム(CGS)38において発生する余剰熱を利用して水蒸気を生成するのでボイラーは不要である。
【0038】
〈本発明(2)の態様〉
図4は本発明(2)を説明する図である。
【0039】
図4のとおり、本発明(2)の熱電気水素供給システムにおいては、LNGを気化して天然ガスとして燃料とするコジェネレーションシステム(CGS)67を備える。LNGタンク61中のLNGは導管62を介して熱交換器63に供給される。LNGは熱交換器63で加熱されて気化し、天然ガスとしてコジェネレーションシステム(CGS)67に供給される。その天然ガスの一部は、導管64を介してパイプライン65によりサテライトステーション周辺の需要に供される。
【0040】
コジェネレーションシステム(CGS)67には電力発生装置であるガスタービン発電機などが配置されている。コジェネレーションシステム(CGS)67において、天然ガスはガスタービン発電機に供給され、空気供給管68から供給され、酸素富化器69で酸素富化された空気で燃焼して電気と熱(排熱)を発生する。電気は需要者に供給され、排熱は給湯、冷暖房等の用途に供される。その排熱の一部は水素分離型水蒸気改質器72における天然ガスの水蒸気改質反応に供する水蒸気発生用に利用する。
【0041】
符号71は、水素分離型水蒸気改質器72への水蒸気供給管である。水素分離型水蒸気改質器72では原燃料である天然ガスを水蒸気改質反応により改質する。天然ガスは、熱交換器63で気化し、導管62を流れる天然ガスを分岐管66で分岐し、水蒸気供給管71を流れる水蒸気と合流して水素分離型水蒸気改質器72へ供給される。
【0042】
本発明(2)の熱電水素供給システムにおいては、コジェネレーションシステム(CGS)67での排熱を水素分離型水蒸気改質器72における水蒸気改質用の加熱に利用する。符号69は、そのためのコジェネレーションシステム(CGS)67から水素分離型水蒸気改質器72への排ガス供給管である。
【0043】
供給管68を介して供給される空気は、酸素富化器69で酸素が富化される。供給管68中を流れる酸素富化空気はコジェネレーションシステム(CGS)67に供給され、電力発生装置であるガスタービン発電機に供給される天然ガスの燃焼用に使用される。
【0044】
コジェネレーションシステム(CGS)67からの燃焼排ガスは、導管69を介して水素分離型水蒸気改質器72の加熱部73に供給され、水素分離型水蒸気改質器72における天然ガスの水蒸気改質反応用加熱源として利用される。コジェネレーションシステム(CGS)67で発生した排熱により水蒸気を生成し、水素分離型水蒸気改質器72での改質反応用に利用する。符号71は、水素分離型水蒸気改質器72への改質反応用の水蒸気供給管である。
【0045】
導管69を介して供給され、加熱部73を経たコジェネレーションシステム(CGS)67からの排ガスは、水素分離型水蒸気改質器72における天然ガスの水蒸気改質反応用加熱源として利用することから、その排ガス自体は冷却されているが、導出管75を流れる水素分離型水蒸気改質器72からのオフガス導出管75を流れるオフガスに合流させる。合流ガスは、導管76中を流れ、圧縮機P1により圧縮した後、熱交換器63で冷却する。
【0046】
熱交換器63において、その冷却源はLNGタンク61から導管62を介して供給されるLNGであり、LNGの冷熱を二酸化炭素の液化回収に利用する。また逆に、コジェネレーションシステム(CGS)67、水素分離型水蒸気改質器72からの排熱をLNGの気化に利用するものである。
【0047】
二酸化炭素は、(a)加熱部73を経たコジェネレーションシステム(CGS)67からの排ガスと、(b)水素分離型水蒸気改質器72からのオフガスの合流ガスであるので、合流ガス中に含まれる二酸化炭素(CO2)をすべて液化炭酸にする。
【0048】
液化炭酸は気液分離器77により分離し、導出管78により取り出し、回収され、その用途に利用される。気液分離器77において、熱交換器63を経た合流ガス中の二酸化炭素は実質上、すべて液化炭酸として分離する。気液分離槽77で分離されたガス(気相分)にはCO、H2、CH4、CO2などが含まれている。そのうちCO、H2、CH4は燃料になるので、気相分は導出管79を介して導出し、コジェネレーションシステム(CGS)67での燃焼用燃料に利用する。また、気相分にはCO、H2が含まれているので、気相分の一部を導出管80により導出し、浸炭などの用途に利用する。
【0049】
このように、本発明(2)においては、酸素富化空気とLNGの冷熱を用いることにより、熱、電気を発生し、水素を製造するとともに、天然ガス由来の二酸化炭素の全量または大部分を分離回収し、有効利用することができる。これにより、熱と電気だけでなく、水素や二酸化炭素を必要とする産業用施設、水素ステーションを併設する大型施設への適用が可能であり、エネルギーの効率的な利用と、二酸化炭素排出量の大幅削減が可能である。
【0050】
また、従来技術においては、図2のとおり、ボイラーが必須であるが、本発明(2)においては、図4のとおり、CGS(コジェネレーションシステム)67において発生する余剰熱を利用して水蒸気を生成するのでボイラーは不要である。
【符号の説明】
【0051】
1 LNGタンク
2 導管
3 熱交換器
4 コジェネレーションシステム(CGS)
5 LNGタンク1からのボイルオフガス排出導管
6 パイプライン
11 都市ガス導管
12 都市ガス導管11からの分岐管
13 脱硫器
14 空気供給管
15 ボイラー
16 ボイラー15への水供給管
17 水素分離型水蒸気改質器
P1、P2 圧縮機
18 燃焼器
21 気液分離器
23 液化炭酸の導出管
31 LNGタンク
33 熱交換器
38 天然ガスを燃料とするコジェネレーションシステム(CGS)
39 空気供給管
40 酸素富化器
41 酸素富化空気の分岐管
44 水素分離型水蒸気改質器45への水蒸気供給管
45 水素分離型水蒸気改質器
46 燃焼器
49 気液分離器
52、53 気相分導出管
61 LNGタンク
62 LNG導管
63 熱交換器
64 天然ガス導管
65 パイプライン
67 天然ガスを燃料とするコジェネレーションシステム(CGS)
68 空気供給管
69 酸素富化器
70 温水、水蒸気等の導出管
71 水素分離型水蒸気改質器72への水蒸気供給管
72 水素分離型水蒸気改質器
73 水素分離型水蒸気改質器72の加熱部
75 オフガス導出管
76 合流ガス導管
77 気液分離器
78 液化炭酸の導出管
79、80 気相分導出管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
LNGを気化した天然ガスを燃料とするコジェネレーションシステムと、前記天然ガスの水蒸気改質による水素分離型水蒸気改質器と、前記水蒸気改質用加熱源である燃焼器とを有する熱、電気および水素を供給するシステムであって、
(a)前記コジェネレーションシステムからの排ガスと前記水素分離型水蒸気改質器からのオフガスを合流させ、
(b)前記排ガス及びオフガスをその流れ方向でみて、順次、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽を含む二酸化炭素回収装置を備えてなり、
(c)前記冷却熱交換器の冷熱として前記LNGを使用し、
(d)前記コジェネレーションシステム及び前記水蒸気改質用加熱源である燃焼器には酸素富化空気を使用するようにしてなる、
ことを特徴とする熱電気水素供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載の熱電気水素供給システムにおいて、前記コジェネレーションシステムにて生成した水蒸気を前記水蒸気改質器での天然ガスの水蒸気改質用に使用するようにしてなることを特徴とする熱電気水素供給システム。
【請求項3】
LNGを気化した天然ガスを燃料とするコジェネレーションシステムと、前記天然ガスの水蒸気改質による水素分離型水蒸気改質器と、前記水蒸気改質用加熱源であるヒーターとを有する熱、電気および水素を供給するシステムであって、
(a)前記コジェネレーションシステムからの排ガスを前記ヒーターの熱源として使用した後、
(b)前記排ガスと前記水素分離型水蒸気改質器からのオフガスを合流させ、
(c)前記排ガス及びオフガスをその流れ方向でみて、順次、圧縮機、冷却熱交換器及び気液分離槽を含む二酸化炭素回収装置を備えてなり、
(d)前記冷却熱交換器の冷熱として前記LNGを使用し、
(e)前記コジェネレーションシステムには酸素富化空気を使用するようにしてなる、
ことを特徴とする熱電気水素供給システム。
【請求項4】
請求項3に記載の熱電気水素供給システムにおいて、前記コジェネレーションシステムにて生成した水蒸気を前記水蒸気改質器での天然ガスの水蒸気改質用に使用するようにしてなることを特徴とする熱電気水素供給システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱電気水素供給システムが、オンサイト方式の水素ステーションで設置する熱電気水素供給システムであることを特徴とする熱電気水素供給システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−106295(P2011−106295A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259349(P2009−259349)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】